説明

マンマシンインターフェース及びこれを備えた車両並びに該車両の動作方法

【課題】
車両の燃料消費率あるいはエネルギー消費量を低減させるに必要な手段及び動作方法を提供すること。
【解決手段】
少なくとも1つの駆動ユニットを有するパワートレインを含んで構成された車両におけるマンマシンインターフェースであって、当該マンマシンインターフェースを、前記駆動ユニットを個々に運転者側でエネルギー節約モードに設定することで該駆動ユニットから前記パワートレインへの入力がなされない状態にするとともに、前記車両が加速も減速もなされないよう設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの駆動ユニットを有するパワートレインを備えた車両、該車両の動作方法、マンマシンインターフェース、すなわちインジケータ及び/又は入力装置並びに制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンを備えた従来の車両だけでなく、この内燃エンジンに加えて、少なくとも1つの電動機を含んで構成されたハイブリッド型車両に対しても本発明を適用することが可能である。ここで、電動機は、回生段階において例えばバッテリ等の電気エネルギー貯蓄手段へエネルギーを供給する発電機として機能するようになっている。これにより、車両の燃料消費率(燃費)あるいはエネルギー消費量を低減することが可能である。
【0003】
なお、前記電動機のうち少なくとも1つは、駆動段階中において内燃エンジンを補助する駆動手段として機能し、及び/又は単独の駆動手段(電力走行)として機能するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的とするところは、車両の燃料消費率あるいはエネルギー消費量を低減させるに必要な手段及び動作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、請求項1、10、11又は20に記載の発明によって達成される。また、本発明の好ましい実施形態は各従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明の根源は、ハイブリッド型車両において、すべての走行状態で運動エネルギーが回生されるわけではない点にある。すなわち、すべての走行状態で運動エネルギーが電気エネルギーとして貯蓄されることにならない。
【0007】
そこで、車両をできる限り長い時間自由に滑走状態にさせるよう設定するのが好ましい。ここで、「滑走状態」とは、内燃エンジンあるいは電動機がパワートレインから切り離されているか、これらが停止しているような走行状態をいう。
【0008】
そして、このような、車両をできる限り長い時間自由に滑走状態にさせるよう設定するというコンセプトを従来の内燃エンジンのみを備えた、特に適当なクラッチ及びトランスミッション又はスタート・ストップシステムを有する車両に応用することが可能である。
【0009】
おおまかにいえば、上記のような滑走状態は内燃エンジン及びマニュアルトランスミッションを備えた従来の車両においてクラッチペダルをいっぱいに踏み込んだ状態に相当し、エンジン回転数はアイドリング状態あるいは停車時のレベルまで低下する。しかしながら、このような機能は燃料消費率あるいはエネルギー消費量の低減に最適化されたものとはなっていない。
【0010】
そこで、本発明によれば、特有のマンマシンインターフェースを設け、該マンマシンインターフェースを、車両の滑走状態を個々に運転者側で選択できるよう設定している。この滑走状態においては、いかなる駆動ユニットもその駆動トルクをパワートレインへ伝達しておらず、車両が駆動も制動もされていない走行状態となっている。
【0011】
本発明におけるこの滑走状態では、すべての装置をエネルギー効率が最良となるモード(例えばクラッチの解放、内燃エンジンの停止など)に切り換えることによって、燃料消費率あるいはエネルギー消費量が最小化されている。すなわち、マンマシンインターフェースによって、意図的に車両を滑走状態とする手段が運転者に提供されることになる。
【0012】
さらに、滑走状態開始時にはクラッチが自動的に解放されるとともに内燃エンジンが停止され、滑走状態終了時にはクラッチが自動的に再び係合状態にされるとともに内燃エンジンが再び始動するようになっている。
【0013】
また、滑走状態にある車両はエネルギー消費量が最小となる状態にあり、このとき、車両が消費するエネルギーが特に効率的に抑制されている。さらに、駆動ユニットの構成要素のほか、すべてのエネルギー消費要素を考慮し、必要であれば積極的に影響を与えるのが望ましい。
【0014】
また、例えば内燃エンジンがパワートレインから切り離された場合にこの内燃エンジンを停止させるなど、所定の機能は車両の設定に応じて停止させる一方、ブレーキ圧あるいはステアリングにおけるサーボアシスト機能、照明、ABS、ESP、オンボードコンピュータ、空調装置等の他の機能は引き続き機能させるようになっている。
【0015】
このような場合、車両におけるすべてのシステムを評価する必要がある。また、滑走状態においては、エネルギー消費要素に例えばバッテリ及び/又は電動機(発電機)から電気エネルギーを供給している。この際、どのような方法でエネルギー効率を最高にすることができるかは、実際の車両の設定に大きく依存し、最優先の車両制御装置又はエネルギー制御装置によりエネルギー消費要素の負荷及び走行状態に応じて決定されるようになっている。これは、エネルギー収支を最適化するためのものである。また、そのために、例えば特別な制御装置が設けられている。なお、考慮すべき中心的なものは、車速及びバッテリの充電状態である。
【0016】
本発明は、今日のマンマシンインターフェースにおいては運転者が滑走状態を選択できることがほとんどないという認識にも基づいてなされたものである。さらに、今日の車両システムは、運転者が状況に応じて走行中に自身で滑走状態に設定して最良のエネルギー効率での走行又は必要に応じてなされる装置類の停止を決定することができないという状況に置かれている。
【0017】
それに対して、運転者は、実際の走行状態についての全体的な概観を把握する傾向にあるため、先を見通して決定することが可能である。すなわち、運転者は、例えば路面勾配、交通状況、車両走行方向及び走行距離(直進、右左折、停止等)の選択に関する意思、前方にある潜在的な危険(例えば道端で遊ぶ子供)などを考慮することが可能である。
【0018】
しかし、今日の車両システムにとって、このような考慮は大きな追加コストによって部分的にのみ可能であるか、あるいは全く不可能となっている。一方、このような考慮をすることで、滑走状態の開始時点及び終了時点についての常に最適な決定が可能となる。
【0019】
また、エネルギー制御装置内には、最良のエネルギー効率を得るために、可能であればハイレベルの車両システムからの情報を入力することが考えられる。すなわち、例えば地図データベース(digitale Strassenkarten)からの情報及び運転者の目的地を使用することが可能である。これにより、例えば路面勾配、カーブ径などの地図データベースの詳細な情報あるいは運転者による設定の変更がエネルギー制御装置によって考慮されることになる。
【0020】
さらに、例えばGPSなどの位置測定システムによって得られる実際の車両位置を同様に考慮したり、例えば速度レベル、車両前後方向加速度、車両横方向加速度等の運転者固有の運転特性を導出することも考えられる。また、例えば先行する車両の交通状況についての車両側にある交通情報も考慮に入れることができる。
【0021】
そして、車両の周囲に配置されたセンサの使用は、自立型クルーズコントロール(ACC)及び交通情報又は車両間の通信若しくは車両とインフラの間の通信としてのものである。なお、運転者の意思を示す方向指示器などの他の信号の解釈も考慮に入れることが可能である。
【0022】
本発明によれば、例えばハイブリッド型車両等の回生手段を備えた車両の運転者に、該運転者の滑走状態及び/又は電動機の発電機としての使用についての要求をパワートレインに容易に反映させる手段及び適切な動作方法を提供することが可能である。
【0023】
従来、ハイブリッド型車両においては、滑走状態を意図的かつ容易に選択し、及び/又は電動機の発電機としての使用度合を実際の走行状態に応じて調整する手段が欠如していた。アクセルペダルの操作による滑走状態は、今日、むしろアクセルペダル特性曲線における非常に狭い範囲となっている。そして、アクセルペダル解放時には、多くの場合、システム側により、減速度が小さく滑走状態に近い回生状態に設定されてしまう。これは、あらゆる走行状態での最適条件について妥協したものとなっている。
【0024】
通常、エネルギー貯蓄手段には、これが満たされるまで常にエネルギーが供給されるため、内燃エンジンの動力を発電機にも流用することで、これに応じたエネルギー消費量が発生することになる。これは、例えば、前方に勾配区間があることで回生手段を準備させる必要があるため、次回に上記流用が不要であったとしても行われてしまう。
【0025】
そこで、本発明のマンマシンインターフェースによれば、通常の走行状態にあっても、エネルギー回生を運転者が選択できるため、上記のような不要なエネルギー消費が生じることがない。
【0026】
マンマシンインターフェースを、滑走状態及び発電機の動作を伴う制動状態のいずれかの状態に選択できるように構成するのが好ましい。これにより、エネルギー効率を最適化するためのできる限り長い時間の滑走が可能となる。また、運転者は、実際の走行状態を総合的に判断して、電動機の発電機としての使用をどのように設定するかを決定することが可能である。
【0027】
本発明の一実施形態は、マンマシンインターフェースを、電動機の発電機としての使用を多段式又は無段式に変更可能に構成したことを特徴としている。これにより、運転者が電動機の発電機としての使用を個々に実際の走行状態に合わせて精確に調整することが可能となる。
【0028】
本発明の特に簡単な実施形態は、マンマシンインターフェースを、該マンマシンインターフェースによって電動機の発電機としての使用をON/OFFできるように構成することで生じる。このとき、電動機の発電機としての使用がOFFされている状態では発電機は動作していない一方、電動機の発電機としての使用がONされている状態では電動機が発電機として例えば所定割合又は最大限使用されている。これは、構造上容易に実現可能であるとともに、未熟な運転者にとっても適応しやすいものである。
【0029】
また、マンマシンインターフェースをセパレート型の操作要素とすることで、簡単な操作性が得られるようになっている。ここで、この操作要素をペダル類領域における調整要素あるいはスイッチとして足で操作可能なものとすると運転者にとっての信頼性が高まる。
【0030】
これについて、例えばデジタル式のクラッチペダルに類似した、左足で操作される2つの位置を有する圧力スイッチ、又はアクセルペダル近傍において例えばかかと若しくは右足の側方への回転で操作される追加調整要素が考えられる。なお、前記スイッチの2つの位置のうち1つは滑走状態に対応し、他の1つは例えばエンジンブレーキトルク程度の車両の減速を伴う発電機による回生状態に対応するものである。
【0031】
また、本発明の他の実施形態として、回生電力を連続的に変更可能に構成することができる。これは、例えば、回生電力及びこれに伴う車両の減速が大きくなればなるほど、運転者が操作要素を操作あるいは解放することで達成することが可能である。
【0032】
上記に代えて、あるいは上記に加えて、ステアリングホイール及び/又はシフトレバーに付設された特にスイッチあるいは調整要素などの手で操作可能な操作要素を設けることもできる(例えばティプトロニックスイッチ(Tiptronic-Schalter))。なお、このような位置は、運転者にとって操作が容易な場所である。この操作要素の一例としては、足で操作する上記圧力スイッチの動作に対応した、ステアリングホイール若しくはシフトレバーに付設した2段階若しくは無段階の手動の押しボタン又はトグルスイッチである。
【0033】
また、操作要素を、慣用の操作要素(特にアクセルペダル、ブレーキペダル又はクルーズコントロール、ステアリングコラム操作要素などのステアリングホイール操作レバー)に変更を加えたものとすれば、本発明のフレキシブルな利用が可能となる。
【0034】
本発明の基本的な観点は、操作要素の使用時に、運転者が滑走状態の作動点を直感的かつ容易に感知することができるよう慣用の操作要素を変更又は拡張することにある。本発明の一実施形態においては、最適なエネルギー効率を得る観点から、運転者ができる限り頻繁に滑走状態の作動点に置かれるように操作要素が形成されている。これは、力のレベル及び/又は過大な調整変位を滑走状態に割り当てつつ、例えば操作要素の力−変位特性曲線を最適化することによって実現されるものである。
【0035】
段階付けしたアクセルペダルは、例えば完全な踏込量の1/4の部分に軽いプレッシャポイントあるいは軽いクリック点を設定することができるようになっている。ここで、運転者が右足でアクセルペダルをプレッシャポイントへ操作すると滑走状態となり、運転者がアクセルペダルを完全に解放すると回生を伴う減速状態となる。なお、このようなマンマシンインターフェースについては、これを多段式としてもよいし、あるいは無段式に調整可能なものとしてもよい。
【0036】
また、例えば、運転者がアクセルペダルをその基本位置からプレッシャポイントへ近づければ近づけるほど回生電力つまり減速度を大きく設定することも可能である。なお、アクセルペダル−操作特性曲線におけるプレッシャポイントの位置又は設定は、他の実施形態においても適宜設定すればよい。すなわち、プレッシャポイントの位置を、例えばトランスミッションあるいは駆動ユニットの実際の動作状態に応じてアクセルペダルの解放位置である基本位置から幾分遠ざけることが可能である。さらに、これに代えて、あるいはこれに加えて、例えば段階付けされたアクセルペダルと同様に改良されたステアリングコラム操作要素のようなクルーズコントロールを設けることも可能である。
【0037】
ところで、従来における慣用車両のアクセルペダル及びブレーキペダルの操作設定においては、クラッチが入った状態でペダル類が完全に解放されていても、エンジンブレーキトルクは駆動輪に伝達されていた。すなわち、アクセルペダルの操作によって加速できる一方で減速もなされるようになっている。
【0038】
ここで、一つの試みとして、ペダル類の解放状態を滑走状態に対応させることも考えられる。これにより、アクセルペダルをわずかに踏んでいる状態におけるエンジンブレーキトルクを伴う制動がなくなることになる。そして、その他の走行抵抗の作用を除けば、車両の減速は、電動機の発電機としての使用及び/又はフットブレーキにより単にブレーキペダルによってのみ作用する。
【0039】
このような機能は、例えばジョイスティック式のスイッチ又はステアリングコラムスイッチ式のレバーのような手動の操作要素によっても達成され得る。したがって、車両制御用のジョイスティックを車両の加減速ができるように形成することが可能である。
【0040】
このジョイスティックが中立位置あるいはプレッシャポイントにあれば、これは滑走状態を意味している。また、ジョイスティックが中立位置あるいはプレッシャポイントを通過して更に操作されると、車両が加速されることになる。一方、ジョイスティックが中立位置あるいはプレッシャポイントから後方へ戻されると、電動機の発電機としての使用及び/又はフットブレーキにより車両が減速されることになる。このような構成は、従来の操作要素であるアクセルペダル及びブレーキペダルに付加あるいは取り替えられる、車両における新規な操作要素としてのジョイスティックについての一例を示すものである。
【0041】
同様に、操作要素としての新規なアクセルペダルを使用することも可能である。この場合、アクセルペダルの中央部に該アクセルペダルの枢支部が設けられている。このアクセルペダルが中立位置あるいはプレッシャポイントにあれば滑走状態を意味し、このアクセルペダルが中立位置あるいはプレッシャポイントを通過して更に操作されれば車両は加速され、このアクセルペダルが中立位置あるいはプレッシャポイントから後方へ戻されれば電動機の発電機としての使用及び/又はフットブレーキにより車両が減速されることになる。なお、フットブレーキの使用に対して、ジョイスティックを引いて操作するか、あるいは新規なアクセルペダルの後方へ戻すことによって得られる更なるプレッシャポイントを設定することも可能である。
【発明の効果】
【0042】
車両の燃料消費率あるいはエネルギー消費量を低減させるに必要な手段及び動作方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0044】
図1A〜図1Cにはマンマシンインターフェース(Segel-Bedienschnittstelle)の3つの実施形態が示されており、これらの図において、アクセルペダルの枢支点は小さな円によって示されている。アクセルペダルについてのこれら各実施形態においては、従来のアクセルペダルを、例えばバネ機構、アクチュエータ等の適当な制御によって所定のアクセルペダル踏込位置がプレッシャポイント(クリック感を生じさせるような点)として運転者に伝達されるように拡張したものである。
【0045】
図1Aには従来のアクセルペダルに変更を加えたものが示されており、この図1Aには、非操作時のアクセルペダル、すなわちアクセルペダルに力が作用していない状態が示されている。この状態は、滑走状態、すなわち回生及びエンジンブレーキトルクが作用していない状態に相当する。
【0046】
図1Bにはプレッシャポイントを設定したアクセルペダルが示されており、このプレッシャポイントは車両の滑走状態に相当し、アクセルペダルの非操作位置、すなわちアクセルペダルに力が作用していないときのアクセルペダル(踏込)位置は車両の減速を伴う回生状態に相当する。
【0047】
図1Cには双方向型のアクセルペダルが示されており、この双方向型のアクセルペダルにおけるプレッシャポイントは、従来のようなアクセルペダル踏込位置の末端に設定する代わりに、中央に設定されている。
【0048】
図1A〜図1Cに示す3つの実施形態では、アクセルペダルはその上の運転者の足によって矢印方向に操作されるように設定されている。ただし、双方向型のアクセルペダルについては、アクセルペダルは運転者のかかとによって図中の矢印とは反対方向にも操作されるようになっている(図1Cの細かな破線参照)。
【0049】
ここで、電動機の発電機としての使用又はフットブレーキの操作によって車両の減速のためのブレーキトルクがパワートレインに作用すると、双方向型アクセルペダルは、かかとによる圧力によって後方へ押されることになる。
【0050】
図1A〜図1Cの各図においては、滑走状態に相当するアクセルペダル踏込位置が示されている。アクセルペダル踏込位置がこの滑走状態に相当するアクセルペダル踏込位置(ノーマル位置)にもたらされると、パワートレインが駆動トルクを伝達しないようになっている。この状態は、内燃エンジンが車両を駆動も制動もしていない状態に相当する。このような駆動状態においては、クラッチの係脱状態は問題ではなく、車両の加減速に影響はない。
【0051】
滑走機能の作動中においては、エネルギー効率の観点から、クラッチを解放するとともに内燃エンジンを停止させ、及び/又は電動機を最小のエネルギー消費となるよう駆動させる。なお、滑走状態のアクセルペダル踏込位置については後述する。
【0052】
ところで、このマンマシンインターフェースの利点は、運転者は自身にとって慣れた操作要素のみによって自身の望む滑走状態を設定することが可能であるとともに、車両も従来どおりに動作することにある。運転者には、例えば内燃エンジンによる車両の加減速への影響を遮断しつつ滑走機能の作動が単にアクセルペダルの応答(何らかの感覚を生じさせる)によって伝達される。
【0053】
また、滑走機能の自動的な作動については、内燃エンジンが車両の加減速にいかなる影響も及ぼさないときにはいつもこの滑走機能の自動的な作動がなされるようになっている。そして、このような状態を運転者に知らせることにより、わずかな運転特性の学習しか必要としない走行状態においても、滑走状態を応用することができるよう走行状態を適合させることが可能である。したがって、滑走状態及び滑走機能の最適かつ頻繁な使用が達成される。
【0054】
また、例えば内燃エンジンの頻繁な停止及びその後短時間での再始動等に対応する処理を省略することも可能である。さらに、アクセルペダル踏込位置に対してヒステリシスを設定するとともに、図2Aに示すように、滑走機能の作動に対する不反応時間(Abschalttotzeit)を設定している。図2Aにおける上下2本の線は、それぞれ矢印で示すように、アクセルペダルの踏込及び同解放を示している。
【0055】
ここで、図2A中には、ゼロトルク位置SS(n)の代わりにアクセルペダルのゼロトルク範囲ΔSが設定してある。このゼロトルク範囲ΔSは運転者のアクセルペダル操作によって所定時間維持され、これに伴い滑走機能が作動する。なお、このゼロトルク範囲ΔSは図2A中において斜線を付して示されている。
【0056】
また、ゼロトルク範囲ΔSの境界部には、上記プレッシャポイントの代わりに、又は上記プレッシャポイントに加えて更にプレッシャポイントを設定してもよい。この際、このプレッシャポイントは、上記プレッシャポイントを克服するに必要な力ΔFよりも小さな力で克服できるように設定されている。
【0057】
上記のように設定することで、アクセルペダルの意図的な少々の移動によって例えば内燃エンジンを再始動させることが可能となる。好ましくは、運転者側で内燃エンジンの停止及び再始動の頻度又は滑走機能の使用時間を調整するための操作要素又はユーザインターフェースを設けるのがよい。これは、運転者が不反応時間を適宜調整できる例えば不反応時間操作要素とすることができる。また、同様にアクセルペダルヒステリシス操作要素も設け、これにより運転者がアクセルペダルヒステリシスを調整することが可能となる。なお、これは図2Aにおいて斜線によって示してある。
【0058】
ところで、本発明の簡単な実施形態においては滑走状態に対応するアクセルペダル踏込位置は常に同位置に設定されているが、他の実施形態として、図2Bにおいて破線で示すように、滑走状態に対応するアクセルペダル踏込位置を内燃エンジンの回転数に合わせて変更することが可能である。さらに、内燃エンジン温度等の変動パラメータに合わせて滑走状態に対応するアクセルペダル踏込位置を変更させてもよい。
【0059】
しかして、マンマシンインターフェースを、更に不反応時間操作要素及び/又はアクセルペダルヒステリシス操作要素を含んで構成することも可能であり、こうすることで、滑走機能及び運転者による滑走待機状態を個々に設定することが可能なマンマシンインターフェースが実現できる。このマンマシンインターフェースは例えば2つの設定を有し、そのうちの1つの設定は、アクセルペダルが短時間ゼロトルク位置あるいは該ゼロトルク位置近傍の所定範囲内にあれば内燃エンジンを停止させるものであり、もう1つの設定はシステム全体を停止させるもので、図2AにおいてΔF=0、ΔS=0となり、不反応時間が非常に長いものとなっている。
【0060】
なお、不反応時間及びアクセルペダルヒステリシスに対する操作要素において、完全な停止を運転者に感知させるために、明確なクリック点(節度点、ロックポイント)を設定してもよい。また、不反応時間及びアクセルペダルヒステリシスの調整は、マンマシンインターフェースのみならず、本発明による各インターフェースに操作特性及びディスプレイコンセプトを含む特性値又は適当な操作要素を設定してもよい。さらに、運転者による特性値の設定及び調整を例えばオンボードコンピュータによって行うよう設定することも可能である。
【0061】
また、アクセルペダルの最後方位置を内燃エンジンによるエンジンブレーキトルクよりも大きな制動能力に相当するよう設定することで、アクセルペダルによる操作インターフェースは、車両の回生能力(Rekuperationsfaehigkeit)の拡大を可能にすることになる。さらに、運転者が所望する減速度を得るためにアクセルペダルからブレーキペダルへ頻繁に踏み換える必要がないため、回生機能(Rekuperation)のより良好な使用に対する快適性の向上を図ることも可能である。
【0062】
また、本発明によるマンマシンインターフェースにおいて、クリック点(触覚)に代えてあるいはクリック点に加えて、例えば信号音などの音(聴覚)及び/又は例えば信号ランプなどの光(視覚)によってアクセルペダル踏込位置を知らせるようにしてもよい。
【0063】
特に、組付工数の削減のために、クリック点を生じさせる代わりに駆動ユニットが駆動しているか、又は制動しているかを示す光によるインジケータを用いることが考えられる。仮に、駆動ユニットが駆動も制動もしていない場合には、上記滑走状態にあると認識される。実際の駆動状態の光による表示は、例えばマトリックスディスプレイなどの慣用の表示手段によって行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1A】本発明の一実施形態を示す概要図である。
【図1B】本発明の一実施形態を示す概要図である。
【図1C】本発明の一実施形態を示す概要図である。
【図2A】滑走状態の作動に対するヒステリシス及び不反応時間を示す概要図である。
【図2B】滑走状態の作動に対するヒステリシス及び不反応時間を示す概要図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの駆動ユニットを有するパワートレインを含んで構成された車両におけるマンマシンインターフェースであって、当該マンマシンインターフェースを、前記駆動ユニットを個々に運転者側でエネルギー節約モードに設定することで該駆動ユニットから前記パワートレインへの入力がなされない状態にするとともに、前記車両が加速も減速もなされないよう設定したことを特徴とするマンマシンインターフェース。
【請求項2】
前記駆動ユニットをモータ及び/又は内燃エンジンとしたことを特徴とする請求項1記載のマンマシンインターフェース。
【請求項3】
前記車両を、バッテリと、回生状態で該バッテリへ電力を供給する発電機として使用され、及び/又は駆動状態で少なくとも補助駆動手段として使用される電動機とを含んで構成するとともに、当該マンマシンインターフェースを、前記電動機の発電機としての使用によって、個々に運転者側で減速度を設定するよう構成したことを特徴とする請求項2記載のマンマシンインターフェース。
【請求項4】
当該マンマシンインターフェースを、セパレート型の操作要素としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のマンマシンインターフェース。
【請求項5】
前記操作要素を、特にペダル類の領域における調整要素として、足で操作可能なものとしたことを特徴とする請求項4記載のマンマシンインターフェース。
【請求項6】
前記操作要素を、特にステアリングホイール及び/又はシフトレバー領域における調整要素として手で操作可能なものとしたことを特徴とする請求項4記載のマンマシンインターフェース。
【請求項7】
当該マンマシンインターフェースを、慣用の操作要素、特にアクセルペダル又はクルーズコントロール操作要素を変更したものとしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のマンマシンインターフェース。
【請求項8】
当該マンマシンインターフェースを、前記電動機の発電機としての使用を多段式又は無段式に変更可能に構成したことを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載のマンマシンインターフェース。
【請求項9】
前記車両が加速も減速もなされない状態を、運転者の触覚、聴覚及び視覚のうち少なくともいずれかによって運転者に知らせるよう構成したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のマンマシンインターフェース。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のマンマシンインターフェースを含んで構成したことを特徴とする、内燃エンジンを備えた車両。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載のマンマシンインターフェース及び少なくとも1つの駆動ユニットを有するパワートレインを含んで構成された車両の動作方法であって、前記駆動ユニットを運転者側で個々にエネルギー節約モードに設定することで前記駆動ユニットから前記パワートレインへの入力がなされない状態に設定するとともに、前記車両が加速も減速もなされないようにすることを特徴とする動作方法。
【請求項12】
前記車両が加速も減速もなされない状態であるときに、前記駆動ユニットを、
1)動力伝達状態としない、
2)停止させる、及び
3)エネルギー消費が最小若しくはエネルギー効率が最高となる状態にする
のうち少なくともいずれかとすることを特徴とする請求項11記載の動作方法。
【請求項13】
前記車両を、バッテリと、回生状態で該バッテリへ電力を供給する発電機として使用され、及び/又は駆動状態で少なくとも補助駆動手段として使用される電動機とを含んで構成するとともに、前記電動機の発電機としての使用によって、個々に運転者側で減速度を設定することを特徴とする請求項11記載の動作方法。
【請求項14】
前記電動機の発電機としての使用を運転者によってON/OFFすることを特徴とする請求項13記載の動作方法。
【請求項15】
前記電動機の発電機としての使用を運転者によって多段式に、又は無段式に変更することを特徴とする請求項13記載の動作方法。
【請求項16】
前記車両が加速も減速もなされない状態の維持時間を特に不反応時間及び/又はヒステリシスによって可変に設定することを特徴とする請求項11〜15のいずれか1項に記載の動作方法。
【請求項17】
運転者によって、及び/又は前記車両側の情報に基づいて前記維持時間の変動を設定することを特徴とする請求項16記載の動作方法。
【請求項18】
前記マンマシンインターフェースの特性について、特に交通情報、地図データベース、位置測定システム及び車両の周囲に配置されたセンサの信号のうち少なくともいずれかのような前記車両側で処理される情報を考慮することを特徴とする請求項11〜16記載の動作方法。
【請求項19】
連続的な調整を行うことを特徴とする請求項16〜18のいずれか1項に記載の動作方法。
【請求項20】
請求項11〜19のいずれかに記載の動作方法を実行する制御装置であって、特に交通情報、地図データベース、位置測定システム及び車両の周囲に配置されたセンサの信号のうち少なくともいずれかの無線信号のような前記車両側で処理される情報を考慮するよう構成したことを特徴とする制御装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2009−35250(P2009−35250A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190921(P2008−190921)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】