説明

メッシュ検査装置、メッシュ検査方法、プログラム、および記録媒体

【課題】エッチングや印刷のムラによりメッシュ幅の太さの変化に影響されずに正確な欠陥抽出を行うことが可能なメッシュ検査装置を提供する。
【解決手段】メッシュ検査装置1の処理部3は、ラインセンサ5からメッシュシート10のメッシュが画像に写る分解能で画像を入力し、前処理として光源である白色LED照明7によるシェーディングの補正を行い、前処理した画像を平滑化し、欠陥を誤検出しない程度に画像をぼかす。平滑化した画像内でしきい値により欠陥を抽出し、抽出した欠陥の重心を中心に例えば128×128画素を平滑化前の画像からトリミングする。トリミングした画像のFFT画像でメッシュの空間周波数に相当する領域を0に置き換えてメッシュ周波数を除去した後、IFFT処理を施し、得られた画像から欠陥の輝度、形状、面積の判定を行い、結果を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッシュ検査装置、特に、PDP(Plasma DisplayPanel)電磁波防止フィルムのようなメッシュシートの異物付着やメッシュの抜けを検査するメッシュ検査装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
PDPのような画像表示に利用される画像表示装置は、電極間に電圧印加すると、印加に伴う放電によって内部に封入されるガス分子を励起し、発生する紫外線で内部に封じ込まれている蛍光物質を励起させる。この際、可視光領域の光線を発生させ画像を表示するが、この放電によって電磁波を発生させ、外部に電磁波が僅かに漏洩する。この漏洩する電磁波を遮蔽するため、PDPの前面板に電磁波防止フィルムとしてメッシュシートを設ける。
【0003】
このようなメッシュシートの異物付着やメッシュ抜けを検査するためには、ラインセンサと線状透過照明により画像を得る検査装置が有効である。その際、入力画像からしきい値を用いて欠陥部を抽出する検査処理を行うためには、欠陥と同時に写るメッシュを消す必要がある。メッシュを消す方法としては、(1)メッシュが画像に写らない分解能で検査する、(2)メッシュが画像に写る分解能の画像に平滑化処理を行い、メッシュをぼかす、(3)メッシュの間隔で前後比較検査を行う、(4)FFT(Fast Fourier Transform)を行い、空間周波数のピークを抽出・消去し、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)を行う等が考えられる。しかし、(1)に示す方法では、分解能を低くすることにより小さい欠陥も写らなくなるため、検査性能が下がる。(2)に示す方法では、メッシュをぼかす平滑化処理により欠陥もぼけてしまい、欠陥の形状判定が難しくなる。(3)に示す方法では、フィルタの伸び縮みや搬送のばたつきにより入力画像が歪むため、液晶用カラーフィルムやPDPで行っているような前後比較によるパターン検査は難しい。また、(4)に示す方法を画像全体に対して行うと、ラインセンサの画素数が1000以上であるため画像サイズが大きくなり、FFTあるいはIFFTのための処理時間が大きくなる。
【0004】
特許文献1では、1次元ラインセンサを用いて網目状、格子状等の周期構造物体の1次元画像データの各島部分にそれぞれ対応する各形状部分を複数種類の属性に分け、これらの複数種類の属性に分けられる各島部分の特徴量を検出し、検出した値と対応する特徴量の基準値とを比較することにより、必要な欠陥抽出を行う方法について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3278512号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記に示す特許文献1の方法では、PDP電磁波防止フィルムのようなメッシュシートの製造工程において、エッチングや印刷のムラによりメッシュ幅の太さの変化に影響を受け、正確な欠陥抽出が難しくなる。また、特許文献1の方法では、欠陥とメッシュを区別しないまま所定のしきい値によって画像を2値化し、2値化した画像を用いて処理を行う(段落0014参照)。従って、欠陥の輝度情報はなくなり、欠陥とメッシュを区別することもできないので、仮に欠陥の存在を検出することができても、欠陥の輝度、形状、面積の判定をすることはできない。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、エッチングや印刷のムラによりメッシュ幅の太さの変化に影響されずに正確な欠陥抽出を行うことが可能なメッシュ検査装置等を提供することである。また、メッシュシートの欠陥の輝度、形状、面積が判定可能なメッシュ検査装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、ラインセンサと照明により得られる画像から、メッシュシートの検査を行うメッシュ検査装置であって、メッシュシートの入力画像を得る画像入力手段と、前記入力画像を平滑化して平滑化画像を得る平滑化手段と、前記平滑化画像から第1のしきい値により欠陥を抽出し、欠陥の重心座標を得る欠陥抽出手段と、前記入力画像から前記欠陥の重心座標を中心とした所定の範囲のトリミング画像を得るトリミング手段と、前記トリミング画像にFFT処理を施し、FFT画像を得るFFT手段と、前記FFT画像からメッシュ周波数を抽出するメッシュ周波数抽出手段と、前記抽出したメッシュ周波数を前記FFT画像から除去するメッシュ周波数除去手段と、前記メッシュ周波数を除去したFFT画像にIFFT処理を施し、欠陥画像を得るIFFT手段と、を具備することを特徴とするメッシュ検査装置である。
【0009】
第1の発明によって、エッチングや印刷のムラによりメッシュ幅の太さの変化に影響されずに正確な欠陥抽出を行うことが可能となる。
【0010】
第1の発明は、前記欠陥画像の輝度、形状、面積の少なくともいずれか1つを用いて欠陥の原因を特定する欠陥原因特定手段、を更に具備することが望ましい。これによって、メッシュシートの欠陥の原因を正確に特定することができる。
【0011】
第1の発明における前記欠陥抽出手段は、前記平滑化画像内の判定対象となる画素の周囲の輝度平均値の変化に応じて、前記第1のしきい値を変化させることが望ましい。これによって、メッシュシート製造時のエッチングや印刷のムラによるメッシュ幅の太さの変化に影響されることなくメッシュ検査を行うことが可能となる。
【0012】
第1の発明における前記メッシュ周波数抽出手段は、前記FFT画像の直流成分に相当する領域を除外した領域をメッシュ周波数探索領域に設定し、前記メッシュ周波数探索領域において第2のしきい値より高い輝度を有する領域をメッシュ周波数として抽出する。これによって、メッシュのピッチや方向が変わることによる設定の変更が不要となる。すなわち、製品ごとにしきい値の調整などが不要となる。
【0013】
第1の発明における前記メッシュ周波数除去手段は、前記抽出したメッシュ周波数の輝度を0に置き換えるものである。これによって、最終的に得られる欠陥画像から、メッシュの画像が除去される。
【0014】
第2の発明は、ラインセンサと照明により得られる画像から、メッシュシートの検査を行うメッシュ検査装置で行うメッシュ検査方法であって、メッシュシートの入力画像を得る画像入力工程と、前記入力画像を平滑化して平滑化画像を得る平滑化工程と、前記平滑化画像から第1のしきい値により欠陥を抽出し、欠陥の重心座標を得る欠陥抽出工程と、前記入力画像から前記欠陥の重心座標を中心とした所定の範囲のトリミング画像を得るトリミング工程と、前記トリミング画像にFFT処理を施し、FFT画像を得るFFT工程と、前記FFT画像からメッシュ周波数を抽出するメッシュ周波数抽出工程と、前記抽出したメッシュ周波数を前記FFT画像から除去するメッシュ周波数除去工程と、前記メッシュ周波数を除去したFFT画像にIFFT処理を施し、欠陥画像を得るIFFT工程と、を具備することを特徴とするメッシュ検査方法である。
【0015】
第2の発明によって、エッチングや印刷のムラによりメッシュ幅の太さの変化に影響されずに正確な欠陥抽出を行うことが可能となる。
【0016】
第2の発明は、前記欠陥画像の輝度、形状、面積の少なくともいずれか1つを用いて欠陥の原因を特定する欠陥原因特定工程、を更に具備することが望ましい。これによって、メッシュシートの欠陥の原因を正確に特定することができる。
【0017】
第2の発明における前記欠陥抽出工程は、前記平滑化画像内の判定対象となる画素の周囲の輝度平均値の変化に応じて、前記第1のしきい値を変化させることが望ましい。これによって、メッシュシート製造時のエッチングや印刷のムラによるメッシュ幅の太さの変化に影響されることなくメッシュ検査を行うことが可能となる。
【0018】
第2の発明における前記メッシュ周波数抽出工程は、前記FFT画像の直流成分に相当する領域を除外した領域をメッシュ周波数探索領域に設定し、前記メッシュ周波数探索領域において第2のしきい値より高い輝度を有する領域をメッシュ周波数として抽出する。これによって、メッシュのピッチや方向が変わることによる設定の変更が不要となる。すなわち、製品ごとにしきい値の調整などが不要となる。
【0019】
第2の発明における前記メッシュ周波数除去工程は、前記抽出したメッシュ周波数の輝度を0に置き換えるものである。これによって、最終的に得られる欠陥画像から、メッシュの画像が除去される。
【0020】
第3の発明は、コンピュータを第1の発明のメッシュ検査装置として機能させるプログラムである。
【0021】
第4の発明は、コンピュータを第1の発明のメッシュ検査装置として機能させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、エッチングや印刷のムラによりメッシュ幅の太さの変化に影響されずに正確な欠陥抽出を行うことが可能なメッシュ検査装置等を提供することができる。また、メッシュシートの欠陥の輝度、形状、面積が判定可能なメッシュ検査装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るメッシュ検査装置1の概要を示す図
【図2】メッシュ検査装置1の撮像部の詳細を示す側面図
【図3】メッシュシート10の一例を示す図
【図4】メッシュ検査装置1が行うメッシュ検査の処理の流れを示すフローチャート
【図5】メッシュ検査装置1が行うメッシュ周波数除去の詳細な処理の流れを示すフローチャート
【図6】画像の前処理を示す図
【図7】前処理を施した画像を平滑化処理した画像を示す図
【図8】画像からの欠陥のトリミングを示す図
【図9】トリミングした画像をFFT処理した画像を示す図
【図10】FFT処理を行った画像からのメッシュ周波数の抽出を示す図
【図11】メッシュ周波数を除去した画像をIFFT処理した画像を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明に係るメッシュ検査装置の実施形態を詳細に説明する。
最初に、図1、2、3を参照しながら、本発明に係るメッシュ検査装置1について説明する。
図1は、メッシュ検査装置1の概要を示す図、図2は、メッシュ検査装置1の撮像部の詳細を示す側面図、図3は、メッシュシート10の一例を示す図である。
【0025】
図1に示すように、メッシュ検査装置1はメッシュシート10の異物付着やメッシュ抜けを検査する装置で、処理部3、ラインセンサ5、白色LED(Light Emitting Diode)ライン照明7、信号灯9等を有する。
【0026】
処理部3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、記憶装置等で構成される。
CPUは、記憶装置、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、ラインセンサ5により取り込んだ画像データを処理する。
ROMは、不揮発性メモリであり、メッシュ検査装置1のブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。
RAMは、揮発性メモリであり、記憶装置、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、処理部3が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
【0027】
記憶装置は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、処理部3が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OS(オペレーティングシステム)に相当する制御プログラムや、後述の処理に相当するアプリケーションプログラムが格納されている。
これらの各プログラムコードは、処理部3により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
処理部3は、ディスプレイ装置等の表示装置、データの入力を行うためのキーボード、マウス、テンキー等の入力装置、周辺機器I/F(インタフェース)装置等を有しても良い。
【0028】
ラインセンサ5は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ素子、レンズ、ドライバ、コントロール回路等により構成される。
図2に示すように、ラインセンサ5はメッシュシート10のような対象物の画像をレンズによって素子面に結像させ、白色LEDライン照明7から照射され、メッシュシート10を通過した光の量を電気信号に変換し、画像として出力する。電気信号は時系列パルスとして取り出されるが、ローラ11により矢印の方向に移動するメッシュシート10のような対象物に対し、一定ピッチごとに平均した積分値を出力する。ラインセンサ5により得られる画像は、メッシュシート10のメッシュが画像に写る分解能で画像を入力する。例えば、1ラインは4000画素、1画素は0.05mm程度で、メッシュ検査装置1により検出するメッシュシート10の欠陥は0.1mm程度を想定している。
【0029】
図3に示すように、メッシュシート10は格子状の周期的構造物で、透明なフィルム基材の一面に、銅箔、銀箔等の金属箔からなるメッシュを、接着剤を介して積層した電磁波遮蔽用部材である。メッシュシート10のメッシュ幅は、例えば、10μm程度、ピッチは250〜300μmである。
【0030】
次に、図4から図11を参照しながら、本発明に係るメッシュ検査装置1の詳細について説明する。
図4は、メッシュ検査装置1が行うメッシュ検査の処理の流れを示すフローチャート、図5は、メッシュ検査装置1が行うメッシュ周波数除去の詳細な処理の流れを示すフローチャート、図6は、画像の前処理を示す図、図7は、前処理を施した画像を平滑化処理した画像を示す図、図8は、画像からの欠陥のトリミングを示す図、図9は、トリミングした画像をFFT処理した画像を示す図、図10は、FFT処理を行った画像からのメッシュ周波数の抽出を示す図、図11は、メッシュ周波数を除去した画像をIFFT処理した画像を示す図である。
【0031】
メッシュ検査装置1の処理部3は、ラインセンサ5からメッシュシート10のメッシュが画像に写る分解能で画像を入力し、前処理として、光源である白色LEDライン照明7に対するシェーディング補正を行う(ステップS101)。ここで、シェーディング補正とは、濃度のムラ(白色LEDライン照明7に起因)のある画像からムラを取り除く処理である。
図6に示すように、ラインセンサ5からの入力画像は幅方向の輝度分布が一様ではなく、特に、端の部分は輝度が低くなっている。そのため、入力画像に対してシェーディング補正を行い、幅方向の輝度分布が一様となるようにする。
【0032】
メッシュ検査装置1の処理部3は、前処理した画像を平滑化し、メッシュを誤検出しない程度に画像をぼかす(ステップS102)。
平滑化処理には、例えば、9×9のガウシアンフィルタを使用する。単純に平均化する移動平均フィルタ、荷重平均フィルタ等を用いてもよい。
図7の第1図に示すように、平滑化前の画像では、メッシュと欠陥が混在し、この状態でコンピュータが欠陥を抽出することは困難である。そこで、画像を平滑化することによって、図7の第2図に示すように、メッシュをぼかす。このとき、欠陥のエッジは少しぼけるが、欠陥を見落とす程度ではない。
【0033】
メッシュ検査装置1の処理部3は、平滑化した画像に対してしきい値処理を行い、所定のしきい値により欠陥を抽出する(ステップS103)。
図7の第3図のように、ステップS103の処理によって欠陥と判定された画素が連結した領域を欠陥領域として抽出することができる。
異物付着のような暗欠陥の暗欠陥判定しきい値をα、メッシュの抜けのような明欠陥の明欠陥しきい値をβとする場合、判定対象となる画素を中心に、例えば周囲255×255画素の輝度平均値を算出し、判定対象となる画素の輝度が輝度平均値−αより小さい場合は暗欠陥、判定対象となる画素の輝度が輝度平均値+βより大きい場合は明欠陥と判定する。
メッシュの画像の輝度は、エッチングや印刷のムラによるメッシュ幅の太さの変化(メッシュ幅の太さが変化すること自体は欠陥ではない。)などに影響され、必ずしも一定ではない。これは、メッシュ幅の太さが変化すると、全体としてメッシュシートを透過する光量も変化するためである。そこで、欠陥と判定する輝度のしきい値を全ての画素に対して常に固定とするのではなく、判定対象となる画素の周辺画素の輝度に合わせて、暗欠陥、明欠陥のしきい値を変化させ判定を行うことにより、エッチングや印刷のムラによるメッシュ幅の太さの変化などに影響されず、より正確に欠陥を判定できる。
暗欠陥としては、例えば、ゴムなどの異物が検出できる。また、明欠陥としては、例えば、メッシュの抜けが検出できる。
【0034】
メッシュ検査装置1の処理部3は、図8に示すように、平滑化後の画像において抽出した欠陥の重心座標を算出し、平滑化前の画像において、算出した重心座標を中心に、例えば128×128画素をトリミングする(ステップS104)。図8の下図に示すように、トリミングされた欠陥画像は、メッシュと欠陥の両方が含まれたものとなる。
図8の左上図に示すように、欠陥は1つの画像に対して複数存在する場合もある。このような場合を考慮し、処理部3は、ステップS103にて欠陥と判定された画素が連結している範囲を1つの欠陥領域とし、欠陥領域ごとの重心座標を算出する。そして、処理部3は、図8の右上図に示すように、欠陥領域ごとの重心座標を中心として所定の範囲をそれぞれトリミングする。所定の範囲は、必ず欠陥領域を全て含むようにすることが望ましい。
また、トリミングする画素数は、この後でFFT処理を行う原理上、2のべき乗となる数値を使用することが望ましい。
ステップS103において、平滑化後の画像を用いて欠陥を抽出することで、欠陥の検出を正確に行うことができる。そして、ステップS104において、平滑化前の画像の一部をトリミングして後述の処理に使用することで、平滑化されていない正確な輝度情報を利用し、欠陥の輝度、形状、面積の判定を行うことができる。
【0035】
メッシュ検査装置1の処理部3は、トリミングした画像からメッシュシート10のメッシュ周波数を除去する(ステップS105)。メッシュ周波数とは、メッシュに相当する空間周波数のことであり、FFT画像において特定の領域に現れる。
図5は、メッシュ周波数除去の処理の詳細を示す。
メッシュ検査装置1の処理部3は、トリミングした画像にFFT処理を施し、図9に示すようなFFT画像(スペクトル画像)を得る(ステップS201)。
図9に示すFFT画像では、画像の中心部分が、解析対象となる欠陥の空間周波数に相当する領域(画像の直流成分に相当する領域)である。画像の中心部分を除く、その他の明るい領域が、メッシュ周波数に相当する領域である。図9では、画像中心で直交する2本の仮想直線を考えると、この2本の仮想直線上に所定の間隔でメッシュ周波数に相当する領域が存在する。このメッシュ周波数に相当する領域は、メッシュの形状、間隔、メッシュ幅によって位置が変わる。
【0036】
メッシュ検査装置1の処理部3は、FFT画像のパワースペクトルを算出し(ステップS202)、メッシュの周波数を探索するための探索領域を設定し(ステップS203)、探索領域からメッシュの周波数を抽出する(ステップS204)。
図10に示すように、FFT画像の画像中心を中心点とした一定半径r1の円の外側をメッシュの周波数を探索するための探索領域として設定する。そして、探索領域において、所定のしきい値より輝度値が大きい(明るい)画素を探索する。探索した画素を中心点とした一定半径r2の円の内側の領域を、メッシュ周波数に相当する領域として抽出する。
【0037】
メッシュ検査装置1の処理部3は、図11に示すようにFFT画像において抽出したメッシュ周波数に相当する領域に含まれる画素の輝度値を0とすることにより、メッシュ周波数を除去し(ステップS205)、メッシュ周波数を除去したFFT画像に対してIFFT処理を施し、トリミングした画像からメッシュ周波数を除去した画像を得る(ステップS206)。
尚、探索した画素を中心点とした一定半径r2の円の内側の領域に含まれる画素の輝度値を0とすることに代えて、探索領域において、所定のしきい値より輝度値が大きい画素に対して、輝度値を0とする処理を行うようにしても良い。
いずれの方法であっても、エッチングや印刷のムラによるメッシュの形状、間隔、メッシュ幅の変化に影響されずに、メッシュ周波数に相当する領域を正確に判定することができる。
【0038】
メッシュ検査装置1の処理部3は、トリミングした画像からメッシュ周波数を除去した後、欠陥の輝度、形状、面積の判定を行い(ステップS106)、結果を出力する(ステップS107)。
欠陥の判定では、輝度が低い場合、即ち欠陥が黒い場合は異物付着と判定し、更に欠陥の面積、欠陥の形状が点かあるいは線か等を判定することにより、欠陥の原因を特定することが可能となる。欠陥の輝度が高い場合、即ち白い場合、欠陥はメッシュの抜けであると判定できる。
例えば、図11の左側のIFFT後画像は、線状の異物が付着していると考えられる。また、図11の右側のIFFT後画像は、楕円の形状をした黒の領域を囲むように、更に大きい楕円の形状をした領域が存在することが分かる。これは、製造工程において気泡が発生した重大な欠陥があると考えられる。
【0039】
以上説明したように、本発明の実施の形態では、欠陥をぼかすことなくメッシュを消すため、メッシュシートの欠陥の輝度、形状、面積が判定可能なメッシュ検査装置等を提供することができる。特に、欠陥の輝度情報をなくすことなく欠陥を検出することで、製造工程において発生した気泡なども検出することができる。
【0040】
入力画像を平滑化して欠陥を抽出する際、判定対象となる画素の周辺の輝度平均値に合わせて欠陥を抽出するしきい値を変化させることにより、メッシュシート製造時のエッチングや印刷のムラによるメッシュ幅の太さの変化に影響されることなくメッシュ検査を行うことが可能となる。
【0041】
また、メッシュシートのメッシュのピッチや方向が変わると、入力画像から欠陥をトリミングした画像にFFT処理を施した画像において、メッシュの空間周波数に相当する領域が変化するが、パワースペクトルを算出してメッシュ周波数探索領域内でしきい値を用いてメッシュ周波数を自動抽出することにより、メッシュのピッチや方向が変わることによる設定の変更が不要となる。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係るメッシュ検査装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0043】
1………メッシュ検査装置
3………処理部
5………ラインセンサ
7………白色LEDライン照明
9………信号灯
10………メッシュシート
11………ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインセンサと照明により得られる画像から、メッシュシートの検査を行うメッシュ検査装置であって、
メッシュシートの入力画像を得る画像入力手段と、
前記入力画像を平滑化して平滑化画像を得る平滑化手段と、
前記平滑化画像から第1のしきい値により欠陥を抽出し、欠陥の重心座標を得る欠陥抽出手段と、
前記入力画像から前記欠陥の重心座標を中心とした所定の範囲のトリミング画像を得るトリミング手段と、
前記トリミング画像にFFT処理を施し、FFT画像を得るFFT手段と、
前記FFT画像からメッシュ周波数を抽出するメッシュ周波数抽出手段と、
前記抽出したメッシュ周波数を前記FFT画像から除去するメッシュ周波数除去手段と、
前記メッシュ周波数を除去したFFT画像にIFFT処理を施し、欠陥画像を得るIFFT手段と、
を具備することを特徴とするメッシュ検査装置。
【請求項2】
前記欠陥画像の輝度、形状、面積の少なくともいずれか1つを用いて欠陥の原因を特定する欠陥原因特定手段、
を更に具備することを特徴とする請求項1に記載のメッシュ検査装置。
【請求項3】
前記欠陥抽出手段は、前記平滑化画像内の判定対象となる画素の周囲の輝度平均値の変化に応じて、前記第1のしきい値を変化させることを特徴とする請求項1記載のメッシュ検査装置。
【請求項4】
前記メッシュ周波数抽出手段は、前記FFT画像の直流成分に相当する領域を除外した領域をメッシュ周波数探索領域に設定し、前記メッシュ周波数探索領域において第2のしきい値より高い輝度を有する領域をメッシュ周波数として抽出することを特徴とする請求項1記載のメッシュ検査装置。
【請求項5】
前記メッシュ周波数除去手段は、前記抽出したメッシュ周波数の輝度を0に置き換えることを特徴とする請求項1記載のメッシュ検査装置。
【請求項6】
ラインセンサと照明により得られる画像から、メッシュシートの検査を行うメッシュ検査装置で行うメッシュ検査方法であって、
メッシュシートの入力画像を得る画像入力工程と、
前記入力画像を平滑化して平滑化画像を得る平滑化工程と、
前記平滑化画像から第1のしきい値により欠陥を抽出し、欠陥の重心座標を得る欠陥抽出工程と、
前記入力画像から前記欠陥の重心座標を中心とした所定の範囲のトリミング画像を得るトリミング工程と、
前記トリミング画像にFFT処理を施し、FFT画像を得るFFT工程と、
前記FFT画像からメッシュ周波数を抽出するメッシュ周波数抽出工程と、
前記抽出したメッシュ周波数を前記FFT画像から除去するメッシュ周波数除去工程と、
前記メッシュ周波数を除去したFFT画像にIFFT処理を施し、欠陥画像を得るIFFT工程と、
を具備することを特徴とするメッシュ検査方法。
【請求項7】
前記欠陥画像の輝度、形状、面積の少なくともいずれか1つを用いて欠陥の原因を特定する欠陥原因特定工程、
を更に具備することを特徴とする請求項6に記載のメッシュ検査方法。
【請求項8】
前記欠陥抽出工程は、前記平滑化画像内の判定対象となる画素の周囲の輝度平均値の変化に応じて、前記第1のしきい値を変化させることを特徴とする請求項6記載のメッシュ検査方法。
【請求項9】
前記メッシュ周波数抽出工程は、前記FFT画像の直流成分に相当する領域を除外した領域をメッシュ周波数探索領域に設定し、前記メッシュ周波数探索領域において第2のしきい値より高い輝度を有する領域をメッシュ周波数として抽出することを特徴とする請求項6記載のメッシュ検査方法。
【請求項10】
前記メッシュ周波数除去工程は、前記抽出したメッシュ周波数の輝度を0に置き換えることを特徴とする請求項6記載のメッシュ検査方法。
【請求項11】
コンピュータを請求項1から請求項5のいずれかに記載のメッシュ検査装置として機能させるプログラム。
【請求項12】
コンピュータを請求項1から請求項5のいずれかに記載のメッシュ検査装置として機能させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−53044(P2011−53044A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201319(P2009−201319)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】