モータ制御装置およびハイブリッド自動車用制御装置
【課題】交流モータをインバータで駆動するモータ制御装置において、PWM駆動から矩形波駆動への切り替え時のトルク脈動を低減できるモータ制御装置およびハイブリッド自動車用制御装置を提供することにある。
【解決手段】モータコントロールユニット100は、インバータ8にPWM信号を入力して交流モータ4をPWM駆動するPWM駆動モードと、インバータ8に矩形波信号を入力して交流モータ4を矩形波駆動する矩形波駆動モードとを有する。駆動パルス切替部140は、PWM駆動モードから矩形波駆動モードに切り替える際には、PWM駆動時のハイレベルのパルス若しくはローレベルのパルスの最大幅パルスの範囲内で切替える。
【解決手段】モータコントロールユニット100は、インバータ8にPWM信号を入力して交流モータ4をPWM駆動するPWM駆動モードと、インバータ8に矩形波信号を入力して交流モータ4を矩形波駆動する矩形波駆動モードとを有する。駆動パルス切替部140は、PWM駆動モードから矩形波駆動モードに切り替える際には、PWM駆動時のハイレベルのパルス若しくはローレベルのパルスの最大幅パルスの範囲内で切替える。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
近年、モータを動力源として走行する自動車が増加している。電気自動車やハイブリッド車に代表される環境対応自動車である。これら環境対応自動車の主な特徴はバッテリを搭載し、その電力を利用してモータからトルクを発生させ、タイヤを駆動することが挙げられる。主にこの駆動用モータには永久磁石同期モータなどの交流モータが用いられ、パワートレインの小型化が進められている。さらに、バッテリの直流電力を交流モータに供給するためにインバータ(電力変換器)が用いられ、バッテリからの直流電力を交流電力に変換する。このインバータの制御により駆動用の交流モータは可変速制御が可能となる。
【0002】
このようなハイブリッド車に用いられているモータ制御装置では、従来からモータに印加する交流正弦波電圧をPWM信号に変換する正弦波PWM駆動方式が用いられてきた。しかしながら、正弦波PWM駆動方式はインバータの電圧利用率に限界があり、モータの高速域において、よりハイパワーな駆動ができない。そこで、最近ではモータの高速域において、PWM駆動は実施せず、電圧指令の正負符号に応じて電圧のパルスをON/OFFするだけの矩形波駆動(1パルス駆動)が用いられるようになってきている。
【0003】
この矩形波駆動ではPWM変換は実施せず、印加するべき交流電圧信号の正負符号に応じてパルスをON/OFFする波形であるため、インバータの出力しうる最大の電圧をモータに印加することができ、かつモータをより広動作範囲で駆動することが可能になる。
【0004】
以上のようにPWM駆動と矩形波駆動をモータの動作域に応じて使い分けるためには、PWM駆動から矩形波駆動への切り替えを実施する必要があるが、この切り替え時にトルク脈動が発生する。そこで、PWM駆動と矩形波駆動の中間に、モード切り替え前の正弦波から切り替え後の矩形波へ向けて電圧波形を連続的に変化させる過変調モードを挿入することで、交流電圧信号として振幅を徐々に切り替わり、切り替え時のトルク脈動を低減するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−285288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、矩形波駆動モードでは、モータ1周期のうちで6回、印加する電圧パルスパターンを変更することになる。このとき、特許文献1に記載のように、印加電圧ベクトルの振幅のみを連続に変化させながらPWM駆動から矩形波駆動への切り替え処理を実施した場合は、PWM駆動時の印加電圧ベクトルと矩形波駆動時の印加電圧ベクトルの間に位相差が発生し、それが結果的に電位差となり,切り替え時のトルク脈動となって現れる場合が生じるものである。
【0007】
本発明の目的は、交流モータをインバータで駆動するモータ制御装置において、PWM駆動から矩形波駆動への切り替え時のトルク脈動を低減できるモータ制御装置およびハイブリッド自動車用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、交流モータをインバータで駆動するモータ制御装置であって、前記インバータにPWM信号を入力して前記交流モータをPWM駆動するPWM駆動モードと、前記インバータに矩形波信号を入力して前記交流モータを矩形波駆動する矩形波駆動モードとを有し、前記PWM駆動モードから矩形波駆動モードに切り替える際には、前記PWM駆動時のハイレベルのパルス若しくはローレベルのパルスの最大幅パルスの範囲内で切替える駆動パルス切替部を備えるようにしたものである。
かかる構成により、交流モータをインバータで駆動するモータ制御装置において、PWM駆動から矩形波駆動への切り替え時のトルク脈動を低減できるものとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、交流モータをインバータで駆動するモータ制御装置において、PWM駆動から矩形波駆動への切り替え時のトルク脈動を低減できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1〜図14を用いて、本発明の一実施形態によるモータ制御装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態によるモータ制御装置を搭載した交流モータを用いたハイブリッド自動車の構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置を搭載した交流モータを用いたハイブリッド自動車の構成を示すブロック図である。
【0011】
ハイブリッド自動車1は、エンジン3と、交流モータ4を備えている。エンジン3の駆動力は、トランスミッション5とデファレンシャルギア10と車軸13を介して駆動輪2に伝達され、駆動輪2を駆動する。エンジン3の出力は、エンジンコントロールユニット15からの指令により駆動される電子制御スロットル6により制御される。電子制御スロットル6には、アクセル開度センサ7が設けられており、アクセル開度を検出する。交流モータ4の駆動力は、デファレンシャルギヤ10および車軸13を介して駆動輪2に伝達され、駆動輪2を駆動する。
【0012】
交流モータ4は、モータ・ジェネレータである。交流モータ4は、電動機として動作する場合には、駆動力を出力する。また、交流モータ4は、エンジン3や駆動輪2によって駆動され、発電機として動作し、交流電力を出力する。
【0013】
インバータ8は、交流モータ4において所要の動力を任意に制御するために設けられている。インバータ8は、バッテリ9に蓄えられた直流電力を交流電力に変換し、交流モータ4に供給する。回生制動時や発電時には、交流モータ8が出力する交流電力を、インバータ8によって直流電力に変換し、バッテリ9に供給する。
【0014】
交流モータ4は、駆動輪2を駆動する場合には、バッテリ9に蓄えられた電力を用いてモータ駆動される。また、駆動輪2によって回生制動をおこなう場合には、交流モータ4によって得られる回生電力を、バッテリ9に供給する。
【0015】
HEVコントローラ14は、エンジンコントローラ15やモータコントローラ100やバッテリコントローラ12と、CANなどの通信手段で繋がっており、車両情報や各部品の状態に基づき、交流モータ4へのトルク指令などを計算するような、HEVシステムとしての制御をおこなうコントローラである。
【0016】
バッテリコントローラ12は、バッテリ9の充電状態や電流制限値、電力制限値、温度、寿命などのパラメータを計算する。モータコントローラ100は、上位のHEVコントローラ14から得られた交流モータ4へのトルク指令値に基づいて、インバータ8を駆動する際に、バッテリ9の状態に応じてモータ制御方式を変更できるようにする。そのため、バッテリ9の状態を、HEVコントローラ14からCANを通して得るのではなく、バッテリコントローラ12から直接得ることで、応答速度を上げることができる。また、バッテリコントローラ12とモータコントローラ100の処理については、統合することによっても実現可能である。
【0017】
本実施形態における交流モータ4は、モータ・ジェネレータとして用いられるため、ジェネレータとして動作している状態において、バッテリの寿命を考慮して、バッテリに大電流が流れ込むような充電は避けるように、交流モータ4を制御する。
【0018】
次に、図2を用いて、本実施形態によるモータ制御装置を用いたモータ駆動システムの構成について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置を用いたモータ駆動システムの構成を示すブロック図である。
【0019】
バッテリ5の出力端子は、インバータ8の入力端子に接続される。インバータ2は、複数のパワースイッチング素子がブリッジ接続された電力変換部8Aと、平滑コンデンサ8B等から構成されるPWMインバータである。インバータ2は、バッテリ5の直流電圧Vdcを交流電圧に変換し、交流モータ4に印加する。また、交流モータ4が発電機として動作するときは、発電機の出力は直流電圧に変換され、バッテリ5に蓄電される。
【0020】
モータコントローラ100は、外部の制御装置から入力するモータトルク指令Tm*に応じて、インバータ8からモータ4に印加する交流電圧を決定し、インバータ8に対して電圧指令(電圧パルス)を出力する。なお、モータコントローラ100には、交流モータ4の回転子磁極位置θや、回転数ωmが入力する。
【0021】
次に、図3を用いて、本実施形態によるモータ制御装置の構成について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【0022】
モータコントローラ100は、トルク制御部110と、電流制御部120と、電圧指令位相演算部130と、駆動パルス切替部140とを備えている。
【0023】
トルク制御部110は、入力したトルク指令Tm*に応じたd軸及びq軸のモータ電流指令Id*,Iq*を算出し、電流制御部120及び電圧指令位相演算部130に出力する。
【0024】
電流制御部120は、交流モータ4をPWM駆動するための電圧指令を算出するものである。電流制御部120は、入力したd軸及びq軸のモータ電流指令Id*,Iq*に対応する軸及びq軸のモータ電圧指令Vd*,Vq*を、駆動パルス切替部140に出力する。
【0025】
駆動パルス切替部140は、入力したモータ電圧指令Vd*,Vq*に基づいて、モータ駆動信号としてPWM信号を出力する。
【0026】
ここで、図4を用いて、本実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部140が出力するPWM信号について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部が出力するPWM信号の説明図である。
【0027】
図4(A)は、駆動パルス切替部140内で演算されるPWMの搬送波(キャリア)Caと、電流制御部120が出力するモータ電圧指令Vd*,Vq*に基づいて生成されるモータ電圧指令(変調波)V*の1相の1周期分を示している。
【0028】
図4(B)に示すように、PWM信号は、PWMの搬送波(キャリアCa)とモータ電圧指令(変調波)V*の大小比較から生成され、電圧指令の振幅はPWMのパルス幅に変換される。図2に示したインバータ8のパワースイッチング素子ブリッジ8Aは、このPWM信号に基づいてスイッチングされる。
【0029】
従来から行われているPWM駆動は、上記に記した方法により実施されるため、実際に交流モータ1に印加される交流電圧の大きさは、基本波の最大値が直流電圧の約半分程度(Vdc/2)となる。さらに、インバータの出力電圧の利用率を向上するために基本波の3倍調波を重畳する電圧利用率向上策を追加した場合でもその基本波振幅を15%程度向上するものである。
【0030】
このようなPWM駆動においては、モータに対して交流電圧を指令値に沿って高精度に印加することができる反面、出力電圧が所定範囲に制限される点や、キャリアの周波数が数kHzから10数kHz程度になるためにインバータのスイッチング損失が発生する点が欠点として挙げられる。
【0031】
再び、図3において、電圧指令位相演算部130は、入力したモータ電圧指令Vd*,Vq*に基づいて、モータを矩形波駆動するための電圧指令を算出する。矩形波駆動は、振幅が最大値(Vdc)で固定されるため、電圧指令はモータの電圧ベクトル位相θvのみの指令となり、以下のような演算方法でモータの電圧ベクトル位相θvの演算を行う。
【0032】
まず、現在の電圧指令の磁極位置に対する位相θvdqは、以下の式(1)により求められる。
θvdq = tan−1(Vq/Vd) …(1)
ここで、Vd、Vqは回転座標d−q座標でのモータ電圧であり、この値はモータ電流指令Id*,Iq*、モータ回転数ωm、モータのインダクタンス、モータの巻き線抵抗、モータに用いる磁石の磁束等により算出可能である。さらに、ハイブリッド自動車などのモータ制御装置では、レゾルバ等の位置センサ、あるいはセンサレスなどによりモータの磁極位置(回転子位置)θはほぼ正確に検出可能である。
【0033】
以上より、モータの電圧ベクトルVの交流固定座標に対する位相θvは、式(2)によって表される。
θv=θ+θvdq …(2)
電圧指令位相演算部130は、式(2)の演算により、電圧ベクトル位相θvを算出する。
【0034】
ここで、図5を用いて、本実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部140が出力する矩形波信号について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部が出力する矩形波信号の説明図である。
【0035】
PWM駆動における、出力電圧が所定範囲に制限される点や、インバータのスイッチング損失が発生する点を補う方式として、近年ハイブリッド自動車等のモータ制御装置に適用されている駆動方式が矩形波駆動方式である。
【0036】
図5は、矩形波駆動におけるインバータへの出力信号(モータ駆動信号)を示している。図5に示すように、矩形波駆動時の電圧パルスは、モータ周波数相当となり、PWM駆動時のキャリア周波数とは異なる。モータの交流電圧指令が正符号であればハイレベルパルス、負符号であればローレベルパルスを出力する。ここで説明する矩形波駆動では、モータ半周期分はスイッチング無しの1パルスとなるため、インバータから出力しうる最大の電圧となる。しかも、スイッチングはモータ1周期あたり2回/1相であるため、ほとんどインバータのスイッチング損失は発生しないといえる。
【0037】
なお、PWM駆動から矩形波駆動への切り替え時以外の通常駆動においては、駆動パルス切替部140は、PWM駆動時には電流制御部120の出力であるモータ電圧指令を用い、矩形波駆動時には電圧指令位相演算部130の出力であるモータ電圧位相θvが用いられる。
【0038】
ここで、図6及び図7を用いて、本実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動について説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動時のモータの駆動特性の説明図である。図7は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動時のパルスパターンの説明図である。
【0039】
矩形波駆動では、インバータの出力電圧を最大限に、かつモータを高効率に駆動できるため、モータの動作範囲は、図6に示すように、PWM駆動に対しておおよそ20〜30%程度拡大することができる。
【0040】
図7は、U−V−Wの3相交流固定座標における矩形波駆動のパルスパターンを、図5に示した電圧パルスに照らし合わせて示したものである。図7に示す固定座標では、U相方向を基準の0°として、120°の位置にV相、240°の位置にW相が位置しており、各120°間隔となっている。このような固定座標で矩形波駆動のパルスパターンを表すと、図7に示す6つの区間で切り替わり、その各相のパルスパターンは図5に示す6つのパターン(3相のパルスの組み合わせ)である。それぞれのパルスの切り替わる位相は、図7に示すように3相交流固定座標30°、90°、150°、210°、270°、330°である。
【0041】
しかしながら、矩形波駆動にも不利な点は存在する。それはモータの1周期間に6回しか電圧パターンを更新できない点である。PWM駆動に対して電圧更新回数が少ないことから、モータ制御系として速度変動などの外乱に影響を受けやすいことになる。さらには,電圧パターン更新回数はモータ周波数に依存しているため、モータが低速回転しているときは非常に長い期間同一のパルスパターンをモータに印加することになる。これはトルクの脈動となって弊害が現れるほか、より極低速域ではモータに流れる電流が過電流レベルまで容易に達する可能性がある。
【0042】
このような理由により、矩形波駆動は低速域には適用されないため、通常ハイブリッド車用モータ制御装置などでは、停止を含む低速域においてはPWM駆動を、中高速域では矩形波駆動を使い分ける技術が採用されている。この使い分けに関しては,一般にモータの動作点に基づいて切り替えを実施しているのが主である。
【0043】
ここで、図8及び図9を用いて、本実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動の使い分けについて説明する。
図8は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動の使い分けの第1の例の説明図である。図9は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動の使い分けの第2の例の説明図である。
【0044】
図8は、バッテリを主電源として駆動される装置におけるPWM駆動と矩形波駆動の使い分け領域の例を示している。この例では、中高速のある程度高トルク領域で矩形波駆動が適用されている。
【0045】
また、図9は、直流電圧をDCDCコンバータなどにより可変できる装置におけるPWM駆動と矩形波駆動の使い分け領域の例を示している。この例では、モータ速度のみにより切り替えを実施することも可能である。
【0046】
以上のように、PWM駆動と矩形波駆動を切り替える場合、PWM駆動時の電圧ベクトルは高周波スイッチングの効果により高精度に制御されている。その反面、インバータからの出力電圧の大きさが制限されている。このPWM駆動の状態からインバータの最大電圧に出力可能な矩形波駆動に切り替えた場合、印加電圧ベクトルの大きさの急増や、印加電圧ベクトルの位相急変などが考えられ、結果として切り替え時にトルク脈動が発生することが考えられる。
【0047】
従来では,PWM駆動から矩形波駆動に切り替える際にはPWM駆動時の正弦波信号の振幅を大きくしていき,過変調領域を間に介して切り替えを行うものが知られている。理想的には、このような振幅を連続的に変化させる方式で切り替え可能であるが、実際には矩形波駆動の1/6周期間は電圧ベクトル位相が固定である点や、パルスを演算・出力するマイコン等の演算装置の動作モードによりPWM駆動時の電圧指令の更新タイミングと、矩形波駆動の電圧指令の更新タイミングがずれる点などから、切り替え時にはまだトルク脈動が発生する可能性がある。
【0048】
次に、図10〜図13を用いて、本実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動の切替原理について説明する。
図10は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動での電圧ベクトルの差電圧の説明図である。図11は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動での電圧ベクトルの差電圧が最小となる位相を、3相交流固定座標で表した説明図である。図12は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動での電圧ベクトルの差電圧が最小となる位相方向の説明図である。図13は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動からPWM駆動にU相電圧のピーク付近でに切り替えた場合、実際のパルス波形の説明図である。
【0049】
本発明は,上記のようにPWM駆動と矩形波駆動を切り替える際に発生するモータのトルク脈動を更に低減するようにしている。本発明では、従来考慮されていなかった、切り替え時点の位相に着目している。PWM駆動での電圧ベクトルと矩形波駆動での電圧ベクトルとの間の電圧差は3相交流の位相により一定ではなく、常に変化している。
【0050】
図10は、PWM駆動での電圧ベクトルと矩形波駆動での電圧ベクトルとの間の電圧差を示している。図10の横軸は、モータ電圧ベクトル位相を示している。図10(A)は、交流モータ4のU相コイルとV相コイルの線間の電圧差を示している。図10(B)は、交流モータ4のV相コイルとW相コイルの線間の電圧差を示している。図10(C)は、交流モータ4のW相コイルとU相コイルの線間の電圧差を示している。図10(D)は、交流モータ4の各相の線間の電圧差の最大値を示している。
【0051】
図10(D)に示すように、モータ1周期の間に電圧差は常に変化しており、電圧差が最大値と最小値を繰り返す特性となっている。よって、この電圧差が最小となる位相時に切り替えを実施すると最もトルク脈動を小さくできるといえる。図10(D)に示す電圧差が最小(図中の黒丸)となる位相は、モータ1周期に6箇所ある。
【0052】
図11は、電圧差が最小となる位相を、3相交流固定座標で表したものである。図11のV1,…,V6の矢印で示した方向が、図10に示したPWM駆動での電圧ベクトルと矩形波駆動での電圧ベクトルとの間の電圧差が最小値となる方向である。
【0053】
そこで、図11に示すように,モータの電圧ベクトルが図11中の位相V1,V2,V3,V4,V5,V6のいずれかに来た時に切り替え処理を実施することで、PWM駆動と矩形波駆動の切替時のトルク脈動を小さくできる。例えば、図11は、モータ電圧ベクトルが240°方向に一致したときを表している。
【0054】
図12は、PWM駆動での電圧ベクトルと矩形波駆動での電圧ベクトルとの間の電圧差の最小値方向である各位相方向V1,V2,V3,V4,V5,V6は時間軸での波形で表したものである。図12(A)はU相電圧Vuを示し、図12(B)はV 相電圧Vvを示し、図12(C)はW相電圧Vwを示している。図12において、黒丸で示した時点が、電圧差の最小値方向である各位相方向である。すなわち,この6つの位相方向は,各相電圧のピーク方向に相当する。
【0055】
図13(A),(B),(C)は、U相電圧のピーク付近でPWM駆動から矩形波駆動に切り替えた場合、実際のパルス波形を示している。図13(A)では、例えばU相の交流電圧指令Vu*がピーク付近に来た時に切り替えを実施した場合のパルス波形例である。図13(A)を見てわかるように、矩形波に切り替える地点のPWM信号は、U相電圧指令に基づいて切り替える場合には、U相のPWMパルス幅がもっとも大きくなる付近の位相である。
【0056】
また、図13(A)では、U相電圧のピーク付近でPWM駆動から矩形波駆動に切り替えているが、図12(A)に示したように、U相電圧の最小値付近でPWM駆動から矩形波駆動に切り替えてもよいものである。このときは、矩形波に切り替える地点のPWM信号は、U相電圧指令に基づいて切り替える場合には、U相のPWMのローレベルのパルス幅がもっとも大きくなる付近の位相となる。
【0057】
また、図12(A)で示したように、V相電圧のピーク付近や、V相電圧の最小値付近で切り替えることもできるし、W相電圧のピーク付近や、W相電圧の最小値付近で切り替えることもできる
すなわち、本実施形態では、各相電圧のピーク付近や、各相電圧の最小値付近で切り替えることで、トルク脈動を低減できる。また、このことは、各相電圧のハイレベルのパルス幅が最も大きくなる付近や、各相電圧のローレベルのパルス幅が最も大きくなる付近で切り替えることで、トルク脈動を低減できることをも意味するものである。
【0058】
次に、図14を用いて、本実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部140における駆動パルス切替処理の内容について説明する。
図14は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部における駆動パルス切替処理の内容を示すフローチャートである。
【0059】
ステップS100において、駆動パルス切替部140は、モータ動作点の推移等の切り替え条件により、PWM駆動から矩形波駆動への切り替えの必要性の可否を判定する。
【0060】
その切り替え指示が与えられた場合、ステップS101において、駆動パルス切替部140は、現在の電圧ベクトルVが次に到達する切り替え位相θc(図14のV1〜V6のいずれか。図14ではV5。)を演算する。
【0061】
次に、ステップS102において、駆動パルス切替部140は、先に求めたモータ電圧ベクトル位相θvとの位相差Δθvを、(θc−θv)として演算する。ここで、駆動パルス切替部140は、交流モータ4の磁極位置θに加え、交流モータ4の回転数ωm[rad/sec]も演算している。よって、位相差Δθvは、式(3)によって表される。
Δθv=ωm×Tv …(3)
但し、Tvは時間[sec]、ωmはモータ回転数[rad/sec]を表す。
【0062】
式(3)より、現在のモータ電圧ベクトルがΔθvだけ動く時間Tvは、式(4)によって算出できる。
Tv=Δθv/ωm …(4)
式(4)に示すように、モータ電圧ベクトルがΔθvだけ動く時間Tv[sec]が求められれば、図1に示す最適切り替え位相(V1〜V6のいずれか)での切り替えが可能となる。
【0063】
そこで、ステップS103において、駆動パルス切替部140は、モータ電圧ベクトルVがΔθvだけ動く時間Tv[sec]を算出する。
【0064】
次に、ステップS104において、駆動パルス切替部140は、時間Tvを駆動パルス切替部140内でカウントし、Tv経過後に割り込み処理を発生させる。
【0065】
この割り込み処理発生時点が切り替え最適位相に相当しているので、ステップS105において、駆動パルス切替部140は、このタイミングでPWM駆動から矩形波駆動への切り替えを実施する。
【0066】
以上のような処理を行うことにより、マイコン等から構成される制御装置でトルク脈動が最小となる切り替え処理を実行することができる。
【0067】
なお,本方式は,矩形波駆動を積極的に適用しているハイブリッド自動車のモータ制御装置に好適である。PWM駆動から矩形波駆動への切り替え時に発生するトルク脈動は乗り心地を阻害するばかりでなく,装置のフェールを誘発してしまう可能性があるため,トルクの脈動を最小限にしながら切り替える必要があるためである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置を搭載した交流モータを用いたハイブリッド自動車の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置を用いたモータ駆動システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部が出力するPWM信号の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部が出力する矩形波信号の説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動時のモータの駆動特性の説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動時のパルスパターンの説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動の使い分けの第1の例の説明図である。
【図9】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動の使い分けの第2の例の説明図である。
【図10】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動での電圧ベクトルの差電圧の説明図である。
【図11】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動での電圧ベクトルの差電圧が最小となる位相を、3相交流固定座標で表した説明図である。
【図12】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動での電圧ベクトルの差電圧が最小となる位相方向の説明図である。
【図13】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動からPWM駆動にU相電圧のピーク付近でに切り替えた場合、実際のパルス波形の説明図である。
【図14】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部における駆動パルス切替処理の内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
3…エンジン
4…交流モータ
8…インバータ
8A…パワースイッチング素子ブリッジ
9…バッテリ
100…モータコントロールユニット
110…トルク制御部
120…電流制御部
130…電圧指令位相演算部
140…駆動パルス切り替え部
【背景技術】
【0001】
近年、モータを動力源として走行する自動車が増加している。電気自動車やハイブリッド車に代表される環境対応自動車である。これら環境対応自動車の主な特徴はバッテリを搭載し、その電力を利用してモータからトルクを発生させ、タイヤを駆動することが挙げられる。主にこの駆動用モータには永久磁石同期モータなどの交流モータが用いられ、パワートレインの小型化が進められている。さらに、バッテリの直流電力を交流モータに供給するためにインバータ(電力変換器)が用いられ、バッテリからの直流電力を交流電力に変換する。このインバータの制御により駆動用の交流モータは可変速制御が可能となる。
【0002】
このようなハイブリッド車に用いられているモータ制御装置では、従来からモータに印加する交流正弦波電圧をPWM信号に変換する正弦波PWM駆動方式が用いられてきた。しかしながら、正弦波PWM駆動方式はインバータの電圧利用率に限界があり、モータの高速域において、よりハイパワーな駆動ができない。そこで、最近ではモータの高速域において、PWM駆動は実施せず、電圧指令の正負符号に応じて電圧のパルスをON/OFFするだけの矩形波駆動(1パルス駆動)が用いられるようになってきている。
【0003】
この矩形波駆動ではPWM変換は実施せず、印加するべき交流電圧信号の正負符号に応じてパルスをON/OFFする波形であるため、インバータの出力しうる最大の電圧をモータに印加することができ、かつモータをより広動作範囲で駆動することが可能になる。
【0004】
以上のようにPWM駆動と矩形波駆動をモータの動作域に応じて使い分けるためには、PWM駆動から矩形波駆動への切り替えを実施する必要があるが、この切り替え時にトルク脈動が発生する。そこで、PWM駆動と矩形波駆動の中間に、モード切り替え前の正弦波から切り替え後の矩形波へ向けて電圧波形を連続的に変化させる過変調モードを挿入することで、交流電圧信号として振幅を徐々に切り替わり、切り替え時のトルク脈動を低減するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−285288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、矩形波駆動モードでは、モータ1周期のうちで6回、印加する電圧パルスパターンを変更することになる。このとき、特許文献1に記載のように、印加電圧ベクトルの振幅のみを連続に変化させながらPWM駆動から矩形波駆動への切り替え処理を実施した場合は、PWM駆動時の印加電圧ベクトルと矩形波駆動時の印加電圧ベクトルの間に位相差が発生し、それが結果的に電位差となり,切り替え時のトルク脈動となって現れる場合が生じるものである。
【0007】
本発明の目的は、交流モータをインバータで駆動するモータ制御装置において、PWM駆動から矩形波駆動への切り替え時のトルク脈動を低減できるモータ制御装置およびハイブリッド自動車用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、交流モータをインバータで駆動するモータ制御装置であって、前記インバータにPWM信号を入力して前記交流モータをPWM駆動するPWM駆動モードと、前記インバータに矩形波信号を入力して前記交流モータを矩形波駆動する矩形波駆動モードとを有し、前記PWM駆動モードから矩形波駆動モードに切り替える際には、前記PWM駆動時のハイレベルのパルス若しくはローレベルのパルスの最大幅パルスの範囲内で切替える駆動パルス切替部を備えるようにしたものである。
かかる構成により、交流モータをインバータで駆動するモータ制御装置において、PWM駆動から矩形波駆動への切り替え時のトルク脈動を低減できるものとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、交流モータをインバータで駆動するモータ制御装置において、PWM駆動から矩形波駆動への切り替え時のトルク脈動を低減できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1〜図14を用いて、本発明の一実施形態によるモータ制御装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態によるモータ制御装置を搭載した交流モータを用いたハイブリッド自動車の構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置を搭載した交流モータを用いたハイブリッド自動車の構成を示すブロック図である。
【0011】
ハイブリッド自動車1は、エンジン3と、交流モータ4を備えている。エンジン3の駆動力は、トランスミッション5とデファレンシャルギア10と車軸13を介して駆動輪2に伝達され、駆動輪2を駆動する。エンジン3の出力は、エンジンコントロールユニット15からの指令により駆動される電子制御スロットル6により制御される。電子制御スロットル6には、アクセル開度センサ7が設けられており、アクセル開度を検出する。交流モータ4の駆動力は、デファレンシャルギヤ10および車軸13を介して駆動輪2に伝達され、駆動輪2を駆動する。
【0012】
交流モータ4は、モータ・ジェネレータである。交流モータ4は、電動機として動作する場合には、駆動力を出力する。また、交流モータ4は、エンジン3や駆動輪2によって駆動され、発電機として動作し、交流電力を出力する。
【0013】
インバータ8は、交流モータ4において所要の動力を任意に制御するために設けられている。インバータ8は、バッテリ9に蓄えられた直流電力を交流電力に変換し、交流モータ4に供給する。回生制動時や発電時には、交流モータ8が出力する交流電力を、インバータ8によって直流電力に変換し、バッテリ9に供給する。
【0014】
交流モータ4は、駆動輪2を駆動する場合には、バッテリ9に蓄えられた電力を用いてモータ駆動される。また、駆動輪2によって回生制動をおこなう場合には、交流モータ4によって得られる回生電力を、バッテリ9に供給する。
【0015】
HEVコントローラ14は、エンジンコントローラ15やモータコントローラ100やバッテリコントローラ12と、CANなどの通信手段で繋がっており、車両情報や各部品の状態に基づき、交流モータ4へのトルク指令などを計算するような、HEVシステムとしての制御をおこなうコントローラである。
【0016】
バッテリコントローラ12は、バッテリ9の充電状態や電流制限値、電力制限値、温度、寿命などのパラメータを計算する。モータコントローラ100は、上位のHEVコントローラ14から得られた交流モータ4へのトルク指令値に基づいて、インバータ8を駆動する際に、バッテリ9の状態に応じてモータ制御方式を変更できるようにする。そのため、バッテリ9の状態を、HEVコントローラ14からCANを通して得るのではなく、バッテリコントローラ12から直接得ることで、応答速度を上げることができる。また、バッテリコントローラ12とモータコントローラ100の処理については、統合することによっても実現可能である。
【0017】
本実施形態における交流モータ4は、モータ・ジェネレータとして用いられるため、ジェネレータとして動作している状態において、バッテリの寿命を考慮して、バッテリに大電流が流れ込むような充電は避けるように、交流モータ4を制御する。
【0018】
次に、図2を用いて、本実施形態によるモータ制御装置を用いたモータ駆動システムの構成について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置を用いたモータ駆動システムの構成を示すブロック図である。
【0019】
バッテリ5の出力端子は、インバータ8の入力端子に接続される。インバータ2は、複数のパワースイッチング素子がブリッジ接続された電力変換部8Aと、平滑コンデンサ8B等から構成されるPWMインバータである。インバータ2は、バッテリ5の直流電圧Vdcを交流電圧に変換し、交流モータ4に印加する。また、交流モータ4が発電機として動作するときは、発電機の出力は直流電圧に変換され、バッテリ5に蓄電される。
【0020】
モータコントローラ100は、外部の制御装置から入力するモータトルク指令Tm*に応じて、インバータ8からモータ4に印加する交流電圧を決定し、インバータ8に対して電圧指令(電圧パルス)を出力する。なお、モータコントローラ100には、交流モータ4の回転子磁極位置θや、回転数ωmが入力する。
【0021】
次に、図3を用いて、本実施形態によるモータ制御装置の構成について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【0022】
モータコントローラ100は、トルク制御部110と、電流制御部120と、電圧指令位相演算部130と、駆動パルス切替部140とを備えている。
【0023】
トルク制御部110は、入力したトルク指令Tm*に応じたd軸及びq軸のモータ電流指令Id*,Iq*を算出し、電流制御部120及び電圧指令位相演算部130に出力する。
【0024】
電流制御部120は、交流モータ4をPWM駆動するための電圧指令を算出するものである。電流制御部120は、入力したd軸及びq軸のモータ電流指令Id*,Iq*に対応する軸及びq軸のモータ電圧指令Vd*,Vq*を、駆動パルス切替部140に出力する。
【0025】
駆動パルス切替部140は、入力したモータ電圧指令Vd*,Vq*に基づいて、モータ駆動信号としてPWM信号を出力する。
【0026】
ここで、図4を用いて、本実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部140が出力するPWM信号について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部が出力するPWM信号の説明図である。
【0027】
図4(A)は、駆動パルス切替部140内で演算されるPWMの搬送波(キャリア)Caと、電流制御部120が出力するモータ電圧指令Vd*,Vq*に基づいて生成されるモータ電圧指令(変調波)V*の1相の1周期分を示している。
【0028】
図4(B)に示すように、PWM信号は、PWMの搬送波(キャリアCa)とモータ電圧指令(変調波)V*の大小比較から生成され、電圧指令の振幅はPWMのパルス幅に変換される。図2に示したインバータ8のパワースイッチング素子ブリッジ8Aは、このPWM信号に基づいてスイッチングされる。
【0029】
従来から行われているPWM駆動は、上記に記した方法により実施されるため、実際に交流モータ1に印加される交流電圧の大きさは、基本波の最大値が直流電圧の約半分程度(Vdc/2)となる。さらに、インバータの出力電圧の利用率を向上するために基本波の3倍調波を重畳する電圧利用率向上策を追加した場合でもその基本波振幅を15%程度向上するものである。
【0030】
このようなPWM駆動においては、モータに対して交流電圧を指令値に沿って高精度に印加することができる反面、出力電圧が所定範囲に制限される点や、キャリアの周波数が数kHzから10数kHz程度になるためにインバータのスイッチング損失が発生する点が欠点として挙げられる。
【0031】
再び、図3において、電圧指令位相演算部130は、入力したモータ電圧指令Vd*,Vq*に基づいて、モータを矩形波駆動するための電圧指令を算出する。矩形波駆動は、振幅が最大値(Vdc)で固定されるため、電圧指令はモータの電圧ベクトル位相θvのみの指令となり、以下のような演算方法でモータの電圧ベクトル位相θvの演算を行う。
【0032】
まず、現在の電圧指令の磁極位置に対する位相θvdqは、以下の式(1)により求められる。
θvdq = tan−1(Vq/Vd) …(1)
ここで、Vd、Vqは回転座標d−q座標でのモータ電圧であり、この値はモータ電流指令Id*,Iq*、モータ回転数ωm、モータのインダクタンス、モータの巻き線抵抗、モータに用いる磁石の磁束等により算出可能である。さらに、ハイブリッド自動車などのモータ制御装置では、レゾルバ等の位置センサ、あるいはセンサレスなどによりモータの磁極位置(回転子位置)θはほぼ正確に検出可能である。
【0033】
以上より、モータの電圧ベクトルVの交流固定座標に対する位相θvは、式(2)によって表される。
θv=θ+θvdq …(2)
電圧指令位相演算部130は、式(2)の演算により、電圧ベクトル位相θvを算出する。
【0034】
ここで、図5を用いて、本実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部140が出力する矩形波信号について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部が出力する矩形波信号の説明図である。
【0035】
PWM駆動における、出力電圧が所定範囲に制限される点や、インバータのスイッチング損失が発生する点を補う方式として、近年ハイブリッド自動車等のモータ制御装置に適用されている駆動方式が矩形波駆動方式である。
【0036】
図5は、矩形波駆動におけるインバータへの出力信号(モータ駆動信号)を示している。図5に示すように、矩形波駆動時の電圧パルスは、モータ周波数相当となり、PWM駆動時のキャリア周波数とは異なる。モータの交流電圧指令が正符号であればハイレベルパルス、負符号であればローレベルパルスを出力する。ここで説明する矩形波駆動では、モータ半周期分はスイッチング無しの1パルスとなるため、インバータから出力しうる最大の電圧となる。しかも、スイッチングはモータ1周期あたり2回/1相であるため、ほとんどインバータのスイッチング損失は発生しないといえる。
【0037】
なお、PWM駆動から矩形波駆動への切り替え時以外の通常駆動においては、駆動パルス切替部140は、PWM駆動時には電流制御部120の出力であるモータ電圧指令を用い、矩形波駆動時には電圧指令位相演算部130の出力であるモータ電圧位相θvが用いられる。
【0038】
ここで、図6及び図7を用いて、本実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動について説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動時のモータの駆動特性の説明図である。図7は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動時のパルスパターンの説明図である。
【0039】
矩形波駆動では、インバータの出力電圧を最大限に、かつモータを高効率に駆動できるため、モータの動作範囲は、図6に示すように、PWM駆動に対しておおよそ20〜30%程度拡大することができる。
【0040】
図7は、U−V−Wの3相交流固定座標における矩形波駆動のパルスパターンを、図5に示した電圧パルスに照らし合わせて示したものである。図7に示す固定座標では、U相方向を基準の0°として、120°の位置にV相、240°の位置にW相が位置しており、各120°間隔となっている。このような固定座標で矩形波駆動のパルスパターンを表すと、図7に示す6つの区間で切り替わり、その各相のパルスパターンは図5に示す6つのパターン(3相のパルスの組み合わせ)である。それぞれのパルスの切り替わる位相は、図7に示すように3相交流固定座標30°、90°、150°、210°、270°、330°である。
【0041】
しかしながら、矩形波駆動にも不利な点は存在する。それはモータの1周期間に6回しか電圧パターンを更新できない点である。PWM駆動に対して電圧更新回数が少ないことから、モータ制御系として速度変動などの外乱に影響を受けやすいことになる。さらには,電圧パターン更新回数はモータ周波数に依存しているため、モータが低速回転しているときは非常に長い期間同一のパルスパターンをモータに印加することになる。これはトルクの脈動となって弊害が現れるほか、より極低速域ではモータに流れる電流が過電流レベルまで容易に達する可能性がある。
【0042】
このような理由により、矩形波駆動は低速域には適用されないため、通常ハイブリッド車用モータ制御装置などでは、停止を含む低速域においてはPWM駆動を、中高速域では矩形波駆動を使い分ける技術が採用されている。この使い分けに関しては,一般にモータの動作点に基づいて切り替えを実施しているのが主である。
【0043】
ここで、図8及び図9を用いて、本実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動の使い分けについて説明する。
図8は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動の使い分けの第1の例の説明図である。図9は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動の使い分けの第2の例の説明図である。
【0044】
図8は、バッテリを主電源として駆動される装置におけるPWM駆動と矩形波駆動の使い分け領域の例を示している。この例では、中高速のある程度高トルク領域で矩形波駆動が適用されている。
【0045】
また、図9は、直流電圧をDCDCコンバータなどにより可変できる装置におけるPWM駆動と矩形波駆動の使い分け領域の例を示している。この例では、モータ速度のみにより切り替えを実施することも可能である。
【0046】
以上のように、PWM駆動と矩形波駆動を切り替える場合、PWM駆動時の電圧ベクトルは高周波スイッチングの効果により高精度に制御されている。その反面、インバータからの出力電圧の大きさが制限されている。このPWM駆動の状態からインバータの最大電圧に出力可能な矩形波駆動に切り替えた場合、印加電圧ベクトルの大きさの急増や、印加電圧ベクトルの位相急変などが考えられ、結果として切り替え時にトルク脈動が発生することが考えられる。
【0047】
従来では,PWM駆動から矩形波駆動に切り替える際にはPWM駆動時の正弦波信号の振幅を大きくしていき,過変調領域を間に介して切り替えを行うものが知られている。理想的には、このような振幅を連続的に変化させる方式で切り替え可能であるが、実際には矩形波駆動の1/6周期間は電圧ベクトル位相が固定である点や、パルスを演算・出力するマイコン等の演算装置の動作モードによりPWM駆動時の電圧指令の更新タイミングと、矩形波駆動の電圧指令の更新タイミングがずれる点などから、切り替え時にはまだトルク脈動が発生する可能性がある。
【0048】
次に、図10〜図13を用いて、本実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動の切替原理について説明する。
図10は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動での電圧ベクトルの差電圧の説明図である。図11は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動での電圧ベクトルの差電圧が最小となる位相を、3相交流固定座標で表した説明図である。図12は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動での電圧ベクトルの差電圧が最小となる位相方向の説明図である。図13は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動からPWM駆動にU相電圧のピーク付近でに切り替えた場合、実際のパルス波形の説明図である。
【0049】
本発明は,上記のようにPWM駆動と矩形波駆動を切り替える際に発生するモータのトルク脈動を更に低減するようにしている。本発明では、従来考慮されていなかった、切り替え時点の位相に着目している。PWM駆動での電圧ベクトルと矩形波駆動での電圧ベクトルとの間の電圧差は3相交流の位相により一定ではなく、常に変化している。
【0050】
図10は、PWM駆動での電圧ベクトルと矩形波駆動での電圧ベクトルとの間の電圧差を示している。図10の横軸は、モータ電圧ベクトル位相を示している。図10(A)は、交流モータ4のU相コイルとV相コイルの線間の電圧差を示している。図10(B)は、交流モータ4のV相コイルとW相コイルの線間の電圧差を示している。図10(C)は、交流モータ4のW相コイルとU相コイルの線間の電圧差を示している。図10(D)は、交流モータ4の各相の線間の電圧差の最大値を示している。
【0051】
図10(D)に示すように、モータ1周期の間に電圧差は常に変化しており、電圧差が最大値と最小値を繰り返す特性となっている。よって、この電圧差が最小となる位相時に切り替えを実施すると最もトルク脈動を小さくできるといえる。図10(D)に示す電圧差が最小(図中の黒丸)となる位相は、モータ1周期に6箇所ある。
【0052】
図11は、電圧差が最小となる位相を、3相交流固定座標で表したものである。図11のV1,…,V6の矢印で示した方向が、図10に示したPWM駆動での電圧ベクトルと矩形波駆動での電圧ベクトルとの間の電圧差が最小値となる方向である。
【0053】
そこで、図11に示すように,モータの電圧ベクトルが図11中の位相V1,V2,V3,V4,V5,V6のいずれかに来た時に切り替え処理を実施することで、PWM駆動と矩形波駆動の切替時のトルク脈動を小さくできる。例えば、図11は、モータ電圧ベクトルが240°方向に一致したときを表している。
【0054】
図12は、PWM駆動での電圧ベクトルと矩形波駆動での電圧ベクトルとの間の電圧差の最小値方向である各位相方向V1,V2,V3,V4,V5,V6は時間軸での波形で表したものである。図12(A)はU相電圧Vuを示し、図12(B)はV 相電圧Vvを示し、図12(C)はW相電圧Vwを示している。図12において、黒丸で示した時点が、電圧差の最小値方向である各位相方向である。すなわち,この6つの位相方向は,各相電圧のピーク方向に相当する。
【0055】
図13(A),(B),(C)は、U相電圧のピーク付近でPWM駆動から矩形波駆動に切り替えた場合、実際のパルス波形を示している。図13(A)では、例えばU相の交流電圧指令Vu*がピーク付近に来た時に切り替えを実施した場合のパルス波形例である。図13(A)を見てわかるように、矩形波に切り替える地点のPWM信号は、U相電圧指令に基づいて切り替える場合には、U相のPWMパルス幅がもっとも大きくなる付近の位相である。
【0056】
また、図13(A)では、U相電圧のピーク付近でPWM駆動から矩形波駆動に切り替えているが、図12(A)に示したように、U相電圧の最小値付近でPWM駆動から矩形波駆動に切り替えてもよいものである。このときは、矩形波に切り替える地点のPWM信号は、U相電圧指令に基づいて切り替える場合には、U相のPWMのローレベルのパルス幅がもっとも大きくなる付近の位相となる。
【0057】
また、図12(A)で示したように、V相電圧のピーク付近や、V相電圧の最小値付近で切り替えることもできるし、W相電圧のピーク付近や、W相電圧の最小値付近で切り替えることもできる
すなわち、本実施形態では、各相電圧のピーク付近や、各相電圧の最小値付近で切り替えることで、トルク脈動を低減できる。また、このことは、各相電圧のハイレベルのパルス幅が最も大きくなる付近や、各相電圧のローレベルのパルス幅が最も大きくなる付近で切り替えることで、トルク脈動を低減できることをも意味するものである。
【0058】
次に、図14を用いて、本実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部140における駆動パルス切替処理の内容について説明する。
図14は、本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部における駆動パルス切替処理の内容を示すフローチャートである。
【0059】
ステップS100において、駆動パルス切替部140は、モータ動作点の推移等の切り替え条件により、PWM駆動から矩形波駆動への切り替えの必要性の可否を判定する。
【0060】
その切り替え指示が与えられた場合、ステップS101において、駆動パルス切替部140は、現在の電圧ベクトルVが次に到達する切り替え位相θc(図14のV1〜V6のいずれか。図14ではV5。)を演算する。
【0061】
次に、ステップS102において、駆動パルス切替部140は、先に求めたモータ電圧ベクトル位相θvとの位相差Δθvを、(θc−θv)として演算する。ここで、駆動パルス切替部140は、交流モータ4の磁極位置θに加え、交流モータ4の回転数ωm[rad/sec]も演算している。よって、位相差Δθvは、式(3)によって表される。
Δθv=ωm×Tv …(3)
但し、Tvは時間[sec]、ωmはモータ回転数[rad/sec]を表す。
【0062】
式(3)より、現在のモータ電圧ベクトルがΔθvだけ動く時間Tvは、式(4)によって算出できる。
Tv=Δθv/ωm …(4)
式(4)に示すように、モータ電圧ベクトルがΔθvだけ動く時間Tv[sec]が求められれば、図1に示す最適切り替え位相(V1〜V6のいずれか)での切り替えが可能となる。
【0063】
そこで、ステップS103において、駆動パルス切替部140は、モータ電圧ベクトルVがΔθvだけ動く時間Tv[sec]を算出する。
【0064】
次に、ステップS104において、駆動パルス切替部140は、時間Tvを駆動パルス切替部140内でカウントし、Tv経過後に割り込み処理を発生させる。
【0065】
この割り込み処理発生時点が切り替え最適位相に相当しているので、ステップS105において、駆動パルス切替部140は、このタイミングでPWM駆動から矩形波駆動への切り替えを実施する。
【0066】
以上のような処理を行うことにより、マイコン等から構成される制御装置でトルク脈動が最小となる切り替え処理を実行することができる。
【0067】
なお,本方式は,矩形波駆動を積極的に適用しているハイブリッド自動車のモータ制御装置に好適である。PWM駆動から矩形波駆動への切り替え時に発生するトルク脈動は乗り心地を阻害するばかりでなく,装置のフェールを誘発してしまう可能性があるため,トルクの脈動を最小限にしながら切り替える必要があるためである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置を搭載した交流モータを用いたハイブリッド自動車の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置を用いたモータ駆動システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部が出力するPWM信号の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部が出力する矩形波信号の説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動時のモータの駆動特性の説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動時のパルスパターンの説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動の使い分けの第1の例の説明図である。
【図9】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動の使い分けの第2の例の説明図である。
【図10】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動での電圧ベクトルの差電圧の説明図である。
【図11】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動での電圧ベクトルの差電圧が最小となる位相を、3相交流固定座標で表した説明図である。
【図12】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動とPWM駆動での電圧ベクトルの差電圧が最小となる位相方向の説明図である。
【図13】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置による矩形波駆動からPWM駆動にU相電圧のピーク付近でに切り替えた場合、実際のパルス波形の説明図である。
【図14】本発明の第1の実施形態によるモータ制御装置の駆動パルス切替部における駆動パルス切替処理の内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
3…エンジン
4…交流モータ
8…インバータ
8A…パワースイッチング素子ブリッジ
9…バッテリ
100…モータコントロールユニット
110…トルク制御部
120…電流制御部
130…電圧指令位相演算部
140…駆動パルス切り替え部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流モータをインバータで駆動するモータ制御装置であって、
前記インバータにPWM信号を入力して前記交流モータをPWM駆動するPWM駆動モードと、前記インバータに矩形波信号を入力して前記交流モータを矩形波駆動する矩形波駆動モードとを有し、
前記PWM駆動モードから矩形波駆動モードに切り替える際には、前記PWM駆動時のハイレベルのパルス若しくはローレベルのパルスの最大幅パルスの範囲内で切替える駆動パルス切替部を備えることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のモータ制御装置において、
前記駆動パルス切替部は、前記交流モータに印加する交流電圧ベクトルが、前記PWM駆動時の電圧ベクトルと前記矩形波駆動時の電圧ベクトルの電圧差が最小となる位相に達した際に、前記切替処理を実施することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項3】
請求項2記載のモータ制御装置において、
前記所定の位相は、3相交流のU相方向を基準0度とした場合に、0度、60度、120度、180度、240度、300度のいずれかの位相であることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項4】
エンジンと、交流モータとを有するハイブリッド自動車に用いられ、
前記交流モータをインバータで駆動するハイブリッド自動車用モータ制御装置であって、
前記インバータにPWM信号を入力して前記交流モータをPWM駆動するPWM駆動モードと、前記インバータに矩形波信号を入力して前記交流モータを矩形波駆動する矩形波駆動モードとを有し、
前記PWM駆動モードから矩形波駆動モードに切り替える際には、前記PWM駆動時のハイレベルのパルス若しくはローレベルのパルスの最大幅パルスの範囲内で切替える駆動パルス切替部を備えることを特徴とするハイブリッド自動車用モータ制御装置。
【請求項1】
交流モータをインバータで駆動するモータ制御装置であって、
前記インバータにPWM信号を入力して前記交流モータをPWM駆動するPWM駆動モードと、前記インバータに矩形波信号を入力して前記交流モータを矩形波駆動する矩形波駆動モードとを有し、
前記PWM駆動モードから矩形波駆動モードに切り替える際には、前記PWM駆動時のハイレベルのパルス若しくはローレベルのパルスの最大幅パルスの範囲内で切替える駆動パルス切替部を備えることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のモータ制御装置において、
前記駆動パルス切替部は、前記交流モータに印加する交流電圧ベクトルが、前記PWM駆動時の電圧ベクトルと前記矩形波駆動時の電圧ベクトルの電圧差が最小となる位相に達した際に、前記切替処理を実施することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項3】
請求項2記載のモータ制御装置において、
前記所定の位相は、3相交流のU相方向を基準0度とした場合に、0度、60度、120度、180度、240度、300度のいずれかの位相であることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項4】
エンジンと、交流モータとを有するハイブリッド自動車に用いられ、
前記交流モータをインバータで駆動するハイブリッド自動車用モータ制御装置であって、
前記インバータにPWM信号を入力して前記交流モータをPWM駆動するPWM駆動モードと、前記インバータに矩形波信号を入力して前記交流モータを矩形波駆動する矩形波駆動モードとを有し、
前記PWM駆動モードから矩形波駆動モードに切り替える際には、前記PWM駆動時のハイレベルのパルス若しくはローレベルのパルスの最大幅パルスの範囲内で切替える駆動パルス切替部を備えることを特徴とするハイブリッド自動車用モータ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−124910(P2009−124910A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298491(P2007−298491)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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