説明

モードコントロール回路

【課題】 パワーダウンモードを含む複数の動作モードを有する半導体集積回路において、モード切り換えを行うモードコントロール回路の消費電力を少なくする。
【解決手段】 制御電圧VCに基づきパワーダウンを設定するか解除するかの判定を行う回路としてオフセット付き電圧比較器30Aを設けた。制御電圧VCがオフセット電圧V0よりも低く、オフセット付き電圧比較器30Aがパワーダウン解除信号MD0を非アクティブレベルとしている間は、基準電圧発生回路10Aを動作させず、制御電圧VCとの比較に用いる基準電圧V1〜V3を出力させない。制御電圧VCがオフセット電圧V0を越えて上昇し、パワーダウン解除信号MD0がアクティブレベルになったとき、基準電圧発生回路10Aを動作させ、基準電圧V1〜V3と制御電圧VCとの比較によるモード切り換えを行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体集積回路の動作モードの切り換え制御を行うモードコントロール回路に関する。
【背景技術】
【0002】
外部から半導体集積回路に与えられる制御電圧あるいは半導体集積回路内において発生する制御電圧に応じて半導体集積回路の動作モードを切り換えるモードコントロール回路が知られている。例えば特許文献1は、半導体集積回路から出力する信号を制御電圧とし、この出力信号のレベルに応じて動作モードを切り換える回路を開示している。また、特許文献2は、電池の充電電圧を制御電圧とし、この制御電圧に応じて、電池に対する充電動作のモードを切り換える回路を開示している。この他、モードコントロール回路には、外部の装置から半導体集積回路に入力される制御電圧に応じて、半導体集積回路の動作モードを切り換える回路がある。この種のモードコントロール回路では、制御電圧に応じてモード切り換えを行うために、制御電圧を1または複数種類の基準電圧と比較する。例えば半導体集積回路が4種類の動作モードを有しているとする。この場合、モードコントロール回路は3種類の基準電圧V1、V2、V3(この例ではV1<V2<V3とする)を発生し、制御電圧VCを基準電圧V1、V2、V3の各々と比較する。そして、例えば制御電圧VCが基準電圧V1より低い場合は半導体集積回路を第1の動作モードとし、基準電圧V1およびV2の間の電圧であるときは第2の動作モードとし、基準電圧V2およびV3の間の電圧であるときは第3の動作モードとし、基準電圧V3より高い場合は第4の動作モードとするのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−99356号公報
【特許文献2】特開2009−65772号公報
【特許文献3】特開2004−72681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体集積回路の中には、例えば半導体集積回路内の殆どの回路へのクロック供給を断つ等してそれらの回路の動作を停止させ、半導体集積回路全体の消費電力を減らすパワーダウンモードを備えたものが多い。従来、この種のパワーダウンモードを含む複数種類の動作モードを備えた半導体集積回路に対して上記モードコントロール回路を適用した場合に、パワーダウンモード時の半導体集積回路の消費電力を十分に減らすことが困難であるという問題があった。すなわち、半導体集積回路に設けられたモードコントロール回路は、半導体集積回路がパワーダウンモードとなった状態においても、制御電圧と比較するための基準電圧を発生する回路が電力を消費するため、パワーダウンモードにおける半導体集積回路の消費電力を十分に低下させるのが困難なのである。
【0005】
この発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、半導体集積回路がパワーダウンモードとなったときの消費電力を少なくすることができるモードコントロール回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
好ましい態様において、この発明によるモードコントロール回路は、制御電圧に応じて、半導体集積回路の動作モードを切り換えるモードコントロール回路において、前記半導体集積回路に電源電圧を供給する高電位側電源線および低電位側電源線の各電位の中間の電位を各々有する1または複数種類の基準電圧を出力する基準電圧発生手段と、前記半導体集積回路の動作モードをパワーダウンモードを含む複数種類の動作モードのいずれかに切り換える1または複数のモード指定信号を出力する手段であって、前記制御電圧を前記基準電圧発生手段が出力する1または複数種類の基準電圧の各々と比較することにより前記1または複数のモード指定信号を出力する1または複数の電圧比較器と、前記制御電圧が与えられる第1の入力端子と、前記低電位側電源線または前記高電位側電源線の一方に接続された第2の入力端子とを有し、前記第1および第2の入力端子間にオフセット電圧を有しており、前記第2の入力端子の入力電圧に対する前記第1の入力端子の入力電圧の隔たりが前記オフセット電圧以内であるときは出力信号を非アクティブレベルとし、前記第1の入力端子の入力電圧が前記第2の入力端子の入力電圧から前記低電位側電源線または前記高電位側電源線の他方の電位に向けて前記オフセット電圧以上変位したときに出力信号を非アクティブレベルからアクティブレベルに変化させるオフセット付き電圧比較器とを具備し、前記基準電圧発生手段は、前記オフセット付き電圧比較器の出力信号がアクティブレベルになったとき、前記1または複数種類の基準電圧を出力する動作を開始し、前記半導体集積回路がパワーダウンモードへ移行したとき、前記1または複数種類の基準電圧を出力する動作を停止する。
【0007】
他の好ましい態様では、前記基準電圧発生手段は、前記オフセット付き電圧比較器の出力信号がアクティブレベルになったとき、前記1または複数種類の基準電圧を出力する動作を開始し、前記オフセット付き電圧比較器の出力信号が非アクティブレベルになったとき、前記1または複数種類の基準電圧を出力する動作を停止する。
【0008】
この発明によるモードコントロール回路によれば、半導体集積回路がパワーダウンモードに移行してからオフセット付き電圧比較器の出力信号がアクティブレベルになるまでの間あるいはオフセット付き電圧比較器が出力信号を非アクティブレベルに維持している間、基準電圧発生手段は動作せず、1または複数の基準電圧の出力を行わない。従って、パワーダウンモード時におけるモードコントロール回路の消費電力を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の第1実施形態であるモードコントロール回路の構成を示す回路図である。
【図2】同モードコントロール回路に好適なオフセット付き電圧比較器の構成例を示す回路図である。
【図3】同モードコントロール回路の各部の波形を示す波形図である。
【図4】この発明の第2実施形態であるモードコントロール回路の構成を示す回路図である。
【図5】同モードコントロール回路に好適なオフセット付き電圧比較器の構成例を示す回路図である。
【図6】同モードコントロール回路の各部の波形を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、この発明の一実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態であるモードコントロール回路100Aの構成を示す回路図である。このモードコントロール回路100Aは、パワーダウンモードとパワーダウンモードでない第1〜第3の通常動作モードとを有する半導体集積回路に設けられている。本実施形態によるモードコントロール回路100Aは、半導体集積回路の制御電圧入力端子50Aに与えられる制御電圧VCに応じて、同半導体集積回路の動作モードを切り換えるものである。
【0011】
図1に示すように、モードコントロール回路100Aは、基準電圧発生回路10Aと、電圧比較器21A〜23Aと、オフセット付き電圧比較器30Aと、モード制御部40Aとを有する。これらの各回路は、図示しない高電位側電源線および低電位側電源線を介して電源電圧の供給を受けて動作する。本実施形態では、低電位側電源線の電位VSSは接地電位0Vとなっており、高電位側電源線の電位VDDは接地電位より高い電位となっている。
【0012】
オフセット付き電圧比較器30Aは、マイナス入力端子が低電位側電源線(VSS)に接続されており、プラス入力端子が制御電圧入力端子50Aに接続されている。このオフセット付き電圧比較器30Aは、プラス入力端子とマイナス入力端子との間にオフセット電圧V0を有しており、プラス入力端子に与えられる制御電圧VCがマイナス入力端子に対する電圧VSS(=0V)からオフセット電圧V0だけ上昇した電圧(すなわち、V0)よりも高いとき、アクティブレベル(この例ではHレベル)のパワーダウン解除信号MD0を出力し、そうでないときは非アクティブレベル(この例ではLレベル)のパワーダウン解除信号MD0を出力する。このパワーダウン解除信号MD0は、パワーダウンモードにある半導体集積回路をパワーダウンモードから抜け出させる信号である。
【0013】
基準電圧発生回路10Aは、バンドギャップリファレンス等の基準電圧源を利用して、高精度の基準電圧V1〜V3を発生する回路である。基準電圧発生回路10Aは、パワーダウン解除信号MD0が非アクティブレベルからアクティブレベルになったときに動作可能状態となり、半導体集積回路がパワーダウンモードへ移行したときに動作停止状態となる。動作可能状態において、基準電圧発生回路10Aは、高電位側電源電位VDDおよび低電位側電源電位VSSの中間の電位を各々有する基準電圧V1、V2、V3を各々出力する。ここで、電源電位VDD、VSS、基準電圧V1〜V3および上述したオフセット電圧V0の大小関係は、VSS<V0<V1<V2<V3<VDDとなっている。一例として、電源電圧VDDは2V、オフセット電圧V0は0.3Vである。動作停止状態では、基準電圧発生回路10Aを構成する基準電圧源あるいはトランジスタはOFFに固定され、基準電圧発生回路10Aによる基準電圧V1〜V3の出力が行われない。この動作停止状態は、極めて消費電力の低い状態となる。
【0014】
電圧比較器21A〜23Aの各プラス入力端子には制御電圧入力端子50Aから制御電圧VCが与えられる。また、電圧比較器21A〜23Aの各マイナス入力端子には基準電圧発生回路10Aから基準電圧V1〜V3が各々与えられる。これらの電圧比較器21A〜23Aは、パワーダウン解除信号MD0が非アクティブレベルからアクティブレベルになったときに動作可能状態となり、この動作可能状態において各々のプラス入力端子に対する入力電圧とマイナス入力端子に対する入力電圧の比較結果をモード指定信号MD1〜MD3として各々出力する。さらに詳述すると、電圧比較器21Aは、制御電圧VCが基準電圧V1よりも高い場合はアクティブレベル(この例ではHレベル)、そうでない場合は非アクティブレベル(この例ではLレベル)のモード指定信号MD1を出力し、電圧比較器22Aは、制御電圧VCが基準電圧V2よりも高い場合はアクティブレベル、そうでない場合は非アクティブレベルのモード指定信号MD2を出力し、電圧比較器23Aは、制御電圧VCが基準電圧V3よりも高い場合はアクティブレベル、そうでない場合は非アクティブレベルのモード指定信号MD3を出力する。また、半導体集積回路がパワーダウンモードへ移行することにより、電圧比較器21A〜23Aは消費電力が極めて少ない動作停止状態となる。この動作停止状態では、電圧比較器21A〜23Aを構成する各定電流源がOFFとされ、あるいは各トランジスタがOFFに固定され、電圧比較器21A〜23Aは、電圧比較器として動作しない。
【0015】
モード制御部40Aは、オフセット付き電圧比較器30Aが出力するパワーダウン解除信号MD0、電圧比較器21A〜23Aが出力するモード指定信号MD1〜MD3に基づき、半導体集積回路のモード切り換えの制御を行う回路である。なお、このモード切り換えについては、説明の重複を避けるため、本実施形態の動作説明において詳細を明らかにする。
【0016】
次にオフセット付き電圧比較器30Aの詳細について説明する。図2はオフセット付き電圧比較器30Aの構成例を示す回路図である。一般的な電圧比較器と同様、オフセット付き電圧比較器30Aは、2個のPチャネルMOS電界効果トランジスタ(以下、単にPチャネルトランジスタという)MP1およびMP2と、2個のNチャネルMOS電界効果トランジスタ(以下、単にNチャネルトランジスタという)MN1およびMN2と、定電流源Cとにより構成された差動増幅器である。ここで、PチャネルトランジスタMP1およびMP2は、差動トランジスタペアを構成しており、各々のソースが共通接続され、この共通接続点と高電位側電源線(VDD)との間に定電流源Cが介挿されている。そして、PチャネルトランジスタMP1のゲートは、オフセット付き電圧比較器30Aのプラス入力端子となっており、制御電圧VCが与えられる。また、PチャネルトランジスタMP2のゲートは、オフセット付き電圧比較器30Aのマイナス入力端子となっており、低電位側電源線(VSS=0V)に接続されている。NチャネルトランジスタMN1およびMN2は、負荷トランジスタペアを構成し、かつ、カレントミラーを構成している。さらに詳述すると、NチャネルトランジスタMN1およびMN2の各ドレインは、PチャネルトランジスタMP1およびMP2の各ドレインと接続され、NチャネルトランジスタMN1およびMN2の各ソースは低電位側電源線(VSS)に接続され、NチャネルトランジスタMN1およびMN2の各ゲートは、PチャネルトランジスタMP1およびNチャネルトランジスタMN1のドレイン同士の接続点に接続されている。そして、PチャネルトランジスタMP2とNチャネルトランジスタMN2のドレイン同士の接続点がパワーダウン解除信号MD0を出力する出力端子となっている。
【0017】
このような構成において、本実施形態では、次のいずれかの方法によりプラス入力端子およびマイナス入力端子間にオフセット電圧V0を生じさせる。
(方法1)差動トランジスタペアを構成する各トランジスタサイズを同じにする一方、負荷トランジスタペアを構成する各トランジスタサイズを不均衡にし、負荷トランジスタMN1およびMN2に流す電流に差を持たせることによりオフセット電圧V0を生じさせる。
【0018】
例えばNチャネルトランジスタMN1のチャネル幅とチャネル長の比をW/L(MN1)とし、NチャネルトランジスタMN2のチャネル幅とチャネル長の比をW/L(MN2)とした場合、両者の比を次のようにする。
W/L(MN1):W/L(MN2)=1:A ……(1)
【0019】
この場合、次式に示すオフセット電圧V0がプラス入力端子およびマイナス入力端子間に発生する。
V0=(1−1/√A)√(2I/β) ……(2)
ここで、IはPチャネルトランジスタMP2のドレイン電流である。また、βはPチャネルトランジスタP2の駆動能力を示すβ値であり、PチャネルトランジスタP2のソースおよびドレイン間のキャリアの移動度をμ、ゲート酸化膜厚をCox、チャネル幅をW、チャネル長をLとした場合、次式により与えられる。
β=μCoxW/L ……(3)
例えばA=4の条件では、上記式(2)のオフセット電圧V0は次のようになる。
V0=(1/2)√(2I/β) ……(4)
【0020】
(方法2)負荷トランジスタペアを構成する各トランジスタサイズを同じにする一方、差動トランジスタペアを構成する各トランジスタサイズを不均衡にし、各トランジスタMP1およびMP2に流す電流に差を持たせることによりオフセット電圧V0を生じさせる。
【0021】
例えばPチャネルトランジスタMP1のチャネル幅とチャネル長の比をW/L(MP1)とし、PチャネルトランジスタMP2のチャネル幅とチャネル長の比をW/L(MP2)とした場合、両者の比を次のようにする。
W/L(MP1):W/L(MP2)=1:A ……(5)
【0022】
この場合、次式に示すオフセット電圧V0がプラス入力端子およびマイナス入力端子間に発生する。
V0=(1−√A)√(2I/β) ……(6)
例えばA=1/4の条件では、上記式(6)のオフセット電圧V0は次のようになる。
V0=(1/2)√(2I/β) ……(7)
【0023】
(方法3)差動トランジスタペアを構成する各トランジスタサイズを異ならせ、かつ、負荷トランジスタペアを構成する各トランジスタサイズを異ならせることにより、オフセット電圧V0を生じさせる。
例えばPチャネルトランジスタMP1のチャネル幅とチャネル長の比をW/L(MP1)とし、PチャネルトランジスタMP2のチャネル幅とチャネル長の比をW/L(MP2)とした場合、両者の比を次のようにする。
W/L(MP1):W/L(MP2)=1:A ……(8)
【0024】
さらにNチャネルトランジスタMN1のチャネル幅とチャネル長の比をW/L(MN1)とし、NチャネルトランジスタMN2のチャネル幅とチャネル長の比をW/L(MN2)とした場合、両者の比を次のようにする。
W/L(MN1):W/L(MN2)=1:B ……(9)
この方法3によれば、上記方法1および方法2より大きなオフセット電圧V0を得ることができる。
【0025】
なお、以上のように差動トランジスタペアを構成する各トランジスタの駆動能力を非平衡とし、あるいは各負荷トランジスタの駆動能力を非平衡にすることにより電圧比較器にオフセット電圧を生じさせる技術は、例えば特許文献3に開示されている。
【0026】
図3は制御電圧VCを三角波状に変化させたときの各部の波形および状態を示す波形図である。以下、この図を参照し、本実施形態の動作を説明する。
【0027】
制御電圧VCを基準電圧V3よりも高い電圧からVSS=0Vに向けて徐々に低下させたとする。この場合の動作は次のようになる。まず、制御電圧VCが基準電圧V3よりも低くなり、基準電圧V3およびV2間の電圧になると、モード指定信号MD3がアクティブレベル(Hレベル)から非アクティブレベル(Lレベル)へと立ち下がり、MD1=H、MD2=H、MD3=Lとなる。これによりモード制御部40Aは、半導体集積回路の動作モードを第3の通常動作モード(MODE=「3」)から第2の通常動作モード(MODE=「2」)へ切り換える。
【0028】
次に制御電圧VCが基準電圧V2よりも低くなり、基準電圧V2およびV1間の電圧になると、モード指定信号MD2がアクティブレベル(Hレベル)から非アクティブレベル(Lレベル)へと立ち下がり、MD1=H、MD2=L、MD3=Lとなる。これによりモード制御部40Aは、半導体集積回路の動作モードを第2の通常動作モード(MODE=「2」)から第1の通常動作モード(MODE=「1」)へ切り換える。
【0029】
次に制御電圧VCが基準電圧V1よりも低くなり、基準電圧V1およびオフセット電圧V0間の電圧になると、モード指定信号MD1がアクティブレベル(Hレベル)から非アクティブレベル(Lレベル)へと立ち下がり、MD1=L、MD2=L、MD3=Lとなる。これによりモード制御部40Aは、半導体集積回路の動作モードを第1の通常動作モード(MODE=「1」)からパワーダウンモード(MODE=「0」)へ切り換える。また、半導体集積回路がパワーダウンモードになったときに、基準電圧発生回路10Aは動作停止状態となって基準電圧V1〜V3の出力動作を停止し、また、電圧比較器21A〜23Aも動作停止状態となる。このようにして半導体集積回路は、消費電力の極めて少ない状態となる。
【0030】
このように半導体集積回路の動作モードをパワーダウンモードとすると、以後、モード制御部40Aは、オフセット付き電圧比較器30Aの出力するパワーダウン解除信号MD0が非アクティブレベルからアクティブレベルへ変化するまでの間、モード指定信号MD1〜MD2を無視し、半導体集積回路の動作モードをパワーダウンモードに維持する。
【0031】
その後、制御電圧VCがさらに低下し、オフセット電圧V0を下回ると、オフセット付き電圧比較器30Aはパワーダウン解除信号MD0をアクティブレベルから非アクティブレベルへと変化させる。しかし、このとき半導体集積回路の動作モードはパワーダウンモードとなっているので、モード制御部40Aは、パワーダウン解除信号MD0の非アクティブレベルへの変化を無視する。
【0032】
次に制御電圧VCをVSS(=0V)から基準電圧V3よりも高い電圧に向けて徐々に上昇させたとする。この場合の動作は次のようになる。まず、制御電圧VCがオフセット電圧V0より高くなり、オフセット電圧V0と基準電圧V1の間の電圧になると、オフセット付き電圧比較器30Aはパワーダウン解除信号MD0を非アクティブレベルからアクティブレベルへと変化させる。
【0033】
このパワーダウン解除信号MD0が非アクティブレベルからアクティブレベルになったとき、基準電圧発生回路10Aは動作可能状態となって基準電圧V1〜V3の出力動作を再開し、また、電圧比較器21A〜23Aも動作可能状態となる。また、モード制御部40Aは、このパワーダウン解除信号MD0が非アクティブレベルからアクティブレベルになったことを検知すると、半導体集積回路をパワーダウンモード(MODE=「0」)から抜け出させ、パワーダウンモード以外のモードへと移行させる。本実施形態では、このパワーダウンモードから抜け出るときの移行先の動作モードは第1の通常動作モード(MODE=「1」)となっている。
【0034】
制御電圧VCがさらに上昇し、基準電圧V1と基準電圧V2の間の電圧になると、モード指定信号MD1が非アクティブレベル(Lレベル)からアクティブレベル(Hレベル)に変化する。しかし、このとき半導体集積回路の動作モードは第1の通常動作モードとなっているので、モード制御部40Aは、モード指定信号MD1の変化を無視する。
【0035】
制御電圧VCがさらに上昇し、基準電圧V2と基準電圧V3の間の電圧になると、モード指定信号MD2が非アクティブレベル(Lレベル)からアクティブレベル(Hレベル)に変化し、MD1=H、MD2=H、MD3=Lとなる。これによりモード制御部40Aは、半導体集積回路の動作モードを第1の通常動作モード(MODE=「1」)から第2の通常動作モード(MODE=「2」)へ切り換える。
【0036】
制御電圧VCがさらに上昇し、基準電圧V3を越えると、モード指定信号MD3が非アクティブレベル(Lレベル)からアクティブレベル(Hレベル)に変化し、MD1=H、MD2=H、MD3=Hとなる。これによりモード制御部40Aは、半導体集積回路の動作モードを第2の通常動作モード(MODE=「2」)から第3の通常動作モード(MODE=「3」)へ切り換える。
以上が本実施形態の動作である。
【0037】
本実施形態の特徴は、パワーダウン解除信号を発生するための電圧比較器として、基準電圧の供給が不要なオフセット付き電圧比較器30Aを採用した点にある。本実施形態によれば、制御電圧VCがオフセット電圧V0の範囲内にあり、オフセット付き電圧比較器30Aがパワーダウン解除信号MD0を非アクティブレベルとしている間は、基準電圧発生回路10Aによる基準電圧V1〜V3の出力動作は行われない。また、電圧比較器21A〜23Aは動作停止状態となる。従って、パワーダウンモード時におけるモードコントロール回路100Aの消費電力を低くすることができる。また、本実施形態によれば、パワーダウン解除信号がアクティブレベルである状態では、基準電圧発生回路10Aが発生する高精度の基準電圧V1〜V3と制御電圧VCとの比較によりモード切り換えが行われるので、正確で安定したモード切り換えの動作が得られる。また、本実施形態では、パワーダウン解除の閾値として、電圧比較器30Aのオフセット電圧V0を用いており、このオフセット電圧V0は0Vに接近した0.3Vとすることができるので、この0.3Vと電源電圧VDD=2Vとの間の広い電圧範囲内に互いに十分な間隔を空けて基準電圧V1〜V3を設定することができる。従って、制御電圧VCに基づくモード切り換えの動作を安定したものにすることができる。また、オフセット電圧V0を0.3Vとした場合、パワーダウンモードを解除させるための制御電圧VCを、0.3Vよりも僅かに高く、かつ、半導体集積回路を構成するトランジスタをONさせる閾値電圧よりも低い電圧とすることが可能となる。従って、半導体集積回路内において、この制御電圧VCがゲートに供給されるトランジスタが不要にONになるのを防ぎ、半導体集積回路の消費電力を抑えることが可能である。また、本実施形態では、パワーダウン解除信号を発生するオフセット付き電圧比較器30Aとして、差動トランジスタペアの各トランジスタサイズまたは負荷トランジスタペアの各トランジスタサイズの少なくとも一方を不均衡にすることによりプラス入力端子およびマイナス入力端子間にオフセット電圧を生じさせた差動増幅器を採用している。従って、他の回路構成のものを採用する場合に比べて、オフセット付き電圧比較器30Aの半導体集積回路内での占有面積を小さくすることができ、また、安定したオフセット電圧が得られる。
【0038】
<第2実施形態>
図4はこの発明の第2実施形態であるモードコントロール回路100Bの構成を示す回路図である。上記第1実施形態では、低電位側電源線の電位VSSを接地電位0Vとした。これに対し、本実施形態では、高電位側電源線の電位VDDを接地電位0Vとしている。オフセット付き電圧比較器30Bは、マイナス入力端子が高電位側電源線(VDD)に接続され、プラス入力端子が制御電圧入力端子50Bに接続されている。プラス入力端子およびマイナス入力端子間には負のオフセット電圧V0がある。オフセット付き電圧比較器30Bは、制御電圧VCが電圧VDDからオフセット電圧V0だけ低い電圧よりも高いときは、パワーダウン解除信号MD0を非アクティブレベル(本実施形態ではHレベル)とし、制御電圧VCが電圧VDDからオフセット電圧V0だけ低い電圧よりも低い電圧であるときには、パワーダウン解除信号MD0をアクティブレベル(本実施形態ではLレベル)とする。
【0039】
基準電圧発生回路10Bは、パワーダウンモードへの移行により動作停止状態となって基準電圧V1〜V3の出力動作を停止し、パワーダウン解除信号MD0が非アクティブレベルからアクティブレベルになったときに動作可能状態となり、高電位側電源線の電位VDDと低電位側電源線の電位VSSの中間の電位を有する基準電圧V1〜V3の出力動作を開始する。電源電圧VDD、VSS、オフセット電圧V0、基準電圧V1〜V3の関係は、VDD>V0>V1>V2>V3>VSSとなっている。
【0040】
電圧比較器21B〜23Bの各マイナス入力端子には基準電圧発生回路10Bから基準電圧V1〜V3が各々与えられる。電圧比較器21B〜23Bの各プラス入力端子には制御電圧入力端子50Bから制御電圧VCが与えられる。そして、電圧比較器21B〜23Bは、パワーダウン解除信号MD0が非アクティブレベルからアクティブレベルになったときに動作可能状態となり、半導体集積回路がパワーダウンモードへ移行したときに動作停止状態となる。
【0041】
電圧比較器21Bは、制御電圧VCが基準電圧V1より低いときモード指定信号MD1をアクティブレベル(この例ではLレベル)とし、高いとき非アクティブレベル(この例ではHレベル)とする。電圧比較器22Bは、制御電圧VCが基準電圧V2より低いときモード指定信号MD2をアクティブレベル(この例ではLレベル)とし、高いとき非アクティブレベル(この例ではHレベル)とする。電圧比較器23Bは、制御電圧VCが基準電圧V3より低いときモード指定信号MD3をアクティブレベル(この例ではLレベル)とし、高いとき非アクティブレベル(この例ではHレベル)とする。
【0042】
モード制御部40Bは、モード指定信号MD1〜MD3およびパワーダウン解除信号MD0に基づき、半導体集積回路のモード切り換えの制御を行う。
【0043】
図5は本実施形態におけるオフセット付き電圧比較器30Bの構成例を示す回路図である。このオフセット付き電圧比較器30Bでは、NチャネルトランジスタMN1およびMN2により差動トランジスタペアが構成されており、この差動トランジスタペアの共通ソースと低電位側電源線(VSS)との間に定電流源Cが介挿されている。NチャネルトランジスタMN1のゲートはプラス入力端子となっており、NチャネルトランジスタMN2のゲートはマイナス入力端子となっている。また、このオフセット付き電圧比較器30Bでは、PチャネルトランジスタMP1およびMP2が負荷トランジスタペアを構成している。そして、PチャネルトランジスタMP2とNチャネルトランジスタMN2のドレイン同士の接続点がパワーダウン解除信号MD0を出力する出力端子となっている。
プラス入力端子およびマイナス入力端子間にオフセット電圧を発生させる方法は、上記第1実施形態において説明した方法と同様である。
【0044】
図6は制御電圧VCを三角波状に変化させたときの各部の波形および状態を示す波形図である。上記第1実施形態と異なり、本実施形態では、制御電圧VCが低電位側電源電圧VSSから高電位側電源電圧VDDに近づくのに従って、動作モードが第3の通常動作モード(MODE=「3」)→第2の通常動作モード(MODE=「2」)→第1の通常動作モード(MODE=「1」)→パワーダウンモード(MODE=「0」)と切り換わる。また、本実施形態では、モード指定信号MD1〜MD3およびパワーダウン解除信号MD0がハイアクティブからローアクティブに変わっている。これらの点を除けば、本実施形態の動作は上記第1実施形態のもの(図3)と同様である。
本実施形態においても上記第1実施形態と同様な効果が得られる。
【0045】
<他の実施形態>
以上、この発明の第1および第2実施形態を説明したが、この発明には、他にも各種の実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0046】
(1)上記第1および第2実施形態では、半導体集積回路がパワーダウンモードに移行したときに、基準電圧発生回路10Aまたは10Bによる基準電圧の出力動作を停止させたが、図3および図6に破線で示すように、パワーダウン解除信号MD0が非アクティブレベルになったときに基準電圧発生回路10Aまたは10Bによる基準電圧の出力動作を停止させてもよい。
【0047】
(2)上記第1および第2実施形態では、オフセット付き電圧比較器30Aおよび30Bの出力信号をパワーダウン解除信号MD0として使用した。しかし、オフセット付き電圧比較器30Aおよび30Bの出力信号は、基準電圧発生回路10Aまたは10Bによる基準電圧の出力動作を行わせるか停止させるかの切り換えのみに使用し、半導体集積回路をパワーダウンモードに移行させるかパワーダウンモードから抜け出させるかは、例えばモード指定信号MD1により切り換えるようにしてもよい。
【0048】
(3)上記第1実施形態では、半導体集積回路をパワーダウンモードへ移行させるための制御電圧VCの閾値である基準電圧V1と、パワーダウンモードから抜け出させるための制御電圧VCの閾値である基準電圧V0との関係がV1>V0となっていたが、これらの基準電圧の大小関係を逆にし、V1<V0としてもよい。上記第2実施形態についても同様である。
【0049】
(4)上記第1および第2実施形態においてモード制御部40Aおよび40Bは、パワーダウン解除信号MD0、モード指定信号MD1〜MD3の立ち上がりエッジや立ち下がりエッジを検出して半導体集積回路のモード遷移を行わせたが、パワーダウン解除信号MD0、モード指定信号MD1〜MD3の各レベルの組み合わせに応じて半導体集積回路のモードを設定するようにしてもよい。
【0050】
(5)上記第1および第2実施形態では、オフセット付き電圧比較器30Aおよび30Bのオフセット電圧V0を0.3Vとしたが、これはあくまでも一例であり、オフセット電圧V0を0.3V以外の電圧値としてもよい。
【0051】
(6)上記各実施形態におけるモードコントロール回路は、半導体集積回路の外部から入力される電圧を制御電圧としたが、この発明は、半導体集積回路の内部において発生する電圧や、半導体集積回路の外部に出力する電圧を制御電圧とするモードコントロール回路にも適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10A,10B……基準電圧発生回路、21A〜23A,21B〜23B……電圧比較器、30A,30B……オフセット付き電圧比較器、40A,40B……モード制御部、50A,50B……制御電圧入力端子、100A,100B……モードコントロール回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電圧に応じて、半導体集積回路の動作モードを切り換えるモードコントロール回路において、
前記半導体集積回路に電源電圧を供給する高電位側電源線および低電位側電源線の各電位の中間の電位を各々有する1または複数種類の基準電圧を出力する基準電圧発生手段と、
前記半導体集積回路の動作モードをパワーダウンモードを含む複数種類の動作モードのいずれかに切り換える1または複数のモード指定信号を出力する手段であって、前記制御電圧を前記基準電圧発生手段が出力する1または複数種類の基準電圧の各々と比較することにより前記1または複数のモード指定信号を出力する1または複数の電圧比較器と、
前記制御電圧が与えられる第1の入力端子と、前記低電位側電源線または前記高電位側電源線の一方に接続された第2の入力端子とを有し、前記第1および第2の入力端子間にオフセット電圧を有しており、前記第2の入力端子の入力電圧に対する前記第1の入力端子の入力電圧の隔たりが前記オフセット電圧以内であるときは出力信号を非アクティブレベルとし、前記第1の入力端子の入力電圧が前記第2の入力端子の入力電圧から前記低電位側電源線または前記高電位側電源線の他方の電位に向けて前記オフセット電圧以上変位したときに出力信号を非アクティブレベルからアクティブレベルに変化させるオフセット付き電圧比較器とを具備し、
前記基準電圧発生手段は、前記オフセット付き電圧比較器の出力信号がアクティブレベルになったとき、前記1または複数種類の基準電圧を出力する動作を開始し、前記半導体集積回路がパワーダウンモードへ移行したとき、前記1または複数種類の基準電圧を出力する動作を停止することを特徴とするモードコントロール回路。
【請求項2】
制御電圧に応じて、半導体集積回路の動作モードを切り換えるモードコントロール回路において、
前記半導体集積回路に電源電圧を供給する高電位側電源線および低電位側電源線の各電位の中間の電位を各々有する1または複数種類の基準電圧を出力する基準電圧発生手段と、
前記半導体集積回路の動作モードをパワーダウンモードを含む複数種類の動作モードのいずれかに切り換える1または複数のモード指定信号を出力する手段であって、前記制御電圧を前記基準電圧発生手段が出力する1または複数種類の基準電圧の各々と比較することにより前記1または複数のモード指定信号を出力する1または複数の電圧比較器と、
前記制御電圧が与えられる第1の入力端子と、前記低電位側電源線または前記高電位側電源線の一方に接続された第2の入力端子とを有し、前記第1および第2の入力端子間にオフセット電圧を有しており、前記第2の入力端子の入力電圧に対する前記第1の入力端子の入力電圧の隔たりが前記オフセット電圧以内であるときは出力信号を非アクティブレベルとし、前記第1の入力端子の入力電圧が前記第2の入力端子の入力電圧から前記低電位側電源線または前記高電位側電源線の他方の電位に向けて前記オフセット電圧以上変位したときに出力信号を非アクティブレベルからアクティブレベルに変化させるオフセット付き電圧比較器とを具備し、
前記基準電圧発生手段は、前記オフセット付き電圧比較器の出力信号がアクティブレベルになったとき、前記1または複数種類の基準電圧を出力する動作を開始し、前記オフセット付き電圧比較器の出力信号が非アクティブレベルになったとき、前記1または複数種類の基準電圧を出力する動作を停止することを特徴とするモードコントロール回路。
【請求項3】
前記1または複数の電圧比較器が出力する前記1または複数のモード指定信号の変化に基づいて、前記半導体集積回路をパワーダウンモードに移行させ、前記オフセット付き電圧比較器の出力信号がアクティブレベルになったとき、前記半導体集積回路をパワーダウンモードから抜け出させる制御を行うモード制御手段を具備することを特徴とする請求項1または2に記載のモードコントロール回路。
【請求項4】
前記半導体集積回路がパワーダウンモードにあるとき、前記1または複数の電圧比較器の動作を停止させるように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載のモードコントロール回路。
【請求項5】
前記パワーダウン解除信号が非アクティブレベルであるとき、前記1または複数の電圧比較器の動作を停止させるように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載のモードコントロール回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−10163(P2012−10163A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145209(P2010−145209)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】