説明

レチクル保護装置及び露光装置

【課題】レチクルを保護する保護部材を設けた場合でも、レチクルを搬送して露光装置の取り付ける場合に、適当な位置に取り付け可能なレチクル搬送装置を提供する。
【解決手段】位置測定装置29はレチクル1の下面に形成された位置測定用マーク26の位置を測定し、これによりレチクル1の位置を測定する。位置測定装置30は、下蓋2bの下面に形成された位置測定用マーク27の位置を測定し、これにより下蓋2bの位置を測定する。レチクル1の位置と下蓋2bの位置が分かれば、レチクル1と下蓋2bの相対的な位置ずれが分かる。よって、搬送装置によりレチクル1を搭載した下蓋2bを搬送して露光装置にセットするとき、このずれを勘案して下蓋2bの停止位置を決定することにより、レチクル1を正しく露光装置にセットできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本手段は、レチクル保護部材、レチクル搬送装置、露光装置、及びレチクルの搬送方法に関するものであり、特にEUV露光装置を対象とする場合に好適なものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化に伴い、光の回折限界によって制限される光学系の解像力を向上させるために、従来の紫外線に代えてこれより短い波長(11〜14nm)のEUV光を使用した投影リソグラフィ技術が開発されている。この技術は、最近ではEUV(Extreme UltraViolet)リソグラフィと呼ばれており、従来の波長190nm程度の光線を用いた光リソグラフィでは実現不可能な、70nm以下の解像力を得られる技術として期待されている。
【0003】
EUV光の波長領域での物質の複素屈折率nは、n=1−δ−ik(iは複素記号)で表わされる。この屈折率の虚部kは極短紫外線の吸収を表す。δ、kは1に比べて非常に小さいため、この領域での屈折率は1に非常に近い。したがって従来のレンズのような透過屈折型の光学素子を使用できず、反射を利用した光学系が使用される。
【0004】
このようなEUV露光装置の概要を図12に示す。EUV光源31から放出されたEUV光32は、照明光学系33に入射し、コリメータミラーとして作用する凹面反射鏡34を介してほぼ平行光束となり、一対のフライアイミラー35aおよび35bからなるオプティカルインテグレータ35に入射する。一対のフライアイミラー35aおよび35bとして、たとえば米国特許第6452661号公報(特許文献1)に開示されたフライアイミラーを用いることができる。なお、フライアイミラーのさらに詳細な構成および作用については、特許文献1に詳しく説明されているので、説明の便宜上その説明を省略する。
【0005】
こうして、第2フライアイミラー35bの反射面の近傍、すなわちオプティカルインテグレータ35の射出面の近傍には、所定の形状を有する実質的な面光源が形成される。実質的な面光源からの光は、平面反射鏡36により偏向された後、レチクルR上に細長い円弧状の照明領域を形成する(円弧状の照明領域を形成するための開口板は図示を省略している)。照明されたレチクルRのパターンからの光は、複数の反射鏡(図12では例示的に6つの反射鏡M1〜M6)からなる投影光学系PLを介して、ウエハW上にレチクルパターンの像を形成する。なお、レチクルRはレチクルステージ、ウエハWはウエハステージに保持され、このレチクルステージ、ウエハステージを移動(走査)させることにより、レチクルR面のパターン像全体をウエハWに転写するが、レチクルステージ、ウエハステージの図示を省略している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6452661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
EUV光は空気によっても吸収されるため、その鏡筒内は高度の真空に保つ必要があり、レチクルの搬送系には特別な工夫が必要である。
【0008】
又、このようなEUV露光装置に使用されるレチクルとしても反射型のものが使用される。通常の可視光又は紫外線を使用した露光装置におけるレチクルにおいては、パターン面を保護するためにペリクルと称する透明な薄膜が使用される。しかしながら、EUV露光装置においては、前述のように透明な材料がないので、ペリクルを形成することができず、パターン面がむき出しになる。よって、レチクルの搬送時や保管時においては、別の手段により、パターン面に異物が付着しないように保護する必要がある。
【0009】
さらに、レチクルを搬送する場合には、レチクルを直接搬送装置により搬送すると、レチクルと搬送装置との接触によりパターン面を傷つけたり、パターン面以外の部分とのこすれによってゴミが発生したりする恐れがある。従って、レチクルは保護部材により保護された状態として、保護部材を搬送する方式とすることが好ましい。
【0010】
しかしながら、この目的のために、レチクル全体やパターン面を保護する保護部材を搬送する方式とした場合、レチクルと保護部材の相対位置関係がずれると、保護部材をレチクルステージまで搬送してからレチクルをレチクルステージに取り付ける場合に、レチクルを適当な位置に取り付けできなくなる可能性がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、レチクル全体やパターン面を保護する保護部材を設けた場合でも、レチクルを搬送して露光装置のレチクルステージに取り付ける場合に、レチクルを適当な位置に取り付け可能なレチクル搬送装置、この目的に使用するのに適当なレチクル保護部材、このようなレチクル搬送装置を有する露光装置、及びこのような目的を達成可能なレチクルの搬送方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための第1の手段は、露光装置に使用されるレチクルの、少なくとも一部を保護するレチクル保護部材であって、その位置を検出するためのマークが設けられていることを特徴とするレチクル保護部材(請求項1)である。
【0013】
本手段は、その位置を検出するためのマークが設けられているので、後記第4の手段以下の各手段において使用されるレチクル保護部材として使用可能である。
【0014】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、保護対象であるレチクルが、片面にパターンが形成された反射型レチクルであり、当該レチクル保護部材は、前記レチクルのパターンが形成された面を保護する第1部材と、パターンが形成された面と反対の面を保護する第2部材とを有し、前記第1部材と第2部材は、その各々に前記マークが設けられていることを特徴とするもの(請求項2)である。
【0015】
本手段は、第1部材と第2部材の間にレチクルを収納して保護することができる。又、それらの各々にマークが設けられているので、それぞれの位置を別々に検出することができる。
【0016】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段であって、保護対象であるレチクルが、片面にパターンが形成された反射型レチクルであり、当該レチクル保護部材は、前記レチクルのパターンが形成された面のうち少なくともパターンが形成される領域を保護するものであることを特徴とするもの(請求項3)である。
【0017】
反射型レチクルにおいては、パターンが形成されていない面及びパターンが形成されていない領域は必ずしも保護する必要がないので、本手段においては、部材の数が少なくて済み、構造が簡単になる。なお、パターン形成領域外でもアライメントマークやIDマーク等ゴミの付着が問題になる領域がある場合にはこれらの領域も保護されていることが好ましい。
【0018】
前記課題を解決するための第4の手段は、レチクルを搬送する装置であって、前記レチクルの少なくとも一部を保護するためのレチクル保護部材で覆われた状態のレチクルを搬送するレチクル搬送手段と、前記レチクルの位置を測定すると、前記レチクル保護部材の位置を測定する第2の位置測定手段とを有することを特徴とするレチクル搬送装置(請求項4)である。
【0019】
本手段においては、第1の位置測定手段でレチクルの位置を測定し、第2の位置測定手段でレチクル保護部材の位置を測定しているので、レチクルと保護部材の相対位置関係を知ることができる。
【0020】
レチクルを、少なくとも保護部材の一部と一緒に、搬送する場合に、搬送手段は保護部材を保持して搬送することになるので、例えば、露光装置のレチクルステージ等の搬送先に対するレチクルの位置決めは、保護部材を保持する搬送装置により行われることになる。
【0021】
本手段においては、レチクルと保護部材の相対位置関係を知ることができるので、レチクルを正確に搬送先に位置決めするのに、保護部材をどの位置に搬送すればよいかが明確になり、従って、レチクルを搬送先に対して正確に位置決めすることができるようになる。
【0022】
前記課題を解決するための第5の手段は、前記第4の手段であって、保護対象であるレチクルが、片面にパターンが形成された反射型レチクルであり、当該レチクル保護部材は、前記レチクルのパターンが形成された面を保護する第1部材と、パターンが形成された面と反対の面を保護する第2部材とを有し、前記第2の位置測定装置は、前記第1の部材と第2部材の位置を独立に測定するものであることを特徴とするもの(請求項5)である。
【0023】
本手段においては、パターンが形成された面のみならず、パターンが形成されていない面も保護部材により保護することができ、保護が完全になる。
【0024】
前記課題を解決するための第6の手段は、前記第4の手段であって、保護対象であるレチクルが、片面にパターンが形成された反射型レチクルであり、前記レチクル保護部材は、前記レチクルのパターンが形成された面のうち少なくともパターンが形成される領域を保護するものであることを特徴とするもの(請求項6)である。
【0025】
本手段においては、パターンが形成された面のうち少なくともパターンが形成される領域のみを保護部材で保護するようになっているので、保護部材の構成が簡単になる。
【0026】
前記課題を解決するための第7の手段は、前記第4の手段から第6の手段のいずれかであって、前記第1の位置測定手段及び第2の位置測定手段によって測定されたレチクルの位置及び前記レチクル保護部材の位置に基づいて、前記レチクル保護部材及びレチクルの位置を補正する位置補正手段を有することを特徴とするもの(請求項7)である。
【0027】
本手段においては、第1の位置測定手段及び第2の位置測定手段によって測定されたレチクルの位置及び前記レチクル保護部材の位置に基づいて、レチクル保護部材及びレチクルの位置を補正する位置補正手段を有するので、レチクル(レチクル保護部材と共に搬送される場合もある)をレチクルステージに搬送する前に、レチクル保護部材及びレチクルの位置を補正しておき、搬送手段が決められたシーケンスでレチクルをレチクルステージに搬送したときに、レチクルがレチクルステージ上の適正な位置に位置するようにすることができる。なお、本手段における位置補正手段は、レチクル保護部材、レチクルの位置の少なくとも一方の位置を補正する機能を有するものであればよい。
【0028】
なお、搬送手段自身が位置補正機能を有する場合には、特別の位置補正手段を設ける必要はない。この場合も、本手段に含まれ、搬送手段が位置補正手段を兼ねることになる。
【0029】
前記課題を解決するための第8の手段は、前記第5の手段であって、前記第1の位置測定手段及び第2の位置測定手段によって測定されたレチクルの位置及び前記レチクル保護部材の位置に基づいて、前記第1部材及び前記レチクルの位置を補正する位置補正手段を有することを特徴とするもの(請求項8)である。
【0030】
本手段は、前記第7の手段と同様の作用効果を奏する。
【0031】
前記課題を解決するための第9の手段は、前記第7の手段又は第8の手段であって、前記レチクル搬送手段は、レチクルステージへ、レチクル保護部材によって保護されたレチクルを搬送し、前記レチクルステージに前記レチクルを搭載した後に、前記レチクル保護部材を前記レチクルステージから他の場所へ搬送するものであり、前記位置補正手段による前記レチクル保護部材又は前記第1部材と、前記レチクルの位置補正を、前記レチクルを前記レチクルステージに搭載する前に行う機能を有することを特徴とするもの(請求項9)である。
【0032】
本手段においては、位置補正手段による前記レチクル保護部材又は前記第1部材と、レチクルの位置補正を、前記レチクルを前記レチクルステージに搭載する前に行う機能を有するので、搬送手段が決められたシーケンスでレチクルをレチクルステージに搬送したときに、レチクルがレチクルステージ上の適正な位置に位置するようにすることができる。
【0033】
なお、レチクルの位置補正は、アライメントステージ等において行うような場合に限らず、搬送手段の搬送目標位置を変えることによって行う場合をも含む。
【0034】
前記課題を解決するための第10の手段は、前記第4の手段から第9の手段のいずれかであって、前記レチクルの搬送手段は、レチクルステージに搭載された前記レチクルを前記レチクルステージから回収する際に、前記レチクル保護部材を前記レチクルステージまで搬送して前記レチクルを前記レチクル保護部材によって保護し、その後、前記レチクル保護部材とレチクルを搬送することにより、前記レチクルを前記レチクルステージから回収する機能を有し、前記レチクルステージへ前記レチクル保護部材を搬送する前に、前記第2の測定手段により前記レチクル保護部材の位置を測定する機能を有することを特徴とするもの(請求項10)である。
【0035】
本手段においては、あらかじめレチクル保護部材の位置を測定してから、当該レチクル保護部材をレチクルステージまで搬送して、レチクルをレチクル保護部材により保護する。その際、あらかじめレチクル保護部材の位置を測定してあるので、レチクルとレチクル保護部材を正確に位置合わせすることができ、両者の異常接触により破損したり、ゴミが発生したりすることを防止することができる。
【0036】
前記課題を解決するための第11の手段は、前記第5の手段であるか、又は前記第7の手段から第10の手段のいずれかであって前記第5の手段でもあるものであって、前記第1部材と前記第2部材の位置を測定した後に、その測定結果に基づいて、前記第1部材と前記第2部材とを位置合わせして合体させる機能を有することを特徴とするもの(請求項11)である。
【0037】
第1部材と前記第2部材の位置を測定した後に、その測定結果に基づいて、前記第1部材と前記第2部材とを位置合わせして合体させることにより、両者の異常接触により破損したり、ゴミが発生したりすることを防止することができる。第1部材と前記第2部材を合体させることは、レチクルを保護している場合のみならず、レチクルを保護していない場合にも行われることがある。これは、例えば、第1部材と第2部材が、下蓋、上蓋からなるような場合に、これらを合体しておくことにより中にゴミが入るのを防ぐためである。
【0038】
前記課題を解決するための第12の手段は、前記第4の手段から第11の手段のいずれかのレチクル搬送装置を備えたことを特徴とする露光装置(請求項12)である。
【0039】
本手段においては、レチクルがレチクルステージに搬送されてきたときに、正確な位置に位置させ、その状態でレチクルをレチクルステージに保持することが可能となる。このことによってレチクルステージに搭載されるレチクルアライメント装置のマーク検出範囲を相対的に狭くすることが可能となり、また、マーク検出時間も短縮することが可能である。
【0040】
前記課題を解決するための第13の手段は、露光装置に使用されるレチクルであって、少なくともその一部を保護するためのレチクル保護部材で覆われたものを、前記保護部材から取り外し、前記露光装置のレチクルステージまで搬送する方法であって、搬送の途中において、前記レチクルを前記保護部材から取り外す前に、前記レチクルの位置と前記レチクル保護部材の位置を測定する工程を有することを特徴とするレチクルの搬送方法(請求項13)である。
【0041】
本手段によれば、レチクルがレチクルステージに搬送されてきたときに、正確な位置に位置させ、その状態でレチクルをレチクルステージに保持することが可能となる。なお、レチクルの取り外しはレチクルステージにレチクルを搭載する前でも搭載した後でも構わない。なお、本手段の詳細、変形として、前記第4の手段から第11の手段の説明において説明してきたような動作をさせたり、これらの動作を付加したりすることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、レチクル全体やパターン面を保護する保護部材を設けた場合でも、レチクルを搬送してレチクルステージに載置する場合に、レチクルを適当な位置に載置可能なレチクル搬送装置、この目的に使用するのに適当なレチクル保護部材、このようなレチクル搬送装置を有する露光装置、及びこのような目的を達成可能なレチクルの搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】レチクル、クリーンフィルタポッド(CFP)、及びレチクルキャリア(RSP)の関係を示す概要図である。
【図2】レチクル、クリーンフィルタポッド(CFP)、及びレチクルキャリア(RSP)の組み立て図である。
【図3】図2の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態の1例であるレチクル搬送装置と、露光装置の概要を示す模式図である。
【図5】大気レチクルストッカからレチクルキャリアを取り出す様子を示す図である。
【図6】レチクルキャリアオープナ内において、レチクルキャリアからクリーンフィルタポッドを取り出す様子を示す図である。
【図7】ロードロック室の概要を示す図である。
【図8】真空レチクルライブラリの構造の概要を示す図である。
【図9】CFPオープナの構造と、クリーンフィルタポッドを上蓋と下蓋に分離し、レチクルを下蓋上に載置された状態で取り出している状態を示す概要図である。
【図10】露光装置内にレチクルと下蓋を搬送した状態を示す概要図である。
【図11】CFPオープナ中に設けられた位置測定装置の概要を示す図である。
【図12】EUV露光装置の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態の例を図を用いて説明するが、最初に、本発明の実施の形態が前提としているレチクルとレチクル保護部材との関係を説明する。図1は、レチクル、レチクル保護部材であるクリーンフィルタポッド(CFP)、及びレチクルキャリア(RSP:レチクルスミフポッドとも言う)の関係を示す概要図である。
【0045】
レチクル1は、上蓋2aと下蓋2bとを有するクリーンフィルタポッド2内に、上蓋2aと下蓋2bに挟まれる形で収納されて保護され、さらに、クリーンフィルタポッド2は、基台3aとカバー3bとを有するレチクルキャリア3内に収納される。なお、レチクルキャリア3は、レチクルスミフポッド(RSP)と呼ばれることもある。又、レチクルキャリア3内には、複数のクリーンフィルタポッド2が収納されることもあるが、以下の実施の形態の説明では、1つのクリーンフィルタポッド2が収納される例について説明する。
【0046】
図2は、このようにして、レチクル1がクリーンフィルタポッド2内に収納され、クリーンフィルタポッド2がレチクルキャリア3に収納された状態を示す組み立て図、図3はその分解斜視図である。なお、以下の図において、前述の図に示された構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付してその説明を省略することがある。
【0047】
カバー3bは、透明な樹脂等から成り立っている。そして、レチクルキャリア3を搬送する際に大気ロボット12が引っかけて持ち上げるための突出部3cが2箇所に設けられている。
【0048】
上蓋2aは、通常アルミニウム等の金属で形成され、フィルタ2cを有すると共に、ガラス等で形成される透明窓2dを有している。フィルタ2cは、ゴミ等の微細粒子の透過を防止しながら十分なコンダクタンスを確保し、クリーンフィルタポッド2の上蓋2aと下蓋2bが係合されて内部空間が形成されたときでも、外部と内部空間との気圧差を小さくして、上蓋2aと下蓋2bに圧力差による力がかからないようにするためのものである。後に述べるように、クリーンフィルタポッド2は、大気中と高真空状態の空間を行き来するので、このようなフィルタを介しての内圧調整機構が必要となる。透明窓2dは、外部からレチクル1の状態を観察できるようにするためのものである。
【0049】
また、上蓋2aには突出部2eが図の左右に2箇所設けられているが、これは後に示すように、この部分を保持部材に引っかけて保持し、下蓋2bを下に下げることにより、上蓋2aと下蓋2bを分離するためのものである。さらに、上蓋2aには、その位置を検出するための位置検出用マーク2fが設けられ、後に説明するように、位置測定装置によってこの位置を測定することにより上蓋2aの位置を検出する。
【0050】
下蓋2bは、通常アルミニウム等の金属で形成され、2つの対となった位置決めピン2gが四隅にそれぞれ設けられており、この位置決めピン2gにより、レチクル1を保持する際にレチクル1の平面方向の位置決めを行う。また、3箇所にレチクル保持用突起2hが設けられており、このレチクル保持用突起2hにより、レチクル1を3点支持するようになっている。
【0051】
さらに、下蓋2bには2つのガラス等からなる透過窓2i、2jが設けられている。これは、本発明の主要部であるレチクル位置測定装置において、下蓋2bの下側からレチクル1に形成されたマークやIDマークを観察できるようにするためのものである。図においては、2箇所に設けられているが、もし、レチクル1に形成される位置合わせ用マークの位置が一定であれば、1箇所に設けるのみでもよい。
【0052】
基台3aには、下蓋2bに設けられた穴(図3では裏側になっていて図示されていない)に緩く嵌合するピン3eが3本設けられ、これにより、下蓋2bと基台3aとのおおまかな位置決めがなされる。また、基台3aには、下蓋2bを4点支持するための突起3dが設けられている。
【0053】
なお、下蓋2bにも、上蓋2aと同じように位置測定用のマークが設けられているが図3では裏側になって図示されていない。さらに、レチクル1にも、位置測定用のマークが設けられているが同様、裏側になって図示されていない。レチクル1の下面がパターン形成面となっている。これは、重力によってパターンが形成された面にゴミ等が付着するのを極力抑制するためである。
【0054】
レチクル1は、図2に示すようにクリーンフィルタポッド2とレチクルキャリア3とに2重に収納された状態で、レチクル搬送装置に搬入されてくる。以下、本発明の実施の形態であるレチクル搬送装置について、その概要を説明する。
【0055】
図4は、本発明の実施の形態の1例であるレチクル搬送装置と、露光装置の概要を示す模式図である。外部から搬送されてきたレチクル1は、大気レチクルストッカ11内に収納される。あるいは、大気レチクルストッカ11内に収納された状態で、搬入される。そして、大気ロボット12により、レチクルキャリアオープナ13に搬入され、レチクルキャリア3内からレチクルキャリアオープナ13内の清浄雰囲気中へクリーンフィルタポッド2が取り出される。その後、大気ロボット14により、クリーンフィルタポッド2が取り出されてロードロック室15中に搬入される。なお、大気ロボット14を含むロードロック室15とレチクルキャリアオープナ13との間の光路は清浄雰囲気となっている。
【0056】
そして、ロードロック室15内にて、真空引きが行われ、ロードロック室15内及びクリーンフィルタポッド2内が真空状態となる。真空引きが完了した後、クリーンフィルタポッド2が真空ロボット16によりロードロック室15内から取り出される。すなわち、ロードロック室15には、2つの扉15a、15bが取り付けられており、ロードロック室15が大気開放状態のとき、扉15bを閉めて、扉15aを開け、クリーンフィルタポッド2をレチクルキャリアオープナ13内から搬入し、その後、扉15aを閉めて真空引きを行い、真空引きが完了した後は、扉15bを開けて、真空ロボット16によりクリーンフィルタポッド2を真空領域内に取り出す。
【0057】
真空領域内に搬入されたクリーンフィルタポッド2は、真空レチクルライブラリ17中に搬入され、そこで一時的に保管される。実際に、露光装置19においてレチクル1を使用するときは、それを収納したクリーンフィルタポッド2が、真空ロボット16により真空レチクルライブラリ17から取り出され、CFPオープナ18内に搬入され、CFPオープナ18により、クリーンフィルタポッド2の上蓋2aがレチクル1と下蓋2bから分離される。なお、CFPオープナ18は、後に説明するようにレチクル1と下蓋2bのプリアライメント機構を有する。
【0058】
その後、レチクル1は、下蓋2bの上に載った状態で、真空ロボット16により、露光装置19のレチクルステージ19aまで搬送される。そして、レチクルステージ19aが有する静電チャックによりチャッキングされて、下蓋2bと分離され、露光に使用される。分離された下蓋2bは、真空ロボット16によりCFPオープナ18内に戻され、真空ロボット16に保持された状態で、レチクル1の使用が終了するまで待機する。
【0059】
レチクル1の使用が終了すると、真空ロボット16が下蓋2bをレチクルステージ19aまで搬送する。そして所定の位置で停止した状態で静電チャックのチャッキングを解除すると、レチクル1が下蓋2bの上に載置される。その状態で、真空ロボット16が下蓋2bをCFPオープナ18内に搬送し、CFPオープナ18内で先に分離した上蓋2aを下蓋2bにかぶせる。その後、真空ロボット16は、クリーンフィルタポッド2を真空レチクルライブラリ17中に戻し保管する。
【0060】
クリーンフィルタポッド2を真空領域から取り出すときは、真空ロボット16により真空レチクルライブラリ17中のクリーンフィルタポッド2をロードロック室15中に入れ、そこでロードロック室15内を大気圧とした後、大気ロボット14によりレチクルキャリアオープナ13中に戻し、レチクルキャリア3中に収納して大気レチクルストッカ11内に格納する。そして、大気レチクルストッカ11に収納されている所望のレチクルキャリア3を作業者あるいはロボットが外部に搬出する。
【0061】
なお、図4中において、20aは、レチクルキャリア3の識別符号を読み取るレチクルキャリアIDリーダ、20bは、レチクル1とクリーンフィルタポッド2の識別符号を読み取るレチクルIDリーダであり、これらによりレチクルキャリア3とレチクル1、クリーンフィルタポッド2の情報を読み取って、目的とするレチクル1を、露光装置に供給したり、露光装置から取り外したレチクル1を、所定のクリーンフィルタポッド2、レチクルキャリア3に収納する。21は、レチクル1が真空引きされる際に受ける温度低下を補償するためにレチクルの温度調節を行う温度補償ランプである。
【0062】
図5は、大気レチクルストッカ11からレチクルキャリア3を取り出す様子を示す図である。大気レチクルストッカは、立て板11aと横板11bからなるラックであり(もう1枚の立て板11aは図示を省略している)、各横板11bの上に、レチクル1とクリーンフィルタポッド2を収納したレチクルキャリア3が載置されている。大気ロボット12のロボットアーム12aにより、選択されたレチクルが収納されているレチクルキャリア3を保持してレチクルキャリアオープナ13へ搬送される。レチクルキャリアオープナ13は公知のレチクルスミフポッド(RSP)と同様な構成であり、その詳細な説明は省略する。図6はレチクルキャリアオープナ13によってレチクルキャリア3のカバー3bと基台3aが分離された状態を示す。レチクルキャリアオープナ13の筐体は不図示であるが、ロボットアーム12によってレチクルキャリア13の上板に配置されたレチクルキャリア3は固定され、レチクルキャリアオープナ13の上板の一部と基台3aとを共に下方向に移動させることによってレチクルキャリアオープナ内の清浄雰囲気中にクリーンフィルタポッド2が配置される。レチクルキャリアオープナ13内に大気ロボット14のロボットアーム14aが入り込み、基台3aの上に載置された状態で清浄雰囲気中でむき出しになったクリーンフィルタポッド2をロボットアーム14aで挟んで取り出し、ロードロック室15内に収納する。そして、基台3aを再び上昇させることによってカバー3bと基台3aとを合体させ、空のレチクルキャリアを大気レチクルストッカ11に戻す。その後、次に必要とするレチクルを選択して上述と同じ要領でロードロック室15まで搬送される。
【0063】
図7は、ロードロック室15の概要を示す図である。この図は、扉15aが開となり、扉15bが閉となっている状態で、ロボットアーム14aにより搬送されてきたクリーンフィルタポッド2が、置き台15c上に載置されている状態を示している。この状態から扉15aを閉じ、真空引きを行った後、扉15bを開けて真空ロボット16によりクリーンフィルタポッド2を取り出す。なお、図4と図7とでは、扉15aと扉15bの位置が異なっているが、図示の都合上このようにしただけであり、これらの位置関係は、どちらのものであってもよい。なお、真空引き中にクリーンフィルタポッド2が開いてしまうとレチクルにゴミが付着する可能性があるため、ロードロック室を真空引きあるいは大気解放する際にはメカ的な手段等でポッド2が開かないように固定しておくことが好ましい。
【0064】
図8は、真空レチクルライブラリ17の構造の概要を示す図である。真空レチクルライブラリ17は、立て板17aと横板17bからなるラックであり(もう1枚の立て板17aは図示を省略している)、各横板17bの上に、レチクル1を収納したクリーンフィルタポッド2が載置されている。なお、各横板17bがL字型をしているのは、クリーンフィルタポッド2の端部を浮かせた状態とし、真空ロボットアーム16aの先端部が、下蓋2bの下部に差し込まれて、下蓋2bを掬い上げることを可能にするためである。
【0065】
図9は、CFPオープナ18の構造と、クリーンフィルタポッド2を上蓋2aと下蓋2bに分離し、レチクル1を下蓋2b上に載置された状態で取り出している状態を示す概要図である。
【0066】
CFPオープナ18は、立て板18aと横板18bからなる1段のラックであり(もう1枚の立て板18aは図示を省略している)、横板18bの上に、上蓋2aの突出部2eが引っかかって、上蓋2aが吊り下がるようになっている。
【0067】
横板18bの上方から、下蓋2bの下面を真空ロボットアーム16aの先端部で支えたような状態で、クリーンフィルタポッド2を下ろしてくると、上蓋2aの突出部2eが横板18bに引っかかり、さらに真空ロボットアーム16aの位置を下げると、下蓋2bとその上に載っているレチクル1は、そのまま下に降りるが、上蓋2aは、突出部2eが横板18bに引っかかるため図に示すように横板18b上に保持されて残り、上蓋2aと、下蓋2b,レチクル1との分離が行われる。その状態で、真空ロボットアーム16aを矢印の方向に引くことにより、下蓋2bに載置されたレチクル1を取り出すことができる。
【0068】
なお、CFPオープナ18には、アライメント用ステージ22が設けられている。このアライメントステージ22は、図に示すようにX方向、これと直角なY方向への移動、及びこれらと直角なZ方向を軸とする回転(θ)が可能となっている。なお、本例では上蓋2aを載せる横板18bは固定であるが、上蓋の位置を調整したい場合には駆動手段を儲けて移動させることも可能である。
【0069】
レチクル1のアライメント(位置調整)を行いたいときは、レチクル1を載置した下蓋2bを真空ロボットアーム16aの先端部で挟んだ状態で、真空ロボットアーム16aを下降させると、下蓋2bをアライメントステージ22の上に載置することができる。下蓋2bをアライメントステージ22の上に載置した状態で、真空ロボットアーム16aの先端部が下蓋2bに接しないような位置まで、真空ロボットアーム16aを下降できるように、アライメントステージ22の中央部が凸形状とされている。なお、アライメントステージ22の中央部には、貫通孔22aが設けられているが、これは、後に説明するように、位置検出装置により、下蓋2bの位置及びレチクル1の位置を検出することができるようにするためである。
【0070】
図10は、露光装置内にレチクル1と下蓋2bを搬送した状態を示す概要図である。23は露光装置の鏡筒、24は露光装置のレチクルステージ19a(図10では図示せず)に設けられた静電チャックである。真空ロボットアーム16aにより、下蓋2b上に載置されたレチクル1を所定の位置まで搬送し、静電チャック24によりチャッキングすると、レチクル1のみがレチクルステージ19aに固定され、下蓋2bは、真空ロボットアーム16aに保持されたままとなる。この状態で、真空ロボットアーム16aにより、下蓋2bをCFPオープナ18内に戻してやる。なお、静電チャック24のチャッキングの前に真空ロボット16或いは他の手段によってレチクルを静電チャック24に押しつけておくことが好ましい。
【0071】
このようにして、レチクル1の使用が完了するまで下蓋2bをCFPオープナ18内に待機させてもよいのであるが、下蓋2b中にゴミ等が入らないようにするためには、上蓋2aと下蓋2bを合わせた状態に戻し、空のクリーンフィルタポッド2を、真空ロボット16を使用して真空レチクルライブラリ17中に戻して、そこに保管するようにしてもよい。
【0072】
この場合には、レチクル1の使用が終了した時点で、対応するクリーンフィルタポッド2をレチクルIDリーダ20bにより識別して取り出し、CFPオープナ18に搬送して、前述のような方法で上蓋2aと下蓋2bを分離した後、真空ロボット16により下蓋2bをレチクルステージ19aの位置まで移動させてレチクル1を受け取るようにしてもよい。
【0073】
このような構成にすると、真空ロボット16が自由になるので、レチクルを露光に用いている際に、他のレチクルを真空レチクルライブラリ17へ搬送したり、次に用いるレチクルのアライメントを行ったりすることもかのうである。
【0074】
又、CFPオープナ18中で、上蓋2aと下蓋2bを合わせた状態にして真空ロボットアーム16aで保持して待機するようにしてもよい。このようにすると、下蓋2b中にゴミ等が入らないようにしつつ、空のクリーンフィルタポッド2を真空レチクルライブラリ17に戻す場合に比して、搬送時間を短縮することができる。
【0075】
以上、レチクル1をレチクルステージ19からクリーンフィルタポッド2に回収する方法について説明したが、さらにクリーンフィルタポッド2をレチクルキャリア3内に収納して搬出する方法は、前述のレチクルキャリアか3からクリーンフィルタポッド2を取り出して、CFPオープナ18まで搬入する工程を逆に行えばよく、当業者にとって、これ以上の説明を要しないであろう。
【0076】
以上の説明においては、レチクル1を内部に収納して保護するクリーンフィルタポッド2は、上蓋2aと下蓋2bから構成されていた。しかし、レチクル1の保護はパターンが形成されている下面のみ、更には、下面のうちパターン形成領域等の保護したい領域のみについて行えばよい場合もあり、この場合には上蓋2aは不要であり、下蓋の形状も異なる。このようなレチクル保護部材を取り扱う場合には、CFPオープナ18において上蓋2aを分離する機構は不要であり、単にレチクル1のアライメントを行うためのアライメントステージ22と後述する位置測定装置とがあればよい。よって、その分装置の構成が簡単となる。なお、どちらの場合でも、アライメントを真空ロボットで行う場合にはアライメントステージ22も不要となる場合がある。
【0077】
又、以上の説明においては、真空レチクルライブラリ17とCFPオープナ18を別々の装置としていたが、これらを統合して一つの装置とすることができる。すなわち、真空レチクルライブラリ17のラックの一つをCFPオープナ18のラックと同じような構成とし、かつ、アライメントステージ22を真空レチクルライブラリ17中に設ければよい。
【0078】
図11に、CFPオープナ18中に設けられた位置測定装置の概要を示す。本実施の形態においては、レチクル1、上蓋2a、下蓋2bの位置測定装置が、これに対応して、レチクル1、上蓋2a、下蓋2bには、それぞれ位置測定用マークが設けられている。上蓋2aには位置測定用マーク25(図3においては2fとして示されている)が設けられ、レチクル1には位置測定用マーク26が設けられ、下蓋2bには位置測定用マーク27が設けられている。
【0079】
そして、位置測定用マーク25の位置を検出するために位置検出装置28が、位置測定用マーク26の位置を検出するために位置測定装置29が、位置測定用マーク27の位置を検出するために位置測定装置30が設けられている。各位置測定用マーク25,26,27の形状の例としては、図11のX方向に平行な線と、Y方向に平行な線をクロスさせた十字マークやX方向とY方向の両方にラインアンドスペースパターンを配置した2次元ラインアンドスペースパターンが一般的であり、この実施の形態においては、上蓋2a、レチクル1、下蓋2bには、これらのマークが図11のY方向に2個設けられている(例えば図3の2f参照)。従って、位置測定装置28〜30も2つずつの検出器を有する。
【0080】
位置測定装置28は、上蓋2aが横板18bに吊り下げられた状態となったときに位置測定用マーク25の位置を測定することにより、上蓋2aの位置を測定する。位置測定装置29は、下蓋2bがアライメントステージ22に載置された状態になったときに貫通孔22aと透過窓2jを通してレチクル1の下面に形成された位置測定用マーク26の位置を測定し、これによりレチクル1の位置を測定する。位置測定装置30は、下蓋2bがアライメントステージ22に載置された状態になったときに貫通孔22aと透過窓2jを通して下蓋2bの下面に形成された位置測定用マーク27の位置を測定し、これにより下蓋2bの位置を測定する。
【0081】
位置測定装置28、29、30の構成は、光学顕微鏡を通して2次元撮像装置により十字線である位置測定用マーク25、26、27の像を撮像し、それにより、位置測定用マーク25、26、27のX方向位置、Y方向位置検出するもので、従来の露光装置に使用されている周知の顕微鏡等を用いることができるのでその説明を省略する。なお、位置測定用マーク25、26、27が2つずつ形成されているので、上蓋2a、レチクル1、下蓋2bのZ軸周りの回転を検出することができる。
【0082】
CFPオープナ18によって上蓋2aと下蓋2bを分離した後、レチクルステージにレチクルを載置するまでのアライメント手順を説明する。オープナ18によって分離された下蓋2bの位置測定用のマーク27を位置測定装置30で測定する。この位置測定装置30は相対的に低倍の顕微鏡で良く、相対的にマーク検出領域が広いものが好ましい。位置測定装置30によって測定されたマーク27が所定の位置に配置されるようにアライメントステージ22をX,Y方向及びz軸周りの回転方向に移動させる。その後、レチクル1に形成された位置測定用のマーク26を位置測定装置29で測定する。この位置測定装置は相対的に高倍の顕微鏡であることが好ましい。高倍の顕微鏡はマーク検出領域が相対的に狭くなる傾向にあるが、マーク27のアライメントによってマーク26がこの相対的に狭い検出領域内に入るようにすることができる。マーク26の測定結果に基づき、マーク26が所定の位置に配置されるように、アライメントステージをX,Y方向及びz軸周りの回転方向に移動させる。このようにして位置決めされたレチクル1及び下蓋2bは再度真空ロボットアームに保持された後、レチクルステージへ搬送され、レチクル1がレチクルステージに固定される。レチクル1はレチクルステージ上で別のアライメントシステムを用いて位置決めされるが、上述のようにレチクルステージに載置する前にレチクルがアライメントされているため、レチクルステージに搭載されるアライメントシステムは相対的にマーク検出領域を狭くする事が可能であり、測定精度を高くしやすくなる。なお、アライメントステージ26を移動させずに、真空ロボットアームを用いて位置決めすることも可能である。この場合、位置合わせマーク27の位置を測定後、真空ロボットアームの位置を調整し、その後、位置合わせマーク26の位置を測定し、この位置測定結果を考慮してレチクルステージへ搬送すればよい。更に、アライメントステージ22と真空ロボットアーム16を併用する場合もある。例えば、真空ロボットアーム16でX,Y方向の位置合わせを行い、アライメントステージ22でZ軸周りの回転を調整することが可能である。この場合は、下蓋2bの位置合わせは、アライメントステージ22上で位置測定を行った後、真空ロボットアームで下蓋2bを持ち上げてX,Y方向の位置を調整後、アライメントステージ22に載置する。Z軸周りの回転調整は真空ロボットアームによる調整の前または後にアライメントステージ22で行う。その後、位置合わせ用マーク26を測定し、アライメントステージ22によってZ軸周りの回転調整を行った後、レチクルステージへ搬送する際に真空ロボットアームでX,Y方向の位置調整を行ってレチクルをレチクルステージに載置する。
【0083】
レチクル1の位置と下蓋2bの位置の測定を行うのは、このような目的のためである。なお、レチクル1に設けられた位置合わせ用マーク26を測定する位置測定装置29の検出領域が十分に広く、必ず測定することが可能であれば、下蓋2bに設けられた位置合わせ用マーク27の測定は不要である。
【0084】
さらに、レチクル1の使用が終わって、レチクル1をレチクルステージ19aから回収するために下蓋2bをレチクルステージ19aに搬送する前に、下蓋2bの位置測定を行うことが好ましい。もし、レチクルステージ19aの静電チャック24のチャッキングを解除し、レチクル1を下蓋2bの上に載置した場合に、レチクル1と下蓋2bの位置関係が正規の位置になっていないと、レチクル1と下蓋2bが異常接触し(例えばレチクル1が図3に示す位置決めピン2gの間にうまく嵌り込まず、浮いた状態となったり擦れたりする)、レチクル1の破損やゴミの発生等の原因となる。
【0085】
これを防ぐために、位置測定用マーク27の位置を測定して下蓋2bの位置を知ることにより、真空ロボットアーム16aにより下蓋2bをレチクルステージ19aに搬送して、真空ロボットアーム16aを所定の位置で停止した場合の、レチクル1と下蓋2bとの相対位置関係を知り、位置ずれの分だけ真空ロボットアーム16aの停止位置を補正する。あるいは、真空ロボットアーム16aを所定の位置で停止した場合の、レチクル1と下蓋2bとの相対位置関係を知り、アライメントステージ22によりその分だけ下蓋2bの位置を修正してから、真空ロボット16によりレチクルステージ19aの所定の位置に搬送する。
【0086】
位置測定用マーク25の位置を測定することによる上蓋2aの位置測定は、レチクル1の使用が終わり、レチクル1が下蓋2bに載置されて回収されてきたときや上述のポッド内にゴミが入り込むのを防ぐために上蓋と下蓋を閉じて大気させる場合等に、上蓋2aと下蓋2bを正確に合体させるために行う。すなわち、CFPオープナ18内で下蓋2bを真空ロボットアーム16aにより持ち上げて、横板18bに吊り下がっている上蓋2aに嵌め込むのであるが、このときに上蓋2aと下蓋2bとの間に位置ずれがあると、下蓋2bが上蓋2aにうまく合わさらず、互いに損傷したり、異常接触によりゴミが発生したりする恐れがある。
【0087】
そこで、下蓋2bを上蓋2aに嵌め込む前に、上蓋2aと下蓋2bの相対位置を測定し、これらがうまく嵌り込むように真空ロボットアーム16aの位置を調整してから上昇させるか、あるいは、アライメントステージ22を有する場合には、アライメントステージ22により下蓋2bの位置を調整してから真空ロボットアーム16aにより持ち上げるようにする。
【0088】
なお、この場合に、レチクル1の位置が下蓋2bに対して不適当な位置で下蓋2bに収納された場合には、この状態で上蓋と下蓋を閉じるとレチクルが破損する場合がある。従って、上蓋2aと下蓋2bの位置のみならず、レチクル1の位置も測定し、レチクル1が下蓋2bに対して正常な位置に配置されているか否かを測定することが好ましい。もし、レチクルの位置が不適当な場合には、再度レチクルステージに戻し、レチクルを吸着させて下蓋の位置を調整後下蓋に載せ直す方法や、レチクルの位置のみを直す別の機構を設ける方法や、上蓋を載せずに、そのままロードロック室を通して装置外へ搬出する方法を行うことができる。なお、上蓋を載せないで装置外へ搬出する場合は上蓋も別途装置外へ搬出する。 なお、保護部材として上蓋2aを有せず、下蓋2bだけを有して、レチクル1のパターン面のみを保護する形式のものでは、上蓋2aと下蓋2bの位置合わせが不要であることは言うまでもない。
【0089】
なお、上述の説明では、X,Y方向とZ軸周りの回転のみについて位置あわせを行っているが、Z軸方向、X,Yの各軸周りの回転等についても位置合わせを行っても良い。
【0090】
又、以上の説明は、EUV露光装置を例として説明したが、本発明はEUV露光装置以外の露光装置や検査装置、マスク洗浄装置等の搬送装置においても、必要に応じて適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1…レチクル、2…クリーンフィルタポッド、2a…上蓋、2b…下蓋、2c…フィルタ、2d…透明窓、2e…突出部、2g…位置決めピン、2h…レチクル保持用突起、2j…ガラス窓、3…レチクルキャリア、3a…基台、3b…カバー、11…大気レチクルストッカ、12…大気ロボット、13…レチクルキャリアオープナ、14…大気ロボット、14a…ロボットアーム、15…ロードロック室、15a…扉、15b…扉、16…真空ロボット、16a…真空ロボットアーム、17…真空レチクルライブラリ、17b…各横板、18…CFPオープナ、18b…横板、19…露光装置、19a…レチクルステージ、20a…レチクルキャリアIDリーダ、20b…レチクルIDリーダ、21…温度補償ランプ、22…アライメントステージ、22a…貫通孔、23…鏡筒、24…静電チャック、25…位置測定用マーク、26…位置測定用マーク、27…位置測定用マーク、28…位置測定装置、29…位置測定装置、30…位置測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光装置に使用されるレチクルの、少なくとも一部を保護するレチクル保護部材であって、その位置を検出するためのアライメントマークが設けられていることを特徴とするレチクル保護部材。
【請求項2】
請求項1に記載のレチクル保護部材であって、保護対象であるレチクルが、片面にパターンが形成された反射型レチクルであり、当該レチクル保護部材は、前記レチクルのパターンが形成された面を保護する第1部材と、パターンが形成された面と反対の面を保護する第2部材とを有し、前記第1部材と第2部材は、その各々に前記アライメントマークが設けられていることを特徴とするレチクル保護部材。
【請求項3】
請求項1に記載のレチクル保護部材であって、保護対象であるレチクルが、片面にパターンが形成された反射型レチクルであり、当該レチクル保護部材は、前記レチクルのパターンが形成された面のうち少なくともパターンが形成される領域を保護するものであることを特徴とするレチクル保護部材。
【請求項4】
レチクルを搬送する装置であって、前記レチクルの少なくとも一部を保護するためのレチクル保護部材で覆われた状態のレチクルを搬送するレチクル搬送手段と、前記レチクルの位置を測定する第1の位置測定手段と、前記レチクル保護部材の位置を測定する第2の位置測定手段とを有することを特徴とするレチクル搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレチクル搬送装置であって、保護対象であるレチクルが、片面にパターンが形成された反射型レチクルであり、当該レチクル保護部材は、前記レチクルのパターンが形成された面を保護する第1部材と、パターンが形成された面と反対の面を保護する第2部材とを有し、前記第2の位置測定装置は、前記第1の部材と第2部材の位置を独立に測定するものであることを特徴とするレチクル搬送装置。
【請求項6】
請求項4に記載のレチクル搬送装置であって、保護対象であるレチクルが、片面にパターンが形成された反射型レチクルであり、前記レチクル保護部材は、前記レチクルのパターンが形成された面のうち少なくともパターンが形成される領域を保護するものであることを特徴とするレチクル搬送装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6のうちいずれか1項に記載のレチクル搬送装置であって、前記第1の位置測定手段及び第2の位置測定手段によって測定されたレチクルの位置及び前記レチクル保護部材の位置に基づいて、前記レチクル保護部材及びレチクルの位置を補正する位置補正手段を有することを特徴とするレチクル搬送装置。
【請求項8】
請求項5に記載のレチクル搬送装置であって、前記第1の位置測定手段及び第2の位置測定手段によって測定されたレチクルの位置及び前記レチクル保護部材の位置に基づいて、前記第1部材及び前記レチクルの位置を補正する位置補正手段を有することを特徴とするレチクル搬送装置。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載のレチクル搬送装置であって、前記レチクル搬送手段は、レチクルステージへ、レチクル保護部材によって保護されたレチクルを搬送し、前記レチクルステージに前記レチクルを搭載した後に、前記レチクル保護部材を前記レチクルステージから他の場所へ搬送するものであり、前記位置補正手段による前記レチクル保護部材又は前記第1部材と、前記レチクルの位置補正を、前記レチクルを前記レチクルステージに搭載する前に行う機能を有することを特徴とするレチクル搬送装置。
【請求項10】
請求項4から請求項9のうちいずれか1項に記載のレチクル搬送装置であって、前記レチクルの搬送手段は、レチクルステージに搭載された前記レチクルを前記レチクルステージから回収する際に、前記レチクル保護部材を前記レチクルステージまで搬送して前記レチクルを前記レチクル保護部材によって保護し、その後、前記レチクル保護部材とレチクルを搬送することにより、前記レチクルを前記レチクルステージから回収する機能を有し、前記レチクルステージへ前記レチクル保護部材を搬送する前に、前記第2の測定手段により前記レチクル保護部材の位置を測定する機能を有することを特徴とするレチクル搬送装置。
【請求項11】
請求項5に記載のレチクル搬送装置、又は請求項7から請求項10のうちいずれか1項に記載のレチクル搬送装置のうち請求項5に記載のレチクル搬送装置でもあるものであって、前記第1部材と前記第2部材の位置を測定した後に、その測定結果に基づいて、前記第1部材と前記第2部材とを位置合わせして合体させる機能を有することを特徴とするレチクル搬送装置。
【請求項12】
請求項4から請求項11のうちいずれか1項に記載のレチクル搬送装置を備えたことを特徴とする露光装置。
【請求項13】
露光装置に使用されるレチクルであって、少なくともその一部を保護するためのレチクル保護部材で覆われたものを、前記保護部材から取り外し、前記露光装置のレチクルステージまで搬送する方法であって、搬送の途中において、前記レチクルを前記保護部材から取り外す前に、前記レチクルの位置と前記レチクル保護部材の位置を測定する工程を有することを特徴とするレチクルの搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−124591(P2011−124591A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7178(P2011−7178)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【分割の表示】特願2004−335348(P2004−335348)の分割
【原出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】