説明

二流体ノズルおよびそれを用いた基板処理装置

【課題】気体の吐出流量を変更して処理対象に応じた処理を施すことができる二流体ノズルおよびそれをそなえた基板処理装置を提供する。
【解決手段】DIWの液滴をウエハWに供給するための二流体ノズル3には、DIWを吐出する円状の処理液吐出口28と、処理液吐出口28を取り囲む第1気体吐出口29と、第1気体吐出口29を取り囲む第2気体吐出口31とが形成されている。第1気体吐出口29からは小流量で窒素ガスが吐出されるようになっており、第2気体吐出口31からは大流量で窒素ガスが吐出されるようになっている。第1および第2気体吐出口29,31への窒素ガスの供給を制御装置によって制御することにより、一つの二流体ノズル3で、大流量での窒素ガスの吐出と、小流量での窒素ガスの吐出とを行うことができる。これにより、表面状態に応じた処理をウエハWに施すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二流体ノズルおよびそれを用いた基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、半導体ウエハ(以下、「ウエハ」という。)の表面の異物(パーティクル等)を除去するための洗浄処理が不可欠である。ウエハの表面を洗浄するための基板処理装置には、たとえば、処理液(洗浄液)と気体とを混合することにより処理液の液滴を形成し、この処理液の液滴をウエハの表面に供給して洗浄処理を行うものがある。
【0003】
具体的には、前記基板処理装置は、たとえば、ウエハを水平に保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持されたウエハの表面に向けて処理液の液滴を噴射する二流体ノズルと、スピンチャックに保持されたウエハの上方で二流体ノズルを移動(スキャン)させるノズル移動機構とを備えている。二流体ノズルには、処理液を吐出する処理液吐出口と、気体を吐出する気体吐出口とが一つずつ形成されている。
【0004】
二流体ノズルから噴射される処理液の液滴をウエハに衝突させることにより、ウエハの表面に付着している異物を、処理液の液滴の運動エネルギーにより、物理的に除去することができる。また、ウエハの上方で二流体ノズルをスキャンさせることにより、ウエハの表面の全域に処理液の液滴を供給することができる(たとえば、下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−270564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
処理液の液滴によってウエハの表面を物理的に洗浄する場合、その表面の状態に応じた流量で前記気体吐出口から気体を吐出させたいことがある。たとえばCVD膜が形成されたウエハのように、その表面にパターンが形成されていないウエハの場合、高いパーティクル除去率を得るために気体の流量を多くすることが好ましい。一方、パターンが表面に形成されているウエハの場合、パターンへのダメージを抑制するために、気体の流量を少なくすることが好ましい。
【0006】
気体の流量を少なくする場合には、小流量の気体で処理液の液滴を効率的に形成するために、気体吐出口の開口面積を小さくして気体の流速を高める必要がある。したがって、大流量に対応した二流体ノズルでは、小流量気体での効率的な液滴形成が困難になる。
一方、開口面積の小さい気体吐出口から大流量で気体を吐出させようとした場合、気体の圧力に損失が生じて所望の流量を得ることができないことがある。したがって、小流量に対応した二流体ノズルでは、十分なパーティクル除去性能を達成し難い。
【0007】
このように、一つの二流体ノズルでは、ほぼ一定流量の気体での液滴吐出しか行うことができず、ウエハの表面状態に応じた適切な処理を行うことができなかった。
同様の問題は、洗浄液によってウエハを洗浄する場合だけでなく、その他の処理液(たとえば薬液やリンス液、有機溶剤など)によってウエハの表面を処理する場合にも生じていた。
【0008】
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、気体の吐出流量を変更して処理対象に応じた処理を施すことができる二流体ノズルおよびそれをそなえた基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、処理液および気体が導入されるケーシング(21)と、前記ケーシングに形成され、処理液を吐出するための処理液吐出口(28)と、前記処理液吐出口を取り囲むように前記ケーシングに形成され、気体を吐出するための環状の第1気体吐出口(29)と、前記第1気体吐出口を取り囲むように前記ケーシングに形成され、気体を吐出するための環状の第2気体吐出口(31)とを含み、前記処理液吐出口から処理液を吐出させつつ、前記第1および第2気体吐出口の少なくとも一方から気体を吐出させることにより、前記ケーシング外で処理液と気体とを混合させて処理液の液滴を形成し、この処理液の液滴を処理対象(W)に向けて吐出するようになっている、二流体ノズル(3)である。
【0010】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この発明によれば、処理液吐出口を取り囲む環状の第1気体吐出口と、この第1気体吐出口を取り囲む環状の第2気体吐出口を設け、これら第1および第2気体吐出口から選択的に気体を吐出させることにより、二流体ノズルから吐出される気体の流量を変更することができる。たとえば、第1および第2気体吐出口のいずれか一方から気体を吐出させたり、第1および第2気体吐出口の両方から気体を吐出させたりして、気体の吐出流量を変更することができる。これにより、一つの二流体ノズルで、処理対象に応じた流量の気体を吐出させて、処理対象に応じた処理を行うことができる。
【0011】
処理液としては、たとえば、薬液、リンス液、有機溶剤などを用いることができる。
請求項2記載の発明は、前記第1気体吐出口は第1流量で気体を吐出するためのものであり、前記第2気体吐出口は、前記第1流量と異なる第2流量で気体を吐出するためのもの、請求項1記載の二流体ノズルである。
この発明によれば、第1および第2気体吐出口からの気体の吐出流量を互いに異ならせることにより、第1および第2気体吐出口のいずれから気体を吐出させるかによって、二流体ノズルから吐出される気体の流量を変更することができる。たとえば前記第1流量および第2流量の一方が小流量であり、他方が大流量である場合には、第1および第2気体吐出口のいずれか一方から気体を吐出させることにより、二流体ノズルから大流量で気体を吐出させたり、小流量で気体を吐出させたりすることができる。またこの場合、第1および第2気体吐出口の両方から気体を吐出させることにより、より大流量での気体の吐出が可能である。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記第1流量は、前記第2流量よりも小流量である、請求項2記載の二流体ノズルである。
この発明によれば、第2気体吐出口は、第1気体吐出口よりも処理液吐出口に近い位置に形成されているので、前記第1流量が前記第2流量よりも小流量であっても、第1気体吐出口から吐出された気体と、処理液吐出口から吐出された処理液とを確実に混合させて処理液の液滴を効率的に形成することができる。したがって、前記第1流量がたとえば小流量であっても、第1気体吐出口から吐出された気体と、処理液吐出口から吐出された処理液とを確実に混合させることができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、前記第1気体吐出口の開口面積は、前記第2気体吐出口の開口面積よりも小さくされている、請求項3記載の二流体ノズルである。
この発明によれば、第1気体吐出口の開口面積を第2気体吐出口の開口面積よりも小さくすることにより、第2気体吐出口から吐出される気体の流速を、第1気体吐出口から吐出される気体の流速よりも高めることができる。これにより、前記第1流量が前記第2流量よりも小流量であっても、処理液の液滴をより効率的に形成することができる。
【0014】
請求項5記載の発明は、処理対象の基板(W)を保持して回転させるための基板回転手段(2)と、前記基板回転手段によって回転されている基板の主面に、処理液の液滴を供給するための請求項1〜4のいずれか一項に記載の二流体ノズルと、前記二流体ノズルのケーシングに処理液を供給するための処理液供給手段(10)と、前記二流体ノズルのケーシングに気体を供給するための気体供給手段(11,12)と、前記二流体ノズルを前記基板の主面に沿って移動させるためのノズル移動手段(16)と、前記処理液供給手段および気体供給手段を制御して、前記二流体ノズルの処理液吐出口から処理液を吐出させつつ、前記二流体ノズルの第1および第2気体吐出口の少なくとも一方から気体を吐出させるための制御手段(33)とを含む、基板処理装置(1)である。
【0015】
この発明によれば、処理液供給手段および気体供給手段からそれぞれ処理液および気体を二流体ノズルのケーシングに供給して、二流体ノズルから処理液および気体を吐出させることにより、処理液および気体をケーシング外で混合させて処理液の液滴を形成する。そして、この処理液の液滴を、基板回転手段によって保持され回転されている基板の主面に供給しつつ、前記二流体ノズルをノズル移動手段によって前記主面に沿って移動させることにより、前記主面の全域に処理液の液滴を供給して処理液による処理を施すことができる。
【0016】
二流体ノズルから吐出される気体の流量は、前述のように、変更することができる。したがって、一つの二流体ノズルで、前記主面の状態に応じた処理を基板に施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の構成を説明するための図解図である。この基板処理装置1は、処理対象の基板としての半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)に処理液(薬液、リンス液、有機溶剤など)による処理を施すための枚葉式の処理装置であり、ウエハWを水平に保持して回転させるスピンチャック2と、スピンチャック2に保持されたウエハWの表面(上面)に処理液の液滴を供給する二流体ノズル3と、スピンチャック2に保持されたウエハWの表面に処理液を供給する処理液ノズル4とを備えている。
【0018】
スピンチャック2は、鉛直な方向に延びる回転軸5と、回転軸5の上端に水平に取り付けられた円板状のスピンベース6とを有している。スピンチャック2は、スピンベース6の上面周縁部に立設された複数本のチャックピン7によって、ウエハWをほぼ水平に保持することができるようになっている。
すなわち、複数本のチャックピン7は、スピンベース6の上面周縁部において、ウエハWの外周形状に対応する円周上で適当な間隔をあけて配置されており、ウエハWの裏面(下面)周縁部を支持しつつ、ウエハWの周面の異なる位置に当接することにより、互いに協働してウエハWを挟持し、このウエハWをほぼ水平に保持することができる。
【0019】
また、回転軸5には、モータなどの駆動源を含むチャック回転駆動機構8が結合されている。複数本のチャックピン7でウエハWを保持しつつ、チャック回転駆動機構8から回転軸5に駆動力を入力することにより、ウエハWの表面の中心を通る鉛直な軸線まわりにウエハWを回転させることができる。
なお、スピンチャック2としては、このような構成のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することによりウエハWをほぼ水平な姿勢で保持し、さらにその状態でほぼ鉛直な軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
【0020】
二流体ノズル3は、処理液と気体とを二流体ノズル3のケーシング外で混合させて処理液の液滴を形成する外部混合型の二流体ノズル3であり、その吐出口をウエハW側(下方)に向けた状態で、ほぼ水平に延びるアーム9の先端に取り付けられている。二流体ノズル3には、DIW供給管10、第1窒素ガス供給管11および第2窒素ガス供給管12が接続されている。
【0021】
DIW供給管10からは所定の流量(たとえば、100〜150mL/min)でリンス液(処理液)としてのDIW(脱イオン化された水)が二流体ノズル3に供給されるようになっている。第1窒素ガス供給管11からは所定の小流量(たとえば、40L/min未満、好ましくは5〜40L/min。具体的には、たとえば15L/min)で窒素ガスが二流体ノズル3に供給されるようになっている。第2窒素ガス供給管12からは所定の大流量(たとえば、50L/min以上、好ましくは50〜150L/min。具体的には、たとえば80L/min)で窒素ガスが二流体ノズル3に供給されるようになっている。
【0022】
DIW供給管10、第1窒素ガス供給管11および第2窒素ガス供給管12には、それぞれ、DIWバルブ13、第1窒素ガスバルブ14および第2窒素ガスバルブ15が介装されており、各バルブ13,14,15を開閉することにより、二流体ノズル3へのDIWおよび窒素ガスの供給を制御することができる。
また、二流体ノズル3には、アーム9を介して二流体ノズル移動機構16が結合されている。この二流体ノズル移動機構16によって、スピンチャック2の外方に設けられた鉛直な揺動軸まわりにアーム9を水平揺動させることができるようになっている。これにより、アーム9の先端に取り付けられた二流体ノズル3を、スピンチャック2に保持されたウエハWの上方に配置したり、スピンチャック2の上方から退避させたりすることができる。
【0023】
また、二流体ノズル移動機構16によって二流体ノズル3を水平移動させることにより、二流体ノズル3からウエハWの表面への前記液滴の供給位置を、スピンチャック2に保持されたウエハWの表面の中心部から周縁部に至る範囲でスキャン(移動)させることができる。
処理液ノズル4は、たとえば、連続流の状態で処理液を吐出するストレートノズルであり、その吐出口をウエハW側(下方)に向けた状態で、ほぼ水平に延びるアーム17の先端に取り付けられている。処理液ノズル4には、DIW供給管18が接続されており、DIW供給管18からDIWが処理液ノズル4に供給されるようになっている。DIW供給管18には、DIWバルブ19が介装されており、このDIWバルブ19を開閉することにより、処理液ノズル4へのDIWの供給を制御することができる。
【0024】
また、処理液ノズル4には、アーム17を介して処理液ノズル移動機構20が結合されている。この処理液ノズル移動機構20によって、スピンチャック2の外方に設けられた鉛直な揺動軸まわりにアーム17を水平揺動させることができるようになっている。これにより、アーム17の先端に取り付けられた処理液ノズル4を、スピンチャック2に保持されたウエハWの上方に配置したり、スピンチャック2の上方から退避させたりすることができる。
【0025】
図2は、二流体ノズル3の構造を図解的に示す図である。図2(a)は、二流体ノズル3の縦断面を示し、図2(b)は、スピンチャック2側から見た二流体ノズル3の底面を示している。また、図2(b)において、ハッチングが施された範囲は、後述の処理液吐出口28、第1気体吐出口29および第2気体吐出口31を示している。
二流体ノズル3は、ほぼ円柱状の外形を有しており、ケーシングを構成する外筒21と、外筒21の内部に嵌め込まれた内筒22と、外筒21および内筒22の間に配置された中間筒23とを含む。内筒22、外筒21および中間筒23は、それぞれ共通の中心軸線L1上に同軸配置されており、隣接する筒同士(内筒22と中間筒23、中間筒23と外筒21)は互いに連結されている。
【0026】
内筒22の内部空間は、DIW供給管10からのDIWが流通する直線状の処理液流路24となっている。また、内筒22と中間筒23との間には、第1窒素ガス供給管11からの窒素ガスが流通する円筒状の第1気体流路25が形成されおり、中間筒23と外筒21との間には、第2窒素ガス供給管12からの窒素ガスが流通する円筒状の第2気体流路26が形成されている。
【0027】
処理液流路24は、内筒22の上端で処理液導入口27として開口しており、この処理液導入口27を介して、DIW供給管10からのDIWが処理液流路24内に導入されるようになっている。また、処理液流路24は、内筒22の下端で、中心軸線L1上に中心を有する円状の処理液吐出口28として開口している。処理液流路24に導入されたDIWは、この処理液吐出口28から吐出されるようになっている。
【0028】
第1気体流路25は、中心軸線L1と共通の中心軸線を有する円筒状の間隙であり、内筒22および中間筒23の上端部で閉塞され、内筒22および中間筒23の下端で、中心軸線L1上に中心を有し、処理液吐出口28を取り囲む円環状の第1気体吐出口29として開口している。第1気体流路25の下端部は、第1気体流路25の長さ方向における中間部よりも流路面積が小さくされ、下方に向かって小径となっている。
【0029】
また、中間筒23の中間部には、第1気体流路25に連通する第1気体導入口30が形成されている。第1気体導入口30には、中間筒23および外筒21を貫通した状態で第1窒素ガス供給管11が接続されており、第1窒素ガス供給管11の内部空間と第1気体流路25とは連通されている。第1窒素ガス供給管11からの窒素ガスは、この第1気体導入口30を介して第1気体流路25に導入され、第1気体吐出口29から吐出されるようになっている。
【0030】
第2気体流路26は、中心軸線L1と共通の中心軸線を有する円筒状の間隙であり、中間筒23および外筒21の上端部で閉塞され、中間筒23および外筒21の下端で、中心軸線L1上に中心を有し、処理液吐出口28および第1気体吐出口29を取り囲む円環状の第2気体吐出口31として開口している。第2気体流路26の下端部は、下方に向かって小径となっている。
【0031】
また、外筒21の中間部には、第2気体流路26に連通する第2気体導入口32が形成されている。第2気体導入口32には、外筒21を貫通した状態で第2窒素ガス供給管12が接続されており、第2窒素ガス供給管12の内部空間と第2気体流路26とは連通されている。第2窒素ガス供給管12からの窒素ガスは、この第2気体導入口32を介して第2気体流路26に導入され、第2気体吐出口31から吐出されるようになっている。
【0032】
第1気体吐出口29の開口面積は、第2気体吐出口31の開口面積よりも小さくされている。具体的には、たとえば、第1気体吐出口29の幅a1(=(外径−内径)/2)が0.1mm以下にされ、第2気体吐出口31の幅b1(=(外径−内径)/2)が0.1mmを超える値にされている。以下に、第1気体吐出口29の幅a1、第2気体吐出口31の幅b1、処理液吐出口28の直径c1の具体的な数値を例示する。
【0033】
(例1)第1気体吐出口29の幅a1=0.3mm、第2気体吐出口31の幅b1=0.5mm、処理液吐出口28の直径c1=2.6mm
(例2)第1気体吐出口29の幅a1=0.2mm、第2気体吐出口31の幅b1=0.4mm、処理液吐出口28の直径c1=2.4mm
処理液吐出口28からDIWを吐出させつつ、第1および第2気体吐出口29,31の少なくとも一方から窒素ガスを吐出させることにより、ケーシング(外筒21)外でDIWに窒素ガスを衝突(混合)させてDIWの液滴を形成することができる。そして、このDIWの液滴は、噴流となって、二流体ノズル3の下方に配置されたウエハWの表面に衝突する。これにより、ウエハWの表面に付着しているパーティクル等の異物がDIWの液滴の運動エネルギーによって物理的に除去される。
【0034】
図3は、前記基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。この基板処理装置1は、制御装置33を備えている。この制御装置33は、チャック回転駆動機構8、二流体ノズル移動機構16および処理液ノズル移動機構20の動作を制御する。また、制御装置33は、DIWバルブ13、第1窒素ガスバルブ14、第2窒素ガスバルブ15およびDIWバルブ19の開閉を制御する。
【0035】
図4は、前記基板処理装置1によるウエハWの処理の一例について説明するための図である。以下では、図1〜図4を参照しつつ、ウエハWの処理の一例について説明する。
処理対象のウエハWは、図示しない搬送ロボットによって搬送されてきて、搬送ロボットからスピンチャック2へと受け渡される。ウエハWがスピンチャック2に受け渡されると、制御装置33は、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWを所定の回転速度(たとえば、500〜1500rpm)で回転させる。また、制御装置33は、処理液ノズル移動機構20を制御して、処理液ノズル4を水平移動させることにより、処理液ノズル4をウエハWの表面の中心に対向させる。
【0036】
その後、制御装置33は、DIWバルブ13、第1窒素ガスバルブ14および第2窒素ガスバルブ15を閉じるとともに、DIWバルブ19を開いて、図4(a)に示すように、回転されているウエハWの表面の回転中心付近に処理液ノズル4からDIWを供給させる。ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの表面全域に行き渡る。これにより、ウエハWの表面全域にプリウェット処理が施される。
【0037】
DIWの供給が所定のプリウェット処理時間(たとえば、5〜60sec)に亘って行われると、制御装置33は、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWの回転速度を所定の回転速度(たとえば、500〜2500rpm)に変更させる。そして、制御装置33は、処理液ノズル移動機構20を制御して、処理液ノズル4からDIWを吐出させつつ処理液ノズル4を水平移動させることにより、処理液ノズル4をウエハWの表面の中心以外(たとえば、中心付近)に対向させる。
【0038】
その後、制御装置33は、二流体ノズル移動機構16を制御して、処理液ノズル4と二流体ノズル3とが干渉しないウエハWの上方に二流体ノズル3を配置させる。そして、制御装置33は、DIWバルブ13を開き、第1および第2窒素ガスバルブ14,15の少なくとも一方を開いて、図4(b)に示すように、二流体ノズル3からDIWおよび窒素ガスを吐出させる。吐出されたDIWは、窒素ガスと混合されてDIWの液滴となり、ウエハWの表面に衝突する。これにより、二流体ノズル3からのDIWの液滴と、処理液ノズル4からのカバーリンス液としてのDIW(液滴と同種の液体)とがウエハWの表面に同時に供給される。
【0039】
また、制御装置33は、二流体ノズル3からウエハWの表面にDIWの液滴を供給しつつ、二流体ノズル移動機構16を制御して、二流体ノズル3を水平移動させることにより、ウエハWの表面へのDIWの液滴の供給位置を、ウエハWの表面の中心部から周縁部に至る範囲でスキャンさせる。これにより、ウエハWの表面全域にDIWの液滴が均一に供給され、パーティクルなどの異物がウエハWの表面から物理的に除去される(液滴処理)。
【0040】
処理対象がその表面にパターンが形成されているウエハWである場合、前記液滴処理において、制御装置33によってDIWバルブ13および第1窒素ガスバルブ14を開き、第2窒素ガスバルブ15を閉じて、処理液吐出口28からDIWを吐出させつつ、第1気体吐出口29のみから窒素ガスを前記小流量で吐出させてもよい。これにより、パターンのダメージを抑制しつつ、ウエハWの表面から異物を良好に除去することができる。第1気体吐出口29の開口面積は小さくされている(幅a1が0.1以下mmにされている)ので、窒素ガスの吐出流量が前記小流量であっても、吐出される窒素ガスの流速を高めてDIWの液滴を効率的に形成することができる。また、第1気体吐出口29は、第2気体吐出口31よりも処理液吐出口28の近くに形成されている(処理液吐出口28を取り囲むように隣接して形成されている)ので、第2気体吐出口31のみから前記小流量で窒素ガスを吐出させるよりも、効率的にDIWの液滴を形成することができる。
【0041】
一方、処理対象がその表面にパターンが形成されていないウエハWである場合、前記液滴処理において、制御装置33によってDIWバルブ13および第2窒素ガスバルブ15を開き、第1窒素ガスバルブ14は閉じて、処理液吐出口28からDIWを吐出させつつ、第2気体吐出口31のみから窒素ガスを前記大流量で吐出させてもよい。また、制御装置33によってDIWバルブ19、ならびに第1および第2窒素ガスバルブ14,15を開いて、処理液吐出口28からDIWを吐出させつつ、第1および第2気体吐出口29,31の両方から大流量(前記小流量+前記大流量)で窒素ガスを吐出させてもよい。これにより、高いパーティクル除去率(異物除去率)でウエハWの表面から異物を除去することができる。
【0042】
DIWの液滴の供給が所定の液滴処理時間(たとえば、5〜60sec)に亘って行われると、制御装置33は、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWの回転速度を所定の回転速度(たとえば、500〜1500rpm)に変更させる。そして、制御装置33は、DIWバルブ13、第1窒素ガスバルブ14および第2窒素ガスバルブ15を閉じて、二流体ノズル3からのDIWおよび窒素ガスの吐出を停止させる。その後、制御装置33は、二流体ノズル移動機構16を制御して、二流体ノズル3をウエハWの上方から退避させる。
【0043】
二流体ノズル3がウエハWの上方から退避させられると、制御装置33は、図4(c)に示すように、処理液ノズル移動機構20を制御して、処理液ノズル4からDIWを吐出させつつ処理液ノズル4を水平移動させることにより、再び、処理液ノズル4をウエハWの表面の中心に対向させる。これにより、処理液ノズル4からウエハWの表面の回転中心付近にDIWが供給され、ウエハWの表面全域にリンス処理が施される。
【0044】
DIWの供給が所定のリンス処理時間(たとえば、5〜60sec)に亘って行われると、制御装置33は、DIWバルブ19を閉じて、処理液ノズル4からのDIWの吐出を停止させる。その後、制御装置33は、処理液ノズル移動機構20を制御して、処理液ノズル4をウエハWの上方から退避させる。そして、制御装置33は、図4(d)に示すように、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWの回転速度を所定の高回転速度(たとえば、2500〜4000rpm)に変更させる。これにより、ウエハWの表面に付着しているDIWが、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの周囲に振り切られ、ウエハWの表面が乾燥する(スピンドライ処理)。
【0045】
スピンドライ処理が所定のスピンドライ処理時間(たとえば、20〜60sec)に亘って行われると、制御装置33は、チャック回転駆動機構8を制御して、ウエハWの回転を停止させる。そして、図示しない搬送ロボットによって、スピンチャック2から処理後のウエハWが搬送されていく。
図5は、前記基板処理装置1を用いてウエハWを処理した場合における窒素ガスの吐出流量とパーティクル除去率との関係を示す図である。パーティクル除去率は、処理前後のウエハWの表面に付着しているパーティルの数をそれぞれ測定することにより求めた。また、二流体ノズル3は、処理液吐出口28、第1気体吐出口29および第2気体吐出口31が前記例1の寸法に設定されているものを用いた。
【0046】
図5に示すように、前記大流量で窒素ガスを吐出させることにより、約80%以上の高パーティクル除去率を得ることができた。
また、前記小流量で窒素ガスを吐出させることにより、パーティクル除去率を所定範囲内に維持しつつ、パターンのダメージを抑制することができた。
以上のように本実施形態では、第1および第2気体吐出口29,31から選択的に窒素ガスを吐出させることにより、大流量での窒素ガスの吐出と、小流量での窒素ガスの吐出とを、一つの二流体ノズル3で行わせることができる。したがって、ウエハWの表面状態に応じて窒素ガスの吐出流量を選択することができるので、表面状態に応じた処理をウエハWに施すことができる。
【0047】
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の実施形態では、二流体ノズル3および処理液ノズル4から吐出される処理液としてリンス液(DIW)を例示したが、リンス液に限らず、薬液や有機溶剤などを処理液として吐出させてもよい(図1参照)。また、リンス液はDIWに限らず、その他のリンス液を用いてもよい。さらに、これらの処理液は加熱されていてもよい。この場合、たとえば、DIW供給管10,18のそれぞれに温調ユニット34を介装し(図1参照)、この温調ユニット34を制御装置33によって制御することにより(図3参照)、DIW供給管10,18を流通する処理液(DIW)を加熱してもよい。
【0048】
前記薬液としては、たとえば、SC1(アンモニアと過酸化水素水との混合液)、SC2(塩酸と過酸化水素水との混合液)、ポリマー除去液、DHF(希フッ酸)、王水(濃塩酸と濃硝酸との混合液)、硫酸、TMAH(テトラ・メチル・アンモニウム・ハイドロオキサイド:水酸化テトラメチルアンモニウム)などが挙げられる。
前記有機溶剤としては、たとえば、IPA(イソプロピルアルコール)、NMP(N−メチルピロリドン)、アセトン、シクロヘキサン、エチレンカーボネートなどが挙げられる。
【0049】
前記その他のリンス液としては、たとえば、オゾン水、アンモニア水、水素水などが挙げられる。
また、前述の実施形態では、二流体ノズル3から吐出される気体として、窒素ガスを例示したが、窒素ガスに限らず、窒素ガスと水素ガスとの混合ガス、アルゴンガス、炭酸ガス、ヘリウムガス、酸素ガスなどを用いてもよい。また、これらの気体は加熱されていてもよい。この場合、たとえば、第1および第2窒素ガス供給管11,12のそれぞれに温調ユニット35を介装し(図1参照)、この温調ユニット35を制御装置33によって制御することにより(図3参照)、第1および第2窒素ガス供給管11,12を流通する気体(窒素ガス)を加熱してもよい。
【0050】
また、前述実施形態では、ほぼ水平に保持され回転させられているウエハWの表面に処理液を供給して当該ウエハWを処理するものを取り上げたが、回転していない状態(非回転状態)のウエハWの表面に処理液を供給してウエハWを処理するものであってもよい。なお、前記非回転状態のウエハWとは、回転も移動もしていない状態(静止状態)のウエハWであってもよいし、回転せずに所定の方向に移動している状態(移動状態)のウエハWであってもよい。
【0051】
また、前述実施形態では、処理対象の基板として半導体ウエハWを取り上げたが、半導体ウエハWに限らず、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板などの他の種類の基板が処理対象とされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解図である。
【図2】二流体ノズルの構造を図解的に示す図である。
【図3】前記基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図4】前記基板処理装置によるウエハの処理の一例について説明するための図である。
【図5】前記基板処理装置を用いてウエハを処理した場合における窒素ガスの吐出流量とパーティクル除去率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 基板処理装置
2 スピンチャック(基板回転手段)
3 二流体ノズル
10 DIW供給管(処理液供給手段)
11 第1窒素ガス供給管(気体供給手段)
12 第2窒素ガス供給管(気体供給手段)
16 二流体ノズル移動機構(ノズル移動手段)
21 外筒(ケーシング)
28 処理液吐出口
29 第1気体吐出口
31 第2気体吐出口
33 制御装置(制御手段)
W ウエハ(基板、処理対象)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液および気体が導入されるケーシングと、
前記ケーシングに形成され、処理液を吐出するための処理液吐出口と、
前記処理液吐出口を取り囲むように前記ケーシングに形成され、気体を吐出するための環状の第1気体吐出口と、
前記第1気体吐出口を取り囲むように前記ケーシングに形成され、気体を吐出するための環状の第2気体吐出口とを含み、
前記処理液吐出口から処理液を吐出させつつ、前記第1および第2気体吐出口の少なくとも一方から気体を吐出させることにより、前記ケーシング外で処理液と気体とを混合させて処理液の液滴を形成し、この処理液の液滴を処理対象に向けて吐出するようになっている、二流体ノズル。
【請求項2】
前記第1気体吐出口は第1流量で気体を吐出するためのものであり、前記第2気体吐出口は、前記第1流量と異なる第2流量で気体を吐出するためのものである、請求項1記載の二流体ノズル。
【請求項3】
前記第1流量は、前記第2流量よりも小流量である、請求項2記載の二流体ノズル。
【請求項4】
前記第1気体吐出口の開口面積は、前記第2気体吐出口の開口面積よりも小さくされている、請求項3記載の二流体ノズル。
【請求項5】
処理対象の基板を保持して回転させるための基板回転手段と、
前記基板回転手段によって回転されている基板の主面に、処理液の液滴を供給するための請求項1〜4のいずれか一項に記載の二流体ノズルと、
前記二流体ノズルのケーシングに処理液を供給するための処理液供給手段と、
前記二流体ノズルのケーシングに気体を供給するための気体供給手段と、
前記二流体ノズルを前記基板の主面に沿って移動させるためのノズル移動手段と、
前記処理液供給手段および気体供給手段を制御して、前記二流体ノズルの処理液吐出口から処理液を吐出させつつ、前記二流体ノズルの第1および第2気体吐出口の少なくとも一方から気体を吐出させるための制御手段とを含む、基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−108829(P2008−108829A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288822(P2006−288822)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】