説明

位置ずれマップ作成装置、パターン検査システム、及び位置ずれマップ作成方法

【課題】被検査試料に形成されたパターンの位置ずれマップを高精度に作成する装置を提供する。
【解決手段】位置ずれマップ作成装置200は、被検査試料から取得された光学画像と参照画像との間での位置ずれ量に基づいた位置ずれマップ(1)に対し、ワイドパスフィルタ処理をおこなって位置ずれマップBを作成するWPフィルタ処理部56と、ローパスフィルタ処理をおこなって位置ずれ量マップCを作成するLPフィルタ処理部58と、座標計測装置で計測された複数の位置計測用パターンの各パターンの位置の位置ずれ量に基づく位置ずれマップ(2)に対し、LPフィルタ処理をおこなって位置ずれマップCを作成するLPフィルタ処理部64と、位置ずれマップAと位置ずれマップBの差分に位置ずれマップCを加算することによって合成して位置ずれマップDを作成する合成部66と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置ずれマップ作成装置、パターン検査システム、及び位置ずれマップ作成方法に関する。例えば、試料に形成されたパターンの位置の位置ずれ量を照明光を照射して得られた光学画像を用いて測定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。これらの半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスク或いはレチクルともいう。以下、マスクと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。よって、かかる微細な回路パターンをウェハに転写するためのマスクの製造には、微細な回路パターンを描画することができる電子ビームを用いたパターン描画装置を用いる。かかるパターン描画装置を用いてウェハに直接パターン回路を描画することもある。或いは、電子ビーム以外にもレーザビームを用いて描画するレーザビーム描画装置の開発が試みられている。
【0003】
そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになろうとしている。歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
一方、マルチメディア化の進展に伴い、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)は、500mm×600mm、またはこれ以上への液晶基板サイズの大型化と、液晶基板上に形成されるTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)等のパターンの微細化が進んでいる。従って、極めて小さいパターン欠陥を広範囲に検査することが要求されるようになってきている。このため、このような大面積LCDのパターン及び大面積LCDを製作する時に用いられるフォトマスクの欠陥を短時間で、効率的に検査するパターン検査装置の開発も急務となってきている。
【0005】
検査手法としては、拡大光学系を用いてリソグラフィマスク等の試料上に形成されているパターンを所定の倍率で撮像した光学画像と、設計データ、あるいは試料上の同一パターンを撮像した光学画像と比較することにより検査を行う方法が知られている。例えば、パターン検査方法として、同一マスク上の異なる場所の同一パターンを撮像した光学画像データ同士を比較する「die to die(ダイ−ダイ)検査」や、パターン設計されたCADデータをマスクにパターンを描画する時に描画装置が入力するための装置入力フォーマットに変換した描画データ(設計パターンデータ)を検査装置に入力して、これをベースに設計画像データ(参照画像)を生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる光学画像とを比較する「die to database(ダイ−データベース)検査」がある。かかる検査装置における検査方法では、試料はステージ上に載置され、ステージが動くことによって光束が試料上を走査し、検査が行われる。試料には、光源及び照明光学系によって光束が照射される。試料を透過あるいは反射した光は光学系を介して、センサ上に結像される。センサで撮像された画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、測定データと参照データとを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する。
【0006】
パターンの微細化が進む一方、パターン原版となるマスクを用いて、縮小投影露光装置でウェハにパターンを露光転写して回路形成するリソグラフィ技術が継続して使われている。そのため、ウェハの製造歩留まりを向上させるためにマスクのパターン欠陥に対する許容量や、露光転写時におけるプロセス諸条件の変動許容量(マージン)の確保が厳しくなってきている。これまでは、主に形状欠陥の許容値を厳しくして、マスクパターンの形状寸法精度を高めることで、プロセス諸条件の変動マージンを吸収することが行われてきた。しかしながら、検査対象となるマスクの品質は、パターンを構成する個々の図形が設計寸法通りに形成されていることの他に、マスク全面でのパターンの位置精度の均質性やマスク全面でのパターンの線幅寸法精度の均質性が求められるようになってきている。従来、このうち、パターンの位置精度については、専用のパターン位置測定器でマスクパターン内或いはパターンの周囲に適切なピッチで配置してある十字マークの寸法位置を計測して、理想格子状であるべき各点座標の変動量を測定することで、伸縮誤差や平行ずれ、局所的な変動を把握して品質管理を行っていた。
【0007】
しかしながら、かかるパターン位置測定器で測定される測定箇所はその数が少ないため、マスク全面におけるパターン位置の位置ずれ分布を高精度に把握することは困難であった。そこで、パターン検査装置で検査に用いるために撮像された画像を利用して、パターン位置の位置ずれ分布を取得することが検討されている。しかしながら、温度や気圧等の外乱の変動によって、ステージ位置測長システムで測定される結果に測定誤差が生じてしまう。そのため、同じマスクのパターンの位置が測定される時期によって変動してしまい再現性がなく、パターン位置を高精度に測定することが困難であるといった問題があった。
【0008】
ここで、パターンの線幅寸法誤差については、例えば、測定された光学画像からパターンの両端のエッジ部分を認識して、ペアのエッジ間の距離を計算して線幅寸法を測定し、同様に、参照データの画像からパターンの両端のエッジ部分を認識して、ペアのエッジ間の距離を計算して線幅寸法を測定し、両者の差を演算することで寸法誤差を求める手法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3824542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、パターン位置測定器で測定される測定箇所はその数が少ないため、マスク全面におけるパターン位置の位置ずれ分布を高精度に把握することは困難であった。一方、パターン検査装置で撮像された画像からパターン位置の位置ずれ分布を取得する場合、温度や気圧等の外乱の変動によって、ステージ位置測長システムで測定される結果に測定誤差が生じてしまう。そのため、同じマスクのパターンの位置が測定される時期によって変動してしまい再現性がなく、パターン位置を高精度に測定することが困難であるといった問題があった。そのため、マスク全面における高精度なパターンの位置ずれマップを作成することが困難であった。
【0011】
そこで、本発明は、かかる問題点を克服し、被検査試料に形成されたパターンの位置ずれマップを高精度に作成可能な装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様の位置ずれマップ作成装置は、
複数の図形パターンと複数の位置計測用パターンとが形成された被検査試料から取得された複数の光学画像と設計データから作成された複数の参照画像との間での対応する両画像間でのそれぞれの位置ずれ量を記憶する記憶装置と、
各位置ずれ量に基づいて、第1の位置ずれマップを作成する第1の位置ずれマップ作成部と、
第1の位置ずれマップに対し、高周波成分と低周波成分の両方を残す所定の関数を用いたワイドパスフィルタ処理をおこなって第2の位置ずれマップを作成するワイドパスフィルタ処理部と、
第1の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第3の位置ずれ量マップを作成する第1のローパスフィルタ処理部と、
座標計測装置で計測された複数の位置計測用パターンの各パターンの位置と設計データにおける複数の位置計測用パターンの位置との間での対応する両位置間でのそれぞれの位置ずれ量に基づいて、第4の位置ずれマップを作成する第2の位置ずれマップ作成部と、
第4の位置ずれマップを入力し、第4の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第5の位置ずれマップを作成する第2のローパスフィルタ処理部と、
第2の位置ずれマップと第3の位置ずれマップとの対応する両マップ値の差分に第5の位置ずれマップの対応するマップ値を加算することによって第2と第3と第5の位置ずれマップを合成して第6の位置ずれマップを作成する合成部と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、各所定の関数として、それぞれ、B−スプライン関数を用いると好適である。
【0014】
また、記憶装置は、さらに、複数の校正用パターンが形成された校正基板から取得された複数の光学画像と校正基板用の設計データから作成された複数の参照画像との間での対応する両画像間でのそれぞれの位置ずれ量を記憶し、
校正基板における各位置ずれ量に基づいて、第7の位置ずれマップを作成する第3の位置ずれマップ作成部と、
第7の位置ずれマップに対し、高周波成分と低周波成分の両方を残す所定の関数を用いたワイドパスフィルタ処理をおこなって第8の位置ずれマップを作成する第2のワイドパスフィルタ処理部と、
第7の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第9の位置ずれ量マップを作成する第3のローパスフィルタ処理部と、
座標計測装置で計測された校正基板における複数の校正用パターンの各パターンの位置と校正基板の設計データにおける複数の校正用パターンの位置との間での対応する両位置間でのそれぞれの位置ずれ量に基づいて、第10の位置ずれマップを作成する第4の位置ずれマップ作成部と、
第10の位置ずれマップを入力し、第10の位置ずれマップに対し、高周波成分と低周波成分の両方を残す所定の関数を用いたワイドパスフィルタ処理をおこなって第11の位置ずれマップを作成する第3のワイドパスフィルタ処理部と、
被検査試料における複数の位置計測用パターンの座標情報と、被検査試料における複数の位置計測用パターンの座標に対応する前記第10の位置ずれマップの各値とを入力し、第12の位置ずれマップを作成する第5の位置ずれマップ作成部と、
第12の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第13の位置ずれ量マップを作成する第4のローパスフィルタ処理部と、
をさらに備え、
合成部は、さらに、合成された第6の位置ずれマップのマップ値に第8と第13の位置ずれマップのそれぞれ対応するマップ値を減算し、第9と第11の位置ずれマップのそれぞれ対応するマップ値を加算すると好適である。
【0015】
本発明の一態様のパターン検査システムは、
複数の図形パターンと複数の位置計測用パターンとが形成された被検査試料を用いて、被検査試料に形成された複数の図形パターンの光学画像を取得する光学画像取得部と、
被検査試料用の設計データを用いて、光学画像を分割した複数の分割画像に対応する複数の参照画像を作成する参照画像作成部と、
複数の分割画像と複数の参照画像との間でそれぞれ対応する両画像同士の位置合わせを行う位置合わせ部と、
位置合わせされた両画像同士を画素毎に比較する比較部と、
複数の分割画像と複数の参照画像との間でそれぞれ対応する両画像同士の位置合わせをおこなった際の両画像間でのそれぞれの位置ずれ量を記憶する記憶装置と、
各位置ずれ量に基づいて、第1の位置ずれマップを作成する第1の位置ずれマップ作成部と、
第1の位置ずれマップに対し、高周波成分と低周波成分の両方を残す所定の関数を用いたワイドパスフィルタ処理をおこなって第2の位置ずれマップを作成するワイドパスフィルタ処理部と、
第1の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第3の位置ずれ量マップを作成する第1のローパスフィルタ処理部と、
座標計測装置で計測された複数の位置計測用パターンの各パターンの位置と設計データにおける複数の位置計測用パターンの位置との間での対応する両位置間でのそれぞれの位置ずれ量に基づいて、第4の位置ずれマップを作成する第2の位置ずれマップ作成部と、
第4の位置ずれマップを入力し、第4の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第5の位置ずれマップを作成する第2のローパスフィルタ処理部と、
第2の位置ずれマップと第3の位置ずれマップとの対応する両マップ値の差分に第5の位置ずれマップの対応するマップ値を加算することによって第2と第3と第5の位置ずれマップを合成して第6の位置ずれマップを作成する合成部と、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様の位置ずれマップ作成方法は、
複数の図形パターンと複数の位置計測用パターンとが形成された被検査試料から取得された複数の光学画像と設計データから作成された複数の参照画像との間での対応する両画像間でのそれぞれの位置ずれ量を記憶する記憶装置から各位置ずれ量を読み出し、各位置ずれ量に基づいて、第1の位置ずれマップを作成する工程と、
第1の位置ずれマップに対し、高周波成分と低周波成分の両方を残す所定の関数を用いたワイドパスフィルタ処理をおこなって第2の位置ずれマップを作成する工程と、
第1の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第3の位置ずれ量マップを作成する工程と、
座標計測装置で計測された複数の位置計測用パターンの各パターンの位置と設計データにおける複数の位置計測用パターンの位置との間での対応する両位置間でのそれぞれの位置ずれ量が定義された第4の位置ずれマップを入力し、第4の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第5の位置ずれマップを作成する工程と、
第2の位置ずれマップと第3の位置ずれマップとの対応する両マップ値の差分に第5の位置ずれマップの対応するマップ値を加算することによって第2と第3と第5の位置ずれマップを合成して第6の位置ずれマップを作成し、出力する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被検査試料に形成されたパターンの位置ずれマップを高精度に作成できる。よって、被検査試料に形成されたパターンの位置精度の均質性を検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1におけるパターン検査システムと位置計測装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1における位置ずれマップ作成装置の構成を示す概念図である。
【図3】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。
【図4】実施の形態1におけるパターン検査方法の要部工程と位置ずれマップ作成用の前処理工程の一部とを示すフローチャート図である。
【図5】実施の形態1における被検査試料の一例を示す概念図である。
【図6】実施の形態1における光学画像の取得手順を説明するための概念図である。
【図7】実施の形態1における位置計測装置で測定した測定結果から得られた位置ずれマップの一例を示す図である。
【図8】実施の形態1におけるパターン検査装置で使用した参照画像と光学画像間における位置ずれマップの一例を示す図である。
【図9】実施の形態1における参照画像と光学画像間における位置ずれ分布の一例を示す図である。
【図10】実施の形態1におけるBスプライン関数のグラフの一例を示す図である。
【図11】実施の形態1におけるx位置、y位置、及び位置ずれ量の関係をBスプライン関数で表したグラフの一例を示す図である。
【図12】実施の形態1における低周波成分を除去せずに単にBスプライン関数でフィルタ処理した結果の一例を示す図である。
【図13】実施の形態1における位置ずれマップ作成方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【図14】実施の形態2における位置ずれマップ作成装置の構成を示す概念図である。
【図15】実施の形態2における校正マスクの一例を示す図である。
【図16】実施の形態2における位置ずれマップ作成方法の前処理工程の要部工程を示すフローチャート図である。
【図17】実施の形態2における位置ずれマップ作成方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【図18】実施の形態2における検査装置のシステマチック誤差成分を示す位置ずれマップの一例を示す図である。
【図19】実施の形態2における手法で作成した位置ずれマップと位置計測装置で計測された位置ずれマップとの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査システムと位置計測装置の構成を示す概念図である。図1において、パターン検査システム500は、パターン検査装置100と位置ずれマップ作成装置200とを備えている。位置ずれマップ作成装置200は、パターン検査装置100と外部の位置計測装置300(座標計測装置)からの情報を用いて、試料のパターン形成領域全面における高精度な位置ずれマップを作成する。パターン検査装置100は、試料、例えばマスクに形成されたパターンの形状欠陥を検査する。位置計測装置300は、試料に形成された位置計測用パターンの位置を計測する。
【0020】
図2は、実施の形態1における位置ずれマップ作成装置の構成を示す概念図である。位置ずれマップ作成装置200は、制御計算機210、メモリ211、外部インターフェース(I/F)回路212、モニタ214、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142,146,148を備えている。制御計算機210、メモリ211、外部インターフェース(I/F)回路212、モニタ214、及び記憶装置140,142,146,148は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0021】
制御計算機210内には、位置ずれマップ作成部50、ワイドパス(WP)用係数算出部52、ローパス(LP)用係数算出部54、WPフィルタ処理部56、LPフィルタ処理部58、位置ずれマップ作成部60、LP用係数算出部62、LPフィルタ処理部64、及び、合成部66が配置されている。位置ずれマップ作成部50、WP用係数算出部52、LP用係数算出部54、WPフィルタ処理部56、LPフィルタ処理部58、位置ずれマップ作成部60、LP用係数算出部62、LPフィルタ処理部64、及び、合成部66といった各機能は、コンピュータで実行されるプログラムといったソフトウェアで構成されても良い。或いは、電子回路等のハードウェアで構成されてもよい。或いは、これらの組み合わせであってもよい。制御計算機110に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度メモリ211に記憶される。また、プログラムにより構成される場合、プログラムは、メモリ211、或いは記憶装置140,142,146,148等の記録媒体に記録される。ここで、図2では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。位置ずれマップ作成装置200にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。例えば、プリンタ等を備えていても構わないことは言うまでもない。
【0022】
図3は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図3において、パターン検査装置100は、光学画像取得部150と制御系回路160を備えている。光学画像取得部150は、光源103、XYθテーブル102、照明光学系170、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105(センサの一例)、センサ回路106、ストライプパターンメモリ123、レーザ測長システム122、及びオートローダ130を備えている。制御系回路160では、コンピュータとなる制御計算機110が、バス121を介して、位置回路107、比較回路108、参照回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレシキブルディスク装置(FD)116、CRT117、パターンモニタ118、プリンタ119、エッジ判定回路120、位置合わせ回路122、及び画像分割回路124に接続されている。また、センサ回路106は、ストライプパターンメモリ123に接続され、ストライプパターンメモリ123は、画像分割回路124に接続されている。また、XYθテーブル102は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータにより駆動される。XYθテーブル102は、ステージの一例となる。ここで、図3では、実施の形態1を説明する上で必要な構成部分について記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。
【0023】
位置回路107、比較回路108、参照回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、エッジ判定回路120、位置合わせ回路122、画像分割回路124等、図3の構成において「〜回路」と記載したものは、電子回路等のハードウェアで構成することができる。或いは、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。或いは、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実施させても構わない。或いは、ファームウェアとの組合せでも構わない。また、プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、FD116、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録される。
【0024】
実施の形態1では、被検査試料について、パターン検査装置100でパターンの形状欠陥検査を行う。さらに、位置計測装置300で位置計測用パターンの位置を計測する。そして、位置ずれマップ作成装置200で、パターン検査装置100で用いた画像から得られる情報と位置計測装置300で計測された位置データを使って、位置ずれマップを作成する。まずは、検査装置100について説明する。
【0025】
図4は、実施の形態1におけるパターン検査方法の要部工程と位置ずれマップ作成用の前処理工程の一部とを示すフローチャート図である。図4において、実施の形態1におけるパターン検査方法は、光学画像取得工程(S102)と、画像分割工程(S104)と、参照画像作成工程(S106)と、位置合わせ工程(S108)と、エッジ数判定工程110と、比較工程(S112)という一連の工程を実施する。このうち、比較工程(S112)を除く各工程は、位置ずれマップ作成用の前処理工程の一部にもなる。
【0026】
検査装置100では、光源103、XYθテーブル102、照明光学系170、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105、及びセンサ回路106により高倍率の検査光学系が構成されている。また、XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下にテーブル制御回路114により駆動される。X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、Xモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。そして、XYθテーブル102の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。また、XYθテーブル102上のフォトマスク101はオートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130から自動的に搬送され、検査終了後に自動的に排出されるものとなっている。
【0027】
図5は、実施の形態1における被検査試料の一例を示す概念図である。被検査試料となるフォトマスク101のパターン形成領域12には、半導体回路等になる複数の図形パターンが形成される。そして、パターン形成領域12の周囲には、複数の位置計測用パターン14が所定のピッチで形成される。位置計測用パターン14は、例えば、十字型のパターンとして形成され、例えば、30個程度が配置される。
【0028】
光学画像取得工程(S102)として、光学画像取得部150は、複数の図形パターンと複数の位置計測用パターンとが形成されたフォトマスク101を用いて、フォトマスク101に形成された複数の図形パターンの光学画像を取得する。具体的な動作について以下に説明する。フォトマスク101は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能に設けられたXYθテーブル102上に載置される。そして、フォトマスク101に形成されたパターンには、適切な光源103によって紫外域以下の波長の光(検査光)が照明光学系170を介して照射される。フォトマスク101を透過した光は拡大光学系104を介して、フォトダイオードアレイ105に光学像として結像し、入射する。フォトダイオードアレイ105として、例えば、TDI(タイム・ディレイ・インテグレーション)センサ等を用いると好適である。
【0029】
図6は、実施の形態1における光学画像の取得手順を説明するための概念図である。被検査領域22は、図6に示すように、例えばY方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ20(小領域、およびストライプ領域の一例)に仮想的に分割される。そして、その分割された各検査ストライプ20が連続的に走査されるようにXYθテーブル102の動作が制御される。XYθテーブル102の移動によってフォトダイオードアレイ105が相対的にX方向に連続移動しながら光学画像が取得される。フォトダイオードアレイ105では、図6に示されるようなスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。言い換えれば、フォトダイオードアレイ105は、XYθテーブル102と相対移動しながら、検査光を用いてフォトマスク101に形成された複数の図形パターンの光学画像を撮像する。実施の形態1では、1つの検査ストライプ20における光学画像を撮像した後、スキャン幅WずつY方向にずれた位置で今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。すなわち、往路と復路で逆方向に向かうフォワード(FWD)−バックフォワード(BWD)の方向で撮像を繰り返す。
【0030】
ここで、撮像の方向は、フォワード(FWD)−バックフォワード(BWD)の繰り返しに限るものではない。各検査ストライプ20について一方の方向から撮像してもよい。例えば、FWD−FWDの繰り返しでもよい。或いは、BWD−BWDの繰り返しでもよい。図6の例では、例えば、x方向をFWD方向、−x方向をBWDとして示している。
【0031】
フォトダイオードアレイ105上に結像されたパターンの像は、フォトダイオードアレイ105の各受光素子によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログ・デジタル)変換される。そして、検査ストライプ20毎にストライプパターンメモリ123に画素データ(ストライプ光学画像)が格納される。その後、画素データは、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置を示すデータと共に画像分割回路124に送られる。測定データ(光学画像)は例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。
【0032】
画像分割工程(S104)として、画像分割回路124は、ストライプ光学画像(光学画像の一例)を所定のブロック領域サイズで複数の分割画像(光学画像の他の一例)に分割する。ブロック領域のサイズ(分割サイズ)は、例えば、512画素×512画素、1024画素×1024画素、或いは、2048画素×2048画素等が好適である。かかるサイズは、フォトダイオードアレイ105(センサ)の受光素子数(撮像サイズ)や画像処理の演算処理速度等に応じて設定すればよい。
【0033】
参照画像作成工程(S106)として、参照回路112は、フォトマスク101用の設計データを用いて、ストライプ光学画像を分割した複数の分割画像に対応する複数の参照画像を作成する。参照回路112は、参照画像作成部の一例である。具体的には、参照回路112は、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して、各検査ストライプ20について順に設計データを読み出す。そして、読み出されたフォトマスク101の設計データを2値ないしは多値のイメージデータに変換して、上述した分割画像と同じサイズの参照データ(参照画像)を作成する。参照データは例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。そして、参照データは、位置合わせ回路122に送られる。
【0034】
位置合わせ工程(S108)として、位置合わせ回路122は、入力された複数の分割画像(光学画像)と複数の参照画像との間でそれぞれ対応する両画像同士の位置合わせを行う。位置合わせ回路122は、位置合わせ部の一例である。位置合わせは、両画像内のパターン同士について、例えば、x,y方向、或いは回転方向のずれが最小になるように合わせると好適である。例えば、対応する光学画像或いは参照画像を、画素単位或いはサブ画素単位で移動させながら最小2乗法を用いて位置合わせ(アライメント)を行う。そして、位置合わせ回路122は、位置合わせする画像毎、言い換えれば、ブロック領域毎に、かかる位置合わせを行った結果、画像間に生じた位置ずれ量を磁気ディスク装置109等に記録する。以上のようにして、フォトマスク101全面から取得された複数の光学画像と設計データから作成された複数の参照画像との間での対応する両画像間でのそれぞれの位置ずれ量が磁気ディスク装置109に記録される。
【0035】
エッジ数判定工程110として、エッジ数判定回路120は、位置合わせする画像毎、言い換えれば、ブロック領域毎に、ブロック領域内のパターンのエッジを検出して、ブロック領域内のパターンのエッジ数を算出(判定)する。パターンのエッジは、例えば、参照画像或いは光学画像の画素データから判定すればよい。パターン上、或いはパターンではない領域上では、画素データの諧調値は最小値或いは最大値に近い値を示すことになる。例えば、0〜255で諧調を示す場合、0或いは255の値を示すことになる。一方、パターンのエッジを含む画素では、含まれるパターンの領域割合に応じて変動する中間値になる。よって、中間値を示す画素データの画素は、エッジを含む画素と検出できる。誤差を考慮して、画素データが、例えば、20〜200の値を示す画素は、エッジを含む画素と検出できる。エッジ数判定回路120は、かかるエッジを含む画素を検出して、その数を演算する(判定する)。そして、エッジ数判定回路120は、得られたエッジ数データを、磁気ディスク装置109等に記録する。以上のようにして、フォトマスク101全面から取得された複数の光学画像と設計データから作成された複数の参照画像との間での対応する両画像間でのそれぞれのエッジ数が磁気ディスク装置109に記録される。
【0036】
比較工程(S112)として、比較回路108は、位置合わせされた両画像同士(光学画像と参照画像同士)を入力し、画素毎に比較する。比較回路108は、比較部の一例である。比較回路108は、測定データ(光学画像)の各画素データと参照データ(参照画像)の参照画素データとを所定のアルゴリズムに従って画素毎に比較し、欠陥の有無を判定する。例えば、測定データと参照データとにおける画素値の差が閾値内かどうかで判定する。そして、比較された結果は出力される。比較された結果は、例えば、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、FD116、CRT117、パターンモニタ118、或いはプリンタ119に出力される。或いは、外部に出力されても構わない。
【0037】
以上のようにして、フォトマスク101に形成された図形パターンの形状欠陥が検査される。一方、位置計測装置300では、フォトマスク101に形成された位置計測用パターンの位置が計測される。
【0038】
図7は、実施の形態1における位置計測装置で測定した測定結果から得られた位置ずれマップの一例を示す図である。ここで、上述したように、位置計測装置300で測定されるパターン数は例えば30点と少ないため、フォトマスク101全面における位置ずれマップを作成したとしても、その精度は高くない。一方、パターンの形状欠陥検査に使用される光学画像の数は、位置計測用パターンの数に比べて非常に多い。例えば、50万個にもなる。よって、かかる光学画像の位置ずれを測定すれば、位置ずれマップの精度を向上させることができる。そこで、実施の形態1では、かかる光学画像の位置ずれで補正可能かどうかを検証した。
【0039】
ここでは、フォトマスク101は波長199nmパルスレーザーにより照明され、XYθテーブル102(ステージ)が連続的に移動する際にマスクの透過像または反射像をTDIセンサ上に結像し、記録する。同時にステージの位置を測定しているレーザ測長システム122の値も記録した。ストライプ領域をステージを移動させながら連続的に画像を記録する。ステージスピードは約10mm/sとする。ストライプ単位で記録された画像データはブロック(或いはフレーム)と呼ばれる区分ごとに分割され、記録された画像データと対応する設計データから生成された参照画像を比較し、パターンマッチングにより誤差が最小となる位置に平行移動させ欠陥の検出を行う。この際の平行移動量とそのブロックに記録されたレーザ測長システム122のデータとからパターンの位置を決定する。
【0040】
まず、検査装置100によって得られる位置情報の分析を行う。実験には2μm矩形パターンを8μmピッチで2次元格子状に敷き詰めたテストマスクを使用する。このサンプルは位置測定装置300により5mmピッチで測定しておく。再現性を確認するために複数回測定する。
【0041】
図8は、実施の形態1におけるパターン検査装置で使用した参照画像と光学画像間における位置ずれマップの一例を示す図である。ここでは、検査時期をずらして、2回、光学画像を撮像した。そして、参照画像と光学画像間の位置ずれ量をマップ化した。図8(a)は、2回のうちの一方における位置ずれマップを示す。図8(b)は、2回のうちの他方における位置ずれマップを示す。かかる位置ずれマップは、レーザ測長システム122で測定した位置データが使用されている。図8(c)は、図8(a)の位置ずれマップと図8(b)の位置ずれマップの差分マップを示す。
【0042】
図9は、実施の形態1における参照画像と光学画像間における位置ずれ分布の一例を示す図である。図9では、画像中の画素1列分を抜き出した結果が示されている。図9に示すように、速い変動を持っている成分がある。1ライン分を抜き出してみると隣接する測定値は高い相関を持っていて、数Hz程度の時定数を持つ揺らぎが存在することが分かる。この揺らぎはレーザ測長システム122におけるレーザ干渉計の光路における空気揺らぎが原因となっていると思われる。パターンマッチング自体の精度は隣接するブロックの差分を以って評価すると1nm(3σ)程度になっている。その他に、マスク支持による撓みに起因した歪みも誤差(位置ずれ)を生じさせる原因と思われる。
【0043】
しかし、図8(a)の位置ずれマップと図8(b)の位置ずれマップの差分を演算してみると、図8(c)に示すように、横にスジが入ったような誤差が存在する。これは非常にゆっくりとした変動を示している。検査装置100はステージを横方向に移動させながら連続的にデータを採取するためにゆっくりとした変動は水平なスジ状に現れるからである。非常にゆっくりとした変動を区分多項式などで取り去った残りは小さな値となる。温度変動と相関があり、温度変化によるシステムの変形が主原因と考えられる。このように、外乱要素である、気温や気圧等の変動によって、レーザ測長システム122の測定結果に測定誤差が生じてしまい、参照画像と光学画像間の位置ずれ量は変動してしまう。よって、得られた参照画像と光学画像間の位置ずれ量をそのまま使用しても図8(c)に示すように再現性が得られない。上述した検証と分析により検査装置の誤差要因がわかったので、これらの誤差は適切な設計をすれば除去できる。しかし、レーザ測長システム122の設計変更を実施するためには手間と時間がかかる。そこで、実施の形態1では、かかる外乱要素による変動分を補正した位置ずれマップを作成する。
【0044】
分析の結果、誤差は大きく分けて低周波成分と高周波数成分に分類できる。上述した気温や気圧等の変動によって生じるレーザ測長システム122の測定誤差はゆっくりと変動する成分(低周波成分)である。よって、これらを帯域の異なるフィルタにより分類して、低周波成分を除去し、除去された低周波成分の代わりに、位置計測装置300によってチップ周辺の位置測定用パターンの測定により得られた分布に置き換えることで実用的な位置ずれマップを求めることができる。
【0045】
かかる周波数成分を分離する方法として、実施の形態1では、2次元の区分多項式(spline)を採用する。そして、区分多項式の次数、区間数を調節することで除去する成分を変える。
【0046】
図10は、実施の形態1におけるBスプライン関数のグラフの一例を示す図である。図10において、縦軸が位置ずれ量、横軸が区間の番号(ブロック数)を示す。
図11は、実施の形態1におけるx位置、y位置、及び位置ずれ量の関係をBスプライン関数で表したグラフの一例を示す図である。Bスプライン関数の区分多項式の次数、区間数を調節することで高精度に位置ずれ量を近似できる。
【0047】
図12は、実施の形態1における低周波成分を除去せずに単にBスプライン関数でフィルタ処理した結果の一例を示す図である。ここでは、検査時期をずらして、2回、光学画像を撮像した。そして、参照画像と光学画像間の位置ずれ量をBスプライン関数でフィルタ処理し、マップ化した。図12(a)は、2回のうちの一方における位置ずれマップを示す。図12(b)は、2回のうちの他方における位置ずれマップを示す。かかる位置ずれマップは、レーザ測長システム122で測定した位置データが使用されている。図12(c)は、図12(a)の位置ずれマップと図12(b)の位置ずれマップの差分マップを示す。低周波成分を除去しない場合、図12(c)に示すように、誤差が残ってしまう。かかる点からも画像から得られるマップの低周波成分を置き換える必要性がわかる。
【0048】
まず、測定された参照画像と光学画像間における位置ずれマップから最小二乗法によりマップをもっとも良く近似する区分多項式を求める。
【0049】
spline関数による最小2乗推定を行う。マップを表現するために、一次元のBスプライン(B−spline)関数の積で2次元の基底関数を生成する。2次元の基底関数は、以下の式(1)で定義できる。
【0050】
【数1】

【0051】
式(1)の基底関数の和で近似関数を次の式(2)のように表す。
【0052】
【数2】

【0053】
ただし、b(x,y)=bα,β(x,y)と定義する。そして、検査装置100からは各ブロックの位置ずれ量mとそのブロックで検出されたパターンのエッジ数wが得られている。iは、ブロック番号を示す。上記の関数で各ブロック領域の位置で求められた位置ずれデータ量mをもっともよく近似するように以下の式(3)で定義される値Eが最小となる係数cを求める。
【0054】
【数3】

【0055】
ここで、2次元マップデータはそれぞれのピクセルの値を一列に並べることでベクトルとして扱うことができる。m={m}、c={c}、B={b(x,y)}と定義し、wを対角成分とする対角行列をWと定義すると、式(3)は、以下の式(4)で表現できる。
【0056】
【数4】

【0057】
そして、最小値は、以下の式(5)を解いて求めることができる。
【0058】
【数5】

【0059】
したがって最適な係数cは、以下の式(6)で定義できる。
【0060】
【数6】

【0061】
したがって、推定される位置ずれマップは、以下の式(7)で定義できる。
【0062】
【数7】

【0063】
また、P=B(BWB)−1Wとすると、推定される位置ずれマップ=Pmと定義できる。ここで、検査装置100から位置ずれマップを推定する場合に比べて、位置計測装置300によるデータは、チップ周辺マーク(位置測定用パターン)から得られるデータに限られる。そのデータから位置ずれマップを推定する場合、サンプル点の個数、分布の偏りにより多項式を決定できない場合もあり得る。そこで、上述した式(3)の代わりに、以下の式(8)を用いると、さらに好適である。式(8)では、推定される関数の曲率を考慮したペナルティ関数を付加した最小2乗法を採用する。k番目のサンプル点の測定値をnとする。
【0064】
【数8】

【0065】
式(8)を簡略化して行列で表現すると、以下の式(9)で表現できる。
【0066】
【数9】

【0067】
式(9)において、nは少数のマークから得られる座標データ、Kは関数の係数から曲率を導出するマトリックスを示す。そして、第2項は推定関数が平面の場合に最小値0となる。従ってサンプル点が不足して関数が決まらない場合には、周囲の測定点からできるだけ平面に近いものを推定することができる。そして、式(9)を最小2乗法を用いて解くことで、最適な係数cは、以下の式(10)で定義できる。
【0068】
【数10】

【0069】
したがって、式(10)で得られる係数cを用いて推定される位置ずれマップは、以下の式(11)で定義できる。
【0070】
【数11】

【0071】
以上、説明したBスプライン関数を用いて、参照画像と光学画像間における位置ずれ分布のうち、低周波成分を除去し、除去された低周波成分の代わりに、位置計測装置300によってチップ周辺の位置測定用パターンの測定により得られた分布に置き換えることで実用的な位置ずれマップを求める。
【0072】
図13は、実施の形態1における位置ずれマップ作成方法の要部工程を示すフローチャート図である。実施の形態1における位置ずれマップ作成方法は、位置ずれマップ作成工程(S202)と、ワイドパス(WP)用係数c算出工程(S204)と、WPフィルタ処理工程(S206)と、ローパス(LP)用係数c算出工程(S214)と、LPフィルタ処理工程(S216)と、位置ずれマップ作成工程(S222)と、LP用係数c算出工程(S224)と、LPフィルタ処理工程(S226)と、合成工程(S230)といった一連の工程を実施する。
【0073】
まず、記憶装置140は、検査装置100から被検査試料となるフォトマスク101から取得された複数の光学画像と設計データから作成された複数の参照画像との間での対応する両画像間でのそれぞれの位置ずれ量を入力し、記憶する。すべての画像同士の位置ずれ量を記憶することで、フォトマスク101全面についての位置ずれ量の情報が得られる。記憶装置140は、さらに、検査装置100から被検査試料となるフォトマスク101の各画像から取得されたエッジ数データを入力し、記憶する。フォトマスク101全面についての各画像からのエッジ数の情報が記録される。また、記憶装置142は、位置計測装置300で計測された被検査試料となるフォトマスク101の複数の位置計測用パターンの各パターンの位置情報を入力し、記憶する。また、記憶装置148は、被検査試料となるフォトマスク101に形成されたパターンの設計データを記憶する。ここでは、3つの記憶装置140,142,148に分けて記憶する例を示しているが、これに限るものではない。1つの記憶装置にまとめて記憶しても良い。或いは、いずれか2つの記憶装置にまとめて記憶しても良い。
【0074】
位置ずれマップ作成工程(S202)として、位置ずれマップ作成部50は、記憶装置140から検査装置100の光学画像と参照画像の両画像データ同士の各位置ずれ量に基づいて、位置ずれマップ(1)(第1の位置ずれマップ)を作成する。位置ずれマップ作成部50は、第1の位置ずれマップ作成部の一例である。ここでは、比較される光学画像と参照画像を作成したサイズ(例えば、2048画素×2048画素のサイズ)でフォトマスク101のパターン形成領域全面がメッシュ状に領域分割され、メッシュ(ブロック)毎にそれぞれの位置ずれ量が定義されればよい。作成された位置ずれマップ(1)は、記憶装置146に一時的に格納される。
【0075】
ワイドパス(WP)用係数c算出工程(S204)として、WP用係数算出部52は、作成した位置ずれマップ(1)の各メッシュ値mとメッシュ(ブロック)毎のエッジ数wを用いて、まず、ゆっくりと変動する成分(低周波成分)と比較的高速にランダムに変動する成分(高周波成分)の両方の成分を含む広い周波数成分における、上述した式(6)で示したBスプライン関数の係数c(WP用の係数c)を算出する。算出手法は、上述した一連の式に従って求めればよい。例えば、Bスプライン関数に用いる区間多項式のx,yの次数を3次に設定し、ブロック番号iの区間数を広い周波数成分に対応させるべくLP用に比べて相対的に大きく設定すればよい。
【0076】
WPフィルタ処理工程(S206)として、WPフィルタ処理部56は、位置ずれマップ(1)に対し、高周波成分と低周波成分の両方を残すBスプライン関数(所定の関数)を用いたワイドパスフィルタ処理をおこなって位置ずれマップA(第2の位置ずれマップ)を作成する。具体的には、求めたWP用の係数cを用いて、位置ずれマップ(1)に対し、式(7)を演算することでワイドパスフィルタ処理をおこなう。WPフィルタ処理部56は、ワイドパスフィルタ処理部の一例である。作成された位置ずれマップAは、記憶装置146に一時的に格納される。
【0077】
ローパス(LP)用係数c算出工程(S214)として、LP用係数算出部54は、作成した位置ずれマップ(1)の各メッシュ値mとメッシュ(ブロック)毎のエッジ数wを用いて、ゆっくりと変動する成分(低周波成分)を残す周波数成分における、上述した式(6)で示したBスプライン関数の係数c(LP用の係数c)を算出する。算出手法は、上述した一連の式に従って求めればよい。例えば、Bスプライン関数に用いる区間多項式のxの次数を1次,yの次数を3次に設定し、ブロック番号iの区間数を低周波数成分に対応させるべくWP用に比べて相対的に小さく設定すればよい。
【0078】
LPフィルタ処理工程(S216)として、LPフィルタ処理部58は、位置ずれマップ(1)に対し、低周波成分を残すBスプライン関数(所定の関数)を用いたローパスフィルタ処理をおこなって位置ずれ量マップB(第3の位置ずれ量マップ)を作成する。LPフィルタ処理部58は、第1のローパスフィルタ処理部の一例である。具体的には、求めたLP用の係数cを用いて、位置ずれマップ(1)に対し、式(7)を演算することでローパスフィルタ処理をおこなう。作成された位置ずれマップBは、記憶装置146に一時的に格納される。
【0079】
位置ずれマップ作成工程(S222)として、位置ずれマップ作成部60は、記憶装置142から位置測定装置300(座標計測装置)で計測された複数の位置計測用パターンの各パターンの位置を読み出す。また、位置ずれマップ作成部60は、記憶装置148から設計データにおける複数の位置計測用パターンの位置を読み出す。そして、位置ずれマップ作成部60は、計測された複数の位置計測用パターンの各パターンの位置と設計データにおける複数の位置計測用パターンの位置との間での対応する両位置間でのそれぞれの位置ずれ量を演算し、各位置ずれ量に基づいて、位置ずれマップ(2)(第4の位置ずれマップ)を作成する。位置ずれマップ作成部60は、第2の位置ずれマップ作成部の一例である。作成された位置ずれマップ(2)は、記憶装置146に一時的に格納される。
【0080】
LP用係数c算出工程(S224)として、LP用係数算出部62は、作成した位置ずれマップ(2)の位置測定用パターンの座標の位置ずれデータnを用いて、ゆっくりと変動する成分(低周波成分)を残す周波数成分における、上述した式(10)で示したBスプライン関数の係数c(位置計測用パターンのLP用の係数c)を算出する。算出手法は、上述した一連の式に従って求めればよい。例えば、Bスプライン関数に用いる区間多項式のxの次数を1次,yの次数を3次に設定し、ブロック番号iの区間数を低周波数成分に対応させるべくWP用に比べて相対的に小さく設定すればよい。ここで、位置計測装置300で計測される位置計測用パターンの数は、例えば、30点と検査装置100で得られる情報(例えば50万点)に比べて少ないため、高周波成分を演算するには情報が少ない。一方、ゆっくりと変動する低周波成分を近似する場合には十分に対応可能である。また、位置計測装置300で計測される場合には、検査装置100と異なり気温や気圧等の変動によって誤差が生じるレーザ測長システム122を用いていない。よって、これらの外乱要素に起因した誤差を排除できる。また、メッシュサイズは、例えば、位置ずれマップ(1)に合わせればよい。位置計測用パターンの数は、検査装置100で得られる情報に比べて少ないため、測定した座標に対応するメッシュについて位置ずれ量を定義すればよい。
【0081】
LPフィルタ処理工程(S226)として、LPフィルタ処理部64は、位置ずれマップ(2)を入力し、位置ずれマップ(2)に対し、低周波成分を残すBスプライン関数(所定の関数)を用いたローパスフィルタ処理をおこなって位置ずれマップC(第5の位置ずれマップ)を作成する。LPフィルタ処理部64は、第2のローパスフィルタ処理部の一例である。具体的には、求めた位置計測用パターンのLP用の係数cを用いて、位置ずれマップ(2)に対し、式(11)を演算することでローパスフィルタ処理をおこなう。作成された位置ずれマップCは、記憶装置146に一時的に格納される。
【0082】
合成工程(S230)として、合成部66は、位置ずれマップAと位置ずれマップBとの対応する両マップ値の差分に位置ずれマップCの対応するマップ値を加算することによって位置ずれマップAと位置ずれマップBと位置ずれマップCを合成して位置ずれマップD(第6の位置ずれマップ)を作成する。すなわち、合成部66は、A−B+Cを演算することで、検査装置100の画像から得られた位置ずれマップから低周波成分を除去し、代わりに、位置測定装置300から得られた低周波成分に置き換える。以上により、気温や気圧等の変動によって生じるレーザ測長システム122の測定誤差を排除した位置ずれマップを作成できる。よって、測定時期にかかわらず、再現性のある位置ずれ分布を取得できる。作成された位置ずれマップDは、記憶装置146に格納される。そして、必要に応じて、モニタ214に表示される。或いは、外部I/F回路212を介して外部に出力される。かかる位置ずれマップDを得ることで、マスク全面におけるパターン位置の位置ずれ分布を高精度に把握できる。よって、被検査試料に形成されたパターンの位置精度の均質性を検査できる。例えば、位置ずれマップDのマップ値のいずれかが、閾値よりも大きい場合には、被検査試料のフォトマスク101は使用不可(NG)と判定されればよい。
【0083】
実施の形態2.
実施の形態1では、気温や気圧等の変動によって生じるレーザ測長システム122の測定誤差を排除した位置ずれマップを作成したが、実施の形態2では、さらに精度を高めた位置ずれマップを作成する場合について説明する。以下、特に説明しない点は実施の形態1と同様である。
【0084】
ここで、検査装置100から得られる位置ずれ量には、上述したゆっくりと変動する低周波成分(ドリフト成分)と比較的高速にランダムに変動する高周波成分(ランダム成分)の他に、さらに、検査装置のシステマチック誤差成分(固定値)が含まれる。そこで、実施の形態2では、さらに、検査装置のシステマチック誤差成分(固定値)を補正した位置ずれマップを作成する。
【0085】
図14は、実施の形態2における位置ずれマップ作成装置の構成を示す概念図である。図14において、制御計算機210内に、位置ずれマップ作成部70、WP用係数算出部72、LP用係数算出部74、WPフィルタ処理部76、LPフィルタ処理部78、位置ずれマップ作成部80,81、WP用係数算出部82、LP用係数算出部83、WPフィルタ処理部84、及び、LPフィルタ処理部85が追加された点以外は、図2と同様である。位置ずれマップ作成部70、WP用係数算出部72、LP用係数算出部74、WPフィルタ処理部76、LPフィルタ処理部78、位置ずれマップ作成部80,81、WP用係数算出部82、LP用係数算出部83、WPフィルタ処理部84、及び、LPフィルタ処理部85といった各機能についても、コンピュータで実行されるプログラムといったソフトウェアで構成されても良い。或いは、電子回路等のハードウェアで構成されてもよい。或いは、これらの組み合わせであってもよい。制御計算機110に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度メモリ211に記憶される。また、プログラムにより構成される場合、プログラムは、メモリ211、或いは記憶装置140,142,146,148等の記録媒体に記録される。
【0086】
検査装置100の観測により得られたマップをベクトルとして表現し、いくつかの成分に分離して考察する。検査装置100によって得られるマップが次のような成分から校正されていると仮定する。かかる仮定では、測定結果m、真のマップh、検査装置のシステマチック誤差成分(固定値)s、ゆっくりと変動する成分(ドリフト成分)d、比較的高速にランダムに変動する成分(ランダム成分)rを用いて、m=h+s+d+rと定義する。
【0087】
実施の形態2では、検査装置のシステマチック誤差成分(固定値)sを測定するために、校正マスクを使用する。校正マスクには人為的に全面に測定パターンが配置してあり、位置計測装置300により真のマップを求めることができる。これをhと表す。この校正マスクを検査装置100で観測した結果を上記の式で表現すると、m=h+s+d+rと定義できる。ここで、検査装置で観測した校正マスクのマップをmとする。校正マスクにおけるゆっくりと変動する成分(ドリフト成分)d、校正マスクにおける比較的高速にランダムに変動する成分(ランダム成分)rとする。
【0088】
同様に、未知のマスクの観測結果を表現すると、m=h+s+d+rと定義できる。ただし、未知のマスクの測定結果をm、未知のマスクの真のマップをh、未知のマスクのゆっくりと変動する成分(ドリフト成分)をd、未知のマスクの比較的高速にランダムに変動する成分(ランダム成分)をrとする。
【0089】
最小二乗法による区分多項式フィッティングはマップから区分多項式への正射影作用素となっている。そこで細かい成分まで表現できる多項式によるフィッティングでの射影作用素をP、緩やかな成分までしか表現できないものの射影作用素をPで表現する。また、周辺の位置測定用のマークからマップを推定する変換をP’で表現する。P(d+r)≒d、P(d+r)≒dとする。よって、m−h=s+d+rとなり、P(m−h)=P(s+d+r)≒P(s)+d、P(m−h)=P(s+d+r)≒P(s)+d、(P−P)(m−h)=(P−P)sとなる。
【0090】
言い換えれば、高周波成分まで表現できる区分多項式への射影をP、低周波成分までしか表現できない区分多項式への射影をP、位置測定用パターン(周辺マーク)測定ポイントデータから高周波成分まで表現できる区分多項式への変換をP’、位置測定用パターン(周辺マーク)測定ポイントデータから低周波成分までしか表現できない区分多項式への変換をP’とする。また、位置測定用パターン(周辺マーク)測定データをn、低周波成分が除去されたシステマチック誤差成分をs’、未知のマスクの推定マップをh’、とすると、真のマップhの推定値(推定マップ)h’は、以下の式(12)で定義できる。
【0091】
【数12】

【0092】
そして、低周波成分が除去されたシステマチック誤差成分s’は、以下の式(13)、及び式(14)で定義できる。
【0093】
【数13】

【0094】
【数14】

【0095】
以上の結果を踏まえて、実施の形態2では、校正マスク(校正基板)を用いて、検査装置100のシステマチック誤差成分(固定値)を補正した位置ずれマップを作成する。
【0096】
図15は、実施の形態2における校正マスクの一例を示す図である。校正マスク30(校正基板)のパターン形成領域32には、例えば、矩形状の校正用パターン36が、x,y方向に所定のピッチで規則的に校正マスク全面に形成されている。かかる校正マスク30を用いて、被検査試料となるフォトマスク101の検査を行う前に、予め、前処理工程を行う。
【0097】
図16は、実施の形態2における位置ずれマップ作成方法の前処理工程の要部工程を示すフローチャート図である。実施の形態2における位置ずれマップ作成方法の前処理工程は、校正マスク30を用いて、位置ずれマップ作成工程(S302)と、ワイドパス(WP)用係数c算出工程(S304)と、WPフィルタ処理工程(S306)と、ローパス(LP)用係数c算出工程(S314)と、LPフィルタ処理工程(S316)と、位置ずれマップ作成工程(S322)と、WP用係数c算出工程(S324)と、WPフィルタ処理工程(S326)といった一連の工程を実施する。
【0098】
まず、検査装置100にて、校正マスク30の光学画像を取得し、それに対応する参照画像を作成する。そして、取得された複数の光学画像と設計データから作成された複数の参照画像との間での対応する両画像間の位置合わせを行って、その際の位置ずれ量を磁気ディスク装置109等に記憶しておく。また、各画像毎のエッジ数を磁気ディスク装置109等に記憶しておく。かかる検査装置100での各工程の内容は、実施の形態1におけるフォトマスク101を校正マスク30と読み替えた場合と同様でよい。同様に、位置計測装置300にて、校正マスク30に形成された校正用パターンの位置が計測される。ここでは、フォトマスク101の位置計測用パターンの数よりも十分に多い、校正マスク30の校正用パターンの位置が計測される。
【0099】
まず、記憶装置140は、検査装置100から校正マスク30から取得された複数の光学画像と校正マスク30の設計データから作成された複数の参照画像との間での対応する両画像間でのそれぞれの位置ずれ量を入力し、記憶する。すべての画像同士の位置ずれ量を記憶することで、校正マスク30全面についての位置ずれ量の情報が得られる。記憶装置140は、さらに、検査装置100から校正マスク30の各画像から取得されたエッジ数データを入力し、記憶する。校正マスク30全面についての各画像からのエッジ数の情報が記録される。また、記憶装置142は、位置計測装置300で計測された校正マスク30の複数の校正用パターンの各パターンの位置情報を入力し、記憶する。また、記憶装置148は、校正マスク30に形成されたパターンの設計データを記憶する。ここでは、3つの記憶装置140,142,148に分けて記憶する例を示しているが、これに限るものではない。1つの記憶装置にまとめて記憶しても良い。或いは、いずれか2つの記憶装置にまとめて記憶しても良い。
【0100】
位置ずれマップ作成工程(S302)として、位置ずれマップ作成部70は、記憶装置140から、検査装置100で取得された、校正マスク30における光学画像と参照画像の両画像データ同士の各位置ずれ量に基づいて、校正マスク30における位置ずれマップ(1’)(第7の位置ずれマップ)を作成する。位置ずれマップ作成部70は、第3の位置ずれマップ作成部の一例である。ここでは、比較される光学画像と参照画像を作成したサイズ(例えば、2048画素×2048画素のサイズ)で校正マスク30のパターン形成領域全面がメッシュ状に領域分割され、メッシュ(ブロック)毎にそれぞれの位置ずれ量が定義されればよい。作成された位置ずれマップ(1’)は、記憶装置146に一時的に格納される。
【0101】
ワイドパス(WP)用係数c算出工程(S304)として、WP用係数算出部72は、作成した校正マスク30における位置ずれマップ(1’)の各メッシュ値mとメッシュ(ブロック)毎のエッジ数wを用いて、まず、ゆっくりと変動する成分(低周波成分)と比較的高速にランダムに変動する成分(高周波成分)の両方の成分を含む広い周波数成分における、上述した式(6)で示したBスプライン関数の係数c(WP用の係数c)を算出する。算出手法は、上述した一連の式に従って求めればよい。例えば、Bスプライン関数に用いる区間多項式のx,yの次数を3次に設定し、ブロック番号iの区間数を広い周波数成分に対応させるべくLP用に比べて相対的に大きく設定すればよい。
【0102】
WPフィルタ処理工程(S306)として、WPフィルタ処理部76は、位置ずれマップ(1’)に対し、高周波成分と低周波成分の両方を残すBスプライン関数(所定の関数)を用いたワイドパスフィルタ処理をおこなって校正マスク30における位置ずれマップA’(第8の位置ずれマップ)を作成する。具体的には、求めたWP用の係数cを用いて、位置ずれマップ(1’)に対し、式(7)を演算することでワイドパスフィルタ処理をおこなう。WPフィルタ処理部76は、第2のワイドパスフィルタ処理部の一例である。作成された位置ずれマップA’は、記憶装置146に一時的に格納される。
【0103】
ローパス(LP)用係数c算出工程(S314)として、LP用係数算出部74は、作成した校正マスク30における位置ずれマップ(1’)の各メッシュ値mとメッシュ(ブロック)毎のエッジ数wを用いて、ゆっくりと変動する成分(低周波成分)を残す周波数成分における、上述した式(6)で示したBスプライン関数の係数c(LP用の係数c)を算出する。算出手法は、上述した一連の式に従って求めればよい。例えば、Bスプライン関数に用いる区間多項式のxの次数を1次,yの次数を3次に設定し、ブロック番号iの区間数を低周波数成分に対応させるべくWP用に比べて相対的に小さく設定すればよい。
【0104】
LPフィルタ処理工程(S316)として、LPフィルタ処理部78は、位置ずれマップ(1’)に対し、低周波成分を残すBスプライン関数(所定の関数)を用いたローパスフィルタ処理をおこなって校正マスク30における位置ずれ量マップB’(第9の位置ずれ量マップ)を作成する。LPフィルタ処理部78は、第3のローパスフィルタ処理部の一例である。具体的には、求めたLP用の係数cを用いて、位置ずれマップ(1’)に対し、式(7)を演算することでローパスフィルタ処理をおこなう。作成された位置ずれマップB’は、記憶装置146に一時的に格納される。
【0105】
位置ずれマップ作成工程(S322)として、位置ずれマップ作成部80は、記憶装置142から位置測定装置300(座標計測装置)で計測された複数の校正用パターンの各パターンの位置を読み出す。また、位置ずれマップ作成部80は、記憶装置148から設計データにおける複数の校正用パターンの位置を読み出す。そして、位置ずれマップ作成部80は、計測された複数の校正用パターンの各パターンの位置と設計データにおける複数の校正用パターンの位置との間での対応する両位置間でのそれぞれの位置ずれ量を演算し、各位置ずれ量に基づいて、位置ずれマップ(2’)(第10の位置ずれマップ)を作成する。位置ずれマップ作成部80は、第4の位置ずれマップ作成部の一例である。作成された位置ずれマップ(2’)は、記憶装置146に一時的に格納される。また、位置ずれマップ(2’)のメッシュサイズは、例えば、位置ずれマップ(1’)に合わせればよい。
【0106】
WP用係数c算出工程(S324)として、WP用係数算出部82は、作成した位置ずれマップ(2’)の位置測定用データの座標の位置ずれデータ(座標データ)nを用いて、ゆっくりと変動する成分(低周波成分)と比較的高速にランダムに変動する成分(高周波成分)の両方の成分を含む広い周波数成分における、上述した式(10)で示したBスプライン関数の係数c(WP用の係数c)を算出する。算出手法は、上述した一連の式に従って求めればよい。例えば、Bスプライン関数に用いる区間多項式のx,yの次数を3次に設定し、ブロック番号iの区間数を広い周波数成分に対応させるべくLP用に比べて相対的に大きく設定すればよい。
【0107】
WPフィルタ処理工程(S326)として、WPフィルタ処理部84は、位置ずれマップ(2’)に対し、高周波成分と低周波成分の両方を残すBスプライン関数(所定の関数)を用いたワイドパスフィルタ処理をおこなって校正マスク30における位置ずれマップC’(第11の位置ずれマップ)を作成する。具体的には、求めたWP用の係数cを用いて、位置ずれマップ(2’)に対し、式(11)を演算することでワイドパスフィルタ処理をおこなう。WPフィルタ処理部84は、第3のワイドパスフィルタ処理部の一例である。作成された位置ずれマップC’は、記憶装置146に一時的に格納される。ここで、位置計測装置300で計測される校正用パターンの数は、例えば、200から400点と被検査試料となるフォトマスク101の位置計測用パターンの数よりも多い。よって、低周波成分だけではなく高周波成分の演算も高精度にできる。また、位置計測装置300で計測される場合には、検査装置100と異なり気温や気圧等の変動によって誤差が生じるレーザ測長システム122を用いていない。よって、これらの外乱要素に起因した誤差を排除できる。
【0108】
以上のようにして、校正マスク30を用いた前処理を行っておく。前処理で得られた情報を使って、その後に実施される被検査試料の検査を行う。校正マスク30を用いた前処理は、使用する検査装置100に対して、1回行っておけば、かかる検査装置100で検査されるその後の被検査試料に対して使用可能である。
【0109】
図17は、実施の形態2における位置ずれマップ作成方法の要部工程を示すフローチャート図である。実施の形態2における位置ずれマップ作成方法は、位置ずれマップ作成工程(S332)と、ローパス(LP)用係数c算出工程(S334)と、LPフィルタ処理工程(S336)と、をさらに追加し、合成工程(S230)の代わりに合成工程(S340)と追加した点以外は、図13と同様である。
【0110】
また、位置ずれマップ作成工程(S202)からLPフィルタ処理工程(S226)までの各工程の内容は実施の形態1と同様である。よって、実施の形態1と同様、フォトマスク101の位置ずれマップAと位置ずれマップBと位置ずれマップCとが得られる。
【0111】
位置ずれマップ作成工程(S332)として、位置ずれマップ作成部81は、被検査試料となるフォトマスク101における複数の位置計測用パターンの座標情報と、フォトマスク101における複数の位置計測用パターンの座標に対応する校正マスクの位置ずれマップ(2’)の各値とを入力し、位置ずれマップ(2”)(第12の位置ずれマップ)を作成する。位置ずれマップ作成部81は、第5の位置ずれマップ作成部の一例である。言い換えれば、フォトマスク101の位置計測装置300から得られた位置ずれ量を校正マスク30の対応する位置での位置ずれ量に置き換える。また、位置ずれマップ(2”)のメッシュサイズは、例えば、位置ずれマップ(1’)に合わせればよい。
【0112】
LP用係数c算出工程(S334)として、LP用係数算出部83は、作成した位置ずれマップ(2”)の座標データnを用いて、ゆっくりと変動する成分(低周波成分)を残す周波数成分における、上述した式(10)で示したBスプライン関数の係数c(LP用の係数c)を算出する。算出手法は、上述した一連の式に従って求めればよい。例えば、Bスプライン関数に用いる区間多項式のxの次数を1次,yの次数を3次に設定し、ブロック番号iの区間数を低周波数成分に対応させるべくWP用に比べて相対的に小さく設定すればよい。
【0113】
LPフィルタ処理工程(S336)として、LPフィルタ処理部85は、位置ずれマップ(2”)に対し、低周波成分を残すBスプライン関数(所定の関数)を用いたローパスフィルタ処理をおこなって校正マスク30における位置ずれ量マップC”(第13の位置ずれ量マップ)を作成する。LPフィルタ処理部85は、第4のローパスフィルタ処理部の一例である。具体的には、求めたLP用の係数cを用いて、位置ずれマップ(2”)に対し、式(11)を演算することでローパスフィルタ処理をおこなう。作成された位置ずれマップC”は、記憶装置146に一時的に格納される。
【0114】
そして、合成工程(S340)として、合成部66は、位置ずれマップAと位置ずれマップBとの対応する両マップ値の差分に位置ずれマップCの対応するマップ値を加算し、さらに、位置ずれマップB’と位置ずれマップC’のそれぞれ対応するマップ値を加算し、位置ずれマップA’と位置ずれマップC”のそれぞれ対応するマップ値を減算することによって位置ずれマップAと位置ずれマップBと位置ずれマップCと位置ずれマップA’と位置ずれマップB’と位置ずれマップC’と位置ずれマップC”を合成して位置ずれマップD(第6の位置ずれマップ)を作成する。言い換えれば、実施の形態1で合成された位置ずれマップDのマップ値に位置ずれマップB’C’のそれぞれ対応するマップ値を加算し、位置ずれマップA’C”のそれぞれ対応するマップ値を減算する。すなわち、合成部66は、A−B+C−A’+B’+C’−C”を演算することで、検査装置100の画像から得られた位置ずれマップから低周波成分を除去し、代わりに、位置測定装置300から得られた低周波成分に置き換え、さらに、検査装置100固有のシステマチック誤差成分Sを補正する。すなわち、S=A’−B’−C’+C”で定義できる。
【0115】
以上により、気温や気圧等の変動によって生じるレーザ測長システム122の測定誤差を排除した位置ずれマップを作成できる。よって、測定時期にかかわらず、再現性のある位置ずれ分布を取得できる。さらに、検査装置100固有のシステマチック誤差成分Sを補正できる。作成された位置ずれマップDは、記憶装置146に格納される。そして、必要に応じて、モニタ214に表示される。或いは、外部I/F回路212を介して外部に出力される。かかる位置ずれマップDを得ることで、実施の形態1よりもさらに高精度なマスク全面におけるパターン位置の位置ずれ分布を把握できる。よって、被検査試料に形成されたパターンの位置精度の均質性を検査できる。例えば、位置ずれマップDのマップ値のいずれかが、閾値よりも大きい場合には、被検査試料のフォトマスク101は使用不可(NG)と判定されればよい。
【0116】
図18は、実施の形態2における検査装置のシステマチック誤差成分を示す位置ずれマップの一例を示す図である。かかる検査装置のシステマチック誤差成分は、実施の形態2によって、位置ずれマップから排除できる。
【0117】
図19は、実施の形態2における手法で作成した位置ずれマップと位置計測装置で計測された位置ずれマップとの一例を示す図である。図19(a)では、実施の形態2における手法で作成した位置ずれマップが示されている。フォトマスク101から取得される画像数(ブロック数)は、例えば、50万個と非常に多い。図19(b)では、比較のため、校正マスクの校正用パターンの数を増やして、フォトマスク101から取得されるブロック数と同程度になるように作成したものを用いて測定した結果を示している。かかる結果からもわかるように、実施の形態2における手法で作成した位置ずれマップは高精度に作成されていることがわかる。上記のように限られたサンプル点からの最良推定マップと比較してdie内の細かい分布が再現できている。従来の測定の結果との差は1.9nm(3σ)だった。また、位置計測装置300で200μm移動した場所で同様の分布を測定した場合の差は2.04nm(3σ)だった。ただし、これは位置計測装置の本来の精度よりも悪い。異なる図形を測定した場合は図形の位置精度を含んでしまうからである。
【0118】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、以上の説明では、透過光学系とフォトマスク101(及び校正マスク30)の透過光を使った検査装置について説明したが、反射光学系とフォトマスク101(及び校正マスク30)の反射光を使った検査装置であっても本発明は有効である。また、位置ずれマップ作成装置200では、自身で設計データを記憶せずに、検査装置100或いは位置計測装置300の記憶装置に格納された設計データを参照するようにしてもよい。
【0119】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、検査装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0120】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置及びパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0121】
12,32 パターン形成領域
14 位置計測用パターン
20 検査ストライプ
22 被検査領域
30 校正マスク
36 校正用パターン
50,60,70,80,81 位置ずれマップ作成部
52,72,82 WP用係数算出部
54,62,74,83 LP用係数算出部
56,76,84 WPフィルタ処理部
58,64,78,85 LPフィルタ処理部
66 合成部
100 検査装置
101 フォトマスク
102 XYθテーブル
103 光源
104 拡大光学系
105 フォトダイオードアレイ
106 センサ回路
107 位置回路
108 比較回路
109 磁気ディスク装置
110 制御計算機
112 参照回路
113 オートローダ制御回路
114 テーブル制御回路
115 磁気テープ装置
116 FD
117 CRT
118 パターンモニタ
119 プリンタ
120 エッジ数判定回路
121 バス
122 レーザ測長システム
123 ストライプパターンメモリ
130 オートローダ
140,142,146,148 記憶装置
150 光学画像取得部
160 制御系回路
170 照明光学系
200 位置ずれマップ作成装置
210 制御計算機
211 メモリ
212 外部I/F回路
214 モニタ
300 位置計測装置
500 パターン検査装置システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の図形パターンと複数の位置計測用パターンとが形成された被検査試料から取得された複数の光学画像と設計データから作成された複数の参照画像との間での対応する両画像間でのそれぞれの位置ずれ量を記憶する記憶装置と、
各位置ずれ量に基づいて、第1の位置ずれマップを作成する第1の位置ずれマップ作成部と、
第1の位置ずれマップに対し、高周波成分と低周波成分の両方を残す所定の関数を用いたワイドパスフィルタ処理をおこなって第2の位置ずれマップを作成するワイドパスフィルタ処理部と、
第1の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第3の位置ずれ量マップを作成する第1のローパスフィルタ処理部と、
座標計測装置で計測された前記複数の位置計測用パターンの各パターンの位置と設計データにおける複数の位置計測用パターンの位置との間での対応する両位置間でのそれぞれの位置ずれ量に基づいて、第4の位置ずれマップを作成する第2の位置ずれマップ作成部と、
第4の位置ずれマップを入力し、第4の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第5の位置ずれマップを作成する第2のローパスフィルタ処理部と、
前記第2の位置ずれマップと前記第3の位置ずれマップとの対応する両マップ値の差分に前記第5の位置ずれマップの対応するマップ値を加算することによって前記第2と第3と第5の位置ずれマップを合成して第6の位置ずれマップを作成する合成部と、
を備えたことを特徴とする位置ずれマップ作成装置。
【請求項2】
前記各所定の関数として、それぞれ、B−スプライン関数を用いることを特徴とする請求項1記載の位置ずれマップ作成装置。
【請求項3】
前記記憶装置は、さらに、複数の校正用パターンが形成された校正基板から取得された複数の光学画像と校正基板用の設計データから作成された複数の参照画像との間での対応する両画像間でのそれぞれの位置ずれ量を記憶し、
校正基板における各位置ずれ量に基づいて、第7の位置ずれマップを作成する第3の位置ずれマップ作成部と、
第7の位置ずれマップに対し、高周波成分と低周波成分の両方を残す所定の関数を用いたワイドパスフィルタ処理をおこなって第8の位置ずれマップを作成する第2のワイドパスフィルタ処理部と、
第7の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第9の位置ずれ量マップを作成する第3のローパスフィルタ処理部と、
座標計測装置で計測された前記複数の校正用パターンの各パターンの位置と設計データにおける複数の校正用パターンの位置との間での対応する両位置間でのそれぞれの位置ずれ量に基づいて、第10の位置ずれマップを作成する第4の位置ずれマップ作成部と、
第10の位置ずれマップを入力し、第10の位置ずれマップに対し、高周波成分と低周波成分の両方を残す所定の関数を用いたワイドパスフィルタ処理をおこなって第11の位置ずれマップを作成する第3のワイドパスフィルタ処理部と、
被検査試料における複数の位置計測用パターンの座標情報と、被検査試料における複数の位置計測用パターンの座標に対応する前記第10の位置ずれマップの各値とを入力し、第12の位置ずれマップを作成する第5の位置ずれマップ作成部と、
第12の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第13の位置ずれ量マップを作成する第4のローパスフィルタ処理部と、
をさらに備え、
前記合成部は、さらに、合成された第6の位置ずれマップのマップ値に第8と第13の位置ずれマップのそれぞれ対応するマップ値を減算し、第9と第11の位置ずれマップのそれぞれ対応するマップ値を加算することを特徴とする請求項1又は2記載の位置ずれマップ作成装置。
【請求項4】
複数の図形パターンと複数の位置計測用パターンとが形成された被検査試料を用いて、被検査試料に形成された複数の図形パターンの光学画像を取得する光学画像取得部と、
被検査試料用の設計データを用いて、前記光学画像を分割した複数の分割画像に対応する複数の参照画像を作成する参照画像作成部と、
前記複数の分割画像と前記複数の参照画像との間でそれぞれ対応する両画像同士の位置合わせを行う位置合わせ部と、
位置合わせされた両画像同士を画素毎に比較する比較部と、
前記複数の分割画像と前記複数の参照画像との間でそれぞれ対応する両画像同士の位置合わせをおこなった際の両画像間でのそれぞれの位置ずれ量を記憶する記憶装置と、
各位置ずれ量に基づいて、第1の位置ずれマップを作成する第1の位置ずれマップ作成部と、
第1の位置ずれマップに対し、高周波成分と低周波成分の両方を残す所定の関数を用いたワイドパスフィルタ処理をおこなって第2の位置ずれマップを作成するワイドパスフィルタ処理部と、
第1の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第3の位置ずれ量マップを作成する第1のローパスフィルタ処理部と、
座標計測装置で計測された前記複数の位置計測用パターンの各パターンの位置と設計データにおける複数の位置計測用パターンの位置との間での対応する両位置間でのそれぞれの位置ずれ量に基づいて、第4の位置ずれマップを作成する第2の位置ずれマップ作成部と、
第4の位置ずれマップを入力し、第4の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第5の位置ずれマップを作成する第2のローパスフィルタ処理部と、
前記第2の位置ずれマップと前記第3の位置ずれマップとの対応する両マップ値の差分に前記第5の位置ずれマップの対応するマップ値を加算することによって前記第2と第3と第5の位置ずれマップを合成して第6の位置ずれマップを作成する合成部と、
を備えたことを特徴とするパターン検査システム。
【請求項5】
複数の図形パターンと複数の位置計測用パターンとが形成された被検査試料から取得された複数の光学画像と設計データから作成された複数の参照画像との間での対応する両画像間でのそれぞれの位置ずれ量を記憶する記憶装置から各位置ずれ量を読み出し、各位置ずれ量に基づいて、第1の位置ずれマップを作成する工程と、
第1の位置ずれマップに対し、高周波成分と低周波成分の両方を残す所定の関数を用いたワイドパスフィルタ処理をおこなって第2の位置ずれマップを作成する工程と、
第1の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第3の位置ずれ量マップを作成する工程と、
座標計測装置で計測された前記複数の位置計測用パターンの各パターンの位置と設計データにおける複数の位置計測用パターンの位置との間での対応する両位置間でのそれぞれの位置ずれ量が定義された第4の位置ずれマップを入力し、第4の位置ずれマップに対し、低周波成分を残す所定の関数を用いたローパスフィルタ処理をおこなって第5の位置ずれマップを作成する工程と、
前記第2の位置ずれマップと前記第3の位置ずれマップとの対応する両マップ値の差分に前記第5の位置ずれマップの対応するマップ値を加算することによって前記第2と第3と第5の位置ずれマップを合成して第6の位置ずれマップを作成し、出力する工程と、
を備えたことを特徴とする位置ずれマップ作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−64632(P2013−64632A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203142(P2011−203142)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】