説明

低底面転位バルク成長SiCウェハ

【課題】SiCの高品質単結晶ウェハを提供する。
【解決手段】少なくとも直径約3インチ(75mm)と、4°オフ軸のウェハに対して、約500cm−2未満の底面転位密度を有する少なくとも1平方インチ(6.25cm)の連続した表面領域とを有するSiCウェハであって、その製造方法は、3インチよりわずかに大きい直径を有するSiCブールを形成するステップと、0001平面に対して約2°と12°の間の角度で、該ブールをスライスして、ウェハにするステップであって、該ウェハは、各ウェハ上に、500cm−2未満の底面転位密度を有する少なくとも1平方インチの連続した表面領域を有する、ステップとを包含する。前記方法で背蔵した高品質シリコンカーバイド半導体前駆体ウェハ4は、追加的に、1つ以上の少なくとも一つのIII族窒化物層6を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
本発明は、低欠陥シリコンカーバイドウェハおよび半導体用途のための前駆体としてのその使用と、大型高品質シリコンカーバイド単結晶のシード昇華成長とに関する。
【0002】
本発明は、以下の同一出願人による米国特許出願公開第2005/0145164号、同第2005/0022724号、同第2005/0022727号、同第2005/0164482号、同第2006/0032434号、同第2005/0126471号に関連する。
【背景技術】
【0003】
シリコンカーバイドは、近年、様々な電子機器および用途のための半導体材料としての使用が見出されてきた。シリコンカーバイドは、その物理的強度および化学的攻撃に対する高耐性のために、特に有用である。シリコンカーバイドはまた、耐放射性、高破壊電界、比較的広いバンドギャップ、高飽和電子ドリフト速度、高温動作、ならびにスペクトルの青色領域、紫色領域、および紫外領域での高エネルギ光子の吸収および放出を含む優れた電気特性を有する。
【0004】
単結晶シリコンカーバイドは、しばしば、シード昇華成長プロセスによって製造される。典型的なシリコンカーバイド成長技術は、シード結晶と原料粉末との双方が、反応ルツボに置かれ、この反応ルツボが、原料とわずかに低温のシード結晶との間に温度勾配を生成するようにして、原料の昇華温度に熱せられる。温度勾配は、原料からシードへの材料の気相移動を促進し、次いで、シード上で凝縮し、その結果、バルク結晶成長が得られる。この方法はまた、物理気相移送(PVT)とも称される。
【0005】
典型的なシリコンカーバイド成長技術において、ルツボは、グラファイトからなり、所望の温度勾配を確立し、制御するために置かれる適切なコイルおよび絶縁体を用いて、誘導または抵抗によって熱せられる。原料粉末は、シードと同様に、シリコンカーバイドである。ルツボは、原料粉末を下部部分に入れて、垂直に向けられ、シードは、頂部に、典型的には、シードホルダに置かれる(特許文献1を参照)。これらの原料は、現在のシード昇華成長技術の説明を限定するものというより、むしろ、例示するものである。
【0006】
シリコンカーバイドバルク結晶における構造欠陥の密度は、近年、絶えず低減されてきているが、比較的高い欠陥濃度が、依然として見られ、排除することが困難であることが見出されてきた(例えば、非特許文献1)。結晶の底面(c面)に横たわる転位が、シード結晶基板の表面上に存在するとき、これらの転位は、後の結晶の成長においても存続し得る。これらの欠陥は、基板上に作成されるデバイスの性能特性を制限する重大な問題を引き起こし得、一部の場合において、有用なデバイスを完全に不可能にし得る。
【0007】
現在のシリコンカーバイドの大型バルク単結晶を製造するためのシード昇華技術は、典型的には、そのシリコンカーバイド結晶の底面成長表面上に、所望の欠陥濃度よりも高い濃度を有する結果となる。より高い欠陥濃度は、結晶上に、あるいはその結晶から得られる基板上に作成されるデバイスの性能特性を制限する重大な問題を引き起こし得る。例えば、一部の市販のシリコンカーバイドウェハの底面における典型的なマイクロパイプ欠陥密度は、1平方センチメートル当たり(cm−2)100のオーダーであり得る。しかしながら、シリコンカーバイド内に形成されるメガワットデバイスは、0.4cm−2のオーダーの欠陥のないエリアを要求する。したがって、高電圧、高電流の用途に対する大きな表面積のデバイスを製造するために使用され得る大型単結晶を得ることは、やりがいのある目標となっている。
【0008】
低欠陥シリコンカーバイドの小さなサンプルは、利用可能となってきたが、シリコンカーバイドをより広く商業的に使用するためには、より大きなサンプル、特に、大きなウェハが要求される。比較として、100mm(4”)シリコンウェハは、1975年から商業利用可能となってきており、150mm(6”)シリコンウェハは、1981年に利用可能となった。ガリウムヒ素(GaAs)もまた、4”(100mm)と6”(150mm)との双方で、商業利用可能である。したがって、50mm(2”)および75mm(3”)のSiCウェハの商業的利用可能性は、これらの他の材料に遅れをとっており、より広範なデバイスおよび用途でのSiCの採用および使用をある程度制限している。
【0009】
特定の欠陥の性質および記述は、結晶成長の分野において、一般的に、よく理解されている。マイクロパイプは、SiCで見出され得る一般的な欠陥であり、SiC結晶のシード昇華製造の間に、発展または伝播し得る。SiC結晶に存在し得る他の欠陥は、六角形ボイド、積層欠陥、および底面転位とともに、貫通転位、刃状転位、および螺旋転位を含む。これらの欠陥が、SiC結晶の中に残っている場合、結晶上に成長されて、その結果得られるデバイスは、これらの欠陥を伴ない得る。
【0010】
マイクロパイプは、中空コアの超螺旋転位であり、典型的にc軸に沿って横たわるそのバーガースベクトルを有する。幾つかの原因が、マイクロパイプの生成に対して、提案または確認されてきた。これらは、シリコンまたはカーボンの介在物のような過度の材料、金属堆積のような偶然の不純物、境界欠陥、および部分転位の移動またはすべりを含む。例えば、非特許文献2参照。
【0011】
六角形ボイドは、結晶内の平坦な六角形の小板(platelet)状空洞であり、この空洞は、しばしば、この空洞の下を通る(trail)中空チューブを有する。幾つかの証拠が、マイクロパイプが六角形ボイドと関連するということを示している。このような欠陥(例示的であって、限定するものではない)の比較的最近の議論は、非特許文献3に示されている。
【0012】
シード昇華技術で製造されるバルク結晶における問題は、シード自身と、そのシードが物理的に取り扱われる方法とに起因し得ることを、最近の研究は、示している(例えば、Sanchezらの非特許文献4参照)。Sanchezは、非特許文献4の347ページで、用語「マイクロパイプ」を「0.1μm〜5μmの範囲にある直径を有するほぼ円筒状のボイドであって、[0001]軸に平行またはほぼ平行に並んだ超螺旋転位のコアに形成するもの」を記述するために用いている。Sanchezは、より大きなボイド(「5μm〜100μmの直径」)を、「熱分解空洞」と称し、マイクロパイプと熱分解空洞とは、別々の原因から生じると考察している(非特許文献4)。
【0013】
したがって、シード昇華システムにおいて、結晶内に低い底面欠陥レベルを有するシリコンカーバイドのより大きな高品質バルク単結晶を製造することは、相変わらず、技術的商業的目標となっている。
【0014】
底面転位は、典型的には、表面と交差するか、あるいは閉じたループを生成するかのいずれかで、(0001)平面内に位置する。ほとんどの用途にとって、主たる懸念事項は、ウェハ表面と交差し、したがって、後に堆積されるエピタキシャル層の中に伝播する底面転位の数である。SiCウェハがエピタキシャル成長用の基板として使用されるとき、ウェハ表面と交差する転位の数を考慮することは、重要である。この数は、ウェハの欠陥エッチングを行って、転位位置でのピットを露出させる(reveal)ことによって測定される。この測定において、表面と交差する転位の数は、<0001>方向からのオフカット(「オフ軸」)角度が大きくなるにつれて、増加する。ほとんどの商用SiCウェハは、現在のところ、4°のオフカット角度で製造されている。しかしながら、0°〜90°の任意の他の角度も使用され得る。所与の代表的なエリアで転位の数をカウントすることによって、代表的な底面欠陥密度が与えられる。
【0015】
基板が、活性デバイス層として使用される場合、バルク材料内の欠陥密度もまた、懸念事項であり、最も適切な測定は、材料の所与の体積における底面転位の全ライン長さである。これは、(X線トポグラフに含まれるような)材料の小さな体積を考慮して、観察された転位の全長を測定することによって、測定される。この長さは、サンプルの体積によって除算され、1cm当たりの底面転位の全ライン長さを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第4,866,005号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Nakamuraら、「Ultrahigh quality silicon carbide single crystals」、Nature、第430巻、2004年8月26日、p.1009
【非特許文献2】Powellら、「Growth of Low Micropipe Density SiC Wafers」、Materials Science Forum、第338〜340巻、2000年、p.437〜440
【非特許文献3】Kuhrら、「Hexagonal Voids And The Formation Of Micropipes During SiC Sublimation Growth」、Journal of Applied Physics、第89巻、第8号、2001年4月、p.4625
【非特許文献4】Sanchezら、「Formation Of Thermal Decomposition Cavities In Physical Vapor Transport Of Silicon Carbide」、Journal of Electronic Materials、第29巻、第3号、2000年、p.347
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
(概要)
一つの局面において、本発明は、SiCの高品質単結晶ウェハであり、該高品質単結晶ウェハは、少なくとも約3インチ(75mm)の直径と、約200cm−2未満の底面転位密度を有する少なくとも1平方インチ(6.25cm)の連続した表面領域とを有する。
【0019】
別の局面において、本発明は、SiC半導体前駆体ウェハであり、該SiC半導体前駆体ウェハは、少なくとも約3インチ(75mm)の直径と、約100cm−2未満の底面転位密度を有する少なくとも1平方インチ(6.25cm)の連続した表面領域とを有する。
【0020】
別の局面において、本発明は、シード昇華成長システムにおいて、SiCの高品質単結晶ウェハを使用する方法であり、該高品質単結晶ウェハは、少なくとも約3インチ(75mm)の直径と、約100cm−2未満の底面転位密度を有する少なくとも1平方インチ(6.25cm)の連続した表面領域とを有する。
【0021】
またさらに別の局面において、本発明は、SiCの単結晶シード上に構築された複数のパワーデバイスであり、該SiCの単結晶シードは、少なくとも約3インチ(75mm)の直径と、約100cm−2未満の底面転位密度を有する少なくとも1平方インチ(6.25cm)の連続した表面領域とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明に従う4°オフSiCウェハのX線透過トポグラフである。
【図2】図2は、本発明に従う半導体前駆ウェハの模式的な断面図である。
【図3】図3は、本発明に従う複数の半導体前駆デバイスの模式的な断面図である。
【図4】図4は、本発明に従う種結晶昇華システムの模式的な断面図である。
【図5】図5は、本発明に従う金属酸化物半導体トランジスタの模式的な断面図である。
【図6】図6は、本発明に従う金属半導体電界効果トランジスタの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(詳細な説明)
本発明は、高品質シリコンカーバイドウェハに関する。特に、本発明は、シード昇華を用いるこのようなウェハの成長を改善するための幾つかの技術を組み込んでいる。
【0024】
以下の説明において、底面転位密度は、4°オフ軸ウェハに対する面積密度として特定される。しかしながら、この材料において、この面積測定と全底面ライン長さとの間に、直接的な関係が存在するという明らかな仮定がある。
【0025】
一局面において、本発明は、SiCの高品質単結晶ウェハであり、該ウェハは、少なくとも約3インチ(75mm)の直径と、約500cm−2未満、より好ましくは、約75cm−2未満、最も好ましくは、約50cm−2未満の底面転位密度を有する少なくとも1平方インチ(6.25cm)の連続した表面領域とを有する。単結晶SiCのポリタイプは、好ましくは、3C、4H、6H、2H、または15Rである。
【0026】
シード結晶の直径および厚さに比例する寸法を考慮するにあたり、百分率、割合、あるいは比率のいずれで表されるにせよ、本発明によって提供される改善と関連するものと理解され、これらの比率は、本明細書に記載されるより大きな直径のシード結晶と関連して、これらの発明的な意味を有する。
【0027】
したがって、一部の実施形態において、本発明は、結晶の絶対寸法を含む方法で、適切な実施形態にて、本明細書に記載され、請求されている。絶対寸法においては、通常、直径で、2インチ(50mm)、3インチ(75mm)、および100mmの直径の単結晶が好ましい。当然、より厳密には、1インチは、25.4mmに等しく、これは、3インチは、76.2mmに等しいことを意味する。しかしながら、ウェハの分野において、ときどき一般的であるように、「3インチ」のような単語と「75mm」のような単語とは、相互に置き換えられて使用される。当業者は、「50mm」を「2インチ」に、「100mm」を「4インチ」に置換することとともに、この一般的な慣習を認識する。これらの置換は、英式単位をメートル単位への変換に限定することを意図されるものではなく、その代わりに、当該分野で一般的な使用を代表することを意図される。
【0028】
図1は、本発明に従って形成されたSiCウェハのX線透過トポグラフである。トポグラフは、3インチ(75mm)径ブール(boule)から採られたウェハの0.5cm×0.5cm領域のものである。このウェハは、トポグラフでのより良いコントラストを得るために、約80μmに薄くされている。
【0029】
図1に示される4°オフカットサンプルは、0.5cm×0.5cmのエリアに、11個の底面転位(直線または曲線として観察可能)を含む。これらの転位の全てが、このサンプル表面と交差すると仮定すると、44cm−2の底面転位密度を提供する。体積密度を計算すると、これら11個の底面転位は、平均0.05cmの長さを有し、全サンプルライン長さ0.55を与える。観察されたエリアは、0.5cm×0,5cmであり、サンプル厚さは、0.008cmであるので、0.002cmのサンプル体積を与える。したがって、このサンプルに対する1cm当たりの全ライン長さは、275cm/cmであり、すなわち、275cm−2である。
【0030】
またさらなる局面において、本発明は、シリコンカーバイドの高品質半導体前駆体であり、該前駆体は、4Hのポリタイプと、少なくとも約3インチ(75mm)の直径とを有し、そして、(4°オフ軸ウェハに対して)ウェハの表面と交差する約2,000〜20,000の間の転位を有する少なくとも1平方インチ(6.25cm)の連続した表面領域を有する。
【0031】
図2に、模式的に示される別の局面において、本発明は、高品質シリコンカーバイド半導体前駆体ウェハ4であり、該ウェハ4は、4Hのポリタイプと、少なくとも約3インチ(75mm)の直径と、約500cm−2未満の底面転位密度を有する少なくとも1平方インチ(6.25cm)の連続した表面領域を有する。ウェハは、追加的に、1つ以上の少なくとも一つのIII族窒化物層6を有する。III族窒化物層6は、好ましくは、GaN、AlGaN、AlN、AlInGaN、InN、AlInN、およびこれらの組み合わせの1つ以上の層である。
【0032】
III族窒化物層の成長および電気特性は、一般的に、当該分野で十分に理解される。シリコンカーバイド基板上のIII族窒化物層は、特定のタイプの発光ダイオード(LED)の基本的特徴である。他の望ましいファクタの中で、III族元素の元素の割合(例えば、InGa1−x−y)は、組成のバンドギャップを(制約内で)調整し、同様に、その結果得られるLEDの発光周波数も、したがって、その色も調整する。
【0033】
図3は、SiCウェハ9上の複数のシリコンカーバイド半導体デバイス前駆体8の模式図である。該SiCウェハは、少なくとも約3インチ(75mm)の直径と、約50〜500−2の間の転位密度を有する少なくとも1平方インチ(6.25cm)の連続した表面領域とを有する。この模式的に示されたデバイスは、このウェハのいくつかの部分上のそれぞれの複数のIII族窒化物エピタキシャル層10を含む。好ましいIII族窒化物エピタキシャル層は、GaN、AlGaN、AlN、AlInGaN、InN、およびAlInNから個々に選択される。
【0034】
別の局面において、本発明は、シード昇華システムにおいて、シリコンカーバイドの高品質バルク単結晶を製造する方法である。この局面において、本発明は、少なくとも約3インチ(75mm)の直径を有し、かつ約500cm−2未満の底面転位密度を有する少なくとも1平方インチ(6.25cm)の連続した表面領域とを有するSiCブールを成長するステップと、その後、SiCブールを、好ましくは、機械的にスライスして、ウェハにするステップとを含む。ここで、各ウェハは、少なくとも1平方インチ(6.25cm)の連続した表面上に、約500cm−2未満の底面転位密度を有する。これらのウェハは、好ましくは、約0.5mmの厚さである。
【0035】
SiCウェハを薄くして、X線トポグラフで欠陥を強調することが好ましいことであり得る。カウントするために好ましい厚さは、約80μmである。ウェハの薄くすることは、表面上の欠陥を強調するために実行され、前駆体へのステップとして、シード昇華に不必要である。したがって、昇華成長は、典型的には、薄くされなかった研磨されたシード上で実行される。
【0036】
当分野で周知のように、SiCブールは、好ましくは、シード昇華システムで、成長される。ブールがスライスされて、ウェハになった後、これらのウェハは、次いで、順に、シリコンカーバイドの単結晶のシード昇華成長におけるシードとして使用され得る。
【0037】
明細書の背景の部分で述べたように、シリコンカーバイドのシード昇華成長の一般的な局面は、長年の間に、一般的に、よく確立されてきた。さらに、結晶成長、特に、シリコンカーバイドのような困難な材料系における結晶成長を熟知している者は、所与の技術の詳細は、関連する状況に応じて、通常、目的に合わせて、変化し得、変化することを認識している。したがって、本明細書に与えられる記載は、当業者が、過度な実験がなくとも、本開示に基づいて、本発明の改善を実行することが可能であるという認識で、一般的で概略的な意味で、最も適切に与えられる。
【0038】
本発明を記載するにあたって、多数の技術が、開示されていることが理解される。これらの技術のそれぞれは、個々のメリットを有し、それぞれの技術はまた、他の開示される技術の1つまたは複数、あるいはいくつかの場合において、その全てとともに使用され得る。したがって、明瞭にする目的で、この記載は、不必要な方法で個々のステップのあらゆる可能な組み合わせを繰り返すことを避ける。それにも関わらず、明細書および請求項は、このような組み合わせが、本発明の範囲および請求項の中に、完全に収まることを理解して、読まれるべきである。
【0039】
図4は、本発明で有用であるものとして考えられるタイプのシード昇華成長のための昇華システムの断面模式図である。このシステムは、概括的に、12で示される。ほとんどの典型的なシステムと同様に、システム12は、グラファイトサセプタまたはルツボ14と、複数の誘導コイル16とを有し、誘導コイル16は、電流がコイル16に通るように印加されたとき、サセプタ14を加熱する。代替として、一部のシステムは、抵抗加熱を組み込む。結晶成長技術を熟知している者は、このシステムが、一部の環境の中、例えば、ウェハ冷却石英容器の中に、さらに封入され得ることを理解される。追加として、サセプタ14と通じる少なくとも一つのガスの入口および出口(図示せず)が、シード昇華システム12に含まれる。しかしながら、このようなさらなる封入は、本発明には、より適切ではなく、図面および記載を明瞭にするのに役立つように、本明細書において、省略される。追加として、当業者は、本明細書に記載されているタイプのシリコンカーバイド昇華システムが、市販されるものとして、および必要または適切であり得るようにカスタムで製造されるものとして、その双方で利用可能であることを認識する。したがって、これらのシステムは、過度の実験をすることなく、当該分野の当業者によって、選択または設計され得る。
【0040】
サセプタ14は、典型的には、絶縁体18によって囲まれ、その幾つかの部分が図4に示される。図4は、絶縁体が、サイズと配置において、全体的に整合性あるものとして示すが、絶縁体18の配置と量がサセプタ14に沿った所望の温度勾配(軸方向と半径方向との双方)を提供するために、使用され得ることは、当業者によって理解され、認識される。再び、簡略化の目的のために、これらの考えられる置換は、本明細書に示されない。
【0041】
明瞭にする目的のために、単数形の「温度勾配」が、本明細書で使用されるが、幾つかの勾配が、サセプタ14内に、好ましくは、共存し得、軸方向勾配および半径方向勾配として、あるいは複数の等温線として、下位区分に分けられ得る。
【0042】
サセプタ14は、シリコンカーバイド粉末原料20を含むための1つ以上の部分を含む。このような粉末原料20は、シリコンカーバイド用のシード昇華成長技術で、最も一般的に使用されるが、排他的なものではない。図4は、サセプタ14の下部部分に含まれるものとして、粉末原料20を示し、これは、一つの典型的なアレンジメントである。別のよく知られたバリエーションとして、一部のシステムは、原料粉末を垂直で円筒状のアレンジメント内に分布し、このアレンジメント内では、原料粉末が、図4に示されるアレンジメントでサセプタ14の内部を囲むよりも、より大きな部分を囲む。本明細書に記載される発明は、双方のタイプの設備を用いて、適切に実行され得る。
【0043】
シリコンカーバイドのシードは、22で示され、典型的には、サセプタ14の上部部分に置かれる。シード22は、好ましくは、少なくとも約3インチ(75mm)未満の直径を有する単結晶SiCのシードである。成長する結晶26は、シード結晶成長の間に、シード22に堆積される。
【0044】
シードホルダ28は、典型的に、適切な方法でサセプタ14に取り付けられているシードホルダ28を用いて、シード22を定位置に保持する。これは、当該分野で公知の様々なアレンジメントを含み得る。図4に示される向きで、シードホルダ28の上部部分は、サセプタ14、好ましくは、グラファイトルツボの最も上の部分に取り付けられ、所望の位置で、シード22を保持する。シードホルダ28は、好ましくは、グラファイトのシードホルダである。
【0045】
一部の実施形態において、昇華システム12において、ドーパント原子を含むことが好まれ得る。シード昇華システム12にドーパントガスを導入することによって、成長する結晶の中に、ドーパント原子が組み込まれる。ドーパントは、そのアクセプタまたはそのドナー能力に対して、選択される。所与の半導体において、ドナードーパントは、n型導電性を生成し、アクセプタドーパントは、p型導電性を生成する。好まれるドーパント原子は、n型ドーパント原子およびp型ドーパント原子を含む。特に好まれるn型ドーパントは、N、P、As、Sb、Bi、およびこれらの混合物を含む。特に好まれるp型ドーパントは、B、Al、Ga、In、Tl、およびこれらの混合物を含む。
【0046】
典型的な昇華成長技術において、サセプタ14が応答する周波数を有する電流は、グラファイトサセプタ14を加熱するために、誘導コイル16に通される。絶縁体18の量および配置は、サセプタ14が、典型的には約2000℃を超える昇華温度に、好ましくは、約2100℃と約2500℃との間に、原料粉末20を加熱するとき、粉末原料20と成長する結晶26との間の温度勾配を生成するように選択される。温度勾配は、シード22の温度を、その後、成長する結晶を、シリコンカーバイド原料の温度に近い温度で、しかし、それより低い温度で維持するように確立され、これにより、シリコンカーバイドが昇華するときに生成される蒸気種(Si、SiC、およびSiC)が、最初は、シード結晶に凝縮し、その後、成長する結晶に凝集することを熱力学的に促進する(例えば、米国特許第4,866,005号参照)。
【0047】
温度勾配および他の条件(圧力、キャリアガスなど)が、適切に維持される場合、全体的な熱力学は、蒸気種が、最初は、シード22に凝縮し、次いで、シード22と同じポリタイプで成長する結晶26に凝集するのを促進する。
【0048】
所望の結晶サイズに到達した後、成長は、このシステムの温度を1900℃未満に下げ、圧力を約400torrより上げることによって終了する。
【0049】
昇華成長プロセスの完了後、結晶をアニールすることは、さらに望ましいことであり得る。この結晶は、成長温度で、あるいは成長温度より高い温度で、約30分を超える期間にわたって、アニールされ得る。
【0050】
背景で、全般的に述べたように、電子デバイスの性能特性は、典型的には、様々なデバイス部分の結晶品質を改善するにつれて、改善する。したがって、本発明のウェハの低欠陥特性は、同様に、改善されたデバイスを提供する。特に、よりハイパワーで、より高電流のデバイスは、少なくとも1平方インチ(6.25cm)の連続した表面領域上の底面転位密度が、約500cm−2以下に下がると、ますます利用可能になる。
【0051】
したがって、別の局面において、本発明は、低欠陥3インチ(75mm)シリコンカーバイドウェハ上に形成される複数の電界効果トランジスタであり、該ウェハは、約50〜500cm−2の間の底面転位密度を有する少なくとも1平方インチ(6.25cm)の連続した表面領域を有する。
【0052】
別の局面において、また、図5に、模式的に示されるように、本発明は、低欠陥3インチ(75mm)シリコンカーバイド基板44上に形成される複数の金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)42であり、該基板は、約500cm−2未満、一部の場合において、約50〜500cm−2の間、そして、一部の場合(今日までに予見できるところで)、50cm−2未満の底面転位密度を有する少なくとも1平方インチ(6.25cm)の連続した表面領域を有する。図5は、基本的なMOSFET構造を示す。バルク単結晶基板44は、互いに反対側にある個々の第一の表面48と第二の表面50とを含む。基板上のエピタキシャル層は、個々のソース52、チャネル56、およびドレイン54の部分を有し、チャネル56は、酸化物層62を介して、ゲートコンタクト64によって制御される。個々のソースコンタクト58およびドレインコンタクト60は、ソース部分52上およびドレイン部分54上にある。MOSFET、さらにMOSFETの組み合わせおよびバリエーションの構造および動作は、当該分野で十分に理解されるので、図5およびその説明は、請求項に係る発明を制限するものではなく、むしろ例示的なものである。
【0053】
図6を参照すると、別の局面において、本発明は、低欠陥3インチ(75mm)シリコンカーバイドウェハ上に形成される複数の金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)66であり、該ウェハは、約50〜500cm−2の間の底面転位密度を有する少なくとも1平方インチ(6.25cm)の連続した表面領域を有する。基板68は、互いに反対にある個々の第一の表面70と第二の表面72とを含む。導電チャネル74は、基板68の第一の表面70上に位置する。オーム性のソースコンタクト76およびドレインコンタクト78は、導電チャネル74上に位置する。金属ゲートコンタクト80は、導電チャネル74上のソース76とコンタクト78との間に位置し、金属ゲートコンタクト80にバイアスが印加されたとき、活性チャネルを形成する。
【0054】
当該分野で公知のように、2種以上のデバイスが、本発明に従うシリコンカーバイドウェハ上に置かれ得る。含まれ得る追加のデバイスは、接合電界効果トランジスタ、ヘテロ電界効果トランジスタ、ダイオード、および当該分野で公知の他のデバイスである。これら(および他)のデバイスの構造および動作は、この分野において、十分理解され、過度の実験をすることなしに、本明細書に記載され、請求される基板を用いて、実施され得る。
【0055】
明細書および図面において、本発明の典型的な実施形態が開示されてきた。特定の用語は、一般的で記述的な意味でのみ使用され、限定の目的のために使用されるものではない。本発明の範囲は、添付の請求項に示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載のSiCの高品質単結晶ウェハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−6699(P2010−6699A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154425(P2009−154425)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【分割の表示】特願2008−514631(P2008−514631)の分割
【原出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(506078378)クリー, インコーポレイティッド (26)
【Fターム(参考)】