説明

供給禁止組合せ設定方法、コンピュータプログラムおよび基板処理装置

【課題】混触に危険を伴う組合せとなる薬液の混触を防止することができ、かつ、そのための設定作業に手間を要しない、供給禁止組合せ設定方法、コンピュータプログラムおよび基板処理装置を提供する。
【解決手段】CPU60により、使用薬液メモリ68,69,70から、第1薬液、第2薬液および第3薬液の各薬液名が読み出され、第1薬液、第2薬液および第3薬液の薬液名とバルブ18,19,20,23,25,31との対応関係を表す薬液−バルブ対応テーブルが作成される。そして、薬液−バルブ対応テーブル、および混触に危険を伴う薬液の組合せに関する情報を登録した混触禁止薬液データベースに基づいて、バルブ18,19,20,21,23,25,31,37間での同時開成および相前後する開成を禁止/可能とするバルブの組合せが設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種の薬液を用いた基板処理のための基板処理装置に関する。また、本発明は、その基板処理装置において実行される供給禁止組合せ設定方法、およびその基板処理装置に備えられるコンピュータにインストールされるコンピュータプログラムに関する。基板処理装置における処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程には、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板などの基板から汚染物質を除去するための洗浄処理が含まれる。
この洗浄処理において、複数種の薬液が用いられることがある。複数種の薬液の組合せが混触に危険を伴うような組合せである場合、薬液の混触を確実に防止するため、通常は、各薬液ごとに処理チャンバを替えて、基板に対する各薬液による処理が実施される。たとえば、王水と硫酸とが混触すると、激しい発熱反応により突沸を生じ、また、反応生成物として塩素ガスが発生する。そのため、王水と硫酸とを用いる洗浄処理では、王水用の処理チャンバにおいて、基板に対する王水による処理が実施され、その処理チャンバとは別の硫酸用の処理チャンバにおいて、基板に対する硫酸による処理が実施される。
【0003】
ところが、洗浄処理に用いられる複数種の薬液の組合せが混触に危険を伴うような組合せであっても、生産性の向上のために、1つの処理チャンバでの洗浄処理の完遂が望まれる場合がある。この要求に応えるためには、処理チャンバ内はもちろん、処理チャンバに接続された排液配管内や基板に薬液を供給するためのノズルに接続された供給配管内での薬液の混触を確実に防止しなければならない。
【特許文献1】特開2007−48983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理チャンバ内での薬液の混触を防止するため、混触に危険を伴う組合せとなる薬液の基板への同時供給を禁止することが考えられる。しかしながら、それを実現するためには、ユーザが各薬液と各薬液の供給/停止を切り替えるためのバルブとの対応関係を把握したうえで、同時開成を禁止するバルブの組合せを洗浄処理を実施する装置(基板処理装置)に備えられるコンピュータに入力しなければならず、その入力作業に手間がかかる。また、入力ミスを生じると、混触に危険を伴う組合せとなる薬液が同時に基板に供給され、それらの薬液の混触を生じてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、混触に危険を伴う組合せとなる薬液の混触を防止することができ、かつ、そのための設定作業に手間を要しない、供給禁止組合せ設定方法、コンピュータプログラムおよび基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、複数の処理流体キャビネット(65,66,67)に接続され、前記処理流体キャビネットから供給される処理流体を基板(W)に供給するための複数の処理流体供給手段(18,19,20,21,23,25,31,37)と、前記処理流体キャビネットと個々に対応づけて設けられ、それぞれ対応づけられた前記処理流体キャビネットで使用される処理流体に固有の固有情報を記憶する固有情報記憶手段(68,69,70)とを備える基板処理装置(1)において、同時または相前後した供給動作を禁止すべき前記処理流体供給手段の組合せを設定するための供給禁止組合せ設定方法であって、前記処理流体キャビネットと個々に対応づけて設けられる各固有情報記憶手段に、その対応づけられた前記処理流体キャビネットで使用される処理流体に固有の固有情報を登録するステップと、混触に危険を伴う処理流体の組合せを記憶した混触危険情報記憶手段を準備するステップと、各前記固有情報記憶手段から固有情報を読み出して、各前記固有情報記憶手段に対応づけられた前記処理流体キャビネットで使用される処理流体の固有情報と、当該処理流体キャビネットに接続されている前記処理流体供給手段とを関連づけて、処理流体−供給手段対応テーブルを作成するステップ(S2)と、前記混触危険情報記憶手段の内容および前記処理流体−供給手段対応テーブルに基づいて、同時または相前後した供給動作を禁止すべき前記処理流体供給手段の組合せを設定するステップ(S5,S6)とを含むことを特徴とする、供給禁止組合せ設定方法である。である。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この方法によれば、固有情報記憶手段から固有情報が読み出されて、各固有情報記憶手段に対応づけられた処理流体キャビネットで使用される処理流体の固有情報と、当該処理流体キャビネットに接続されている処理流体供給手段とが関連づけられて、処理流体−供給手段対応テーブルが作成される。そして、混触危険情報記憶手段の内容および処理流体−供給手段対応テーブルに基づいて、同時または相前後した供給動作を禁止すべき処理流体供給手段の組合せが設定される。
【0008】
これにより、各固有情報記憶手段にその対応づけられた処理流体キャビネットで使用される処理流体の固有情報を登録し、混触に危険を伴う処理流体の組合せを記憶した混触危険情報記憶手段を準備すれば、同時または相前後した供給動作を禁止すべき処理流体供給手段の組合せが自動的に設定される。混触に危険を伴う処理流体の組合せは、個々の基板処理装置で異なるものではなく、複数の基板処理装置で共有されるものであるから、これを記録媒体に記録しておけば、混触危険情報記憶手段の準備に手間はかからない。よって、各固有情報記憶手段への固有情報の登録を正確に行えば、設定作業に手間を要することなく、同時または相前後した供給動作を禁止すべき処理流体供給手段の組合せを設定することができ、混触に危険を伴う組合せとなる薬液の混触を防止することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、コンピュータ(62)と、複数の処理流体キャビネット(65,66,67)に接続され、前記処理流体キャビネットから供給される処理流体を基板(W)に供給するための複数の処理流体供給手段(18,19,20,21,23,25,31,37)と、前記処理流体キャビネットと個々に対応づけて設けられ、それぞれ対応づけられた前記処理流体キャビネットで使用される処理流体に固有の固有情報を記憶する固有情報記憶手段(68,69,70)とを備える基板処理装置(1)において、同時または相前後した供給動作を禁止すべき前記処理流体供給手段の組合せを設定するために、前記コンピュータにインストールされるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータは、混触に危険を伴う処理流体の組合せを記憶した混触危険情報記憶手段(61)を備え、前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータを、各前記固有情報記憶手段から固有情報を読み出して、各前記固有情報記憶手段に対応づけられた前記処理流体キャビネットで使用される処理流体の固有情報と、当該処理流体キャビネットに接続されている前記処理流体供給手段とを関連づけて、処理流体−供給手段対応テーブルを作成するテーブル作成手段、および前記混触危険情報記憶手段の内容および前記処理流体−供給手段対応テーブルに基づいて、同時または相前後した供給動作を禁止すべき前記処理流体供給手段の組合せを設定する組合せ設定手段として機能させるものであることを特徴とする、コンピュータプログラムである。
【0010】
このコンピュータプログラムを基板処理装置に備えられるコンピュータにインストールすることにより、コンピュータに請求項1記載の供給禁止組合せ設定方法を実行させることができる。また、請求項3記載の基板処理装置を実現することができる。
請求項3記載の発明は、複数の処理流体キャビネット(65,66,67)に接続され、前記処理流体キャビネットから供給される処理流体を基板に供給するための複数の処理流体供給手段(18,19,20,21,23,25,31,37)と、前記処理流体キャビネットと個々に対応づけて設けられ、それぞれ対応づけられた前記処理流体キャビネットで使用される処理流体に固有の固有情報を記憶する固有情報記憶手段(68,69,70)と、混触に危険を伴う処理流体の組合せを記憶した混触危険情報記憶手段(61)と、各前記固有情報記憶手段から固有情報を読み出して、各前記固有情報記憶手段に対応づけられた前記処理流体キャビネットで使用される処理流体の固有情報と、当該処理流体キャビネットに接続されている前記処理流体供給手段とを関連づけて、処理流体−供給手段対応テーブルを作成するテーブル作成手段(60)と、前記混触危険情報記憶手段の内容および前記処理流体−供給手段対応テーブルに基づいて、同時または相前後した供給動作を禁止すべき前記処理流体供給手段の組合せを設定する組合せ設定手段(60)とを含むことを特徴とする、基板処理装置(1)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を概念的に示す断面図である。
基板処理装置1は、第1薬液、第2薬液、第3薬液およびDIW(deionized water)を用いて、基板の一例である半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)から汚染物質を除去するための洗浄処理を実行するための装置である。この基板処理装置1は、隔壁(図示せず)により区画された処理室2内に、ウエハWをほぼ水平に保持して回転させるためのスピンチャック3と、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面(上面)に第1薬液を供給するための第1薬液ノズル4と、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面に第2薬液を供給するための第2薬液ノズル5と、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面に第3薬液を供給するための第3薬液ノズル6と、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面にDIWを供給するためのDIWノズル7とを備えている。
【0012】
スピンチャック3は、ほぼ鉛直に延びるスピン軸8と、スピン軸8の上端にほぼ水平な姿勢で取り付けられたスピンベース9と、スピンベース9の周縁部に配置された複数の挟持部材10とを備えている。複数の挟持部材10は、スピン軸8の中心軸線を中心とする円周上にほぼ等角度間隔で配置されている。各挟持部材10をウエハWの端面に当接させて、複数の挟持部材10でウエハWを挟持することにより、ウエハWがほぼ水平な姿勢で保持され、ウエハWの中心がスピン軸8の中心軸線上に配置される。
【0013】
スピン軸8には、モータ(図示せず)を含むチャック回転機構11から回転力が入力される。この回転力の入力により、スピン軸8が回転し、挟持部材10に挟持されたウエハWがスピンベース9とともにスピン軸8の中心軸線まわりに回転する。
スピン軸8には、裏面処理液供給管12が相対回転可能に挿通されている。裏面処理液供給管12の上端は、スピン軸8の上端に設けられた裏面ノズル13に接続されている。また、裏面処理液供給管12には、第1薬液キャビネット65(図2参照)から第1薬液が供給される第1薬液裏面側供給管14と、第2薬液キャビネット66(図2参照)から第2薬液が供給される第2薬液裏面側供給管15と、第3薬液キャビネット67(図2参照)から第3薬液が供給される第3薬液裏面側供給管16と、DIW供給ライン(図示せず)からDIWが供給されるDIW裏面側供給管17とが接続されている。
【0014】
第1薬液裏面側供給管14には、第1薬液裏面側バルブ18が介装されている。第2薬液裏面側供給管15には、第2薬液裏面側バルブ19が介装されている。第3薬液裏面側供給管16には、第3薬液裏面側バルブ20が介装されている。DIW裏面側供給管17には、DIW裏面側バルブ21が介装されている。
第2薬液裏面側バルブ19、第3薬液裏面側バルブ20およびDIW裏面側バルブ21が閉じられた状態で、第1薬液裏面側バルブ18が開かれると、第1薬液裏面側供給管14から裏面処理液供給管12に第1薬液が供給される。裏面処理液供給管12に供給された第1薬液は、裏面処理液供給管12を通して裏面ノズル13に供給され、裏面ノズル13から上方に向けて吐出される。スピンチャック3にウエハWが保持された状態で、裏面ノズル13から第1薬液を吐出させることにより、ウエハWの裏面(下面)に第1薬液を供給することができる。
【0015】
第1薬液裏面側バルブ18、第3薬液裏面側バルブ20およびDIW裏面側バルブ21が閉じられた状態で、第2薬液裏面側バルブ19が開かれると、第2薬液裏面側供給管15から裏面処理液供給管12に第2薬液が供給される。裏面処理液供給管12に供給された第2薬液は、裏面処理液供給管12を通して裏面ノズル13に供給され、裏面ノズル13から上方に向けて吐出される。スピンチャック3にウエハWが保持された状態で、裏面ノズル13から第2薬液を吐出させることにより、ウエハWの裏面に第2薬液を供給することができる。
【0016】
第1薬液裏面側バルブ18、第2薬液裏面側バルブ19およびDIW裏面側バルブ21が閉じられた状態で、第3薬液裏面側バルブ20が開かれると、第3薬液裏面側供給管16から裏面処理液供給管12に第3薬液が供給される。裏面処理液供給管12に供給された第3薬液は、裏面処理液供給管12を通して裏面ノズル13に供給され、裏面ノズル13から上方に向けて吐出される。スピンチャック3にウエハWが保持された状態で、裏面ノズル13から第3薬液を吐出させることにより、ウエハWの裏面に第3薬液を供給することができる。
【0017】
第1薬液裏面側バルブ18、第2薬液裏面側バルブ19および第3薬液裏面側バルブ20が閉じられた状態で、DIW裏面側バルブ21が開かれると、DIW裏面側供給管17から裏面処理液供給管12にDIWが供給される。裏面処理液供給管12に供給されたDIWは、裏面処理液供給管12を通して裏面ノズル13に供給され、裏面ノズル13から上方に向けて吐出される。スピンチャック3にウエハWが保持された状態で、裏面ノズル13からDIWを吐出させることにより、ウエハWの裏面にDIWを供給することができる。
【0018】
このように、第1薬液裏面側バルブ18、第2薬液裏面側バルブ19、第3薬液裏面側バルブ20およびDIW裏面側バルブ21を選択的に開くことにより、裏面ノズル13から第1薬液、第2薬液、第3薬液およびDIWを選択的に吐出させることができる。
なお、DIW裏面側供給管17は、裏面ノズル13に対して第1薬液裏面側供給管14、第2薬液裏面側供給管15および第3薬液裏面側供給管16よりも遠い位置で、裏面処理液供給管12に接続されている。そのため、裏面ノズル13からの第1薬液、第2薬液または第3薬液の吐出終了後に、DIW裏面側バルブ21が開かれて、裏面処理液供給管12にDIWが供給されると、そのDIWにより、裏面処理液供給管12内に残留している第1薬液、第2薬液または第3薬液が排除される。したがって、第1薬液裏面処理工程、第2薬液裏面処理工程および第3薬液裏面処理工程の終了後に裏面リンス工程(後述する)が行われることにより、裏面処理液供給管12内において、第1薬液、第2薬液および第3薬液間での混触を生じるおそれはない。
【0019】
また、ウエハWの裏面を洗浄する必要がない場合には、裏面処理液供給管12、第1薬液裏面側バルブ18、第2薬液裏面側バルブ19、第3薬液裏面側バルブ20およびDIW裏面側バルブ21が省略される。この場合、スピンチャック3としては、挟持式のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することにより、ウエハWを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
【0020】
第1薬液ノズル4には、第1薬液キャビネット65(図2参照)から第1薬液が供給される第1薬液表面側供給管22が接続されている。この第1薬液表面側供給管22には、第1薬液表面側バルブ23が介装されている。第1薬液表面側バルブ23が開かれると、第1薬液表面側供給管22から第1薬液ノズル4に第1薬液が供給され、第1薬液ノズル4から第1薬液が吐出される。
【0021】
第2薬液ノズル5には、第2薬液キャビネット66(図2参照)から第2薬液が供給される第2薬液表面側供給管24が接続されている。この第2薬液表面側供給管24には、第2薬液表面側バルブ25が介装されている。第2薬液表面側バルブ25が開かれると、第2薬液表面側供給管24から第2薬液ノズル5に第2薬液が供給され、第2薬液ノズル5から第2薬液が吐出される。
【0022】
第1薬液ノズル4および第2薬液ノズル5は、スピンチャック3の上方でほぼ水平に延びるノズルアーム26の先端部に取り付けられている。ノズルアーム26の基端部は、カップ38(後述する)の側方においてほぼ鉛直に延びるアーム支持軸27の上端部に支持されている。アーム支持軸27には、モータ(図示せず)を含むノズル駆動機構28が結合されている。ノズル駆動機構28からアーム支持軸27に回転力を入力して、アーム支持軸27を回動させることにより、スピンチャック3の上方でノズルアーム26を揺動させることができる。
【0023】
スピンチャック3にウエハWが保持され、そのウエハWの上方に第1薬液ノズル4が配置された状態で、第1薬液ノズル4から第1薬液を吐出させることにより、ウエハWの表面に第1薬液を供給することができる。そして、この第1薬液ノズル4からウエハWの表面への第1薬液の供給時に、ノズルアーム26を所定の角度範囲内で揺動させることにより、ウエハWの表面における第1薬液の着液位置(供給位置)を、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動させることができる。
【0024】
また、スピンチャック3にウエハWが保持され、そのウエハWの上方に第2薬液ノズル5が配置された状態で、第2薬液ノズル5から第2薬液を吐出させることにより、ウエハWの表面に第2薬液を供給することができる。そして、この第2薬液ノズル5からウエハWの表面への第2薬液の供給時に、ノズルアーム26を所定の角度範囲内で揺動させることにより、ウエハWの表面における第2薬液の着液位置(供給位置)を、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動させることができる。
【0025】
第3薬液ノズル6は、第3薬液を液滴の噴流の形態でウエハWの表面に供給することができる、いわゆる二流体ノズルである。この第3薬液ノズル6には、第3薬液キャビネット67(図2参照)から第3薬液が供給される第3薬液表面側供給管29と、窒素ガス供給ライン(図示せず)からの高圧の窒素ガスが供給される窒素ガス供給管30とが接続されている。
【0026】
第3薬液表面側供給管29には、第3薬液表面側バルブ31が介装されている。また、窒素ガス供給管30には、窒素ガスバルブ32が介装されている。第3薬液表面側バルブ31および窒素ガスバルブ32が開かれると、第3薬液表面側供給管29からの第3薬液および窒素ガス供給管30からの窒素ガスが第3薬液ノズル6に供給される。第3薬液ノズル6に供給される第3薬液および窒素ガスは、第3薬液ノズル6内または第3薬液ノズル6外の吐出口近傍で混合される。これにより、第3薬液の微細な液滴の噴流が形成される。
【0027】
第3薬液ノズル6は、スピンチャック3の上方でほぼ水平に延びる第3薬液ノズル用アーム33の先端部に取り付けられている。第3薬液ノズル用アーム33の基端部は、カップ38(後述する)の側方においてほぼ鉛直に延びる第3薬液ノズル用アーム支持軸34の上端部に支持されている。第3薬液ノズル用アーム支持軸34には、モータ(図示せず)を含む第3薬液ノズル用駆動機構35が結合されている。第3薬液ノズル用駆動機構35から第3薬液ノズル用アーム支持軸34に回転力を入力して、第3薬液ノズル用アーム支持軸34を回動させることにより、スピンチャック3の上方で第3薬液ノズル用アーム33を揺動させることができる。
【0028】
スピンチャック3にウエハWが保持され、そのウエハWの上方に第3薬液ノズル6が配置された状態で、第3薬液ノズル6から第3薬液の液滴の噴流を吐出させることにより、ウエハWの表面に第3薬液を供給することができる。そして、この第3薬液ノズル6からウエハWの表面への第3薬液の液滴の噴流の供給時に、第3薬液ノズル用アーム33を所定の角度範囲内で揺動させることにより、ウエハWの表面における第3薬液の着液位置(供給位置)を、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動させることができる。
【0029】
DIWノズル7は、スピンチャック3の上方に、スピンチャック3に対して固定的に配置されている。
DIWノズル7には、DIW供給ライン(図示せず)からDIWが供給されるDIW表面側供給管36が接続されている。このDIW表面側供給管36には、DIW表面側バルブ37が介装されている。DIW表面側バルブ37が開かれると、DIW表面側供給管36からDIWノズル7にDIWが供給され、DIWノズル7からDIWが吐出される。スピンチャック3にウエハWが保持された状態で、DIWノズル7からDIWを吐出させることにより、ウエハWの表面にDIWを供給することができる。
【0030】
また、スピンチャック3は、有底円筒容器状のカップ38内に収容されている。このカップ38の上方には、カップ38に対して昇降可能なスプラッシュガード39が設けられている。
カップ38の底部には、第3薬液およびDIWを廃液するための廃液溝40が、ウエハWの回転軸線(スピン軸8の中心軸線)を中心とする円環状に形成されている。また、カップ38の底部には、廃液溝40を取り囲むように、第1薬液を回収するための第1回収溝41および第2薬液を回収するための第2回収溝42が2重円環状に形成されている。廃液溝40、第1回収溝41および第2回収溝42には、それぞれ廃液ライン43、第1回収ライン44および第2回収ライン45が接続されている。
【0031】
スプラッシュガード39は、互いに大きさが異なる3つの傘状部材46,47,48を重ねて構成されている。スプラッシュガード39には、たとえば、サーボモータやボールねじ機構などを含むガード昇降機構49が結合されている。このガード昇降機構49によって、スプラッシュガード39をカップ38に対して昇降(上下動)させることができる。
【0032】
各傘状部材46〜48は、ウエハWの回転軸線に対してほぼ回転対称な形状を有している。
傘状部材46は、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする同軸円筒状の円筒部50,51と、これら円筒部50,51の上端を連結し、ウエハWの回転軸線に近づくほど高くなるように傾斜する傾斜部52とを一体的に備えている。内側(中心側)の円筒部50の下端は、廃液溝40上に位置している。外側の円筒部51の下端は、第1回収溝41上に位置している。また、円筒部50,51は、スプラッシュガード39が最下方の退避位置に下降したときに、それぞれの下端がカップ38の底面に接触しないような長さを有している。
【0033】
傘状部材47は、傘状部材46を取り囲むように設けられ、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする同軸円筒状の円筒部53,54と、これら円筒部53,54の上端を連結し、ウエハWの回転軸線に近づくほど高くなるように傾斜する傾斜部55とを一体的に備えている。内側(中心側)の円筒部53の下端は、第1回収溝41上に位置し、外側の円筒部54の下端は、第2回収溝42上に位置している。また、円筒部53,54は、スプラッシュガード39が最下方の退避位置に下降したときに、それぞれの下端がカップ38の底面に接触しないような長さを有している。
【0034】
傘状部材48は、傘状部材47を取り囲むように設けられ、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする円筒状の円筒部56と、この円筒部56の上端からウエハWの回転軸線に近づくほど高くなるように傾斜する傾斜部57とを備えている。円筒部56は、第2回収溝42上に位置しており、スプラッシュガード39が最下方の退避位置に下降したときに、その下端がカップ38の底面に接触しないような長さを有している。
【0035】
傾斜部52,55,57の上端縁は、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする円筒面上において、そのウエハWの回転軸線に沿う方向(鉛直方向)に間隔を空けて位置している。これにより、傾斜部52の上端縁と傾斜部55の上端縁との間には、ウエハWから飛散する第1薬液を飛入させて捕獲するための第1回収捕獲口58が形成されている。また、傾斜部55の上端縁と傾斜部57の上端縁との間には、ウエハWから飛散する第2薬液を飛入させて捕獲するための円環状の第2回収捕獲口59が形成されている。
【0036】
第1回収捕獲口58に捕獲された第1薬液は、傘状部材46の円筒部51と傘状部材47の円筒部53との間を通して、第1回収溝41に集められる。第1回収溝41に集められた第1薬液は、第1回収ライン44を通して、第1薬液回収処理設備(図示せず)に回収され、この第1薬液回収処理設備で所定の回収処理がなされた後、第1薬液キャビネット65(図2参照)に戻される。
【0037】
第2回収捕獲口59に捕獲された第2薬液は、傘状部材47の円筒部54と傘状部材48の円筒部56との間を通して、第2回収溝42に集められる。第2回収溝42に集められた第2薬液は、第2回収ライン45を通して、第2薬液回収処理設備(図示せず)に回収され、この第2薬液回収処理設備で所定の回収処理がなされた後、第2薬液キャビネット66(図2参照)に戻される。
【0038】
また、傘状部材46の円筒部50および傾斜部52の内側の面は、ウエハWから飛散する第3薬液およびDIWを廃液溝40に導くための案内面となっている。廃液溝40に導かれた第3薬液およびDIWは、廃液ライン43を通して、廃液される。
なお、この実施形態では、ウエハWの処理に使用された第3薬液が廃液される場合の構成を取り上げているが、第3薬液を回収する場合には、第2回収溝42を取り囲むように第3回収溝を設けるとともに、傘状部材48に第3回収溝上に位置する円筒部を追加して設け、また、第3回収溝上に位置する円筒部と、円筒部の上端からウエハWの回転軸線に近づくほど高くなるように傾斜する傾斜部とを一体的に備える傘状部材を、その傘状部材48を取り囲むように設ければよい。
【0039】
図2は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、CPU60およびメモリ61を含む構成のコンピュータ62を備えている。このコンピュータ62には、制御対象として、第1薬液裏面側バルブ18、第2薬液裏面側バルブ19、第3薬液裏面側バルブ20、DIW裏面側バルブ21、第1薬液表面側バルブ23、第2薬液表面側バルブ25、第3薬液表面側バルブ31、窒素ガスバルブ32、DIW表面側バルブ37、チャック回転機構11、ノズル駆動機構28、第3薬液ノズル用駆動機構35およびガード昇降機構49が接続されている。また、コンピュータ62には、ウエハWの洗浄処理における各処理工程の実行順序を規定するレシピを入力するためのレシピ入力キー63と、計時のためのタイマ64とが接続されている。
【0040】
基板処理装置1では、次の(1)〜(8)の処理工程を実行することができる。
(1)第1薬液表面処理工程
第1薬液表面処理工程は、第1薬液ノズル4からウエハWの表面に第1薬液を供給して、ウエハWの表面を第1薬液により処理する工程である。この第1薬液表面処理工程では、スピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に第1回収捕獲口58が対向するように、スプラッシュガード39が配置される。そして、スピンチャック3によりウエハWが所定の回転速度(たとえば、600rpm)で回転されつつ、そのウエハWの表面に第1薬液ノズル4から第1薬液が供給される。また、この第1薬液の供給時には、ノズルアーム26が所定の角度範囲内で揺動される。これにより、ウエハWの表面における第1薬液の着液位置が、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動する。この結果、ウエハWの表面の全域に第1薬液がむらなく供給される。ウエハWの表面に供給された第1薬液は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。このとき、ウエハWの端面に第1回収捕獲口58が対向しているので、ウエハWから飛散する第1薬液は、第1回収捕獲口58に飛入して捕獲される。
【0041】
(2)第2薬液表面処理工程
第2薬液表面処理工程は、第2薬液ノズル5からウエハWの表面に第2薬液を供給して、ウエハWの表面を第2薬液により処理する工程である。この第2薬液表面処理工程では、スピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に第2回収捕獲口59が対向するように、スプラッシュガード39が配置される。そして、スピンチャック3によりウエハWが所定の回転速度(たとえば、700rpm)で回転されつつ、そのウエハWの表面に第2薬液ノズル5から第2薬液が供給される。また、この第2薬液の供給時には、ノズルアーム26が所定の角度範囲内で揺動される。これにより、ウエハWの表面における第2薬液の着液位置が、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動する。この結果、ウエハWの表面の全域に第2薬液がむらなく供給される。ウエハWの表面に供給された第2薬液は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。このとき、ウエハWの端面に第2回収捕獲口59が対向しているので、ウエハWから飛散する第2薬液は、第2回収捕獲口59に飛入して捕獲される。
【0042】
(3)第3薬液表面処理工程
第3薬液表面処理工程は、第3薬液ノズル6からウエハWの表面に第3薬液を供給して、ウエハWの表面を第3薬液により処理する工程である。この第3薬液表面処理工程では、スピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に傘状部材46の傾斜部51が対向するように、スプラッシュガード39が配置される。そして、スピンチャック3によりウエハWが所定の回転速度(たとえば、500rpm)で回転されつつ、そのウエハWの表面に第3薬液ノズル6から第3薬液の液滴の噴流が供給される。また、この第3薬液の供給時には、第3薬液ノズル用アーム33が所定の角度範囲内で揺動される。これにより、ウエハWの表面における第3薬液の着液位置が、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動する。この結果、ウエハWの表面の全域に第3薬液がむらなく供給される。ウエハWの表面に供給された第3薬液は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。このとき、ウエハWの端面に傘状部材46の傾斜部51が対向しているので、ウエハWから飛散する第3薬液は、傘状部材46の円筒部50および傾斜部52の内側の面を伝って、廃液溝40へと導かれる。
【0043】
(4)表面リンス工程
表面リンス工程は、DIWノズル7からウエハWの表面にDIWを供給して、ウエハWの表面をDIWで水洗する工程である。この表面リンス工程では、スピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に傘状部材46の傾斜部51が対向するように、スプラッシュガード39が配置される。そして、スピンチャック3によりウエハWが所定の回転速度(たとえば、500rpm)で回転されつつ、そのウエハWの表面の中央部にDIWノズル7からDIWが供給される。ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの中央部から周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面の全域にDIWがむらなく供給される。ウエハWの表面の周縁に達したDIWは、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。このとき、ウエハWの端面に傘状部材46の傾斜部51が対向しているので、ウエハWから飛散するDIWは、傘状部材46の円筒部50および傾斜部52の内側の面を伝って、廃液溝40へと導かれる。
【0044】
(5)第1薬液裏面処理工程
第1薬液裏面処理工程は、裏面ノズル13からウエハWの裏面に第1薬液を供給して、ウエハWの裏面を第1薬液により処理する工程である。この第1薬液裏面処理工程では、スピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に第1回収捕獲口58が対向するように、スプラッシュガード39が配置される。そして、スピンチャック3によりウエハWが所定の回転速度(たとえば、600rpm)で回転されつつ、そのウエハWの裏面の中央部に裏面ノズル13から第1薬液が供給される。ウエハWの裏面に供給された第1薬液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの中央部から周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの裏面の全域に第1薬液がむらなく供給される。ウエハWの裏面の周縁に達した第1薬液は、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。このとき、ウエハWの端面に第1回収捕獲口58が対向しているので、ウエハWから飛散する第1薬液は、第1回収捕獲口58に飛入して捕獲される。
【0045】
(6)第2薬液裏面処理工程
第2薬液裏面処理工程は、裏面ノズル13からウエハWの裏面に第2薬液を供給して、ウエハWの裏面を第2薬液により処理する工程である。この第2薬液裏面処理工程では、スピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に第2回収捕獲口59が対向するように、スプラッシュガード39が配置される。そして、スピンチャック3によりウエハWが所定の回転速度(たとえば、700rpm)で回転されつつ、そのウエハWの裏面の中央部に裏面ノズル13から第2薬液が供給される。ウエハWの裏面に供給された第2薬液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの中央部から周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの裏面の全域に第2薬液がむらなく供給される。ウエハWの裏面の周縁に達した第2薬液は、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。このとき、ウエハWの端面に第2回収捕獲口59が対向しているので、ウエハWから飛散する第2薬液は、第2回収捕獲口59に飛入して捕獲される。
【0046】
(7)第3薬液裏面処理工程
第3薬液裏面処理工程は、裏面ノズル13からウエハWの裏面に第3薬液を供給して、ウエハWの裏面を第3薬液により処理する工程である。この第3薬液裏面処理工程では、スピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に傘状部材46の傾斜部51が対向するように、スプラッシュガード39が配置される。そして、スピンチャック3によりウエハWが所定の回転速度(たとえば、500rpm)で回転されつつ、そのウエハWの裏面の中央部に裏面ノズル13から第3薬液が供給される。ウエハWの裏面に供給された第3薬液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの中央部から周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの裏面の全域に第3薬液がむらなく供給される。ウエハWの裏面の周縁に達した第3薬液は、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。このとき、ウエハWの端面に傘状部材46の傾斜部51が対向しているので、ウエハWから飛散する第3薬液は、傘状部材46の円筒部50および傾斜部52の内側の面を伝って、廃液溝40へと導かれる。
【0047】
(8)裏面リンス工程
裏面リンス工程は、裏面ノズル13からウエハWの裏面にDIWを供給して、ウエハWの裏面をDIWで水洗する工程である。この裏面リンス工程では、スピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に傘状部材46の傾斜部51が対向するように、スプラッシュガード39が配置される。そして、スピンチャック3によりウエハWが所定の回転速度(たとえば、500rpm)で回転されつつ、そのウエハWの裏面の中央部に裏面ノズル13からDIWが供給される。ウエハWの裏面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの中央部から周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの裏面の全域にDIWがむらなく供給される。ウエハWの裏面の周縁に達したDIWは、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。このとき、ウエハWの端面に傘状部材46の傾斜部51が対向しているので、ウエハWから飛散するDIWは、傘状部材46の円筒部50および傾斜部52の内側の面を伝って、廃液溝40へと導かれる。
【0048】
レシピ入力キー63は、ユーザが操作可能な位置に配置されている。ユーザは、レシピ入力キー63を操作して、複数の処理工程を選択し、その選択した処理工程の順序を指定することにより、レシピを作成することができる。レシピ入力キー63の操作により作成されたレシピは、コンピュータ62のメモリ61に保存される。
メモリ61には、混触すると激しい発熱反応により突沸を生じるなど、混触に危険を伴う薬液の組合せが混触禁止薬液データベースとして記憶されている。
【0049】
また、第1薬液の供給源である第1薬液キャビネット65、第2薬液の供給源である第2薬液キャビネット66および第3薬液の供給源である第3薬液キャビネット67には、1対1に対応づけて、使用薬液メモリ68,69,70が備えられている。これらの使用薬液メモリ68,69,70には、それぞれ第1薬液、第2薬液および第3薬液の薬液名が記憶されている。
【0050】
CPU60は、後述するテーブル作成処理を実行し、メモリ61に格納されている混触禁止薬液データベース、および使用薬液メモリ68,69,70に記憶されている薬液名に基づいて、薬液−バルブ対応テーブル、同時吐出不可情報テーブルおよび連続吐出不可情報テーブルを作成する。そして、メモリ61に保持されたレシピに従って処理工程が実行されるように、同時吐出不可情報テーブルおよび連続吐出不可情報テーブルを参照しつつ、制御対象の各部の動作を制御する。
【0051】
図3は、テーブル作成処理の流れを示すフローチャートである。
基板処理装置1が起動されると、CPU60(コンピュータ62)は、まず、使用薬液メモリ68,69,70にアクセスし、第1薬液、第2薬液および第3薬液の各薬液名を取得する(S1:使用薬液名取得)。
次に、CPU60は、第1薬液の薬液名と第1薬液裏面側バルブ18および第1薬液表面側バルブ23とを対応づけ、第2薬液の薬液名と第2薬液裏面側バルブ19および第2薬液表面側バルブ25とを対応づけ、第3薬液の薬液名と第3薬液裏面側バルブ20および第3薬液表面側バルブ31とを対応づけて、その対応関係を表す薬液−バルブ対応テーブルを作成する(S2)。
【0052】
その後、CPU60は、今回作成した薬液−バルブ対応テーブルとメモリ61に既に記憶されている薬液−バルブ対応テーブルとを比較し、これらのテーブル間に変更箇所が存在するか否かを確認する(S3:薬液−バルブ対応関係変更)。
テーブル間に変更箇所が存在する場合には(S3のYES)、CPU60は、メモリ61に記憶されている混触禁止薬液データベースにアクセスし、混触に危険を伴う薬液の組合せに関する情報を取得する(S4:混触禁止情報取得)。
【0053】
次いで、CPU60は、第1薬液、第2薬液および第3薬液の間で混触に危険を伴う組合せが存在するか否かを確認する。そして、そのような組合せ(混触禁止組合せ)が存在する場合には、CPU60は、薬液−バルブ対応テーブルを参照し、その混触禁止組合せを構成する各薬液と対応づけられたバルブの同時開成および相前後する開成を禁止とする。一方、CPU60は、混触禁止組合せ以外の組合せを構成する各薬液および/または純水と対応づけられたバルブについては、それらのバルブの同時開成および相前後する開成を可能とする。このようにして、CPU60は、第1薬液裏面側バルブ18、第2薬液裏面側バルブ19、第3薬液裏面側バルブ20、DIW裏面側バルブ21、第1薬液表面側バルブ23、第2薬液表面側バルブ25、第3薬液表面側バルブ31およびDIW表面側バルブ37間での同時開成および相前後する開成を禁止/可能とするバルブの組合せを設定する。そして、同時開成を禁止/可能とするバルブの組合せをテーブルの形式にし(S5:同時吐出不可情報テーブル作成)、これを同時吐出不可情報テーブルとしてメモリ61に記憶する。また、相前後する開成を禁止/可能とするバルブの組合せをテーブルの形式にし(S6:連続吐出不可情報テーブル作成)、これを連続吐出不可情報テーブルとしてメモリ61に記憶する。
【0054】
一方、テーブル間に変更箇所が存在しない場合には(S3のNO)、CPU60は、同時吐出不可情報テーブルおよび連続吐出不可情報テーブルを新たに作成せず、このテーブル作成処理を終了する。この場合、メモリ61には、過去のテーブル作成処理で作成された同時吐出不可情報テーブルおよび連続吐出不可情報テーブルが保持され続ける。
図4は、連続吐出不可情報テーブルの一例を示す図である。
【0055】
たとえば、第1薬液が王水であり、第2薬液が硫酸であり、第3薬液がアンモニア過酸化水素水(SC1:NH4OH※+H2O2+H2O)である場合、第1薬液と第2薬液との混触、第2薬液と第3薬液との混触、および第3薬液と第1薬液との混触のいずれも危険を伴う。すなわち、第1薬液(王水)と第2薬液(硫酸)とが混触すると、激しい発熱反応により突沸を生じ、また、反応生成物として塩素ガスが発生する。また、第2薬液(硫酸)と第3薬液(アンモニア過酸化水素水)とが混触すると、発熱反応を生じ、硫化アンモニウムの結晶を生じる。また、第3薬液(アンモニア過酸化水素水)と第1薬液(王水)とが混触すると、発熱反応を生じて、塩素系ガスが発生する。
【0056】
そのため、この場合には、図4に「×」を付して示すように、第1薬液表面側バルブ23と第2薬液表面側バルブ25との組合せ、第1薬液表面側バルブ23と第3薬液表面側バルブ31との組合せ、第1薬液表面側バルブ23と第2薬液裏面側バルブ19との組合せ、第1薬液表面側バルブ23と第3薬液裏面側バルブ20との組合せ、第2薬液表面側バルブ25と第3薬液表面側バルブ31との組合せ、第2薬液表面側バルブ25と第1薬液裏面側バルブ18との組合せ、第2薬液表面側バルブ25と第2薬液裏面側バルブ19との組合せ、第3薬液表面側バルブ31と第1薬液裏面側バルブ18との組合せ、第3薬液表面側バルブ31と第2薬液裏面側バルブ19との組合せ、第1薬液裏面側バルブ18と第2薬液裏面側バルブ19との組合せ、第1薬液裏面側バルブ18と第3薬液裏面側バルブ20との組合せ、および第2薬液裏面側バルブ19と第3薬液裏面側バルブ20との組合せのすべてが、相前後する開成を禁止するバルブの組合せとされる。また、それらの組合せのすべてが、同時開成を禁止するバルブの組合せとされる。そして、それらの組合せ以外の組合せ(たとえば、DIW表面側バルブ37と第1薬液表面側バルブ23との組合せなど)については、同時開成および相前後する開成が可能なバルブの組合せとされる。
【0057】
図5は、各処理工程の開始時に実行されるインターロック処理の流れを示すフローチャートである。
このインターロック処理は、メモリ61に保持されたレシピに従って一連の洗浄処理が行われる過程において、各処理工程の開始時に実行される。複数の処理工程が並行して行われる場合、それらの処理工程に対して、このインターロック処理が1回実行される。
【0058】
まず、CPU60は、第1薬液裏面側バルブ18、第2薬液裏面側バルブ19、第3薬液裏面側バルブ20、DIW裏面側バルブ21、第1薬液表面側バルブ23、第2薬液表面側バルブ25、第3薬液表面側バルブ31およびDIW表面側バルブ37(以下、これらのバルブを総称して「バルブ群」という。)のうち、新規に開成すべきバルブ(新規開バルブ)を特定する(S11)。たとえば、第1薬液表面処理工程および第1薬液裏面処理工程が並行して行われる場合には、第1薬液表面側バルブ23および第1薬液裏面側バルブ18を新規開成バルブとして特定する。
【0059】
次に、CPU60は、同時吐出不可情報テーブルを参照し(S12)、新規開バルブが開成可能であるか否かを判断する(S13)。具体的には、新規開バルブに同時開成を禁止するバルブの組合せが含まれていないか否かが調べられ、そのような組合せが含まれていなければ、新規開バルブの開成が可能であると判断される。たとえば、第1薬液表面側バルブ23および第1薬液裏面側バルブ18が新規開成バルブである場合、これらの組合せは同時開成を禁止するバルブの組合せでないので、第1薬液表面側バルブ23および第1薬液裏面側バルブ18は開成可能であると判断される。
【0060】
CPU60は、新規開バルブが開成可能であると判断した場合には(S13のYES)、つづいて、過去直近に開成されたバルブ(最終開バルブ)を特定する(S14)。後述するように、バルブ群に含まれるバルブが開成されると、その開成されたバルブを特定するための情報がメモリ61に記憶される。したがって、そのメモリ61に記憶されている情報を参照すれば、最終開バルブを特定することができる。
【0061】
次いで、CPU60は、連続吐出不可情報テーブルを参照し(S15)、新規開バルブが開成可能であるか否かを判断する(S16)。具体的には、最終開バルブと新規開バルブとの組合せが相前後する開成を禁止するバルブの組合せであるか否かが調べられ、その組合せが相前後する開成を禁止するバルブの組合せでなければ、新規開バルブが開成可能であると判断される。たとえば、第1薬液表面側バルブ23および第1薬液裏面側バルブ18が新規開成バルブであり、DIW表面側バルブ37およびDIW裏面側バルブ21が最終開バルブである場合、第1薬液表面側バルブ23とDIW表面側バルブ37またはDIW裏面側バルブ21との組合せ、および第1薬液裏面側バルブ18とDIW表面側バルブ37またはDIW裏面側バルブ21との組合せは、どちらの組合せも相前後する開成を禁止するバルブの組合せでないので、第1薬液表面側バルブ23および第1薬液裏面側バルブ18は開成可能であると判断される。
【0062】
CPU60は、新規開バルブが開成可能であると判断した場合には(S16のYES)、その新規開バルブを開成させる(S17)。そして、CPU60は、その開成させた新規開バルブを最終開バルブとして特定するための情報をメモリ61に記憶させ(S18)、このインターロック処理を終了する。
一方、ユーザによるレシピ入力キー63の操作により作成されたレシピにおいて、たとえば、第1薬液表面処理工程および第2薬液裏面処理工程が並行して行われることが規定されていた場合、これらの処理工程の開始時におけるインターロック処理では、第1薬液表面側バルブ23および第2薬液裏面側バルブ19が新規開バルブに特定される(S11)。同時吐出不可情報テーブルによれば、第1薬液表面側バルブ23と第2薬液裏面側バルブ19との組合せは、同時開成を禁止するバルブの組合せである。したがって、この場合、CPU60は、新規開バルブが開成可能でないと判断する(S13のNO)。そして、CPU60は、新規開バルブである第1薬液表面側バルブ23および第2薬液裏面側バルブ19の開成を禁止し(S19)、このインターロック処理を終了する。この場合、新規開バルブの開成が禁止された旨の警報が出されてもよい。
【0063】
また、ユーザによるレシピ入力キー63の操作により作成されたレシピにおいて、たとえば、第3薬液表面処理工程に引き続いて、第1薬液表面処理工程が行われることが規定されていた場合、第1薬液表面処理工程および第1薬液裏面処理工程の開始時におけるインターロック処理では、第1薬液表面側バルブ23が新規開バルブに特定される。また、第3薬液表面側バルブ31が最終開バルブに特定される。連続吐出不可情報テーブルによれば、第1薬液表面側バルブ23と第3薬液表面側バルブ31との組合せは、相前後する開成を禁止するバルブの組合せである。したがって、この場合、CPU60は、新規開バルブが開成可能でないと判断する(S16のNO)。そして、CPU60は、新規開バルブである第1薬液表面側バルブ23の開成を禁止し(S19)、このインターロック処理を終了する。この場合、新規開バルブの開成が禁止された旨の警報が出されてもよい。
【0064】
以上のように、メモリ61には、最終開バルブを特定するための情報が記憶されている。CPU60によって、新規開バルブの開成に先立ち、そのメモリ61に記憶されている最終開バルブを特定するための情報が参照される。そして、最終開バルブと新規開バルブとの組合せが連続吐出不可情報テーブルにおいて相前後する開成を禁止するバルブの組合せである場合には、その新規開バルブの開成が禁止される。これにより、処理室2内や廃液ライン43、第1回収ライン44および第2回収ライン45に第1薬液、第2薬液または第3薬液が付着した状態で、第1薬液、第2薬液および第3薬液が処理室2内のウエハWに供給されることがない。そのため、処理室2内などにおける第1薬液、第2薬液および第3薬液間での混触を確実に防止することができる。その結果、1つの処理室2において、ウエハWに対する第1薬液、第2薬液および第3薬液を用いた洗浄処理を完遂することができる。
【0065】
また、この基板処理装置1では、CPU60(コンピュータ62)により、使用薬液メモリ68,69,70から、第1薬液、第2薬液および第3薬液の各薬液名が読み出され、第1薬液、第2薬液および第3薬液の薬液名と第1薬液裏面側バルブ18、第1薬液表面側バルブ23、第2薬液裏面側バルブ19、第2薬液表面側バルブ25、第3薬液裏面側バルブ20および第3薬液表面側バルブ31との対応関係を表す薬液−バルブ対応テーブルが作成される。そして、薬液−バルブ対応テーブル、および混触に危険を伴う薬液の組合せに関する情報を登録した混触禁止薬液データベースに基づいて、第1薬液裏面側バルブ18、第2薬液裏面側バルブ19、第3薬液裏面側バルブ20、DIW裏面側バルブ21、第1薬液表面側バルブ23、第2薬液表面側バルブ25、第3薬液表面側バルブ31およびDIW表面側バルブ37間での同時開成および相前後する開成を禁止/可能とするバルブの組合せが設定され、同時開成を禁止/可能とするバルブの組合せを記憶する同時吐出不可情報テーブルと、相前後する開成を禁止/可能とするバルブの組合せを記憶する連続吐出不可情報テーブルとが作成される。
【0066】
これにより、使用薬液メモリ68,69,70にそれぞれ第1薬液、第2薬液および第3薬液の各薬液名を登録し、混触禁止薬液データベースを準備すれば、同時開成または相前後する開成を禁止するバルブの組合せが自動的に設定される。混触禁止薬液データベースは、個々の基板処理装置1で異なるものではなく、複数の基板処理装置1で共有されるものであるから、これをCD−ROMなどの記録媒体に記録しておけば、それをコンピュータ60に読み取らせることにより、メモリ61における混触禁止薬液データベースの構築を達成することができる。したがって、混触禁止薬液データベースの準備に手間はかからない。よって、各使用薬液メモリ68,69,70への第1薬液、第2薬液および第3薬液の各薬液名の登録を正確に行えば、それ以外の設定作業に手間を要することなく、同時開成または相前後する開成を禁止するバルブの組合せを設定することができる。
【0067】
図6は、他のインターロック処理の流れを示すフローチャートである。
この図6に示すインターロック処理は、図5に示すインターロック処理に代えて実行される。以下、図5に示すインターロック処理において前述の各ステップと同様のステップについては、その詳細な説明を省略する。
まず、CPU60は、新規開バルブを特定する(S21)。
【0068】
次に、CPU60は、同時吐出不可情報テーブルを参照し(S22)、新規開バルブが開成可能であるか否かを判断する(S23)。
CPU60は、新規開バルブが開成可能であると判断した場合には(S23のYES)、つづいて、最終開バルブを特定する(S24)。
次いで、CPU60は、最終開バルブがDIW表面側バルブ37およびDIW裏面側バルブ21であれば、それらのDIW表面側バルブ37およびDIW裏面側バルブ21が継続的に開成されていた時間が調べられる。この時間は、DIW表面側バルブ37およびDIW裏面側バルブ21して行われる表面リンス工程および裏面リンス工程の継続時間であり、レシピから取得されてもよいし、タイマ64によりDIW表面側バルブ37およびDIW裏面側バルブ21の開成時間が実際に計測されてもよい。そして、CPU60は、DIW表面側バルブ37およびDIW裏面側バルブ21が一定時間以上開成され、DIWノズル7および裏面ノズル13からDIWが一定時間以上吐出されていた場合には(S25のYES)、最終開バルブを特定するための情報をメモリ61から消去する(S26)。一方、最終開バルブがDIW表面側バルブ37およびDIW裏面側バルブ21でない場合、およびDIW表面側バルブ37およびDIW裏面側バルブ21が一定時間以上開成されていない場合には(S25のNO)、最終開バルブを特定するための情報は消去されない。
【0069】
その後、CPU60は、連続吐出不可情報テーブルを参照し(S27)、新規開バルブが開成可能であるか否かを判断する(S28)。具体的には、最終開バルブと新規開バルブとの組合せが相前後する開成を禁止するバルブの組合せであるか否かが調べられる。最終開バルブを特定するための情報がメモリ61から消去されている場合には、最終開バルブの特定が不可能であるから、新規開バルブは開成可能であると判断される。
【0070】
CPU60は、新規開バルブが開成可能であると判断した場合には(S28のYES)、その新規開バルブを開成させる(S29)。そして、CPU60は、その開成させた新規開バルブを最終開バルブとして特定するための情報をメモリ61に記憶させ(S30)、このインターロック処理を終了する。
一方、CPU60は、新規開バルブに同時開成を禁止するバルブの組合せが含まれており、これにより新規開バルブが開成可能でないと判断した場合には(S23のNO)、新規開バルブの開成を禁止し(S31)、このインターロック処理を終了する。
【0071】
また、CPU60は、最終開バルブと新規開バルブとの組合せが相前後する開成を禁止/可能とするバルブの組合せであり、これにより新規開バルブが開成可能でないと判断した場合には(S28のNO)、新規開バルブの開成を禁止し(S31)、このインターロック処理を終了する。また、最終開バルブと新規開バルブとの組合せが相前後する開成を禁止するバルブの組合せでない場合であっても、最終開バルブを特定するための情報が消去されていない場合には、新規開バルブが開成可能でないと判断し(S28のNO)、新規開バルブの開成を禁止する(S31)。
【0072】
このように、最終開バルブがDIW表面側バルブ37およびDIW裏面側バルブ21であり、かつ、それらのDIW表面側バルブ37およびDIW裏面側バルブ21が継続的に開成されていた時間が一定時間以上である場合に、最終開バルブを特定するための情報がメモリ61から消去される。最終開バルブを特定するための情報がメモリ61から消去される。
【0073】
DIWノズル7および裏面ノズル13からDIWが一定時間以上吐出されると、処理室2内や処理室2や廃液ライン43、第1回収ライン44および第2回収ライン45から第1薬液、第2薬液または第3薬液がDIWで確実に洗い流されるので、その後に第1薬液、第2薬液または第3薬液が処理室2内のウエハWに供給されても、処理室2内などにおける第1薬液、第2薬液および第3薬液間での混触を生じない。一方、第1薬液、第2薬液または第3薬液間がウエハWに供給された後に、DIWノズル7および裏面ノズル13からDIWが一定時間以上吐出されていないと、処理室2内などに第1薬液、第2薬液または第3薬液が残り、その後に第1薬液、第2薬液または第3薬液が供給されると、第1薬液、第2薬液および第3薬液間での混触を生じるおそれがある。そこで、最終開バルブがDIW表面側バルブ37およびDIW裏面側バルブ21であっても、それらのDIW表面側バルブ37およびDIW裏面側バルブ21が継続的に開成されていた時間が一定時間以上でない場合には、新規開バルブの開成が禁止される。これにより、処理室2内などにおける第1薬液、第2薬液および第3薬液間での混触を確実に防止することができ、1つの処理室2において、ウエハWに対する第1薬液、第2薬液および第3薬液を用いた洗浄処理を完遂することができる。
【0074】
図7は、レシピ可否判断処理の流れを示すフローチャートである。
前述の説明においては、レシピ入力キー63の操作により作成されたレシピは、コンピュータ62のメモリ61に記憶され、このメモリ61に保持されたレシピに従って一連の洗浄処理が行われる過程において、各処理工程の開始時にインターロック処理が実行されるとした。しかしながら、レシピ入力キー63の操作によるレシピの作成後に、図7に示すレシピ可否判断処理が実行されて、その作成されたレシピが第1薬液、第2薬液および第3薬液間での混触を生じるような処理工程順を規定していないか否かが調べられ、そのような処理工程順を規定していない場合にのみ、レシピがメモリ61に記憶されて保存されるようにしてもよい。
【0075】
レシピ可否判断処理では、まず、CPU60は、レシピ入力キー63から入力されたレシピに従って一連の洗浄処理を仮想的に実行する(S41)。すなわち、CPU60は、レシピに規定された順序で各処理工程を仮想的に実行し、バルブ群を仮想的に開閉させる。
そして、CPU60は、各処理工程の開始時に、図5または図6に示すインターロック処理を仮想的に実行する(S42)。
【0076】
少なくとも1つの処理工程におけるインターロック処理において、新規開バルブの開成が禁止された場合には(S43のYES)、CPU60は、レシピ入力キー63から入力されたレシピを廃棄する(S44)。
一方、すべての処理工程におけるインターロック処理において、新規開バルブの開成が禁止されなかった場合には(S43のNO)、CPU60は、レシピ入力キー63から入力されたレシピを、第1薬液、第2薬液および第3薬液間での混触を生じるような処理工程順を規定していないものであると判断して、メモリ61に記憶させて保存する(S45)。
【0077】
このレシピ可否判断処理が行われることにより、第1薬液、第2薬液および第3薬液間での混触を生じるような処理工程順を規定したレシピのメモリ61への保存が防止され、図5または図6に関連して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。たとえば、相互間での混触に危険を伴うような第1薬液、第2薬液および第3薬液の組合せとして、王水、硫酸およびアンモニア過酸化水素水を例示したが、この他に、ポリマ除去液として用いられるフッ化アンモン系液、ふっ酸およびバッファードふっ酸の組合せを例示することもできる。また、第1薬液と第2薬液との混触に危険を伴い、第1薬液および第2薬液と第3薬液との混触に危険を伴わないような第1薬液、第2薬液および第3薬液の組合せとしては、第1薬液として王水、第2薬液として硫酸、第3薬液として過酸化水素水を例示することができる。
【0078】
さらに、第1薬液、第2薬液および第3薬液の3種の薬液を使用可能な構成を取り上げたが、第1薬液および第2薬液の2種の薬液を使用可能な構成の基板処理装置に本発明を適用することもできる。
また、第3薬液が液滴の噴流の状態でウエハWに供給される構成を取り上げたが、第3薬液ノズル6がストレートノズルとされて、第3薬液が連続流の状態でウエハWに供給されてもよい。さらにまた、第1薬液ノズル4および/または第2薬液ノズル5が二流体ノズルとされて、第1薬液および/または第2薬液が液滴の噴流の状態でウエハWに供給されてもよい。
【0079】
また、使用薬液メモリ68,69,70にそれぞれ第1薬液、第2薬液および第3薬液の各薬液名が登録されているとしたが、第1薬液、第2薬液および第3薬液に固有の情報であれば、たとえば、第1薬液、第2薬液および第3薬液の製品番号などがそれぞれ使用薬液メモリ68,69,70に登録されてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を概念的に示す断面図である。
【図2】基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】テーブル作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】連続吐出不可情報テーブルの一例を示す図である。
【図5】各処理工程の開始時に実行されるインターロック処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】他のインターロック処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】レシピ可否判断処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0081】
1 基板処理装置
18 第1薬液裏面側バルブ
19 第2薬液裏面側バルブ
20 第3薬液裏面側バルブ
21 DIW裏面側バルブ
23 第1薬液表面側バルブ
25 第2薬液表面側バルブ
31 第3薬液表面側バルブ
37 DIW表面側バルブ
60 CPU
61 メモリ
62 コンピュータ
65 第1薬液キャビネット
66 第2薬液キャビネット
67 第3薬液キャビネット
68 使用薬液メモリ
69 使用薬液メモリ
70 使用薬液メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理流体キャビネットに接続され、前記処理流体キャビネットから供給される処理流体を基板に供給するための複数の処理流体供給手段と、前記処理流体キャビネットと個々に対応づけて設けられ、それぞれ対応づけられた前記処理流体キャビネットで使用される処理流体に固有の固有情報を記憶する固有情報記憶手段とを備える基板処理装置において、同時または相前後した供給動作を禁止すべき前記処理流体供給手段の組合せを設定するための供給禁止組合せ設定方法であって、
前記処理流体キャビネットと個々に対応づけて設けられる各固有情報記憶手段に、その対応づけられた前記処理流体キャビネットで使用される処理流体に固有の固有情報を登録するステップと、
混触に危険を伴う処理流体の組合せを記憶した混触危険情報記憶手段を準備するステップと、
各前記固有情報記憶手段から固有情報を読み出して、各前記固有情報記憶手段に対応づけられた前記処理流体キャビネットで使用される処理流体の固有情報と、当該処理流体キャビネットに接続されている前記処理流体供給手段とを関連づけて、処理流体−供給手段対応テーブルを作成するステップと、
前記混触危険情報記憶手段の内容および前記処理流体−供給手段対応テーブルに基づいて、同時または相前後した供給動作を禁止すべき前記処理流体供給手段の組合せを設定するステップとを含むことを特徴とする、供給禁止組合せ設定方法。
【請求項2】
コンピュータと、複数の処理流体キャビネットに接続され、前記処理流体キャビネットから供給される処理流体を基板に供給するための複数の処理流体供給手段と、前記処理流体キャビネットと個々に対応づけて設けられ、それぞれ対応づけられた前記処理流体キャビネットで使用される処理流体に固有の固有情報を記憶する固有情報記憶手段とを備える基板処理装置において、同時または相前後した供給動作を禁止すべき前記処理流体供給手段の組合せを設定するために、前記コンピュータにインストールされるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータは、混触に危険を伴う処理流体の組合せを記憶した混触危険情報記憶手段を備え、
前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータを、
各前記固有情報記憶手段から固有情報を読み出して、各前記固有情報記憶手段に対応づけられた前記処理流体キャビネットで使用される処理流体の固有情報と、当該処理流体キャビネットに接続されている前記処理流体供給手段とを関連づけて、処理流体−供給手段対応テーブルを作成するテーブル作成手段、および
前記混触危険情報記憶手段の内容および前記処理流体−供給手段対応テーブルに基づいて、同時または相前後した供給動作を禁止すべき前記処理流体供給手段の組合せを設定する組合せ設定手段
として機能させるものであることを特徴とする、コンピュータプログラム。
【請求項3】
複数の処理流体キャビネットに接続され、前記処理流体キャビネットから供給される処理流体を基板に供給するための複数の処理流体供給手段と、
前記処理流体キャビネットと個々に対応づけて設けられ、それぞれ対応づけられた前記処理流体キャビネットで使用される処理流体に固有の固有情報を記憶する固有情報記憶手段と、
混触に危険を伴う処理流体の組合せを記憶した混触危険情報記憶手段と、
各前記固有情報記憶手段から固有情報を読み出して、各前記固有情報記憶手段に対応づけられた前記処理流体キャビネットで使用される処理流体の固有情報と、当該処理流体キャビネットに接続されている前記処理流体供給手段とを関連づけて、処理流体−供給手段対応テーブルを作成するテーブル作成手段と、
前記混触危険情報記憶手段の内容および前記処理流体−供給手段対応テーブルに基づいて、同時または相前後した供給動作を禁止すべき前記処理流体供給手段の組合せを設定する組合せ設定手段とを含むことを特徴とする、基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−251977(P2008−251977A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93950(P2007−93950)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】