説明

光レセプタクルおよび光モジュール

【課題】スリーブの変位を抑制して、高い信頼性で安定した光伝送を実現できる光レセプタクルおよび光モジュールを提供する。
【解決手段】光レセプタクル7は、外部から挿入されるプラグフェルール10と当接して、光学的接続を行うためのファイバスタブ1と、プラグ挿入空間を確保するようにファイバスタブ1が挿入され、プラグフェルール10とファイバスタブ1の間の調芯を得るためのスリーブ4と、プラグ挿入用の開口を有し、スリーブ4を収容するためのスリーブケース5aなどで構成され、スリーブケース5aの内面には、スリーブ4の変位を制限するための凸部5bが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバコネクタと光学的に接続可能な光レセプタクル、およびこれを用いた光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光信号を電気信号に変換するための光モジュールは、半導体レーザ(LD)やフォトダイオード等の光素子をケース内に収納し、光ファイバを通じて光信号を導入又は導出するような構造を有する(特許文献1参照)。
【0003】
レセプタクル型の光モジュールは、コネクタ接続が可能なものであり、例えば、図5に示すような光レセプタクル14の一端にLD等の光素子22を配置するとともに、他端は、光コネクタ(SCコネクタ等)のプラグフェルール15が接続可能である。
【0004】
ファイバスタブ16は、ジルコニア、アルミナ等のセラミック材料からなるフェルール17と、フェルール17の貫通孔に挿入固定された、石英ガラス等からなる光ファイバ18とで構成される。ファイバスタブ16の後端側は、圧入によってホルダ20に固定される。ファイバスタブ16の先端側は、スリーブ19の一方開放端部の内孔に挿入されて把持される。そして、ホルダ20にスリーブケース21を圧入又は接着により固定することによって、光レセプタクル14が得られる。
【0005】
さらに、上述の光レセプタクル14を用いて光モジュールを構成する場合、ファイバスタブ16の後端部側に、上述のような光素子22およびレンズ23を収納したケース24を配置して、光レセプタクル14とケース24を溶接により接合する。そして、スリーブ19の他方の開放端部からプラグフェルール15を挿入し、ファイバスタブ16の端面(光ファイバ18の端面)に当接させることによって光学的接続が行われ、光信号の送受信が可能になる。
【0006】
近年、高密度実装の要求から光モジュールの小型化が求められており、光レセプタクル14の全長も短くすることが求められている。また、光レセプタクル14に接続されるコネクタも、SCコネクタ等から、LCコネクタ等のより小さなコネクタが使用されつつある。
【0007】
そこで図6に示すように、フェルール17の貫通孔に光ファイバ18を挿入固定したファイバスタブ16と、ファイバスタブ16およびプラグフェルール15を把持するためのスリーブ19と、スリーブ19の一方の開放端部外周に圧入され、スリーブ19の自由な変形を拘束する把持リング25とを備える光レセプタクル26が提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
この光レセプタクル26を用いて光モジュールを構成する場合、図7に示すように、ファイバスタブ16を備えた後端部側に、光素子22およびレンズ23を備えたケース24を配置して、光レセプタクル26とケース24を溶接により接合する。そして、スリーブ19の他方開放端側からプラグフェルール15を挿入し、ファイバスタブ16の先端部に当接させることによって光学的接続が行われ、光信号の送受信が可能になる。
【0009】
JIS規格やIEC規格等によると、フェルール17の外径は、SCコネクタを接続するタイプのものがφ2.5mm程度、LCコネクタを接続する小型タイプのものがφ1.25mm程度であり、その外径公差は±1μm以下と規定されている。また、フェルール17の貫通孔に挿入される光ファイバ18の外径は125μm程度、その外径公差は±1μm程度と規定されている。
【0010】
光ファイバ18の中心に位置するコア(不図示)が実際に光信号を伝搬することから、直径10μm程度のコア同士を低損失で接続するために、スリーブ19、フェルール17等の部品は高精度で加工する必要がある。スリーブ19は、ファイバスタブ16とプラグフェルール15とを調芯して、安定且つ高精度に把持する役割を有する。
【0011】
なお、ファイバスタブ16における光ファイバ18の端面は、当接時の接続損失を減らすために、曲率半径5〜30mm程度の曲面に鏡面研磨されている。また、ファイバスタブ16の反対側端面は、光素子22から出射した光が光ファイバ18の先端部で反射して再び光素子に戻る反射光を防止するため、光ファイバ18を挿通するフェルール17とともに4〜10°程度の傾斜面に鏡面研磨されている。
【0012】
【特許文献1】特開2001−66468号公報
【特許文献2】特許第3314667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図5に示す従来の光レセプタクル14において、小型化の要求に応えるため、SCコネクタのφ2.5mmフェルール17からLCコネクタのφ1.25mmフェルール17に寸法を変更した場合、フェルール17の外径が半分になることから、フェルール17の外径面積も約1/2に減少する。そのため、ホルダ20とファイバスタブ16の接触面積も著しく減少して、固定強度が非常に小さくなる。
【0014】
さらに、スリーブ19にはスリットが入っているために、光コネクタ接続時にプラグフェルール15に横荷重が作用すると、スリーブ19の弾性変形に起因して、ファイバスタブ16がスリーブ19によって充分に保持されずに揺動しやすくなり、その結果、接続損失の再現性が悪くなるという、いわゆるウイグル(wiggle)特性の悪化問題が生ずる。
【0015】
また、図6に示すような光レセプタクル26では、全長を短く設計しているため、スリーブ19がファイバスタブ16を保持する長さL2が短くなり、しかも把持リング25がスリーブ19を固定する長さL3は、L2より更に短くなる。そのため、スリーブ19はファイバスタブ16と把持リング25との間で充分に把持されなくなる。それ故、光コネクタ接続時にプラグフェルール15に横荷重が作用すると、スリーブ19が揺動しやすくなり、その結果、接続損失の再現性が悪くなるという、いわゆるウイグル(wiggle)特性の悪化問題が生ずる。
【0016】
さらに、スリーブ19の把持状態が不安定になると、相互の光ファイバ接続部にすべりが生じやすくなり、その結果、光ファイバ18の端面に傷がつくことがあり、光信号の伝送が困難になるという問題が生ずる。
【0017】
本発明の目的は、スリーブの変位を抑制して、高い信頼性で安定した光伝送を実現できる光レセプタクルおよび光モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る光レセプタクルは、外部から挿入されるプラグと当接して、光学的接続を行うためのスタブと、プラグ挿入空間を確保するようにスタブが挿入され、プラグとスタブの間の調芯を得るためのスリーブと、プラグ挿入用の開口を有し、スリーブを収容するための収容部材とを備え、収容部材の内面には、スリーブの変位を制限するための凸部が設けられることを特徴とする。
【0019】
本発明において、凸部は、スタブの光学端面を基準としてプラグ挿入用の開口寄りに設けられることが好ましい。
【0020】
また本発明において、凸部は、スリーブのプラグ側端部に対して接触または近接して設けられることが好ましい。
【0021】
また本発明において、スリーブは、長手方向に延びるスリットを有する割りスリーブであり、スリーブの軸心に関してスリットの反対側に位置するスリット対向部に対して、凸部が接触または近接していることが好ましい。
【0022】
また本発明において、収容部材の内面には、スリーブのスリットと係合する係合部が設けられることが好ましい。
【0023】
また本発明において、凸部とスリーブとの間の間隙は、0〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0024】
さらに、本発明に係る光モジュールは、上述の光レセプタクルと、スタブへ光を供給し、またはスタブから光を受けるための光素子とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、スリーブを収容するための収容部材の内面にスリーブの変位を制限するための凸部を設けることによって、例えば、プラグ着脱時や光ケーブル敷設時に、過大な荷重がスリーブに作用して、スリーブが揺動したり変形しようとしても、スリーブが凸部に接触することにより、スリーブの動きが止められる。その結果、スリーブの姿勢が安定化され、接続損失の再現性、いわゆるウイグル(wiggle)特性を大幅に改善することができる。
【0026】
また、スリーブの変位量はスタブから遠くなるほど増加することから、こうした凸部を、スタブの光学端面を基準としてプラグ挿入用の開口寄りに設けることによって、スリーブを精度良く位置決めすることができる。
【0027】
また、凸部を、スリーブのプラグ側端部に対して接触または近接して設けることによって、スタブから最も遠い位置でスリーブの変位を制限できるため、スリーブの位置決め精度を向上させることができる。
【0028】
また、長手方向に沿ったスリットを有する割りスリーブを使用した場合、スリーブが変形すると、スリーブの軸心およびスリットを含む面に関して対称的に変形する。従って、スリーブの軸心に関してスリットの反対側に位置するスリット対向部に対して凸部を接触または近接させることによって、スリーブが変形しようとした場合、スリーブ軸心の振れを抑制できるため、プラグとスタブの間の相対変位を防止することができる。
【0029】
また、収容部材の内面にスリーブのスリットと係合する係合部を設けることによって、スリーブが変形しようとした場合、スリーブの回転変位を抑制することができる。
【0030】
また、凸部とスリーブとの間の間隙を0〜100μmの範囲に設定することによって、凸部位置におけるスリーブの変位量を0〜100μmの範囲に抑制できるため、安定したウイグル特性を確保できる。
【0031】
また本発明に係る光モジュールは、スリーブの変位を抑制した光レセプタクルを用いているため、高い信頼性で安定した光伝送を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1(a)は本発明の一実施形態を示す中央断面図であり、図1(b)は図1(a)中のX−X線に沿った断面図である。
【0034】
光レセプタクル7は、ファイバスタブ1と、スリーブ4と、スリーブケース5aと、ホルダ5などで構成される。
【0035】
ファイバスタブ1は、軸心に貫通孔が形成された円柱状のフェルール2と、この貫通孔に挿入、固定された光ファイバ3などで構成され、外部から挿入されるプラグフェルール10の端面と当接して、光学的接続を行う。このプラグフェルール10も、ファイバスタブ1と同様な構造を有し、軸心に貫通孔が形成された円柱状のフェルールと、この貫通孔に挿入、固定された光ファイバなどで構成される。
【0036】
ファイバスタブ1の先端部1aは、プラグフェルール10との接続損失を低減させるため、曲率半径5〜30mm程度の曲面状に加工されている。プラグフェルール10の端面も、同様に、接続損失を低減させるため、曲率半径5〜30mm程度の曲面状に加工されている。
【0037】
ファイバスタブ1の後端部1bは、光素子等からの入射光が光ファイバ3の端面で反射して、再び光素子に戻る反射光を防止するため、4〜10°程度の傾斜面に鏡面研磨されている。
【0038】
フェルール2の材質は、銅合金、ニッケル合金、ステンレス等の他の金属やエポキシ、液晶ポリマー等のプラスチック、セラミック等を使用することができ、特に、ジルコニアセラミックスで形成することが好ましい。具体的には、ZrOを主成分とし、Y、CaO、MgO、CeO、Dyなどの少なくとも一種を安定化剤として含み、正方晶の結晶を主体とする部分安定化ジルコニアセラミックスを用いることが好ましく、このような部分安定化ジルコニアセラミックスは、優れた耐摩耗性を有するとともに、適度に弾性変形することから有利である。
【0039】
スリーブ4は、ファイバスタブ1の外径およびプラグフェルール10の外径とほぼ一致する内径を有する中空円筒状の部材であって、ファイバスタブ1とプラグフェルール10の間の調芯を確保する役割を果たす。このスリーブ4は、ファイバスタブ1側に開口した端部4aと、プラグフェルール10に開口した端部4bとを有し、プラグフェルール10の挿入空間を確保するように、ファイバスタブ1が端部4aから挿入される。
【0040】
スリーブ4として、図1(b)に示すように、長手方向に沿ったスリット4cを有する割りスリーブを用いることが望ましく、この場合、スリーブ4の内径は、プラグフェルール10の外径より数μm程度小さくなるように形成することが望ましい。スリット4cを設けることにより、スリーブ4内に挿入されるプラグフェルール10に対して弾性による把持力が作用するからである。
【0041】
スリーブ4の材質は、例えば、燐青銅、ベリリウム銅、黄銅、ステンレス等の他の金属やエポキシ、液晶ポリマー等のプラスチック、セラミック等を使用することができ、特に、ジルコニアセラミックスで形成することが好ましい。具体的には、ZrOを主成分とし、Y、CaO、MgO、CeO、Dyなどの少なくとも一種を安定化剤として含み、正方晶の結晶を主体とする部分安定化ジルコニアセラミックスを用いることが好ましく、このような部分安定化ジルコニアセラミックスは、優れた耐摩耗性を有するとともに、適度に弾性変形することから有利である。
【0042】
スリーブ4の加工方法としては、例えば、ジルコニアセラミックスで形成する場合、予め射出成形、プレス成形、押出成形等の所定の成形法によってスリーブとなる円筒状の成形体を得、その後、その成形体を1300〜1500℃で焼成し、所定の寸法に研削加工または研磨加工を施す。なお、成形体に切削加工等によって予め所定の形状を形成しておき、その後焼成を行ってもよい。また、スリーブ4をプラスチックで形成する場合、金型を工夫すればいかなる形状でも容易に製造できるという利点がある。
【0043】
ホルダ5は、ファイバスタブ1およびスリーブケース5aを保持して固定するための部材である。このホルダ5のファイバスタブ1側の端面に、光源や受光素子などの光素子を収納したケースを接合することによって、光モジュールを構成することができる。ホルダ5と光素子ケースを溶接で接合する場合、ホルダ5の材質としてステンレス、銅、鉄、ニッケルなどの溶接可能な材料が用いられるが、主には耐腐食性と溶接性を考慮して、ステンレスを用いることが好ましい。
【0044】
ホルダ5は、例えば、有底円筒形状の部材で構成され、底部中心にはファイバスタブ1と嵌合可能な貫通孔が形成され、円筒部の内面はスリーブケース5aの外面と嵌合する。これらの貫通孔および円筒部の嵌合面の算術平均粗さ(Ra)は、加工性および製造コストの点で0.1μm以上あることが好ましい。
【0045】
スリーブケース5aは、プラグ挿入用の開口を有する中空円筒状の部材であって、スリーブ4を内部に収容するために、スリーブ4の外径よりわずかに大きな内径の内部空間を有する。また、プラグ挿入用の開口は、プラグフェルール10の外径よりわずかに大きな内径を有し、テーパー形状の開口端部とともに、プラグフェルール10の挿入を案内する役割を果たす。
【0046】
ここでは、ホルダ5とスリーブケース5aを別部材で構成した例を説明するが、両者は一体的な単一部材としても形成することができる。
【0047】
本実施形態では、スリーブケース5aの内面に、スリーブ4の変位、例えば、撓み変位や揺動変位などを制限するための凸部5bを設けている。凸部5bは、スリーブ4の外面に向けて突出するように形成され、スリーブ4の外面とスリーブケース5aの内面との間隙を狭くして、スリーブ4の遊びを少なくする役割を果たす。
【0048】
凸部5bのX−X線に沿った断面形状は、図1(b)に示すように、例えば、スリーブ外面の曲率半径とほぼ一致するように湾曲した上辺を有する台形状であり、スリーブの長手方向に沿って所定の長さで延びている。
【0049】
こうした凸部5bを設けることによって、例えば、プラグフェルール10の着脱時や光ケーブル敷設時に、過大な荷重がスリーブ4に作用して、スリーブ4が揺動したり変形しようとしても、スリーブ4が凸部5bに接触することにより、スリーブ4の動きが止められる。その結果、スリーブ4の姿勢が安定化され、接続損失の再現性、いわゆるウイグル(wiggle)特性を大幅に改善することができる。スリーブ4の姿勢が安定化することによって、プラグフェルール10とファイバスタブ1との間の光学当接面において、相対的なすべりが生じなくなり、光ファイバ3の端面が損傷しなくなって、光信号の導入導出における信頼性を向上させることができる。
【0050】
また、スリーブ4の撓み変位や揺動変位は、ファイバスタブ1から遠くなるほど増加することから、こうした凸部5bを、ファイバスタブ1の光学端面を基準としてプラグ挿入用の開口寄りに設けることが好ましく、これによってスリーブ4の姿勢を精度良く位置決めすることができる。
【0051】
また、凸部5bを、図1(b)に示すように、スリーブ4のプラグ側端部4bに対して接触または近接して設けることが好ましい、これによってファイバスタブ1から最も遠い位置でスリーブ4の変位を制限できるため、スリーブの位置決め精度を向上させることができる。
【0052】
凸部5bの高さに関して、凸部5bはスリーブ4の外面に常時接触していることが望ましいが、所定間隙を隔てて近接するように形成してもよい。この場合、凸部5bとスリーブ4の外面との間隙を0〜100μmの範囲に設定することが好ましく、これによって凸部位置におけるスリーブの変位量を0〜100μmの範囲に抑制できるため、安定したウイグル特性を確保できる。この間隙が100μmを超えると、プラグフェルール10の荷重により、スリーブ4の変形量が大きくなり過ぎて、ウイグル特性を悪化させることになるからである。
【0053】
図2は、プラグフェルール10の挿入前後で、スリーブ4の変形の様子を示す断面図である。スリーブ4の実線はプラグ挿入前の状態を示し、スリーブ4の2点鎖線はプラグ挿入後の状態を示す。
【0054】
スリーブ4として、長手方向に沿ったスリット4cを有する割りスリーブを使用した場合、プラグ挿入時にスリーブ4が変形すると、スリーブ4の軸心およびスリット4cを含む面に関して対称的に変形する。このとき、スリーブ4の軸心に関してスリット4cの反対側に位置するスリット対向部4dを基準位置として、スリット4cは外側に広がるように変形する。一方、スリット対向部4dは、プラグフェルール10を挿入しても光レセプタクル7内部の位置は不動である。
【0055】
そこで、スリット対向部4dに対して接触または近接するように凸部5bを設けることによって、スリーブ4が変形しようとしても、スリーブ軸心の振れを抑制できるため、プラグフェルール10とファイバスタブ1の間の相対変位を防止することができる。凸部5bをスリット対向部4dに近接させる場合、凸部5bとスリーブ4の外面との間隙を0〜100μmの範囲に設定することが好ましく、これによってプラグフェルール10に横荷重が作用しても、スリーブ4の変形を抑制でき、よって良好なウイグル特性を確保することができる。
【0056】
ここで、スリーブ4のスリット4cを、重力方向と逆の上方に位置させることが望ましい。これは、プラグフェルール10の横荷重は、通常、光ファイバコードの自重による引っ張り力であることが多くことから、下方に荷重が作用する場合、下方側に凸部5bが存在することが望ましいからである。
【0057】
さらに、図2に示すように、スリーブケース5aの内面に、スリーブ4のスリット4cと係合する凸状の係合部5cを設けることが好ましく、これによってスリーブ4が変形しようとしても、スリーブ4の回転変位を抑制することができる。
【0058】
なお、ここではスリーブケース5aの内周上に1個の凸部5bを設けた例を示したが、2個または3個以上の凸部を設けることも可能である。また、ここではスリーブの長手方向に沿って1箇所の凸部5bを設けた例を示したが、2箇所または3箇所以上の凸部を設けることも可能である。
【0059】
図3(a)〜図3(c)は、本発明の他の実施形態を示す中央断面図である。まず図3(a)は、ホルダ5とスリーブケース5aとが一体化した場合を示し、スリーブ4は、ホルダ5とファイバスタブ1との間で固定される。この場合、部品点数を少なくすることができ、コストダウンに寄与できる。
【0060】
図3(b)は、図3(a)と比べて、ホルダ5とスリーブケース5aとが一体化し、ホルダ5とは別部材である把持リング6を用いて、ファイバスタブ1とともにスリーブ4を固定している。
【0061】
図3(c)は、ホルダ5がスリーブケース5aとは別部材であり、かつ把持リング6も別部材となっている場合を示し、この場合、組み立てが容易になるという長所を有する。
【0062】
なお、ここで、スリーブケース5a及び把持リング6は、ホルダ5と安定して接続させるためのものであり、耐摩耗性、溶接性を配慮する必要がないため、ステンレス、銅、鉄、ニッケル、プラスチック、ジルコニア、アルミナなどの幅広い材料が用いられるが、主にはホルダ5と熱膨張係数を一致させて、信頼性を高めるため、ホルダ5と同様、ステンレスを用いることが好ましい。
【0063】
図3(a)〜図3(c)に示すいずれの実施形態においても、本発明と同一の効果を奏することが出来る。
【0064】
なお、図1に示す本発明の光レセプタクル7を用いて光モジュールを構成する場合は、図4に示すように光レセプタクル7のファイバスタブ1を備えた後端側に、光素子11とレンズ12を備えたケース13を溶接等により接合する。この場合、光素子11としてLD等の発光素子を使用した場合、光素子11からの光信号をファイバスタブ2に供給することができる。また、光素子11としてフォトダイオード等の受光素子を使用した場合、ファイバスタブ2からの光を受けて電気信号に変換することができる。
【実施例】
【0065】
本発明の図4に示す光レセプタクル7を用いた光モジュールと、比較例として図5に示す光レセプタクル14を用いた光モジュール、図6および図7に示す光モジュールを各10個試作した。
【0066】
本発明および比較例ともに、ジルコニアセラミックス製のフェルールにシングルモード光ファイバを接着固定した、外径φ2.500mmのファイバスタブを使用し、ホルダに対して光素子とレンズを収納したケースをYAG溶接して光モジュールを完成した。
【0067】
また、本発明および比較例ともに、ジルコニアセラミックスで形成した、内径φ2.493mm、厚み0.45mm、スリット幅0.5mmの割りスリーブを使用した。
【0068】
そして、各光モジュールにプラグフェルールを挿入した状態で、プラグフェルールの後部(光学端面から50mmの位置)に、光ファイバコードの自重として下向きに3N(ニュートン)、5Nの荷重をそれぞれ印加して、プラグフェルールとファイバスタブとの間の接続損失の変動値を確認した。
【0069】
その平均値の結果を(表1)に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
(表1)より、図5での従来例の光モジュールの接続損失の変動値は3Nと5Nで0.49dB、0.83dBとなり、図6、図7での従来例の光モジュールの接続損失の変動値は3Nと5Nで0.17dB、0.35dBと変動が大きかったのに対して、本発明では、3Nと5Nで0.03dB、0.05dBとかなり変動値を小さな値に抑えることができた。
【0072】
これにより、安定した保持状態を保つことが可能となり、プラグフェルール10とファイバスタブ2との相互の光ファイバ接続部にすべりが生じることなく、光ファイバ3の端面を痛めず、光信号の導入導出に於ける信頼性を向上させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、スリーブの変位を抑制して、高い信頼性で安定した光伝送を実現できる光レセプタクルおよび光モジュールを実現することができ、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1(a)は本発明の一実施形態を示す中央断面図であり、図1(b)は図1(a)中のX−X線に沿った断面図である。
【図2】プラグフェルール10の挿入前後で、スリーブ4の変形の様子を示す断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示す中央断面図である。
【図4】本発明に係る光モジュールを示す中央断面図である。
【図5】従来の光モジュールの一例を示す中央断面図である。
【図6】従来の光レセプタクルの一例を示す中央断面図である。
【図7】従来の光モジュールの他の例を示す中央断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1:ファイバスタブ
1a:先端部
1b:後端部
2:フェルール
3:光ファイバ
4:スリーブ
4a,4b:端部
4c:スリット
4d:スリット対向部
5:ホルダ
5a:スリーブケース
5b:凸部
5c:係合部
6:把持リング
7:光レセプタクル
10:プラグフェルール
11:光素子
12:レンズ
13:ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から挿入されるプラグと当接して、光学的接続を行うためのスタブと、
プラグ挿入空間を確保するように前記スタブが挿入され、前記プラグと前記スタブの間の調芯を得るためのスリーブと、
プラグ挿入用の開口を有し、スリーブを収容するための収容部材と、を備え、
前記収容部材の内面には、スリーブの変位を制限するための凸部が設けられることを特徴とする光レセプタクル。
【請求項2】
前記凸部は、前記スタブの光学端面を基準としてプラグ挿入用の開口寄りに設けられる、請求項1に記載の光レセプタクル。
【請求項3】
前記凸部は、前記スリーブのプラグ側端部に対して接触または近接して設けられる、請求項2に記載の光レセプタクル。
【請求項4】
前記スリーブは、長手方向に延びるスリットを有する割りスリーブであり、
前記スリーブの軸心に関してスリットの反対側に位置するスリット対向部に対して、前記凸部が接触または近接している、請求項1〜3のいずれか一つに記載の光レセプタクル。
【請求項5】
前記収容部材の内面には、前記スリーブの前記スリットと係合する係合部が設けられる、請求項4に記載の光レセプタクル。
【請求項6】
前記凸部とスリーブとの間の間隙は、0〜100μmの範囲である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の光レセプタクル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の光レセプタクルと、
前記スタブへ光を供給し、または前記スタブから光を受けるための光素子と、
を備えることを特徴とする光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−308907(P2006−308907A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132152(P2005−132152)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】