説明

光半導体素子及びその製造方法

【課題】 Ruドーピング半絶縁半導体層を用いた埋め込み型光半導体素子の実用化のため、水素の大量に存在する成長環境下においても、より絶縁性の高いRuドーピング半絶縁半導体層を再現よく、容易に形成する。
【解決手段】 Ruドーピング半絶縁半導体層の成長時に、化合物半導体の原料ガス、キャリアガスとは別に、ハロゲン原子を含有するガスを水素と同時に添加することで、Ruと水素との結合を抑制することで実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ruをドープした半絶縁半導体層で化合物半導体層を埋め込んだ構造を備えた光半導体素子、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネット人口の爆発的増大により、情報伝送の急速な高速化および大容量化が求められており、今後も光通信が重要な役割を果たすと考えられている。光通信に用いられる光源には、主として半導体レーザ素子が用いられている。従って、光半導体素子は今後特に高い特性を求められる。伝送距離10km程度までの短距離用途向けの光通信用半導体レーザは、半導体レーザを直接電気信号で駆動する直接変調方式が用いられている。この直接変調方式は、単純な構成でモジュールを実現できるため消費電力が少なく、部品点数も少なくできるため低コスト化が可能である。一方、伝送距離10kmを超えるような長距離の光通信向けには、半導体レーザを直接変調することのみでは対応できないため、光変調器を集積した電界吸収(EA: Electro-absorption)型変調器集積型半導体レーザが用いられている。さらに、80kmを超える距離においては、チャーピングの小さいマッハツェンダー(MZ: Mach Zehnder)型変調器が用いられている。
【0003】
このような半導体レーザの基本構造には、大きく分けてリッジ導波路(RWG:Ridge wave-guide)構造と埋め込みヘテロ(BH:Buried-hetero)構造の2種類がある。
【0004】
図1に、端面発光型半導体レーザの断面図を示す。図1(a)に示すRWG型は、n-InP基板101上に、活性層102、上部クラッド層103、p+-InGaAsコンタクト層104が積層された構造をしており、上部クラッド層103は幅数μmのメサストライプが構成されるようにエッチングでメサストライプの隣接領域が掘り込まれている。ただ、この掘り込みは、活性層102に近い領域まで上部クラッド層がエッチングされるが、活性層102が露出しない深さでエッチングが停止される。
【0005】
一方、図1(b)に示すBH型は、下部クラッド層と基板105の上に、活性層107及び半絶縁性半導体層106、p+-InGaAsコンタクト層108、上部クラッド層109が積層された構造をしており、上部クラッド層109のみならず、活性層107、下部クラッド層と基板105までエッチングにより除去してメサストライプを構成し、このメサストライプの両脇の溝を、半絶縁性半導体層106で埋め込む。このBH構造は、絶縁性の高い半導体層により、電流を効率良く活性層のみに注入することができるため、原理的にはRWG型よりも低いしきい値電流でレーザ動作させることができる。
【0006】
従来のBH型半導体レーザの半絶縁半導体層106は、Feが半絶縁性ドーパントとしてドープされたInPで構成され、この半絶縁半導体層106は、品質の良い埋め込み再成長が可能な有機金属気相成長(MOVPE: Metal-orgnic vapor phase epitaxy)法が主に成長方法として用いられてきた。
【0007】
しかし、半絶縁半導体層106にドープするFeは,通常p型のドーパントとして用いられるZnと相互拡散する性質を有するため、n型基板を用いた場合、p型の上部クラッド層109から半絶縁半導体層106へZnが拡散して絶縁性が損なわれたり、逆に埋め込み層からp型クラッド層へFeが拡散して、導電性が低下する問題があった。
【0008】
従来は、Fe-Znの相互拡散を抑制するため、Feのドーピング濃度を極力低下させて対処していたが、電流のブロック効果が不十分であった。そのため、活性層107に注入されないリーク電流成分の発生により、これまでBH型半導体レーザでは期待する効果が十分に得られていなかった。
【0009】
そこで、本発明者らは、Feに代わる代替ドーパントとしてRuを導入することを検討した。
【0010】
Ruをドーパントとして用いた半絶縁半導体層に関しては、非特許文献1乃至3及び特許文献1に開示がある。
【0011】
まず、Dadgar等は、第8回MOVPE国際会議にて、Feに替わる半絶縁性ドーパントとして新たにRuを提案するものであった(非特許文献1)。
【0012】
また、Kondo等は、Ru埋め込み構造の光変調器を報告している(非特許文献2)。
【0013】
また、Iga等は、p-InP基板上のInGaAsPレーザにおいて、Ruをドーピングした半絶縁半導体層の埋め込み半導体レーザを提案している(非特許文献3)。
【0014】
また、A. Dadgar等は、Ruをドーピングした半絶縁半導体層の形成において水素原子の存在が少ない成膜方法を用いることを示している(特許文献1)。彼らは、高抵抗なRuドーピング半導体層の製造方法として、V族元素に直接結合した3未満の水素原子を有するV族原料ガス(ターシャリーブチルフォスフィン、ジターシャリーブチルフォスフィン等)を使用することや、キャリアガスとして水素以外の不活性ガスを使用することを開示している。このような水素原子が少ない環境下で作製したRuドーピング半絶縁半導体層は、Ruに誘導される深い準位の不純物濃度を高めることができ、その絶縁特性を改善できるとしている。
【0015】
また、非特許文献4に、HVPE(Hydride vapor-phase epitaxy)法によるRuをドーピングした半絶縁半導体層の作製が記載されている。HVPE法であるので、ハロゲンガスの一種であるHClが炉内に添加されている。このHClガスはIII族塩化物であるInClを発生させるために用いられるもので、HVPE法では必須のガスであり、本願の中では、本発明と区別する意味で、HPVE法におけるハロゲン含有ガスは原料ガスとして扱う。なお、HVPE法では反応炉全体が加熱されており、MOVPE法のような基板上での加熱のみで成長が律速されない方法である。従って、形状再現性の高い半導体層が実現できなかった。
【0016】
【非特許文献1】Dadgar等、第8回MOVPE国際会議、アブストラクト PDSP.7、1996年
【非特許文献2】Kondo等、ジャーナルオブアプライドフィジックス41巻1171頁2002年
【非特許文献3】Iga等、第52回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集 1307頁 31p-ZH-10 2004年
【非特許文献4】ジャーナルオブエレクトロケミカルソサイエティ 148巻G375頁2001年
【特許文献1】WO 99/21216
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明者らは、上記文献1乃至3の記載のように、Ruをドープした半絶縁半導体層を用いた光半導体素子を検討することにした。
【0018】
まず、RuをドーピングしたInP埋め込み層を、従来の半導体レーザのFeをドーピングしたInP埋め込み層と同様の条件で試作してみた。キャリアガスには水素、V族原料ガスには、V族元素に直接結合した水素との結合数が3のフォスフィン(PH3)を用いた非常に大量の水素が存在する環境下での試作である。その試作結果は、不十分な絶縁特性しか得ることができなかった。特許文献1に記載されているように、Ruをドーピングした半絶縁半導体層の絶縁特性が、水素原子によって劣化したものと思われる。
【0019】
そこで、特許文献1のプロセスを検討した。しかし、特許文献1の手法は、素子特性の大きな改善は望めず、また、ターシャリーブチルフォスフィン、ジターシャリーブチルフォスフィンの使用は装置の安全運用の点で課題があり、H2ガス以外のキャリアガスの使用は、その純度や成長中のガス流制御等の点で課題があることがわかった。
【0020】
また、特許文献4の方法も検討したが、は、上述の理由で、形状再現性の高い半絶縁半導体層が実現できなかった。また、高い量産性及び十分な絶縁特性を確保できなかった。
【0021】
本発明の目的は、安全かつ、容易にRuをドーピングした半絶縁半導体層を埋め込んだ光半導体素子の絶縁特性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決する為に、我々は、III-V族化合物半導体層を、Ruをドーピングした半絶縁半導体層で埋め込む際に、特許文献4のHVPE法でなすか、他の成長法でなすか検討した。半絶縁半導体層の形状制御が容易な、有機金属気相成長(MOVPE)法に代表される、基板表面の熱分解により反応が律速される成長法(有機金属気相成長(MOVPE)法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、化学ビーム成長(CBE: Chemical Beam Epitaxy)法、有機金属分子線エピタキシー(MOMBE: Metal-organic Molecular Beam Epitaxy)等)を採用することにした。その際、該成長法には、III族原料ガス、V族原料ガス、及びRuドーピング原料ガスの供給とは別に、ヨウ素以下の原子量のハロゲン原子を含有するガスを添加することにした。
【0023】
以下、上記成長法を用いた場合に、好ましい製造条件や構造を記載する。
(1)有機金属気相成長(MOVPE)法に用いるキャリアガスに水素を含ませる。
(2)半絶縁半導体層は、(AlxGa1-x)yIn1-yAszP1-z(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦z≦1)に対して、Ruがドーピングされた層とする。
(3)(2)の場合、前記V族原料ガスとして、フォスフィン(PH3)、或いは、アルシン(AsH3)、或いは、その両方を用いる。
(4)ハロゲン原子を含有するガスとして、塩化水素、塩化メチル、四塩化炭素、臭化水素、臭化メチル、四臭化炭素、三塩化臭化炭素又はターシャルブチルクロライドを用いる。
(5)半絶縁半導体層を成長する際の基板温度を540℃以上580℃以下とする。
(6) 半絶縁半導体層を成長する際のV族原料ガスとIII族原料ガスの供給量比を1:1以上100:1以下とする。
(7)Ru原料ガスとして、化学式1の有機金属原料の少なくとも1種類を用いる。
【0024】
【化1】

【0025】
(ここでA、及びBは、シクロへプタン、シクロへプテン、シクロヘプタジエン、へプタン、へプテン、ヘプタジエン、ヘプタジイン、シクロヘキサン、シクロへキセン、シクロヘキサジエン、ヘキサン、ヘキセン、ヘキサジエン、ヘキサジイン、フェニル、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、ペンタン、ペンテン、ペンタジエン、ペンタジイン、ブタン、ブテン、ブタジエン、ブチン、プロパン、プロペン、プロピン、エタン、エテンの各残基、又はメタン残基の中から選ばれ、C1、C2、D1、D2がH、CO-RX、CN-RX、N=RX、CnH2n+1、又はCnH2n-1(n=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)の中から選ばれる)
(8)半絶縁半導体層を形成する前、後、又は前後に、前述の半絶縁半導体層とは異なる材料組成の層を成長させることで、漏れ電流の抑制や格子整合を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、安全かつ、容易に、Ruドープ半絶縁半導体層を埋め込んだ光半導体素子の絶縁特性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
まず、本発明の概要及びその原理について説明する。
【0028】
課題を解決するための手段の欄でも説明したように、我々は、III-V族化合物半導体層を、Ruをドーピングした半絶縁半導体層で埋め込む際に、HVPE法でなすか、他の気相成長法でなすか検討した。半絶縁半導体層の形状制御が容易な、有機金属気相成長(MOVPE)法に代表される、基板表面の熱分解により反応が律速される気相成長法を採用することにした。その際、III族原料ガス、V族原料ガス、及びRuドーピング原料ガスの供給とは別に、ヨウ素以下の原子量のハロゲン原子を含有するガスを添加することにより、ハロゲンがHVPE法のような原料ガスとして機能するのではなく、脱水素化剤や水素結合防止膜として機能することにより、絶縁特性が向上した。
【0029】
この原理を、ヨウ素以下の原子量のハロゲン原子を含有するガスとして、塩化メチル(CH3Cl)を用いて、RuをドープしたInP半絶縁半導体層を形成する場合を例にして、以下、具体的に説明する。
【0030】
図3に、本発明の原理説明図を示す。SUBは基板、五角形は化合物、円は原子を示している。図3(a)に示すように、成長炉内に供給されたRuを含む有機金属原料と塩化メチルとが基板上に到達すると、熱分解により、Ru原子、Cl原子、とその他水素や炭化水素基に分解する。成長雰囲気中にハロゲン原子が存在しない従来の手法では、分解したRu原子の無結合手は雰囲気中にキャリアガスとして大量に存在する水素原子と容易に結合して膜中に取り込まれるため、Ru原子が水素と結合し、その影響を受けやすくなる。 一方、本発明の手法では、成長雰囲気中にハロゲン原子(Cl原子)が存在するようにしている。Cl原子は、図3(b)のようにRu原子と一時的な結合を形成する。その後、Cl原子自体は水素原子と結合してHClとして離脱する一方で、結合の切れたRu原子はIII族原子、或いはV族原子と結合して膜中に取り込まれていく。このようにして、水素との結合を抑制し、その影響を受けないRu原子の割合を高めることができる。さらに、Ru原子と水素原子とが結合を形成してしまった場合においても、Cl原子はHClとなって脱離することで、Ru原子から水素原子を除去する効果がある。その結果、図3(c)のように、水素と結合せず、その影響を受けないRu原子の割合を増大させることができ、その結果、Ruがドーピングされた半導体層の絶縁特性を高めることができる。このように作用するガスは、塩化メチル以外のClを含むガスや、Cl以外のハロゲン原子(フッ素、臭素、ヨウ素)を含むガスを供給することによっても同様に得られる。
【0031】
また、上記原理確認の試作結果から、上記反応は、Ru-P結合の過剰な発生を抑制できる下記の成長条件下で最も効果が得られることが判った。
【0032】
通常のMOVPE 成長におけるV族原料ガスとIII族原料ガスとの供給量比は、数百であるが、そのような供給量比では、Pリッチな環境となるので、Ru-P結合が過剰に発生してしまう。従って、V族原料ガスとIII族原料ガスとの供給量比(V族原料ガス/III族原料ガス)は1〜100の範囲内とすることが最も好ましい。
【0033】
また、III-V族化合物半導体層へのRuの拡散による抵抗値の上昇を抑えることや、Ruに誘導される深い準位の不純物濃度を高めるためには、基板温度580℃以下でのRuドープInP層形成が重要である。
【0034】
また、本発明手法を用いてメサストライプを埋め込む際に、(111)系の面が良好に形成されるようにすると再現性の高い安定特性の光半導体素子が実現できる。基板温度540℃以上にすると(111)系の面が制御性良く形成できるので、この温度条件も重要である。
【0035】
また、本発明を適用した際のRuドーピングp-InP膜中の水素濃度は、1x1018cm-3以下としている。
【0036】
また、ハロゲン原子による水素除去の効果を高めるためには、図3で説明したように、ハロゲン原料とRu原料が基板上でのみ熱分解する効率を高めることが重要である。そのため、Ru原料としては、安定性が高く、ガス中で分解しにくい原料を用いることが有効である。我々が鋭意検討した結果、Ru原料ガスとして、少なくとも1種類の下記の形態の有機金属原料が適していることを見出した。そのようなRu原料ガスの形態は、化学式1で表される。
【0037】
【化1】

【0038】
(ここでA、及びBは、シクロへプタン、シクロへプテン、シクロヘプタジエン、へプタン、へプテン、ヘプタジエン、ヘプタジイン、シクロヘキサン、シクロへキセン、シクロヘキサジエン、ヘキサン、ヘキセン、ヘキサジエン、ヘキサジイン、フェニル、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、ペンタン、ペンテン、ペンタジエン、ペンタジイン、ブタン、ブテン、ブタジエン、ブチン、プロパン、プロペン、プロピン、エタン、エテンの各残基、又はメタン残基の中から選ばれ、C1、C2、D1、D2がH、CO-RX、CN-RX、N=RX、CnH2n+1、又はCnH2n-1(n=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)の中から選ばれる。)
このような形態の原料で、特に、ビスエチルシクロペンタジエニルルテニウムは液体で扱えるので好ましい原料である。例えば本原料はRu原子が2本の結合手を持ち、シクロペンタン基と結合している。Ru原子の結合主は2本であるが、それぞれがシクロペンタン基に属するC原子全てと等価に結合しているため、その結合力は高い。そのため原料の安定性が高く、ガス中では分解しにくいため、基板上の熱でのみ分解する効率を高めることができる。
【0039】
図4に、ハロゲンガスの添加の有無で比較したRuをドーピングした半絶縁半導体層のI-V特性比較図を示す。Ru layer_Aは成長中にClガスを添加したRuドーピングInP単層膜の電圧(V)−電流特性(I)の測定結果を示し、Ru layer_Bは成長中にClガスを添加しないRuドーピングInP単層膜の電圧(V)−電流特性(I)の測定結果を示している。Ru有機金属原料としては、既に記載した形態の原料の一種であるビスエチルシクロペンタジエニルルテニウムを用いた。RuドーピングInP単層膜の膜厚は1μmである。低電圧領域では、両膜共に電流値は10-11〜10-10(A)台と低く、高い抵抗率を示している。一方、引加する電圧を増大していくと、Cl無しの膜では、膜の絶縁特性が不十分なために電流値が急激に増大していく。一方、Cl有りの膜では高い電圧まで、電流値の急激な増大は見られず、良好な絶縁特性を示す。この結果は、Clを添加する本製造方法により、Ruをドーピングした半絶縁半導体層の絶縁特性が改善されることを明瞭に示している。
【0040】
図2に、一部を切り取り、断面を露出させた端面発光レーザの鳥瞰図を示す。n-InP基板202上に形成されたn-InPバッファー層203、レーザ部多重量子井戸(MQW: Multiple-quantum-well)206、上部p-InPクラッド層207、p+-InGaAsコンタクト層208からなるメサ構造を、本発明の手法によるRuがドーピングされた半絶縁半導体層であるRuドーピングInP層204にて埋め込む。本発明では、[011]方向にメサストライプを形成した場合には、マスク脇に(111)系の面が現れた後に、(100)系の面からなるテラスが数μmにわたって形成される図のような特徴的な形状となる。
【0041】
図5に、本発明を適用した場合と適用しなかった場合の半導体レーザ素子のI-L特性比較図を示す。Clガス有り無しの成長条件でRuがドーピングされたInPで埋め込みを行った半導体レーザと、FeがドーピングされたInPで埋め込みを行った半導体レーザとを、85℃で連続駆動させた場合の比較した図を示す。図中、RuBH_AはClガス添加有りのRuがドーピングされたInPで埋め込みを行った半導体レーザの特性、RuBH_BはCl添加の無いRuがドーピングされたInPで埋め込みを行った半導体レーザの特性、FeBHはFeがドーピングされたInPで埋め込みを行った半導体レーザの特性を示している。Cl添加の無いRuがドーピングされたInPで埋め込みを行ったレーザの場合、180mA付近で光出力が飽和した。これは、FeがドーピングされたInPで埋め込まれた半導体レーザと同程度の特性であった。一方、Clガスを添加して成長したRuがドーピングされたInPで埋め込まれた半導体レーザの場合、250mAまで光出力は飽和せず、他に比べて良好な特性を示した。この結果は、Clを添加してRuがドーピングされたInPが埋め込まれた半絶縁半導体層を形成することによって絶縁特性が改善し、駆動時に高電圧領域におけるリーク電流成分の増大を抑制できたことによるものである。このように、n-InP基板上レーザにおいて、FeがドーピングされたInPで埋め込まれた半導体レーザに対してRuがドーピングされたInPで埋め込まれた半導体レーザは顕著な絶縁特性の向上が実現できる。
【0042】
なお、FeがドーピングされたInPで埋め込まれた半導体レーザにおいて、FeがドーピングされたInPを、ハロゲンガスを用いてMOVPE法で気相成長させるプロセスも知られているが、このハロゲンガスは埋め込み形状の改善の目的で用いられているものであり、このハロゲンガスが絶縁特性向上に寄与している報告もない。従って、本発明のように、Ruがドーピングされた半絶縁半導体層において、水素原子の影響を抑制し、絶縁特性を改善するための製造方法として用いることは、従来知られておらず、本発明はFeがドーピングされたp-InP埋め込みレーザと比べて、異質で顕著な効果を奏するものであるといえる。
【0043】
本発明の手法は、レーザに代表される発光半導体素子のみならず、受光半導体素子の埋め込み層にも適用可能である。また、電子デバイス等にも応用することができることは言うまでも無い。
【0044】
以下、本発明のさらに詳細な実施例を図2、図6、図7、図8を用いて説明する。尚、以下の例では、現在、主として用いられているInP基板上の光半導体素子のみを述べたが、GaAs基板その他を用いたIII-V族化合物半導体素子にも適用可能であることはいうまでも無い。また、以下の例では、RuをドーピングしたInP膜を埋め込み層に用いた場合のみ記載したが、このようにV族にP原子を有する半導体層のみならず、V族にAsを有する半導体層やPとAsの両方を有する半導体層に対しても適用可能であることはいうまでも無い。その場合のAsの原料ガスとしては、PH3と同様に、AsH3等が使用可能である。また、III族原子としても、Inのみならず、Al, Gaなどの原子を含む膜においても適用可能であることはいうまでも無い。つまり、Ruがドーピングされる半絶縁半導体層となる化合物半導体として好適なものを記載するならば、(AlxGa1-x)yIn1-yAszP1-z(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦z≦1)である。
【実施例1】
【0045】
第1の実施例は、本発明を端面発光型レーザに適用したものである。成長方法としては、MOVPE法を用いた。キャリアガスとしては水素を用いた。III族元素の原料は、トリエチルガリウム(TEG)、トリメチルインジウム(TMI)を用いた。V族元素の原料には、アルシン(AsH3)とフォスフィン(PH3)を用いた。また、n型ドーパントとしてはジシラン(Si2H6)
を、p型ドーパントとしてはジメチル亜鉛(DMZ)を用いた。添加するハロゲン原子含有ガスとしては、塩化メチル(CH3Cl)、Ruの有機金属原料としては、ビスエチルシクロペンタジエニルルテニウムを用いた。尚、成長法としては、MOVPEのみに限定されるものではなく、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、化学ビーム成長(CBE: Chemical Beam Epitaxy)法、有機金属分子線エピタキシー(MOMBE: Metal-organic Molecular Beam Epitaxy)法など主として、基板上の熱分解により成長が律速される手法ならば、本発明の効果を得ることは可能である。
【0046】
図2に、一部を切り取り、断面を露出させた、本発明を適用した端面発光レーザの鳥瞰図を示す。n-InP基板202上に、n-InPバッファー層203を形成し、その後、InGaAsPから成るレーザ部MQW層206、及び回折格子層209を成長する。通常は、保護のために上部にp-InPキャップ層を形成しておくことが殆どである。通常のプロセスにて回折格子を形成した後、上部p-InPクラッド層207により、回折格子209を埋め込み、連続的にp+-InGaAsコンタクト層208を形成する。このような多層構造にメサストライプマスクを形成し、エッチングによりメサ構造以外の部分を除去したのち、適切な前処理を行い、本発明の手法によって、ハロゲンガスを用いて、RuがドーピングされたInP層204の埋めこみ成長を行う。その際、塩化メチルを同時に添加した。本手法により、キャリアガスとして水素を用い、V族原料ガスとしてPH3を用いているが、高い絶縁性を有するRuがドーピングされたInP層204を形成することができた。その後は、通常の素子作製方法を用いてパッシベーション膜210形成、上部電極205、下部電極201形成等を施し、素子として完成した。
【0047】
このようにして作製した素子のしきい値電流は85℃において15mAであり、20mWを超える高い光出力特性を示した。また、変調特性も良好であった。さらに長時間動作でも素子特性は劣化せず高い素子信頼性を示した。また、素子の作製歩留まりも高かった。
【実施例2】
【0048】
第2の実施例は、本発明を変調器集積化光源に適用したものである。図6に、本発明を適用した変調器集積型半導体レーザの説明図を示す。なお、層構造を把握しやすいように、一部を切り取り、断面を露出させた状態にしてあるが、本来はそのような切り欠きはない。本素子内には、変調器部EAR、導波路部WGR、レーザ部LDRのそれぞれが形成されている。成長方法としては、実施例1と同様にMOVPE法を用いた。III族元素の原料ガスは、実施例1の原料ガスに加え、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMA)を用いた。添加するハロゲン原子含有ガスとしては、塩化水素(HCl)、Ruの有機金属原料としては、ビスメチルシクロペンタジエニルルテニウムを用いた。
【0049】
最初に、n-InP基板602上に、n-InPバッファー層603を形成し、続いてInGaAlAs系からなる変調器部MQW層604を成長する。通常は、保護のために上部にp-InPキャップ層を形成しておくことが殆どである。次にウエハの所望の場所にマスクパターンを形成し、これをエッチングマスクとして、p-InPキャップ層と変調器部MQW層604を除去する。次に、ウエハを成長炉内に導入し、InGaAlAs系からなるレーザ部のMQW層606と回折格子層607、及びp-InPキャップ層をバットジョイント(BJ: Butt-joint)再成長する。次に、先のマスクを除去した後、変調器部MQW604とレーザ部MQW606の所望の場所に再度BJマスクを形成し、エッチングによりMQWとp-InPキャップ層を除去する。さらに、InGaAsPからなる導波路層605、及びp-InPキャップ層をBJ再成長する。ここでは、変調器部、レーザ部の2箇所同時にBJ接続した。ウエハを成長炉から取り出した後マスクを除去し、レーザ部MQW層606上に回折格子607を形成する。その後、ウエハを炉体内に導入し、ウエハ前面にp-InPクラッド層610とp+-InGaAsコンタクト層を成長して、結晶成長工程を終了する。このような多層構造にメサストライプマスクを形成し、エッチングによりメサ構造以外の部分を除去した後、適切な前処理を行い、本発明の手法によるRuドーピングInP層608にて埋めこみ成長を行う。その際、HClガスを同時に添加した。本発明手法では、キャリアガスとして水素を用い、V族原料ガスとしてPH3を用いているが、高い絶縁性を有するRuをドーピングした半絶縁半導体層を形成することができた。尚、出射光の反射による戻り光を防ぐため、変調器部側の光の出射端は、RuドーピングInP層608により埋め込まれており、所謂窓構造となっている。導波路部上部のp+-InGaAsコンタクト層を除去し、変調器部のp+-InGaAsコンタクト層612とレーザ部のp-InGaAsコンタクト層611を素子分離した後、通常の素子作製方法を用いてパッシベーション膜613形成、変調器部の上部電極614、レーザ部の上部電極609、及び下部電極601形成等を施し、素子として完成した。
【0050】
このようにして作製した素子のしきい値電流は85℃で15mA、-5℃から85℃の範囲で冷却器無しで10GHzの良好な変調特性を示し、また、長時間動作でも素子特性は劣化せず高い素子信頼性を示した。また、素子の作製歩留まりも高かった。尚、レーザや変調器のMQWとして、InGaAlAs系材料のみでなく、InGaAsP系の材料や、それにSbやNを添加した材料を用いることもできる。
【実施例3】
【0051】
第3の実施例は、本発明を裏面出射型レーザに適用したものである。図7に、本発明を適用した水平共振型表面発光レーザの説明図を示す。なお、層構造を把握しやすいように、一部を切り取り、断面を露出させた状態にしてあるが、本来はそのような切り欠きはない。素子構造は、プレーナBH構造と呼ばれるものである。成長方法としては、ここでもMOVPE法を用いたが、それに限定されるものでは無く、同一の効果が得られれば他の手法でも良い。用いた原料は、実施例1〜2と同様であるが、添加するハロゲン原子含有ガスとしては、四塩化炭素(CCl4)、Ruの有機金属原料としては、ビスジメチルペンタジエニルルテニウムを用いた。本Ru原料は、本発明にて最も効果が得られる形態の有機金属原料ではないが、ハロゲン原子含有ガスを添加しているため、その効果を得ることができた。
【0052】
本実施例では、p-InP基板702を用いた。その後、p-InPバッファー層703、InGaAlAs系からなるレーザ部MQW層708、及び回折格子層709を形成する。このとき、表面保護の為、n-InPキャップ層を形成しておく場合が殆どである。通常のプロセスにて回折格子709を形成した後、薄いn-InPクラッド層705、及びInGaAsPキャップ層で埋め込む。このような多層構造にメサストライプマスクを形成し、エッチングによりメサ構造以外の部分を除去した後、適切な前処理を行い、本発明の手法によるRuドーピングInP層704にて埋めこみ成長を行った。その際、CCl4を同時に添加した。本発明手法では、キャリアガスとして水素を用い、V族原料ガスとしてPH3を用いているが、高い絶縁性を有するRuをドーピングした半絶縁半導体層を形成することができた。連続して、上部n-InPクラッド層からの電流リーク防止のため、p-InP層712を成長した。このように、埋め込み層としてRuドーピングInP層のみならず、RuドーピングInP層を形成する後(前又は前後も本発明の範疇である。)に材料組成の異なる層を設けることで、複数層の埋め込みを行う場合も、本発明の手法は有効である。
【0053】
次に、マスクを除去したのち、適切な前処理を行いInGaAsPキャップ層を除去した後、上部n-InPクラッド層705、n-InGaAsPコンタクト層706を連続的に形成した。その際、Ru埋めこみ成長にて形成された結晶面による凹凸を平坦化するような条件にて再成長を行った。その後、表面に135度の角度を有する反射鏡710、裏面に出射光を収束させるための裏面レンズ711を形成し、上部電極707、下部電極701を形成して素子として完成した。
【0054】
このようにして作製した素子は、素子抵抗が3オームと低く、85℃においても、10mAの低しきい値電流で発振した。また、冷却器無しで10GHzの良好な変調特性を示し、また、長時間動作でも素子特性は劣化せず高い素子信頼性を示した。また、素子の作製歩留まりも高かった。
【実施例4】
【0055】
第4の実施例は、本発明を2x2型のInP系MQW型MZ変調器に応用した例である。図8に、本発明を適用したMZ変調器の鳥瞰図を示す。本素子内には、入力した光の分離部MMI_DIV、MZ変調器部MZ_EAR、出力光の合波部MMI_MPのそれぞれが形成されている。成長方法としては、ここでもMOVPE法を用いたが、それに限定されるものでは無く、同一の効果が得られれば他の手法でも良い。用いた原料は、実施例1〜3と同様であるが、添加するハロゲン原子含有ガスとしては、ターシャルブチルクロライド(TBCl)、Ruの有機金属原料としては、先に記述した最も効果が得られる形態のビスシクロペンタジエニルルテニウムを用いた。
【0056】
最初に、n-InP基板802上に、n-InPバッファー層803、InGaAsPから成るMQW層804、p-InPクラッド層805、p+-InGaAsコンタクト層を連続的に成長する。絶縁膜を形成した後、素子形状をパターンニングし、これをエッチングマスクとして、不要な部分を除去した。続いて適切な前処理を行った後、本発明の手法によるRuドーピングInP層806にて埋めこみ成長を行った。その際、TBClを同時に添加した。本発明手法では、キャリアガスとして水素を用い、V族原料ガスとしてPH3を用いているが、高い絶縁性を有するRuをドーピングした半絶縁半導体層を形成することができた。その後、不要部分のコンタクト層を除去し、上部電極807、下部電極801を形成して素子として完成した。
【0057】
このようにして作製した素子は、Cバンド全域において、10GHzを超える高い変調特性を示した。また、駆動電圧は3V以下であった。長時間動作でも素子特性は劣化せず高い素子信頼性を示した。また、素子の作製歩留まりも高かった。
【0058】
これらの実施例のように、MOVPE法によるRuをドーピングした半絶縁半導体層埋め込み型光半導体素子作製の際、ハロゲン原子を含むガスを同時に添加した成長を行うと、ハロゲン原子の効果により、水素が大量に存在する成長環境下においても、Ruをドーピングした半絶縁半導体層の絶縁特性を高めることができ、高性能なRuをドーピングした半絶縁半導体層を埋め込んだ光半導体素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】端面発光型半導体レーザの断面図である。
【図2】一部を切り取り、断面を露出させた、本発明を適用した端面発光レーザの鳥瞰図である。
【図3】本発明の原理説明図である。
【図4】ハロゲンガスの添加の有無で比較したRuをドーピングした半絶縁半導体層のI-V特性比較図である。
【図5】本発明を適用した場合と適用しなかった場合の半導体レーザ素子のI-L特性比較図である。
【図6】本発明を適用した変調器集積型半導体レーザの説明図である。
【図7】本発明を適用した水平共振型表面発光レーザの説明図である。
【図8】本発明を適用したMZ変調器の鳥瞰図である。
【符号の説明】
【0060】
101・・・n-InP基板、
102・・・活性層、
103・・・上部クラッド層、
104・・・p+-InGaAsコンタクト層、
105・・・下部クラッド層と基板、
106・・・半絶縁半導体層、
107・・・活性層、
108・・・p+-InGaAsコンタクト層、
109・・・上部クラッド層、
201・・・下部電極、
202・・・n-InP基板、
203・・・n-InPバッファー層、
204・・・RuドーピングInP層、
205・・・上部電極、
206・・・レーザ部MQW層、
207・・・上部p-InPクラッド層、
208・・・p+-InGaAsコンタクト層、
209・・・回折格子、
210・・・パッシベーション膜、
601・・・下部電極、
602・・・n-InP基板、
603・・・n-InPバッファー層、
604・・・変調器部MQW層、
605・・・導波路層、
606・・・レーザ部のMQW層、
607・・・回折格子、
608・・・RuドーピングInP層、
609・・・レーザ部の上部電極、
610・・・p-InPクラッド層、
611・・・レーザ部のp+-InGaAsコンタクト層、
612・・・変調器部のp+-InGaAsコンタクト層、
613・・・パッシベーション膜、
614・・・変調器部の上部電極、
701・・・下部電極、
702・・・p-InP基板、
703・・・p-InPバッファー層、
704・・・RuドーピングInP層、
705・・・上部n-InPクラッド層、
706・・・n-InGaAsPコンタクト層、
707・・・上部電極、
708・・・レーザ部MQW層、
709・・・回折格子、
710・・・135度反射鏡、
711・・・裏面レンズ、
712・・・p-InP層、
801・・・下部電極、
802・・・n-InP基板、
803・・・n-InPバッファー層、
804・・・MQW層、
805・・・p-InPクラッド層、
806・・・RuドーピングInP層、
807・・・上部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたIII-V族化合物半導体層を、Ruがドーピングされた半絶縁半導体層を用いて埋め込む光半導体素子の製造方法であって、
前記III-V族化合物半導体層を形成する工程と、
前記III-V族化合物半導体層を前記Ruがドーピングされた半絶縁半導体層を埋め込む工程を備え、
前記半絶縁半導体層の成長において、III族原料ガス、V族原料ガス、及びRu原料ガスの供給とは別に、ヨウ素以下の原子量のハロゲン原子を含有するガスを供給することを特徴とする光半導体素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記半絶縁半導体層の成長手法は、有機金属気相成長(MOVPE)法、分子線エピタキシー(MBE)法、化学ビーム成長(CBE: Chemical Beam Epitaxy)法、有機金属分子線エピタキシー(MOMBE: Metal-organic Molecular Beam Epitaxy)法のいずれかであることを特徴とする光半導体素子の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記有機金属気相成長(MOVPE)法に用いるキャリアガスが水素を含むことを特徴とする光半導体素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記半絶縁半導体層は、(AlxGa1-x)yIn1-yAszP1-z(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦z≦1)に対して、Ruがドーピングされた層であることを特徴とする光半導体素子の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記V族原料ガスとして、フォスフィン(PH3)、或いは、アルシン(AsH3)、或いは、その両方を用いることを特徴とする光半導体素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1において、
前記ハロゲン原子を含有するガスとして、塩化水素、塩化メチル、四塩化炭素、臭化水素、臭化メチル、四臭化炭素、三塩化臭化炭素又はターシャルブチルクロライドを用いることを特徴とする光半導体素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1において、
前記半絶縁半導体層を成長する際の前記基板の温度が540℃以上580℃以下であることを特徴とする光半導体素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1において、
前記半絶縁半導体層を成長する際の前記V族原料ガスとIII族原料ガスの供給量比を1:1以上100:1以下とすることを特徴とする光半導体素子の製造方法。
【請求項9】
請求項1において、
前記Ru原料ガスとして、化学式1の有機金属原料の少なくとも1種類を用いることを特徴とする光半導体素子の製造方法。
【化1】

(ここでA、及びBは、シクロへプタン、シクロへプテン、シクロヘプタジエン、へプタン、へプテン、ヘプタジエン、ヘプタジイン、シクロヘキサン、シクロへキセン、シクロヘキサジエン、ヘキサン、ヘキセン、ヘキサジエン、ヘキサジイン、フェニル、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、ペンタン、ペンテン、ペンタジエン、ペンタジイン、ブタン、ブテン、ブタジエン、ブチン、プロパン、プロペン、プロピン、エタン、エテンの各残基、又はメタン残基の中から選ばれ、C1、C2、D1、D2がH、CO-RX、CN-RX、N=RX、CnH2n+1、又はCnH2n-1(n=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)の中から選ばれる)
【請求項10】
請求項1において、
前記半絶縁半導体層を形成する前又は後又は前後に、前記半絶縁半導体層とは異なる材料組成の層を成長させることを特徴とする光半導体素子の製造方法。
【請求項11】
基板と、
前記基板上に形成されたIII-V族化合物半導体層と、
前記III-V族化合物半導体層を埋め込むRuがドーピングされた半絶縁半導体層と、を備えた光半導体素子において、
前記半絶縁半導体膜における水素濃度が1x1018cm-3以下であることを特徴とする光半導体素子。
【請求項12】
基板と、
前記基板上に、メサストライプ形状に形成されたIII-V族化合物半導体層と、
前記III-V族化合物半導体層を埋め込むRuがドーピングされた半絶縁半導体層と、を備えた光半導体素子において、
前記半絶縁半導体層は、前記メサストライプ両側に隣接した(111)系の面と、前記(111)系の面に隣接して(100)系の面を備えていることを特徴とする光半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−27936(P2010−27936A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189279(P2008−189279)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】