説明

光学式走査装置及び欠陥検出装置

【課題】 欠陥の存在だけでなく試料表面の凹凸形状をに検出できる光分解能の光学式走査装置を実現する。
【解決手段】 光源1から試料4に向かう光ビームと試料から光検出器6に向かう反射ビームとを分離するビームスプリッタ2と、試料と光スポットとを相対的に移動させる手段とを具え、試料表面を光スポットにより走査し、試料表面からの反射光により試料の表面領域の情報を検出する光学式走査装置において、ビームスプリッタと光検出器との間の光路中に遮光板を配置し、試料表面における光スポットの走査方向と対応する方向の片側半分の光路を遮光する。遮光板を光路中に配置することにより、試料表面に欠陥の要因となる微小な傾斜面存在する場合、反射の法則により光スポットからの反射光は光軸から変位するので、遮光板により遮光される光量が変化する。この結果、光検出器からの出力信号により凸状欠陥及び凹状欠陥を判別することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光学式走査装置及びこのような光学式走査装置を用いた欠陥検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】LSIの微細化に伴い、半導体ウェハ、パターン付きウェハ、マスクブランクス、フォトマスク等の表面に存在する微細な欠陥を正確に検出できる欠陥検出装置の開発が強く要請されている。特に、半導体素子の制御プロセスが行われる前の半導体ウェハに欠陥が存在すると製造の歩留りが大幅に低下するため、50nm程度の微細な欠陥を正確に検出できる欠陥検出装置の開発が要請されている。
【0003】微細な欠陥を光学的に検出するためには高い分解能を有する光学系を用いる必要がある。高分解能を達成できる光学系として、共焦点光学系が知られている。図1は従来の共焦点光学系の原理を説明するための線図である。点光源又はレーザ光源1から発生した光ビームは、ビームスプリッタとして機能するハーフミラー2を経て対物レンズ3に入射する。対物レンズ3は入射した光ビームを微小スポット状に集束し、対物レンズの焦点位置に配置した試料4上に投射する。試料表面からの反射ビームは、ハーフミラー2で反射し、ピンホール5aを有する空間フィルタ5を介して光検出器6に入射する。この共焦点光学系において、対物レンズ3の焦点位置に配置された試料表面で反射した光はピンホール5aを通過することができるが、焦点位置からずれた試料表面からの反射光はピンホールを通過することができず、光検出器の出力信号強度は低下する。従って、光検出器からの出力信号強度から試料表面の凹凸情報が検出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の共焦点光学系は試料表面の高さ情報を検出できるものの、試料表面が対物レンズの焦点位置よりも高いれレベルに位置する及び低いレベルに位置する場合共に光検出器に入射する光ビームの光量低下として検出されるに止まり、凸状であるか又は凹状であるかを判定することができなかった。従って、欠陥検出装置に搭載した場合、欠陥の存在を検出するにとどまり、欠陥の形状や性質を検出することができなかった。この場合、欠陥を検出した位置において対物レンズ又は試料を光軸方向に掃引することにより試料の凹凸を検出することができるが、リアルタイムで凹凸判定することは不可能である。また、検出できる分解能も高々数100nm程度であり、50nm程度の微細欠陥を検出する要請に適合しないものである。
【0005】さらに、高さ方向の分解能を改善するため、2光束干渉光学系を組み込む方法が考えられるが、空気の揺らぎや振動の影響を受けやすいため、光学系の調整も容易ではない。また、ノマルスキープリズムを用いたシアリング干渉光学系を導入する方法もあるが、シアリング量が小さいことから横方向のサイズが大きくなり、試料表面が緩やかに傾斜している場合その観察が困難になってしまう。さらに、ノマルスキープリズムは価格が高価であるため、光学系のコストが高価になる欠点もある。
【0006】従って、本発明の目的は、上述した欠点を除去し、欠陥の存在だけでなく試料表面の凹凸形状を正確に検出できる光学式走査装置を実現することにある。
【0007】さらに、本発明の別の目的は、50nm程度又はそれ以下の微細な欠陥を正確に検出できる欠陥検出装置を提供することにある。
【0008】さらに、本発明の別の目的は、検出した欠陥情報に基づき、試料についてその後行うべ適切なき処理プロセスを決定できる欠陥検出装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決する手段】本発明による光学式走査装置は、試料を支持する試料ステージと、光ビームを発生する光源と、前記光ビームを集束して試料表面に光スポットを形成する対物レンズと、試料表面からの反射光を受光する光検出器と、前記光源と対物レンズとの間の光路中に配置され、光源から試料に向かう光ビームと試料から光検出器に向かう反射ビームとを分離するビームスプリッタと、前記試料と光スポットとを相対的に移動させる手段とを具え、試料表面を光スポットにより走査し、試料表面からの反射光により試料の表面領域の情報を検出する光学式走査装置において、前記ビームスプリッタと光検出器との間の光路中に遮光板を配置し、この遮光板により、試料表面における光スポットの走査方向と対応する方向の片側半分の光路を遮光することを特徴とする。
【0010】半導体ウェハやマスクブランクス等の試料においては、多くの欠陥は凸状又は凹状の傾斜面を有している。そして、試料表面が傾斜している場合、光スポットからの反射光は、反射の法則により光軸から離れる方向に変位する。よって、結像光学系の光路中に、試料表面における光スポットの走査方向と対応する方向の片側半分の光路を遮光する遮光板を配置することにより、傾斜面が凹状か又は凸状かに応じて光検出器の受光素子に入射する光量が大幅に変化する。この光量変化により欠陥の検出感度の分解能を大幅に高めることができる。さらに、凸状の欠陥の場合受光素子からの出力信号には正のピークと負のピークとが交互に発生し、凹状欠陥の場合負のピークと正のピークとが交互に現れる。従って、受光素子からの出力信号に基づき欠陥の形状を判別することができる。
【0011】本発明による光学式走査装置の工程実施例は、試料を支持する試料ステージと、放射ビームを発生する光源と、m及びnを2以上の自然数とした場合に、前記放射ビームをm行n列のマトリックス状に配列された光ビームのビームアレイに変換する2次元回折格子と、前記ビームアレイを第1の走査方向に偏向するビーム偏向装置と、前記ビームアレイの光ビームをスポット状に集束して試料上にm×n個の光スポットのアレイを形成する対物レンズと、前記光源と対物レンズとの間の光路中に配置され、光源から試料に向かう光ビームと試料から光検出器に向かう反射ビームとを分離するビームスプリッタと、m’及びn’を2以上の自然数とした場合にm’行n’列のマトリックス状に配列した受光素子を有し、各受光素子が前記試料上に形成された光スポットからの反射光をそれぞれ受光する光検出器と、前記ビームスプリッタと光検出器との間の光路中の瞳位置に配置され、試料表面における光スポットの走査方向と対応する方向の片側半分の光路を遮光する遮光板とを具え、前記試料表面からの反射ビームを前記ビーム偏向装置を介して光検出器の受光素子に入射させ、前記試料上に形成される光スポットアレイを、これら光スポットを前記第1の方向と直交する方向に投影した場合互いに隣接する光スポット間の間隔が等間隔となるように形成することを特徴とする。この実施例では、m×n個の光スポットアレイにより試料表面を走査するので、極めて高速で試料表面を走査できると共に一層分解能の高い光学式走査装置を実現することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】図2は本発明による光学式走査装置の原理を説明するための線図である。図1で用いた部材と同一の部材には同一符号を付して説明する。試料4の表面には凸状の欠陥が存在し、図2(a)は上方に向けて高くなる傾斜面を光スポットが走査する状態を示し、図2(b)は徐々に低くなる傾斜面を走査する状態を示す。図2(a)及び(b)において、光スポットは矢印方向に沿って試料表面を走査するものとし、実線は対物レンズの焦点面に位置する平坦な試料表面からの仮想した反射光を示し、破線は欠陥の傾斜面からの反射光を示す。本発明では、ビームスプリッタ2と光検出器6との間の光路中に遮光板7を配置し、この遮光板7により試料4から光検出器6に向かう光路の光スポットが試料表面を走査する走査方向の前側又は後側の片側の光路を遮光する(図2においては、光路の前側を遮光している)。
【0013】光スポットが徐々に高くなる凸状の傾斜面を走査する場合、図2(a)に示すように、試料表面で反射した反射ビームは、反射の法則により、試料表面が対物レンズの焦点面に位置する平坦な基準面を走査する場合に比べて走査方向の後側に変位する。一方、光スポットが徐々に低くなる凹状の傾斜面を走査する場合、図2R>2(b)に示すように、試料表面で反射した反射ビームは、反射の法則により基準面を走査する場合に比べて走査方向の前側に変位する。従って、本発明に基づき、遮光板7が光路の走査方向の前側半分を遮光する場合、凸状の傾斜面を走査する場合、基準面を走査する場合に比べて遮光板7により遮光される反射ビームの光量が減少し、一層多くの反射光が光検出器6に入射することなる。一方、光スポットが徐々に低くなる凹状の傾斜面を走査する場合、基準面を走査する場合に比べて遮光板7により遮光される反射ビームの光量が増加し、一層少量の反射光が光検出器6に入射することなる。
【0014】図3は、光スポットが試料表面に凸状欠陥が存在する部分を走査した際の光検出器の出力信号と凹状欠陥が存在する部分を走査した際の光検出器の出力信号を示す。曲線aは凸状欠陥を走査した際の出力信号強度を示し、曲線bは凹状欠陥を走査した際の出力信号強度を示し、曲線cは遮光板7が存在しない場合に光スポットが凸状欠陥又は凹状欠陥を走査した際の出力信号強度を示す。光スポットが試料表面の凸状欠陥が存在する部分を走査すると、初めに凸状のピークが発生し時間的に連続して凹状のピークが発生する。一方、光スポットが凹状の欠陥が存在する部分を走査すると、初めに凹状のピークが発生し時間的に連続して凸状のピークが発生する。尚、遮光板を用いない場合、曲線cに示すように、単に緩やかに変化する凹状のピークが発生するだけである。従って、光検出器の出力信号から欠陥の形状を判定することができ、凸状のピークと凹状のピークとが交互に発生する場合凸状欠陥が存在するものと判定することができ、凹状のピークと凸状のピークとが交互に発生する場合凹状欠陥が存在するものと判定することができる。尚、遮光板の配置位置を逆にした場合、すなわち光路の走査方向の後側に配置した場合、凸状のピークと凹状のピークとの発生順序が反対になるだけであり、凸状欠陥が存在する場合初めに凹状のピークが発生し、その後凸状のピークが発生する。
【0015】図4は本発明による光学式走査装置の一例の構成を示す線図である。レーザ光源10から発生したレーザビームは1次元回折格子11に入射する。回折格子11は、入射したレーザビームをn本のサブビームに変換する。これらサブビームは紙面内で整列しているものとする。回折格子11から出射したn本のサブビームは第1及び第2のリレーレンズ12及び13を通過し、ビームスプリッタ14を経て対物レンズ15に入射する。対物レンズは入射したn本の光ビームを微小スポット状に集束して検査すべき試料上にn個の光スポットを形成する。試料16を支持する試料ステージ17はxy駆動機構を有するxyステージとする。試料ステージ17が紙面と直交する方向に移動することにより、試料表面はn個の光スポットにより走査されることになる。
【0016】試料16上に形成された光スポットからの反射ビームは、再び対物レンズ15を経てビームスプリッタ14で反射し、リレーレンズ18を経て光検出器19に入射する。光検出器19は、ライン状に配列された複数の受光素子を有するリニァイメージセンサとする。そして、試料上の各光スポットからの反射ビームは対応する受光素子にそれぞれ入射する。リニァイメージセンサの各受光素子は、遮光部材により互いに分離され、遮光部材又はその枠が受光素子に入射する光を規制するピンホールとしての機能を果たす。従って、リニァイメージセンサ自体がピンホールを有する空間フィルタを有している。本例では、リレーレンズ18と光検出器19との間の光路中に遮光板20を配置する。尚、図面の都合上、遮光板20は、光路の走査方向と直交する方向の片側半分を遮光するように表示したが、実際は走査方向(紙面と直交する方向)の前側又は後側の片側半分を遮光するものとする。
【0017】図5は本発明による欠陥検出装置の一例の構成を示す線図である。レーザ光源30から発生したレーザビームを回折格子31に入射させ、第1の方向に整列した複数本の光ビームに変換する。尚、図面を明瞭にするため、回折光は紙面内に回折されているものとする。これら光ビームは第1及び第2のリレーレンズ32及び33を経て偏光ビームスプリッタ34に入射し、この偏光ビームスプリッタ34を透過してカルバノミラー35に入射する。ガルバノミラー35は、入射した光ビームを第1の方向と直交する第2の方向(紙面と直交する走査方向)に所定の周波数で周期的に偏向する。ガルバノミラーで反射した複数の光ビームは第3及び第4のリレーレンズ36及び37並びに1/4波長板38を経て対物レンズ39に入射する。この対物レンズは入射した複数の光ビームを微小スポット状に集束して欠陥検査すべき試料40に投射する。従って、試料40上には複数の微小な光スポットが第1の方向と対応する方向に沿ってライン状に形成される。これら光スポットは、光スポット列の方向と直交する第2の方向に偏向されるので、試料40は複数の光ビームにより走査され、従って試料40は複数の光ビームにより2次元的に走査される。
【0018】試料40はxy駆動機構を有するステージ41上に配置する。ステージ41は所定の速度でガルバノミラーの偏向方向と直交する方向(第1の方向)に移動する。従って、試料は複数の光スポットにより2次元的に走査されることになる。試料上の各光スポットからの反射光は対物レンズ39により集光され、1/4波長板38、リレーレンズ37及び36を経てガルバノミラー35に入射する。そして、ガルバノミラーによりデスキャンされ、偏光ビームスプリッタ34に入射する。入射した反射ビームは1/4波長板38を2回透過しているので、その偏光面は90°回転している。この結果、試料からの反射ビームは偏光ビームスプリッタの偏光面で反射し、光源からの照明ビームから分離される。偏光ビームスプリッタを出射した反射ビームはリレーレンズ42を経てリニァイメージセンサ43に入射する。リニァイメージセンサ43は、試料上の光スポットと対応する方向に沿ってライン状に配置した複数の受光素子を有する。
【0019】試料とリニァイメージセンサとの間の光学系は結像光学系を構成し、偏光ビームスプリッタ34と光検出器43との間の光路中に遮光板44を配置する。図面上、遮光板44はガルバノミラーの走査方向と直交する方向の光路を遮光するように図示したが、実際には第2の方向であるガルバノミラーの走査方向の光路の片側半分の光路を遮光するように配置する。尚、リニァイメージセンサの各受光素子を分離する遮光部材又は枠は受光素子に入射する光ビームを規制するピンホールを有する空間フィルタとして機能する。
【0020】試料40上の各光スポットからの反射ビームはガルバノミラー35によりデスキャンされているので、試料上の各光スポットからの反射ビームはリニァイメージセンサ43の対応する各受光素子にそれぞれ入射し、静止した状態に維持される。光検出器の各受光素子からの出力信号は増幅器45により増幅して欠陥検出回路46に供給する。
【0021】図6は欠陥検出回路の一例の構成を示す回路図である。本例では、光検出器43の各受光素子からの出力信号を負の限界値と比較する第1の比較器50と正の限界値と比較する第2の比較器51とを具え、これら第1及び第2の比較器の出力をオア回路53に接続する。前述したように、受光素子から正のピークと負のピークとが交互に発生した場合凸状の欠陥と判定し、負のピークと正のピークとが交互に発生した場合凸状の欠陥と判定する。尚、負のピークだけが発生した場合、急峻な傾斜面の欠陥と判定する。また、正のピークだけが発生した場合、反射率の高い物質が局部的に付着した欠陥と判定することができる。従って、本発明を利用することにより、欠陥の存在だけでなく、欠陥の形状や性状も判別することができ、検査後の処理プロセスを的確に決定することができる。
【0022】尚、光検出器の各受光素子に蓄積された電荷を所定の読出周波数で読み出すことにより、映像信号を発生させることができるので、図5の光学系を顕微鏡として用いることもできる。
【0023】図7は本発明による光学式走査装置の変形例を示す線図である。光源61から放出された放射ビームは全反射ミラー62により反射し、回折格子63に入射する。この回折格子は、入射した放射ビームをm行n列(m及びnは2以上の自然数)のマトリックス状に配列された2次元ビームアレイに変換する。これらm×n本の光ビームは行及び列方向に等間隔で離間する光ビームから成る2次元ビームアレイを形成する。m×n本の光ビームはフーリェ変換レンズ64を経て偏光ビームスプリッタ65に入射する。ビームアレイは偏光ビームスプリッタ65を透過してガルバノミラー66に入射する。このガルバノミラー66は、m×n本の光ビームを第1の方向(主走査方向)に所定の周波数で偏向する。ガルバノミラーで反射した光ビームは、リレーレンズ67及び1/4波長板68を経て対物レンズ69に入射する。対物レンズ69は、m行n列の光ビームアレイを微小スポット状に集束して試料70上にm行n列の光スポットアレイを形成する。
【0024】図8は試料70上に形成される光スポットアレイとガルバノミラーのビーム偏向方向(第1の方向)、すなわち主走査方向との関係を示す線図である。図8において、白丸は光スポットを示し、黒丸は光スポットの主走査方向直交する方向の軸線Lに対する投影を示す。図面を明瞭にするため、4行4列の光スポットアレイを示す。各行方向の光スポット間の間隔をp1とし、列方向の光スポットの間隔をp2とする。m行n列の光スポットアレイにより、試料表面を隙間なく且つ光スポットが重なることなく走査するには、主走査方向と直交する方向の軸線に対する光スポットの投影が等間隔となるように光スポットを形成する必要がある。以下、この条件について説明する。光スポットアレイの行方向の軸線Lc と主走査方向軸線Lとのなす角度をθとする。行方向の光スポット間の間隔p1の軸線Lに対する投影長はp1×cos θとなる。この投影長内に列方向のn個の光スポットの投影が存在する必要がある。この条件は、p1×cos θ=p2×sinθで表すことができる。従って、以下の式、tan θ=(1/n)×(p1/p2)
を満たす場合、m行n列の光スポットアレイの各光スポットの主走査方向と直交する方向に対する投影が等間隔で形成される。尚、行及び列方向の光スポット間の間隔が等しい(p1=p2)場合、以下の式を満たすように光スポットアレイを形成する。
tan θ=1/n
【0025】光ビームアレイはガルバノミラーにより主走査方向に走査されるため、試料表面はm行n列のマトリックス状に配置された光スポットアレイにより走査されることになる。試料70を支持するステージ71はxyステージとし、第1の方向である主走査方向と直交する方向に所定の速度で移動する。このように構成することにより、試料表面はm×n個の光スポットにより2次元的に走査される。
【0026】試料表面で反射した光スポットからの反射光は、再び対物レンズ69、1/4波長板68及びリレーレンズ67を経てガルバノミラー66に入射しデスキャンされ、ビームスプリッタ65に入射する。この反射ビームは1/4波長板を2回通過しているので偏光面が90°回転し、ビームスプリッタの偏光面で反射する。ビームスプリッタで反射した反射ビームは、リレーレンズ72、全反射ミラー72、並びにリレーレンズ73及び74を経て光検出器75に入射する。
【0027】図9は光検出器の一例の構成を示す線図で有る。光検出器75は行及び列方向に等間隔で形成された2次元マトリックス状の受光素子アレイを76(i,j)有し、各受光素子は試料上に形成された各光スポットからの正反射光をそれぞれ受光する。各受光素子はフォトダイオードで構成され、遮光部材77により互いに分離する。各受光素子の光入射領域は、試料表面に形成される光スポットの正反射光だけが入射するように遮光部材76により規制する。従って、本例の光学系は共焦点光学系を構成し、一層高い分解能を得ることができる。
【0028】ビームスプリッタ65と光検出器75との間の結像光学系の瞳位置に遮光板80を配置する。この遮光板は、試料上における主走査方向と対応する方向の片側の光路を遮光する。このように、瞳位置に1つの遮光板を配置することにより、m×n個の反射ビームの片側を遮光することができる。
【0029】本発明は上述した実施例だけに限定されず種々の変更や変形が可能である。例えば、上述した実施例では、半導体ウェハやフォトマスクブランクス等の試料表面に存在する欠陥を検出する装置を例に説明したが、本発明による光学式走査装置は、レーザ顕微鏡のように光ビームにより試料表面を走査して試料画像を撮像する撮像装置にも適用することができ、試料から光検出器に向かう結像光学系の光路中に遮光板を配置することにより解像度の一層高い撮像装置を実現することができる。例えば、図5に示す装置の光検出器から所定の読出周波数で各受光素子の電荷を読み出すことにより容易に映像信号を形成することができる。
【0030】また、欠陥検出回路として種々の欠陥検出回路を用いることができ、例えば、隣接する受光素子の出力信号を比較し、その比較結果から欠陥の発生を検出することも可能である。
【0031】さらに、上述した実施例では、試料表面をラスタ走査する例について説明したが、試料と光ビームアレイとを相対的に移動させる手段として、試料を支持する試料ステージに連結され、ステージを回転させる回転駆動装置及び回転軸線と直交する方向に並進移動させる並進駆動装置とを具えるステージ駆動装置を用いことができる。この場合、試料ステージを回転及び並進移動させることにより、試料はm×n個の光スポットアレイによりスパイラルスキャンされるので、試料を一層高速で走査できると共に高い分解能で試料表面を走査することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 共焦点光学系の原理を説明するための線図である。
【図2】 本発明による光学式走査装置の原理を説明するための線図である。
【図3】 光スポットが欠陥部分を走査する際の反射ビームの光路を示す図である。
【図4】 本発明による光学式走査装置の一例の構成を示す線図である。
【図5】 本発明による欠陥検出装置の一例の構成を示す線図である。
【図6】 欠陥検出回路の一例の構成を示す図である。
【図7】 本発明による光学式走査装置の変形例を示す線図である。
【図8】 試料上に形成される光スポットアレイと主走査方向との関係を示す図である。
【図9】 光検出器の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
1 光源
2 ビームスプリッタ
3 対物レンズ
4 試料
5 空間フィルタ
6 光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 試料を支持する試料ステージと、光ビームを発生する光源と、前記光ビームを集束して試料表面に光スポットを形成する対物レンズと、試料表面からの反射光を受光する光検出器と、前記光源と対物レンズとの間の光路中に配置され、光源から試料に向かう光ビームと試料から光検出器に向かう反射ビームとを分離するビームスプリッタと、前記試料と光スポットとを相対的に移動させる手段とを具え、試料表面を光スポットにより走査し、試料表面からの反射光により試料の表面領域の情報を検出する光学式走査装置において、前記ビームスプリッタと光検出器との間の光路中に遮光板を配置し、この遮光板により、試料表面における光スポットの走査方向と対応する方向の片側半分の光路を遮光することを特徴とする光学式走査装置。
【請求項2】 前記光スポットと試料とを相対的に移動させる手段を、光スポットに対して試料ステージを移動させる手段としたことを特徴とする請求項1に記載の光学式走査装置。
【請求項3】 前記光スポットと試料とを相対的に移動させる手段を、前記ビームスプリッタと試料ステージとの間の光路中に配置したビーム偏向装置としたことを特徴とする請求項1に記載の光学式走査装置。
【請求項4】 前記光源とビームスプリッタとの間の光路中に、光源から発生した光ビームをライン状に配列されたm本(mは2以上の自然数)のサブビームの1次元ビームアレイに変換する1次元回折格子を配置し、試料上に形成したm個の光スポットにより試料表面を走査することを特徴とする請求項1に記載の光学式走査装置。
【請求項5】 前記光源とビームスプリッタとの間の光路中に、m及びnを2以上の自然数とした場合に、光源から発生した放射ビームをm行n列のマトリックス状に配列されたサブビームの2次元ビームアレイに変換する2次元回折格子を配置し、m×n個の2次元光スポットアレイにより試料表面を走査し、前記遮光板を前記ビームスプリッタと光検出器との間の光学系の瞳の位置に配置したことを特徴とする請求項1に記載の光学式走査装置。
【請求項6】 前記試料と2次元光スポットアレイとを相対的に移動させる手段として、前記試料ステージを回転回転させる回転駆動装置及び試料ステージをその回転軸線と直交する軸線に沿って移動させる並進駆動装置を用い、2次元光スポットアレイにより試料をスパイラルスキャンすることを特徴とする請求項3に記載の光学式走査装置。
【請求項7】 欠陥検出すべき試料を支持する試料ステージと、光ビームを発生する光源と、前記光ビームを集束して試料表面に光スポットを形成する対物レンズと、前記試料と光スポットとを相対的に移動させる手段と、試料表面からの反射光を受光する光検出器と、前記光源と対物レンズとの間の光路中に配置され、光源から試料に向かう光ビームと試料から光検出器に向かう反射ビームとを分離するビームスプリッタと、前記光検出器からの出力信号から試料表面に存在する欠陥を検出する欠陥検出回路とを具える欠陥検出装置において、前記ビームスプリッタと光検出器との間の光路中に配置され、試料表面における光スポットの走査方向と対応する方向の片側半分の光路を遮光する遮光板を有し、前記欠陥検出回路が、前記光検出器からの出力信号が凹状のピークと凸状のピークとが時間的に連続して交互に発生したことを検出した場合、凸状又は凹状の欠陥が存在すると判定することを特徴とする欠陥検出装置。
【請求項8】 前記光源とビームスプリッタとの間の光路中に、光源から発生した光ビームをライン状に配列されたm本(mは2以上の自然数)のサブビームの1次元ビームアレイに変換する1次元回折格子を配置し、試料上に形成したm個の光スポットにより試料表面を走査することを特徴とする請求項7に記載の欠陥検出装置。
【請求項9】 前記光源とビームスプリッタとの間の光路中に、m及びnを2以上の自然数とした場合に、光源から発生した放射ビームをm行n列のマトリックス状に配列されたサブビームの2次元ビームアレイに変換する2次元回折格子を配置し、m×n個の光スポットの光スポットアレイにより試料表面を走査することを特徴とする請求項7に記載の欠陥検出装置。
【請求項10】 試料を支持する試料ステージと、放射ビームを発生する光源と、m及びnを2以上の自然数とした場合に、前記放射ビームをm行n列のマトリックス状に配列された光ビームのビームアレイに変換する2次元回折格子と、前記ビームアレイを第1の走査方向に偏向するビーム偏向装置と、前記ビームアレイの光ビームをスポット状に集束して試料上にm×n個の光スポットのアレイを形成する対物レンズと、前記光源と対物レンズとの間の光路中に配置され、光源から試料に向かう光ビームと試料から光検出器に向かう反射ビームとを分離するビームスプリッタと、m’及びn’を2以上の自然数とした場合にm’行n’列のマトリックス状に配列した受光素子を有し、各受光素子が前記試料上に形成された光スポットからの反射光をそれぞれ受光する光検出器と、前記ビームスプリッタと光検出器との間の光路中の瞳位置に配置され、試料表面における光スポットの走査方向と対応する方向の片側半分の光路を遮光する遮光板とを具え、前記試料表面からの反射ビームを前記ビーム偏向装置を介して光検出器の受光素子に入射させ、前記試料上に形成される光スポットアレイを、これら光スポットを前記第1の方向と直交する方向に投影した場合互いに隣接する光スポット間の間隔が等間隔となるように形成することを特徴とする光学式走査装置。
【請求項11】 前記試料上に形成されるm行n列の光スポットアレイの行方向の軸線と前記第1の方向と直交する方向の軸線とのなす角度をθとし、光スポットアレイの行方向のスポット間隔をp1とし、列方向のスポット間隔をp2とした場合に、式tanθ=(1/n)×(p1/p2)
を満たすように角度θを設定することを特徴とする請求項9に記載の光学式走査装置。
【請求項12】 前記光スポットアレイの行方向及び列方向の光スポット間の間隔p1及びp2を、p1=p2となるように設定し、式tanθ=1/nを満たすように光スポットアレイを形成することを特徴とする請求項9に記載の光学式走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2003−4654(P2003−4654A)
【公開日】平成15年1月8日(2003.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−187665(P2001−187665)
【出願日】平成13年6月21日(2001.6.21)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】