説明

光学素子およびその製造方法

【課題】サイズが小さくなっても、受光部などの光学領域への集光を向上させることが可能な光学素子を提供する。
【解決手段】光学領域(フォトダイオードである受光部102)を有する半導体基板101と、半導体基板101の上に配置された透明絶縁膜111を有し、透明絶縁膜111は、光学領域直上の第1の領域(遮光膜110によって挟まれる領域)と、第1の領域の上の第2の領域を有し、透明絶縁膜111は、第2の領域と同じ高さにあり、平面視において第2の領域の外側に位置する第3の領域(遮光膜110の上の領域)を有し、第1の領域が有する空孔115の空孔径は第3の領域が有する空孔115の空孔径よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子およびその光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子としては、発光素子、ミラーデバイス又は受光素子などが知られている。そして、受光素子としては、固体撮像素子が有名であり、固体撮像素子としては、CCD(Charge Coupled Device;電荷結合素子)イメージセンサ(以下、単にCCDという)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどがある。これは、デジタルカメラをはじめとして、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話装置、スキャナ装置、デジタル複写機、ファクシミリ装置など、様々な用途に利用されている。
【0003】
従来、固体撮像素子は、光電変換部と、電荷転送部によって構成され、電荷転送部上には、タングステン(W)等の遮光膜が設けられることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、画素サイズの縮小化に伴って、固体撮像素子の基本性能の一つである受光感度が低下するため、固体撮像素子の集光効率を高めて受光感度を向上させることが重要である。集光効率を向上させる方法として、カラーフィルターの上部に有機高分子材料によりマイクロレンズを形成することが知られている。また、マイクロレンズの下方に層内レンズを形成することも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、受光部の上の領域で、かつ、遮光層の側面に低屈折率膜/高屈折率膜からなるサイドウオールを形成する技術も知られている。サイドウオール中の低屈折率膜と高屈折率膜の界面において、光の全反射特性を得ることができる。そのため、斜め上方から開口部に入射した光を、受光部に効率的に導くことが可能となる。つまり、受光部上の開口部(遮光層に挟まれた領域)を光導波路として機能させることができ、光センサの感度を向上することができる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−316448号公報
【特許文献2】特開2000−164837号公報
【特許文献3】特開2008−28101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された固体撮像素子においては、光導波路が形成されていないため、斜め上方から開口部に入射した光を、受光部に効率的に導くことが難しい。
また、特許文献3に開示された固体撮像素子においては、光導波路は形成されているものの、遮光層の側壁に、低屈折率膜/高屈折率膜からなる導光用の膜を形成している。そのため、微細化の進展に伴い、遮光層間(光導波路部に相当)への膜の埋め込みが難しくなる。その結果、遮光膜間の領域付近にてボイドが発生してしまい、感度が低下してしまう。
【0007】
本発明は、上記の考察に基づいてなされたものであり、サイズが微細になっても、光の通り道への埋め込みが容易であり、スペック向上が可能な光学素子を提供することを目的とする。
より具体的には、画素サイズが微細になっても、光導波路への埋め込みが容易であり、集光効率を向上することができる固体撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここで、本発明に係る光学素子は、光学領域を有する半導体基板と、半導体基板の上に配置された透明絶縁膜を有し、透明絶縁膜は、光学領域直上の第1の領域と第1の領域の上の第2の領域とを有し、さらに、第2の領域と同じ高さにあり、平面視において第2の領域の外側に位置する第3の領域を有し、第1の領域が有する空孔の空孔径は第3の領域が有する空孔の空孔径よりも小さいことを特徴とする。
【0009】
また、透明絶縁膜における第1の領域において、下部から上部に向かうにつれて空孔径が大きくなる領域を有することが好ましい。
また、第1の領域は第2の領域よりも空孔径が小さいことが好ましい。
また、第2の領域の空孔径は第3の空孔径よりも小さいことが好ましい。
また、本発明に係る光学素子は、光学領域を有する半導体基板と、半導体基板の上に配置された透明絶縁膜とを有し、透明絶縁膜は、光学領域直上の領域において、屈折率の異なる単一層からなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る光学素子の製造方法は、半導体基板に光学領域を形成する工程(a)と、半導体基板の上に透明絶縁膜を形成する工程(b)とを有し、透明絶縁膜は、光学領域直上の第1の領域と、第1の領域の上の第2の領域とを有し、さらに、第2の領域と同じ高さにあり、平面視において第2の領域の外側に位置する第3の領域を有し、第1の領域が有する空孔の空孔径は第3の領域が有する空孔の空孔径よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、光学素子のサイズが小さくなっても、透明絶縁膜に対して斜め方向から入射した光を受光部などの光学領域に集光しやすいという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像素子の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像素子における、膜厚方向の空孔径分布の概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法の一部工程における断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法の一部工程における断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法の一部工程における断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法の一部工程における断面図である。
【図7】タイミングチャートを示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法の一部工程における断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法の一部工程における断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法の一部工程における断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法の一部工程における断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法の変形例の一部工程における断面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法の変形例の一部工程における断面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法の変形例の一部工程における断面図である。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法の変形例の一部工程における断面図である。
【図17】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る光学素子及びその製造方法について図面を参照して説明する。
なお、本発明の実施形態に係る光学素子として、半導体基板に行列状に複数形成されたフォトダイオードからなる受光部と、各受光部から読み出された信号電荷を列方向に転送する垂直転送部と、垂直転送部から転送された信号電荷を行方向に転送する水平転送部とを備えた1.3×1.3μm以細のCCD型の固体撮像素子を例に説明する。
【0014】
しかし、CCD型の固体撮像素子に限られず、CMOSイメージセンサ、発光素子など、受光部などの光学領域を有する光学素子であれば、本発明を適用することが可能である。また、実施形態中で説明する材料や、数値は好ましい範囲を示しているに過ぎず、これらに限定されることはない。
(第1の実施形態)
(固体撮像素子の説明)
図1は、第1の実施形態に係る固体撮像素子の要部断面図である。
【0015】
図1に示すように、シリコン基板などの半導体基板101に、フォトダイオードである受光部(光学領域)102が形成されている。受光部102の一側面には、読み出し部103を介して、読み出した信号電荷を転送する垂直転送部104aが形成されている。また、受光部102の他側面には、隣接する他の受光部(不図示)から読み出した信号電荷を転送する垂直転送部104bが形成されており、受光部102と垂直転送部104bとの間には、チャネルストップ部105が形成されている。
【0016】
半導体基板101の表面上には、シリコン酸化膜等からなる絶縁膜106が配置されている。
また、絶縁膜106の上における、垂直転送部104a,104bの上方には垂直転送電極107が形成されている。
また、垂直転送電極107の上面及び側面を覆うように絶縁膜108、遮光膜110が形成されている。ここで、遮光膜110が垂直転送電極107の上面及び側面を覆っているため、受光部102以外の領域には入射光が直接進入しない。
【0017】
一方、開口部109によって露出している受光部102の受光領域には入射光が直接進入する。ここで、開口部109の開口径は600nm以下であることが好ましく、さらには、300nm以下であることが好ましい。開口部の開口径が狭いときに本発明は特に有効だからである。また、開口部109の深さは600nm以下であることが好ましく、開口部109のアスペクト比(開口部の深さ/高さ)は、2.0以下であることが好ましい。
【0018】
また、遮光膜110の上には、透明絶縁膜111が開口部109を埋め込むように形成されている。そして、透明絶縁膜111上にはカラーフィルター層112が形成されている。そして、カラーフィルター層112の上にはマイクロレンズ113が形成されている。ここで、マイクロレンズ113は、入射光を受光部102へ集める働きをする。
ここで、図1に示すように、透明絶縁膜111は受光部102直上の第1の領域(遮光膜110によって挟まれる領域)と第1の領域の直上に位置する第2の領域と、平面視において第2の領域の外側に位置する第3の領域(遮光膜110の上の領域)を有している。そして、透明絶縁膜111は複数の空孔を有しており、第1の領域が有する空孔の空孔径は、第2の領域及び第3の領域が有する空孔の空孔径よりも小さい。
【0019】
別の言い方をすれば、第1の領域が有する空孔の空孔率は、第2の領域及び第3の領域が有する空孔の空孔率よりも小さい。そのため、第1の領域の屈折率は第2の領域及び第3の領域の屈折率と異なる。具体的には、第1の領域の屈折率は、第2の領域及び第3の領域の屈折率よりも大きくなる。
本実施形態によると、図1における矢印Sに示すように、斜めに入射した入射光が膜中の屈折率の変化により、ほぼ垂直な入射光として受光部102へ集光される。より具体的には、第2の領域及び第3の領域に入射した光が第1の領域に集まりやすくなり、受光部102の集光率が向上する。そのため、斜め入射光が垂直転送部104a,104b及びその直下へと漏れ込むことが少なく、斜め入射光によるスミア(垂直転送部への光の漏れ)が発生しにくくなるという効果がある。
【0020】
なお、斜めに入射した入射光をほぼ垂直な入射光にして受光部102へ進入させる場合が最も効率良くスミアを低減できる。
しかし、必ずしもほぼ垂直な入射光にする必要はなく、斜めに入射した入射光の入射角度が90°に近づく特性を有していれば良い。
なお、透明絶縁膜111は単層の絶縁膜であることが好ましく、第1の領域と第2の領域との間で界面は存在しないことが好ましい。
【0021】
ここで、透明絶縁膜111の望まれる性質について図2を用いて詳細に説明する。
図2(a)、(b)に示すように、透明絶縁膜111は下面から上面にかけて空孔径は大きくなっていることが好ましい。具体的には、透明絶縁膜111を下から順に領域Rc、領域Rb、領域Raとすると、領域Rcの空孔径は領域Rbの空孔径よりも小さく、領域Rbの空孔径は領域Raの空孔径よりも小さいことが好ましい。そして、領域Ra、Rcにおいては、それぞれ空孔径は略一定であり、領域RbにおいてのみRc側からRa側に向かうにつれて空孔径が大きくなっていることが好ましい。そして、領域Rcと領域Rbとの界面は、遮光膜110の上面よりも低い位置にあることが好ましい。
【0022】
さらには、領域Rcと領域Rbとの界面は、垂直転送電極107の上面よりも低い位置にあることが好ましい。第2の領域及び第3の領域に入射した光を第1の領域に集まりやすくするためには、領域Rcと領域Rbとの界面を第1の領域の上面よりも下に位置させることが重要だからである。
ここで、半導体基板から遮光膜110上面までの長さは、受光部102の幅の2.0倍程度であることが好ましいので、半導体基板の表面から第1の領域と第2の領域の界面までの長さは、受光部の幅の2倍よりも短いことが好ましい。
【0023】
また、半導体基板から領域Rcと領域Rbの界面までの長さは、受光部の幅の2倍よりも短いことが好ましい。そして、透明絶縁膜111の第3の領域において、下部の空孔径よりも上部の空孔径の方が大きいことが好ましく、下部から上部に向かうにつれて空孔径が大きくなる領域を有することが好ましい。
また、透明絶縁膜における第3の領域を、下から順に領域A、領域Bとすると、領域Aの空孔径は、領域Bの空孔径よりも小さく、領域Aにおいてのみ、領域A側から領域B側に向かうにつれて空孔径が大きくなっていることが好ましい。
【0024】
また、透明絶縁膜における第1の領域において、下部から上部に向かうにつれて空孔径が大きくなる領域を有することが好ましい。
また、透明絶縁膜における第1の領域から第2の領域にかけて、下から順に領域C、領域D、領域Eとすると、領域Cの空孔径は、領域Dの空孔径よりも小さく、領域Dの空孔径は、領域Eの空孔径よりも小さく、領域Dにおいてのみ、領域C側から領域E側に向かうにつれて空孔径が大きくなっていることが好ましい。
【0025】
ここで、透明絶縁膜111における第1の領域の屈折率をn1とし、また、第2の領域の屈折率をn2とした場合、例えば、n1=1.45,n2=1.15であることが好ましい。
このように、透明絶縁膜の下部と上部において、屈折率が大きく異なると、開口部109の開口径が100nm未満であったとしても入射光が受光部102に導かれやすくなり、感度向上に貢献する。
【0026】
(製造方法の説明)
図3〜図7を用いて、固体撮像素子の製造方法を説明する。
まず、図3に示すように、シリコン基板などの半導体基板101の所定の位置にp型の不純物を注入し、読み出し部103とチャネルストップ部105とを所定の間隔をおいてそれぞれ形成する。
【0027】
その後、n型の不純物を注入し、読み出し部103とチャネルストップ部105との間に受光部102を形成する。その後、読み出し部103及びチャネルストップ部105の外側に垂直転送部104a、104bをそれぞれ形成する。
次に、半導体基板101の表面に熱酸化法又はCVD(Chemical Vapor Deposition)法によりシリコン酸化膜等の絶縁膜106及びポリシリコン膜100nmを順次形成し、絶縁膜106及びポリシリコン膜を公知のリソグラフィ技術及びエッチング技術によりパターニングする。そして、垂直転送部104a、104b領域上に、ポリシリコン膜からなる垂直転送電極107を形成する。
【0028】
その後、垂直転送電極107の上面及び側面に熱酸化法等によりシリコン酸化膜108を形成する。
その後、スパッタ法及びCVD(Chemical Vapor Deposition)法等により、半導体基板上に例えばアルミニウム又はタングステン等の金属膜を堆積させ、公知のリソグラフィ技術及びエッチング技術によってパターニングする。そして、垂直転送電極107を覆い、かつ、受光部102の上に開口部109を有する、アルミニウム又はタングステンなどの金属膜からなる遮光膜110を形成する。
【0029】
次に、図4に示すように、遮光膜110及び受光部102上に、例えば、CVD((Chemical Vapor Deposition))法、又はゾル・ゲル法を用いて、例えば、シリコン酸化膜を有する透明絶縁膜111を、1000nm程度の厚さで形成する。
ここで、透明絶縁膜111は、膜骨格がSiOからなり、空孔形成材料(例えば、ポロジェン)114を含有する膜である。
【0030】
次に、図5に示すように、半導体基板101を加熱することにより、透明絶縁膜111中のポロジェンを分解除去して、透明絶縁膜111中に複数の空孔115を形成する。
なお、この際、透明絶縁膜111上部付近の空孔径よりも、下部付近の空孔径のほうが小さくなるように、透明絶縁膜111を形成する。
ここで、透明絶縁膜111の好ましい形成法方法をさらに具体的に説明する。
【0031】
まず、図3に示す断面図の構成を有する半導体基板101を、真空に保持したCVD(Chemical Vapor Deposition)チャンバー内の高温ステージ上に配置する。その後、透明絶縁膜111の基本骨格を形成する材料(例えばジエトキシメチルシラン(DEMS)などの炭素含有プリカーサ)と、酸素と、空孔形成材料(例えばαテルピネンなどのポロジェン)を少なくとも含む混合ガスを、ヘリウムなどのキャリアガスとともにCVDチャンバー内に供給し、高周波電力を印加する。
【0032】
ここで、混合ガス中の各材料の流量及び高周波電力のパワーのタイミングチャートの一例を図7に示す。
図7に示すように、まず、DEMS(precursor)を0.3g/min、αテルピネン(porogen)を0.25g/min、酸素(oxidizer)を15cc/min(標準状態)の各流量で流しながら、高周波電力を1500W印加し(t1)、この状態を一定時間(t1からt2まで)維持する。
【0033】
次に、DEMSを0.2g/min、αテルピネンを0.35g/min、酸素を12cc/min(標準状態)の各流量に、高周波電力を400Wに一定時間(t2からt3まで)かけて変更し、この状態を一定時間(t3からt4まで)維持する。
以上のように、混合ガス中の各材料の流量及び高周波電力のパワーを時間的に変化させることにより、透明絶縁膜111中において、ポロジェンが連結し、径の異なるポロジェンを含有する膜とすることができる。このようにして、図4の断面図が構成される。
【0034】
次に、半導体基板101を、真空に保持したチャンバー内の高温ステージ上に配置し、波長領域200〜400nmの紫外線を照射する。これにより、透明絶縁膜111中のポロジェンが分解除去され、透明絶縁膜111の下部付近(透明絶縁膜における第1の領域の下部付近)では例えば、約1nm以下の空孔径を有し、透明絶縁膜111の上部付近(透明絶縁膜における第2の領域の上部付近)では、例えば、約1nm以上の空孔径を有するような透明絶縁膜111を形成することができる。このようにして、図5の断面図が構成される。
【0035】
以上のように混合ガス中の各材料の流量を変化させることにより、図2(a)、(b)に示すように、透明絶縁膜111を下面から上面にかけて空孔径が大きくなるように形成することができる。具体的には、透明絶縁膜111を下から順に領域Rc、領域Rb、領域Raとすると、領域Rcの空孔径は領域Rbの空孔径よりも小さく、領域Rbの空孔径は領域Raの空孔径よりも小さくなるように形成することができる。そして、領域Ra、Rcにおいては、それぞれ空孔径は一定であり、領域RbにおいてのみRc側からRa側に向かうにつれて空孔径が大きくなるように形成できる。
【0036】
次に、図6に示すように、カラーフィルター層112及びマイクロレンズ113を順次形成する。
以上の工程により、本実施形態に係る固体撮像素子を製造することができる。
本実施形態によると、遮光層の側面に、低屈折率膜/高屈折率膜からなるサイドウオールを形成する必要がなくなる。そのため、開口部109の開口径が小さくなっても透明絶縁膜111を開口部109内に埋め込むことが可能となる。より、具体的には、開口部109のアスペクト比を2.0以下に低減することができ、開口部109の開口径が300nm以下、深さ600nm以下であったとしても、開口部109内に透明絶縁膜111を埋め込むことが可能となる。
【0037】
なお、透明絶縁膜111としては、第1の領域から第2の領域にかけてまで、単層の絶縁膜である例を説明したが、積層膜であっても構わない。具体的には、開口部109の一部又は全部に空孔率が低い絶縁膜(空孔が無い絶縁膜も含む)を形成し、その上に空孔率の高い絶縁膜を形成しても構わない。そして、その際、上層に形成された空孔率の高い絶縁膜を、下側から上側に向かうにつれて空孔率が大きくなるように、上述したような方法(混合ガス中の各材料の流量及び高周波電力のパワーを時間的に変化させる方法)を使用して形成しても構わない。
【0038】
なお、このような積層構造からなる透明絶縁膜を使用する場合には、下層と上層との界面が遮光層110の上面の高さよりも低いことが好ましい。
さらには、下層と上層との界面が垂直転送電極107の上面の高さよりも低いことが好ましい。
なお、本実施形態において、透明絶縁膜111を形成する際に、プリカーサ、酸素及びポロジェンの各流量、並びに高周波電力のパワーを時間的に変化させたが、これに限らず、プリカーサ及びポロジェンの少なくとも一方の流量を時間的に変化させれば、空孔径が変化する絶縁膜透明111を形成することが可能である。
【0039】
なお、本実施形態において、透明絶縁膜111をCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成する際のタイミングチャート(図7参照)におけるt1、t2、t3、t4は集光性を向上させるよう、任意に設定してもよい。例えば、透明絶縁膜111下層は空孔径もしくは空孔率が変化するが上層は空孔径が変化しないように設定することも可能である。また、透明絶縁膜111下層は空孔径もくしは空孔率が変化するが、上層に、屈折率の高い(空孔率の低い)シリコン酸化膜などの絶縁膜が形成されていてもよい。上層に屈折率の高いシリコン酸化膜を配置することで、他のカラーフィルターを通過した光との混色を防ぐことが可能となる。
【0040】
また、本実施形態において、ポロジェンを分解除去する方法は、前述の紫外線照射に限定されるものではなく、膜中のポロジェンを分解除去できる他の方法、例えば電子線照射や熱処理等を用いてもよい。
また、本実施形態において、低誘電率層間絶縁膜である透明絶縁膜111の材料は、前述のシリコン酸化膜に限定されるものではなく、例えば炭素含有シリコン酸化膜やフッ素含有シリコン酸化膜などの他の低誘電率絶縁膜を用いてもよい。
【0041】
(第2の実施形態)
(固体撮像素子の説明)
図8は、第2の実施形態に係る固体撮像素子の要部断面図である。
図8の基本構造は、図1の基本構造と同等である。第1の実施形態との相違点は2つある。
【0042】
1つ目は、透明絶縁膜111における第2の領域の空孔径が第3の領域における空孔径よりも小さいことである。
2つ目は、透明絶縁膜111における第2の領域の空孔径が第1の領域における空孔径と略等しいことにある。
以上のようにして、受光部102直上からカラーフィルター112までの透明絶縁膜111の屈折率を、透明絶縁膜111のその他の領域(第3の領域)の屈折率よりも高くすることで、第1の領域と第2の領域の全体を光導波路として、活用して、受光部102への集光効果を向上させることが可能となる。
【0043】
ここで、透明絶縁膜111における第1の領域と第2の領域の屈折率をn1とし、透明絶縁膜111における第3の領域の屈折率をn2とした場合、例えば、n1=1.45,n2=1.15であることが好ましい。このような、屈折率が大きく異なる膜の界面では、斜め上方からの入射光が全反射する。
従って、図8に示される入射光Sは、光導波路によって、効率的に受光部102に導かれることになる。
【0044】
なお、本実施形態では、第1の領域及び第2の領域と、第3の領域とを空孔率もしくは空孔径変化させることで、屈折率の異なる領域としたが、これに限定されるものではない。例えば、屈折率の異なる領域を形成する方法としては、膜上部付近にC(カーボン)やF(フッ素)を含有させることにより屈折率を低減させることも可能である。
(製造方法の説明)
図9〜図12は、図8の固体撮像素子の製造方法の主要な工程を説明するための断面図である。
【0045】
まず、図9に示す断面図を、図5に示す断面図を形成するまでの工程と同様の工程により形成する。
次に、図10に示すように、透明絶縁膜111における遮光膜110上方に紫外線が照射されるのを防ぐために、反射防止膜(BARC)201を100nm以上堆積し、その後、フォトレジスト202を堆積し、露光、現像を順次行うことにより、受光部102の直上に位置する領域に開口部が形成されるように、反射防止膜201とフォトレジスト202をパターニングする。
【0046】
次に、図11に示すように、半導体基板101を、真空に保持したチャンバー内の高温ステージ上に配置し、半導体基板に対して波長領域200〜400nmの紫外線を照射する。これにより、透明絶縁膜111における第2の領域にのみ紫外線が照射されることとなる。その結果、透明絶縁膜111における第2の領域に形成されていた空孔径の大きな空孔が潰れるように、膜質が硬くなり、結果的に透明絶縁膜111における第2の領域に形成されていた空孔径は、第1の領域と同等程度にまで小さくなる。その結果、第3の領域の空孔の空孔径と比べて、第2の領域の空孔の空孔径は小さくなる。
【0047】
その後、反射防止膜201とフォトレジスト202を除去する。
次に、図12に示すように、カラーフィルター層112及びマイクロレンズ113を順次形成する。
(製造方法の変形例の説明)
図13〜図16は、図8の固体撮像素子の製造方法の変形例についての主要な工程を説明するための断面図である。
【0048】
まず、図13に示す断面図を、図4に示す断面図を形成するまでの工程と同様の工程により形成する。
次に、図14に示すように、透明絶縁膜111における受光部102上方に紫外線が照射されるのを防ぐために、反射防止膜(BARC)201を100nm以上堆積し、その後、フォトレジスト202を堆積し、露光、現像を順次行うことにより、遮光膜110の直上に位置する領域に開口部が形成されるように、反射防止膜201とフォトレジスト202をパターニングする。
【0049】
次に、図15に示すように、半導体基板101を、真空に保持したチャンバー内の高温ステージ上に配置し、半導体基板に対して波長領域200〜400nmの紫外線を照射する。これにより、透明絶縁膜111における第3の領域にのみ紫外線が照射されることとなる。
その結果、透明絶縁膜111における第3の領域に形成されていたポロジェンが分解除去され、透明絶縁膜111における第3の領域に空孔が形成される。一方、透明絶縁膜111における第1の領域および第2の領域においては、ポロジェンが分解除去されないため、空孔はほとんど形成されない。その結果、第3の領域の空孔の空孔径と比べて、第2の領域の空孔の空孔径は小さくなる。当然、第3の領域の空孔の空孔径と比べて、第1の領域の空孔径は小さくなる。その後、反射防止膜201とフォトレジスト202を除去する。
【0050】
次に、図16に示すように、カラーフィルター層112及びマイクロレンズ113を順次形成する。
以上のようにしても、図8と同じように、受光部102直上からカラーフィルター112までの透明絶縁膜111の屈折率を、透明絶縁膜111のその他の領域(第3の領域)の屈折率よりも高くすることで、第1の領域と第2の領域の全体を光導波路として、活用して、受光部102への集光効果を向上させることが可能となる。
【0051】
(全実施形態に係る説明)
図17は、図1に示す固体撮像素子を複数個、セル状に配列したときの断面図を示している。図示しないが、図8に示す固体撮像素子についても同様の断面図を描くことが可能である。
なお、第1の実施形態と第2の実施形態は、矛盾の無い範囲で組み合わせることは可能である。例えば、透明絶縁膜111における第2の領域の空孔の空孔径が、透明絶縁膜111における第3の領域の空孔の空孔径よりも小さく、かつ、透明絶縁膜111における第1の領域の空孔の空孔径が、透明絶縁膜111における第2の領域の空孔の空孔径よりも小さくなるように、透明絶縁膜111を形成したとしても、受光部102への集光効果を高めることは可能である。
【0052】
また、全実施形態において、空孔径が小さければ、空孔率が小さくなり、空孔径が大きければ、空孔率が大きくなると考えて問題ない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、微細な固体撮像素子などの光学素子として有用である。
【符号の説明】
【0054】
101 半導体基板
102 受光部(光学領域)
103 読み出し部
104a、104b 垂直転送部
105 チャネルストップ部
106 絶縁膜
107 垂直転送電極
108 絶縁膜
109 開口部
110 遮光膜
111 透明絶縁膜
112 カラーフィルタ
113 マイクロオンチップレンズ
114 空孔形成材料
115 空孔
201 BARC
202 レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学領域を有する半導体基板と、
前記半導体基板の上に配置された透明絶縁膜と、
を有し、
前記透明絶縁膜は、前記光学領域直上の第1の領域と、前記第1の領域の上の第2の領域と、を有し、さらに、前記第2の領域と同じ高さにあり、平面視において前記第2の領域の外側に位置する第3の領域を有し、
前記第1の領域が有する空孔の空孔径は前記第3の領域が有する空孔の空孔径よりも小さい
ことを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記透明絶縁膜は前記光学領域の直上において単層である
ことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記透明絶縁膜における前記第3の領域において、下部の空孔径よりも上部の空孔径の方が大きい
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記透明絶縁膜における前記第3の領域において、下部から上部に向かうにつれて空孔径が大きくなっている領域を有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光学素子。
【請求項5】
前記透明絶縁膜における前記第3の領域は、下から順に領域A、領域Bを有し、
前記領域Aの空孔径は、前記領域Bの空孔径よりも小さく、
前記領域Aにおいてのみ、領域A側から領域B側に向かうにつれて空孔径が大きくなっている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光学素子。
【請求項6】
前記透明絶縁膜の上にはカラーフィルターが配置されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光学素子。
【請求項7】
前記透明絶縁膜における前記第1の領域において、下部から上部に向かうにつれて空孔径が大きくなる領域を有する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の光学素子。
【請求項8】
前記透明絶縁膜における前記第1の領域から前記第2の領域にかけて、下から順に領域C、領域D、領域Eを有し、
前記領域Cの空孔径は、前記領域Dの空孔径よりも小さく、
前記領域Dの空孔径は、前記領域Eの空孔径よりも小さく、
前記領域Dにおいてのみ、領域C側から領域E側に向かうにつれて空孔径が大きくなっている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の光学素子。
【請求項9】
前記半導体基板の表面から前記領域Cと領域Dの境界までの長さは、前記光学領域の幅の2倍よりも短い
ことを特徴とする請求項8に記載の光学素子。
【請求項10】
前記第1の領域は前記第2の領域よりも空孔径が小さい
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の光学素子。
【請求項11】
前記第2の領域の空孔径は前記第3の空孔径よりも小さい
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の光学素子。
【請求項12】
前記半導体基板の表面から前記第1の領域と前記第2の領域の境界までの長さは、前記光学領域の幅の2倍よりも短い
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の光学素子。
【請求項13】
前記光学領域で生成された電荷を転送する電荷転送部と、
前記電荷転送部を覆うように選択的に形成された遮光部とを有する
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の光学素子。
【請求項14】
前記遮光部間の幅は、600nm以下である
ことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の光学素子。
【請求項15】
前記光学領域の幅は、600nm以下である
ことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の光学素子。
【請求項16】
前記透明絶縁膜は、シリコン酸化膜、炭素含有シリコン酸化膜、フッ素含有シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜である
ことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つに記載の光学素子。
【請求項17】
光学領域を有する半導体基板と、
前記半導体基板の上に配置された透明絶縁膜と、
を有し、
前記透明絶縁膜は、前記光学領域直上の領域において、屈折率の異なる単一層からなる
ことを特徴とする光学素子。
【請求項18】
半導体基板に光学領域を形成する工程(a)と、
前記半導体基板の上に透明絶縁膜を形成する工程(b)とを有し、
前記透明絶縁膜は、前記光学領域直上の第1の領域と前記第1の領域の上の第2の領域を有し、さらに、前記第2の領域と同じ高さにあり、平面視において前記第2の領域の外側に位置する第3の領域を有し、
前記第1の領域が有する空孔の空孔径は前記第3の領域が有する空孔の空孔径よりも小さい
ことを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項19】
前記工程(b)は、前記透明絶縁膜中のポロジェンを脱離させることで空孔を形成する工程(b1)を有する
ことを特徴とする請求項18に記載の光学素子の製造方法。
【請求項20】
前記工程(b)は、
前記工程(b1)の後に、前記透明絶縁膜の上に、前記光学領域直上のみに開口を有するようなパターンを形成する工程(b2)と、
前記工程(b2)の後に、前記透明絶縁膜のポロジェンのうち、前記光学領域直上に配置されている空孔のみを小さくさせる工程(b3)を
有する
ことを特徴とする請求項19に記載の光学素子の製造方法。
【請求項21】
前記工程(b)は、
前記透明絶縁膜の上に、前記光学領域直上以外に開口を有するようなパターンを形成する工程(b1)と、
前記工程(b1)の後に、前記透明絶縁膜のポロジェンのうち、前記光学領域直上以外に配置されているポロジェンのみを脱離させる工程(b2)を
有する
ことを特徴とする請求項18に記載の光学素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2013−12653(P2013−12653A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145498(P2011−145498)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】