説明

光硬化型シリコーン樹脂組成物を用いる硬化薄膜の製造方法

【課題】リソグラフィー性を有し、光硬化と加熱硬化とを組み合わせて硬化させることができるシリコーン樹脂組成物を用いることにより所望の硬化薄膜を高精度で容易に形成することができる硬化薄膜の製造方法を提供する
【解決手段】(A)分子中に2つ以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(B)分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2つ以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び(C)光活性型触媒を含有する光硬化型シリコーン樹脂組成物を硬化させて硬化薄膜を形成する方法であって、
(i)該組成物を基板上に塗布し、(ii)得られた塗膜に光を照射して半硬化状態の薄膜を得、及び(iii)該半硬化状態の薄膜を加熱して完全に硬化する工程を含み、
前記の工程(ii)で照射される光のスペクトルが、300nm〜400nmの波長領域に最大ピークを有し、かつ、300nmより短い波長領域におけるいずれの波長の光においても分光放射照度が前記最大ピーク波長の光の分光放射照度の5%以下である方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光硬化型シリコーン樹脂組成物を用いる硬化薄膜の製造方法に関する。詳細には、光硬化型シリコーン樹脂組成物を特定波長を有する光に露光して半硬化状態とし、次いで加熱することにより完全に硬化する硬化薄膜の製造方法に関する。また、本発明はこうして得られる硬化薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン樹脂及びシリコーンゴムは、耐熱性、耐光性、絶縁性に優れ、かつ透明な成形品または硬化物を提供するため、各種光学用途や電子デバイスに用いられている。
【0003】
加熱により硬化する付加硬化型のシリコーン樹脂組成物は、一般的に硬化触媒として白金触媒を使用する。該シリコーン樹脂組成物は、組成物を調製した直後から白金触媒が活性を有するために、シリコーン樹脂組成物のポットライフを十分に確保するためには組成物に硬化抑制剤を添加する必要がある。しかしその結果、シリコーン樹脂組成物の硬化速度が遅くなる。このことは、該シリコーン樹脂組成物により特定の成形品、例えば一定厚さや一定パターンを有する薄膜を形成する場合には不利である。というのは、硬化に時間がかかるため、加熱により完全に硬化するまでの間に組成物が流動して所望の厚さや形状が損なわれやすいからである。そこで、組成物の流動性を低下させるために三次元網状構造のシリコーン樹脂の採用や多量の充填剤を添加したり、あるいは、高温の加熱炉を用いて急速に短時間で硬化させることが試みられてきた。しかし、高温での加熱は製造ラインの制御が容易でなく、また所望の寸法、形状の成形品を得るには不十分であった。
【0004】
一方、光照射によって硬化するシリコーン樹脂組成物は遮光下では反応が進行しないために、硬化抑制剤を添加する必要がなく、硬化反応が速やかに進行するため製造ラインの制御が容易であり、必要とされるエネルギーも少ない。さらに装置も小規模の物でよく、製造工程の大幅なコストダウンが見込まれる。
【0005】
光硬化性のシリコーン系樹脂組成物として、(メタ)アクリレート系重合体、(メタ)アクリロイルオキシ基含有シリコーン樹脂、(メタ)アクリロイルオキシ基含有光硬化性樹脂及び光重合開始剤を含有する樹脂組成物が知られ、プラスチック成形品の表面保護のためのトップコート層の形成に用いられることが記載されている(特許文献1)。
【0006】
また、光重合性官能基とSiH基を有し多面体シロキサン骨格を有するポリシロキサン系化合物、アルケニル基含有化合物、光重合開始剤及びヒドロシリル化触媒を含む光硬化性組成物であって、リソグラフィー性を有し、薄膜トランジスターのパッシべーション膜、ゲート絶縁膜の形成に使用されるものが知られている(特許文献2)。
【0007】
また、両末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサン、ラジカル重合性モノマーとしてN,N−ジアルキル置換アクリルアミド及び/又はアクリロイルモルフォリン、及び光重合開始剤を含有する光硬化性オルガノポリシロキサン組成物が知られている(特許文献3)。
【0008】
しかし、特許文献1〜3に記載の組成物は、得られる硬化物の架橋点が弱く、熱や光によって破壊され、樹脂の分解の起点となるため薄膜状態での耐熱性、耐光性が不十分である。
【0009】
脂肪族多重結合を有するポリオルガノシロキサン、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する有機ケイ素化合物および光により活性化可能な白金のシクロペンタジエニル錯体を含有する光架橋性シリコーン混合物を成形又は被覆のために適用する前又は適用後に作業性を高めるために40〜250℃に加熱して混合物の粘度を低下させ、その後に200〜500nmの光を照射してシリコーン被覆又はシリコーン成形品を製造する方法が知られている(特許文献4)。しかしこの方法では短波長側の紫外線光をカットしていないために、被覆が薄い場合には短波長側紫外線により触媒が失活して硬化不良を起こしやすい。したがって、被覆を薄くすることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−016871
【特許文献2】特開2010−254927
【特許文献3】特開2008−031307
【特許文献4】特開2011−12264
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上記の課題が解決された、光硬化性であるためリソグラフィー性を有し、光硬化と加熱硬化とを組み合わせて硬化させることができる硬化性シリコーン樹脂組成物を用いることにより所望の硬化薄膜を高精度で容易に形成することができる硬化薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明は、
(A)一分子中に2つ以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2つ以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 本組成物中のアルケニル基1モルに対しケイ素原子に結合した水素原子が0.1〜4.0モルとなる量、及び
(C)光活性型触媒 有効量
を含有する光硬化型シリコーン樹脂組成物を硬化させて硬化薄膜を形成する方法であって、
(i)該シリコーン樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を得る工程、
(ii)得られた塗膜に光を照射して該塗膜を部分的に硬化させ半硬化状態の薄膜を得る工程、及び
(iii)得られた半硬化状態の薄膜を加熱して完全に硬化する工程
を含み、
前記の工程(ii)で照射される光のスペクトルが300nm〜400nmの波長領域に最大ピークを有し、かつ、
該スペクトルの300nmより短い波長領域におけるいずれの波長の光においても分光放射照度が前記最大ピーク波長の光の分光放射照度の5%以下である、
こと特徴とする硬化薄膜の製造方法。
【0013】
更に本発明は、上記の製造方法により得られる硬化薄膜、さらに、該硬化薄膜を備える半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬化被膜の製造方法は、光硬化工程と加熱硬化工程との組み合わせにより、所望の厚さ、形状を有するシリコーン樹脂系硬化被膜を高精度で容易に形成することができる。n型フォトレジストと同様の操作で高精度のパターンを形成するのにも有用である。
【0015】
本発明の方法に用いる光硬化型シリコーン樹脂組成物は光の非照射下では不活性で安定性が高く、ポットライフに優れるため、この方法は作業性にも優れ、得られる薄膜は耐熱性及び光透過性に優れるため、発光ダイオード等の光半導体素子の封止材として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1などでバンドパスフィルターを通して照射した光の発光スペクトルを実線で示し、比較例2及び3で用いた、該バンドパスフィルターを通す前の光のスペクトルを破線で示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
−硬化薄膜の製造方法−
<光硬化型シリコーン樹脂組成物>
まず初めに本発明の方法に用いる光硬化型シリコーン樹脂組成物について説明する。
【0018】
この光硬化型シリコーン樹脂組成物は下記の(A)〜(C)成分を必須の成分として含有する。以下に各成分を説明する。
・(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン:
(A)成分に関し、本発明では、「アルケニル基」の語は非環式のアルケニル及び環状のアルケニル基(所謂、シクロアルキル基)を含む意味で使用される。
【0019】
(A)成分は、1分子中に少なくとも2つのアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンであり、該アルケニル基としては炭素原子数2〜8、特に2〜6の、アルケニル基が挙げられる。特には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の非環式アルケニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基が挙げられ、中でもビニル基およびアリル基が好ましい。本発明に用いるオルガノポリシロキサンは常温で固体ないし粘調な樹脂状のものであってよいが、23℃で10〜1,000,000mPa・s、特に100〜100,000mPa・sであることが作業性、組成物の硬化性等の観点から好ましい。従って、オルガノポリシロキサンが23℃で固体の場合は溶剤を併用することにより上記粘度にするのが良い。上記オルガノポリシロキサンの粘度は、回転粘度計等により測定することができる。オルガノポリシロキサンと併用して使用する溶剤としては、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン等が挙げられる。溶剤の配合量は、オルガノポリシロキサンと混合した時の粘度が上記範囲になるように適宜調製されればよい。
【0020】
当該オルガノポリシロキサンとしては、SiO4/2単位(以下、Q単位と称す)及びRSiO1/2単位(以下、M単位と称す)を含有する三次元網目状構造のオルガノポリシロキサンが好ましい。該オルガノポリシロキサンは、さらにRSiO単位(以下、D単位と称す)及び/又はRSiO3/2単位(以下、T単位と称す)を含有していてもよい。当該オルガノポリシロキサンのM単位とQ単位の比率は、モル比として、1:0.5〜1:3が好ましく、1:0.6〜1:2.5がより好ましい。D単位及び/又はT単位を含有する場合には、これらの単位が全シロキサン単位中30〜70モル%であることが好ましく、40〜60モル%であるのがより好ましい。また、該本発明に用いるオルガノポリシロキサンは、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量が10〜1,000,000であることが好ましく、100〜100,000の範囲にあるものがより好適である。
【0021】
上記単位においてRは、互いに独立に、非置換又は置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基であり、好ましくは非置換又は置換の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である。但し、1分子中に含まれるRで示される基のうちの少なくとも2つはアルケニル基である。該一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基;シクロヘキセニル基およびこれらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0022】
上記三次元網目状構造のオルガノポリシロキサンは、上記M単位、Q単位、D単位、及びT単位の単位源となる化合物を上記モル比となるように組み合わせ、例えば、酸の存在下で共加水分解反応を行なうことによって容易に合成することができる。M単位、Q単位、D単位、及びT単位の単位源として例えば下記の式(1)で表されるシラン化合物を用いることができる。
【0023】
nSiX4-n (1)
(式中、Rは上述の通りであり、Xは塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基、nは0〜3の整数である。Xはハロゲン原子、特に塩素原子であることが好ましい。)
【0024】
上記式(1)で表されるシラン化合物としては、例えば、メチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリビニルクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、テトラクロロシラン、テトラメトキシラン、テトラエトキシラン等があげられる。Q単位源としてはケイ酸ソーダ、アルキルシリケート、ポリアルキルシリケート等を使用することもできる。
【0025】
本発明に用いる(A)成分は上記三次元網目状構造のオルガノポリシロキサンと直鎖状のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。直鎖状のオルガノポリシロキサンは、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しから成り、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖されたものがよく、中でも下記一般式(2)で表わされる直鎖状オルガノポリシロキサンが望ましい。尚、直鎖状オルガノポリシロキサンは分岐構造を分子鎖中に少量含有してもよい。
【0026】
【化1】

【0027】
(式中、Rは上述の通りであり、xは0または正の整数、好ましくは1〜10,000の整数、更に好ましくは5〜2,000の整数であって本オルガノポリシロキサンの23℃での粘度を10〜1,000,000mPa・s、好ましくは100〜100,000mPa・sとする数である。)
直鎖状のオルガノポリシロキサンを含有する場合は、(A)成分中に20〜70質量%の量で配合されることが好ましく、より好ましくは30〜60質量%の量である。三次元網目状構造のオルガノポリシロキサンの配合量が少なすぎると硬化物の強度が弱くなる場合がある。多すぎると樹脂組成物の粘度が高くなり硬化物にクラックが発生しやすくなる場合がある。
【0028】
・(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン:
(B)成分は一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH)を2個以上、好ましくは3個以上、より好ましくは3〜1,000個、さらに好ましくは3〜500個、さらに特に好ましくは3〜200個、とりわけ好ましくは4〜100個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。当該オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基と(A)成分中のアルケニル基が反応することにより硬化物を形成する。ケイ素原子に結合した水素原子の位置は特に制約はなく、分子鎖末端および分子鎖非末端のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、上記要件を満たすものであれば特に制限はなく、例えば線状、環状、分岐状、三次元網目状構造等の各種のものが使用可能である。
【0029】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンの一分子中のケイ素原子の数(即ち、重合度)は通常2〜1,000個、好ましくは3〜500個、より好ましくは4〜150個であり、23℃における粘度が、0.1〜100,000mPa.sが好ましく、より好ましくは0.5〜5,000mPa.sであり、室温(23℃)で液状のものが好適に使用される。
【0030】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(3)で示されるものが用いられる。
【0031】
SiO(4−b−c)/2 (3)
(式中、Rはアルケニル基その他の脂肪族不飽和結合を含まない、非置換又は置換の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0.7〜2.1の数、cは0.001〜1.0の数であり、かつb+cが0.8〜3.0を満たす数である。好ましくは、bは1.0〜2.0の数、cは0.01〜1.0の数であって、b+cが1.5〜2.5を満たす数である。)
【0032】
上記Rで表される非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等が挙げられる。これらの非置換又は置換の一価炭化水素基の中でも、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0033】
分岐状、三次元網目状構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、例えば、RSiCl3、SiHCl、(RSiCl、(RSiCl、(RSiHCl(Rは、上述の通りである)で表わされるクロロシラン化合物を加水分解するか、または加水分解して得られたシロキサンを平衡化することにより得ることができる。
【0034】
分岐状、三次元網目状構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、(CHHSiO1/2単位と(CHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(CSiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられ、具体的には、例えば下記のものが挙げられる。
【0035】
【化2】

【0036】
環状及び非環状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体などが挙げられる。
【0037】
また、線状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては下記の構造のものが挙げられる。
【0038】
【化3】

【0039】
(ただしe及びdは、0≦e≦998、0≦d≦998、0<e+d<998、を満足する整数であり、好ましくは1<e+d<298、より好ましくは2<e+d<148を満足する整数である。rは0〜3の整数である。Rは、前記の通りである。ただし、該オルガノハイドロジェンポリシロキサンはケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2つ有する)
【0040】
なお、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、本組成物中の全アルケニル基1モルに対し(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.1〜4.0モルとなる量であり、好ましくは0.8〜3.0モル、更に好ましくは0.9〜2.0モルである。(B)成分が多すぎると、未反応のSiH基が硬化物中に多量に残存する結果、硬化物の物性が経時的に変化する原因となるため好ましくない。ここで、「本組成物中の全アルケニル基」は、例えば後述する(D)成分がアルケニル基を有する形で成分として含まれる場合には(A)成分のアルケニル基と(D)成分のアルケニル基との合計量を意味し、(A)成分以外にアルケニル基を有する成分が存在しない場合には(A)成分が有するアルケニル基を意味することになる。
【0041】
・(C)光活性型触媒:
(C)成分は光活性を有する触媒であれば特に制限されるものではなく、特には光活性型の白金族金属触媒あるいはニッケル系触媒である。光活性型白金族金属触媒としては、白金系、パラジウム系、ロジウム系のものが使用でき、中でも白金系触媒であるのが好ましい。当該光活性型白金系触媒としては、β−ジケトネート白金錯体触媒、例えば、トリメチル(アセチルアセトナト)白金錯体、トリメチル(3,5−ヘプタンジオネート)白金錯体、トリメチル(メチルアセトアセテート)白金錯体、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金錯体、ビス(2,4−へキサンジオナト)白金錯体、ビス(2,4−へプタンジオナト)白金錯体、ビス(3,5−ヘプタンジオナト)白金錯体、ビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオナト)白金錯体、ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)白金錯体が挙げられる。また、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金を使用することもできる。光活性型ニッケル系触媒としては、例えばビス(2,4−ペンタンジオナト)ニッケル錯体を使用することができる。これらは1種を単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも本発明の硬化方法で使用する触媒としては、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金錯体、慣用名ビス(アセチルアセトナト)白金(II)が好ましい。
【0042】
(C)成分の配合量は有効量でよく、通常、前記(A)及び(B)成分の合計量に対して白金族金属換算(質量基準)で0.1〜1,000ppm、好ましくは0.5〜200ppmである。前記範囲内であると光硬化型シリコーン樹脂組成物を短時間で硬化することができる。
【0043】
・任意的成分:
本発明に用いる上記組成物には(A)〜(C)成分の他、必要に応じて、本発明の目的、効果を損なわない範囲で任意的成分を配合することができる。
・・(D)接着助剤:
接着助剤としては例えば、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)、ケイ素原子に結合したアルケニル基(例えばSi−CH=CH2基)、アルコキシシリル基(例えばトリメトキシシリル基)、エポキシ基(例えばグリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基)、(メタ)アクリレート基から選ばれる官能性基を少なくとも2種、好ましくは2種又は3種含有する、ケイ素原子数4〜50個、好ましくは4〜20個の、直鎖状又は環状のオルガノシロキサンオリゴマー、又はオルガノオキシシリル変性イソシアヌレート化合物及び/又はその加水分解縮合物(オルガノシロキサン変性イソシアヌレート化合物)などが挙げられる。接着助剤は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
接着助剤としては以下に示すものが挙げられる。
【0045】
【化4】

【0046】
また、上記以外の接着助剤としては、下記に示すものを使用することができる。
【0047】
【化5】

【0048】
接着助剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.2〜10質量部、さらにより好ましくは0.5〜5質量部である。多すぎると硬化物の硬度に悪影響を及ぼし、又、表面タック性を高める恐れがある。
・・その他の任意成分:
他の任意成分として、硬化反応を抑制・制御する効果を有する化合物を含有してもよい。このような化合物は従来公知のものをいずれも使用することができるが、例えば、トリフエニルホスフィンなどのリン含有化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物:硫黄含有化合物、アセチレン系化合物、アルケニル基を2個以上有する化合物、ハイドロパーオキシ化合物、マレイン酸誘導体などが挙げられる。当該化合物による硬化遅延効果の度合いは、その化学構造によって大きく異なる。したがって、その添加量は、使用する化合物の個々について最適な量に調整すべきであるが、一般的には、その添加量が少な過ぎると室温での長期貯蔵安定性が得られず、逆に多過ぎると硬化が阻害される。
【0049】
さらに、任意成分として、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、中空フィラー、ポリオルガノシルセスキオキサン、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、カーボンブラック、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機質充填剤、および、これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面処理した充填剤を使用することができる。また、シリコーンゴムパウダーやシリコーンレジンパウダーなども使用できる。これらは、本発明の効果を阻害しない量で適宜含有させればよい。
【0050】
更に、本発明に用いる光硬化型シリコーン樹脂組成物には、例えば、工程(ii)で得られえる半硬化状態の薄膜の硬度を調節する目的で、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1個含有するオルガノポリシロキサン、ケイ素原子に結合した水素原子もアルケニル基も含有しない、非架橋性のオルガノポリシロキサンを配合することができる。また、有機溶剤、クリープハードニング防止剤、耐熱性付与剤、難燃性付与剤、可塑剤、チクソ性付与剤、顔料、染料、防かび剤等を本発明の効果を阻害しない量で適宜含有させてもよい。
【0051】
本発明に用いる光硬化型シリコーン樹脂組成物は、上述した各成分を所定の組成比で配合し、プラネタリーミキサーや品川ミキサー等により常法に準じて均一に混合することによって調製される。本発明に用いる組成物の粘度は23℃での回転粘度計による測定値として10〜1,000,000mPa・sが好ましく、より好ましくは100〜100,000mPa・sである。
【0052】
<工程(i)>
この工程では、光硬化型シリコーン樹脂組成物が、基板上に塗布され塗膜が形成される。
【0053】
塗布方法は特に制限されず、例えばスピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、カーテンコート法、静電塗装法、CVD法、ドロップキャスト法等が挙げられる。
【0054】
基板の材料としては、例えば、銀などの金属、アルミナなどのセラミック、PPAなどの有機物が挙げられる。
【0055】
<工程(ii)>
この工程では、工程(i)で得られた塗膜に光を照射して該塗膜を半硬化状態の薄膜を得る。
【0056】
ここで照射される光は、
(a)そのスペクトルが300nm〜400nmの波長領域に最大ピークを有し、かつ、
(b)該スペクトルの300nmより短い波長領域におけるいずれの波長の光においても分光放射照度が前記最大ピーク波長の光の分光放射照度の5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0%である、
という特徴を有する。
【0057】
300nmより短い波長領域にある各波長の分光放射照度が0に近ければ近いほどよい。300nmより短い波長領域にあり、分光放射照度が前記最大ピーク波長の分光放射照度の5%より大きい波長を有する光を照射すると(C)成分の光活性型触媒の一部が失活するため樹脂組成物を硬化させることが困難となる。
【0058】
塗膜に照射される光が上記の条件(a)及び(b)を満たしさえすれば、用いる光源から発せされる光のスペクトル(発光スペクトル)は関係なく、光学フィルター等を通して条件(a)、(b)を満たすようにすればよい。
【0059】
照射される光の照射量(照度)は、積算光量として100mJ/cm〜100,000mJ/cmの範囲が好ましく、より好ましくは100mJ/cm〜100,00mJ/cm、さらにより好ましくは100mJ/cm〜5,000mJ/cmである。前記照射量(照度)であれば、極めて短時間の光照射で光硬化型シリコーン樹脂組成物を半硬化状態に硬化させることができる。
【0060】
照射される光の光線種は特に限定されないが、紫外線であることが好ましい。紫外線照射は複数の発光スペクトルを有する光であっても、単一の発光スペクトルを有する光であってもよい。また、単一の発光スペクトルとは300nmから400nmの領域にブロードなスペクトルを有するものであってもよい。単一の発光スペクトルを有する光は、300nmから400nm、好ましくは350nmから380nmの範囲にピーク(即ち、最大ピーク波長)を有する光である。このような光を照射する光源としては、紫外線発光ダイオード(紫外線LED)や、紫外線発光半導体レーザー等の紫外線発光半導体素子光源が挙げられる。
【0061】
複数の発光スペクトルを有する光を照射する光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、ナトリウムランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等のランプ等、窒素等の気体レーザー、有機色素溶液の液体レーザー、無機単結晶に希土類イオンを含有させた固体レーザー等が挙げられ、例えば、コンベア式UV照射装置が使用できる。
【0062】
前記光が発光スペクトルにおいて300nmより短い波長領域にピークを有する場合、あるいは、300nmより短い波長領域に前記発光スペクトルにおける最大ピーク波長の分光放射照度の5%より大きい分光放射照度を有する波長が存在する場合(例えば、発光スペクトルが広域波長領域に渡ってブロードである場合)には、光学フィルターにより300nmより短い波長領域にある波長の光を除去する。これにより、300nmより短い波長領域にある各波長の分光放射照度を最大ピーク波長の分光放射照度の5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0%にする。尚、発光スペクトルにおいて300nmから400nmの波長領域に複数のピークが存在する場合には、その中で最大の吸光度を示すピーク波長を最大ピーク波長とする。
【0063】
光学フィルターは300nmより短い波長をカットするものであれば特に制限されず公知の物を使用すればよい。例えば365nmバンドパスフィルター等を使用することができる。なお、紫外線の照度、スペクトル分布は分光放射照度計、例えばUSR−45D(ウシオ電機)にて測定することができる。
【0064】
光硬化型シリコーン樹脂組成物の塗膜に光を照射する時間は極めて短時間でよく、例えば0.5〜10秒、特には1〜5秒照射すれば、その後10〜600秒間、特には60〜300秒間で光を照射された部分の光硬化型シリコーン樹脂組成物が硬化し半硬化状態となる。
【0065】
本発明において「半硬化状態」とは前記光硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化反応が部分的に進行して該樹脂組成物が流動性を失い、かつ後述の現像処理において使用される溶剤に不溶化した状態を意味する。したがって、硬化反応は完全には終結していない。工程(iii)において加熱することにより該樹脂組成物を完全に硬化させるが、そのようにして硬化反応が完了するまでの間に樹脂組成物からなる半硬化状態の被膜は流れることなく、所望の形状を保持することができる。
【0066】
本発明の方法の一実施形態として、本工程(ii)において塗膜に光を照射する際に、パターン形成用マスクを介して光を照射してパターン化した半硬化状態の薄膜を形成し、該薄膜を現像処理して未硬化部分除去した後、該半硬化状態の薄膜を工程(iii)に供し、これによりパターン化した硬化薄膜を形成することができる。
【0067】
現像処理は、具体的には露光後の被膜を適切な溶剤で洗浄することにより行うことができる。これにより、被膜のうち未露光部分は除去され、露光した半硬化状態のパターン化した部分のみが残存する。ここで現像液として使用する溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、p−メンタン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの脂肪族又は脂環式炭化水素系溶剤、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール系溶剤、ブチルカルビトールなどのグリコール系溶剤、THF、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤があげられ、これらに限定されるものではない。これらの溶剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0068】
こうして得られたパターン化した半硬化被膜は、工程(iii)において加熱硬化することにより、フォトマスクのパターンと同じ形状の完全に硬化した被膜を形成することができる。
【0069】
本発明に用いる光硬化型シリコーン樹脂組成物は硬化の開始時期を光の照射によって自由に設定することができるため、光硬化型シリコーン樹脂組成物を調製した後、常温で硬化反応が進み粘度が高くなることはなく、ポットライフに優れる。
【0070】
<工程(iii)>
工程(iii)では、工程(ii)で得られた半硬化状態の薄膜を加熱することにより完全に硬化する。これにより加熱中に樹脂組成物が流動することなく、初期の意図した厚さ及び形状を維持したまま硬化することができる。加熱硬化は25〜200℃、好ましくは100〜180℃で、3分〜72時間、好ましくは1〜6時間で行う。該加熱硬化条件は作業条件及び生産性と発光素子や筐体耐熱性とのバランスから適宜選定すればよい。トランスファー成型やインジェクション成型を使用する場合は、150〜180℃の温度、20〜50kgf/cmの圧力で1〜5分間で成型するのが好ましい。また、後硬化(二次硬化又はポストキュア)を150〜200℃、1〜4時間の条件で行ってもよい。こうして得られる硬化薄膜は、厚さが1mm以下、好ましくは0.1mm以下、より好ましくは0.01mm〜0.1mmである。
【0071】
本発明の方法により得られる硬化被膜は耐熱性及び光透過性に優れる。また、該硬化被膜は厚さ1mmの状態で、23℃における波長450nmの光の透過率が90%〜100%、特には95%〜100%である。このため、この硬化被膜は、発光ダイオード(LED)、有機電界発光素子(有機EL)、レーザーダイオード、LEDアレイ等の光半導体素子の封止材として好適に利用することができる。
【0072】
本発明の方法により得られる硬化被膜で光半導体素子を封止する態様は特に制限されるものではないが、例えば、開口部を有する筐体内に配置された光半導体素子を覆うように、上述した光硬化型シリコーン樹脂組成物を充填し硬化させる方法が使用できる。また、マトリックス化された基板上に光半導体素子を搭載し、印刷法、トランスファー成型、インジェクション成型、圧縮成形を使用して製造することもできる。光半導体素子をポッティングやインジェクション法で被覆保護する場合には、組成物は液状であることが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例を示し本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。以下において、部は質量部を示す。粘度は23℃における粘度(ブルックフィールド社製 デジタル粘度計DV−II+Proにより測定)である。
【0074】
−使用材料−
・(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
SiO単位16モル%、(CHSiO1/2単位20モル%、Vi(CHSiO1/2単位4モル%、及び(CHSiO単位60モル%を含有し、粘度が40Pa・sであり、100g中に54mmolのビニル基を有する分岐状ポリメチルビニルシロキサン(GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は63,000、信越化学工業(株)製)。該オルガノポリシロキサンは一分子当たり34個のビニル基を有する。
・(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
下記式で示されるメチルハイドロジェンポリシロキサン(SiH基量:1.56mol/100g、粘度5mPa・s、信越化学工業(株)製)。
【0075】
【化6】

【0076】
・(C)光活性型触媒
(c−1)ビス(アセチルアセトナト)白金(II)(東京化成工業(株)製)
(c−2)(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(シグマアルドリッチジャパン(株)製)
・(C’)非光活性型触媒
(c’−1)白金ビニルシロキサン錯体(信越化学工業(株)製)
・硬化抑制剤
アセチレンアルコール系のエチニルシクロヘキサノール(信越化学工業(株)製)
【0077】
[調製例1〜2]
−光硬化型シリコーン樹脂組成物1、2の調製−
各調製例において、表1に示す成分を表示の組成及び量で配合し、ミキサーにより均一に混合した後脱泡し、無色透明な液状組成物を得た。尚、表1において白金触媒の量は(A)成分及び(B)成分の合計量に対する白金金属換算量(質量基準)である。
【0078】
なお、表1において、「SiH基/Vi基」は、(A)成分のオルガノポリシロキサンが含有するビニル基の合計に対する、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基のモル比を示す。
[調製例3]
−非光硬化型シリコーン樹脂組成物3の調製−
各成分を表1に示す組成及び量で配合し、ミキサーにより均一に混合した後脱泡し、無色透明な液状組成物を得た。尚、表1において白金触媒の量は(A)成分及び(B)成分の合計量に対する白金金属換算量(質量基準)である。
【0079】
−ポットライフ評価−
本明細書において、シリコーン樹脂組成物のポットライフは、全ての構成成分を配合して組成物を調製した後23℃に放置し、粘度が経時的に調製直後の初期粘度2倍になるまでの時間をいう。
【0080】
調製例1〜3で調製したシリコーン樹脂組成物1〜3のおのおのを褐色ビンに入れ、該褐色ビンを23℃の恒温槽に浸けて2週間放置した。2週間後の粘度を測定し、初期粘度からの粘度変化率を求めた。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
<評価>
非光活性型の白金触媒を用いたシリコーン樹脂組成物3は、該触媒は光非照射下でも活性を有するため、硬化抑制剤を加えているにもかかわらず3日で硬化した。ポットライフが極端に短く実用性が低いことが分かった。
【0083】
本発明の光硬化型シリコーン樹脂組成物1及び2は組成物を調製した後2週間経っても粘度増加は1.2〜約1.3倍であり、ポットライフが2週間を超えていた。
【0084】
−シリコンウェハー上へのパターン化薄膜の形成−
[実施例1]
シリコーン樹脂組成物1をトルエンで粘度が10mPa・s以下になるように希釈し、6インチp型シリコンウェハー上に回転数4000rpm、作業時間60秒で、スピンコート法を用いて塗布し塗膜を形成した。塗布作業の過程で溶媒のトルエンはほとんど揮発した。
【0085】
得られた塗膜の上に厚さ0.18mmのスペーサー、厚さ1mmのガラス板、パターン形成用リードフレーム、365nmバンドパスフィルター(ウシオ電機社製)を順に積み重ね、コンベア式UV照射装置(岩崎電気社製)を使用して、積算光量800mJ/cmの光を照射した。その後、ヘキサンにてウェハー表面を洗浄して現像したところ、ウェハー表面上にパターン化した薄膜が残った。次にウェハーを乾燥機に入れ150℃で60分間加熱して硬化させ、パターン化した硬化薄膜を得た。
図1に、上記のバンドパスフィルターを通さない光のスペクトルを破線で、バンドパスフィルターを通した光のスペクトルを実線でします。
【0086】
[実施例2]
シリコーン樹脂組成物1の代わりにシリコーン樹脂組成物2を用いた以外は実施例1と同様に処理した。パターン化した硬化薄膜が得られた。
[比較例1]
シリコーン樹脂組成物1の代わりにシリコーン樹脂組成物3を用いた以外は実施例1と同様に処理を試みた。しかし、現像処理によりウェハー表面上の塗膜がすべて流され除去されてしまった。
【0087】
[実施例3〜5]
実施例3〜5の各々において、シリコーン樹脂組成物1をトルエンで粘度が10mPa・s以下になるように希釈した。得られた塗布液を6インチp型シリコンウェハー上に作業時間60秒でスピンコート法により塗布した。但し、実施例3,4及び5において、スピンコートの回転数をそれぞれ5000rpm、6000rpm及び7000rpmとした。各実施例で得られた塗膜に対して、実施例1と同様にして光の照射、ヘキサンによる現像処理、そして加熱による硬化処理を施した。その結果、表2に記載の厚さを有するパターン化した硬化被膜が得られた。
【0088】
[比較例2,3]
塗膜に照射する光として、バンドフィルターを通さず、図1に破線で示したスペクトルを有する光を照射に用いた。この光は波長が200〜600nmの範囲に渡り、最大ピークの波長が380nmにあって、300nmより小さい波長270nmにおける分光照射照度が前記最大ピーク波長における分光放射照度の17%である。この光を用いた以外は、実施例1と同様にして塗膜の形成、光の照射、ヘキサンによる現像処理を行ったところ、塗膜は現像処理により洗い流され、パターン化した硬化被膜は得られなかった。
【0089】
−パターニングの評価−
均一な厚さを有し、所望形状のパターン化した硬化被膜が得られた場合に、パターニングを「良好」と評価した。また、パターン化した硬化被膜が形成されないか、形成されても厚さの均一性や形状の精度が劣る場合に「不良」と評価した。
【0090】
【表2】

【0091】
<評価>
実施例1〜5では、均一な厚さで高精度の所望形状のパターンを有する硬化被膜が形成された。
【0092】
比較例2,3では、光活性型触媒の使用にも拘わらず、光照射後の塗膜が現像処理で現像液(ヘキサン)によって洗い流され、パターンが形成されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の硬化被膜の製造方法は、n型フォトレジストを使用する方法と同様に、所望の厚さ、形状の硬化被膜を高精度で容易に形成することができる。本発明の方法に用いる光硬化型シリコーン樹脂組成物はポットライフに優れるため作業性がよく、得られる薄膜は耐熱性及び光透過性に優れるため、発光ダイオード等の光半導体素子の封止材として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に2つ以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2つ以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 本組成物中のアルケニル基1モルに対しケイ素原子に結合した水素原子が0.1〜4.0モルとなる量、及び
(C)光活性型触媒 有効量
を含有する光硬化型シリコーン樹脂組成物を硬化させて硬化薄膜を形成する方法であって、
(i)該シリコーン樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を得る工程、
(ii)得られた塗膜に光を照射して該塗膜を部分的に硬化させ半硬化状態の薄膜を得る工程、及び
(iii)得られた半硬化状態の薄膜を加熱して完全に硬化する工程
を含み、
前記の工程(ii)で照射される光のスペクトルが300nm〜400nmの波長領域に最大ピークを有し、かつ、
該スペクトルの300nmより短い波長領域におけるいずれの波長の光においても分光放射照度が前記最大ピーク波長の光の分光放射照度の5%以下である、
こと特徴とする硬化薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記の工程(ii)で照射される光が、発光スペクトルの300nmより短い波長領域を光学フィルターにより除去することにより、300nmより短い波長領域におけるいずれの波長の光においても分光放射照度が前記最大ピーク波長の分光放射照度の5%以下にされたものである、請求項1に記載の硬化薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記の工程(ii)において塗膜に光を照射する際に、パターン形成用マスクを介して光を照射してパターン化した半硬化状態の薄膜を形成し、該薄膜を現像処理して未硬化部分除去した後、該半硬化状態の薄膜を工程(iii)に供し、これによりパターン化した硬化薄膜を形成する、請求項1又は2に記載の硬化薄膜の製造方法。
【請求項4】
(A)成分のオルガノポリシロキサンがSiO4/2単位及びRSiO1/2単位(式中、Rは、互いに独立に、非置換又は置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基である)を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
【請求項5】
(A)成分のオルガノポリシロキサンがさらにRSiO単位及び/又はRSiO3/2単位(式中、Rは前記の通りである)を含有する、請求項4に記載の薄膜の製造方法。
【請求項6】
(C)成分がβ−ジケトネート白金錯体触媒である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
【請求項7】
(C)成分がビス(アセチルアセトナト)白金(II)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られる硬化薄膜。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化薄膜を備える半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−63391(P2013−63391A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203602(P2011−203602)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】