説明

内燃機関の制御装置

【課題】EGR装置を備えたエンジンにおいて、EGRガスによる減速時及び再加速時の失火を防止できるようにする。
【解決手段】筒内流入EGRガス量(筒内に流入するEGRガス量)を推定して、この筒内流入EGRガス量に基づいて正常燃焼可能な吸入空気量の下限値である正常燃焼下限値を算出し、吸入空気量が正常燃焼下限値を下回らないようにスロットル開度を制御して失火を回避する失火回避制御を実行すると共に、この失火回避制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルク(例えばオルタネータ48の負荷トルク)を制御する。更に、エンジン11の減速時に燃料噴射を停止する燃料カット制御中にスロットル開度を開き側(例えば全開)に制御してEGRガスの掃気を促進するEGRガス掃気制御を実行すると共に、このEGRガス掃気制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルクを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排出ガスの一部をEGRガスとして吸気通路へ還流させるEGR装置を備えた内燃機関の制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される内燃機関においては、燃費向上、ノック(ノッキング)や排気エミッションの低減等を目的として、排出ガスの一部をEGRガスとして吸気通路へ還流させるEGR装置を搭載するようにしたものがある。
【0003】
しかし、EGR装置を搭載した内燃機関は、減速時にスロットル開度(スロットルバルブの開度)を閉じ側に制御したときに、EGR弁を閉弁するようにしても、EGR弁の下流側のEGR通路内や吸気通路内にEGRガスが滞留する(特にスロットルバルブの上流側の吸気通路にEGRガスを還流させるシステムでは、スロットルバルブの上流側の吸気通路内に大量のEGRガスが滞留する)ため、減速時やその後の再加速時に筒内に流入するEGRガス量が過剰に多くなって燃焼状態が悪化して失火が発生し易くなるという問題がある。
【0004】
この対策として、例えば、特許文献1(特開2010−36780号公報)に記載されているように、減速要求があるときにスロットル開度を失火限界閉止速度よりも遅い速度で閉じることで、吸気通路にEGRガスが大量に還流されることを防止して、燃焼悪化を抑制するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−36780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、減速直前の運転状態によっては減速開始時に既に吸気通路内に大量のEGRガスが滞留していることもある。しかし、上記特許文献1の技術は、減速時にスロットル開度を失火限界閉止速度よりも遅い速度で閉じることで吸気管圧力の急低下(吸気管負圧の急増加)を抑制してEGRガスの吸い込みを抑制する技術であり、減速開始時に既に吸気通路内に大量のEGRガスが滞留している場合には、筒内に流入するEGRガス量が過剰に多くなって失火が発生する可能性がある。また、減速後の再加速時まで吸気通路内にEGRガスが滞留している場合に対応することができず、再加速時に失火が発生する可能性もある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、EGRガスによる減速時及び再加速時の失火を防止することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、内燃機関の排出ガスの一部をEGRガスとして吸気通路へ還流させるEGR装置を備えた内燃機関の制御装置において、内燃機関の吸入空気量又はトルク(以下これらを「吸入空気量情報」と総称する)を検出又は算出する吸入空気量情報判定手段と、内燃機関の運転状態に基づいて正常燃焼可能(失火せずに燃焼可能)な吸入空気量情報の閾値(以下「正常燃焼閾値」という)を算出する正常燃焼閾値算出手段と、吸入空気量情報が正常燃焼閾値を下回らないようにスロットル開度を制御して失火を回避する失火回避制御を実行する失火回避制御手段とを備えた構成としたものである。
【0009】
内燃機関の運転状態に応じて筒内流入EGRガス量(筒内に流入するEGRガス量)が変化して正常燃焼閾値(正常燃焼可能な吸入空気量情報の閾値)が変化するため、内燃機関の運転状態に基づいて正常燃焼閾値を算出することができる。そして、吸入空気量情報が正常燃焼閾値を下回らないようにスロットル開度を制御して失火を回避する失火回避制御を実行することで、減速時や再加速時に拘らず、吸入空気量情報を正常燃焼閾値以上に維持することができ、EGRガスによる減速時及び再加速時の失火を防止することができる。
【0010】
この場合、請求項2のように、失火回避制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルクを制御するようにすると良い。このようにすれば、失火回避制御によるトルク増加分(吸入空気量の増加によるトルク増加分)を負荷トルク(例えばオルタネータの負荷トルク)の制御によるトルク減少分で打ち消して、失火回避制御によるトルク変化(トルク増加)を防止することができ、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0011】
また、請求項3のように、内燃機関の筒内に流入する筒内流入EGRガス量を推定又は検出する筒内流入EGRガス量判定手段を備え、正常燃焼閾値算出手段は、筒内流入EGRガス量に基づいて正常燃焼閾値を算出するようにしても良い。このようにすれば、筒内流入EGRガス量に応じて変化する正常燃焼閾値(正常燃焼可能な吸入空気量情報の閾値)を精度良く算出することができる。
【0012】
更に、請求項4のように、失火回避制御の際に吸入空気量情報が正常燃焼閾値よりも大きい側で正常燃焼閾値から所定範囲内に入るようにスロットル開度を制御するようにしても良い。このようにすれば、失火回避制御の際に吸入空気量が過剰に多くなることを防止して、燃費の悪化を防止することができる。
【0013】
また、内燃機関の減速時に燃料噴射を停止する燃料カット制御中は、燃費への影響を考慮する必要がないため、請求項5のように、内燃機関の減速時に燃料噴射を停止する燃料カット制御中にスロットル開度を開き側に制御してEGRガスの掃気を促進するEGRガス掃気制御を実行するようにしても良い。このようにすれば、燃料カット制御中に吸入空気量を増加させて吸気通路内に滞留するEGRガスを速やかに掃気することができる。
【0014】
この場合、請求項6のように、EGRガス掃気制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルクを制御するようにすると良い。このようにすれば、EGRガス掃気制御によるトルク増加分(ポンピングロスの低下によるトルク増加分)を負荷トルク(例えばオルタネータの負荷トルク)の制御によるトルク減少分で打ち消して、EGRガス掃気制御によるトルク変化(トルク増加)を防止することができ、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0015】
更に、請求項7のように、EGRガス掃気制御によるトルク変化を負荷トルクの制御で吸収できない場合にスロットル開度を減少させるようにしても良い。このようにすれば、EGRガス掃気制御によるトルク増加分を減少させることができて、EGRガス掃気制御によるトルク変化を負荷トルクの制御で吸収する(EGRガス掃気制御によるトルク増加分を負荷トルクの制御によるトルク減少分で打ち消す)ことが可能となり、EGRガス掃気制御によるトルク変化を確実に防止することができる。
【0016】
また、請求項8のように、燃料カット制御中に筒内流入EGRガス量が所定の閾値以下になったときにEGRガス掃気制御を終了するようにしても良い。このようにすれば、吸気通路内に滞留するEGRガスの掃気がほぼ完了して、筒内流入EGRガス量が所定の閾値以下になったときに、EGRガス掃気制御を終了することができ、EGRガス掃気制御が必要以上に長くなることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の実施例1における過給機付きエンジン制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】図2はEGRガスによる減速時や再加速時の失火を説明するタイムチャートである。
【図3】図3は実施例1の失火回避制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図4(a)は従来の減速時の吸入空気量の挙動を示すタイムチャートであり、図4(b)は実施例1の失火回避制御の実行例を示すタイムチャートである。
【図5】図5は筒内流入EGRガス流量の演算方法を説明するブロック図である。
【図6】図6はEGR弁モデルを説明する図である。
【図7】図7はEGRガス遅れモデルを説明するブロック図である。
【図8】図8は吸気管移流遅れモデルを説明する図である。
【図9】図9は実施例2の失火回避制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】図10は正常燃焼判定値Aと実行時間Bのマップの一例を概念的に示す図である。
【図11】図11(a)は従来の減速時の吸入空気量の挙動を示すタイムチャートであり、図11(b)は実施例2の失火回避制御の実行例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を過給機付きの内燃機関に適用して具体化した幾つかの実施例を説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例1を図1乃至図8に基づいて説明する。
まず、図1に基づいて過給機付きのエンジン制御システムの構成を概略的に説明する。
【0020】
内燃機関であるエンジン11の吸気管12(吸気通路)の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14(吸入空気量情報判定手段)が設けられている。一方、エンジン11の排気管15(排気通路)には、排出ガス中のCO,HC,NOx等を浄化する三元触媒等の触媒16が設置されている。
【0021】
このエンジン11には、吸入空気を過給する排気タービン駆動式の過給機17が搭載されている。この過給機17は、排気管15のうちの触媒16の上流側に排気タービン18が配置され、吸気管12のうちのエアフローメータ14の下流側にコンプレッサ19が配置されている。この過給機17は、排気タービン18とコンプレッサ19とが一体的に回転するように連結され、排出ガスの運動エネルギで排気タービン18を回転駆動することでコンプレッサ19を回転駆動して吸入空気を過給するようになっている。
【0022】
吸気管12のうちのコンプレッサ19の下流側には、モータ20によって開度調節されるスロットルバルブ21と、このスロットルバルブ21の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ22とが設けられている。
【0023】
更に、スロットルバルブ21の下流側には、吸入空気を冷却するインタークーラがサージタンク23(吸気通路)と一体的に設けられている。尚、サージタンク23やスロットルバルブ21の上流側にインタークーラを配置するようにしても良い。サージタンク23には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド24(吸気通路)が設けられ、各気筒毎に筒内噴射又は吸気ポート噴射を行う燃料噴射弁(図示せず)が取り付けられている。エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ(図示せず)が取り付けられ、各点火プラグの火花放電によって各気筒内の混合気に着火される。
【0024】
エンジン11の各気筒の排気口には排気マニホールド25が接続され、各気筒の排気マニホールド25の下流側の集合部が排気タービン18の上流側の排気管15に接続されている。また、排気タービン18の上流側と下流側とをバイパスさせる排気バイパス通路26が設けられ、この排気バイパス通路26に、排気バイパス通路26を開閉するウェイストゲートバルブ27が設けられている。
【0025】
このエンジン11には、排気管15から排出ガスの一部をEGRガスとして吸気管12へ還流させるLPL方式(低圧ループ方式)のEGR装置28が搭載されている。このEGR装置28は、排気管15のうちの触媒16の下流側と吸気管12のうちのコンプレッサ19の上流側との間にEGR配管29(EGR通路)が接続され、このEGR配管29に、EGRガスを冷却するEGRクーラ30と、EGRガス流量を調節するEGR弁31が設けられている。このEGR弁31は、モータ等のアクチュエータ(図示せず)によって開度が調整され、EGR弁31を開弁することで排気管15のうちの触媒16の下流側から吸気管12のうちのコンプレッサ19の上流側へEGRガスを還流させるようになっている。
【0026】
また、エンジン11には、吸気バルブ(図示せず)のバルブタイミング(開閉タイミング)を変化させる吸気側可変バルブタイミング機構32と、排気バルブ(図示せず)のバルブタイミングを変化させる排気側可変バルブタイミング機構33が設けられている。オルタネータ48(発電機)は、エンジン11の動力で回転駆動されて発電するようになっている。このオルタネータ48の発電制御電流(フィールド電流)をデューティ制御することで、オルタネータ48の負荷トルクを制御することができる。
【0027】
その他、エンジン11には、冷却水温を検出する冷却水温センサ34や、クランク軸(図示せず)が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ35等が設けられ、クランク角センサ35の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
【0028】
これら各種センサの出力は、電子制御ユニット(以下「ECU」と表記する)36に入力される。このECU36は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御用のプログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)等を制御する。
【0029】
その際、ECU36は、エンジン運転状態(例えばエンジン負荷とエンジン回転速度等)に応じて目標EGR率を算出し、この目標EGR率を実現するようにEGR弁31の開度を制御する。
【0030】
しかし、図2に示すように、EGR装置28を搭載したエンジン11は、減速時にスロットル開度を閉じ側に制御したときに、EGR弁31を閉弁するようにしても、EGR弁31の下流側のEGR配管29内や吸気管12内にEGRガスが滞留する(特にスロットルバルブ21の上流側の吸気通路にEGRガスを還流させるシステムでは、スロットルバルブ21の上流側の吸気通路内に大量のEGRガスが滞留する)ため、そのままでは減速時やその後の再加速時に筒内に流入するEGRガス量が過剰に多くなって燃焼状態が悪化して失火が発生し易くなるという問題がある。
【0031】
この対策として、本実施例1では、ECU36により後述する図3の失火回避制御ルーチンを実行することで、図4(b)に示すように、後述する推定方法(図5乃至図8参照)により推定した筒内流入EGRガス量(筒内に流入するEGRガス量)に基づいて正常燃焼可能(失火せずに燃焼可能)な吸入空気量の下限値である正常燃焼下限値(正常燃焼閾値)を算出し、吸入空気量が正常燃焼下限値を下回らないようにスロットル開度を制御して失火を回避する失火回避制御を実行すると共に、この失火回避制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルク(例えばオルタネータ48の負荷トルク)を制御する。
【0032】
更に、エンジン11の減速時に燃料噴射を停止する燃料カット制御中(F/C制御中)にスロットル開度を開き側(例えば全開)に制御してEGRガスの掃気を促進するEGRガス掃気制御を実行すると共に、このEGRガス掃気制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルク(例えばオルタネータ48の負荷トルク)を制御する。
【0033】
尚、筒内流入EGRガス量に代えて、筒内流入EGR率を用いるようにしても良い。
筒内流入EGR率=(筒内流入EGRガス量/筒内流入総ガス量)
ここで、筒内流入総ガス量=筒内流入新気量+筒内流入EGRガス量である。
【0034】
以下、本実施例1でECU36が実行する図3の失火回避制御ルーチンの処理内容を説明する。
【0035】
[失火回避制御]
図3に示す失火回避制御ルーチンは、ECU36の電源オン期間中(イグニッションスイッチのオン期間中)に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう失火回避制御手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、エンジン運転条件パラメータとして、例えば、エンジン回転速度、エンジン負荷(吸入空気量や吸気管圧力等)を読み込む。
【0036】
この後、ステップ102に進み、図示しない筒内流入EGRガス量推定ルーチンを実行することで、後述する推定方法(図5乃至図8参照)により筒内流入EGRガス量を推定する。このステップ102の処理が特許請求の範囲でいう筒内流入EGRガス量判定手段としての役割を果たす。
【0037】
この後、ステップ103に進み、筒内流入EGRガス量に基づいて正常燃焼下限値(正常燃焼可能な吸入空気量の下限値)をマップ又は数式等により算出する。この正常燃焼下限値のマップ又は数式等は、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、ECU36のROMに記憶されている。このステップ103の処理が特許請求の範囲でいう正常燃焼閾値算出手段としての役割を果たす。
【0038】
この後、ステップ104に進み、F/C制御中(燃料カット制御中)であるか否かを判定し、F/C制御中ではない(つまり燃料噴射中)であると判定された場合には、ステップ105に進み、吸入空気量と正常燃焼下限値との差分値が所定の閾値よりも小さいか否かを判定する。吸入空気量が正常燃焼下限値よりも小さくなると、失火が発生する可能性があるため、吸入空気量と正常燃焼下限値との差分値が閾値よりも小さいか否かを判定すれば、失火が発生するか否かを予測することができる。
【0039】
このステップ105で、吸入空気量と正常燃焼下限値との差分値が閾値よりも小さいと判定された場合には、ステップ106に進み、吸入空気量が正常燃焼下限値を下回らないようにスロットル開度を制御して失火を回避する失火回避制御を実行する。具体的には、吸入空気量が正常燃焼下限値よりも大きい側で正常燃焼下限値から所定範囲内に入るようにスロットル開度を制御する。これにより、吸入空気量を正常燃焼下限値以上に維持して、失火を防止する。
【0040】
この後、ステップ107に進み、失火回避制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルク(例えばオルタネータ48の負荷トルク)を制御する。これにより、失火回避制御によるトルク増加分(吸入空気量の増加によるトルク増加分)を負荷トルクの制御によるトルク減少分で打ち消して、失火回避制御によるトルク変化(トルク増加)を防止する。
【0041】
その後、上記ステップ105で、吸入空気量と正常燃焼下限値との差分値が閾値以上であると判定された場合には、失火回避制御及び負荷トルク制御を終了する。
【0042】
一方、上記ステップ104で、F/C制御中(燃料カット制御中)であると判定された場合には、ステップ108に進み、筒内流入EGRガス量が所定の閾値より多いか否かを判定し、筒内流入EGRガス量が閾値より多いと判定された場合には、ステップ109に進み、スロットル開度を開き側(例えば全開)に制御してEGRガスの掃気を促進するEGRガス掃気制御を実行する。これにより、吸入空気量を増加させて吸気管12内に滞留するEGRガスを速やかに掃気する。
【0043】
この後、ステップ110に進み、EGRガス掃気制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルク(例えばオルタネータ48の負荷トルク)を制御する。これにより、EGRガス掃気制御によるトルク増加分(ポンピングロスの低下によるトルク増加分)を負荷トルクの制御によるトルク減少分で打ち消して、EGRガス掃気制御によるトルク変化(トルク増加)を防止する。
【0044】
尚、EGRガス掃気制御によるトルク変化を負荷トルクの制御で吸収できない場合には、スロットル開度を減少させる。これにより、EGRガス掃気制御によるトルク増加分を減少させることができて、EGRガス掃気制御によるトルク変化を負荷トルクの制御で吸収する(EGRガス掃気制御によるトルク増加分を負荷トルクの制御によるトルク減少分で打ち消す)ことが可能となり、EGRガス掃気制御によるトルク変化を確実に防止することができる。
【0045】
その後、上記ステップ108で、筒内流入EGRガス量が閾値以下であると判定されたときに、EGRガス掃気制御及び負荷トルク制御を終了する。これにより、吸気管12内に滞留するEGRガスの掃気がほぼ完了して、筒内流入EGRガス量が閾値以下になったときに、EGRガス掃気制御を終了することができ、EGRガス掃気制御が必要以上に長くなることを防止することができる。
【0046】
[筒内流入EGRガス量推定]
次に、図5乃至図8を用いて筒内流入EGRガス量の推定方法を説明する。
本実施例のように、吸気管12のうちのコンプレッサ19の上流側(スロットルバルブ21の上流側の吸気通路)にEGRガスを還流させるLPL方式のEGR装置28を採用したシステムの場合には、ECU36により筒内流入EGRガス流量を次のようにして演算(推定)する。
【0047】
図5に示すように、筒内流入総ガス流量演算部37では、まず、吸気管12内を流れる気体がスロットルバルブ21を通過する挙動を模擬したスロットルモデル39を用いて、スロットル通過総ガス流量(スロットルバルブ21を通過する総ガス流量)を演算する。尚、スロットルモデル39として、例えば特許文献1(特開2008−101626号公報)に記載されたスロットルモデルを使用しても良い。
【0048】
この後、スロットルバルブ21を通過した気体がスロットルバルブ21の下流側の吸気通路(サージタンク23や吸気マニホールド24等)内に充填される挙動を模擬したインマニモデル40を用いて、スロットル通過総ガス流量と筒内流入総ガス流量の前回値とに基づいてインマニ圧力(スロットルバルブ21の下流側の吸気通路内の圧力)を演算する。尚、インマニモデル40として、例えば特許文献1(特開2008−101626号公報)に記載された吸気管モデルを使用しても良い。
【0049】
この後、スロットルバルブ21の下流側の吸気通路に充填された気体が筒内に吸入される挙動を模擬した吸気弁モデル41を用いて、インマニ圧力に基づいて筒内流入総ガス流量(=筒内流入新気流量+筒内流入EGRガス流量)を演算する。尚、吸気弁モデル41として、例えば特許文献1(特開2008−101626号公報)に記載された吸気弁モデルを使用しても良い。
【0050】
一方、筒内流入EGRガス流量演算部38では、まず、EGR配管29内を流れるEGRガスがEGR弁31を通過する挙動を模擬したEGR弁モデル42を用いて、EGR弁通過ガス流量(EGR弁31を通過するEGRガス流量)を演算する。
【0051】
図6に示すように、EGR弁モデル42は、EGR弁31の開度とスロットル通過総ガス流量とEGR弁通過ガス流量との関係を規定するマップにより構築され、このEGR弁通過ガス流量のマップを用いて、EGR弁31の開度とスロットル通過総ガス流量とに応じたEGR弁通過ガス流量を演算する。EGR弁通過ガス流量のマップは、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、ECU36のROMに記憶されている。
【0052】
或は、EGR弁モデル42を、EGR弁31の開度とEGR弁31の上流側の圧力Pin及び下流側の圧力Pout とEGR弁通過ガス流量Megr との関係を規定する物理式により構築するようにしても良い。
具体的には、次の絞りの式(オリフィスの式)でEGR弁モデル42を近似する。
【0053】
【数1】

【0054】
ここで、Cは流量係数で、AはEGR弁31の開度に応じて変化するEGR配管29の開口断面積である。また、Rは気体定数で、Tegr はEGR弁31の上流側のEGRガスの温度であり、Φ(Pout /Pin)は(Pout /Pin)を変数とする関数である。
【0055】
この場合、上記の絞りの式(オリフィスの式)を用いて、EGR弁31の開度とEGR弁31の上流側の圧力Pin及び下流側の圧力Pout とEGRガスの温度とに基づいてEGR弁通過ガス流量Megr を演算する。
【0056】
この後、EGR弁31を通過したEGRガスがスロットルバルブ21を通過して筒内に流入するまでの挙動を模擬したEGRガス遅れモデル43(図5参照)を用いて、EGR弁通過ガス流量の演算値に基づいて筒内流入EGRガス流量を演算する。
【0057】
図7に示すように、EGRガス遅れモデル43は、EGR弁31を通過したEGRガスがスロットルバルブ21の上流側の吸気通路(吸気管12のうちのコンプレッサ19の上流側)に流入する挙動を模擬した新気合流遅れモデル44と、スロットルバルブ21の上流側の吸気通路に流入したEGRガスがスロットルバルブ21を通過するまでの挙動を模擬した吸気管移流遅れモデル45と、スロットルバルブ21を通過したEGRガスがスロットルバルブ21の下流側の吸気通路(サージタンク23や吸気マニホールド24等)に充填される挙動を模擬したインマニ充填遅れモデル46と、スロットルバルブ21の下流側の吸気通路に充填されたEGRガスが吸気ポートを通過して筒内に流入するまでの挙動を模擬した吸気ポート移流遅れモデル47とから構成されている。
【0058】
これにより、EGRガスがスロットルバルブ21の上流側の吸気通路に流入する際の遅れと、スロットルバルブ21の上流側の吸気通路に流入したEGRガスがスロットルバルブ21を通過するまでの移流遅れと、スロットルバルブ21を通過したEGRガスがスロットルバルブ21の下流側の吸気通路に充填される際の充填遅れと、スロットルバルブ21の下流側の吸気通路に充填されたEGRガスが吸気ポートを通過して筒内に流入するまでの移流遅れを、筒内流入EGRガス流量の演算に反映させることができ、筒内流入EGRガス流量の推定精度を高めることができる。
【0059】
筒内流入EGRガス流量を演算する場合には、まず、新気合流遅れモデル44を用いて、EGR弁通過ガス流量Megr(a)に基づいてスロットルバルブ21の上流側の吸気通路に流入するEGRガス流量Megr(b)を演算する。
【0060】
新気合流遅れモデルは、下記(1)式で近似されている。
Megr(b)={K1 /(τ1 +1)}×Megr(a) ……(1)
上記(1)式の係数K1 と時定数τ1 は、それぞれEGR配管29(EGR弁31から吸気管12との合流部までの部分)の配管径と長さ、吸気管12の配管径等によって決まる値であり、予め試験データや設計データ等に基づいて算出される。
【0061】
この後、吸気管移流遅れモデル45を用いて、スロットルバルブ21の上流側の吸気通路に流入するEGRガス流量Megr(b)とスロットル通過総ガス流量Mthとに基づいてスロットルバルブ21を通過するEGRガス流量Megr(c)を演算する。
【0062】
図8に示すように、吸気管移流遅れモデル45は、スロットルバルブ21の上流側の吸気通路に流入したEGRガスがスロットルバルブ21を通過するまでの連続時間系の挙動を任意時間で離散化した行列(例えばサンプル時間16ms毎に離散化した32個の行列)により構築され、データを先入れ先出しのリスト構造で保持するキューを備えている。一般に、吸気管12内のEGRガスの移送速度は、ECU36の演算処理速度と比較して十分に遅いため、任意時間で離散化した行列により吸気管移流遅れモデル45を構築することができる。この吸気管移流遅れモデル45で用いる各種の係数は、それぞれ吸気管12(EGR配管29との合流部からスロットルバルブ21までの部分)の配管径と長さ等によって決まる値であり、予め試験データや設計データ等に基づいて算出される。
【0063】
この後、図7に示すように、インマニ充填遅れモデル46を用いて、スロットルバルブ21を通過するEGRガス流量Megr(c)に基づいてスロットルバルブ21の下流側の吸気通路(サージタンク23や吸気マニホールド24等)に充填されるEGRガス流量Megr(d)を演算する。
【0064】
インマニ充填遅れモデル46は、下記(2)式で近似されている。
Megr(d)={K2 /(τ2 +1)}×Megr(c) ……(2)
【0065】
上記(2)式の係数K2 とインマニ充填遅れ時定数τ2 は、それぞれスロットルバルブ21の下流側の吸気通路(吸気管12のうちのスロットルバルブ21の下流側の部分、サージタンク23、吸気マニホールド24等)の配管径と長さと容積等によって決まる値であり、予め試験データや設計データ等に基づいて算出される。尚、インマニモデル40でインマニ充填遅れ時定数を用いる場合には、インマニモデル40で用いたインマニ充填遅れ時定数をインマニ充填遅れモデル46で使用するようにしても良い。
【0066】
この後、吸気ポート移流遅れモデル47を用いて、スロットルバルブ21の下流側の吸気通路に充填されるEGRガス流量Megr(d)と筒内流入総ガス流量の前回値とに基づいて筒内流入EGRガス流量Megr(e)を演算する。
【0067】
吸気ポート移流遅れモデル47は、スロットルバルブ21の下流側の吸気通路に充填されたEGRガスが吸気ポートを通過して筒内に流入するまでの連続時間系の挙動を任意時間で離散化した行列により構築され、データを先入れ先出しのリスト構造で保持するキューを備えている。この吸気ポート移流遅れモデル47で用いる各種の係数は、それぞれ吸気ポートの配管径と長さ等によって決まる値であり、予め試験データや設計データ等に基づいて算出される。
【0068】
図4(a)に示す従来例のように、失火回避制御を実行しないシステムの場合、減速時(例えばアクセル開度の全閉時)にスロットル開度を閉じ側に制御したときに、吸入空気量が減少すると共に、吸気通路内にEGRガスが滞留するため、減速時や再加速時に吸入空気量が正常燃焼下限値(正常燃焼可能な吸入空気量の下限値)を下回って失火が発生する可能性がある。
【0069】
これに対して、図4(b)に示すように、本実施例1では、EGRガス流量の挙動を模擬したモデルを用いて筒内流入EGRガス量を推定して、この筒内流入EGRガス量に基づいて正常燃焼下限値を算出する。そして、減速時(例えばアクセル開度の全閉時)にスロットル開度を閉じ側に制御した後、吸入空気量と正常燃焼下限値との差分値が閾値よりも小さくなった時点t1 で、吸入空気量が正常燃焼下限値を下回らないようにスロットル開度を制御して失火を回避する失火回避制御を実行する。これにより、吸入空気量を正常燃焼下限値以上に維持することができ、EGRガスによる減速時の失火を防止することができる。
【0070】
更に、この失火回避制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルク(例えばオルタネータ48の負荷トルク)を制御する。これにより、失火回避制御によるトルク増加分(吸入空気量の増加によるトルク増加分)を負荷トルクの制御によるトルク減少分で打ち消して、失火回避制御によるトルク変化(トルク増加)を防止することができ、減速時のドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0071】
この後、F/C制御が開始された時点t2 で、F/C制御中にスロットル開度を開き側(例えば全開)に制御してEGRガスの掃気を促進するEGRガス掃気制御を実行する。これにより、F/C制御中に吸入空気量を増加させて吸気管12内に滞留するEGRガスを速やかに掃気することができる。
【0072】
更に、このEGRガス掃気制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルク(例えばオルタネータ48の負荷トルク)を制御する。これにより、EGRガス掃気制御によるトルク増加分(ポンピングロスの低下によるトルク増加分)を負荷トルクの制御によるトルク減少分で打ち消して、EGRガス掃気制御によるトルク変化(トルク増加)を防止することができ、F/C制御中のドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0073】
この後、アクセル開度が増加した再加速時にF/C制御が終了(燃料噴射が再開)された後、再び吸入空気量と正常燃焼下限値との差分値が閾値よりも小さくなった時点t3 で、吸入空気量が正常燃焼下限値を下回らないようにスロットル開度を制御して失火を回避する失火回避制御を実行する。これにより、吸入空気量を正常燃焼下限値以上に維持することができ、EGRガスによる再加速時の失火を防止することができる。
【0074】
更に、この失火回避制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルク(例えばオルタネータ48の負荷トルク)を制御する。これにより、失火回避制御によるトルク増加分(吸入空気量の増加によるトルク増加分)を負荷トルクの制御によるトルク減少分で打ち消して、失火回避制御によるトルク変化(トルク増加)を防止することができ、再加速時のドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0075】
また、本実施例1では、失火回避制御の際に吸入空気量が正常燃焼下限値よりも大きい側で正常燃焼下限値から所定範囲内に入るようにスロットル開度を制御するようにしたので、失火回避制御の際に吸入空気量が過剰に多くなることを防止して、燃費の悪化を防止することができる。
【0076】
尚、上記実施例1では、EGRガス流量の挙動を模擬したモデルを用いて筒内流入EGRガス量を演算(推定)するようにしたが、筒内流入EGRガス量の推定方法は、これに限定されず、適宜変更しても良く、例えば、吸気管圧力センサやエアフローメータの出力信号等に基づいて筒内流入EGRガス量を演算(推定)するようにしても良い。また、筒内流入EGRガス量の情報として、吸気管12内に残留するEGRガス量をセンサで検出するようにしても良い。
【実施例2】
【0077】
次に、図9乃至図11を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0078】
前記実施例1では、筒内流入EGRガス量に基づいて正常燃焼下限値を算出するようにしたが、本実施例2では、ECU36により後述する図9の失火回避制御ルーチンを実行することで、エンジン運転状態に基づいて正常燃焼判定値(正常燃焼閾値)を算出し、吸入空気量が正常燃焼判定値を下回らないようにスロットル開度を制御して失火を回避する失火回避制御を実行する。
【0079】
図9の失火回避制御ルーチンでは、まず、ステップ201で、減速要求が発生したときに減速要求を取得する。この後、ステップ202に進み、エンジン運転条件パラメータとして、例えば、エンジン回転速度、エンジン負荷(吸入空気量や吸気管圧力等)を読み込む。
【0080】
この後、ステップ203に進み、図10に示す正常燃焼判定値A及び実行時間Bのマップを参照して、減速開始時のエンジン運転状態(例えばエンジン回転速度とエンジン負荷)に応じた正常燃焼判定値Aと失火回避制御の実行時間Bを算出する。ここで、正常燃焼判定値Aは、例えば、正常燃焼下限値(正常燃焼可能な吸入空気量の下限値)よりも少し大きい値に設定される。また、失火回避制御の実行時間Bは、例えば、吸気管12内に滞留するEGRガスを掃気するのに必要な時間に設定される。図10のマップは、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、ECU36のROMに記憶されている。
【0081】
この後、ステップ204に進み、F/C制御中(燃料カット制御中)であるか否かを判定し、F/C制御中ではない(つまり燃料噴射中)であると判定された場合には、ステップ205に進み、吸入空気量が正常燃焼判定値Aよりも小さいか否かを判定する。吸入空気量が正常燃焼判定値Aよりも小さくなると、失火が発生する可能性があるため、吸入空気量が正常燃焼判定値Aよりも小さいか否かを判定すれば、失火が発生するか否かを予測することができる。
【0082】
このステップ205で、吸入空気量が正常燃焼判定値Aよりも小さいと判定された場合には、ステップ206に進み、吸入空気量が正常燃焼判定値A以上となるようにスロットル開度を制御して失火を回避する失火回避制御を減速開始から実行時間Bが経過するまで実行する。これにより、吸入空気量を正常燃焼判定値A以上に維持して、失火を防止する。
【0083】
この後、ステップ207に進み、失火回避制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルク(例えばオルタネータ48の負荷トルク)を制御する。
【0084】
一方、上記ステップ204で、F/C制御中(燃料カット制御中)であると判定された場合には、ステップ208に進み、スロットル開度を開き側(例えば全開)に制御してEGRガスの掃気を促進するEGRガス掃気制御を実行する。
【0085】
この後、ステップ209に進み、EGRガス掃気制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルク(例えばオルタネータ48の負荷トルク)を制御する。尚、EGRガス掃気制御によるトルク変化を負荷トルクの制御で吸収できない場合には、スロットル開度を減少させる。
【0086】
以上説明した本実施例2では、図11(b)に示すように、エンジン運転状態に基づいて正常燃焼判定値A(正常燃焼下限値よりも少し大きい値)を算出し、吸入空気量が正常燃焼判定値Aよりも小さいと判定されたときに、吸入空気量が正常燃焼判定値A以上となるようにスロットル開度を制御して失火を回避する失火回避制御を減速開始から実行時間B(吸気管12内に滞留するEGRガスを掃気するのに必要な時間)が経過するまで実行するようにしたので、減速時や再加速時に吸入空気量を正常燃焼判定値A以上に維持することができ、EGRガスによる減速時及び再加速時の失火を防止することができる。
【0087】
尚、上記各実施例1,2では、失火回避制御やEGRガス掃気制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルクを制御する際に、オルタネータ48の負荷トルクを制御するようにしたが、これに限定されず、例えば、エンジン11の補機(例えばエアコンのコンプレッサ、電動ファン等)を駆動して負荷トルクを制御するようにしたり、ABS(アンチロックブレーキシステム)により制動力を発生させて負荷トルクを制御するようにしても良い。また、複数気筒のうちの一部の気筒の運転を休止して負荷トルクを制御するようにしても良い。
【0088】
また、上記各実施例1,2では、吸入空気量が正常燃焼閾値(正常燃焼下限値や正常燃焼判定値)を下回らないようにスロットル開度を制御する失火回避制御を実行するようにしたが、これに限定されず、例えば、正常燃焼可能なエンジントルク(要求トルク又は推定トルク)の閾値である正常燃焼閾値(正常燃焼下限値や正常燃焼判定値)を算出し、エンジントルクが正常燃焼閾値を下回らないようにスロットル開度を制御する失火回避制御を実行するようにしても良い。
【0089】
また、上記各実施例1,2では、排気管15のうちの触媒16の下流側から吸気管12のうちのコンプレッサ19の上流側へEGRガスを還流させるLPL方式(低圧ループ方式)のEGR装置28を採用した過給機付きエンジンに本発明を適用したが、これに限定されず、例えば、排気管のうちの排気タービンの上流側から吸気管のうちのスロットルバルブの下流側へEGRガスを還流させるHPL方式(高圧ループ方式)のEGR装置を採用した過給機付きエンジンに本発明を適用しても良い。
【0090】
更に、本発明は、排気タービン駆動式の過給機(いわゆるターボチャージャ)を搭載したエンジンに限定されず、機械駆動式の過給機(いわゆるスーパーチャージャ)や電動式の過給機を搭載したエンジンに適用しても良い。
【0091】
その他、本発明は、過給機付きエンジンに限定されず、過給機を搭載していない自然吸気エンジン(NAエンジン)に適用しても良い。
【符号の説明】
【0092】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管(吸気通路)、14…エアフローメータ(吸入空気量情報判定手段)、15…排気管、17…過給機、21…スロットルバルブ、23…サージタンク、24…吸気マニホールド、28…EGR装置、29…EGR配管、31…EGR弁、36…ECU(正常燃焼閾値算出手段,失火回避制御手段,筒内流入EGRガス量判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排出ガスの一部をEGRガスとして吸気通路へ還流させるEGR装置を備えた内燃機関の制御装置において、
内燃機関の吸入空気量又はトルク(以下これらを「吸入空気量情報」と総称する)を検出又は算出する吸入空気量情報判定手段と、
内燃機関の運転状態に基づいて正常燃焼可能な吸入空気量情報の閾値(以下「正常燃焼閾値」という)を算出する正常燃焼閾値算出手段と、
前記吸入空気量情報が前記正常燃焼閾値を下回らないようにスロットル開度を制御して失火を回避する失火回避制御を実行する失火回避制御手段と
を備えていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記失火回避制御手段は、前記失火回避制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルクを制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
内燃機関の筒内に流入する筒内流入EGRガス量を推定又は検出する筒内流入EGRガス量判定手段を備え、
前記正常燃焼閾値算出手段は、前記筒内流入EGRガス量に基づいて前記正常燃焼閾値を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記失火回避制御手段は、前記失火回避制御の際に前記吸入空気量情報が前記正常燃焼閾値よりも大きい側で前記正常燃焼閾値から所定範囲内に入るようにスロットル開度を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記失火回避制御手段は、内燃機関の減速時に燃料噴射を停止する燃料カット制御中にスロットル開度を開き側に制御してEGRガスの掃気を促進するEGRガス掃気制御を実行することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記失火回避制御手段は、前記EGRガス掃気制御によるトルク変化を吸収するように負荷トルクを制御することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記失火回避制御手段は、前記EGRガス掃気制御によるトルク変化を前記負荷トルクの制御で吸収できない場合にスロットル開度を減少させることを特徴とする請求項6に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
内燃機関の筒内に流入する筒内流入EGRガス量を推定又は検出する筒内流入EGRガス量判定手段を備え、
前記失火回避制御手段は、前記燃料カット制御中に前記筒内流入EGRガス量が所定の閾値以下になったときに前記EGRガス掃気制御を終了することを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−246850(P2012−246850A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119730(P2011−119730)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】