説明

制駆動力制御装置

【課題】車両発進時に常に車輪のスリップ防止のための駆動力制御が行えるような制駆動力制御装置を提供する。
【解決手段】制動中、車両が停止する直前に、前輪FR、FLと後輪RR、RLの制動力配分を変更して後輪RR、RLの制動力配分を増加させ、後輪RR、RLにスリップを発生させ、そのスリップ率Sを求めることにより、後輪RR、RLの制動力Fとスリップ率Sの関係を求める。そして、その関係に基づき、車両が停止するであろう場所の路面摩擦係数μに対応したF−S線図を求めると共に、F−S線図から駆動力伝達許容値を求める。これにより、走行中の道路の路面摩擦係数μに対応した駆動力伝達許容値を求めることが可能となる。この駆動力伝達許容値に基づいて、後輪RR、RLに発生させる駆動力の上限値を規定し、駆動力伝達許容値と対応する駆動力を超える駆動力を発生させないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両発進時における車輪のスリップを抑制することができる制駆動力制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、アンチスキッド制御手段と駆動力制御手段を備えた制駆動力制御装置において、駆動力制御手段を備えることが提案されている。この制駆動力制御装置では、アンチスキッド制御手段にてアンチスキッド制御を実行しているときの車両状態に基づいて路面摩擦係数μを検出すると共に、検出した路面摩擦係数μを記憶装置に記憶しておき、車両が停止してから再度発進する際に、駆動力制御手段にて、記憶装置に記憶しておいた路面摩擦係数μの大きさに応じて駆動力制御手段で実行する駆動力制御における駆動力目標値を制限する。これにより、路面摩擦係数μに応じた駆動力目標値を設定でき、車輪のスリップを防止することが可能となる。
【特許文献1】特開2002−211377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の制駆動力制御装置では、車両発進時における車輪のスリップ防止のための駆動力制御が路面摩擦係数μを検出したときにのみ行われるため、路面摩擦係数μが検出されていないときには行われない。つまり、当該制御が行われる場合と行われない場合がある。そして、当該制御が行われるか否かが車両発進前に行った制動時にアンチスキッド制御が実行されたか否かによって決まるため、路面状態やドライバの意思とは直接関係なく決まることになる。このため、ドライバは車両発進時に車輪のスリップ防止のための駆動力制御が行われるか否か予測できず、当該制御が行われるつもりで発進したものの行われなかったという状況が発生し得る。これでは、ドライバに対して反って不安感等を与え兼ねず、車両の安定性に悪影響を与える可能性がある。
【0004】
本発明は上記点に鑑みて、車両発進時に常に車輪のスリップ防止のための駆動力制御が行えるような制駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、制動力制御手段(40)を、前輪(FR、FL)と後輪(RR、RL)に対して制動力を発生させている制動中に、前輪と後輪のトータルの制動力が変化しないようにしながら前輪と後輪の制動力配分を一方の車輪に関しては増加させ、他方の車輪に関しては減少させるという制動力配分の変更を行う制動力配分変更手段(130)と、制動力配分変更手段にて前輪と後輪のうち制動力配分を増加させた側の車輪における制動力(F)とスリップ率(S)の関係を求める制動力−スリップ率検出手段(140)と、制動力−スリップ率検出手段で求めた制動力とスリップ率の関係から、路面摩擦係数に対応する駆動力伝達許容値を求める駆動力伝達許容値算出手段(150)と、駆動力伝達許容値算出手段で求めた駆動力伝達許容値を駆動力制御手段に伝える出力手段(170)と、を有した構成としている。そして、駆動力制御手段(20)を、出力手段が伝えた駆動力伝達許容値に基づいて、アクセル操作量に対応した駆動力を制限した駆動力制御目標値を算出する駆動力制御目標値算出手段(250)と、駆動力制御目標値算出手段で算出した駆動力制御目標値に相当する駆動力を発生させる駆動力出力手段(260)と、を有していることを特徴としている。
【0006】
このように、制動中、車両が停止する直前に、前輪と後輪の制動力配分を変更して前輪または後輪の制動力配分を増加させることでその車輪にスリップを発生させ、そのスリップ率を求めることにより、制動力とスリップ率の関係を求める。そして、その関係に基づき、車両が停止するであろう場所の路面摩擦係数μに対応した制動力とスリップ率の関係を示す線図を求め、この線図から駆動力伝達許容値を求めるようにしている。このため、走行中の道路の路面摩擦係数μに対応した駆動力伝達許容値を求めることが可能となる。このような手法によれば、車両が停止するたびに駆動力伝達許容値が求められることになり、この駆動力伝達許容値を用いて駆動力を制限することで、車両発進時に必ず加速スリップを防止するための駆動力制御を実行できる。
【0007】
例えば、請求項2に示すように、駆動力制御手段に備えられた駆動力制御目標値算出手段にて、出力手段が伝えた駆動力伝達許容値に基づいて駆動力の上限値を設定し、アクセル操作量に対応した駆動力を上限値以下に制限した駆動力制御目標値を算出することができる。この場合、請求項5に示すように、駆動力制御手段に備えられた駆動力制御目標値算出手段は、出力手段が伝えた駆動力伝達許容値に基づいて駆動力の上限値とアクセル操作量に対応した駆動力のいずれか低い方を駆動力制御目標値とすることができる。
【0008】
また、請求項3に示すように、制動力制御手段は、車速(V)が第1しきい値(V0)未満である場合に、制動力配分変更手段による制動力配分の変更を行い、制動力−スリップ率検出手段にて、制動力とスリップ率の関係を求めると好ましい。
【0009】
このようにすれば、例えば車速が第1しきい値未満のまま停止しない状態で車両が走行しているような場合に、駆動力伝達許容値が複数回求められたとしても、真に車両が停止したときの直前に求められた駆動力伝達許容値のみが駆動力制御に用いられるようにすることができる。
【0010】
請求項4に記載の発明では、駆動力制御手段は、制動力制御手段に備えられた出力手段が出力した駆動力伝達許容値を読み込むと共に、該読み込みが完了したことを制動力制御手段に伝える読込手段(230)を有し、制動力制御手段は、駆動力制御手段に備えられた読込手段から、読み込みが完了したことが伝えられたか否かの判定を行う判定手段(120)を有し、該判定手段にて肯定判定された場合に、制動力配分変更手段による制動力配分の変更を行い、制動力−スリップ率検出手段にて、制動力とスリップ率の関係を求めることを特徴としている。
【0011】
このようにすれば、駆動力伝達許容値が新たに設定されていなくて、新たに駆動力伝達許容値を設定する必要があるときに、制動力とスリップ率の関係を求めることができ、その関係に基づいて駆動力伝達許容値を求めることができる。
【0012】
請求項6に記載の発明では、制動力配分変更手段は、前輪の制動力配分を減少させ、後輪の制動力配分を増加させることにより前輪と後輪の制動力配分を変更することを特徴としている。
【0013】
車両の重量配分の関係を考慮すると、制動力−スリップ率の関係を示す線図におけるより高い位置、つまり駆動力上限値近辺まで調べるためには、後輪の制動力配分を増加させて、後輪の場所での路面摩擦係数μに応じた制動力−スリップ率の関係を示す線図を求める方が好ましい。このため、前輪の制動力配分を減少させ、後輪の制動力配分を増加させることにより前輪と後輪の制動力配分を変更すると良い。
【0014】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における制駆動力制御を実現する制駆動力制御装置が搭載されたシステム全体の概略構成を示した図である。ここでは、エンジン1が前方に搭載され、後輪RR、RL側を駆動輪とするFR車両に対して本発明の一実施形態となる制駆動力制御装置を適用した場合について説明するが、前輪FR、FL側を駆動輪とするFF車両等、他の形態の車両についても同様に適用可能である。
【0017】
図1に示されるように、FR車両の駆動系は、エンジン1、トランスミッション2、プロペラシャフト3、デファレンシャル4およびドライブシャフト5にて構成され、これらを通じて駆動輪となる後輪RR、RLに駆動力が付与されるようになっている。具体的には、アクセルペダル6の操作量に基づいて発生させられたエンジン出力(エンジントルク)がトランスミッション2に伝えられ、トランスミッション2で設定されたギア位置に応じたギア比で変換されたのち、プロペラシャフト3に駆動力が伝達される。そして、プロペラシャフト3に対し、デファレンシャル4を介して接続されたドライブシャフト5を通じて、後輪RR、RLに駆動力を付与する。
【0018】
また、制動系は、各車輪FR〜RLそれぞれに対して備えられたブレーキ制御用アクチュエータ10FR、10FL、10RR、10RLにて構成され、このブレーキ制御用アクチュエータ10FR〜10RLを制御することにより各車輪FR〜RLに制動力が付与されるようになっている。具体的には、ブレーキ制御用アクチュエータ10FR〜10RLは、ホイールシリンダ(以下、W/Cという)11FR、11FL、11RR、11RLを自動加圧できるブレーキシステムとして構成される。このブレーキ制御用アクチュエータ10FR〜10RLとしては、電気的にW/C圧を発生させるブレーキバイワイヤなどの電動ブレーキシステムと油圧によりW/C圧を発生させる油圧ブレーキシステムのいずれも採用できるが、いずれも公知のものであるので、ここではブレーキ制御用アクチュエータ10FR〜10RLの具体的な構造については省略する。ただし、以下の説明では、ブレーキ制御用アクチュエータ10FR〜10RLが電動ブレーキシステムで構成されている場合を例に挙げて説明を行う。
【0019】
このようなブレーキ制御用アクチュエータ10FR〜10RLでは、図示しない電動モータに対して流す電流の電流値を示す指示電流値を変更することにより、W/C11FR〜11RLのうち制御対象輪と対応するものを加圧したり、減圧したりすることにより、キャリパ12FR、12FL、12RR、12RLによるディスクロータ13FR、13FL、13RR、13RLの挟持力が調整されることで、各車輪FR〜RLに発生させられる制動力が制御できるようになっている。
【0020】
そして、本システムでは、駆動系を制御するためのエンジンコントローラ(以下、エンジンECUという)20やトランスミッションコントローラ(以下、T/M−ECUという)30および制動系を制御するためのブレーキコントローラ(以下、ブレーキECUという)40が備えられている。
【0021】
エンジンECU20は、駆動力制御手段に相当するもので、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従った各種演算や処理を実行することでエンジン出力(エンジントルク)を制御し、後輪RR、RLに発生させられる駆動力を制御する。例えば、エンジンECU20は、アクセルペダル6の操作が行われているか否かを示すアクセルペダルスイッチ6aの検出信号を入力し、この検出信号に基づいて加速中であるか否かの判定を行ったり、エンジン出力を演算したりする。そして、このエンジンECU20からエンジン1に対して制御信号を出力することにより、燃料噴射量の調整などを行い、エンジン出力を制御する。
【0022】
なお、エンジン出力の演算手法に関しては、エンジンECU20で従来より一般的に行われているアクセルペダル6の操作量に基づくスロットルバルブの開度(スロットル開度)、エンジン回転数やエンジントルク、燃料噴射量等の演算と同様の手法により行われているが、本実施形態では、車両発進時に発生させられる駆動力の上限値として駆動力伝達許容値を規定し、これに基づいてエンジン出力が演算されるようになっている。このエンジン出力の求め方自体は従来から周知なものであるため、以下の説明では従来と異なる点についてのみ説明し、同様の部分に関しては説明を省略する。
【0023】
T/M−ECU30は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従った各種演算や処理を実行することでトランスミッション2のギア位置の選択等を行う。T/M−ECU8は、エンジンECU20と情報交換を行っており、トランスミッション2のギア位置をエンジンECU20に伝えている。このため、上述したエンジンECU20では、アクセルペダル6の操作量に加えて、このT/M−ECU30から伝えられた情報に示されたトランスミッション2のギア位置を考慮に入れて、エンジン出力を演算する。
【0024】
ブレーキECU40は、制動力制御手段に相当するもので、CPU、ROM、RAM、I/O、カウンタなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従った各種演算や処理を実行することで、ブレーキペダル7の操作量(ストローク量もしくは踏力)に応じた制動力を各車輪FR〜RLに対して発生させたり、本発明でいう制駆動力制御を行うためのスリップ率の演算や駆動力伝達許容値推定等を行うものである。例えば、ブレーキECU40は、ブレーキペダル7の操作量を示すブレーキ操作量センサ(例えば、ストロークセンサや踏力センサ)7aの検出信号やブレーキペダル7の操作が行われているか否かを示すブレーキペダルスイッチ7aの検出信号を入力し、これらの検出信号に基づいてブレーキ操作量の演算や制動中であるか否かの判定を行ったり、各車輪FR〜RLに備えられた車輪速度センサ8FR、8FL、8RR、8RLからの検出信号を受け取り、各車輪速度を求めると共に、求めた各車輪速度に基づいて推定車体速度(以下、単に車速という)を演算したり、車速と各車輪速度の偏差として表されるスリップ率を演算したりする。そして、ブレーキECU40からブレーキ制御用アクチュエータ10FR〜10RLに対して制御信号を出力することにより、各W/C11FR〜11RLに発生させられるW/C圧を制御し、各車輪FR〜RLに発生させられる制動力を制御する。
【0025】
このようにして、制駆動力制御を実現する制駆動力制御装置が備えられたシステムが構成されている。続いて、本実施形態の制駆動力制御装置が行う制駆動力制御について、図2〜図5を参照して説明する。
【0026】
図2は、本実施形態の制駆動力制御装置におけるブレーキECU40が実行する駆動力伝達許容値設定処理のフローチャートである。この図に示される処理は、例えば図示しないイグニッションスイッチがオンされた場合において、所定の演算周期ごとに実行されるものである。
【0027】
まず、ステップ100およびステップ110では、車両発進時における車輪のスリップ防止のための駆動力制御を実行するタイミングであるか否かの判定を行う。つまり、車両発進時における車輪のスリップ防止のための駆動力制御は、車両が一旦停止した後、再度発進するときに行われる。このため、車両が停止した場所の路面状況に基づいて駆動力制御を行うのが好ましい。したがって、車両が停止するであろう場所とほぼ同じ路面状況を検出できるように、制動中であり、かつ、車速Vが停止に近い程遅い値になったときに、駆動力伝達許容値が設定されるようにしている。
【0028】
具体的には、ステップ100で制動中であるか否かを判定し、ステップ110で車速Vが予めブレーキECU40のROM等に記憶しておいた第1しきい値V0未満となっているか否かを判定する。そして、これら各ステップのいずれか一方でも否定判定されれば、駆動力伝達許容値を設定する条件を満たさないものとしてそのまま処理を終了し、これら各ステップ共に肯定判定されれば、ステップ120に進む。
【0029】
ステップ120では、ブレーキECU40内に備えられたカウンタのカウント値が1になっているか否かを判定する。カウンタは、駆動力伝達許容値が新たに設定されると1に設定され、設定された駆動力伝達許容値がエンジンECU20に伝えられて、エンジンECU20で読み込まれると0とされるようになっている。駆動力伝達許容値が新たに設定されていなくてカウント値が0になっていれば、新たに駆動力伝達許容値を設定する必要があり、既に設定されていてカウント値が1になっていれば、新たに駆動力許容値を設定する必要はない。このため、ステップ120で否定判定された場合のみステップ130に進み、肯定判定された場合にはそのまま処理を終了する。
【0030】
そして、ステップ130で制動力前後配分の変更を行い、ステップ140で配分増加を行った制御対象輪の制動力Fとスリップ率Sを検出し、それに基づいてステップ150で駆動力伝達許容値を算出する。以下に、これらの各処理の概略について説明する。
【0031】
図3は、横軸を前輪制動力とし、縦軸を後輪制動力として、理想制動力配分線図と等G線図およびリアロック線図の関係を記載した図である。また、図4は、駆動輪となる後輪RR、RLのスリップ率Sと制動力Fとの関係を示したF−S線図である。
【0032】
例えばドライバがブレーキペダル7を踏み込んだことにより、前輪FR、FLと後輪RR、RLの制動力配分が図3の(1)に示す理想制動力配分に近い状態とされ、0.4Gの減速度が発生させられている状況を想定してみる。このような状況では、等G線図に示される線上において前輪FR、FLと後輪RR、RLの制動力配分を変化させたとしても、基本的に同じ減速度を発生させることができるため、ドライバにあまり違和感を与えることがない。
【0033】
このため、車速Vが第1しきい値V0未満になったときに、前輪FR、FLと後輪RR、RLの制動力配分を等G線図に沿って図3の(1)に示す状態から(2)に示す状態に変化させる。具体的には、制動力配分を変更する前の状態と比べて、駆動輪となる後輪RR、RLの制動力配分を増加、従動輪となる前輪FR、FLの制動力配分を減少させる。このとき、等G線図上において制動力配分を変更しているだけであるため、前輪FR、FLと後輪RR、RLのトータル制動力に変更はないため、上述したようにドライバに対して違和感を与えないようにできる。
【0034】
そして、このように前輪FR、FLと後輪RR、RLの制動力配分を変化させながら、制動力配分が増加された後輪RR、RLに関して、スリップ率Sと制動力Fの関係を調べる。具体的には、車輪速度センサ8FR〜8RLからの検出信号に基づいて各車輪速度を求めると共に、求めた各車輪速度に基づいて車速を演算し、車速と各車輪速度の偏差((車速−車輪速度)/車速)を演算することでスリップ率Sを求める。後輪RR、RLの制動力Fに関しては、ブレーキECU40において、制動力配分の調整を行うために発生させるべき制動力Fが求められているため、これを利用する。
【0035】
これにより、例えば図4に示すようなF−S線図が求められる。すなわち、前輪FR、FLと後輪RR、RLの制動力配分を変化させたときのスリップ率Sと制動力Fの関係は、路面摩擦係数μごとに記憶させておいたF−S線図のマップ(若しくは関数式)のいずれかとマッチングするため、マッチングしたF−S線図を抽出することにより、そのときの路面摩擦係数μに対応したF−S線図を得ることができる。
【0036】
そして、このようにしてF−S線図が求められると、F−S線図から後輪RR、RLの限界制動力を求め、限界制動力そのもの、または、スリップ率Sが予め決められた一定範囲内となるときの後輪RR、RLの制動力を駆動力伝達許容値とする。F−S線図のピーク値が限界制動力であるとした場合、例えば、スリップ率Sが10〜30%の範囲内のときに限界制動力となり、スリップ率Sが10〜30%の範囲のときの後輪RR、RLの制動力はその限界制動力とほぼ変わらない値となる。このため、限界制動力そのものとスリップ率Sが予め決められた一定範囲内となるときの後輪RR、RLの制動力のいずれを伝達許容駆動力としても、限界制動力に近い値に伝達許容駆動力を設定することができる。
【0037】
駆動力伝達許容値は、駆動輪となる後輪RR、RLに発生させたとしても加速スリップが発生しない駆動力のうち最も大きな駆動力を示したものであり、走行中の道路の路面摩擦係数μに応じて異なった値となる。上記のように求めたF−S線図が走行中の道路の路面摩擦係数μに対応したものであるため、F−S線図から求められた限界制動力は、駆動輪となる後輪RR、RLに発生させたとしても加速スリップが発生しない限界駆動力と一致する。したがって、このようにして駆動力伝達許容値を求めることにより、走行中の道路の路面摩擦係数μに対応した駆動力伝達許容値を求めることが可能となる。
【0038】
なお、ここでは路面摩擦係数μが0.8を想定して前輪FR、FLと後輪RR、RLの制動力配分を変更させる例を挙げたが、後輪RR、RLの制動力を増加させたときの制動力限界がスリップ率Sに応じて変動することが分かっているため、スリップ率Sと制動力Fの関係がF−S線図の一部でも求められれば、それ以上制動力配分の変更を行わなくても限界制動力を推定することは可能である。このため、路面摩擦係数μがより低い値を想定して制動力配分の変更を行い、リアロック線図以上に後輪RR、RLの制動力配分が大きくならないようにすることで、後輪RR、RLのスリップを防止することも可能である。ただし、本実施形態の場合、例えば車速Vが第1しきい値V0未満にならないと、駆動力伝達許容値の演算を行わないため、第1しきい値V0を後輪RR、RLにスリップが発生しても問題ない程度の値にしておけば、たとえスリップが発生したとしてもそれによる車両姿勢の不安定化などの問題はない。
【0039】
このようにして、駆動力伝達許容値を算出すると、ステップ160に進み、元々メモリ(例えば、ブレーキECU40のRAM等)内に記憶してあった駆動力伝達許容値を今回の演算周期のときに算出した駆動力伝達許容値に更新したのち、ステップ170に進む。そして、ステップ170でメモリ内に記憶した駆動力伝達許容値をエンジンECU20に出力する。
【0040】
その後、ステップ180で車両が停止したか否かを車速Vが0になっているか否かに基づいて求め、車両が停止したときにステップ190に進んでカウンタを1にセットし、停止する直前まではカウンタを1にセットしないままにする。このようにすることで、例えば車速Vが第1しきい値V0未満のまま停止しない状態で車両が走行しているような場合に、駆動力伝達許容値が複数回求められたとしても、真に車両が停止したときの直前に求められた駆動力伝達許容値のみが駆動力制御に用いられるようにすることができる。以上のようにして、ブレーキECU40で行われる駆動力伝達許容値設定処理が完了する。
【0041】
続いて、上記のように設定された駆動力伝達許容値を用いて、エンジンECU20が実行する駆動力制御目標値設定処理について説明する。図5は、エンジンECU20が実行する駆動力制御目標値設定処理の詳細を示したフローチャートである。この図に示される処理は、例えば図示しないイグニッションスイッチがオンされた場合において、所定の演算周期ごとに実行されるものである。
【0042】
まず、ステップ200およびステップ210では、車両発進時における車輪のスリップ防止のための駆動力伝達許容値を必要とするタイミングであるか否かの判定を行う。つまり、車両発進時にのみ車輪のスリップ防止のための駆動力伝達許容値が必要となり、それ以外のタイミングでは必要にならない。このため、車両が発進し始めのときにのみ、駆動力伝達許容値の読み込みが行われるようにしている。
【0043】
具体的には、ステップ200で車両が加速中であるか否かを判定し、ステップ210で車速Vが第2しきい値V1未満であるか否かを判定している。車両が加速中であるか否かについては、例えば、アクセルペダルスイッチ6aの検出信号に基づいて行われ、車速Vに関しては、各車輪FR〜RLに備えられた車輪速度センサ8FR〜8RLからの検出信号に基づいて求められる。そして、これら各ステップのいずれか一方でも否定判定されれば、駆動力伝達許容値を読み込む条件を満たさないものとしてステップ250に進み、これら各ステップ共に肯定判定されればステップ220に進む。
【0044】
ステップ220では、カウンタのカウント値が0であるか否かを判定する。すなわち、上述した図2のステップ190においてカウンタのカウント値が1とされたときに、車両が停止する直前の駆動伝達許容値が記憶されているため、カウント値が0であった場合には駆動力伝達許容値を読み込む必要がなく、カウント値が1であった場合にのみ駆動力伝達許容値を読み込む必要がある。このため、このステップで肯定判定された場合にはステップ250に進み、否定判定された場合にステップ230に進んで駆動力伝達許容値の読込みを行う。その後、ステップ240に進んで駆動力伝達許容値の読込みが完了したことを示すべく、カウンタのカウント値を0にするという指令信号をブレーキECU40に対して出力し、ステップ250に進む。
【0045】
ステップ250では、駆動力制御目標値の演算を行う。具体的には、駆動力制御目標値として発生させるべきエンジン出力(エンジントルク)を求める。エンジン出力の演算手法に関しては、上述したように、エンジンECU20で従来より一般的に行われているアクセルペダル6の操作量に基づくスロットルバルブの開度(スロットル開度)、エンジン回転数やエンジントルク、燃料噴射量等の演算と同様の手法により行われている。そして、本実施形態では、ステップ230で読み込んだ駆動力伝達許容値が規定されているため、これを発生させられる車両発進時に発生させられる駆動力の上限値として用いる。
【0046】
すなわち、F−S線図から求めた後輪RR、RLの限界制動力、または、スリップ率Sが予め決められた一定範囲内となるときの後輪RR、RLの制動力が例えばTb(N・m)で表され、それに対応する駆動トルクがTDで表されたとすると、これらはTb(N・m)=TDとなる。そして、この駆動トルクを次式に基づいてエンジントルクに換算する。
【0047】
(数1)
D/G×K=TE
ただし、Gはギア比、Kはギア効率等の様々な要因を考慮したときの係数であり、TEはエンジントルクである。
【0048】
したがって、駆動力伝達許容値をエンジントルクに換算し、それをエンジン出力の上限値として、アクセルペダル6の操作量に基づいて従来の手法により求めたエンジン出力に制限を掛け、駆動力制御目標値を求める。具体的には、次式に基づいて駆動力制御目標値を求めている。なお、次式において、TEAはアクセルペダル6の操作量に基づいて従来の手法により求めたエンジン出力、TEは駆動力伝達許容値をエンジントルクに換算したときの値であり、MIN(A,B)とはAとBのうちいずれか低いほうの値を採用するという意味である。
【0049】
(数2)
駆動力制御目標値=MIN(TEA、TE
そして、駆動力制御目標値を求めた後、ステップ260に進み、駆動力制御目標値をエンジン1に対して出力する。これにより、エンジン1のスロットル開度等が調整され、エンジン出力が駆動力制御目標値となるように制御される。このようにして、駆動力制御目標値設定処理が完了する。
【0050】
以上説明した本実施形態の制駆動力制御装置によれば、制動中、車両が停止する直前に、前輪FR、FLと後輪RR、RLの制動力配分を変更して後輪RR、RLの制動力配分を増加させ、後輪RR、RLにスリップを発生させ、そのスリップ率Sを求めることにより、後輪RR、RLの制動力Fとスリップ率Sの関係を求める。そして、その関係に基づき、車両が停止するであろう場所の路面摩擦係数μに対応したF−S線図を求めると共に、F−S線図から駆動力伝達許容値を求めるようにしている。このため、走行中の道路の路面摩擦係数μに対応した駆動力伝達許容値を求めることが可能となる。
【0051】
このため、この駆動力伝達許容値に基づいて、後輪RR、RLに発生させる駆動力の上限値を規定し、駆動力伝達許容値と対応する駆動力を超える駆動力を発生させないようにすることにより、後輪RR、RLの加速スリップを防止することが可能となる。そして、このような手法によれば、車両が停止するたびに駆動力伝達許容値が求められることになり、車両発進時に必ず加速スリップを防止するための駆動力制御を実行できる。
【0052】
図6は、従来の手法において、アンチスキッド制御が実行されなかった場合の駆動力や車輪速度の変化を示したタイミングチャート、図7は、本実施形態の駆動力制御を行った場合の駆動力や車輪速度の変化を示したタイミングチャートである。
【0053】
図6に示されるように、従来の手法によれば、アンチスキッド制御が実行されなかった場合には、車両発進時に加速スリップを防止するための駆動力制御が実行されないことになるため、発進した直後はドライバによるアクセルペダル6の操作に対応した要求駆動力(ドライバ要求値)通りの駆動力を発生させることになる。このため、加速スリップが発生し、駆動輪(後輪RR、RL)の車輪速度が従動輪(前輪FR、FL)の車輪速度より大きくなる。これにより、例えばトラクション制御が実行されることで、初めてドライバ要求値に対して駆動力制御目標値が小さく設定される。このため、発進初期の過大な加速スリップのために路面状態を悪化させたり、駆動力が大きく落ち込むことによる発進不能もしくは車両不安定化を招く。
【0054】
これに対して、図7に示されるように、本実施形態の駆動力制御を行えば、車両発進前に必ず路面摩擦係数μに応じた駆動力伝達許容値が求められるため、ドライバがどのようにアクセルペダル6を操作したとしても、駆動力伝達許容値を上限として駆動力が制限されることになるため、発進初期から駆動力伝達許容値に応じた駆動力目標値が設定される。したがって、過大な加速スリップが発生することを防止でき、加速スリップによる路面状態の悪化等を防止することが可能となる。
【0055】
また、このように車両発進時に必ず加速スリップを防止するための駆動力制御を実行できるため、ドライバが車両発進時に車輪のスリップ防止のための駆動力制御が行われるか否か予測する必要もなく、当該制御が行われるつもりで発進したものの行われなかったという状況が発生することもない。したがって、ドライバに対して制動力制御が実行されないことによる不安感等を与えることも防止でき、それに起因して車両の安定性に悪影響を与えることも防止できる。
【0056】
(他の実施形態)
(1)上記実施形態では、駆動輪である後輪RR、RLの制動力配分を増加させることにより、後輪RR、RLに関するF−S線図を求めるようにしている。つまり、後輪RR、RLの場所での路面摩擦係数μに応じたF−S線図を求めている。しかしながら、これは単なる一例であり、前輪FR、FLの制動力配分を増加させ、前輪FR、FLに関するF−S線図、前輪FR、FLの場所での路面摩擦係数μに応じたF−S線図を求めても良い。このようにした場合、駆動輪である後輪RR、RLからホイールベース分離れた位置の路面摩擦係数μに応じたF−S線図を求めることになるが、ほとんどの場合路面の状態は数m程度では変わらないため、問題ない。
【0057】
ただし、車両の重量配分の関係から、図3、図4に示すF−S線図の関係におけるより高い位置、つまり駆動力上限値近辺まで調べるためには、後輪RR、RLの制動力配分を増加させて、後輪RR、RLの場所での路面摩擦係数μに応じたF−S線図を求める方が好ましい。勿論、駆動輪が前輪FR、FLとなる場合には、前輪FR、FLの制動力配分を増加させて、前輪FR、FLの場所での路面摩擦係数μに応じたF−S線図を求めた方が、より正確な路面摩擦係数μに応じた駆動力制御を行うことができるため、この場合には前輪FR、FLの場所での路面摩擦係数μに応じたF−S線図を求める方が好ましい。
【0058】
(2)上記実施形態では、F−S線図から求めた後輪RR、RLの限界制動力、または、スリップ率Sが予め決められた一定範囲内となるときの後輪RR、RLの制動力をTb(N・m)で表し、それに対応する駆動トルクTDをTb(N・m)=TDの式から求めたのち、それをエンジントルクTEに換算した。しかしながら、これはエンジン1により駆動力を発生させる車両を例に上げたためであり、電気自動車やハイブリッド車両においては、これを例えばモータトルク等に換算することになる。したがって、上記手法により駆動力(駆動トルク)に上限値を設けることにより、どのような形態で駆動力を発生させる車両であっても、本発明を適用することが可能である。
【0059】
(3)上記実施形態では、ブレーキECU40やエンジンECU20で行われる各判定処理での判定手法の一例を挙げているが、その他の判定手法を用いても良い。例えば、ブレーキECU40では、ステップ100において制動中であるか否かを判定しているが、ブレーキペダルスイッチ7aの検出信号以外にも、ブレーキ操作量センサの検出信号に基づいて行っても良い。また、エンジンECU20では、ステップ200において車両が加速中であるか否かを判定しているが、アクセルペダルスイッチ6aの検出信号以外にも、元々エンジンECU20で扱っているスロットル開度等に基づいて判定しても良い。
【0060】
(4)上記実施形態では、後輪RR、RLの制動力をブレーキECU40で求めた制動力配分そのものを使用して求めている。例えば、電動ブレーキシステムの場合にはW/C11FL〜11RRに対して伝える電流指示値、油圧ブレーキシステムの場合にはブレーキ制御用アクチュエータ10FR〜10RLに内蔵される制御弁などの電流指示値を読み込むことにより求めることができる。これに対して、実際に制動力センサを備えておき、制動力センサの検出信号に基づいて求めることも可能である。例えば、制動力センサとしては、電動ブレーキシステムの場合には制御弁などに流す電流値を検出するセンサ、油圧ブレーキシステムの場合にはW/C圧センサ等を適用することができる。
【0061】
(5)なお、各図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。すなわち、図2におけるステップ120の処理を実行する部分は判定手段に相当し、ステップ130の処理を実行する部分は制動力配分変更手段に相当し、ステップ140の処理を実行する部分は制動力−スリップ率検出手段に相当し、ステップ150の処理を実行する部分は駆動力伝達許容値算出手段に相当し、ステップ170の処理を実行する部分は出力手段に相当する。また、図5におけるステップ230の処理を実行する部分は読込手段に相当し、ステップ250の処理を実行する部分は駆動力制御目標値算出手段に相当し、ステップ260の処理を実行する部分は駆動力出力手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態における制駆動力制御を実現する制駆動力制御装置が搭載されたシステム全体の概略構成を示した図である。
【図2】図1に示す制駆動力制御装置に備えられたブレーキECU40が実行する駆動力伝達許容値設定処理のフローチャートである。
【図3】理想制動力配分線図と等G線図およびリアロック線図の関係を記載した図である。
【図4】駆動輪となる後輪RR、RLのスリップ率Sと制動力Fとの関係を示したF−S線図である。
【図5】図1に示す制駆動力制御装置に備えられたエンジンECU20が実行する駆動力制御目標値設定処理の詳細を示したフローチャートである。
【図6】従来の手法において、アンチスキッド制御が実行されなかった場合の駆動力や車輪速度の変化を示したタイミングチャートである。
【図7】図1に示す制駆動力制御装置により駆動力制御を行った場合の駆動力や車輪速度の変化を示したタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1…エンジン、2…トランスミッション、3…プロペラシャフト、4…デファレンシャル、5…ドライブシャフト、6…アクセルペダル、6a…アクセルペダルスイッチ、7…ブレーキペダル、7a…ブレーキペダルスイッチ、8FR…車輪速度センサ、10FR〜10RL…ブレーキ制御用アクチュエータ、11FR〜11RL…W/C、12FR〜12RR…キャリパ、13FR〜13RR…ディスクロータ、20…エンジンECU、30…T/M−ECU、40…ブレーキECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪(FR、FL)と後輪(RR、RL)に発生させる制動力を独立して調整する制動力制御手段(40)と、
アクセル操作量に対応した駆動力制御目標値を求め、該駆動力制御目標値に相当する駆動力を発生させると共に、該駆動力の調整を行う駆動力制御手段(20)と、を備えた制駆動力制御装置であって、
前記制動力制御手段は、
前記前輪と前記後輪に対して制動力を発生させている制動中に、前記前輪と前記後輪のトータルの制動力が変化しないようにしながら前記前輪と前記後輪の制動力配分を一方の車輪に関しては増加させ、他方の車輪に関しては減少させるという制動力配分の変更を行う制動力配分変更手段(130)と、
前記制動力配分変更手段にて前記前輪と前記後輪のうち制動力配分を増加させた側の車輪における制動力(F)とスリップ率(S)の関係を求める制動力−スリップ率検出手段(140)と、
前記制動力−スリップ率検出手段で求めた前記制動力(F)と前記スリップ率(S)の関係から、路面摩擦係数に対応する駆動力伝達許容値を求める駆動力伝達許容値算出手段(150)と、
前記駆動力伝達許容値算出手段で求めた前記駆動力伝達許容値を前記駆動力制御手段に伝える出力手段(170)と、を有し、
前記駆動力制御手段は、
前記出力手段が伝えた駆動力伝達許容値に基づいて、前記アクセル操作量に対応した駆動力を制限した駆動力制御目標値を算出する駆動力制御目標値算出手段(250)と、
前記駆動力制御目標値算出手段で算出した前記駆動力制御目標値に相当する駆動力を発生させる駆動力出力手段(260)と、を有していることを特徴とする制駆動力制御装置。
【請求項2】
前記駆動力制御手段に備えられた前記駆動力制御目標値算出手段は、前記出力手段が伝えた駆動力伝達許容値に基づいて駆動力の上限値を設定し、前記アクセル操作量に対応した駆動力を前記上限値以下に制限した駆動力制御目標値を算出することを特徴とする請求項1に記載の制駆動力制御装置。
【請求項3】
前記制動力制御手段は、車速(V)が第1しきい値(V0)未満である場合に、前記制動力配分変更手段による制動力配分の変更を行い、前記制動力−スリップ率検出手段にて、前記制動力(F)と前記スリップ率(S)の関係を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の制駆動力制御装置。
【請求項4】
前記駆動力制御手段は、前記制動力制御手段に備えられた前記出力手段が出力した前記駆動力伝達許容値を読み込むと共に、該読み込みが完了したことを前記制動力制御手段に伝える読込手段(230)を有し、
前記制動力制御手段は、前記駆動力制御手段に備えられた前記読込手段から、前記読み込みが完了したことが伝えられたか否かの判定を行う判定手段(120)を有し、該判定手段にて肯定判定された場合に、前記制動力配分変更手段による制動力配分の変更を行い、前記制動力−スリップ率検出手段にて、前記制動力と前記スリップ率の関係を求めることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の制駆動力制御装置。
【請求項5】
前記駆動力制御手段に備えられた前記駆動力制御目標値算出手段は、前記出力手段が伝えた駆動力伝達許容値に基づいて駆動力の上限値と前記アクセル操作量に対応した駆動力のいずれか低い方を駆動力制御目標値とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の制駆動力制御装置。
【請求項6】
前記制動力配分変更手段は、前記前輪の制動力配分を減少させ、前記後輪の制動力配分を増加させることにより前記前輪と前記後輪の制動力配分を変更することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の制駆動力制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−285243(P2007−285243A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115384(P2006−115384)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】