説明

創薬用自動保管庫に用いられる棚位置自動ティーチング装置

【課題】人手による作業を減らし、保管棚のX座標、Y座標、Z座標、奥行き方向の傾き角度θの4つの位置情報の計測を短時間で、高精度で、再現性よく行うことができる創薬用自動保管庫に用いられる棚位置自動ティーチング装置を提供する。
【解決手段】創薬研究用のワークを恒温・恒湿・冷凍などの環境のもとで保管管理する垂直及び水平方向に並んだ複数の保管棚と、この保管棚に対してワークの出し入れを行う移載ハンドと、保管棚の最下段及び/又は最上段に挿入される計測用プレート300とを有する創薬用自動保管庫に用いられる棚位置自動ティーチング装置において、計測用プレート300が、保管棚の幅に適合した水平板310と、この水平板310の前面に垂設された垂直板320を有し、この垂直板320が、その中央部に三角形状の凸部330を有していることにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創薬研究用のワークを、恒温・恒湿・冷凍などの環境のもとで保管管理する垂直及び水平方向に並んだ複数の保管棚と、これらの保管棚に対してワークの出し入れを行う移載ハンドとを有する創薬用自動保管庫に関するものであって、さらに詳しくは、複数の保管棚の位置情報を予め計測する棚位置自動ティーチング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
創薬研究の分野においては、薬剤や化合物などの試料が封入されたバイアル瓶やマイクロチューブなどの複数の小型容器を保管トレイにマトリクス状に並び立てて収容し、この保管トレイ(以下、「ワーク」と称す)を恒温・恒湿・冷凍などの環境のもとで保管管理する創薬用自動保管庫が使用されている。
【0003】
この創薬用自動保管庫は、外部の端末機、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)からの指令を移載ハンドに伝達させ、必要なワークを取り出したり、指定された位置にワークを収納したりする。そのため、予め各保管棚の位置情報を端末機に記憶させておく、いわゆるティーチングという作業を行う必要がある。
【0004】
創薬研究の分野以外の一般的なマテハン分野におけるティーチングは、保管棚の上下・左右の間隔が広く、それほど高い位置決め精度が要求されないため、垂直及び水平方向にマトリックス状に並んだ保管棚の最上段の角隅棚とその対角にある最下段の角隅棚に対してのみ、X座標、Y座標、Z座標からなる3次元の位置情報を計測し、その他の保管棚については、単純な演算(既知の保管棚の数と寸法から割り出す)で位置情報を求めることによって十分、対応可能であった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−161453号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、創薬研究分野で使われる創薬用保管棚800においては、図10にその概略を示すように、保管庫内の収納効率を高めるため、保管棚822とワークとの隙間をできるだけ小さく設計する必要があるため、保管棚822に対するワークの位置決め精度として1mm以下が要求される。さらに、保管棚822の寸法には、製作上の公差が存在するため、1つ1つの保管棚822には、微妙ではあるが大きさの違いや歪みなどが存在する。そのため、X座標、Y座標、Z座標の3次元情報に加えて、保管棚822の奥行き方向の傾き角度θについても求める必要がある。そして、各保管棚822へのワークの挿入は、保管棚822の中央において行われることが望ましいため、個々の保管棚822の位置データを予め移載ハンドにティーチングする必要があり、次のような方法によるティーチングが行われていた。
【0006】
すなわち、まず、(1)図12に示すように、複数の保管棚822が垂直に並んだ垂直収納フレーム820の最下段及び/又は最上段に、保管棚822の幅とほぼ同じ幅を有し、中央に長方形の位置合わせ用窓630が開口した計測用プレート600を設置する。次に、(2)移載ハンド700を手動で制御して、計測用プレート600の下にハンドプレート740を挿入し、計測用プレート600の縦横中央に刻設された中央横線610及び中央縦線620と、位置合わせ用窓630から見える移載ハンド700のハンドプレート740上に刻設された中央横線710と中央縦線720とを一致させる。そして、(3)その時の位置情報を端末機に登録するとともに、垂直収納フレーム820の既知の棚段数及び棚間距離から、他の棚の位置情報を簡単な演算によって算出する。ここで、計測用プレート600の挿入を、最下段と最上段の両方に対して行うことによって、片方のみに対して行うよりも精度の高い位置情報が得られる。そして、(4)一つの垂直収納フレーム820の測定が終わると、図10に示すように隣接する垂直収納フレーム830の保管棚832の位置情報について、前記(1)〜(3)を繰り返して求める。図10では、創薬用保管棚800として、回転棚式のものを示しているが、垂直収納フレームが直線上に並んだ固定棚式のものであっても前述したのと同様の方法によって、各保管棚の位置情報を求めることができる。
【0007】
ここで、図10に示すように垂直収納フレーム820を構成する複数の保管棚822に対しては、1箇所又は2箇所(最下段及び/又は最上段)の保管棚822の位置情報のみを計測して他の保管棚822については、既知の棚段数及び棚間距離に基づき演算で求めているのに対して、他の垂直収納フレームに対しては、改めて同様の手法により再度、位置情報の計測が必要である理由は、一つの垂直収納フレームを構成する保管棚は、鋼板から一度に板金加工によって製造されるため比較的公差が少ないのに対して、別の垂直収納フレームに対しては、別途、板金加工によって製造されることによる製造上の公差に加えて、創薬用保管棚800への組み付け公差が発生するためである。
【0008】
したがって、従来のティーチング方法では、少なくとも垂直収納フレームの台数分について、X座標、Y座標、Z座標、奥行き方向の傾き角度θの4つの位置情報の計測を前述した方法に基づき手作業で行っていたため、創薬用保管棚800に装着された全ての保管棚のティーチングを行うためには膨大な時間を要していた。さらに、作業者が変わることにより、経験や勘に由来する測定誤差が生じやすく測定精度が悪かった。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、人手による作業を減らし、保管棚のX座標、Y座標、Z座標、奥行き方向の傾き角度θの4つの位置情報の計測を短時間で、高精度で、再現性よく行うことができる創薬用自動保管庫に用いられる棚位置自動ティーチング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
まず、本請求項1に係る発明は、創薬研究用のワークを恒温・恒湿・冷凍などの環境のもとで保管管理する垂直及び水平方向に並んだ複数の保管棚と、該保管棚に対して前記ワークの出し入れを行う移載ハンドと、前記保管棚の最下段及び/又は最上段に挿入される計測用プレートとを有する創薬用自動保管庫に用いられる棚位置自動ティーチング装置において、前記計測用プレートが、前記保管棚の幅に適合した水平板と該水平板の前面に垂設された垂直板を有し、該垂直板が、その中央部に三角形状の凸部を有し、該凸部を跨ぐ一直線上の複数の測定点の位置座標と該測定点までの距離を測定するラインセンサとを有し、前記凸部の縁と前記一直線との2つの境界点間の距離から、前記三角形状の凸部の底辺から前記境界点までの高さ(Z座標)を求め、前記ラインセンサから前記一直線上の前記凸部を跨ぐ前記垂直板上の2点までのそれぞれの距離から、前記保管棚の奥行き方向の傾き角度(θ)を求め、前記凸部の縁と前記一直線上の1つの境界点の位置から、水平方向の位置(X座標)を求め、前記ラインセンサから前記1つの境界点までの距離から、前記保管棚の奥行き方向の長さ(Y座標)を求めることにより、前記課題を解決したものである。
ここで、本発明における「ワーク」とは、薬剤や化合物などの試料が封入されたバイアル瓶やマイクロチューブなどの複数の小型容器をマトリクス状に並び立てて収容する保管トレイの総称である。また、本発明における「ラインセンサ」とは、一直線状に照射した光が物体で拡散反射され戻って来るまでの時間tを計測することにより、時間tの変化から物体の位置を認識するとともに、その時間tから物体までの距離を認識する機能を有するセンサ及び一直線上に照射した光が物体で拡散反射されて戻ってきた光を2次元センサ上に結像させ、位置・形状の変化を検出することで変位・形状を測定するセンサなどを総称した広義のセンサを意味している。
【0011】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る棚位置自動ティーチング装置において、前記三角形状の凸部が、前記垂直板の底面と高さが一致している底辺と、前記垂直板の高さと等しくかつ前記底面と直交する垂線を有する直角三角形状であることにより、前記課題をさらに解決したものである。
【0012】
また、本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る棚位置自動ティーチング装置において、前記ラインセンサが、レーザ式変位センサであることにより、前記課題をさらに解決したものである。なお、本発明における「レーザ式変位センサ」とは、レーザ光を用いてX軸、Z軸の二次元で対象物の表面形状を正確に再現できるものであって、高さ、幅、段差などを測定することができるものを総称している。
【発明の効果】
【0013】
本請求項1に係る発明によれば、創薬研究用のワークを恒温・恒湿・冷凍などの環境のもとで保管管理する垂直及び水平方向に並んだ複数の保管棚と、該保管棚に対して前記ワークの出し入れを行う移載ハンドと、前記保管棚の最下段及び/又は最上段に挿入される計測用プレートとを有する創薬用自動保管庫に用いられる棚位置自動ティーチング装置において、前記計測用プレートが、前記保管棚の幅に適合した水平板と該水平板の前面に垂設された垂直板を有し、該垂直板が、その中央部に三角形状の凸部を有し、該凸部を跨ぐ一直線上の複数の測定点の位置座標と該測定点までの距離を測定するラインセンサとを有し、前記凸部の縁と前記一直線との2つの境界点間の距離から、前記三角形状の凸部の底辺から前記境界点までの高さ(Z座標)を求め、前記ラインセンサから前記一直線上の前記凸部を跨ぐ前記垂直板上の2点までのそれぞれの距離から、前記保管棚の奥行き方向の傾き角度(θ)を求め、前記凸部の縁と前記一直線上の1つの境界点の位置から、水平方向の位置(X座標)を求め、前記ラインセンサから前記1つの境界点までの距離から、前記保管棚の奥行き方向の長さ(Y座標)を求めることによって、計測用プレートのセッティング作業以外、人手を介することなく、保管棚のX座標、Y座標、Z座標、奥行き方向の傾き角度θの4つの位置情報の計測を、ライセンサセンサから放たれたレーザ光線が垂直板の一直線上で反射されて戻ってくる時間が三角形状の凸部の境界部分で異なり、その時間差から境界点の水平方向の位置、奥行き方法の長さ、境界点までの高さ、奥行き方向の傾き角度からなる特定の保管棚の位置情報(X座標、Y座標、Z座標、θ)を非接触で取得できるため、ティーチング時間の短縮及びティーチング精度の高精度化が実現できる。
【0014】
そして、本請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る発明において、三角形状の凸部が、前記垂直板の底面と面一(つらいち:段差がないこと)となる底辺と、前記垂直板の高さと等しくかつ前記底面と直交する垂線を有する直角三角形状であることによって、直角三角形状の凸部上の水平方向の2つの境界点の距離から、三角形状の凸部の底辺からの高さ(Z座標)を後述する三角形の相似関係の法則により、簡単に求めることができるため、より一層のティーチング時間の短縮が実現できる。
【0015】
また、本請求項3によれば、請求項1又は請求項2に係る発明において、ラインセンサがレーザ式変位センサであることによって、三角形状の凸部と垂直板表面との距離の差により、測定点の位置と測定点までの距離を同時に計測できるため、より一層のティーチング時間の短縮が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、創薬研究用のワークを恒温・恒湿・冷凍などの環境のもとで保管管理する垂直及び水平方向に並んだ複数の保管棚と、該保管棚に対して前記ワークの出し入れを行う移載ハンドと、前記保管棚の最下段及び/又は最上段に挿入される計測用プレートとを有する創薬用自動保管庫に用いられる棚位置自動ティーチング装置において、前記計測用プレートが、前記保管棚の幅に適合した水平板と該水平板の前面に垂設された垂直板を有し、該垂直板が、その中央部に三角形状の凸部を有し、該凸部を跨ぐ一直線上の複数の測定点の位置座標と該測定点までの距離を測定するラインセンサとを有し、前記凸部の縁と前記一直線の2つの境界点間の距離から、前記三角形状の凸部の底辺から前記境界点までの高さ(Z座標)を求め、前記ラインセンサから前記一直線上の前記凸部を跨ぐ前記垂直板上の2点までのそれぞれの距離から、前記保管棚の奥行き方向の傾き角度(θ)を求め、前記凸部の縁と前記一直線上との1つの境界点の位置から、水平方向の位置(X座標)を求め、前記ラインセンサから前記1つの境界点までの距離から、前記保管棚の奥行き方向の長さ(Y座標)を求めることによって、計測用プレートのセッティング作業以外、人手を介することなく、保管棚のX座標、Y座標、Z座標、奥行き方向の傾き角度θの4つの位置情報の計測を、ラインセンサから放たれたレーザ光線の反射光が戻ってくる時間が三角形状の凸部と垂直板平面とで異なるため、その時間差から境界点の位置、奥行き方向の長さ、境界点までの高さ、奥行き方向の傾き角度からなる特定の保管棚の位置情報(X座標、Y座標、Z座標、θ)を非接触で取得でき、ティーチング時間の短縮及びティーチング精度の高精度化が実現できるものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0017】
例えば、本発明の棚位置自動ティーチング装置は、回転棚式の創薬用保管棚に対しても、固定棚式の創薬用保管棚に対しても、何ら支障なくティーチング操作を行うことができる。
【0018】
次に本発明の一実施例を図1乃至図11に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の実施例である棚位置自動ティーチング装置のティーチング対象である垂直収納フレームと本発明の主要構成要素である計測用プレートとを示す斜視図であり、図2は、計測用プレートを斜め下方から見た斜視図であり、図3は、計測用プレートを斜め上方から見た斜視図であり、図4は、本実施例の棚位置自動ティーチング装置の構造を示す斜視図であり、図5は、図4を矢視V方向から見た上面図であり、図6は、図5を矢視VI方向から見た側面図であり、図7乃至図9は、本実施例のティーチング動作を説明する平面図であり、図10は、本実施例である棚位置自動ティーチング装置のティーチング対象である垂直収納フレームを複数装備した創薬用保管棚の斜視図であり、図11は、図10に示す創薬用保管棚を格納した創薬用自動保管庫の一部を切り欠いた斜視図である。
【0019】
始めに、図11を参照して本発明による棚位置自動ティーチング装置が適用される創薬用自動保管庫900の一例について説明する。
図11に示した創薬用自動保管庫900は、バイアル瓶やマイクロチューブなどの円筒状又は四角筒状の小型容器を縦列収容した保管トレイ100を恒温・恒湿・低温などの環境のもとで保管する保管エリア910と、入出庫窓935を介して保管トレイ100の入庫及び出庫を行う入出庫エリア930と、保管エリア910から取り出された保管トレイ100と入出庫エリア930から運び込まれた保管トレイ100との間で、所定の小型容器の差し替えを行うピッキングロボット200と、保管エリア910に垂直及び水平方向に並んだ複数の保管棚に対して保管トレイ100の出し入れを行う移載ハンド300とが設置された移載エリア940を有している。
【0020】
そして、保管エリア910内には、図10に概略を示すように創薬用保管棚800が設置されている。この創薬用保管棚800には、図10に示すように、例えば、マイクロチューブ120のような複数の小型容器が収容されている保管トレイ100を垂直方向に複数収容可能に区画した垂直収納フレーム810、820、830・・・が、無端循環軌道Oに沿って水平移動可能に複数配置されている。
【0021】
本発明の創薬用自動保管庫に用いられる棚位置自動ティーチング装置によるティーチングは、まず始めに、図1に示すように基準となる一つの垂直収納フレーム820の最下段の保管棚822に計測用プレート300を挿入する。計測用プレート300は、図2及び図3に示すように保管棚の幅に適合した、すなわち、保管棚と、ほとんど同じ幅を有している水平板310と、この水平板310の前面に垂設された垂直板320を有している。そして、垂直板320の中央部に垂直板320の底面322と面一の底辺332と、垂直板320の高さと等しくかつ底辺332と直交する垂線334を有する直角三角形状の凸部330を有している。
前記のように計測用プレート300は、保管棚とほとんど同じ幅を有しているため、この挿入作業だけは、作業者の手作業によって行われる。さらに、この計測用プレート300の寸法公差がティーチングの精度に大きな影響を与えるため、この計測用プレート300の水平板310と垂直板320と凸部330は、樹脂のバルクから切削加工で一体物として削り出している。ここで、樹脂の材質としては特に限定されるものではないが、本実施例においては、大型の素材(バルク)を容易に入手可能であって、耐摩耗性、自己潤滑性に優れた6ナイロンを用いている。
【0022】
そして、図4に示すように垂直板320上に形成された凸部330を跨ぐ一直線L上の複数の測定点の位置座標と測定点までの距離を測るラインセンサ400を有している。このラインセンサ400としては、市販されているLED発光素子とCCD受光素子を組み合わせたラインセンサなどを用いることができるが、本実施例においては、図4に示すように、1つの半導体レーザ410から放射されたレーザ光を円筒面平凹形状をしたシリンドリカルレンズ420により、入射光に対して1軸方向のみ変化を与え、線状の拡大ビームを形成し、計測用プレート300の垂直板320上に形成された凸部330を跨ぐ一直線L上で拡散反射させ、その反射光を収差による誤差を低減させる複数枚のレンズを組み合わせたレンズ系430を通してCMOSセンサ440上に結像させることができるレーザ変位センサを用いている。そして、このラインセンサ400により垂直板320上の変位、形状を測定することによって、図5及び図6に示すように、計測用プレート300が挿入されている保管棚の水平方向の位置(X座標)、保管棚の奥行き方向の長さ(Y座標)、保管棚の垂直方向の高さ(Z座標)及び保管棚の奥行き方向の傾き角度(θ)からなる位置情報(X座標、Y座標、Z座標、θ)を求める。
【0023】
この位置情報の導出過程について、図7乃至図9に基づき説明する。まず、図7に示すように、ラインセンサによって放射されたレーザ光を垂直板上の凸部330を跨ぐ一直線L上を矢印方向に走査し、レーザ光が一直線L上の各点で反射されて、戻って来るまで時間tを測定する。そして、凸部330の存在により、一直線L上のA部分とB部分では、凸部330の厚みd分、時間tが異なるため(A部分の方がB部分の方より時間tが長くなる)、境界点aの位置、すなわち、X座標が求められる。さらに、A部分あるいはB部分上の任意の測定点におけるレーザ光の放射から戻って来るまでの時間tから、計測用プレートの奥行き方向の距離、すなわち、Y座標が求められる。
【0024】
次に、図8に示すように、ラインセンサによって放射されたレーザ光が、凸部330を跨ぐ一直線L上の2点b、cで拡散反射されて、戻って来るまでの時間tb、tcを、それぞれ測定することにより、ラインセンサから2点b、cまでの距離が求められる。この距離の差から、保管棚の奥行き方向の傾き角度θが求められる。なお、2点b、cの間隔は、ラインセンサ側で予め設定している。
【0025】
さらに、図9に示すように、ラインセンサによって放射されたレーザ光を垂直板上の凸部330を跨ぐ一直線L上を矢印方向に走査し、レーザ光が一直線L上の各点で拡散反射されて、戻って来る間での時間tを測定することにより、凸部330の存在により、一直線L上のC部分とD部分では、凸部330の厚みd分、時間tが異なるため(C部分の方がD部分の方より時間tが長くなる)、境界点fの位置が求められる。同様に、一直線L上のD部分とE部分では、凸部330の厚み分、時間tが異なるため(D部分の方がE部分の方より時間tが短くなる)、境界点eの位置が求められる。その結果、三角形の相似の関係より、
距離D:距離F=距離H:(距離H+距離G) ・・・ (1)
の関係が成立する。
この関係式(1)を変形することにより、
距離G=(距離F/距離D−1)*距離H ・・・ (2)
の関係式(2)が導出される。そして、距離H+距離G、すなわち、三角形状の凸部330の高さ及び距離F、すなわち、三角形状の凸部330の底辺は、既知であるので、一直線Lの2つの境界点e、f間の距離Dを求めることによって、三角形状の凸部330の底辺から境界点e、fまでの距離、すなわち、Z座標が求められる。
【0026】
このようにして、図1に示すような基準となる一つの垂直収納フレーム820の最下段の保管棚822の位置情報(X座標、Y座標、Z座標、θ)の計測が終わると、既知の垂直収納フレーム820の棚段数及び棚間距離から、垂直収納フレーム820の全ての保管棚822の位置情報(X座標、Y座標、Z座標、θ)が算出される。本実施例においては、X座標、Y座標、θについては、垂直収納フレーム820の全ての保管棚822は、計測された最下段の保管棚822の位置情報と共通とし、Z座標(高さ)は、最下段のZ座標の情報を保存し、他の保管棚822は、設計上の棚間距離に基づきPLC内で計算して求めている。
【0027】
なお、本実施例では、垂直収納フレーム820の最下段の保管棚822の位置情報に基づき、垂直収納フレーム820の全ての保管棚822の位置情報を算出しているが、最下段に加え、最上段の保管棚の位置情報も計測し、両者の位置情報から、垂直収納フレーム820の全ての保管棚822の位置情報を算出することにより、計測精度を一層向上させることができる。
また、基準となる垂直収納フレームの保管棚の位置情報の計測が終わると、隣の垂直収納フレームの保管棚の位置情報の計測を順次行う。本発明によれば、4つの位置情報の計測を同時に、しかも、人手を介さずに、行うことができるので大幅に計測時間を短縮することができる。さらに、位置情報の計測を非接触で計測するため、接触による誤差が生じることがない。
【0028】
なお、本実施例では、垂直板320に形成した三角形状の凸部330が、垂直板320の底面322と面一の底辺332と、垂直板320の高さと等しくかつ底面322と直交する垂線を有する直角三角形状を有しているが、直角三角形状でなくても、例えば、二等辺三角形のような任意の三角形を用いても、同様に位置情報(X座標、Y座標、Z座標、θ)の計測が可能である。
【0029】
さらに、本実施例では、保管棚の奥行き方向の傾き角度θを求める際に、三角形状の凸部330を跨ぐ垂直板320上の2点までのそれぞれの距離から求めているが、三角形状の凸部330の表面上の2点までの距離から求めることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の創薬用自動保管庫に用いられる棚位置自動ティーチング装置は、ラインセンサと本発明に特有の形状を有する計測用プレートとを組み合わせて用いることにより、膨大な数の保管棚を有する創薬用自動保管庫のティーチング作業時間を大幅に高速化するとともに、計測精度を格段に向上させるものであって、その効果は甚大であり、産業上の利用可能性はきわめて高い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施例の垂直収納フレームと計測用プレートを示す斜視図。
【図2】本実施例の計測用プレートを下方から見たときの斜視図。
【図3】本実施例の計測用プレートを上方から見たときの斜視図。
【図4】本実施例の棚位置自動ティーチング装置の構造を示す斜視図。
【図5】図4を矢視V方向から見た上面図。
【図6】図5を矢視VI方向から見た側面図。
【図7】本実施例のティーチング動作を説明する平面図(X座標及びY座標の計測)。
【図8】本実施例のティーチング動作を説明する平面図(傾き角度θの計測)。
【図9】本実施例のティーチング動作を説明する平面図(Z座標の計測)。
【図10】本実施例の垂直収納フレームを装備した創薬用保管棚の斜視図。
【図11】本実施例の創薬用保管棚を格納した創薬用自動保管庫の斜視図。
【図12】従来の棚位置ティーチング装置を示す斜視図。
【符号の説明】
【0032】
100 ・・・ 保管トレイ
120 ・・・ マイクロチューブ
200 ・・・ ピッキングロボット
300 ・・・ 計測用プレート
310 ・・・ (計測用プレートの)水平板
320 ・・・ (計測用プレートの)垂直板
322 ・・・ (計測用プレートの垂直板の)底面
330 ・・・ (計測用プレートの)凸部
332 ・・・ (計測用プレートの凸部の)底辺
334 ・・・ (計測用プレートの凸部の)垂線
400 ・・・ ラインセンサ
410 ・・・ (ラインセンサの)半導体レーザ
420 ・・・ (ラインセンサの)シリンドリカルレンズ
430 ・・・ (ラインセンサの)レンズ系
440 ・・・ (ラインセンサの)CMOSセンサ
600 ・・・ 計測用プレート
610 ・・・ (計測用プレートの)中央横線
620 ・・・ (計測用プレートの)中央縦線
630 ・・・ (計測用プレートの)位置合わせ用窓
700 ・・・ 移載ハンド
710 ・・・ 中央横線
720 ・・・ 中央縦線
740 ・・・ ハンドプレート
800 ・・・ 創薬用保管棚
810、820、830 ・・・ 垂直収納フレーム
812、822、832 ・・・ 保管棚
900 ・・・ 創薬用自動保管庫
910 ・・・ (創薬用自動保管庫の)保管エリア
930 ・・・ (創薬用自動保管庫の)入出庫エリア
935 ・・・ (創薬用自動保管庫の)入出庫窓
940 ・・・ (創薬用自動保管庫の)移載エリア
O ・・・ 無端循環軌道


【特許請求の範囲】
【請求項1】
創薬研究用のワークを恒温・恒湿・冷凍などの環境のもとで保管管理する垂直及び水平方向に並んだ複数の保管棚と、該保管棚に対して前記ワークの出し入れを行う移載ハンドと、前記保管棚の最下段及び/又は最上段に挿入される計測用プレートとを有する創薬用自動保管庫に用いられる棚位置自動ティーチング装置において、
前記計測用プレートが、前記保管棚の幅に適合した水平板と該水平板の前面に垂設された垂直板を有し、
該垂直板が、その中央部に三角形状の凸部を有し、
該凸部を跨ぐ一直線上の複数の測定点の位置座標と該測定点までの距離を測定するラインセンサとを有し、
前記凸部の縁と前記一直線との2つの境界点間の距離から、前記三角形状の凸部の底辺から前記境界点までの高さ(Z座標)を求め、
前記ラインセンサから前記一直線上の前記凸部を跨ぐ前記垂直板上の2点までのそれぞれの距離から、前記保管棚の奥行き方向の傾き角度(θ)を求め、
前記凸部の縁と前記一直線上との1つの境界点の位置から、水平方向の位置(X座標)を求め、
前記ラインセンサから前記1つの境界点までの距離から、前記保管棚の奥行き方向の長さ(Y座標)を求めることをによって、特定の保管棚の位置情報(X座標、Y座標、Z座標、θ)を取得することを特徴とする創薬用自動保管庫に用いられる棚位置自動ティーチング装置。
【請求項2】
前記三角形状の凸部が、前記垂直板の底面と面一となる底辺と、前記垂直板の高さと等しくかつ前記底面と直交する垂線を有する直角三角形状であることを特徴とする請求項1記載の創薬用自動保管庫に用いられる棚位置自動ティーチング装置。
【請求項3】
前記ラインセンサが、レーザ式変位センサであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の創薬用自動保管庫に用いられる棚位置自動ティーチング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−184807(P2009−184807A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28748(P2008−28748)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】