説明

半導体デバイス用洗浄液、および洗浄方法

【課題】本発明は、環境負荷が低く、洗浄対象物の層間絶縁膜、金属、窒化金属、および、合金を腐食することなく、短時間、低温度で、フォトレジスト、反射防止膜、エッチング残渣、および、アッシング残渣などの洗浄対象物表面上にある付着物の除去を行うことができる洗浄液と、その洗浄方法を提供することを課題とする。
【解決手段】還元剤および界面活性剤を含み、pHが10〜14である半導体デバイス用洗浄液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの洗浄液、および、洗浄方法に関する。詳しくは、本発明は、半導体デバイスの製造工程に関するものであり、特に半導体デバイス製造の全工程において基板上に存在するフォトレジスト、エッチング残渣物、反射防止膜、および、アッシング残渣物などの除去用の洗浄液、並びに該洗浄液を用いた半導体デバイスの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD、メモリーなどの半導体デバイスは、フォトリソグラフィー技術を用いて、基板上に微細な電子回路パターンを形成して製造される。具体的には、基板上に形成された配線材料となる金属膜(例えば、銅)、層間絶縁膜、反射防止膜などの積層膜上にレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー工程・ドライエッチング工程を経て製造される。フォトリソグラフィー工程後に残存するフォトレジストや反射防止膜には、ドライアッシング処理を施す。その後、ドライエッチング工程およびドライアッシング工程で生じ、配線材料や層間絶縁膜材料上に残存する残渣(エッチング残渣、アッシング残渣など)を洗浄液により除去する処理が一般的に行われている。
【0003】
近年、半導体デバイスの高性能化に伴い、更なる微細化および製造の高速化が要求されており、その中でも半導体デバイス製造過程での洗浄時間の短縮、および洗浄技術の向上は重要な課題とされている。例えば、半導体デバイスの性能向上のためLow−k素材からなる層間絶縁膜が用いられている。Low−k素材がk値低下のためにポーラス(孔)を含有する場合は、洗浄工程の際、孔の存在のために洗浄液とLow−k素材の接触面積が大きくなり、洗浄工程中に洗浄液によりLow−k素材がエッチングされることがある。これはデバイス配線の形状変化をもたらし、デバイス性能にとって好ましくない。
【0004】
また、半導体デバイスの細線化および高性能化に伴い、配線材料、特に、Low−k素材からなる層間絶縁膜に対する製造工程中のダメージを軽減するため、ドライアッシング工程を行わないか、または、程度の軽いドライアッシング工程を行うように製造工程が近年変わってきている。そのため、ドライアッシング工程などを行わずに、フォトレジストや反射防止膜を十分に除去できる洗浄液が要望されている。
【0005】
従来、上述したフォトレジスト、反射防止膜、エッチング残渣物、アッシング残渣物などを除去する半導体デバイスの洗浄液としては、例えばアルカノールアミンと有機溶剤の混合系からなる洗浄液が提案されている(特許文献1および2参照)。また、特許文献3では、アルカノールアミン、ヒドロキシルアミン、カテコールと水からなる洗浄液が開示されている。
【0006】
また、特許文献4では、アルコール系溶剤、ハロゲン系溶剤、有機第4級アンモニウム塩からなる洗浄液が開示されている。
【0007】
また、特許文献5では、水、水酸化テトラメチルアンモニウム、過酸化水素、非イオン性界面活性剤からなる洗浄液が開示されている。
【0008】
また、特許文献6では、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、水溶性有機溶剤、9族または11族金属の腐食防止剤からなる洗浄液が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開昭62−49355号公報
【特許文献2】特開昭64−42653号公報
【特許文献3】特開平4−289866号公報
【特許文献4】米国特許第5185235号明細書
【特許文献5】特開平7−297158号公報
【特許文献6】特開2007−119783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、本発明者らが上記洗浄液について検討を行ったところ、以下のような問題があることを見出した。
(1)特許文献1〜3に記載の洗浄液では、反射防止膜、例えば、オルガノシロキサン系反射防止膜の除去性が十分でなく、加えて、配線材料として使用される銅やTi(チタン)の腐食が生じるという問題があった。
(2)特許文献4に記載の洗浄液では、配線材料として使用される銅やTi(チタン)の腐食は小さいが、フォトレジストや反射防止膜(例えば、オルガノシロキサン系反射防止膜)の除去性が十分ではなかった。
(3)特許文献5に記載の洗浄液では、フォトレジストや反射防止膜(例えば、オルガノシロキサン系反射防止膜)の除去を行うために高温にする必要があり、かつ長時間を要するため、高スループットを目指すデバイス製造にとっては十分とはいえなかった。
(4)特許文献6に記載の洗浄液では、比較的短時間で洗浄性能を得ることができるが、使用温度は十分低温とはいえず、また要する時間も短時間とはいえなかった。また、腐食防止剤として用いているベンゾトリアゾール類は生分解性が低いなど環境負荷が高いため、廃液処理などの環境設備に多大のコストを要するという問題があった。
【0011】
このように従来の洗浄液では、フォトレジスト残渣、エッチング残渣、反射防止膜、または、アッシング残渣などの除去性が十分とはいえなかった。また、除去できたとしても、洗浄プロセスに長時間を要する、半導体デバイスに含まれるLow−k素材や配線構成金属をエッチングしてしまう、または、ヘテロ環含有の金属腐食防止剤が使用されるため環境負荷が高い、などの問題を有していた。
【0012】
そこで、本発明では、環境負荷が低く、洗浄対象物の金属、窒化金属、合金、および層間絶縁膜を腐食することなく、フォトレジスト、エッチング残渣物、反射防止膜、および、アッシング残渣物などの洗浄対象物表面上にある付着物の除去を行うことができる半導体デバイス用の洗浄液、並びに該洗浄液を用いた半導体デバイスの洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、上記課題が下記の<1>〜<12>の構成により解決されることを見出した。
<1> 還元剤および界面活性剤を含み、pHが10〜14である半導体デバイス用洗浄液。
<2> 前記還元剤が、ヒドロキシルアミンまたはその誘導体である<1>に記載の半導体デバイス用洗浄液。
<3> 前記還元剤が、亜ジチオン酸塩、二亜硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ジチオン酸塩、およびトリチオン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である<1>に記載の半導体デバイス用洗浄液。
<4> さらに、無機アルカリ化合物または下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム水酸化物を含む<1>〜<3>のいずれかに記載の半導体デバイス用洗浄液。
【0014】
【化2】

(一般式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、またはアリール基を表す。)
<5> 前記無機アルカリ化合物が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、および水酸化セシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である<4>に記載の半導体デバイス用洗浄液。
<6> 前記界面活性剤が、カチオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤である<1>〜<5>のいずれかに記載の半導体デバイス用洗浄液。
<7> 前記カチオン性界面活性剤が、第4級アンモニウム塩系界面活性剤、またはアルキルピリジウム系界面活性剤である<6>に記載の半導体デバイス用洗浄液。
<8> 前記ノニオン性界面活性剤が、ポリプロピレンオキサイドポリエチレンオキサイド系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドトリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤、およびポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である<6>に記載の半導体デバイス用洗浄液。
<9> 洗浄液全量に対してエーテル系溶剤を0.0001〜0.5質量%含有する、<1>〜<8>のいずれかに記載の半導体デバイス用洗浄液。
<10> <1>〜<9>のいずれかに記載の半導体デバイス用洗浄液を用いて、半導体デバイスを洗浄する半導体デバイスの洗浄方法。
<11> ドライエッチング工程の後に、<1>〜<9>のいずれかに記載の半導体デバイス用洗浄液を用いて半導体デバイスを洗浄する洗浄工程を実施することを特徴とする半導体デバイスの洗浄方法。
<12> 前記半導体デバイスが、誘電率kが3.0以下の層間絶縁膜を有する半導体デバイスである<10>または<11>に記載の半導体デバイスの洗浄方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の洗浄液によれば、環境負荷が低く、洗浄対象物に含まれる金属、窒化金属、合金、および、層間絶縁膜材料を腐食せずに、フォトレジスト、エッチング残渣物、反射防止膜、および、アッシング残渣物などの洗浄対象物表面上にある付着物の除去を行うことができる。また、本発明の半導体デバイスの洗浄液(以下、単に「洗浄液」ともいう)は、ヘテロ環含有の金属腐食防止剤を含まずとも、付着物の除去が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明においてエッチング残渣物とは、エッチングを行うことで生じた副生成物のことであり、フォトレジスト由来の有機物残渣物、Si含有残渣物、および、金属含有残渣物をいう。なお、本発明においてアッシング残渣物とは、アッシングを行うことで生じた副生成物のことであり、フォトレジスト由来の有機物残渣物、Si含有残渣物、および、金属含有残渣物をいう。
【0017】
本発明にかかる洗浄液は、半導体デバイス製造において用いられる洗浄液であって、還元剤および界面活性剤を含み、pHが10〜14である洗浄液である。以下に、それぞれの具体的態様について説明する。
【0018】
<還元剤>
本発明の洗浄液は、還元剤を含有する。本発明で用いられる還元剤は、還元作用を有する化合物であればよいが、例えば、水素化ホウ素ナトリウムおよびそのアンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、または、ホスフィン酸ナトリウム、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸水素ナトリウム、ジホスホン酸ナトリウム、次リン酸ナトリウム、次リン酸二水素二ナトリウム、およびそれらのアンモニウム塩、カリウム塩、または、ヒドラジンもしくはその誘導体(フェニルヒドラジン、ベンジルヒドラジン、エチルヒドラジン、N,N−ジメチルヒドラジンなど)が挙げられる。
【0019】
本発明で使用される還元剤の好適例として、ヒドロキシルアミンおよびヒドロキシルアミン誘導体が挙げられる。該化合物を使用することにより、残渣物の除去性がより向上すると共に、基板や絶縁膜などに対する腐食性がより抑えられる。ヒドロキシルアミン誘導体としては、例えば、O−メチルヒドロキシルアミン、O−エチルヒドロキシルアミン、N−メチルヒドロキシルアミン、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン、N−エチルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N,O−ジエチルヒドロキシルアミン、O,N,N−トリメチルヒドロキシルアミン、N,N−ジカルボキシエチルヒドロキシルアミン、N,N−ジスルホエチルヒドロキシルアミンなどが挙げられる。
なかでも、好ましくはN,N−ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン、N,N−ジカルボキシエチルヒドロキシルアミン、N,N−ジスルホエチルヒドロキシルアミンである。なお、上記のヒドロキシルアミンおよびヒドロキシルアミン誘導体は、それぞれの塩であってもよく、具体的には、硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミン、硝酸ヒドロキシルアミンなどが挙げられる。
【0020】
本発明で使用される還元剤の他の好適例として、亜ジチオン酸塩、二亜硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ジチオン酸塩、トリチオン酸塩などの硫黄のオキソ酸塩(含硫黄オキソ酸塩)が挙げられる。より具体的には、亜ジチオン酸ナトリウム(Na)、二亜硫酸ナトリウム(Na)、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)、チオ硫酸ナトリウム(Na)、ジチオン酸ナトリウム(Na)、トリチオン酸ナトリウム、およびそれらのアンモニウム塩、カリウム塩が挙げられる。該化合物を使用することにより、残渣物の除去性がより向上すると共に、基板や絶縁膜などに対する腐食性がより抑えられる。
【0021】
上述の還元剤のなかでも、ヒドロキシルアミン誘導体、亜硫酸塩を用いることがより好ましく、硫酸ヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムを用いることがさらに好ましい。上述の還元剤は単独でも2種類以上の組み合わせで用いてもよい。また、還元剤は市販品を用いることができる。
【0022】
洗浄液全体の質量に対する還元剤の含有量は、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%であり、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。還元剤の含有量が上記の数値の範囲内であると、金属等のエッチング抑制が適当であるため好ましい。
【0023】
<界面活性剤>
本発明の洗浄液は界面活性剤を含有する。界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性界面活性剤、および、両性界面活性剤を用いることができる。
【0024】
本発明で使用される界面活性剤としては、添加することで洗浄液の粘度を調整し、洗浄対象物への濡れ性を改良することができる点、および、残渣物の除去性と基板や絶縁膜などに対する腐食性の両者がより優れるという点から、ノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドからなるブロックポリマー系界面活性剤、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレントリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤、などを用いることができる。
なかでも好ましくは、ポリアルキレンオキサイド(以下PAO)アルキルエーテル系界面活性剤で、PAOデシルエーテル、PAOラウリルエーテル、PAOトリデシルエーテル、PAOアルキレンデシルエーテル、PAOソルビタンモノラウレート、PAOソルビタンモノオレエート、PAOソルビタンモノステアレート、テトラオレイン酸ポリエチレンオキサイドソルビット、PAOアルキルアミン、PAOアセチレングリコールから選択されるポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤である。ポリアルキレンオキサイドとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドまたはポリブチレンオキサイドの重合体が好ましい。
【0025】
また、本発明で使用される界面活性剤としては、残渣物の除去性と基板や絶縁膜などに対する腐食性の両者がより優れるという点から、カチオン性界面活性剤も好ましく用いることができる。カチオン性界面活性剤として、好ましくは、第4級アンモニウム塩系界面活性剤、またはアルキルピリジウム系界面活性剤である。
【0026】
第4級アンモニウム塩系界面活性剤として、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0027】
【化3】

(一般式(2)中、Xは水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、または硝酸イオンを表す。Rは炭素数8〜18のアルキル基を表す。R6およびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基、またはベンジル基を表す。Rは炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0028】
一般式(2)中、Xはカウンターアニオンを表し、具体的には水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、または硝酸イオンを表す。
【0029】
一般式(2)中、Rは、炭素数8〜18のアルキル基(炭素数12〜18が好ましく、例えば、セチル基、ステアリル基など)である。
【0030】
6およびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシエチルなど)、アリール基(例えば、フェニル基など)、またはベンジル基を表す。
【0031】
一般式(2)中、Rは炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基など)を表す。
【0032】
一般式(2)で表される化合物の具体例として、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、トリデシルメチルアンモニウムクロリド、ステアリルベンジルジメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。これら化合物のカウンターアニオンは塩素イオンに限定されず、臭素イオン、または水酸化物イオンでもよい。
【0033】
また、アルキルピリジウム系界面活性剤として具体的には、セチルピリジニウムクロリドなどが挙げられる。これら化合物のカウンターアニオンは塩素イオンに限定されず、臭素イオン、または水酸化物イオンでもよい。
【0034】
洗浄液中の界面活性剤の含有量は、洗浄液の全量に対して、好ましくは0.0001〜5質量%であり、より好ましくは0.0001〜1質量%である。界面活性剤を洗浄液に添加することで洗浄液の粘度を調整し、洗浄対象物への濡れ性を改良することができるため好ましく、加えて基板や絶縁膜などに対する腐食性の両者がより優れるという点からも好ましい。このような界面活性剤は一般に商業的に入手可能である。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
<pH>
本発明の洗浄液のpHは10〜14であり、さらに好ましくは11〜14である。pHが上記の数値の範囲内であると、フォトレジスト、反射防止膜、エッチング残渣、および、アッシング残渣を十分に除去することができるため好ましい。pHの測定方法としては、公知のpHメーターを用いて測定することができる。
【0036】
本発明の洗浄液は、上記pHとするためアルカリ性化合物を含有することが好ましい。アルカリ性化合物とは、水溶液中にそれを含有することで、水溶液がアルカリ性を示す化合物のことである。具体的には、アルカリ金属元素と水酸基の対からなるアルカリ金属水酸化物などの無機アルカリ化合物、または一般式(1)で表される第4級アンモニウム水酸化物が挙げられる。
【0037】
無機アルカリ化合物のなかでもアルカリ金属水酸化物が好ましく、具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、および水酸化セシウムよりなる群から選ばれた少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物であることが好ましい。なかでも、取り扱いの容易さの観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いることがより好ましい。アルカリ金属類の水酸化化合物またはその水和物は、単独でも、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
ここで、第4級アンモニウム水酸化物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0039】
【化4】

(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、またはアリール基を表す。)
【0040】
一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基など)、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基など)、ベンジル基、またはアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ナフタレン基など)を表す。なかでも、アルキル基、ヒドロキシエチル基、ベンジル基が好ましい。
【0041】
一般式(1)で表される化合物として、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、およびコリンよりなる群から選ばれる少なくとも1つの第4級アンモニウム水酸化物であることが好ましい。
なかでも、本発明においてはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、または、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、コリンを用いることがより好ましい。特に、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンが好ましい。第4級アンモニウム水酸化物は、単独でも、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ金属水酸化物または第4級アンモニウム水酸化物は、それぞれの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明の洗浄液中におけるアルカリ性化合物(無機アルカリ化合物、一般式(1)で表される第4級アンモニウム水酸化物など)の含有量は、洗浄液全体の質量に対して、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。アルカリ性化合物の含有量が上記の数値の範囲内であると、フォトレジスト、反射防止膜、エッチング残渣、および、アッシング残渣を十分に除去することができ、加えてSiOCを主体とする層間絶縁膜や、シリコン基板の腐食を抑止または低減できるため好ましい。
【0043】
<その他>
本発明の洗浄液は水溶液であり、水の含有量は洗浄液全体の質量に対して50〜98質量%であることが好ましい。また本発明の洗浄液では、ヘテロ環含有の金属腐食防止剤、例えばベンゾトリアゾールなどを使用しないことが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0044】
本発明の洗浄液は、必要に応じて、水溶性有機溶剤、ふっ素含有化合物、キレート剤を含んでいてもよい。これらを含有することにより、さらに好ましい性能を得ることができる。
【0045】
<水溶性有機溶媒>
本発明の洗浄液は、水溶性有機溶剤を含有してもよい。水溶性有機溶剤は、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤、ホルムアミド、モノメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、モノメチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、モノエチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶剤、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン系溶剤等が挙げられる。
これらの中で好ましいのはアルコール系、エーテル系、アミド系、含硫黄系溶剤で、さらに好ましくは、1,6−ヘキサンジオール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドンおよびジメチルスルホキシドである。水溶性有機溶剤は、単独でも、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0046】
本発明の洗浄液においては、特に上記エーテル系溶剤を含有する事が好ましい。なかでも、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(特に、分子量300以下)が好ましい。上記エーテル系溶剤を含有することにより、洗浄液後の水洗時間を短縮しても残渣除去性能がより優れる。
【0047】
洗浄液中における水溶性有機溶剤の含有量は、洗浄液の全質量に対して、好ましくは0〜40質量%の濃度で使用され、より好ましくは0〜20質量%の濃度で使用され、特に好ましくは0.0001〜0.5質量%の濃度で使用される。水溶性有機溶剤を洗浄液に添加することで、エッチング残渣物の除去を促進することができるため好ましい。
【0048】
<ふっ素含有化合物>
本発明の洗浄液は、ふっ素含有化合物を含有してもよい。ふっ素含有化合物は、ふっ化水素酸と、アンモニアまたは有機アミンとが反応して生成するふっ化物塩である。例えば、ふっ化アンモニウム、酸性ふっ化アンモニウム、メチルアミンふっ化水素塩、エチルアミンふっ化物塩、プロピルアミンふっ化物塩、ふっ化テトラメチルアンモニウム、ふっ化テトラエチルアンモニウム、エタノールアミンふっ化水素塩、トリエチレンジアミンふっ化水素塩などが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
洗浄液中におけるふっ素含有化合物の含有量は、洗浄液の全質量に対して、好ましくは0〜10質量%の濃度で使用される。ふっ素含有化合物を洗浄液に加えて添加することで、フォトレジスト、反射防止膜、エッチング残渣、および、アッシング残渣の除去を促進することができるため好ましい。
【0050】
<キレート剤>
本発明の洗浄液は、キレート剤を含有してもよい。キレート剤としては、例えば、アミノポリカルボン酸塩群{エチレンジアミンテトラ酢酸塩(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩(HEDTA)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸塩(DHEDDA)、ニトリロ酸酢酸塩(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸塩(HIDA)、β−アラニンジ酢酸塩、アスパラギン酸ジ酢酸塩、メチルグリシンジ酢酸塩、イミノジコハク酸塩、セリンジ酢酸塩、ヒドロキシイミノジコハク酸塩、ジヒドロキシエチルグリシン塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など}、ヒドロキシカルボン酸塩群{ヒドロキシ酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩など}、シクロカルボン酸塩群{ピロメリット酸塩、ベンゾポリカルボン酸塩、シクロペンタンテトラカルボン酸塩など}、エーテルカルボン酸塩群{カルボキシメチルタルトロネート、カルボキシメチルオキシサクシネート、オキシジサクシネート、酒石酸モノサクシネート、酒石酸ジサクシネートなど}、その他カルボン酸塩群{マレイン酸誘導体、シュウ酸塩など}、有機カルボン酸(塩)ポリマー群{アクリル酸重合体および共重合体(アクリル酸−アリルアルコール共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ヒドロキシアクリル酸重合体、多糖類−アクリル酸共重合体など)、多価カルボン酸重合体および共重合体群{マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、テトラメチレン−1,2−ジカルボン酸、コハク酸、アスパラギン酸、グルタミン酸などのモノマーの重合体および共重合体}、グリオキシル酸重合体、多糖類群{デンプン、セルロース、アミロース、ペクチン、カルボキシメチルセルロースなど}、ホスホン酸塩群{メチルジホスホン酸塩、アミノトリスメチレンホスホン酸塩、エチリデンジホスホン酸塩、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸塩、エチルアミノビスメチレンホスホン酸塩、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸塩、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸塩、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、プロピレンジアミンテトラメチレンホスホン酸塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸塩、トリエチレンテトラミンヘキサメチレンホスホン酸塩およびテトラエチレンペンタミンヘプタメチレンホスホン酸塩など}などが挙げられる。
なお、これらの塩としては、アンモニウム塩、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、トリエタノールアミンなど)塩などが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
洗浄液中におけるキレート剤の含有量は、洗浄液の全質量に対して、好ましくは0〜10質量%の濃度で使用される。キレート剤を洗浄液に加えて添加することで、金属含有残渣物の除去を促進することができるため好ましい。
【0052】
<洗浄対象物>
本発明において、洗浄対象物である半導体デバイスの材質としては、シリコン、非晶性シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、銅、チタン、チタン−タングステン、窒化チタン、タングステン、タンタル、タンタル化合物、クロム、クロム酸化物、アルミニウム等の半導体配線材料、あるいはガリウム−砒素、ガリウム−リン、インジウム−リン等の化合物半導体等が施された半導体基板、ポリイミド樹脂等のプリント基板、LCDなどに使用されるガラス基板等が挙げられる。
また、本発明の洗浄液は、層間絶縁膜を有する半導体デバイス(例えば、半導体デバイス基板)に対しても好適に使用することができる。層間絶縁膜としては、好ましくは誘電率kが3.0以下、より好ましくは2.6以下であり、具体的な層間絶縁膜の材料としてはSiOC系材料、ポリイミドなどの有機系ポリマーなどが挙げられる。なお、本発明の洗浄液が用いられる半導体デバイス(半導体素子)の具体例としては、例えば、集積回路(IC、LSI)などの半導体デバイス用基板などが挙げられる。なお、半導体デバイス基板としては、例えば、基材表面に金属配線が形成された単層基板、その表面に層間絶縁膜などを介して配線が形成されてなる多層配線基板、さらにフォトレジストが積層している多層配線基板などが挙げられる。本発明の洗浄液ではこれらの材質(配線材料、層間絶縁膜材料など)を腐食することはなく、残渣物を除去することができる。
【0053】
<洗浄方法>
本発明の洗浄方法は、本発明の洗浄液を調製後(洗浄液調製工程)、得られた洗浄液を用いて半導体デバイスを洗浄し、フォトレジスト、反射防止膜、エッチング残渣、および、アッシング残渣などを除去する洗浄工程を備えることを特徴とする。
【0054】
本発明の洗浄液の調製方法については、特に制限されない。例えば、還元剤、界面活性剤、必要に応じて使用することができる無機アルカリ化合物、第4級アンモニウム水酸化物などを混合ミキサーなどのかくはん機を用いて十分に混合することにより製造することができる。また、設定pHに予め調整しておいてから混合する方法、あるいは混合後に設定pHに調整する方法を用いることもできる。
【0055】
洗浄工程は、公知のいずれの方法により行うことができる。洗浄液と洗浄するフォトレジスト等とを接触させる方法としては、例えば、浸漬法、噴霧法、および、枚葉方式を用いた方法等が挙げられる。より具体的には、洗浄槽に洗浄液を満たして半導体デバイス(例えば、半導体集積回路基板など)を浸漬させるディップ式、基板に洗浄液を噴霧して洗浄するスプレー式、ノズルから基板上に洗浄液を流しながら基板を高速回転させるスピン式などが挙げられる。
【0056】
本発明の洗浄方法を実施する際の洗浄液の温度は、用いる方法、エッチング条件や使用される洗浄対象物により適宜選択することができるが、15〜100℃の範囲であることが好ましく、15〜80℃の範囲であることがより好ましく、20〜55℃の範囲であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、残渣物の除去性と基板や絶縁膜などに対する腐食性の両者がより優れ、かつ低温プロセスで実施できるため特別な装置などを必要とせず好ましい。
【0057】
本発明の洗浄液とフォトレジストなどとを接触させる時間は、洗浄方法などにより適宜選択されるが、30秒〜30分間が好ましく、30秒〜10分間がより好ましく、30秒〜5分間がさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、フォトレジスト、反射防止膜、エッチング残渣物、および、アッシング残渣を十分に除去でき、洗浄方法に要する時間が短時間であるので好ましい。
【0058】
本発明の洗浄方法において、洗浄液による洗浄工程を2回以上繰り返してフォトレジスト等を除去することも好ましい。洗浄工程を2回以上繰り返すことにより、フォトレジスト等の除去性能が向上するので好ましい。洗浄工程はフォトレジスト等が完全に除去されるまで任意の回数で繰り返すことができるが、1〜3回繰り返すことが好ましく、1〜2回繰り返すことがさらに好ましい。
【0059】
本発明の洗浄方法は、上記洗浄工程において必要に応じて超音波を併用することができる。
【0060】
洗浄対象物上のフォトレジスト等を除去した後に、必要に応じて半導体デバイスを洗浄(リンス)してもよい。リンスとしては、常温の水または50℃程度の温水、または、イソプロパノールが好ましい。エッチングにより変質が進行したフォトレジストの洗浄に対しては、過酸化水素を含む溶液での前処理が有効であるが本発明においては必ずしも必要ではない。
【0061】
本発明の洗浄液を使用した洗浄工程としては、例えば、表面に銅などの金属配線や層間絶縁膜などを有する基板の場合、銅膜に対してCMP(Chemical Mechanical Polishing)を行った後の洗浄工程、配線上の層間絶縁膜にドライエッチングによりホールを開けた後の洗浄工程、フォトレジストに対するドライアッシング処理を行った後の洗浄工程などが挙げられる。
【0062】
本発明の洗浄方法の好適な実施態様として、半導体デバイスのドライエッチング工程後に、上述の洗浄処理(洗浄工程)を行うことが挙げられる。より詳細には、所望の半導体デバイスにドライエッチング処理を施した後、エッチング残渣物やフォトレジストを除去するために、該半導体デバイスを上述の洗浄液を用いて洗浄する。一般的なフォトリソグラフィー技術においては、ドライエッチング処理後にフォトレジストの除去のために特定のフォトレジスト剥離液によるウェットエッチング処理や、ドライアッシング処理が施される。一方、本発明の洗浄液を用いれば、そのような処理工程を経ることなく、ドライエッチング工程後に洗浄工程を実施してフォトレジストやエッチング残渣物を除去することができる。よって、ドライアッシング工程を経ないことで、層間絶縁膜素材(特にLow−k素材)に対するダメージを少なく保つことができ、さらに、処理工程を簡略化でき、半導体デバイスの製造時間が短縮化できると共に、製造コストを抑えることができる。
【実施例】
【0063】
実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によりなんら制限されるものではない。
【0064】
シリコン基板上に、銅、SiOC系層間絶縁膜(Low−k膜:k値2.6)、SiO膜(TEOS膜)、メタルハードマスク(TiまたはTiN)、反射防止膜、およびフォトレジストを順次成膜し、露光、現像したフォトレジストをマスクとしてドライエッチングを行い、ビアホールを形成し、銅、層間絶縁膜、メタルハードマスク、反射防止膜およびフォトレジストがビアホールの内壁面に露出したパターンウェハを得た。
このパターンウェハの断面を走査電子顕微鏡写真(SEM:Scanning Electron Microscope)で確認すると、ビアホール壁面にはエッチング残渣が認められた。
【0065】
<実施例1〜11、および比較例1〜5>
続いて、表1に見られる組成の洗浄液1〜16を調液した(界面活性剤の例としてあげられているエマルゲンは花王株式会社より、サーフィノールは日信化学工業株式会社より販売されているノニオン性界面活性剤である。)。
表1に記載した温度に調温した各溶液に上記パターンウェハの切片(約2cm×2cm)を浸漬し、表1に記載した浸漬時間後にパターンウェハの切片を取り出し、直ちに超純水で水洗、N乾燥を行った。浸漬試験後のパターンウェハの切片の断面および表面をSEMで観察し、フォトレジスト、反射防止膜、エッチング残渣の除去性、および、銅、Ti、TiN、シリコン基板、SiO、SiOC系層間絶縁膜の腐食性について下記の判断基準に従って評価を行った。なお、浸漬温度を20〜55℃、浸漬時間を1分〜20分の範囲で浸漬試験を行い、その後の水洗時間を60秒と30秒の条件で行い、除去性、腐食性の評価結果を表1にまとめた。
【0066】
評価基準を以下に示す。
《除去性》
A: フォトレジスト、反射防止膜、エッチング残渣が完全に除去された。
B: フォトレジスト、反射防止膜、エッチング残渣の溶解不良物が残存していた。
C: フォトレジスト、反射防止膜、エッチング残渣がほとんど除去されていなかった。
【0067】
《腐食性(1)》
A: 銅、Ti、TiN、シリコン基板に腐食が全く認められなかった。
B: 銅、Ti、TiN、シリコン基板のうち少なくとも一つの材料に若干の腐食が認められた。
C: 銅、Ti、TiN、シリコン基板のうち少なくとも一つの材料に大きな腐食が認められた。
【0068】
《腐食性(2)》
A: SiO、SiOC系層間絶縁膜に腐食が全く認められなかった。
B: SiO、SiOC系層間絶縁膜に若干の腐食が認められた。
C: SiO、SiOC系層間絶縁膜に大きな腐食が認められた。
【0069】
上記評価においては、除去性、腐食性において全てAであることが望ましく、実用上Cがないことが望ましい。また、短時間、低温度で評価Aになることがさらに望ましい。
【0070】
表1で示すように、本発明の洗浄液および洗浄方法を適用した実施例1〜11において、銅、Ti、TiN、シリコン基板、SiO、SiOC系層間絶縁膜の腐食が無く、フォトレジスト、反射防止膜およびエッチング残渣の除去性に優れていた。本発明の洗浄液を用いた洗浄では、浸漬温度、浸漬時間を比較的自由に選ぶことができ、低温度、短時間での洗浄が可能であり、浸漬時間延長の強制条件においても、銅、Ti、TiN、シリコン基板、SiO、SiOC系層間絶縁膜への腐食の進行がなかった。なお、エーテル系溶媒を含む実施例9〜11においては、より短時間でフォトレジスト等の残渣物を除去することができた。
比較例1〜5においては、浸漬時間、浸漬温度の調整を行っても十分な除去性、腐食性を示すものがなかった。
【0071】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤および界面活性剤を含み、pHが10〜14である半導体デバイス用洗浄液。
【請求項2】
前記還元剤が、ヒドロキシルアミンまたはその誘導体である請求項1に記載の半導体デバイス用洗浄液。
【請求項3】
前記還元剤が、亜ジチオン酸塩、二亜硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ジチオン酸塩、およびトリチオン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項1に記載の半導体デバイス用洗浄液。
【請求項4】
さらに、無機アルカリ化合物または一般式(1)で表される第4級アンモニウム水酸化物を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体デバイス用洗浄液。
【化1】

(一般式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、またはアリール基を表す。)
【請求項5】
前記無機アルカリ化合物が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、および水酸化セシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項4に記載の半導体デバイス用洗浄液。
【請求項6】
前記界面活性剤が、カチオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤である請求項1〜5のいずれかに記載の半導体デバイス用洗浄液。
【請求項7】
前記カチオン性界面活性剤が、第4級アンモニウム塩系界面活性剤、またはアルキルピリジウム系界面活性剤である請求項6に記載の半導体デバイス用洗浄液。
【請求項8】
前記ノニオン性界面活性剤が、ポリプロピレンオキサイドポリエチレンオキサイド系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドトリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤、およびポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載の半導体デバイス用洗浄液。
【請求項9】
洗浄液全量に対してエーテル系溶剤を0.0001〜0.5質量%含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の半導体デバイス用洗浄液。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の半導体デバイス用洗浄液を用いて、半導体デバイスを洗浄する半導体デバイスの洗浄方法。
【請求項11】
ドライエッチング工程の後に、請求項1〜9のいずれかに記載の半導体デバイス用洗浄液を用いて半導体デバイスを洗浄する洗浄工程を実施することを特徴とする半導体デバイスの洗浄方法。
【請求項12】
前記半導体デバイスが、誘電率kが3.0以下の層間絶縁膜を有する半導体デバイスである請求項10または11に記載の半導体デバイスの洗浄方法。

【公開番号】特開2009−260249(P2009−260249A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325827(P2008−325827)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】