説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】シリサイド層とシリコンの界面抵抗を低く保ちつつ、シリサイド層からの金属元素の拡散を抑制し、リーク電流および寄生抵抗を小さくする。
【解決手段】半導体装置100は、基板1(半導体層)と、基板1に接して形成され、基板1とは逆導電型の半導体電極10と、半導体電極10上に半導体電極10に接して形成されたシリサイド層14と、ゲッタリング層12内部において、基板1と半導体電極10との接合およびシリサイド層14からそれぞれ離れて形成され、シリサイド層14に含まれる金属元素をゲッタリングするゲッタリング層12と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、とくに、シリサイド層を含む半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信機器やデジタル映像機器の発達に伴い、LSIに要求される処理能力はますます高いものになっており、MIS型電界効果トランジスタの高速化が図られている。この高速化は主として構造の微細化および高密度化によって進められてきた。
【0003】
とくに、大量のデータを高速に処理しなくてはならないデジタル映像機器やゲーム機器用のLSIでは、従来の混載SRAMだけではキャッシュメモリの処理能力を満たすことができず、より大容量のキャッシュメモリを実現できるDRAMを混載するようになってきた。
【0004】
DRAMをロジック演算用のトランジスタと混載する混載DRAMでは、DRAM用のトランジスタは、ロジック演算用のトランジスタと同一製造プロセスで製造される。しかし、ロジック演算用のトランジスタとDRAM用のトランジスタとでは、たとえば、DRAM用のトランジスタは非常に低いリーク電流が要求される一方、ロジック演算用のトランジスタではリーク電流がそれほど問題とならない等、異なる特性が必要とされる。そのため、混載DRAMでは、DRAMに特化して製造する汎用DRAMのようにリーク電流を減らすことが難しいという課題があった。
【0005】
たとえば、ロジック演算用のトランジスタでは、コンタクトとの接続抵抗を下げるために、トランジスタのソース・ドレイン電極上に、自己整合的にシリサイド層を形成するサリサイドプロセスが行われる。そのため、混載DRAMでは、DRAM用のトランジスタでもサリサイドプロセスが行われる。しかし、シリサイド層を形成する際に、ソース・ドレイン電極中に転位や積層欠陥等があると、その転位や積層欠陥等に沿ってシリサイドを構成する金属元素が拡散して周りのシリコンと反応しやすくなる。転位や積層欠陥等に沿ったスパイク形状のシリサイドが生じてシリサイド層がソース・ドレイン電極のPN接合に到達してしまうと、深刻なリーク元となってしまう。
【0006】
特許文献1(特開2005−268272公報)には、シリサイド層の真下にシリサイド化反応抑制領域を設けた方法が開示されている。
【0007】
特許文献2(特開2006−108703公報)には、シリサイド層の真下のソース・ドレイン領域に残留欠陥が多い高濃度層を設け、シリサイドの異常成長を分散させ異常成長を浅い位置に留めるようにした構成が記載されている。
【0008】
特許文献3(特開平11−214328公報)には、シリサイドの真下にFを含むゲッタリング領域を形成した構成が開示されている。
【0009】
特許文献4(特開2005−259956公報)には、素子分離領域を有する半導体基板と、前記半導体基板に形成された拡散領域と、前記半導体基板上に形成されたゲート電極と、前記拡散領域上に形成され、F原子を含むF含有NiSi層とを具備したn型MOSFETが記載されている。
【0010】
また、特許文献5(特開2008−300831号公報)には、基板上に非晶質シリコン層を形成して、非晶質シリコン層を結晶化誘導金属を利用して多結晶シリコン層に結晶化して、多結晶シリコン層でチャネル領域が形成される以外の領域に対応する多結晶シリコン層の上部または下部の一定領域と接する金属層パターンまたは金属シリサイド層パターンを形成して、基板を熱処理して多結晶シリコン層でチャネル領域が形成される領域に存在する結晶化誘導金属を金属層パターンまたは金属シリサイド層パターンが形成された領域に対応する多結晶シリコン層内の領域にゲッタリングする多結晶シリコン層の製造方法が記載されている。
【0011】
当該文献には、以下の記載がある。金属層パターンまたは金属シリサイド層パターンが形成された領域に対応する多結晶シリコン層内の領域では、金属層パターンの金属が多結晶シリコン層と結合して金属シリサイドを形成したり金属シリサイド層パターンの金属シリサイドが領域に移動する。そのため、熱処理を行うと、結晶化誘導金属が無秩序に移動して金属層パターンまたは金属シリサイド層パターンが形成された領域に対応する多結晶シリコン層内の領域に拡散し、この領域に存在することが熱力学的に安定する。これにより、結晶化誘導金属が、ゲッタリングされる。
【0012】
また、当該文献には、ゲッタリング効果を増大させるために金属層パターンまたは金属シリサイド層パターンが形成された領域に対応する半導体層内の領域にn型不純物やp型不純物をさらに注入したり、この領域にイオンやプラズマを利用してダメージ(damage)領域を形成することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−268272公報
【特許文献2】特開2006−108703公報
【特許文献3】特開平11−214328公報
【特許文献4】特開2005−259956公報
【特許文献5】特開2008−300831号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】B. Colombeau et. al.、"Electrical Deactivation and Diffusion of Boron in Preamorphized Ultrashallow Junctions: Interstitial Transport and F co-implant Control"、IEDM2004・テクニカルダイジェスト、971〜974ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献3や特許文献4に記載されたように、シリサイドを構成する金属をゲッタリングするためにフッ素等の不純物を添加すると、ソース・ドレイン領域等の活性領域のドーパントの活性化率や固溶限を低下させ、シリサイドとシリコンの界面抵抗(接触抵抗、コンタクト抵抗とも呼ぶ)が増大し得る。たとえば、非特許文献1には、ボロンとフッ素とが複合体をつくり、ボロンの不活性化が促進されることが記載されている。
【0016】
また、ゲッタリング領域に添加する不純物によっては、シリサイドのでき栄えに影響を与える可能性がある。たとえば、不純物として酸素を用いた場合、酸素の存在によりシリサイド化反応が阻害され、良好なシリサイドが形成できないという課題が生じる。また、結晶欠陥を用いてゲッタリング領域を形成した場合、結晶欠陥が存在する部分にだけシリサイドがスパイク状に形成され、膜厚ばらつきが大きいシリサイドが形成されてしまうという課題が生じる。
【0017】
また、特許文献5に記載の技術では、チャネル領域が形成される領域に存在する結晶化誘導金属を、チャネル領域とソース・ドレイン領域との接合を通過させて、金属層パターンまたは金属シリサイド層パターンが形成された領域に対応する多結晶シリコン層内の領域に移動させている。そのため、界面に結晶化誘導金属が偏在することになり、接合リークが生じやすくなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、
半導体層と、
前記半導体層に接して形成され、前記半導体層とは逆導電型の半導体電極と、
前記半導体電極上に当該半導体電極に接して形成されたシリサイド層と、
前記半導体電極内部において、前記半導体層と前記半導体電極との接合および前記シリサイド層からそれぞれ離れて形成され、金属元素をゲッタリングするゲッタリング層と、
を含む半導体装置が提供される。
【0019】
本発明によれば、
シリサイド層を含む半導体装置の製造方法であって、
半導体層に接して設けられるとともに、前記半導体層との接合から離れた位置に、金属元素をゲッタリングするゲッタリング層を含み、前記半導体層とは逆導電型の半導体電極を形成する工程と、
前記半導体電極を形成する工程の後に、前記半導体電極上に当該半導体電極に接するとともに、前記ゲッタリング層から離れた位置にシリサイド層を形成する工程と、
を含む半導体装置の製造方法が提供される。
【0020】
この構成によれば、シリサイド層とゲッタリング層とが離れて形成されている。そのため、シリサイド層を形成する際に、ゲッタリング層の存在がシリサイド層に影響を与えることがない。これにより、シリサイド層を良好に接続することができ、シリサイド層と半導体電極との界面抵抗を低く保つことができる。
【0021】
また、ゲッタリング層の存在がシリサイド層に影響を与えないため、シリサイド層のでき栄えを気にすることなく、ゲッタリング層の形成条件を選択することができる。
【0022】
さらに、ゲッタリング層が半導体電極と半導体層との接合から離れているため、接合リークを低減することもできる。
【0023】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、シリサイド層とシリコンの界面抵抗を低く保ちつつ、シリサイド層からの金属元素の拡散を抑制し、リーク電流および寄生抵抗を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態における半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図6】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図7】ゲッタリング層として機能する結晶欠陥が形成されるメカニズムを説明するための手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
半導体装置100は、基板1(半導体層)と、基板1に形成された素子分離絶縁膜2と、素子分離絶縁膜2で囲まれた素子形成領域とを含む。基板1は、シリコン基板等の半導体基板とすることができる。
【0028】
半導体装置100の素子形成領域には、ソース・ドレイン電極として機能する半導体電極10と、ゲート絶縁膜3、ゲート電極4、およびサイドウォールスペーサ6により構成されたゲートとを含むMIS型電界効果トランジスタが形成される。半導体電極10は、基板1に接して形成されている。ここで、半導体電極10は、基板1とは逆導電型とすることができる。
【0029】
また、本実施の形態において、半導体装置100は、半導体電極10上に半導体電極10に接して形成されたシリサイド層14と、半導体電極10内部において、基板1と半導体電極10との接合(PN接合)およびシリサイド層14からそれぞれ離れて形成され、金属元素をゲッタリングするゲッタリング層12とを含む。ゲッタリング層12は、シリサイド層14に含まれる金属元素をゲッタリングすることができる。本実施の形態において、シリサイド層14は、ニッケルシリサイド等のニッケルを含むシリサイドとすることができる。また、本実施の形態において、半導体電極10は、ソース・ドレイン拡張領域5、ソース・ドレイン領域7(第1の不純物拡散領域)、ゲッタリング層12およびせり上げソース・ドレイン領域13(第2の不純物拡散領域)により構成される。せり上げソース・ドレイン領域13は、基板1の主表面からせり上がった構成(半導体層の主表面からせり上がった部分)とすることができる。ここで、不純物拡散領域とは、半導体に不純物が添加されている領域、という一般的な意味であり、拡散のみによって不純物を添加する、ということにはこだわらない。たとえば、不純物を添加しながら半導体結晶をエピタキシャル成長した場合をも指すこととする。
【0030】
また、半導体装置100は、基板1上に形成され、ゲートを覆う絶縁膜60と、絶縁膜60中に形成され、シリサイド層14を介して半導体電極10と接続されたコンタクト62とを含む。ここで、絶縁膜60は単層として示しているが、絶縁膜60は複数の絶縁膜の積層構造とすることもでき、たとえばライナー絶縁膜等を含むこともできる。また、ここでは図示していないが、本実施の形態において、半導体電極10は、シリサイド層14を介して、DRAMの記憶ノード等、電荷蓄積型の記憶装置に接続された構成とすることができる。
【0031】
次に、本実施の形態における半導体装置100の製造手順を説明する。図2および図3は、本実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
まず、基板1に素子分離絶縁膜2を形成する。素子分離絶縁膜2は、たとえば、フィールド酸化膜とすることができる。つづいて、基板1上にゲート絶縁膜3を形成する。次いで、ゲート絶縁膜3上にゲート電極4を形成する。その後、ゲート電極4およびゲート絶縁膜3をマスクとして、イオン注入により基板1表面に不純物をドーピングし、ソース・ドレイン拡張領域5を形成する。つづいて、CVD(化学気相成長:Chemical Vapor Deposition)法でたとえばシリコン酸化膜等の絶縁膜を全面に堆積し、異方性エッチングにより、ゲート絶縁膜3およびゲート電極4の側壁に、サイドウォールスペーサ6を形成する。これにより、図2(a)に示した構成の半導体装置100が得られる。
【0032】
次いで、ゲート電極4およびサイドウォールスペーサ6をマスクとして、イオン注入により基板1表面に不純物をドーピングし、熱処理によって活性化して、深いソース・ドレイン領域7を形成する(図2(b))。
【0033】
この後、ゲート電極4およびサイドウォールスペーサ6をマスクに用いて、異方性のエッチングにより、ソース・ドレイン領域7を部分的にエッチングし、掘り込み領域11を形成する(図2(c))。ここで、掘り込み領域11は、基板1とソース・ドレイン領域7とのPN接合に達しないように形成する。つまり、掘り込み領域11は、基板1が露出しないように形成することができ、掘り込み領域11の底部および側面にソース・ドレイン領域7が露出するようにする。
【0034】
つづいて、掘り込み領域11の底部に露出したソース・ドレイン領域7表面に、不純物を浅くイオン注入して熱処理を加え、シリサイド層14を構成する金属元素のゲッタリングサイトとして機能するゲッタリング層12を形成する(図3(a))。ゲッタリング層12は、基板1とソース・ドレイン領域7とのPN接合に達しないように形成する。また、この際、ゲッタリング層12の表面にアモルファス層が残留しないように熱処理を行う。これにより、後の埋め戻し工程におけるシリコンの選択成長を容易に行うことができる。
【0035】
本実施の形態において、イオン注入する不純物は、当該不純物を半導体中にイオン注入することにより、シリサイド層14を構成する金属元素のゲッタリングサイトとして機能する領域が形成される元素とすることができる。イオン注入する不純物は、たとえばカーボン、酸素、窒素、フッ素、または希ガス元素の少なくとも一つを含む構成とすることができる。
【0036】
本実施の形態において、イオン注入する不純物は、たとえばカーボンとすることができる。カーボンは、シリコン中でいくつかの形態のSi−Cクラスタを形成し、このSi−Cクラスタが歪み場を誘起して金属元素をゲッタリングすることができる。また、カーボンは、シングルカーボンイオンとすることもできるが、シングルカーボンイオンではなく、クラスタカーボンイオンとすることもできる。クラスタカーボンイオンとしては、たとえば、C、C1414、C1610等とすることができる。クラスタカーボンを用いることにより、不純物を浅く注入することができ、ゲッタリング層12が、基板1とソース・ドレイン領域7とのPN接合に達しないように形成しやすくすることができる。
【0037】
つづいて、ソース・ドレイン拡張領域5およびソース・ドレイン領域7と同導電型の不純物をドーピングしながら、選択成長法により掘り込み領域11上に結晶層を形成して、せり上げソース・ドレイン領域13を形成する(図3(b))。
【0038】
次いで、基板1上の全面に金属層を形成し、熱処理によって、当該金属層がシリコンと接している部分で金属層の金属元素とシリコンとを反応させ、シリサイド層14を形成する。その後、未反応の金属層を除去する(図3(c))。ここで、金属層は、ニッケル層とすることができる。この場合、シリサイド層14は、ニッケルシリサイドとすることができる。本実施の形態において、シリサイド層14は、ゲッタリング層12と接しないように形成される。
【0039】
なお、図示していないが、ゲート電極4をシリコン材料により構成した場合、シリサイド層14が形成される工程で、ゲート電極4表面にもシリサイド層が形成された構成とすることができる。
【0040】
この後、基板1上に、ゲートを覆うように絶縁膜60を形成する。つづいて、絶縁膜60に半導体電極10上のシリサイド層14に達するコンタクトホールを形成した後、当該コンタクトホールを導電材料を埋め込むことにより、コンタクト62を形成する。以上の手順により、図1に示した構成の半導体装置100が得られる。
【0041】
本実施の形態において、シリサイド層14とゲッタリング層12とが離れて形成されている。そのため、シリサイド層14を形成する際に、ゲッタリング層12の存在がシリサイド層14に影響を与えることがない。これにより、シリサイド層14を良好に接続することができ、シリサイド層14と半導体電極10との界面抵抗を低く保つことができる。
【0042】
また、ゲッタリング層12の存在がシリサイド層14に影響を与えないため、シリサイド層14のでき栄えを気にすることなく、ゲッタリング層12の形成条件を選択することができる。
【0043】
さらに、シリサイド層14を形成する際に、ゲッタリング層12が形成されているため、シリサイド層14またはこれを形成するための金属層からの金属元素の拡散を抑制し、リーク電流および寄生抵抗を小さくすることができる。
【0044】
さらに、ゲッタリング層12が半導体電極10と基板1とのPN接合から離れているため、接合リークを低減することもできる。
【0045】
さらに、本実施の形態において、ソース・ドレイン領域7上にゲッタリング層12を形成した後に、ゲッタリング層12の上にせり上げソース・ドレイン領域13を形成している。そのため、シリサイド層14とゲッタリング層12との距離をせり上げソース・ドレイン領域13によりかさ上げすることができ、基板1と半導体電極10との接合界面とゲッタリング層12との距離、および半導体電極10とシリサイド層14との界面とゲッタリング層12との距離のマージンを増やすことができ、製造の自由度を増すことができる。
【0046】
(第2の実施の形態)
図4は、本実施の形態における半導体装置100の構成の一例を示す断面図である。
本実施の形態において、半導体電極10およびゲッタリング層の構成が第1の実施の形態と異なる。本実施の形態においては、ゲッタリング層として、結晶欠陥を含む第2の再結晶化領域24を用いる。
【0047】
本実施の形態において、半導体電極10は、ソース・ドレイン拡張領域5、ソース・ドレイン領域7、第2の再結晶化領域24、第1の再結晶化領域23、およびせり上げソース・ドレイン領域25により構成される。せり上げソース・ドレイン領域25は、基板1の主表面からせり上がった構成とすることができる。
【0048】
また、本実施の形態において、シリサイド層26は、第1の実施の形態で説明したシリサイド層14と同様とすることができる。
【0049】
次に、本実施の形態における半導体装置100の製造手順を説明する。図5および図6は、本実施の形態における半導体装置100の製造手順を示す工程断面図である。
図5(a)および図5(b)に示した手順は、第1の実施の形態において、図2(a)および図2(b)を参照して説明した手順と同様とすることができる。
【0050】
その後、ゲート電極4およびサイドウォールスペーサ6をマスクとして、ソース・ドレイン領域7に不純物51をイオン注入し、ソース・ドレイン領域7(不純物拡散領域)表面にアモルファス化領域である第1の領域21を形成するとともに、第1の領域21の下に、原子空孔と格子間原子とを含む第2の領域22を形成する(図5(c))。ここで、第1の領域21および第2の領域22が、基板1とソース・ドレイン領域7とのPN接合に接しないように形成する。
【0051】
不純物51は、ソース・ドレイン拡張領域5やソース・ドレイン領域7を構成する元素と同じ元素とすることができる。このような元素として、不純物51は、たとえばシリコンとすることができる。また、不純物51は、ソース・ドレイン拡張領域5およびソース・ドレイン領域7と同導電型のドーパントとなる元素とすることもできる。たとえば、ソース・ドレイン拡張領域5およびソース・ドレイン領域7がP型半導体の場合、不純物51は、シングルボロンまたはオクタデカボラン(B1822)等のボロンのクラスタとすることができる。また、ソース・ドレイン拡張領域5およびソース・ドレイン領域7がN型半導体の場合、不純物51は、リン、ヒ素、またはこれらのクラスタ(P等)とすることができる。クラスタイオンを用いることにより、アモルファス化領域である第1の領域21と原子空孔と格子間原子とを含む第2の領域22とを容易に形成することができる。
【0052】
また、他の例として不純物51は、カーボン、酸素、窒素、フッ素、または希ガス元素とすることもできる。第1の実施の形態で説明したように、これらの元素自体がシリサイド層を形成する金属元素のゲッタリングサイトとして働くため効果的にシリサイド層26を形成する金属元素をゲッタリングすることができる。
【0053】
この後、熱処理を施し、第1の領域21を欠陥を含まない第1の再結晶化領域23へ、第2の領域22を結晶欠陥を含む第2の再結晶化領域24へ変換する(図6(a))。結晶欠陥は、シリサイド層26を構成する金属元素のゲッタリングサイトとして機能する。本実施の形態において、第2の再結晶化領域24がゲッタリング層として機能する。
【0054】
この手順を図7を参照して説明する。
ソース・ドレイン領域7に、不純物51を注入すると(図7(a))、不純物51が基板1に衝突し、基板1を構成するシリコン原子は、不純物51によって弾き飛ばされる。不純物51は、衝突の過程で運動エネルギーを失い、第1の領域21および第2の領域22内に導入される。ソース・ドレイン領域7の最表面のシリコン原子は多数弾き飛ばされ、大部分のシリコン原子が弾き飛ばされた状態になり、第1の領域21はアモルファス化領域に変異する。また、第1の領域21の下の領域では、不純物51が基板1に衝突することにより、原子空孔53と格子間シリコン52とが生じる(図7(b))。
【0055】
この状態で熱処理を施すと、不純物51(格子間原子)、格子間シリコン52、および原子空孔53を含む第2の領域22では、熱処理によって、不純物51または格子間シリコン52が原子空孔53に収まる。ここで、格子間原子である不純物51が原子空孔53より過剰に存在するため、原子空孔53に収まりきれなかった不純物51により、欠陥57({311}欠陥)や欠陥58(EOR(End-of-Range)欠陥)が生成される(図7(c))。そのため、第2の領域22は、熱処理によって、結晶欠陥を含む第2の再結晶化領域24に変換される。
【0056】
一方、アモルファス化領域である第1の領域21では、第2の領域22との界面から、固層成長と呼ばれる原子の再配列が起きる。固層成長は第2の領域22との界面から表面に向かって進行し、第1の領域21は、最終的に結晶欠陥を含まない第1の再結晶化領域23に変換される。
【0057】
なお、{311}欠陥やEOR欠陥は、準安定な状態であるため、熱処理を継続すると、原子が脱離してこれらの結晶欠陥は消滅する。脱離した原子は表面に向かって拡散し、新しい結晶表面を構成する。そのため、熱処理を継続すると、結晶欠陥を含む第2の再結晶化領域24も、結晶欠陥を含まない再結晶領域に変換される。本実施の形態においては、第2の再結晶化領域24の結晶欠陥が存在する範囲で熱処理を行うことができる。
【0058】
このような熱処理条件として、たとえば、RTA(ラピッド・サーマル・アニーリング)で700℃以上900℃以下程度の温度で1秒程度、またはMSA(ミリセカンド・アニーリング)で1000℃以上1250℃以下程度の温度で1ミリ秒程度とすることができる。
【0059】
図6に戻り、つづいて、ソース・ドレイン拡張領域5およびソース・ドレイン領域7と同導電型の不純物をドーピングしながら、選択成長法により第1の再結晶化領域23上に結晶層を形成して、せり上げソース・ドレイン領域25を形成する(図6(b))。せり上げソース・ドレイン領域25は、後にシリサイド層26を形成した後にも基板1の主表面からせり上がった部分を有するように形成することができる。本実施の形態において、とくに不純物51として、ソース・ドレイン拡張領域5やソース・ドレイン領域7を構成する元素以外の元素を用いた場合やソース・ドレイン拡張領域5およびソース・ドレイン領域7と同導電型の元素以外の元素を用いた場合、せり上げソース・ドレイン領域25を形成することにより、シリサイド層26を良好に形成することができ、界面抵抗を低く保つことができる。ただし、たとえば不純物51として、ソース・ドレイン拡張領域5やソース・ドレイン領域7を構成する元素と同じ元素やソース・ドレイン拡張領域5およびソース・ドレイン領域7と同導電型のドーパントとなる元素を用いた場合は、せり上げソース・ドレイン領域25の形成は省略することもできる。
【0060】
次いで、基板1上の全面に金属層を形成し、熱処理によって、当該金属層がシリコンと接している部分で金属層の金属元素とシリコンとを反応させ、シリサイド層26を形成する。その後、未反応の金属層を除去する(図6(c))。ここで、金属層は、ニッケル層とすることができる。この場合、シリサイド層26は、ニッケルシリサイドとすることができる。本実施の形態において、シリサイド層26は、第2の再結晶化領域24と接しないように形成される。
【0061】
この後、基板1上に、ゲートを覆うように絶縁膜60を形成する。つづいて、絶縁膜60に半導体電極10上のシリサイド層14に達するコンタクトホールを形成した後、当該コンタクトホールを導電材料を埋め込むことにより、コンタクト62を形成する。以上の手順により、図4に示した構成の半導体装置100が得られる。
【0062】
本実施の形態において、シリサイド層26とゲッタリング層として機能する、結晶欠陥を含む第2の再結晶化領域24とが離れて形成されている。そのため、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。また、シリサイド層26を形成する際に、第2の再結晶化領域24が形成されているため、シリサイド層26またはこれを形成するための金属層からの金属元素の拡散を抑制し、リーク電流および寄生抵抗を小さくすることができる。
【0063】
さらに、第2の再結晶化領域24が半導体電極10と基板1とのPN接合から離れているため、接合リークを低減することもできる。
【0064】
さらに、本実施の形態において、せり上げソース・ドレイン領域25を形成することにより基板1と半導体電極10との接合界面と第2の再結晶化領域24との距離、および半導体電極10とシリサイド層26との界面と第2の再結晶化領域24との距離のマージンを増やすことができ、製造の自由度を増すことができる。
【0065】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1 基板
2 素子分離絶縁膜
3 ゲート絶縁膜
4 ゲート電極
5 ソース・ドレイン拡張領域
6 サイドウォールスペーサ
7 ソース・ドレイン領域
10 半導体電極
11 掘り込み領域
12 ゲッタリング層
13 せり上げソース・ドレイン領域
14 シリサイド層
21 第1の領域
22 第2の領域
23 第1の再結晶化領域
24 第2の再結晶化領域
25 せり上げソース・ドレイン領域
26 シリサイド層
51 不純物
52 格子間シリコン
53 原子空孔
57 欠陥
58 欠陥
60 絶縁膜
62 コンタクト
100 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、
前記半導体層に接して形成され、前記半導体層とは逆導電型の半導体電極と、
前記半導体電極上に当該半導体電極に接して形成されたシリサイド層と、
前記半導体電極内部において、前記半導体層と前記半導体電極との接合および前記シリサイド層からそれぞれ離れて形成され、金属元素をゲッタリングするゲッタリング層と、
を含む半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体電極は、前記シリサイド層を介してコンタクトに接続された半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記半導体電極は、電界効果トランジスタのソース・ドレイン電極である半導体装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれかに記載の半導体装置において、
前記半導体電極は、前記シリサイド層を介して電荷蓄積型の記憶装置に接続されている半導体装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれかに記載の半導体装置において、
前記シリサイド層は、ニッケルを含むシリサイドである半導体装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれかに記載の半導体装置において、
前記半導体電極は、前記半導体層の主表面からせり上がった部分を有する半導体装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれかに記載の半導体装置において、
前記ゲッタリング層は、カーボン、酸素、窒素、フッ素、または希ガス元素の少なくとも一つを含む半導体装置。
【請求項8】
請求項1から7いずれかに記載の半導体装置において、
前記ゲッタリング層は、結晶欠陥を含む半導体装置。
【請求項9】
シリサイド層を含む半導体装置の製造方法であって、
半導体層に接して設けられるとともに、前記半導体層との接合から離れた位置に、金属元素をゲッタリングするゲッタリング層を含み、前記半導体層とは逆導電型の半導体電極を形成する工程と、
前記半導体電極を形成する工程の後に、前記半導体電極上に当該半導体電極に接するとともに、前記ゲッタリング層から離れた位置にシリサイド層を形成する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記シリサイド層を介して、前記半導体電極に接続するコンタクトを形成する工程をさらに含む半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の半導体装置の製造方法において、
前記シリサイド層は、ニッケルを含むシリサイドである半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項9から11いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体電極は、前記半導体層とは逆導電型の第1の不純物拡散領域および第2の不純物拡散領域を含み、
前記半導体電極を形成する工程は、
前記第1の不純物拡散領域の一部をマスクした状態で、前記半導体層に突き抜けないように前記第1の不純物拡散領域の上部部分を除去する工程と、
前記第1の不純物拡散領域上に、前記半導体層と前記第1の不純物拡散領域との接合に接しないように前記ゲッタリング層を形成する工程と、
前記ゲッタリング層上に、前記第2の不純物拡散領域となる結晶層を形成する工程と、
を含み、
前記シリサイド層を形成する工程において、前記第2の不純物拡散領域上に、前記ゲッタリング層に接しないように前記シリサイド層を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置の製造方法において、
前記結晶層を形成する工程において、前記結晶層が前記シリサイド層を形成した後にも前記半導体層の主表面からせり上がった部分を有するように、当該結晶層を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の半導体装置の製造方法において、
前記ゲッタリング層を形成する工程は、
カーボン、酸素、窒素、フッ素、または希ガス元素の少なくとも一つをイオン注入する工程と、
前記第1の不純物拡散領域表面にアモルファス化領域が残存しないように熱処理を行う工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項9から11いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体電極は、前記半導体層とは逆導電型の不純物拡散領域を含み、
前記半導体電極を形成する工程は、
前記不純物拡散領域の一部をマスクした状態で前記不純物拡散領域に不純物をイオン注入し、前記不純物拡散領域表面にアモルファス化領域である第1の領域を形成するとともに、当該第1の領域の下に原子空孔と格子間原子とを含む第2の領域を前記半導体層と前記不純物拡散領域との接合に接しないように形成する工程と、
熱処理により、前記第1の領域を欠陥を含まない第1の再結晶化領域に変換するとともに、前記第2の領域を、前記ゲッタリング層として、結晶欠陥を含む第2の再結晶化領域に変換する工程と、
を含み、
前記シリサイド層を形成する工程において、前記第2の再結晶化領域に接しないように前記シリサイド層を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体電極を形成する工程は、
前記第1の再結晶化領域および前記第2の再結晶化領域に変換する工程の後、前記シリサイド層を形成する工程の前に、前記不純物拡散領域上に、前記半導体電極の一部となる結晶層を形成する工程をさらに含み、
前記シリサイド層を形成する工程において、前記シリサイド層を前記結晶層に接して形成する半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の領域および第2の領域を形成する工程において、イオン注入する前記不純物は、前記不純物拡散領域を構成する元素と同じ元素である半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項15または16に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の領域および第2の領域を形成する工程において、イオン注入する前記不純物は、前記不純物拡散領域と同導電型のドーパントとなる元素である半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項15または16に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の領域および第2の領域を形成する工程において、イオン注入する前記不純物は、カーボン、酸素、窒素、フッ素、または希ガス元素の少なくとも一つである半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項15から19いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の領域および第2の領域を形成する工程において、イオン注入する前記不純物は、クラスタイオンである半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−151318(P2011−151318A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13399(P2010−13399)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】