説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】簡便な製造方法によって製造された良好なTFT特性を有する半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の半導体装置は、絶縁基板11と、絶縁基板11に支持されたチャネル領域33A、ソース領域34Aおよびドレイン領域35Aを含む半導体層30Aと、チャネル領域33Aの導電性を制御するゲート電極51とを有する。半導体層30Aは、チャネル領域33Aとソース領域34Aとの間に形成された第1低濃度領域31A、および、チャネル領域33Aとドレイン領域35Aとの間に形成された第2低濃度領域32Aとを有する。チャネル領域33A、第1および第2低濃度領域31Aおよび32Aは、ソースおよびドレイン領域34Aおよび35Aの不純物濃度より低い第1不純物濃度を有する。ゲート電極51は、第1および第2低濃度領域31Aおよび32Aの全部を覆うように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を備える半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型表示装置のスイッチング素子として、多結晶シリコン(p−Si)を用いたTFTがある(例えば特許文献1〜3)。多結晶シリコンを有するTFTの移動度は、アモルファスシリコン(a−Si)を有するTFTの移動度よりも高い。従って、多結晶シリコンTFTは画素用TFTのみでなく高速動作が要求される駆動回路用TFTにも用いられ得る。駆動回路やメモリ回路、ロジック回路(例えばクロック発生回路)などの機能回路に用いるためにTFTに要求される主な特性は、オン電流が大きいこと、オフ電流が小さいことおよび長期信頼性が高いことである。
【0003】
TFTの構造の1つとして、チャネル領域とソース領域との間およびチャネル領域とドレイン領域との間の少なくとも一方に低濃度領域(Lightly Doped Drain、以下「LDD領域」または「n-領域」という場合がある)を形成した構造がある。このような構造は「LDD構造」といわれている。LDD領域を形成することにより、チャネル領域のソース領域、および/またはドレイン領域の近傍における電界集中を緩和することができるので、オフ電流を小さくでき、かつ長期信頼性も高めることができる。しかしながら、LDD領域の抵抗が高いので、オン電流が低下するという問題を有する。
【0004】
この問題を解決するTFTの構造として、LDD領域がゲート電極にオーバーラップされた構造が知られている。このような構造は、「GOLD(Gate-drain Overlapped LDD)構造」といわれている。GOLD構造を有するTFTにおいては、ゲート電極に電圧を印加すると、ゲート電極とオーバーラップしたLDD領域でキャリアとなる電子が蓄積される。従って、LDD領域の不純物濃度を高めることなくLDD領域の抵抗を小さくすることができるので、TFTのオン電流の低下を抑え、長期信頼性を高めることができる(例えば特許文献2、3)。
【0005】
参考のために、特許文献1〜3の開示内容の全てを援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−10125公報
【特許文献2】特開2004−247536公報
【特許文献3】特開2009−237573公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2、3に記載の半導体装置の製造方法においては、非晶質半導体層を結晶化した後に行われるLDD領域を形成するための不純物のドーピングによって結晶が破壊され、結晶欠陥が生成される。従って、活性化工程で修復されない結晶欠陥は欠陥準位となり、TFTのオフ電流の増大の原因となる。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な製造方法によって製造される良好なTFT特性を有する半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半導体装置は、絶縁基板と、前記絶縁基板に支持された、チャネル領域、ソース領域およびドレイン領域を含む半導体層と、前記チャネル領域の導電性を制御するゲート電極とを備える半導体装置であって、前記半導体層は、前記チャネル領域と前記ソース領域との間に形成された第1低濃度領域、および、前記チャネル領域と前記ドレイン領域との間に形成された第2低濃度領域を有し、前記チャネル領域、前記第1および第2低濃度領域、前記ソース領域ならびに前記ドレイン領域は、第1不純物を有し、前記チャネル領域、前記第1および第2低濃度領域の前記第1不純物の濃度は、等しく、前記チャネル領域、前記第1および第2低濃度領域の前記第1不純物の濃度は、前記ソース領域および前記ドレイン領域の前記第1不純物の濃度より小さく、前記ゲート電極は前記第1および第2低濃度領域の全部を覆うように形成されている。
【0010】
ある実施形態において、前記第1不純物は、n型不純物である。
【0011】
ある実施形態において、前記チャネル領域は、前記第1不純物と異なる導電型の第2不純物をさらに有する。
【0012】
本発明の表示装置は、上述の半導体装置を有する。
【0013】
本発明の半導体装置の製造方法は、上述の半導体装置の製造方法であって、前記絶縁基板上に非晶質半導体層を形成する工程aと、第1の濃度で前記第1不純物を前記非晶質半導体層にドーピングする工程bと、前記工程bの後に前記非晶質半導体層を結晶化することによって結晶質半導体層を形成する工程cと、前記第1の濃度より高い第2の濃度で前記第1不純物を前記結晶質半導体層にドーピングすることによって、前記ソース領域および前記ドレイン領域を形成する工程dとを包含する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、簡便な製造方法によって製造される良好なTFT特性を有する半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による実施形態のTFT基板100の模式的な断面図である。
【図2】(a)〜(f)は、本実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式的な断面図である。
【図3】(a)〜(e)は、本実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明による実施形態を説明するが、本発明は例示する実施形態に限定されない。
【0017】
半導体装置として液晶表示装置に用いられる半導体装置(TFT基板)を例示して本発明による実施形態の半導体装置およびその製造方法を説明する。本発明はこれに限られず、例えば有機EL表示装置に用いられるTFT基板にも適用され得る。
【0018】
図1に、本発明による実施形態のTFT基板100が有するTFT10Aの構造を示す模式的な断面図を示す。
【0019】
TFT基板100は、絶縁基板(例えばガラス基板)11に支持されたTFT10Aを有する。TFT10Aは、例えば駆動回路用TFTのn型TFTである。TFT10Aは、チャネル領域33A、ソース領域34Aおよびドレイン領域35Aを含む結晶質半導体層30Aを備える。さらに、TFT10Aは、チャネル領域33Aの導電性を制御するゲート電極51を備える。結晶質半導体層30Aは、チャネル領域33Aとソース領域34Aとの間に形成された第1低濃度領域(LDD領域)31Aと、チャネル領域33Aとドレイン領域35Aとの間に形成された第2低濃度領域(LDD領域)32Aとを有する。チャネル領域33A、第1低濃度領域31A、第2低濃度領域32A、ソース領域34Aおよびドレイン領域35Aは、n型不純物(例えばリン(P))を含む。チャネル領域33A、第1低濃度領域31Aおよび第2低濃度領域32Aのn型不純物濃度は、ソース領域34Aおよびドレイン領域35Aのn型不純物濃度より低い第1不純物濃度である。チャネル領域33Aは、n型不純物に加えp型不純物を含んでいる。チャネル領域33Aがn型不純物とp型不純物とを含むことにより、TFTのオフ状態を制御し易くなる。ゲート電極51は、第1低濃度領域31Aおよび第2低濃度領域32Aの全部を覆うように形成されている。すなわち、TFT10AはGOLD構造を有している。
【0020】
TFT10Aは、図1に示すようにGOLD構造を有し、TFTの信頼性が高い。後述する本実施形態の製造方法からTFT10Aを製造するので、第1低濃度領域31Aおよび第2低濃度領域32Aの形成に係る不純物のドーピングをフォトマスクによらないで行うことができる。第1および第2低濃度領域31Aおよび32Aを形成する不純物がドーピングされた後に非晶質半導体層30aを結晶化するので、不純物のドーピングによって生じる結晶欠陥が結晶化工程で低減される。また、第1低濃度領域31Aおよび第2低濃度領域32Aの結晶性が高く、TFTのオフ状態のリーク電流を小さくできる。
【0021】
次に、図2および図3を参照して、本発明による実施形態の半導体装置およびその製造方法を説明する。
【0022】
本実施形態の半導体装置は、図3(e)に示すようにTFT10Aの他、p型チャネルTFT10B(以下、TFT10Bという)および画素用TFT10C(以下、TFT10Cという)を有する。TFT10A、10Bおよび10Cは同一絶縁基板11上に一体的に形成される。
【0023】
TFT10Aは、上述のようにGOLD構造を有する。TFT10Cは、LDD構造を有し、TFT10Bは、GOLD構造またはLDD構造のいずれも有しない。
【0024】
TFT10Aは、TFT基板100上に形成されている。TFT10Aは、例えば窒化シリコン(SiNx)から形成された第1絶縁層21と、第1絶縁層21上に形成された例えば二酸化シリコン(SiO2)から形成された第2絶縁層22とを備え、さらに、第2絶縁層22上に形成された結晶質半導体層30Aを備える。結晶質半導体層30Aは、例えば多結晶シリコン(p−Si)層である。TFT10Aは、結晶質半導体層30A上に形成され、例えば二酸化シリコン層または窒化シリコン層から形成された第3絶縁層(ゲート絶縁層)23を備える。結晶質半導体層30Aは、第1低濃度領域31Aおよび第2低濃度領域32Aを有し、さらにチャネル領域33A、ソース領域34Aおよびドレイン領域35Aを有する。第1低濃度領域31Aは、チャネル領域33Aとソース領域34Aとの間に形成されており、第2低濃度領域32Aは、チャネル領域33Aとドレイン領域35Aとの間に形成されている。ソース領域34Aおよびドレイン領域35Aは、例えばn型不純物を有する。チャネル領域33A、第1低濃度領域31Aおよび第2低濃度領域32Aは、ソース領域34Aおよびドレイン領域35Aが有する例えばn型不純物の濃度より低い第1不純物濃度で例えばn型不純物を有する。第1低濃度領域31Aおよび第2低濃度領域32Aは、LDD領域(n-領域)である。チャネル領域33Aは、例えば第1不純物濃度のn型不純物に加えp型不純物を有する。さらに、TFT10Aは、第3絶縁層23上に形成されたゲート電極51を備え、ゲート電極51は第1低濃度領域31Aおよび第2低濃度領域32Aの全部を覆うように形成されている。TFT10Aは、ゲート電極51を覆うように形成された第4絶縁層(層間絶縁層)24と、第4絶縁層24上に形成されソース領域34Aに接続されたソース電極52および第4絶縁層24上に形成されドレイン領域35Aに接続されたドレイン電極53とを有する。さらに、TFT10Aは、第4絶縁層24上に形成されゲート電極51に接続された電極54を有する。第4絶縁層24は例えば二酸化シリコン(SiO2)から形成される。電極54は引き出し電極であり、例えばソースメタル層(図示されていない)に接続される。なお、電極54は省略してもよい場合もある。ゲート電極51、ソース電極52、ドレイン電極53および電極54は、例えば高融点金属のW、Ta、Ti、Moまたはこれらの合金材料の何れかを用いて形成され得る。
【0025】
以下、TFT10Bおよび10Cについて説明する。なお、結晶質半導体層以外は共通の参照符号を付す。
【0026】
TFT10Bは、絶縁基板(例えばガラス基板)11上に形成されている。TFT10Bは、例えば窒化シリコン(SiNx)から形成された第1絶縁層21と、第1絶縁層21上に形成され、例えば二酸化シリコン(SiO2)から形成された第2絶縁層22を備える。さらに、TFT10Bは、第2絶縁層22上に形成された結晶質半導体層30Bを備える。結晶質半導体層30Bは、例えば多結晶シリコン(p−Si)層である。さらに、TFT10Bは、結晶質半導体層30B上に形成された例えば二酸化シリコン層または窒化シリコン層から形成された第3絶縁層(ゲート絶縁層)23を備える。結晶質半導体層30Bは、チャネル領域33B、ソース領域34Bおよびドレイン領域35Bを有する。ソース領域34Bおよびドレイン領域35Bは、p型不純物を有する。さらに、TFT10Bは、第3絶縁層23上に形成されたゲート電極51を備える。さらに、TFT10Bは、ゲート電極51を覆うように形成された第4絶縁層(層間絶縁層)24を有し、第4絶縁層24上に形成されソース領域34Bに接続されたソース電極52、および第4絶縁層24上に形成されドレイン領域35Bに接続されたドレイン電極53を有する。さらに、TFT10Bは、第4絶縁層24上に形成されゲート電極51に接続された電極54を有する。第4絶縁層24は、例えば二酸化シリコン(SiO2)から形成され得る。電極54は引き出し電極であり、例えばソースメタル層(図示されていない)に接続される。なお、電極54を省略してもよい場合もある。ゲート電極51、ソース電極52、ドレイン電極53および電極54は、例えば高融点金属のW、Ta、Ti、Moまたはこれらの合金材料の何れかを用いて形成され得る。
【0027】
TFT10Cは、絶縁基板(例えばガラス基板)11上に形成されている。TFT10Cは、例えば窒化シリコン(SiNx)から形成された第1絶縁層21と、第1絶縁層21上に形成され、例えば二酸化シリコン(SiO2)から形成された第2絶縁層22を備える。さらに、TFT10Cは、第2絶縁層22上に形成された結晶質半導体層30Cを備える。結晶質半導体層30Cは、例えば多結晶シリコン(p−Si)層である。さらに、TFT10Cは、結晶質半導体層30C上に形成され、例えば二酸化シリコン層または窒化シリコン層から形成された第3絶縁層(ゲート絶縁層)23を備える。結晶質半導体層30Cは第1低濃度領域31Cおよび第2低濃度領域32Cを有し、さらにチャネル領域33C、ソース領域34Cおよびドレイン領域35Cを有する。第1低濃度領域31Cはチャネル領域33Cとソース領域34Cとの間に形成され、第2低濃度領域32Cはチャネル領域33Cとドレイン領域35Cとの間に形成されている。ソース領域34Cおよびドレイン領域35Cは、n型不純物を有する。第1低濃度領域31Cおよび第2低濃度領域32Cは、ソース領域34Cおよびドレイン領域35Cのn型不純物の濃度より低い濃度でn型不純物を有する。第1低濃度領域31Cおよび第2低濃度領域32Cは、LDD領域(n-領域)である。さらに、TFT10Cは、第3絶縁層23上に形成されたゲート電極51を備える。さらに、TFT10Cは、ゲート電極51を覆うように形成された第4絶縁層(層間絶縁層)24と、第4絶縁層24上に形成されソース領域34Cに接続されたソース電極52、および第4絶縁層24上に形成されチャネル領域35Cに接続されたドレイン電極53を有する。第4絶縁層24は、例えば二酸化シリコン(SiO2)から形成される。ゲート電極51、ソース電極52、ドレイン電極53は、例えば高融点金属のW、Ta、Ti、Moまたはこれらの合金材料の何れかを用いて形成され得る。
【0028】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。
【0029】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、TFT10A、10Bおよび10Cを有する半導体装置の製造方法であって、絶縁基板(例えばガラス基板)11上に非晶質半導体層(例えばa−Si層)30aを形成する工程aと、第1の濃度で第1不純物(例えばn型不純物)を非晶質半導体層30aにドーピングする工程bと、工程bの後に非晶質半導体層30aを結晶化することによって結晶質半導体層(たとえばp−Si層)30Aを形成する工程cと、第1の濃度より高い第2の濃度で第1不純物を結晶質半導体層30Aにドーピングすることによって、ソース領域34Aおよびドレイン領域35Aを形成する工程dとを包含する。
【0030】
この方法によると、GOLD構造を有するTFTが得られ、TFTの信頼性が高まる。また、工程bにおいて第1低濃度領域31Aおよび第2低濃度領域32Aを形成する第1不純物のドーピングをフォトマスクによらないで行うことができる。また、第1低濃度領域31Aおよび第2低濃度領域32Aを形成する第1不純物がドーピングされた後に、非晶質半導体層30aが結晶化されるので第1低濃度領域31Aおよび第2低濃度領域32Aの結晶性が高い。また、欠陥準位が少なく、TFTオフ時のリーク電流を低減できる。
【0031】
次に、TFT10A、10Bおよび10Cを有するTFT基板100の製造方法を具体的に説明する。
【0032】
図2(a)に示すように、絶縁基板(例えばガラス基板)11上に例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、例えば窒化シリコン(SiNX)から形成された第1絶縁層21および第1絶縁層21上に例えば二酸化シリコン(SiO2)から形成された第2絶縁層22をそれぞれ50nm以上100nm以下の範囲の厚さで形成する。続けて、プラズマCVD法やスパッタ法などの公知の方法で第2絶縁層22上に非晶質半導体層(例えばa−Si層)30aを形成する。非晶質半導体層30aの厚さは、40nm以上100nm以下である。
【0033】
次に、図2(b)に示すように、n型不純物n1(例えば濃度1×1011cm-2以上1×1013cm-2以下)を非晶質半導体層30aの全面に公知の方法でドーピングする。このとき、フォトマスクを使用しない。これによりn型非晶質半導体層30a’が形成される。
【0034】
次に、図2(c)に示すように、絶縁基板11上のn型非晶質半導体層30a’の全面にレーザー光L1を照射する。このときレーザー光L1は、例えば波長308nmのXeCl、波長351nmのXeFまたは波長248nmのKrF等のエキシマレーザー光や波長500nmのYAGレーザー光や半導体レーザー等の固体レーザー光を使用し得る。これにより、n型非晶質半導体層30a’は結晶化され、n型結晶質半導体層(例えばp−Si層)30が形成される。n型結晶質半導体層30の厚さは、40nm以上100nm以下である。このとき、レーザー光L1を照射する前に、例えば公知のエッチング方法によりn型非晶質半導体層30a’の表面に自然に形成された酸化膜を除去しておくと、n型非晶質半導体層30a’の表面の粗さを低減させることができる。
【0035】
次に、図2(d)に示すように、n型結晶質半導体層30を島状にパターニングし、それぞれTFT10A、10B、10Cに対応するn型結晶質半導体層30A、30B、30Cを形成する。ここまでは、TFT10A、10Bおよび10Cに共通の製造工程である。
【0036】
次にTFT10A、10Bおよび10Cのその後の製造工程を個別に説明する。
【0037】
最初に、TFT10Aの製造工程を説明する。
【0038】
図2(e)に示すように、第3絶縁層(ゲート絶縁層)23を結晶質半導体層30A上に形成した後、チャネル領域33Aとなる領域以外を覆うように形成されたフォトレジスト71aをマスクとして、p型不純物p1(例えば濃度1×1011cm-2以上1×1013cm-2以下)をドーピングする。第3絶縁層23の厚さは、例えば10nm以上200nm以下である。これにより、チャネル領域33Aが形成される。その後フォトレジスト71aを除去する。
【0039】
次に、図2(f)に示すように、p型不純物p2(例えば濃度1×1011cm-2以上1×1013cm-2以下)を結晶質半導体層30Aの全面にドーピングする。また、第3絶縁層(ゲート絶縁層)23は、p型不純物p1をドーピングしフォトレジスト71aを除去した後に形成され、また、p型不純物p2をドーピングした後に形成され得る。
【0040】
次に、図3(a)に示すように、公知の方法により第3絶縁層(ゲート絶縁層)23上にゲート電極51を形成する。ゲート電極51は、高融点金属のW、Ta、Ti、Moまたはその合金材料の何れかを用いて形成され得る。ゲート電極51の厚さは、例えば300nm以上600nm以下である。
【0041】
次に、図3(b)に示すように、後にTFT10CのLDD領域となる第1低濃度領域31Cおよび第2低濃度領域32Cを形成するためにn型不純物n2(例えば濃度1×1011cm-2以上1×1014cm-2以下)を結晶質半導体層30Aにドーピングする。このとき、n型不純物n2がゲート電極51によってドーピングされていない領域のうちチャネル領域33A以外の領域が、第1低濃度領域31Aおよび第2低濃度領域32A(LDD領域)となる。第1低濃度領域31Aおよび第2低濃度領域32Aは、ゲート電極51に対して自己整合的に形成される。
【0042】
次に、図3(c)に示すように、結晶質半導体層30A上にはマスク(フォトレジスト)を形成することなく、n型不純物n3(例えば濃度1×1013cm-2以上1×1016cm-2以下)を結晶質半導体層30Aにドーピングする。n型不純物n3のドーピングにより、ソース領域34Aおよびドレイン領域35A(高濃度領域(n+領域))が形成される。ソース領域34Aおよびドレイン領域35Aは、ゲート電極51に対して自己整合的に形成される。
【0043】
次に、図3(d)に示すように、マスクとしてフォトレジスト74を少なくとも結晶質半導体層30Aの全面が覆われるように形成し、TFT10Bのソース領域34Bおよびドレイン領域35B(高濃度領域(p+領域))を形成するためにp型不純物p3(例えば濃度1×1013cm-2以上1×1016cm-2以下)をドーピングする。次に、フォトレジスト74を除去する。
【0044】
次に、図3(e)に示すように、ゲート電極51を覆うように第4絶縁層(層間絶縁層)24を公知の方法で形成する。第4絶縁層24は例えば二酸化シリコン(SiO2)から形成される。第4絶縁層24の厚さは、例えば600nm以上1000nm以下である。その後、第3絶縁層(ゲート絶縁層)23および第4絶縁層24にコンタクトホールを形成し、ソース電極52、ドレイン電極53および電極54を形成する。その後、必要に応じてソース電極52、ドレイン電極53および電極54上に保護層を形成してもよい。ソース電極52、ドレイン電極53および電極54は、例えば高融点金属のW、Ta、Ti、Moまたはこれらの合金材料の何れかを用いて形成され得る。ソース電極52およびドレイン電極53の厚さは、例えば300nm以上600nm以下である。電極54の厚さは、例えば300nm以上600nm以下である。電極54は引き出し電極であり、例えばソースメタル層に接続される。なお、電極54を形成しなくてもよい場合もある。
【0045】
次に、TFT10Bの製造方法を説明する。
【0046】
図2(e)に示すように、第3絶縁層(ゲート絶縁層)23を結晶質半導体層30B上に形成した後、結晶質半導体層30Bを覆うようにフォトレジスト71bを形成する。次に、TFT10Aのチャネル領域33A、および、TFT10Cのチャネル領域33Cとなる領域にp型不純物p1がドーピングされるが、フォトレジスト71bがマスクとなっているので、結晶質半導体層30Bにp型不純物p1はドーピングされない。第3絶縁層23の厚さは、例えば10nm以上200nm以下である。
【0047】
次に、図2(f)に示すように、p型不純物p2を結晶質半導体層30Bの全面にドーピングする。また、第3絶縁層(ゲート絶縁層)23は、p型不純物p1をドーピングしフォトレジスト71bを除去した後に形成され、また、p型不純物p2をドーピングした後に形成され得る。
【0048】
次に、図3(a)に示すように、公知の方法により第3絶縁層(ゲート絶縁層)23上にゲート電極51を形成する。ゲート電極51は、高融点金属のW、Ta、Ti、Moまたはその合金材料の何れかを用いて形成され得る。ゲート電極51の厚さは、例えば300nm以上600nm以下である。
【0049】
次に、図3(b)に示すように、後にTFT10CのLDD領域となる第1低濃度領域31Cおよび第2低濃度領域32Cを形成するためにn型不純物n2をドーピングする。このとき、結晶質半導体層30Bのゲート電極51に覆われた領域にチャネル領域33Bが形成される。チャネル領域33Bは、ゲート電極51に対し自己整合的に形成される。
【0050】
次に、図3(c)に示すように、少なくとも結晶質半導体層30Bの全てを覆うようにフォトレジスト72を形成する。その後、TFT10Aのソース領域34Aおよびドレイン領域35Aとなる領域、並びに、TFT10Cのソース領域34Cおよびドレイン領域35Cとなる領域を形成するためにn型不純物n3がドーピングされるが、フォトレジスト72により、結晶質半導体層30Bにn型不純物n3はドーピングされない。
【0051】
次に、フォトレジスト72を除去する。
【0052】
次に、図3(d)に示すように、結晶質半導体層30Bにp型不純物p3をドーピングする。p型不純物p3のドーピングによって、ソース領域34Bおよびドレイン領域35B(高濃度領域(p+領域))が形成される。ソース領域34Bおよびドレイン領域35Bは、ゲート電極51に対し自己整合的に形成される。
【0053】
次に、図3(e)に示すように、ゲート電極51を覆うように第4絶縁層(層間絶縁層)24を公知の方法で形成する。第4絶縁層24は例えば二酸化シリコン(SiO2)から形成される。第4絶縁層24の厚さは、例えば600nm以上1000nm以下である。その後、第3絶縁層(ゲート絶縁層)23および第4絶縁層24にコンタクトホールを形成し、ソース電極52、ドレイン電極53および電極54を形成する。その後、必要に応じてソース電極52、ドレイン電極53および電極54上に保護層を形成してもよい。ソース電極52、ドレイン電極53および電極54は、例えば高融点金属のW、Ta、Ti、Moまたはこれらの合金材料の何れかを用いて形成され得る。ソース電極52およびドレイン電極53の厚さは、例えば300nm以上600nm以下である。電極54の厚さは、例えば300nm以上600nm以下である。電極54は引き出し電極であり、例えばソースメタル層に接続される。なお、電極54を形成しなくてもよい場合もある。
【0054】
次に、TFT10Cの製造方法を説明する。
【0055】
図2(e)に示すように、第3絶縁層(ゲート絶縁層)23を結晶質半導体層30C上に形成した後、チャネル領域33Cとなる領域以外を覆うように形成されたフォトレジスト71cをマスクとして、p型不純物p1をドーピングする。第3絶縁層23の厚さは、例えば10nm以上200nm以下である。これにより、チャネル領域33Cが形成される。その後フォトレジスト71cを除去する。
【0056】
次に、図2(f)に示すように、p型不純物p2を結晶質半導体層30Cの全面にドーピングする。また、第3絶縁層(ゲート絶縁層)23は、p型不純物p1をドーピングしフォトレジスト71cを除去した後に形成され、また、p型不純物p2をドーピングした後に形成され得る。
【0057】
次に、図3(a)に示すように、公知の方法により第3絶縁層(ゲート絶縁層)23上にゲート電極51を形成する。ゲート電極51は、高融点金属のW、Ta、Ti、Moまたはその合金材料の何れかを用いて形成され得る。ゲート電極51の厚さは、例えば300nm以上600nm以下である。
【0058】
次に、図3(b)に示すように、後にTFT10CのLDD領域となる第1低濃度領域31Cおよび第2低濃度領域32Cを形成するためにn型不純物n2を結晶質半導体層30Cにドーピングする。
【0059】
次に、図3(c)に示すように、結晶質半導体層30Cの第1低濃度領域31Cおよび第2低濃度領域32Cとなる領域上にフォトレジスト73を形成する。その後、n型不純物n3を結晶質半導体層30Cにドーピングする。n型不純物n3のドーピングにより、ソース領域34Cおよびドレイン領域35C(高濃度領域(n+領域))が形成される。また、フォトレジスト73で覆われた結晶質半導体層30Cに第1低濃度領域31Cおよび第2低濃度領域32Cが形成される。
【0060】
次に、図3(d)に示すように、マスクとしてフォトレジスト75を少なくとも結晶質半導体層30Cの全面が覆われるように形成する。その後、TFT10Bのソース領域34Bおよびドレイン領域35B(高濃度領域(p+領域))を形成するためにp型不純物p3がドーピングされる。しかしながら、結晶質半導体層30Cの全面がフォトレジスト75に覆われているので、結晶質半導体層30Cに、p型不純物p3はドーピングされない。
【0061】
次に、フォトレジスト75を除去する。
【0062】
次に、図3(e)に示すように、ゲート電極51を覆うように第4絶縁層(層間絶縁層)24を公知の方法で形成する。第4絶縁層24は例えば二酸化シリコン(SiO2)から形成される。第4絶縁層24の厚さは、例えば600nm以上1000nm以下である。その後、第3絶縁層23および第4絶縁層24にコンタクトホールを形成し、ソース電極52、ドレイン電極53を形成する。その後、必要に応じてソース電極52、ドレイン電極53上に保護層を形成してもよい。ソース電極52、ドレイン電極53は、例えば高融点金属のW、Ta、Ti、Moまたはこれらの合金材料の何れかを用いて形成され得る。ソース電極52およびドレイン電極53の厚さは、例えば300nm以上600nm以下である。
【0063】
このように半導体装置を製造することにより、GOLD構造を有するTFT10Aが得られ、TFT10BおよびTFT10Cと共にモノリシックに製造し得る。また、第1低濃度領域31Aおよび第2低濃度領域32Aは、自己整合的に形成されるので、第1低濃度領域31Aおよび第2低濃度領域32Aを形成するための不純物(例えばリン(P))n2のドーピングにフォトマスクは必要ない。不純物(例えばリン(P))n1をドーピングした後に非晶質半導体層30a(n型非晶質半導体層30a’)を結晶化させるので第1および第2低濃度領域31Aおよび32Aの結晶性が高く、欠陥準位が少なくなるのでTFTオフ時のリーク電流を低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の適用範囲は極めて広く、TFTを備えた半導体装置、あるいは、そのような半導体装置を有するあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。例えば、本発明を実施して形成された回路や画素部はアクティブマトリクス型液晶表示装置や有機EL表示装置に用いることができる。このような表示装置は、例えば携帯電話や携帯ゲーム機の表示画面や、デジタルカメラのモニター等に利用され得る。従って、液晶表示装置や有機EL表示装置が組み込まれた電子機器全てに本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0065】
10A、10B、10C TFT
11 絶縁基板
21、22、23、24 絶縁層
30a 非晶質半導体層
30A、30B、30C 結晶質半導体層
33A、33B、33C チャネル領域
34A、34B、34C ソース領域
35A、35B、35C ドレイン領域
51 ゲート電極
52 ソース電極
53 ドレイン電極
54 電極
71a、71b、71c、72、73、74、75 フォトレジスト
100 TFT基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板に支持された、チャネル領域、ソース領域およびドレイン領域を含む半導体層と、
前記チャネル領域の導電性を制御するゲート電極とを備える半導体装置であって、
前記半導体層は、前記チャネル領域と前記ソース領域との間に形成された第1低濃度領域、および、前記チャネル領域と前記ドレイン領域との間に形成された第2低濃度領域を有し、
前記チャネル領域、前記第1および第2低濃度領域、前記ソース領域ならびに前記ドレイン領域は、第1不純物を有し、
前記チャネル領域、前記第1および第2低濃度領域の前記第1不純物の濃度は、等しく、
前記チャネル領域、前記第1および第2低濃度領域の前記第1不純物の濃度は、前記ソース領域および前記ドレイン領域の前記第1不純物の濃度より小さく、
前記ゲート電極は前記第1および第2低濃度領域の全部を覆うように形成されている、半導体装置。
【請求項2】
前記第1不純物は、n型不純物である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記チャネル領域は、前記第1不純物と異なる導電型の第2不純物をさらに有する請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置を有する表示装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって、
前記絶縁基板上に非晶質半導体層を形成する工程aと、
第1の濃度で前記第1不純物を前記非晶質半導体層にドーピングする工程bと、
前記工程bの後に前記非晶質半導体層を結晶化することによって結晶質半導体層を形成する工程cと、
前記第1の濃度より高い第2の濃度で前記第1不純物を前記結晶質半導体層にドーピングすることによって、前記ソース領域および前記ドレイン領域を形成する工程dとを包含する、半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−187500(P2011−187500A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48226(P2010−48226)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】