説明

半導体装置の製造方法

【課題】半導体基板に対して略垂直な形状のゲート電極を有する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板11の主面11aにゲート絶縁膜12を介して形成された金属含有膜19を有するゲート電極膜30上にマスク材31を形成し、マスク材31を用いてゲート電極膜30をゲート絶縁膜12が露出するまで異方性エッチングし、ゲート電極13を形成する工程と、金属含有膜19を酸化し、金属含有膜19の側壁に酸化膜34を形成する工程と、ゲート絶縁膜12を等方性エッチングし、半導体基板11上に露出したゲート絶縁膜12を除去するとともに、半導体基板11と金属含有膜19との間に挟まれたゲート絶縁膜12を後退させる工程と、金属含有膜19を選択的に等方性エッチングし、金属含有膜19のゲート絶縁膜12より外側に突出した部位を除去する工程と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高集積化に伴って、チップサイズの増大を抑制するために絶縁ゲート電界効果トランジスタ(MOSトランジスタ)の微細化が求められている。
微細化による短チャンネル効果を抑制し従来の閾値電圧を維持するための高融点金属または高融点金属化合物膜(以下、金属含有膜という)と、金属含有膜を保護するとともにゲート電極の抵抗の増大を抑制するためのポリシリコン膜とが積層されたゲート電極が用いられている。
【0003】
然しながら、金属含有膜と、ポリシリコン膜とが積層されたゲート電極膜をRIE(Reactive Ion Etching)法により加工するときに、ゲート電極の下部はその立体的な構造により、RIE後に裾引きが生じやすい問題がある。
また、金属の種類によっては、エッチングによって生成される化合物の蒸気圧が低いため、裾引き形状やテーパ形状となってしまう問題がある。
【0004】
その結果、半導体基板に対して垂直な形状のゲート電極が得られず、ゲート電極形状がばらつくので、ゲート特性の劣化を引き起こし、安定した特性を有するMOSトランジスタが得られないという問題がある。
従って、MOSトランジスタの微細化が妨げられ、チップサイズの増大を抑制するのが難しくなるという問題がある。
【0005】
一方、高融点金属を用いたゲート電極を有するMOSトランジスタの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1に開示された半導体装置の製造方法は、シリコン基板上に形成されたゲート酸化物層上に、比較的高密度の高融点金属の第1層を堆積する工程と、比較的高密度の高融点金属の前記第1層上に、比較的低密度の高融点金属の第2層を堆積する工程と、上部ゲート電極部分を形成するために第2層をエッチングする工程と、上部ゲート電極部分を越えて横方向に延びる前記ゲート電極の下側部分を形成するために第1層をエッチングする工程と、を具備している。
【0006】
然しながら、特許文献1に開示された半導体装置の製造方法は、逆T字型の形状を有するゲート電極を形成するためのものであり、上述した問題に関して何ら開示しておらず、また示唆する記載も見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−53495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、半導体基板に対して略垂直な形状のゲート電極を有する半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の半導体装置の製造方法は、半導体基板の主面にゲート絶縁膜を介して形成された金属含有膜を有するゲート電極膜を前記ゲート絶縁膜が露出するまで異方性エッチングし、ゲート電極を形成する工程と、前記金属含有膜を酸化し、前記金属含有膜の側壁に酸化膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜を等方性エッチングし、前記半導体基板上に露出した前記ゲート絶縁膜を除去するとともに、前記半導体基板と前記金属含有膜との間に挟まれた前記ゲート絶縁膜を後退させる工程と、前記金属含有膜を選択的に等方性エッチングし、前記金属含有膜の前記ゲート絶縁膜より外側に突出した部位を除去する工程と、を具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板に対して略垂直な形状のゲート電極を有する半導体装置の製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係る半導体装置を示す図で、図1(a)はその断面図、図1(b)は図1(a)の要部を示す拡大断面図。
【図2】本発明の実施例に係る半導体装置の製造工程の要部を順に示す断面図。
【図3】本発明の実施例に係る半導体装置の製造工程の要部を順に示す断面図。
【図4】本発明の実施例に係る半導体装置の製造工程の要部を順に示す断面図。
【図5】本発明の実施例に係る半導体装置の別の製造工程の要部を順に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0013】
図1は本発明の実施例に係る半導体装置を示す図で、図1(a)はその断面図、図1(b)は図1(a)の要部を拡大した断面図、図2乃至図4は半導体装置の製造工程の要部を順に示す断面図である。
本実施例は、ゲート電極を挟むように形成された不純物層として低濃度領域と、高濃度領域を有するエクステンション構造のMOSトランジスタを備えた半導体装置を製造する場合の例である。
【0014】
図1(a)に示すように、本実施例の半導体装置10は、半導体基板11、例えばp型シリコン基板の主面11aにゲート絶縁膜12を介して形成されたゲート電極13と、ゲート電極13の側面に形成された側壁絶縁膜14とを有している。
更に、側壁絶縁膜14の下側の半導体基板11に形成されたn型の第1不純物層15、16と、第1不純物層15、16にそれぞれ隣接して形成され、第1不純物層15、16より不純物濃度が高いn型の第2不純物層17、18とを有している。
【0015】
第1不純物層15、16は、微細化による短チャンネル効果を抑制するためのエクステンション構造の低濃度領域でpn接合界面の電界を緩和する電界緩和層として機能し、第2不純物層17、18は高濃度領域でソース・ドレインとして機能している。
ゲート電極13は、ゲート絶縁膜12上に形成された金属含有膜19と、金属含有膜19上に形成されたポリシリコン膜20とを有している。
【0016】
金属含有膜19は、厚さが例えば7nmの高融点金属または高融点金属化合物で、例えば窒化チタン(TiN)である。金属含有膜19は仕事関数に応じてMOSトランジスタのしきい値を制御し、微細化しても従来の閾値電圧を維持するために設けられている。
ポリシリコン膜20は、厚さが例えば70nmの不純物が添加されたポリシリコンである。ポリシリコン膜20は、金属含有膜19を保護するとともに、ゲート電極13の抵抗の増大を抑制するために設けられている。
【0017】
半導体基板11には複数のMOSトランジスタが形成されている。複数のMOSトランジスタは、絶縁分離溝21により互いに電気的に分離されている。
【0018】
図1(b)に示すように、ゲート電極13の下部側面の金属含有膜19およびポリシリコン膜20は、裾引き形状やテーパ形状にならずに、実質的に半導体基板11の主面11aに対して垂直に形成されている。
その結果、MOSトランジスタのゲート長が略一定に制御され、ゲート特性の揃ったMOSトランジスタを有する半導体装置10が得られる。
【0019】
本明細書において、「基板に対して垂直な形状のゲート電極」とは、半導体基板11とゲート電極13のなす角度が数学的に直角な場合だけでなく、ゲート特性に影響を及ぼさない範囲までの角度を含んでいる。
【0020】
次に、半導体装置10の製造方法について説明する。図2乃至図4は半導体装置の製造工程の要部を順に示す断面図である。
始に、図2(a)に示すように、シリコン基板(半導体基板)11の主面にゲート絶縁膜12として、例えば熱酸化法により厚さ1.5nm程度のシリコン酸化膜を形成する。次に、ゲート絶縁膜12上に金属含有膜19として、例えばスパッタリング法により厚さ7nmのTiN膜を形成する。
次に、金属含有膜19上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により燐(P)をドープした厚さ70nmのポリシリコン膜20を形成する。金属含有膜19およびポリシリコン膜20がゲート電極膜30である。
【0021】
次に、ゲート電極膜30上にマスク材として、例えばCVD法により40nmのTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜31を形成する。
次に、TEOS膜31上に、フォトリソグラフィ法によりゲート電極パターンを有するレジスト膜32を形成する。
【0022】
次に、図2(b)に示すように、レジスト膜32をマスクとしてフッ素系のガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)法によりTEOS膜31を異方性エッチングし、ゲート電極パターンを転写する。
【0023】
次に、図2(c)に示すように、レジスト32を除去した後、TEOS膜31をマスクとして塩素系/臭素系ガスを用いたRIE法によりポリシリコン膜20を異方性エッチングし、塩素系ガスを用いたRIE法によりゲート絶縁膜12が露出するまで金属含有膜19を異方性エッチングし、ゲート電極13を形成する。
このとき、ゲート電極13の下部側面には、その立体的な構造によることと、TiNの蒸気圧が低いために反応生成物が堆積することにより、裾引き部33が生じてしまう。
【0024】
次に、図3(a)に示すように、裾引き部33を有するゲート電極13に対して、酸素プラズマを照射して金属含有膜19の側面を酸化し、酸化膜34を形成する。このとき、ポリシリコン膜20の側面にも必然的に酸化膜35が形成される。
【0025】
次に、図3(b)に示すように、ゲート絶縁膜12を等方性エッチングする薬液として、例えばフッ酸溶液を用いたウェットエッチングを施し、露出したゲート絶縁膜12を除去するとともに、半導体基板11と金属含有膜19との間に挟まれたゲート絶縁膜12を後退させる。
ゲート絶縁膜12の後退量δは、残ったゲート絶縁膜12の幅がポリシリコン膜20の幅と略同じ(ゲート長の設計値)になる量である。
このとき、ポリシリコン膜20の側面に形成された酸化膜35も必然的にエッチングされる。
【0026】
次に、図3(c)に示すように、酸化剤を含む薬液、例えば過酸化水素水(H:HO)を用いて金属含有膜19を選択的にエッチングする。
予め金属含有膜19の側面に酸化膜34が形成されているので、半導体基板11と金属含有膜19の裾引き部33との隙間36に侵入した薬液により、裾引き部33の下面からTiNが選択的にエッチングされる。
その結果、図4に示すように、裾引き部33のみがきれいに除去され、ゲート電極13は半導体基板11に対して垂直な形状に加工される。
【0027】
次に、周知の方法により、例えばゲート電極13をマスクとして半導体基板11にn型不純物をイオン注入して第1不純物層15、16を形成する。
次に、ゲート電極13の側面に側壁絶縁膜14を形成し、ゲート電極13および側壁絶縁膜14をマスクとして半導体基板11にn型不純物をイオン注入して第2不純物層17、18を形成する。
【0028】
具体的には、ゲート電極13をマスクとして、半導体基板11に対して垂直方向から、例えば砒素(As)イオンを加速電圧10keV、ドーズ量1E13atoms/cm3程度注入することにより、pn接合の電界緩和層となるn型の第1不純物層15、16を形成する。
次に、ゲート電極13を含む半導体基板11の全面に絶縁膜、例えばプラズマCVD法によりシリコン窒化膜を厚さ100nm程度形成した後、RIE法によりゲート電極13の側面を除いて絶縁膜をエッチングする。これにより、ゲート電極13の側面に側壁絶縁膜14が形成される。
次に、ゲート電極13および側壁絶縁膜14をマスクとして、半導体基板11に対して垂直方向から、例えば砒素(As)イオンを加速電圧20keV、ドーズ量1E15atoms/cm3程度注入することにより、ソースS・ドレインDとなる第2不純物層17、18を形成する。
これにより、図1に示す半導体基板11に対して垂直な形状のゲート電極13を有する半導体装置10が得られる。
【0029】
以上説明したように、本実施例の半導体装置の製造方法は、金属含有膜19とポリシリコン膜20が積層されたゲート電極膜30をRIE法により異方性エッチングしたときに生じた裾引き部33に対して、酸素プラズマにより裾引き部33の傾斜した側面に酸化膜34を形成し、フッ酸溶液を用いて半導体基板11と裾引き部33との間のゲート絶縁膜12をエッチングし、酸化剤を含有する薬液を用いて裾引き部33を選択的にエッチングしている。
【0030】
その結果、半導体基板11と裾引き部33との隙間36からエッチングが進行し、裾引き部33のみが除去され、ゲート電極13は半導体基板11に対して垂直な形状に加工される。
従って、基板に対して垂直な形状のゲート電極を有する半導体装置の製造方法が得られる。
【0031】
ここでは、金属含有膜19がTiNである場合について説明したが、Ti単体であっても構わない。また、他の高融点金属としてダングステン(W)および窒化タングステン(WN)で合っても薬液等を変更することにより同様に実施することができる。
【0032】
ゲート絶縁膜12の後退、裾引き部33の選択エッチングを、各一回の処理で行う場合について説明したが、それぞれ複数回繰り返して行っても構わない。
図5はゲート絶縁膜12の後退、裾引き部33の選択エッチングを複数回繰り返して行う場合を、各一回の処理で行う場合と対比して示す図で、図5(a)、図5(b)が複数回繰り返して行う場合を示す図、図5(c)が一回の処理で行う場合を示す図である。始めに、一回の処理で行う場合について説明する。
【0033】
図5(c)に示すように、ゲート絶縁膜12の後退、裾引き部33の選択エッチングを、各一回の処理で行う場合、製造条件の変動に起因してオーバエッチングになると、金属含有膜19の側面がサイドエッチングされ、金属含有膜19の側面にエグレ部37が生じるので、ゲート電極形状がばらつく恐れがある。
【0034】
一方、ゲート絶縁膜12の後退、裾引き部33の選択エッチングを複数回繰り返して行う場合、図5(a)に示すように、始めに半導体基板11と裾引き部33との間に挟まれたゲート絶縁膜12をδ1だけ後退させた後、裾引き部33を選択的にエッチングする。
【0035】
次に、図5(b)に示すように、半導体基板11と裾引き部33との間に挟まれたゲート絶縁膜12をδ2だけ追加後退させた後(δ=δ1+δ2)、裾引き部33を選択的に追加エッチングする。
その結果、裾引き部33の選択エッチングの制御性が向上するので、オーバエッチングにより、金属含有膜19の側面がサイドエッチングされる恐れを防止することができる。これにより、工程数が増えるものの、基板に対して垂直な形状のゲート電極を有する半導体装置を安定して製造できる利点がある。
【符号の説明】
【0036】
10 半導体装置
11 半導体基板
12 ゲート絶縁膜
13 ゲート電極
14 側壁絶縁膜
15、16 第1不純物層
17、18 第2不純物層
19 金属含有膜
20 ポリシリコン膜
21 絶縁分離溝
30 ゲート電極膜
31 TEOS膜
32 レジスト膜
33 裾引き部
34、35 酸化膜
36 隙間
37 エグレ部
δ、δ1、δ2 後退量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の主面にゲート絶縁膜を介して形成された金属含有膜を有するゲート電極膜を前記ゲート絶縁膜が露出するまで異方性エッチングし、ゲート電極を形成する工程と、
前記金属含有膜を酸化し、前記金属含有膜の側壁に酸化膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜を等方性エッチングし、前記半導体基板上に露出した前記ゲート絶縁膜を除去するとともに、前記半導体基板と前記金属含有膜との間に挟まれた前記ゲート絶縁膜を後退させる工程と、
前記金属含有膜を選択的に等方性エッチングし、前記金属含有膜の前記ゲート絶縁膜より外側に突出した部位を除去する工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ゲート電極膜が前記金属含有膜とポリシリコン膜との積層膜であり、前記ゲート電極膜を異方性エッチングした際、前記金属含有膜に裾引き部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記金属含有膜を酸化し、前記金属含有膜の側壁に酸化膜を形成する工程は、酸素プラズマ雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記金属含有膜を選択的に等方性エッチングする工程は、過酸化水素を含有する薬液で行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記ゲート絶縁膜を後退させる工程、および前記金属含有膜を選択的に等方性エッチングする工程を、それぞれ複数回繰り返して行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−183038(P2010−183038A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27810(P2009−27810)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】