説明

半導体装置の製造方法

【課題】本発明は、簡素な製造工程でありながら、ボイドを発生させずにトランジスタセルの高密度化を実現する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体層60にトレンチ型のゲート90が形成され、該ゲート90の両側に拡散層50が形成されたトランジスタセルを複数含むセル部61と、該セル部61を囲むガードリング部62とを有する半導体装置の製造方法であって、
前記ゲート90及び前記拡散層50が形成された前記半導体層60の表面に、層間絶縁膜120を形成する工程と、
前記セル部61に形成された前記層間絶縁膜120を、エッチバックにより薄膜化する工程と、
前記層間絶縁膜120の前記拡散層50上の位置に、孔状又は溝状のコンタクト部130を形成する工程と、
前記層間絶縁膜120上に、金属膜140を形成する工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、半導体層にトレンチ型のゲートが形成された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体基板上に形成された半導体層にトレンチを形成し、トレンチ内に酸化膜を形成してからポリシリコン膜を埋め込んでゲートを形成し、その両側に拡散層を形成して構成したトレンチ型IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が知られている。
【0003】
図6は、従来から用いられているトレンチ型IGBTの断面構成を示した図である。図6において、P型の半導体基板210の上に、高濃度N型エピタキシャル層220、低濃度N型エピタキシャル層230が積層されている。低濃度N型エピタキシャル層230の表面には、P層240が形成され、P層240の更に表面には、高濃度N型拡散層250が形成されている。高濃度N型エピタキシャル層220〜P層240、高濃度N型拡散層250は、半導体層260を構成している。また、半導体層260の表面には、トレンチ270が形成され、トレンチ270内の表面は、酸化膜280で覆われている。トレンチ270内の酸化膜280上には、ポリシリコンからなるゲート290が形成され、その上を酸化膜280が覆っている。また、半導体基板210も裏面にはコレクタ電極205が形成されている。また、ゲート290上の酸化膜280の両側を挟むように、エミッタ電極330が形成されている。図6においては省略されているが、エミッタ電極330は、半導体層260の表面上に形成された層間絶縁膜に、エミッタを構成する高濃度N型拡散層250との導通を図るためのコンタクト部を形成することにより構成される。
【0004】
かかる構成を有するトレンチ型IGBTにおいては、P層240に正電圧が印加されることにより、反転層(Nチャネル)が形成され、高濃度N型エピタキシャル層220及び低濃度N型エピタキシャル層230から、高濃度N型拡散層250に電流が流れる。これがP型の半導体基板210と、高濃度N型エピタキシャル層220及び低濃度N型エピタキシャル層230と、P層240からなるPNP型トランジスタのベース電流となり、コレクタであるP型半導体基板210からエミッタである高濃度N層250にコレクタ電流が流れるというトランジスタ動作をする。
【0005】
かかるトレンチ型IGBTによれば、ゲート290が半導体層の表面上に形成された一般的なプレーナ構造のIGBTよりも、トランジスタセルの密度を大幅に向上させることができる。
【0006】
また、トレンチ型の半導体装置には、トレンチ型IGBTの他、トレンチ型MOSトランジスタも知られており、パワーMOSとして利用されている。
【0007】
なお、トレンチ型の半導体装置とは異なるが、スーパージャンクション構造を有する半導体装置において、素子部における制御電極の上に設けられた絶縁膜の厚さが、素子部に隣接した終端部において設けられた絶縁膜の厚さの1/3以下としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−207784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の従来のトレンチ型IGBTにおいては、トランジスタセルを高密度に形成しようとすると、エミッタの高濃度N型拡散層250の間隔が狭くなり、結果として、エミッタ電極330のコンタクト部のアスペクト比が高くなり、エミッタ電極330用の金属膜を形成する場合に、コンタクト部上にボイドが発生し易くなるという問題があった。
【0010】
図7は、従来のトレンチ型IGBTの断面構成を拡大して示した図である。図7において、低濃度N型エピタキシャル層230、P層240、エミッタである高濃度N層250からなる半導体層260に、トレンチ270が形成され、トレンチ270内にポリシリコンのゲート290が形成され、酸化膜280で覆われている。酸化膜280の上には、熱CVD酸化膜300と、BPSG絶縁膜310とが積層されて層間絶縁膜320を構成している。そして、層間絶縁膜320には、コンタクト部330が形成されており、コンタクト部330を埋め込むように層間絶縁膜320上にアルミニウムの金属膜340が形成されている。
【0011】
ここで、トレンチ270のピッチが狭くなると、コンタクト部330の径も小さくならざるを得ないので、コンタクト部330のアスペクト比が大きくなってしまう。そうすると、図7に示すように、コンタクト部330の所にボイド370が発生してしまう。ボイド370は、コンタクト部の抵抗増大や、電極信頼性に悪影響を及ぼしてしまう。そこで、層間絶縁膜320の全体を薄く構成して薄膜化すると、今度は、トランジスタセル部以外のガードリング部で確保していた耐圧が低下するという問題が生じる。
【0012】
また、上述の引用文献1には、スーパージャンクション構造を有する半導体装置の表面全体に層間絶縁膜を厚く形成し、その後に、層間絶縁膜を薄く構成する部分の層間絶縁膜を総て除去し、新たに絶縁膜の薄膜を形成した半導体装置が開示されているが、一旦形成した絶縁膜を薄膜形成部について総て除去するため、製造工程数が増加し、工程が複雑になるという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、簡素な製造工程でありながら、ボイドを発生させずにトランジスタセルの高密度化を実現する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体層(60)にトレンチ型のゲート(90)が形成され、該ゲート(90)の両側に拡散層(50)が形成されたトランジスタセルを複数含むセル部(61)と、該セル部(61)を囲むガードリング部(62)とを有する半導体装置の製造方法であって、
前記ゲート(90)及び前記拡散層(50)が形成された前記半導体層(60)の表面に、層間絶縁膜(120)を形成する工程と、
前記セル部(61)に形成された前記層間絶縁膜(120)を、エッチバックにより薄膜化する工程と、
前記層間絶縁膜(120)の前記拡散層(50)上の位置に、孔状又は溝状のコンタクト部(130)を形成する工程と、
前記層間絶縁膜(120)上に、金属膜(140)を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
これにより、層間絶縁膜を薄膜化することにより、コンタクト部のアスペクト比を小さくし、金属膜形成時にボイドの発生を抑制することができる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明に係る半導体装置の製造方法において、
前記エッチバックは、前記セル部(61)の前記層間絶縁膜(120)の厚さが、前記コンタクト部(130)の孔径又は溝幅よりも小さく、前記層間絶縁膜(120)の耐圧以上となる厚さの範囲内で前記層間絶縁膜(120)を薄膜化することを特徴とする。
【0017】
これにより、層間絶縁膜を薄膜化してボイドの発生を低減しつつ、必要な耐圧を保つことができ、電気的信頼性を高めることができる。
【0018】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る半導体装置の製造方法において、
前記エッチバックは、前記ガードリング部(62)を覆い、前記セル部(61)には開口(161)が形成されたマスク(160)を用いて行われることを特徴とする。
【0019】
これにより、セル部のみの層間絶縁膜を薄膜化することができ、ガードリング部に必要な耐圧は維持しつつ、ボイドの発生を低減させて電気的信頼性を高めることができる。
【0020】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明に係る半導体装置の製造方法において、
前記セル部(61)は、IGBTとして構成され、前記拡散層(50)はエミッタであることを特徴とする。
【0021】
これにより、エミッタ電極の配線にボイドを含まず、電気的安定性の高いトレンチ型IGBTを製造することができる。
【0022】
第5の発明は、第1〜3のいずれかの発明に係る半導体装置の製造方法において、
前記セル部(61)は、MOSトランジスタとして構成され、前記拡散層(50)はソースであることを特徴とする。
【0023】
これにより、ソース電極の配線にボイドを含まず、電気的安定性の高いトレンチ型MOSトランジスタを製造することができ、パワーMOSとして好適に利用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電極上のコンタクト部のボイドを低減させ、電気的安定性の高いトレンチ型の半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施例に係る半導体装置の全体構成の一例を示した図である。図1(A)は、本実施例に係る半導体装置の平面構成の一例を示した図である。図1(B)は、本実施例に係る半導体装置の断面構成の一例を示した図である。
【図2】本実施例に係る半導体装置の平面構成の一例を簡略化して示した図である。
【図3】本実施例に係る半導体装置の製造方法の工程の一例を示した図である。図3(A)は、層間絶縁膜形成工程の一例を示した図である。図3(B)は、エッチバック工程の一例を示した図である。図3(C)は、コンタクト部形成工程の一例を示した図である。図3(D)は、金属成膜工程の一例を示した図である。
【図4】エッチバックに用いるマスク160の一例を示した図である。
【図5】本実施例に係る半導体装置のコンタクト寸法と層間絶縁膜との関係の一例を示した図である。
【図6】従来から用いられているトレンチ型IGBTの断面構成を示した図である。
【図7】従来のトレンチ型IGBTの断面構成を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0027】
図1は、本発明の実施例に係る半導体装置の全体構成の一例を示した図である。図1(A)は、本実施例に係る半導体装置の平面構成の一例を示した図であり、図1(B)は、本実施例に係る半導体装置の断面構成の一例を示した図である。
【0028】
図1(A)において、本実施例に係る半導体装置は、半導体基板上に形成された半導体層60を有する。半導体層60は、セル部61と、ガードリング部62とを有する。セル部は、トランジスタセルが形成された領域である。セル部61には、複数のトランジスタセルが形成され、全体として1つのトランジスタを構成する。ガードリング部62は、トランジスタセルをまとめて1つのトランジスタとして動作させるために、トランジスタセルの個々の要素を電気的に接続し、外部との接続を行う領域である。ガードリング部62は、セル部61の周囲を囲むように構成される。
【0029】
図1(B)においては、図1(A)のA−A断面が示されている。図1(B)の鉛直方向のB−Bラインは、セル部61とガードリング部62との境界線を示しており、B−Bラインよりも左側がセル部61であり、右側がガードリング部62である。
【0030】
図1(B)において、本実施例に係る半導体装置は、裏面電極5と、半導体基板10と、高濃度N型エピタキシャル層20と、低濃度N型エピタキシャル層30と、P型チャネル拡散層40と、P型ウェル層45と、高濃度P型拡散層46と、高濃度N型拡散層50と、トレンチ70と、ゲート酸化膜80と、フィールド酸化膜85と、ゲート90と、熱CVD酸化膜100と、BPSG(Boron Phosphorous Silicate Glass)絶縁膜110と、コンタクト部130と、金属膜140と、ポリイミド絶縁膜150とを有する。また、高濃度N型エピタキシャル層20、低濃度N型エピタキシャル層30、P型チャネル拡散層40、P型ウェル層45、高濃度P型拡散層46及び高濃度N型拡散層50は、半導体層60を構成しており、熱CVD酸化膜100及びBPSG絶縁膜110は、層間絶縁膜120を構成している。
【0031】
なお、図1(B)においては、半導体装置をIGBTとして構成した例を示しているが、MOSトランジスタとして構成してもよい。例えば、高濃度N型エピタキシャル層20の部分を、N型の半導体基板として構成し、その裏面に裏面電極5を形成すれば、NチャネルMOSトランジスタとして構成することができる。
【0032】
半導体基板10は、半導体層60を表面上に形成することにより、トレンチ型の半導体装置を形成するための基板である。半導体基板10は、半導体装置をIGBTとして構成する場合には、P型半導体で構成されてコレクタとして機能し、NチャネルMOSトランジスタとして構成する場合には、N型半導体で構成されてドレインとして機能する。半導体基板10は、種々の半導体材料が用いられてよいが、例えば、シリコン基板が用いられてもよい。
【0033】
裏面電極5は、半導体基板10の裏面に半導体装置の電極として形成された金属膜である。裏面電極5は、半導体装置がIGBTとして構成される場合には、コレクタ電極として構成され、半導体装置がMOSトランジスタの場合には、ドレイン電極として構成される。
【0034】
高濃度N型エピタキシャル層20は、半導体基板10の表面上に、エピタキシャル成長により形成された層であり、相対的に高い不純物濃度で形成される。
【0035】
低濃度N型エピタキシャル層30は、高濃度N型エピタキシャル層20よりも不純物濃度が低いN型エピタキシャル層30であり、高濃度N型エピタキシャル層20の上に形成される。
【0036】
P型チャネル拡散層40は、本実施例に係る半導体装置のチャネルとなるP型拡散層である。P型チャネル拡散層40は、低濃度のP型拡散層として構成される。P型チャネル拡散層40は、セル部61にのみ形成されてもよい。
【0037】
P型ウェル層45は、低濃度N型エピタキシャル層30に形成されたP型のウェル層である。P型ウェル層45は、ガードリング部62にのみ形成されてもよい。
【0038】
高濃度P層は、P型ウェル層45の電極との接続部として構成された部分であり、P型ウェル層45よりも高濃度で導電性が高く構成されている。
【0039】
トレンチ70は、ゲート90を半導体層60内に形成するために形成された溝である。トレンチ70は、図1に示すように、幅方向よりも、深さ方向に長さが大きく構成される。かかる構成により、ゲート90を鉛直方向に構成できるので、平面的な面積を小さくして1つのトランジスタセルを構成することができる。例えば、トレンチ70は、3〜5μm程度の深さに形成されてもよい。
【0040】
ゲート酸化膜80は、ゲート90を覆う酸化膜であり、例えば、SiO等で構成されてもよい。
【0041】
フィールド酸化膜85は、素子間を分離するための絶縁膜である。フィールド酸化膜85は、例えば、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)で形成されていてもよい。
【0042】
ゲート90は、本実施例に係る半導体装置の制御電極として機能する入力用の電極である。ゲート90は、例えば、導電性のポリシリコン膜で形成される。なお、ゲート90の上は、ゲート酸化膜80で覆われる。
【0043】
熱CVD酸化膜100は、層間絶縁膜120に用いられる絶縁膜の一種である。同様に、BPSG絶縁膜110も、層間絶縁膜に用いられる絶縁膜の一種である。BPSG絶縁膜110は、SiOにボロン(B)及びリン(P)が含有されている絶縁膜である。熱CVD酸化膜100及びBPSG絶縁膜110の積層膜で、層間絶縁膜120を構成する。なお、層間絶縁膜120は、適切に絶縁機能を有する膜であれば、種々の絶縁膜を利用することができ、例えば、熱CVD酸化膜100又はBPSG絶縁膜110の一方のみから構成されてもよいし、他の絶縁材料が用いられてもよい。
【0044】
コンタクト部130は、本実施例に係るエミッタ又はソースである高濃度N型拡散層50と、外部配線との電気的接続を行うための配線経路である。コンタクト部130は、層間絶縁膜120に貫通孔又は貫通溝を形成することにより設けられる。なお、コンタクト部130は、セル部61のみならず、ガードリング部62の外部配線と導通が必要な総ての場所に形成されてよい。
【0045】
金属膜140は、形成されたコンタクト部130を介して半導体層60に形成された拡散層50、45、46又はゲート90と電気的接続を行うための配線材料である。
【0046】
ポリイミド絶縁膜150は、金属膜140を絶縁するための絶縁膜であり、金属膜140の表面上に形成される。
【0047】
ここで、本実施例に係る半導体装置は、セル部61とガードリング部62とでの境界線B−Bラインにおいて、層間絶縁膜120の厚さが、セル部61の方が薄く構成され、ガードリング部62の約1/2程度となっている。これは、セル部61の高濃度N型拡散層50の上方の層間絶縁膜120には、コンタクト部130が形成されるが、ガードリング部62の層間絶縁膜120のように、厚い状態で金属膜140の埋め込みを行うと、図7で説明したようなボイド370が発生するおそれが大きくなるからである。つまり、層間絶縁膜120の厚さが厚いと、配線ピッチが小さく、コンタクト部130を形成するスペースが小さい場合には、コンタクト部130のアスペクト比が大きくなり、深い孔又は溝の形状となってしまうからである。
【0048】
一方、ガードリング部62は、セル部61を流れる電流が集約されているので、層間絶縁膜120を薄くすると、高電圧の印加に耐えられなくなるおそれがある。
【0049】
よって、本実施例に係る半導体装置においては、層間絶縁膜120のうち、セル部61に存在する層間絶縁膜120の膜厚のみを薄くし、ガードリング部については、厚い膜厚を保つようにしている。これにより、配線ピッチが短く、ボイドが発生し易いが、1つのセルに流れる電流又は印加される電圧の小さいセル部61においては、層間絶縁膜120を薄くしてボイドの発生を防ぐことができる。また、大電流が流れる又は大電圧が印加されるガードリング部62においては、層間絶縁膜120を厚くして耐圧を大きくしているので、高密度のセル部61と電気的信頼性の向上を両立させることができる。
【0050】
なお、本実施例に係る半導体装置の全体のプロセスは、以下のように行われる。まず、半導体基板10上に、高濃度N型エピタキシャル層20及び低濃度N型エピタキシャル層30が形成される。次に、P型ウェル層45が形成され、半導体層60の表面に、フィールド酸化膜85が形成される。次いで、P型チャネル拡散層40が形成され、P型チャネル拡散層40の表面からトレンチ70が形成される。トレンチ70の表面にゲート酸化膜80が形成された後、ポリシリコン膜の埋め込みが行われてゲート90が形成される。次いで、高濃度N型拡散層50が形成され、高濃度P型拡散層46が形成される。次に層間絶縁膜120が形成されるが、以後の工程について、図2乃至図4を用いて、より詳細に説明する。
【0051】
図2は、本実施例に係る半導体装置の平面構成の一例を簡略化して示した図である。図2において、中央にセル部61、セル部61を囲むように周囲にガードリング部62が形成されている。本実施例に係る半導体装置の製造方法については、セル部61について行われる加工処理が中心であるので、以下、セル部61で行われる処理を中心に説明する。
【0052】
図3は、本実施例に係る半導体装置の製造方法のセル部61における工程の一例を示した図である。なお、図1及び図2において説明した構成要素については、同一の参照符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0053】
図3(A)は、層間絶縁膜形成工程の一例を示した図である。層間絶縁膜形成工程においては、半導体層60の表面上に、層間絶縁膜120が形成される。層間絶縁膜120の形成は、種々の成膜方法により行われてよく、例えば、CVDや、蒸着等により成膜がなされてもよい。また、図3(A)に示すように、層間絶縁膜120が、熱CVD酸化膜1000とBPSG絶縁膜110のように2層から構成されている場合には、各々の材料について、成膜工程を行い、多層の層間絶縁膜120を形成するようにしてもよい。なお、層間絶縁膜120の厚さは、用途に応じて種々の厚さとしてよいが、例えば、600〜800nmの厚さに構成してもよい。
【0054】
図3(B)は、エッチバック工程の一例を示した図である。エッチバック工程においては、セル部61における層間絶縁膜120のエッチバックが行われ、セル部61に形成された層間絶縁膜120が薄膜化される。エッチバック工程において、層間絶縁膜120の全体が薄膜化されるが、図3(B)の例においては、具体的には、層間絶縁膜120の最上層として形成されたBPSG絶縁膜110が薄膜化されることになる。エッチバックは、種々のエッチング方法により行われてよいが、例えば、セル部61のみ開口したマスクを用いてエッチングを行うようにしてもよい。
【0055】
図4は、エッチバックに用いるマスク160の一例を示した図である。図4に示すように、セル部61に対応するように開口161が形成されたマスク160を用いてエッチングを行うことにより、セル部61のみ層間絶縁膜120を薄膜化することができる。なお、マスク160は、層間絶縁膜120上にレジスト層を形成し、図4に示すようなレジストパターンを有するマスクを形成するようにしてもよい。この場合、図4に示す工程は、レジストパターニング工程と呼んでもよい。
【0056】
また、エッチバックにおけるエッチングは、例えば、ドライエッチングによりエッチングを行うようにしてもよい。層間絶縁膜120の厚さを、高精度に制御してエッチング加工を行うことができる。
【0057】
図3(B)に戻る。エッチバックにより薄く形成される層間絶縁膜120の厚さは、用途に応じて種々設定してよいが、例えば、エッチバック前の層間絶縁膜120の厚さが600〜800nmであった場合、300〜400nmであってもよい。最初に形成された層間絶縁膜120の厚さの1/2程度の厚さとすることにより、ボイドを相当に減少させることができる。なお、層間絶縁膜120の厚さは、層間絶縁膜120に形成されるコンタクト部130の幅との関係で、ボイドが生じない程度のアスペクト比のコンタクト部130が形成されるように設定すればよい。この点の詳細については、後述する。
【0058】
図3(C)は、コンタクト部形成工程の一例を示した図である。コンタクト部形成工程においては、コンタクト部130を形成する位置の層間絶縁膜120がエッチングにより除去される。なお、エッチングは、種々のエッチングにより行われてよいが、より高精度の加工を行うために、ドライエッチングにより行われてもよい。
【0059】
この場合にも、コンタクト部130を形成する位置以外のセル部61の領域を、レジスト等で形成したマスクで覆うようにし、マスクで覆われていない部分をエッチングにより除去するようにして加工を行ってもよい。
【0060】
図3(B)に示したエッチバック工程により、層間絶縁膜120が薄くなっているので、コンタクト部130を形成しても、アスペクト比の低いコンタクト部130が形成される。なお、コンタクト部130は、エミッタ又はソースとなる高濃度N型拡散層50の上の位置に形成される。
【0061】
図3(D)は、金属成膜工程の一例を示した図である。金属成膜工程においては、層間絶縁膜120上に、金属膜140が成膜される。金属膜140は、セル部61のみならず、ガードリング部62を含めて、半導体装置を形成する全領域の表面上に形成してよい。図3(C)で説明したように、コンタクト部130のアスペクト比が小さいので、コンタクト部130の付近にボイドは発生せず、良好な状態で金属膜140を形成することができる。ボイドが発生しないので、電気的抵抗が上昇したりせず、均一に金属膜140が形成され、電気的特性を安定させることができる。
【0062】
なお、金属膜140の成膜は、種々の方法により行われてよいが、例えば、電気めっきにより行われてもよい。
【0063】
また、金属膜140は、種々の金属材料を用いてよいが、例えば、アルミニウムを用いるようにしてもよい。その他、バリア層等を形成して拡散を抑制すれば、銅等を用いて金属膜140を形成してもよい。
【0064】
なお、この後は、ポリイミド絶縁膜150を金属膜140の上に形成し、裏面電極5を半導体基板10の裏面に形成すれば、本実施例に係る半導体装置が完成する。
【0065】
図5は、本実施例に係る半導体装置のコンタクト寸法と層間絶縁膜との関係の一例を示した図である。図5において、横軸がコンタクト寸法〔μm〕、縦軸が層間絶縁膜〔nm〕を示している。
【0066】
図5において、領域Vは、ボイドが発生して実際の半導体装置に使用するのが不可能な領域を示している。領域Uは、ボイドが少なく実際の半導体装置に使用可能な領域を示している。領域Xは、耐圧が小さく、実際の半導体装置に使用不可能な領域を示している。
【0067】
図5に示されるように、使用可能な領域Uの上限は、コンタクト寸法に比例して大きくなっている。トランジスタセルが高密度になり、コンタクト部130の寸法が小さくなる程、層間絶縁膜120の厚さを薄くすることが必要であることが分かる。領域Uの上限では、コンタクト寸法の方が、層間絶縁膜厚よりも大きな値となっていることから、深さ方向を基準にしたアスペクト比は、1未満であることが要求されていることが分かる。よって、層間絶縁膜120の膜厚は、コンタクト部130の幅よりも薄く形成する必要がある。
【0068】
また、領域Uの下限に着目すると、コンタクト寸法の如何に関わらず、層間絶縁膜厚は、一定値以上である必要があることが分かる。数値自体は、デバイスの条件、使用されている材料等により変化するが、図5においては、約120nm以上の膜厚が層間絶縁膜120に要求されていることが分かる。
【0069】
以上より、エッチバック工程において形成するセル部61の層間絶縁膜120の膜厚は、コンタクト部130の幅よりも小さく、層間絶縁膜120が有する所定の耐圧よりも大きいことが望ましいことが分かる。
【0070】
但し、図5に示した例は、一例に過ぎないので、材料の性質に応じて、層間絶縁膜120の膜厚は、耐圧以上で、かつボイドの発生が抑制される種々の値に設定することができる。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、IGBT、MOSトランジスタ等の半導体装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
5 裏面電極
10 半導体基板
20 高濃度N型エピタキシャル層
30 低濃度N型エピタキシャル層
40 P型チャネル拡散層
45 P型ウェル層
46 高濃度P型拡散層
50 高濃度N型拡散層
60 半導体層
61 セル部
62 ガードリング部
70 トレンチ
80 ゲート酸化膜
90 ゲート
100 熱CVD酸化膜
110 BPSG絶縁膜
120 層間絶縁膜
130 コンタクト部
140 金属膜
150 ポリイミド絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層にトレンチ型のゲートが形成され、該ゲートの両側に拡散層が形成されたトランジスタセルを複数含むセル部と、該セル部を囲むガードリング部とを有する半導体装置の製造方法であって、
前記ゲート及び前記拡散層が形成された前記半導体層の表面に、層間絶縁膜を形成する工程と、
前記セル部に形成された前記層間絶縁膜を、エッチバックにより薄膜化する工程と、
前記層間絶縁膜の前記拡散層上の位置に、孔状又は溝状のコンタクト部を形成する工程と、
前記層間絶縁膜上に、金属膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記エッチバックは、前記セル部の前記層間絶縁膜の厚さが、前記コンタクト部の孔径又は溝幅よりも小さく、前記層間絶縁膜の耐圧以上となる厚さの範囲内で前記層間絶縁膜を薄膜化することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記エッチバックは、前記ガードリング部を覆い、前記セル部には開口が形成されたマスクを用いて行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記セル部は、IGBTとして構成され、前記拡散層はエミッタであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記セル部は、MOSトランジスタとして構成され、前記拡散層はソースであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−210916(P2011−210916A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76646(P2010−76646)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】