説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】グラフェン層に対して良好なコンタクトを形成しうる配線構造体を有する半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】グラフェン層と、グラフェン層の第1の領域に形成され、グラフェン層と、グラフェン層に積層された第1のネットワーク・ナノグラファイト層とを含む第1の配線部と、グラフェン層の第2の領域に形成され、グラフェン層と、グラフェン層に積層された第2のネットワーク・ナノグラファイト層とを含む第2の配線部と、グラフェン層の、第1の領域と第2の領域との間の第3の領域上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の配線材料等として、電気抵抗が低く大電流密度耐性が高いカーボンナノチューブやグラフェン等の炭素元素の構造体が注目されている。
【0003】
グラフェンを用いた構造体としては、例えば、グラフェンの微細性や高電気伝導特性を生かした多層グラフェン配線構造や、ネットワーク・ナノグラファイト(Networked Nano-Graphite:NNG)配線構造が提案されている。ネットワーク・ナノグラファイトとは、グラフェンシートが単純に積層されたグラファイトとは異なり、多層グラフェンのナノ粒子が互いに複雑にネットワークした膜である。また、トランジスタへの適用例としては、多層グラフェン配線の一部の領域を単層グラフェンとし、単層グラフェンをチャネルとするトランジスタを形成したアクティブ配線構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−235520号公報
【特許文献2】特開2009−164432号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】K. S. Novoselov, et al., "Electric Field Effect in Atomically Thin Carbon Films", Science, Vol. 306, 2004, pp.666-669
【非特許文献2】T. Takami, et al., "Catalyst-Free Growth of Networked Nanographite on Si and SiO2 Substrates by Photoemission-Assisted Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition", e-Journal of Surface Science and Nanotechnology, Vol. 7, 2009, pp. 882-890
【非特許文献3】(独)科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業CREST2008〜2009、p.33
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、多層グラフェン構造のグラフェン面に垂直な方向の電気抵抗は、グラフェン面内の電気抵抗に対して1000倍程度大きいため、チャネルとして用いるグラフェン層に対する良好な電気的コンタクトを形成することが困難であった。
【0007】
本発明の目的は、グラフェン層に対して良好なコンタクトを形成しうる配線構造体を有する半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一観点によれば、グラフェン層と、前記グラフェン層の第1の領域に形成され、前記グラフェン層と、前記グラフェン層に積層された第1のネットワーク・ナノグラファイト層とを含む第1の配線部と、前記グラフェン層の第2の領域に形成され、前記グラフェン層と、前記グラフェン層に積層された第2のネットワーク・ナノグラファイト層とを含む第2の配線部と、前記グラフェン層の、前記第1の領域と前記第2の領域との間の第3の領域上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを有する半導体装置が提供される。
【0009】
また、実施形態の他の観点によれば、基板上に、グラフェン層を形成する工程と、前記グラフェン層上に、ネットワーク・ナノグラファイト層を形成する工程と、第1の領域と第2の領域との間の第3の領域に形成された前記ネットワーク・ナノグラファイト層を選択的に除去し、前記第1の領域及び前記第2の領域に、前記グラフェン層と前記ネットワーク・ナノグラファイト層の積層体の第1の配線部及び第2の配線部をそれぞれ形成し、前記第3の領域に前記グラフェン層のチャネル部を形成する工程と、前記第3の領域の前記グラフェン層上に、ゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を形成する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0010】
また、実施形態の更に他の観点によれば、基板上に、ネットワーク・ナノグラファイト層を形成する工程と、第1の領域と第2の領域との間の第3の領域に形成された前記ネットワーク・ナノグラファイト層を選択的に除去する工程と、前記ネットワーク・ナノグラファイト層が形成された前記基板上にグラフェン層を形成し、前記第1の領域及び前記第2の領域に、前記ネットワーク・ナノグラファイト層と前記グラフェン層の積層体の第1の配線部及び第2の配線部をそれぞれ形成し、前記第3の領域に前記グラフェン層のチャネル部を形成する工程と、前記第3の領域の前記グラフェン層上に、ゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を形成する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
開示の半導体装置及びその製造方法によれば、チャネル部から連続するグラフェン層上にネットワーク・ナノグラファイト層を形成してチャネルに接続される配線部を形成するので、チャネルのグラフェン層に対するコンタクト抵抗を大幅に低減することができる。また、グラフェン層とネットワーク・ナノグラファイト層との積層体により配線層を形成するので、面内方向及び垂直方向の電気抵抗の低い配線構造体を形成することができる。これにより、消費電力の小さい半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1実施形態による半導体装置の構造を示す斜視図である。
【図2】図2は、ネットワーク・ナノグラファイトの構造を示す断面TEM像である。
【図3】図3は、第1実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図4】図3は、第1実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図5】図5は、第2実施形態による半導体装置の構造を示す斜視図である。
【図6】図6は、第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図7】図7は、第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
第1実施形態による半導体装置及びその製造方法について図1乃至図4を用いて説明する。
【0014】
図1は、本実施形態による半導体装置の構造を示す斜視図である。図2は、ネットワーク・ナノグラファイトの構造を示す断面TEM像である。図3及び図4は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0015】
はじめに、本実施形態による半導体装置の構造について図1及び図2を用いて説明する。
【0016】
基板10上には、層間絶縁膜12が形成されている。層間絶縁膜12上には、グラフェン層14と、グラフェン層14上に形成されたネットワーク・ナノグラファイト層16を含む配線26が形成されている。配線26は、グラフェン層14とネットワーク・ナノグラファイト層16とが積層された第1の配線部20及び第2の配線部22と、第1の配線部20と第2の配線部22との間のグラフェン層14により形成されたチャネル部24とを有している。チャネル部24のグラフェン層14は、第1の配線部20及び第2の配線部22のグラフェン層14から連続して形成されている。配線26上には、ゲート絶縁膜28が形成されている。チャネル部24に形成されたゲート絶縁膜28上には、ゲート電極32が形成されている。
【0017】
このように、本実施形態による半導体装置は、第1の配線部20及び第2の配線部22をソース電極及びドレイン電極とし、第1の配線部20と第2の配線部22との間のグラフェン層14をチャネルとしたグラフェントランジスタを含む配線構造体を有している。この配線構造体は、配線層内にアクティブ素子であるグラフェントランジスタを含むものであり、いわばアクティブ配線である。
【0018】
チャネル部24は、グラフェン層14により形成されている。グラフェン層14は、基板10の表面に平行な方向に延在する1層又は2層のグラフェンのシートにより形成されている。グラフェンシートを1層又は2層としているのは、グラフェントランジスタのチャネル材料に適した半導体的性質を有するグラフェン層14とするためである。半導体的性質を有するグラフェン層が得られる場合には、3層以上のグラフェンシートを有するグラフェン層としてもよい。
【0019】
第1の配線部20及び第2の配線部22は、チャネル部24から連続するグラフェン層14と、グラフェン層14上に形成されたネットワーク・ナノグラファイト層16との積層体により形成されている。
【0020】
図2は、グラフェン層14とネットワーク・ナノグラファイト層16との積層膜の断面を透過型電子顕微鏡により撮影した写真である。図2に示すように、ネットワーク・ナノグラファイト層は、微視的にはグラフェンの積層体と見ることができるが、個々のグラフェンの積層体はランダムに配置されており、全体として複雑なネットワークを形成している。ネットワーク・ナノグラファイトは、このような結晶構造に起因して、グラファイトに見られるような電気伝導性の方向依存性は小さい。
【0021】
すなわち、グラフェンシートが単純に積層された通常のグラファイトは、グラフェンシートの延在方向(グラフェン面内)の電気抵抗は非常に小さいが、グラフェンシートの積層方向(グラフェン面に垂直な方向)の電気抵抗は、グラフェンシートの延在方向の電気抵抗のおよそ1000倍程度である。このため、第1の配線部20及び第2の配線部をグラファイトにより形成すると、面内方向の電気抵抗は大幅に低減できるが、垂直方向の電気抵抗を十分に低減することはできない。
【0022】
これに対し、第1の配線部20及び第2の配線部22をネットワーク・ナノグラファイトにより形成することにより、グラファイトにより形成する場合と比較して、垂直方向の電気抵抗を大幅に低減することができる。本願発明者等の検討では、第1の配線部20及び第2の配線部22をネットワーク・ナノグラファイトにより形成することにより、グラファイトを用いた場合と比較して、垂直方向の電気抵抗を約1/100にできることが実験的に推測された。また、第1の配線部20及び第2の配線部22のグラフェン層14上にネットワーク・ナノグラファイト層を形成することにより、グラフェン層14に対して良好な電気的コンタクトを得ることができる。
【0023】
次に、本実施形態による半導体装置の製造方法について図3及び図4を用いて説明する。
【0024】
まず、基板10上に、例えばプラズマCVD法により、例えば膜厚200nmのシリコン酸化膜を堆積する(図3(a))。成膜条件は、例えば、原料ガスとしてTEOS及びOを用い、TEOS流量を5sccm、O流量を200sccm、ガス圧を60Pa、成長温度を350℃、成長時間を10minとする。これにより、基板10上に、シリコン酸化膜の層間絶縁膜12を形成する。
【0025】
基板10は、配線構造体を支持しうるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、本実施形態の配線構造体を半導体装置の配線層として利用する場合には、シリコン基板等の半導体基板そのものや、トランジスタ等の素子や所望の配線層が形成された半導体基板が、基板10に該当する。
【0026】
層間絶縁膜12は、その上に配線構造体を形成しうる絶縁性の材料であれば、特に限定されるものではない。層間絶縁膜12には、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等のシリコン系絶縁膜を適用することができる。なお、本願明細書では、層間絶縁膜12が形成された基板10を、一括して「基板」と呼ぶこともある。
【0027】
次いで、層間絶縁膜12上に、CVD法により、例えば1〜2層のグラフェンを含むグラフェン層14を成長する。CVD法としては、触媒金属を用いないプラズマCVD法が好ましく、例えば、光電子制御プラズマCVD法を適用することができる。光電子制御プラズマCVDによる成膜条件は、例えば、原料ガスとしてCH及びArを用い、CHの流量を5sccm、Arの流量を30sccm、ガス圧を1kPa、成長温度を400℃、成長時間を1minとする。この条件で成膜を行うことにより、層間絶縁膜12上にグラフェン層14を形成することができる。触媒金属を用いないのは、成長したグラフェン層14の下層に触媒金属が残存することを防止するためである。
【0028】
なお、グラフェン層14は、他の方法、例えば転写(貼り付け)法により形成するようにしてもよい。その場合、基板10とは別の基板上にグラフェンを成長した後、このグラフェンを層間絶縁膜12上に転写(貼り付け)する。別の基板上へのグラフェンの成長は、Fe,Ni,Co,Cu等の金属を触媒として用いたCVD法を適用することができる。成膜条件は、例えば、基板としてCu基板を、原料ガスとしてC及びArを用い、Cの流量を5sccm、Arの流量を1000sccm、ガス圧を1kPa、成長温度を600℃、成長時間を20minとする。別の基板を用いることにより、触媒金属を用いて高温で良質のグラフェンを成長することができるため、良質のグラフェン層14を得ることができる。
【0029】
次いで、グラフェン層14上に、CVD法により、例えば膜厚100nm程度のネットワーク・ナノグラファイト層16を成長する(図3(b))。CVD法としては、触媒金属を用いないプラズマCVD法が好ましく、例えば、光電子制御プラズマCVD法を適用することができる。光電子制御プラズマCVDによる成膜条件は、例えば、原料ガスとしてCH及びArを用い、CHの流量を5sccm、Arの流量を30sccm、ガス圧を1kPa、成長温度を400℃、成長時間を20minとする。この条件で成膜を行うことにより、グラフェン層14上にネットワーク・ナノグラファイト層16を形成することができる。触媒金属を用いないのは、成長したネットワーク・ナノグラファイト層16の下層に触媒金属が残存することを防止するためである。
【0030】
なお、上述の条件で層間絶縁膜12上にネットワーク・ナノグラファイト層16を成長すると、層間絶縁膜12とネットワーク・ナノグラファイト層16との間には、数層のグラフェン層が形成される。層間絶縁膜12上にグラフェン層14を別途成長する代わりに、ネットワーク・ナノグラファイト層16の成長の際に形成されるグラフェン層を用いてもよい。
【0031】
次いで、フォトリソグラフィにより、配線26の形成予定領域を覆い、他の領域を露出するフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。配線26の形成予定領域とは、第1の配線部20、第2の配線部22及びチャネル部24の形成予定領域である。
【0032】
次いで、このフォトレジスト膜をマスクとして、例えばイオンミリングによりネットワーク・ナノグラファイト層16及びグラフェン層14をエッチングし、配線の形成予定領域以外のネットワーク・ナノグラファイト層16及びグラフェン層14を除去する。イオンミリング条件は、例えば、ミリングガスとしてAr又はOを用い、Ar又はOの流量を30sccm、ガス圧を1Pa、ミリング時間を5minとする。
【0033】
次いで、フォトリソグラフィにより、ゲート電極32の形成予定領域を露出し、他の領域を覆うフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。
【0034】
次いで、このフォトレジスト膜をマスクとして、ネットワーク・ナノグラファイト層16を、例えば、酸素プラズマ処理により、グラフェン層14に対して選択的にエッチングする。エッチング条件は、例えば、エッチングガスとしてOを用い、O流量を30sccm、ガス圧を1Pa、エッチング時間を5minとする。ネットワーク・ナノグラファイト層16は、結晶性の観点から見るとグラフェン層14に劣っており、グラフェン層14と比較してエッチングが進行しやすい材料である。このエッチング特性の相違を利用することにより、ネットワーク・ナノグラファイト層16をグラフェン層14に対して選択的にエッチングすることができる。
【0035】
こうして、グラフェン層14とネットワーク・ナノグラファイト層16との積層膜の第1の配線部20及び第2の配線部22と、第1の配線部20及び第2の配線部22との間に形成されたグラフェン層14のチャネル部24とを有する配線26を形成する(図3(c))。
【0036】
次いで、例えばCVD法やALD法により、例えば膜厚10nmの酸化ハフニウム膜を形成する。成膜条件は、例えば、塩化ハフニウム(HfCl)、ハフニウムイソプロポキシド(Hf(iOPr))等の原料ガスを用い、成長温度を300℃とする。これにより、配線26上を含む全面に、酸化ハフニウム膜のゲート絶縁膜28を形成する(図4(a))。
【0037】
なお、ゲート絶縁膜28の形成材料は、特に限定されるものではない。例えば、ゲート絶縁膜28には、酸化ハフニウム等の高誘電率膜や、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン窒化酸化膜等のシリコン系絶縁膜等を適用することができる。
【0038】
次いで、ゲート絶縁膜28上に、例えばCVD法により、例えば膜厚200nm程度のネットワーク・ナノグラファイト層30を成長する(図4(b))。CVD法としては、例えば、光電子制御プラズマCVD法を適用することができる。光電子制御プラズマCVDによる成膜条件は、例えば、原料ガスとしてCH及びArを用い、CHの流量を5sccm、Arの流量を30sccm、ガス圧を1kPa、成長温度を400℃、成長時間を20minとする。
【0039】
次いで、フォトリソグラフィにより、ゲート電極32の形成予定領域を覆い、他の領域を露出するフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。
【0040】
次いで、このフォトレジスト膜をマスクとして、ネットワーク・ナノグラファイト層30を、イオンミリングによりエッチングする。イオンミリング条件は、例えば、ミリングガスとしてAr又はOを用い、Ar又はOの流量を30sccm、ガス圧を1Pa、ミリング時間を5minとする。これにより、チャネル部24のグラフェン層14上に、ゲート絶縁膜28を介してネットワーク・ナノグラファイト層30のゲート電極32を形成する(図4(c))。
【0041】
ゲート電極32の形成材料は、特に限定されるものではない。例えば、ゲート電極32には、通常のMOSトランジスタと同様のゲート電極材料を適用することができる。また、上述のように、第1の配線部20及び第2の配線部22に用いたと同様のネットワーク・ナノグラファイトによりゲート電極32を形成してもよい。ゲート電極32をネットワーク・ナノグラファイトにより形成することにより、ゲート電極32の面内方向及び垂直方向の電気抵抗を低減することができる。
【0042】
こうして、層間絶縁膜14上に、本実施形態の配線構造体を形成する。
【0043】
この後、必要に応じて、この配線構造体上に層間絶縁膜や配線層を形成し、半導体装置を完成する。
【0044】
このように、本実施形態によれば、チャネル部から延在するグラフェン層上にネットワーク・ナノグラファイト層を形成してチャネルに接続される配線部を形成するので、チャネルのグラフェン層に対するコンタクト抵抗を大幅に低減することができる。また、グラフェン層とネットワーク・ナノグラファイト層との積層体により配線層を形成するので、面内方向及び垂直方向の電気抵抗の低い配線構造体を形成することができる。これにより、消費電力の小さい半導体装置を実現することができる。
【0045】
[第2実施形態]
第2実施形態による半導体装置及びその製造方法について図5乃至図7を用いて説明する。図1乃至図4に示す第1実施形態による半導体装置及びその製造方法と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0046】
図5は、本実施形態による半導体装置の構造を示す斜視図である。図6及び図7は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0047】
はじめに、本実施形態による半導体装置の構造について図5を用いて説明する。
【0048】
基板10上には、層間絶縁膜12が形成されている。層間絶縁膜12上には、ネットワーク・ナノグラファイト層34と、ネットワーク・ナノグラファイト層34上に形成されたグラフェン層36とを有する配線26が形成されている。配線26は、ネットワーク・ナノグラファイト層34とグラフェン層36とが積層された第1の配線部20及び第2の配線部22と、第1の配線部20と第2の配線部22との間のグラフェン層36により形成されたチャネル部24とを有している。チャネル部24のグラフェン層36は、第1の配線部20及び第2の配線部22のグラフェン層36から連続して平坦に形成されている。配線26上には、ゲート絶縁膜28が形成されている。チャネル部24に形成されたゲート絶縁膜28上には、ゲート電極32が形成されている。
【0049】
このように、本実施形態による半導体装置は、第1の配線部20及び第2の配線部22をソース電極及びドレイン電極とし、第1の配線部20と第2の配線部22との間のグラフェン層36をチャネルとしたグラフェントランジスタを含む配線構造体を有している。この点で、第1実施形態による半導体装置と同様である。
【0050】
本実施形態の配線構造体は、グラフェン層36がネットワーク・ナノグラファイト層34上に形成されている点で、ネットワーク・ナノグラファイト層16がグラフェン層14上に形成されている第1実施形態の配線構造体とは異なっているが、基本的な特徴は同じである。
【0051】
すなわち、本実施形態による配線構造体は、第1の配線部20と第2の配線部22とが、ネットワーク・ナノグラファイト層34とグラフェン層36との積層体により形成されている。第1の配線部20及び第2の配線部22を、ネットワーク・ナノグラファイトを用いて形成することにより、垂直方向の電気抵抗を大幅に低減することができる。また、第1の配線部20及び第2の配線部22をネットワーク・ナノグラファイトにより形成することにより、グラフェン層36に対して良好な電気的コンタクトを得ることができる。
【0052】
次に、本実施形態による半導体装置の製造方法について図6及び図7を用いて説明する。
【0053】
まず、基板10上に、例えばプラズマCVD法により、例えば膜厚200nmのシリコン酸化膜を堆積する(図6(a))。成膜条件は、例えば、原料ガスとしてTEOS及びOを用い、TEOS流量を5sccm、O流量を200sccm、ガス圧を60Pa、成長温度を350℃、成長時間を10minとする。これにより、基板10上に、シリコン酸化膜の層間絶縁膜12を形成する。
【0054】
次いで、層間絶縁膜12上に、CVD法により、例えば膜厚100nm程度のネットワーク・ナノグラファイト層34を成長する(図6(b))。CVD法としては、触媒金属を用いないプラズマCVD法が好ましく、例えば、光電子制御プラズマCVD法を適用することができる。光電子制御プラズマCVDによる成膜条件は、例えば、原料ガスとしてCH及びArを用い、CHの流量を5sccm、Arの流量を30sccm、ガス圧を1kPa、成長温度を400℃、成長時間を20minとする。この条件で成膜を行うことにより、層間絶縁膜12上にネットワーク・ナノグラファイト層34を形成することができる。触媒金属を用いないのは、成長したネットワーク・ナノグラファイト層34下層に触媒金属が残存することを防止するためである。
【0055】
次いで、フォトリソグラフィにより、第1配線部20及び第2配線部22の形成予定領域を覆い、他の領域を露出するフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。
【0056】
次いで、このフォトレジスト膜をマスクとして、例えばイオンミリングによりネットワーク・ナノグラファイト層34をエッチングし、第1配線部20及び第2配線部22の形成予定領域以外のネットワーク・ナノグラファイト層16及びグラフェン層14を除去する(図6(c))。イオンミリング条件は、例えば、ミリングガスとしてAr又はOを用い、Ar又はOの流量を30sccm、ガス圧を1Pa、ミリング時間を5minとする。
【0057】
次いで、基板10とは別の基板上にグラフェンを成長した後、このグラフェンをネットワーク・ナノグラファイト層34上に転写(貼り付け)し、グラフェン層36を形成する。転写によりグラフェン層36を形成することにより、ネットワーク・ナノグラファイト層34の上面の沿った平坦なグラフェン層36を、第1配線部20と第2配線部22との間を接続するように形成することができる。
【0058】
なお、グラフェン層36は、ネットワーク・ナノグラファイト層34のパターニング後、全面に絶縁膜を堆積してCMP法等により平坦化してネットワーク・ナノグラファイト層34の上面を露出した後、CVD法や転写法により形成するようにしてもよい。
【0059】
次いで、フォトリソグラフィにより、配線26の形成予定領域を覆い、他の領域を露出するフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。配線26の形成予定領域とは、第1の配線部20、第2の配線部22及びチャネル部24の形成予定領域である。
【0060】
次いで、このフォトレジスト膜をマスクとして、例えばイオンミリングによりグラフェン層36をエッチングし、配線の形成予定領域以外のグラフェン層36を除去する。イオンミリング条件は、例えば、ミリングガスとしてAr又はOを用い、Ar又はOの流量を30sccm、ガス圧を1Pa、ミリング時間を5minとする。
【0061】
こうして、ネットワーク・ナノグラファイト層34とグラフェン層36との積層膜の第1の配線部20及び第2の配線部22と、第1の配線部20及び第2の配線部22との間に形成されたグラフェン層36のチャネル部24とを有する配線26を形成する(図7(a))。
【0062】
次いで、例えばCVD法やALD法により、例えば膜厚10nmの酸化ハフニウム膜を形成する。成膜条件は、例えば、塩化ハフニウム(HfCl)、ハフニウムイソプロポキシド(Hf(iOPr))等の原料ガスを用い、成長温度を300℃とする。これにより、配線26上を含む全面に、酸化ハフニウム膜のゲート絶縁膜28を形成する(図7(b))。
【0063】
次いで、ゲート絶縁膜28上に、例えばCVD法により、例えば膜厚200nm程度のネットワーク・ナノグラファイト層を成長する。CVD法としては、例えば、光電子制御プラズマCVD法を適用することができる。光電子制御プラズマCVDによる成膜条件は、例えば、原料ガスとしてCH及びArを用い、CHの流量を5sccm、Arの流量を30sccm、ガス圧を1kPa、成長温度を400℃、成長時間を20minとする。
【0064】
次いで、フォトリソグラフィにより、ゲート電極32の形成予定領域を覆い、他の領域を露出するフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。
【0065】
次いで、このフォトレジスト膜をマスクとして、ネットワーク・ナノグラファイト層を、イオンミリングによりエッチングする。イオンミリング条件は、例えば、ミリングガスとしてAr又はOを用い、Ar又はOの流量を30sccm、ガス圧を1Pa、ミリング時間を5minとする。これにより、チャネル部24のグラフェン層36上に、ゲート絶縁膜28を介してネットワーク・ナノグラファイト層30のゲート電極32を形成する(図7(c))。
【0066】
こうして、層間絶縁膜14上に、本実施形態の配線構造体を形成する。
【0067】
この後、必要に応じて、この配線構造体上に層間絶縁膜や配線層を形成し、半導体装置を完成する。
【0068】
このように、本実施形態によれば、チャネル部から延在するグラフェン層上にネットワーク・ナノグラファイト層を形成してチャネルに接続される配線部を形成するので、チャネルのグラフェン層に対するコンタクト抵抗を大幅に低減することができる。また、グラフェン層とネットワーク・ナノグラファイト層との積層体により配線層を形成するので、面内方向及び垂直方向の電気抵抗の低い配線構造体を形成することができる。これにより、消費電力の小さい半導体装置を実現することができる。
【0069】
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0070】
例えば、上記実施形態では、配線構造体のグラフェントランジスタの形成部分のみを示したが、グラフェン層とネットワーク・ナノグラファイト層との積層構造は、通常の配線層部分にも適用することができる。また、グラフェン層とネットワーク・ナノグラファイト層とを含む複数の配線層によって多層配線構造を形成することもできる。本実施形態によるアクティブ配線は、このような多層配線構造の任意の場所に形成することができる。
層間のビア接続には、カーボンナノチューブやネットワーク・ナノグラファイトを適用することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、グラフェン層上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成したが、ゲート電極は、必ずしもグラフェン層よりも上層に形成されている必要はない。ゲート電極上に、ゲート絶縁膜及びグラフェン層を形成するようにしてもよい。
【0072】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0073】
(付記1) グラフェン層と、
前記グラフェン層の第1の領域に形成され、前記グラフェン層と、前記グラフェン層に積層された第1のネットワーク・ナノグラファイト層とを含む第1の配線部と、
前記グラフェン層の第2の領域に形成され、前記グラフェン層と、前記グラフェン層に積層された第2のネットワーク・ナノグラファイト層とを含む第2の配線部と、
前記グラフェン層の、前記第1の領域と前記第2の領域との間の第3の領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と
を有することを特徴とする半導体装置。
【0074】
(付記2) 付記1記載の半導体装置において、
前記第1のネットワーク・ナノグラファイト層は、前記第2のグラフェン層上に形成されており、
前記第2のネットワーク・ナノグラファイト層は、前記第3のグラフェン層上に形成されている
ことを特徴とする半導体装置。
【0075】
(付記3) 付記1記載の半導体装置において、
前記第2のグラフェン層は、前記第1のネットワーク・ナノグラファイト層上に形成されており、
前記第3のグラフェン層は、前記第2のネットワーク・ナノグラファイト層上に形成されている
ことを特徴とする半導体装置。
【0076】
(付記4) 付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記ゲート電極は、ネットワーク・ナノグラファイトにより形成されている
ことを特徴とする半導体装置。
【0077】
(付記5) 付記1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1乃至第3のグラフェン層は、2層以下のグラフェンシートを有する
ことを特徴とする半導体装置。
【0078】
(付記6) グラフェン層と、
前記グラフェン層の第1の領域に形成され、前記グラフェン層と、前記グラフェン層に積層された第1のネットワーク・ナノグラファイト層とを含む第1の配線部と、
前記グラフェン層の第2の領域に形成され、前記グラフェン層と、前記グラフェン層に積層された第2のネットワーク・ナノグラファイト層とを含む第2の配線部とを含む配線構造体を有する
ことを特徴とする半導体装置。
【0079】
(付記7) 基板上に、グラフェン層を形成する工程と、
前記グラフェン層上に、ネットワーク・ナノグラファイト層を形成する工程と、
第1の領域と第2の領域との間の第3の領域に形成された前記ネットワーク・ナノグラファイト層を選択的に除去し、前記第1の領域及び前記第2の領域に、前記グラフェン層と前記ネットワーク・ナノグラファイト層の積層体の第1の配線部及び第2の配線部をそれぞれ形成し、前記第3の領域に前記グラフェン層のチャネル部を形成する工程と、
前記第3の領域の前記グラフェン層上に、ゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0080】
(付記8) 付記7記載の半導体装置の製造方法において、
前記第3の領域上に形成された前記ネットワーク・ナノグラファイト層は、酸素系ガスを用いたプラズマエッチングにより、前記グラフェン層に対して選択的に除去する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0081】
(付記9) 基板上に、ネットワーク・ナノグラファイト層を形成する工程と、
第1の領域と第2の領域との間の第3の領域に形成された前記ネットワーク・ナノグラファイト層を選択的に除去する工程と、
前記ネットワーク・ナノグラファイト層が形成された前記基板上にグラフェン層を形成し、前記第1の領域及び前記第2の領域に、前記ネットワーク・ナノグラファイト層と前記グラフェン層の積層体の第1の配線部及び第2の配線部をそれぞれ形成し、前記第3の領域に前記グラフェン層のチャネル部を形成する工程と、
前記第3の領域の前記グラフェン層上に、ゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0082】
(付記10) 付記9記載の半導体装置の製造方法において、
前記グラフェン層を形成する工程では、別の基板上に形成された前記グラフェン層を、前記ネットワーク・ナノグラファイト層が形成された前記基板上に転写する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0083】
(付記11) 付記7乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記グラフェン層及び前記ネットワーク・ナノグラファイト層は、光電子制御プラズマCVD法により堆積する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0084】
10…基板
12…層間絶縁膜
14,36…グラフェン層
16,30,34…ネットワーク・ナノグラファイト層
20…第1の配線部
22…第2の配線部
24…チャネル部
26…配線
28…ゲート絶縁膜
32…ゲート電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン層と、
前記グラフェン層の第1の領域に形成され、前記グラフェン層と、前記グラフェン層に積層された第1のネットワーク・ナノグラファイト層とを含む第1の配線部と、
前記グラフェン層の第2の領域に形成され、前記グラフェン層と、前記グラフェン層に積層された第2のネットワーク・ナノグラファイト層とを含む第2の配線部と、
前記グラフェン層の、前記第1の領域と前記第2の領域との間の第3の領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1乃至第3のグラフェン層は、2層以下のグラフェンシートを有する
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
基板上に、グラフェン層を形成する工程と、
前記グラフェン層上に、ネットワーク・ナノグラファイト層を形成する工程と、
第1の領域と第2の領域との間の第3の領域に形成された前記ネットワーク・ナノグラファイト層を選択的に除去し、前記第1の領域及び前記第2の領域に、前記グラフェン層と前記ネットワーク・ナノグラファイト層の積層体の第1の配線部及び第2の配線部をそれぞれ形成し、前記第3の領域に前記グラフェン層のチャネル部を形成する工程と、
前記第3の領域の前記グラフェン層上に、ゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置の製造方法において、
前記第3の領域上に形成された前記ネットワーク・ナノグラファイト層は、酸素系ガスを用いたプラズマエッチングにより、前記グラフェン層に対して選択的に除去する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
基板上に、ネットワーク・ナノグラファイト層を形成する工程と、
第1の領域と第2の領域との間の第3の領域に形成された前記ネットワーク・ナノグラファイト層を選択的に除去する工程と、
前記ネットワーク・ナノグラファイト層が形成された前記基板上にグラフェン層を形成し、前記第1の領域及び前記第2の領域に、前記ネットワーク・ナノグラファイト層と前記グラフェン層の積層体の第1の配線部及び第2の配線部をそれぞれ形成し、前記第3の領域に前記グラフェン層のチャネル部を形成する工程と、
前記第3の領域の前記グラフェン層上に、ゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置の製造方法において、
前記グラフェン層を形成する工程では、別の基板上に形成された前記グラフェン層を、前記ネットワーク・ナノグラファイト層が形成された前記基板上に転写する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記グラフェン層及び前記ネットワーク・ナノグラファイト層は、光電子制御プラズマCVD法により堆積する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−60010(P2012−60010A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203293(P2010−203293)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、「LSI用3次元カーボン・アクティブ配線の開発」の中で、「グラフェン横配線及びアクティブ配線の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】