説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】可能な限り従来の設備及び加工プロセスを継承してコストの上昇を抑制するも、Ta含有の導電材料を難除去性の残留付着物を発生せしめることなく所望に加工し、容易且つ確実に信頼性の高い半導体装置を実現する。
【解決手段】半導体基板上に、Ta含有層、TiN層、及び多結晶シリコン膜等のドライエッチング可能な層を順次積層し、TiN層をエッチングストッパーとして多結晶シリコン膜をドライエッチングして所定形状に残し、TiN層及びTa含有層をSPM、APM等を用いてウェットエッチングして多結晶シリコン膜下で所定形状に残す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、電界効果型トランジスタ(MIS−FET)等に適用して好適である。
【背景技術】
【0002】
近年では、MIS−FETに代表される半導体装置の微細化に伴い、ゲート電極の材料として半導体の多結晶シリコンに替わって金属材料の導入が検討されている。金属材料を用いたゲート電極(金属ゲート)を備えたMIS−FETでは、ゲート絶縁膜の実効的な膜厚を薄くすることができるため、高性能化が実現する。
【0003】
金属ゲートを備えた次世代のFETとして、ゲート絶縁膜に高誘電率材料を用い、ゲート電極を金属膜と多結晶シリコン膜との積層構造とした、金属挿入ポリシリコンゲート(Metal Inserted Poly-Si Stacks:MIPS)構造のFETが案出されている。このMIPS−FETのCMOS−FETへの適用が検討されている。例えば、nMOS−FET及びpMOS−FETのゲート電極にそれぞれ別種類の金属を挿入して、閾値電圧を個別に調整することが考えられる。
また、MIPS−FETにおける多結晶シリコンの代わりに、タングステン(W)等を用いることも検討されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Zhibo Zhang, S. C. Song, Craig Huffman, Muhammad M. Hussain, Joel Barnett, Naim Moumen, Husam N. Alshareef, Prashant Majhi, Johnny H. Sim, Sang Ho Bae, and Byoung Hun Lee: Electrochemical and Solid-State Letters, 8 10 G271-G274 2005
【非特許文献2】Muhammad Mustafa Hussain, Naim Moumen,, Joel Barnett, Jason Saulters, David Baker, and Zhibo Zhang: Electrochemical and Solid-State Letters, 8 12 G333-G336 2005
【非特許文献3】F. Ootsuka, Y. Tamura, Y. Akasaka, S. Inumiya, H. Nakata, M. Ohtsuka, T. Watanabe, M kitajima, Y. Nara and K. Nakamura: Extended Abstracts of the 2006 International Conference on Solid State Devices and Materials, Yokohama, 2006, pp. 1116-1117
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、MIPS−FETでは、以下に示すような問題がある。
MIPS−FETのゲート電極に導入が検討されている金属材料の多くが、半導体製造プロセスの洗浄工程で用いられる薬液(硫酸・過酸化水素混合溶液、アンモニア・過酸化水素混合溶液、塩酸・過酸化水素混合溶液等)に対して脆弱である。
【0006】
MIPS−FETの製造プロセスでは、ゲート電極の金属材料のドライエッチングが困難である。この金属材料には、特にTa含有の導電材料(TaN,TaSiN,TaC,TaCN等)が用いられるが、ドライエッチングを行った際に、難除去性の残留付着物が多量に発生し、レジスト上、ゲート電極の側面等の半導体基板の表面に付着する。そのうえ、ゲート加工を行う際には、性質の異なる2種類の導電材料(多結晶シリコンと金属、Wと金属等)をドライエッチングで垂直に加工することが求められる。そのため、ドライエッチングによる加工プロセスに大幅な変更が求められ、新たな加工プロセスの開発、その新規設備の開発及び導入のためのコストが必要となるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、可能な限り従来の設備及び加工プロセスを継承してコストの上昇を抑制するも、Ta含有の導電材料を難除去性の残留付着物を発生せしめることなく所望に加工し、容易且つ確実に信頼性の高い半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
半導体装置の製造方法の一態様は、半導体基板の上方に、Ta含有の導電材料からなる第1の層と、TiNからなる第2の層と、ドライエッチング可能な第3の層とを順次積層する工程と、前記第2の層をエッチングストッパーとして前記第3の層をドライエッチングによりパターニングする工程と、パターニングされた前記第3の膜をマスクとして前記第2の層及び前記第1の層をウェットエッチングし、前記第2の層及び前記第1の層の一部を前記第3の層下に残す工程とを含む。
【0009】
半導体装置の一態様は、半導体基板と、前記半導体基板の上方でゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極とを含み、前記ゲート電極は、Ta含有の導電材料からなる第1の層と、TiNからなる第2の層と、多結晶シリコンからなる第3の層とが順次積層されてなる。
【発明の効果】
【0010】
上記した諸態様によれば、可能な限り従来の設備及び加工プロセスを継承してコストの上昇を抑制するも、Ta含有の導電材料を難除去性の残留付着物を発生せしめることなく所望に加工し、容易且つ確実に信頼性の高い半導体装置及びその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】TiN層について、SPMとAPMに対するサイドエッチング速度の膜厚依存性について調べた結果を示す特性図である。
【図2】本実施形態によるMIPS−CMOSの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図3】図2に続き、本実施形態によるMIPS−CMOSの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図4】図3に続き、本実施形態によるMIPS−CMOSの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図5】図4に続き、本実施形態によるMIPS−CMOSの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図6】図5に続き、本実施形態によるMIPS−CMOSの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図7】図6に続き、本実施形態によるMIPS−CMOSの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図8】図7に続き、本実施形態によるMIPS−CMOSの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図9】Ta含有層上にTiN層が積層形成された様子を示す概略断面図である。示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する、本実施形態では、半導体装置としてMIPS−FETを適用したCMOS−FET(以下、単にMIPS−CMOSと記す。)を例示し、その構成を製造方法と共に説明する。
【0013】
(Ta含有の導電材料を有する構成部材のエッチング加工)
本実施形態では、Ta含有の導電材料(TaN,TaSiN,TaC,TaCN等)をMIPS−FETの構成部材に適用する。具体的な適用の形態としては、Ta含有の導電材料の層(以下、単にTa含有層と記す。)上にTiNからなる層(以下、単にTiN層と記す。)を形成し、その上にドライエッチング可能な材料の層((以下、単に上層と記す。)を形成した積層体を想定する。
【0014】
Ta含有の導電材料は上記のように、これをドライエッチングすれば、難除去性の残留付着物が多量に発生し、レジスト上、ゲート電極の側面等の半導体基板の表面に付着する。そのため、Ta含有の導電材料を、その残留付着物が悪影響を与える半導体基板の表面近傍に堆積する場合、その加工にはドライエッチングは不適である。一方、Ta含有の導電材料は、硫酸・過酸化水素混合溶液(SPM)、アンモニア・過酸化水素混合溶液(APM)、塩酸・過酸化水素混合溶液(HPM)等に対してある程度の耐性を有するが、APMには比較的溶解し易い。Ta含有の導電材料は、ウェットエッチングであれば、その残留付着物を生ぜしめることなく加工することができる。そのため、Ta含有の導電材料の加工には、APMをエッチング液に用いたウェットエッチングが適している。
【0015】
一般的に、TiNは、SPM、APM等に対して極めて脆弱であると考えられている。本実施形態では、TiNをある程度薄く成膜すれば、形成されたTiN層は、SPM、APM等に対する水平方向(横方向)のエッチング速度(サイドエッチング速度)が垂直方向(縦方向)のエッチング速度に比べて極端に低下することを独自に見出した。本実施形態では、この事実に基づいて、Ta含有層と上層との間にTiN層を設けて積層体を形成する。
【0016】
TiN層について、SPMとAPMに対するサイドエッチング速度の膜厚依存性について調べた。実験結果を図1に示す。
この実験では、スパッタリング法で堆積したTiN上に多結晶シリコンを積層堆積し、TiN層のウェットエッチングのサイドエッチング速度を測定した。エッチング液としては、SPMを96%硫酸:31%過酸化水素溶液=4:1、約80℃とし、APMを29%アンモニア水:31%過酸化水素水:水=3:3:40、約60℃として用いた。
【0017】
図1より、SPM、APM共に、サイドエッチング速度が縦方向(バルク)のエッチング速度に比べて大幅に低下していることが判る。サイドエッチング速度の低下の程度はTiN層の膜厚に依存し、膜厚が薄いほど溶解速度が小さい。特に10nm以下の極薄のTiN層では、溶解速度は数nm/分以下と極めて遅くなる。TiN層は、成膜装置に起因する限界及びTiNの性質から、0・5nmより薄い膜厚に形成することは困難である。以上から、0・5nm以上10nm以下の膜厚にTiN層を形成することにより、1分〜10分間程度のエッチング時間に対して、TiN層のサイドエッチ量を数nm程度に抑えることができることが確認された。
【0018】
上記の積層体に形成するTiN層では、ドライエッチングされた上層を確実に保持しつつも、Ta含有層及びTiN層を所望にウェットエッチングすることが要求される。そのため、SPM及び/又はAPMを用いたウェットエッチングでは、TiN層を0・5nm以上5nm以下、より好適には0・5nm以上2nm以下の膜厚に形成することが好ましい。
【0019】
また、上記の上層には、TiNに比べてドライエッチングのエッチング速度が小さい材料からなるものが適用される。この場合、上層をドライエッチングする際に、TiN層がエッチングストッパーとして機能する。仮に、エッチングストッパーがない場合、上層のドライエッチングによりTa含有層が若干オーバーエッチングされる。このとき、Ta含有層の残留付着物が発生し、その半導体基板の表面近傍への付着は避けられない。本実施形態では、TiN層がエッチングストッパーとして機能することで、上層のドライエッチングが終了した際にはTa含有層はTiN層に覆われている。そのため、Ta含有層の残留付着物の発生が防止される。
【0020】
以上より、本実施形態では、TiN層を0・5nm以上5nm以下、より好適には0・5nm以上2nm以下の膜厚に成膜して、上記の積層体を形成する。
先ず上層を、TiN層をエッチングストッパーとしてドライエッチングする。このとき、Ta含有層はTiN層で保護され、Ta含有層の残留付着物の発生が防止される。
続いて、SPM又はAPM、或いは両方の液を用いてTiN層及びTa含有層をウェットエッチングする。両方の液を用いる場合は、先ずSPMによりドライエッチング時に用いたレジスト材料やエッチング生成物などとTiN層の大部分を除去する。更にAPM処理を行う事で、Ta含有層の大部分とウエハ上に残留付着しているSPM液やパーティクルを除去するのが、効果的である。このとき、TiN層のサイドエッチ量は小さく、上層が安定に保持された状態でTa含有層(及びTiN層)が所望形状に残存する。
【0021】
更に、図1の実験において、以下の事実が見出された。
エッチング液にSPMを用いたときに、TiN層の膜厚が5nm以下の場合には、TiN層が殆どサイドエッチングされないオフセット時間が存在することが確認された。このオフセット時間は2分間程度であった。
【0022】
本実施形態では、この事実を利用しても良い。
TiN層を0・5nm以上5nm以下の膜厚に成膜して、積層体を形成する。
先ず上層を、TiN層をエッチングストッパーとしてドライエッチングする。このとき、Ta含有層はTiN層で保護され、Ta含有層の残留付着物の発生が防止される。続いて、SPMを用い、エッチング時間を2分間程度以内に設定して、TiN層及びTa含有層の一部をウェットエッチングする。更に5分程度のAPM処理でTa含有層をほぼ剥離除去する。このとき、TiN層は殆どサイドエッチングされず、上層が確実に安定に保持された状態でTa含有層(及びTiN層)が所望形状に残存する。なお、ウェットエッチングのエッチング時間をオフセット時間の2分間よりも長く設定しても、エッチング時間が数分間程度(10分程度以下)であれば、図1に示したサイドエッチレートの低下現象によりTiN層のサイドエッチ量を小さく抑えることができる。
【0023】
(具体的な実施形態)
以下、上述したTa含有層を有する構成部材のエッチング加工を踏まえて、本実施形態によるMIPS−CMOSの製造方法について詳述する。
図2〜図8は、本実施形態によるMIPS−CMOSの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【0024】
先ず、図2(a)に示すように、シリコン半導体基板10に例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法により素子分離構造11を形成する。
詳細には、P-型のシリコン半導体基板10をリソグラフィー及びドライエッチングにより加工し、半導体基板10上の素子分離領域に分離溝11aを形成する。
分離溝11aを埋め込むように、半導体基板10上に絶縁物、例えばシリコン酸化物(SiO2)をCVD法等により堆積する。半導体基板10の表面が露出するまでシリコン酸化物を研磨、例えば化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)して平坦化する。これにより、分離溝11aをシリコン酸化物を充填してなる素子分離構造11が形成される。素子分離構造11の形成により、半導体基板10上で活性領域、ここではP型活性領域12a及びN型活性領域12bが画定される。
【0025】
続いて、図2(b)に示すように、P型活性領域12aにN型ウェル13を形成する。
詳細には、P型活性領域12aのみにN型不純物、例えばリン(P)をドーズ量5×1012/cm2、加速エネルギー450keVの条件でイオン注入する、これにより、P型活性領域12aにN型ウェル13が形成される。
【0026】
続いて、図2(c)に示すように、ゲート絶縁膜14を形成する。
詳細には、高誘電率材料、例えばHfSiON又はHfO2を低圧CVD(LPCVD)法等により半導体基板10上に膜厚1.5nm〜3nm程度に堆積する。これにより、半導体基板10上にゲート絶縁膜14が形成される。
ゲート絶縁膜としては、高誘電率材料を用いる代わりに、絶縁物、例えばシリコン酸化物又はシリコン酸窒化物(SiON)を熱酸化法又はCVD法等により半導体基板10上に膜厚1nm〜10nm程度に堆積して形成するようにしても良い。
【0027】
続いて、図2(d)及び図9(a)に示すように、ゲート金属膜15を形成する。
詳細には、ゲート絶縁膜14上にTa含有導電物、ここではP型ゲート用のTaN(Ta:N=1:1)をスパッタ法等により、膜厚0.5nm〜10nm程度、ここでは3nm程度に堆積する。これにより、TaN層15aが形成される。
TaN層15a上に、TiN(Ti:N=1:1)をスパッタ法等により、膜厚0.5nm〜10nm程度、ここでは5nm程度に堆積する。これにより、TiN層15bが形成される。
以上により、図9(a)に示すように、TaN層15a上にTiN層15bが積層されてなるゲート金属膜15が形成される。図2(d)では、図示の便宜上、ゲート金属膜15を単層として図示する。
【0028】
続いて、図3(a)に示すように、ハードマスク16を形成する。
詳細には、ゲート金属膜15上に、ゲート金属膜15をウェットエッチングする際のマスク材料、ここではシリコン窒化物(SiN)をLPCVD法等により、原料Si2Cl6+NH3、温度450℃の条件で膜厚10nm〜30nm程度に堆積する。これにより、ハードマスク16が形成される。
【0029】
続いて、図3(b)に示すように、レジストマスク17を形成する。
詳細には、ハードマスク16上にレジストを塗付し、リソグラフィーによりレジストを加工する。これにより、半導体基板10の上方でP型活性領域12aを覆いN型活性領域12bを露出するレジストマスク17が形成される。
【0030】
続いて、図3(c)に示すように、ハードマスク16をドライエッチングする。
詳細には、レジストマスク17を用い、ゲート金属膜15のTiN層15bをエッチングストッパーとして、ハードマスク16をドライエッチング、ここでは反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)によりパターニングする。このRIEは、全圧40mTorrでエッチングガスをCF4/Arの混合ガスとし、誘導結合プラズマを発生させて行われる。これにより、ハードマスク16は、N型活性領域12b上の部分が除去され、レジストマスク17に覆われたP型活性領域12a上の部分のみが残存する。N型活性領域12bでは、TiN層15bが露出し、ゲート金属膜15のTaN層15aはTiN層15bで覆われて保護されている。そのため、TaN層15aはRIEされることなく、TaNの残留付着物の発生が確実に防止される。
【0031】
続いて、図3(d)に示すように、レジストマスク17を除去する。
詳細には、例えばO2プラズマを用いた灰化処理により、レジストマスク17を除去する。
【0032】
続いて、図4(a)に示すように、ゲート金属膜15をウェットエッチングする。
詳細には、エッチング液としてSPM及び/又はAPMを使用し、ハードマスク16を用いて、ゲート金属膜15をウェットエッチングする。SPMは、96%硫酸:31%過酸化水素溶液=4:1であって、約80℃で使用する。APMは、29%アンモニア水:31%過酸化水素水:水=3:3:40であって、約60℃で使用する。ウェットエッチングとしては、SPMを用いて1分〜2分間行った後、APMを用いて52分〜10分間行う。または、APMを用いて5分〜10分間行う。エッチング液にAPMを用いた場合、TaN層15aのエッチング速度は1nm/分程度である。
【0033】
TiN層15bは、上記のエッチング液に対するサイドエッチング速度は極めて小さい。従って、このウェットエッチングにおいて、ハードマスク16で覆われた部分のTiN層15bのサイドエッチ量は小さく、ハードマスク16は確実にゲート金属膜15上に保持される。これにより、TaNの残留付着物の発生を生ぜしめることなく、ハードマスク16が安定に保持された状態でゲート金属膜15がハードマスク16に倣った所望形状に残存する。
【0034】
続いて、図4(b)及び図9(b)に示すように、ゲート金属膜18を形成する。
詳細には、ハードマスク16上を含むゲート絶縁膜14上にTa含有導電物、ここではN型ゲート用のTaSiN(Ta:Si:N=1:1.5〜2.5:1〜3)をスパッタ法等により、膜厚0.5nm〜10nm程度、ここでは1.5nm程度に堆積する。これにより、TaSiN層18aが形成される。
TaSiN層18a上に、TiN(Ti:N=1:1)をスパッタ法等により、膜厚0.5nm〜10nm程度、ここでは5nm程度に堆積する。これにより、TiN層18bが形成される。
以上により、図9(b)に示すように、TaSiN層18a上にTiN層18bが積層されてなるゲート金属膜18が形成される。図4(b)では、図示の便宜上、ゲート金属膜18を単層として図示する。
【0035】
続いて、図4(c)に示すように、ハードマスク19を形成する。
詳細には、ゲート金属膜18上に、ゲート金属膜18をウェットエッチングする際のマスク材料、ここではSiNをLPCVD法等により、原料Si2Cl6+NH3、温度450℃の条件で膜厚10nm〜30nm程度に堆積する。これにより、ハードマスク19が形成される。
【0036】
続いて、図4(d)に示すように、レジストマスク21を形成する。
詳細には、ハードマスク19上にレジストを塗付し、リソグラフィーによりレジストを加工する。これにより、半導体基板10の上方でN型活性領域12bを覆いP型活性領域12aを露出するレジストマスク21が形成される。
【0037】
続いて、図5(a)に示すように、ハードマスク19をドライエッチングする。
詳細には、レジストマスク21を用い、ゲート金属膜18のTiN層18bをエッチングストッパーとして、ハードマスク19をドライエッチング、ここではRIEによりパターニングする。このRIEは、全圧40mTorrでエッチングガスをCF4/Arとし、誘導結合プラズマを発生させて行われる。これにより、ハードマスク16は、P型活性領域12a上の部分が除去され、レジストマスク17に覆われたN型活性領域12b上の部分のみが残存する。P型活性領域12aでは、TiN層18bが露出し、ゲート金属膜18のTaSiN層18aはTiN層18bで覆われて保護されている。そのため、TaSiN層18aはRIEされることなく、TaSiNの残留付着物の発生が確実に防止される。
【0038】
続いて、図5(b)に示すように、レジストマスク21を除去する。
詳細には、例えばO2プラズマを用いた灰化処理により、レジストマスク21を除去する。
【0039】
続いて、図5(c)に示すように、ゲート金属膜18をウェットエッチングする。
詳細には、エッチング液としてSPM及び/又はAPMを使用し、ハードマスク19を用いて、ゲート金属膜18をウェットエッチングする。SPMは、96%硫酸:31%過酸化水素溶液=4:1であって、約80℃で使用する。APMは、29%アンモニア水:31%過酸化水素水:水=3:3:40であって、約60℃で使用する。ウェットエッチングとしては、SPMを用いて1分〜2分間行った後、APMを用いて10分〜30分間行う。または、APMを用いて10分〜30分間行う。エッチング液にAPMを用いた場合、TaSiN層18aのエッチング速度は0.3nm/分程度である。
【0040】
TiN層18bは、上記のエッチング液に対するサイドエッチング速度は極めて小さい。従って、このウェットエッチングにおいて、ハードマスク19で覆われた部分のTiN層18bのサイドエッチ量は小さく、ハードマスク19は確実にゲート金属膜18上に保持される。これにより、TaSiNの残留付着物の発生を生ぜしめることなく、ハードマスク19が安定に保持された状態でゲート金属膜18がハードマスク19に倣った所望形状に残存する。
【0041】
続いて、図5(d)に示すように、ハードマスク16,19を除去する。
詳細には、例えばRIEを用いたドライエッチング又は希フッ酸を用いたウェットエッチングにより、ハードマスク16,19を除去する。
【0042】
続いて、図6(a)に示すように、多結晶シリコン膜22を堆積する。
詳細には、LPCVD法等により、ゲート金属膜16,18を覆うように半導体基板10上に多結晶シリコン膜22を膜厚40nm〜80nm程度に堆積する。
【0043】
続いて、図6(b)に示すように、ハードマスク23、反射防止膜24、及びレジストマスク25a,25bを順次形成する。
詳細には、多結晶シリコン膜22上に、ゲート金属膜15又は18をウェットエッチングする際のマスク材料、ここではSiNをLPCVD法等により、原料Si2Cl6+NH3、温度450℃の条件で膜厚30nm〜70nm程度に堆積する。これにより、ハードマスク23が形成される。ハードマスクは、SiNの代わりにSiO2を用いて形成しても良い。
【0044】
ハードマスク23に反射防止膜(BARC)24を形成した後、反射防止膜24上にレジストを塗付し、リソグラフィーによりレジストを加工する。これにより、ゲート金属膜15の上方にはレジストマスク25aが、ゲート金属膜18の上方にはレジストマスク25bがそれぞれ形成される。
【0045】
続いて、図6(c)に示すように、反射防止膜24をウェットエッチングすると共にレジストマスク25a,25bをスリミングする。
詳細には、レジストマスク25a,25bを用い、反射防止膜24をウェットエッチングする。このときレジストマスク25a,25bもエッチングされ、電極形状にスリミングされる。
【0046】
続いて、図6(d)に示すように、ハードマスク23及び多結晶シリコン膜22をドライエッチングする。
詳細には、レジストマスク25a,25bを用い、ゲート金属膜15,18のTiN層15b,18bをエッチングストッパーとして、ハードマスク23及び多結晶シリコン膜22をドライエッチング、ここではRIEによりパターニングする。このRIEは、全圧4mTorrでエッチングガスをO2/CF4/HBr/Cl2の混合ガスとし、誘導結合プラズマを発生させて行われる。これにより、ハードマスク23及び多結晶シリコン膜22は、レジストマスク25a,25bに覆われた部分のみが残存する。P型活性領域12aでは、ゲート金属膜15のTaN層15aはTiN層15bで覆われて保護されている。N型活性領域12bでは、ゲート金属膜18のTaN層18aはTiN層18bで覆われて保護されている。そのため、TaN層15a,18aはRIEされることなく、TaN及びTaSiNの残留付着物の発生が確実に防止される。
【0047】
続いて、図7(a)に示すように、レジストマスク25a,25b及び反射防止膜24を除去する。
詳細には、例えばO2プラズマを用いた灰化処理により、レジストマスク25a,25b及び反射防止膜24を除去する。
【0048】
続いて、図7(b)に示すように、ゲート金属膜15,18をウェットエッチングする。
詳細には、エッチング液としてSPM及び/又はAPMを使用し、多結晶シリコン膜22をハードマスクとして、ゲート金属膜15,18をウェットエッチングする。SPMは、96%硫酸:31%過酸化水素溶液=4:1であって、約80℃で使用する。APMは、29%アンモニア水:31%過酸化水素水:水=3:3:40であって、約60℃で使用する。ウェットエッチングとしては、SPMを用いて1分〜2分間行った後、APMを用いて1分〜10分間行う。または、APMを用いて1分〜10分間行う。
【0049】
TiN層15b,18bは、上記のエッチング液に対するサイドエッチング速度は極めて小さい。従って、このウェットエッチングにおいて、ハードマスク23で覆われた部分のTiN層15b,18bのサイドエッチ量は小さく、ハードマスク23は確実にゲート金属膜15,18上に保持される。これにより、TaN及びTaSiNのドライエッチング残留付着物の発生を生ぜしめることなく、ハードマスク23が安定に保持された状態でゲート金属膜15,18がハードマスク23に倣った所望形状に残存する。
【0050】
続いて、図7(c)に示すように、ゲート絶縁膜14と僅かに残った金属ゲート15a及び18aのウェットエッチングによる残渣をドライエッチングする。
詳細には、ハードマスク23(及び多結晶シリコン膜22)をマスクとして用い、ゲート絶縁膜14をドライエッチング、ここではRIEによりパターニングする。このRIEは、全圧10mTorrでエッチングガスをBCl3+Cl2+Arとし、誘導結合プラズマを発生させて行われる。これにより、ゲート絶縁膜14は、ゲート金属膜15,18に覆われた部分のみが残存する。このRIEにおいて、ハードマスク23も除去される。以上により、半導体基板10上において、P型活性領域12a上にはゲート絶縁膜14を介したMIPS構造のゲート電極20aが、N型活性領域12b上にはゲート絶縁膜14を介したMIPS構造のゲート電極20bがそれぞれ形成される。ゲート電極20aは、P型活性領域12aにおいて、ゲート金属膜15上に多結晶シリコン膜22が積層されてなるものである。ゲート電極20bは、N型活性領域12bにおいて、ゲート金属膜18上に多結晶シリコン膜22が積層されてなるものである。
【0051】
続いて、図7(d)に示すように、第1のサイドウォール絶縁膜26を形成する。
詳細には、ゲート電極20a,20bを覆うように、半導体基板10の全面に絶縁膜、例えばCVD法等によりSiO2を堆積する。このSiO2の全面を異方性ドライエッチング(エッチバック)する。これにより、ゲート電極20a,20bの側面のみにSiO2が残存し、第1のサイドウォール絶縁膜26が形成される。
【0052】
続いて、図8(a)に示すように、エクステンション領域27a,27bを形成する。
詳細には、N型活性領域12bを覆いP型活性領域12aを露出させるレジストマスクを形成し、このレジストマスクを用いてP型活性領域12aにN型不純物、例えば砒素(As+)をドーズ量1×1015/cm2、加速エネルギー3keVの条件でイオン注入する、これにより、半導体基板10におけるP型活性領域12aのゲート電極20aの両側にエクステンション領域27aが形成される。エクステンション領域27aは、第1のサイドウォール絶縁膜26に位置整合して形成される。レジストマスクは灰化処理等により除去される。
【0053】
P型活性領域12aを覆いN型活性領域12bを露出させるレジストマスクを形成し、このレジストマスクを用いてN型活性領域12bにP型不純物、例えばホウ素(B+)をドーズ量1×1015/cm2、加速エネルギー4keVの条件でイオン注入する、これにより、半導体基板10におけるN型活性領域12bのゲート電極20bの両側にエクステンション領域27aが形成される。エクステンション領域27bは、第1のサイドウォール絶縁膜26に位置整合して形成される。レジストマスクは灰化処理等により除去される。
【0054】
続いて、図8(b)に示すように、第2のサイドウォール絶縁膜28を形成する。
詳細には、ゲート電極20a,20b及び第1のサイドウォール絶縁膜26を覆うように、半導体基板10の全面に絶縁膜、例えばCVD法等によりSiO2を堆積する。このSiO2の全面をエッチバックする。これにより、ゲート電極20a,20bの第1のサイドウォール絶縁膜26のみを覆うようにSiO2が残存し、第2のサイドウォール絶縁膜28が形成される。
【0055】
続いて、図8(c)に示すように、ソース/ドレイン領域29a,29bを形成する。
詳細には、N型活性領域12bを覆いP型活性領域12aを露出させるレジストマスクを形成し、このレジストマスクを用いてP型活性領域12aにN型不純物、例えば砒素(As+をドーズ量5×1015/cm2、加速エネルギー38keVの条件でイオン注入する、これにより、半導体基板10におけるP型活性領域12aのゲート電極20aの両側にソース/ドレイン領域29aが形成される。ソース/ドレイン領域29aは、第2のサイドウォール絶縁膜28に位置整合し、エクステンション領域27aと一部重畳して形成される。レジストマスクは灰化処理等により除去される。
【0056】
P型活性領域12aを覆いN型活性領域12bを露出させるレジストマスクを形成し、このレジストマスクを用いてN型活性領域12bにP型不純物、例えばBF2+をドーズ量3×1015/cm2、加速エネルギー18keVの条件でイオン注入する、これにより、半導体基板10におけるN型活性領域12bのゲート電極20bの両側にソース/ドレイン領域29bが形成される。ソース/ドレイン領域29bは、第2のサイドウォール絶縁膜28に位置整合し、エクステンション領域27bと一部重畳して形成される。レジストマスクは灰化処理等により除去される。
【0057】
続いて、図8(d)に示すように、シリサイド膜31を形成する。
詳細には、半導体基板10の全面にシリサイド金属、例えばNiをスパッタ法等により堆積し、半導体基板10を熱処理する。これにより、Niとシリコン、ここではNiとゲート電極20a,20bの多結晶シリコン膜22、及びNiとソース/ドレイン領域29a,29bが化学反応してシリサイド化する。
その後、未反応のNiをウェットエッチングにより除去する。以上により、ゲート電極20a,20b上、及びソース/ドレイン領域29a,29b上にNiSiのシリサイド膜31が形成される。
【0058】
しかる後、層間絶縁膜、コンタクト孔、コンタクト孔を埋め込む導電プラグ、導電プラグと接続される配線等の形成等の諸工程を経る。以上により、P型活性領域12aにP型のMIPS−FETを、N型活性領域12bにN型のMIPS−FETをそれぞれ備えたMIPS−CMOSが形成される。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、可能な限り従来の設備及び加工プロセスを継承してコストの上昇を抑制するも、Ta含有の導電材料であるTaN層及びTaSiN層を難除去性となる残留付着物を発生せしめることなく所望に加工し、容易且つ確実に信頼性の高いMIPS−CMOSが実現する。
【0060】
以下、半導体装置及びその製造方法の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0061】
(付記1)半導体基板の上方に、Ta含有の導電材料からなる第1の層と、TiNからなる第2の層と、ドライエッチング可能な第3の層とを順次積層する工程と、
前記第2の層をエッチングストッパーとして前記第3の層をドライエッチングによりパターニングする工程と、
パターニングされた前記第3の膜をマスクとして前記第2の層及び前記第1の層をウェットエッチングし、前記第2の層及び前記第1の層の一部を前記第3の層下に残す工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0062】
(付記2)前記第1の層は、0.5nm以上10.0nm以下の膜厚に形成されることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0063】
(付記3)前記第2の層は、0.5nm以上10.0nm以下の膜厚に形成されることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0064】
(付記4)前記ウェットエッチングは、SPM及びAPMの両方、又はSPM及びAPMのうちから選ばれた1種をエッチング液として用いることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0065】
(付記5)前記第3の層は、シリコン層であることを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0066】
(付記6)前記第3の層は、前記ウェットエッチングのマスクとなる層であることを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0067】
(付記7)半導体基板と、
前記半導体基板の上方でゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と
を含み、
前記ゲート電極は、Ta含有の導電材料からなる第1の層と、TiNからなる第2の層と、多結晶シリコンからなる第3の層とが順次積層されてなることを特徴とする半導体装置。
【0068】
(付記8)前記第1の層は、0.5nm以上10.0nm以下の膜厚に形成されることを特徴とする付記7に記載の半導体装置。
【0069】
(付記9)前記第2の層は、0.5nm以上10.0nm以下の膜厚に形成されることを特徴とする付記7に記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0070】
10 半導体基板
11 素子分離構造
11a 分離溝
12a P型活性領域
12b N型活性領域
13 N型ウェル
14 ゲート絶縁膜
15,18 ゲート金属膜
15a TaN層
15b,18b TiN層
16,19,23 ハードマスク
17,21,25a,25b レジストマスク
18a TaSiN層
20a,20b ゲート電極
22 多結晶シリコン膜
24 反射防止膜
26 第1のサイドウォール絶縁膜
27a,27b エクステンション領域
28 第2のサイドウォール絶縁膜
29a,29b ソース/ドレイン領域
31 シリサイド膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上方に、Ta含有の導電材料からなる第1の層と、TiNからなる第2の層と、ドライエッチング可能な第3の層とを順次積層する工程と、
前記第2の層をエッチングストッパーとして前記第3の層をドライエッチングによりパターニングする工程と、
パターニングされた前記第3の膜をマスクとして前記第2の層及び前記第1の層をウェットエッチングし、前記第2の層及び前記第1の層の一部を前記第3の層下に残す工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の層は、0.5nm以上10.0nm以下の膜厚に形成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第3の層は、シリコン層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
半導体基板と、
前記半導体基板の上方でゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と
を含み、
前記ゲート電極は、Ta含有の導電材料からなる第1の層と、TiNからなる第2の層と、多結晶シリコンからなる第3の層とが順次積層されてなることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記第2の層は、0.5nm以上10.0nm以下の膜厚に形成されることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−84564(P2012−84564A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226946(P2010−226946)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】