説明

半導体装置及び駆動方法

【課題】絶縁層上に形成された部分空乏型のトランジスターにおいて、ヒストリー効果を低減し、なおかつ高いON/OFF比、及び急峻なサブスレッショルド特性を実現する。
【解決手段】絶縁層上の半導体層に形成された第1導電型のソース領域、第1導電型のドレイン領域、及び、第2導電型のボディ領域と、第1ゲート絶縁膜と、第1ゲート電極と、を含む部分空乏型の第1トランジスターと、絶縁層上の半導体層に形成された第2導電型のソース領域、第2導電型のドレイン領域、及び、第1導電型のボディ領域と、第2ゲート絶縁膜と、第2ゲート電極と、を含む第2トランジスターと、を具備し、第1トランジスターの第2導電型のボディ領域は、第2トランジスターの第2導電型のソース領域及び第2導電型のドレイン領域の内の一方に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁層上に形成された部分空乏型のトランジスターを備えた半導体装置、及び、その駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁層上に薄い半導体層を形成したSOI(Silicon On Insulator)構造を有する半導体デバイスは、次世代に向けた低パワー半導体デバイスとして開発・実用化が進められている。
SOI構造を有するMISFET(Metal-Insulator-Semiconductor Field-Effect Transistor)は、ドレイン電流の高ON/OFF比、急峻なサブスレッショルド特性、低雑音、低寄生容量といった特長を持ち、様々な半導体集積回路に用いられている。
SOI構造を有するMISFETの内でも、部分空乏型(PD:Partially Depleted)のMISFETは、従来からあるバルク構造MISFETと同等に容易に製造できるため、広く半導体製品に応用されている。
【0003】
部分空乏型のMISFETにおいては、絶縁層によってボディ領域が他の領域から電気的に分離されており、その電位(ボディ電位)が浮遊している。このため、部分空乏型のMISFETにおいては基板浮遊効果と呼ばれる現象を考慮しなくてはならない。基板浮遊効果は、それまでゲートにかかっていた電圧の履歴によってボディ電位及びドレイン電流が変動し、デバイス特性が不安定になってしまうヒストリー効果などに現れる。
このような現象は、特許文献1に示すような、ボディ電位固定方法により抑制できる。特許文献1においては、ボディ領域からリーク電流を流すことによってボディ電位を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−119884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の方法でボディ電位を固定した場合、デバイス特性は安定するが、ゲート容量には固定電位部分が接続されているため大きな寄生容量が発生する。そのため、今度はON電流が低下し、その結果、ドレイン電流のON/OFF比が低下するという問題が生じ、SOIの長所を十分に活かすことができないおそれがある。
【0006】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様は、絶縁層上に形成された部分空乏型のトランジスターにおいて、ヒストリー効果を低減し、なおかつ高いON電流(ON/OFF比)を実現することに関連している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の幾つかの態様において、半導体装置は、半導体層に形成された第1導電型の第1ソース領域、第1導電型の第1ドレイン領域、及び、第1ソース領域と第1ドレイン領域との間に形成された第2導電型の第1ボディ領域と、第1ボディ領域上に形成された第1ゲート絶縁膜と、第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極と、を含む部分空乏型の第1トランジスターと、半導体層に形成された第2導電型の第2ソース領域、第2導電型の第2ドレイン領域、及び、第2ソース領域と第2ドレイン領域との間に形成された第1導電型の第2ボディ領域と、第2ボディ領域上に形成された第2ゲート絶縁膜と、第2ゲート絶縁膜上に形成された第2ゲート電極と、を含む第2トランジスターと、を具備し、半導体層は絶縁層上に形成されており、第1ボディ領域は、第2ソース領域及び第2ドレイン領域の内の一方に接続されている。
この態様によれば、第2トランジスターをON状態とすることにより、第1トランジスターの第1ボディ領域の電位を外部より所定の値に設定し、ヒストリー効果を低減することができる。そして、第2トランジスターをOFF状態とすることにより、第1トランジスターの第1ボディ領域の電位を浮遊させ、高いON電流(ON/OFF比)を実現することができる。
【0008】
上述の態様において、第1ボディ領域からみて一方の側に第1ドレイン領域が形成され、他方の側に第1ソース領域と第2ソース領域及び第2ドレイン領域の内の一方とが形成されていることが望ましい。
これによれば、第1ボディ領域と第2ソース領域及び第2ドレイン領域の内の上記一方との接触面積を大きくとるとともに、第1トランジスターの実効ゲート幅を小さくすることができる。
【0009】
上述の態様において、第1ゲート電極と、第2ゲート電極とが電気的に接続されていることが望ましい。
これによれば、第1トランジスターをOFF状態にすると同時に第2トランジスターをON状態にすることによって、第1トランジスターのボディ電位を上記所定の値に設定することができ、第1トランジスターをON状態にすると同時に第2トランジスターをOFF状態にすることによって、第1トランジスターのボディ電位を浮遊状態とすることができる。
【0010】
上述の態様において、第1ソース領域と、第2ソース領域及び第2ドレイン領域の内の上記一方とが接しており、第1ソース領域と、第2ソース領域及び第2ドレイン領域の内の他方とが導電体によって接続されていることが望ましい。
これによれば、第1ソース領域と、第2ソース領域及び第2ドレイン領域の内の上記一方との間に形成されるPN接合において、順方向電流が流れることが抑制される。
【0011】
上述の態様において、半導体層に形成された第2導電型の第3ソース領域、第2導電型の第3ドレイン領域、及び、第3ソース領域と第3ドレイン領域との間に形成された第1導電型の第3ボディ領域と、第3ボディ領域上に形成された第3ゲート絶縁膜と、第3ゲート絶縁膜上に形成された第3ゲート電極と、を含む部分空乏型の第3トランジスターと、半導体層に形成された第1導電型の第4ソース領域、第1導電型の第4ドレイン領域、及び、第4ソース領域と第4ドレイン領域との間に形成された第2導電型の第4ボディ領域と、第4ボディ領域上に形成された第4ゲート絶縁膜と、第4ゲート絶縁膜上に形成された第4ゲート電極と、を含む第4トランジスターと、をさらに具備し、第3ボディ領域は、第4ソース領域及び第4ドレイン領域の内の一方に接続されており、第1トランジスターと第3トランジスターとによってインバーターを構成していることが望ましい。
これによれば、ヒストリー効果を低減し、なおかつ高いON電流(ON/OFF比)を実現したインバーター回路を提供することができる。
【0012】
本発明の幾つかの態様において、上述の半導体装置を駆動する方法は、第1トランジスターをOFF状態、第2トランジスターをON状態とする第1のゲート電圧を、第1ゲート電極及び第2ゲート電極にそれぞれ印加しながら、第2トランジスターを介して第1トランジスターの第1ボディ領域に所定電圧を印加するステップと、第1トランジスターをON状態、第2トランジスターをOFF状態とする第2のゲート電圧を、第1ゲート電極及び第2ゲート電極にそれぞれ印加しながら、第1トランジスターのソース・ドレイン間に電流を流すステップと、を具備する。
この態様によれば、第1トランジスターをOFF状態とする時に、第2トランジスターをON状態とすることにより、第1トランジスターの第1ボディ領域の電位を外部より任意の値に設定し、ヒストリー効果を低減することができる。そして、第1トランジスターをON状態とする時には、第2トランジスターをOFF状態とすることにより、第1トランジスターの第1ボディ領域の電位を浮遊させ、高いON電流(ON/OFF比)を実現することができる。
【0013】
上述の駆動方法において、第2トランジスターの閾値電圧の値が、第1のゲート電圧と第2のゲート電圧との間の値であり、第2トランジスターの閾値電圧と第2のゲート電圧との差が、第1トランジスターの閾値電圧と第1のゲート電圧との差より大きいことが望ましい。
これによれば、第2トランジスターをON状態とした場合に第2トランジスターのドレイン電流を十分に流すとともに、第2トランジスターをOFF状態とした場合に第2トランジスターのドレイン電流を0に近い値にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す平面模式図
【図2】図1のA−A'線断面図及びB−B'−B"線断面図
【図3】第1の実施形態におけるトランジスターの伝達特性の例を示す図
【図4】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を示す平面模式図
【図5】第2の実施形態におけるトランジスターの伝達特性の例を示す図
【図6】本発明の第3の実施形態に係る半導体装置を示す平面模式図
【図7】本発明の第4の実施形態に係る半導体装置を示す平面模式図
【図8】本発明の第5の実施形態に係る半導体装置を示す平面模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。また同一の構成要素には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0016】
<1.第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す平面模式図である。また、図2(A)は図1のA−A'線断面図であり、図2(B)は図1のB−B'−B"線断面図である。図1に示す半導体装置1は、第1トランジスターTr1と第2トランジスターTr2とを具備している。
【0017】
第1トランジスターTr1は、図2(A)に示すように、絶縁層100上の半導体層101に形成されたN型(第1導電型)のソース領域11(第1ソース領域)と、N型のドレイン領域12(第1ドレイン領域)と、ソース領域11とドレイン領域12との間に形成されたP型(第2導電型)のボディ領域13(第1ボディ領域)とを含み、さらに、ボディ領域13上に形成されたゲート絶縁膜14(第1ゲート絶縁膜)と、ゲート絶縁膜14上に形成されたゲート電極15(第1ゲート電極)とを含むNチャネル型のトランジスターである。ボディ領域13は、半導体層101の内のゲート電極15直下の領域に位置している。
ソース領域11及びドレイン領域12には、それぞれコンタクト電極111及び112が接続されている。
第1トランジスターTr1は、動作時(ゲート電極15に閾値以上の電圧が印加されて第1トランジスターTr1がON状態となる時)においてもボディ領域13の底部に空乏化されない中性領域が残る部分空乏型のトランジスターである。
【0018】
第2トランジスターTr2は、図2(B)に示すように、絶縁層100上の半導体層101に形成されたP型(第2導電型)のソース領域21(第2ソース領域)と、P型のドレイン領域22(第2ドレイン領域)と、ソース領域21とドレイン領域22との間に形成されたN型(第1導電型)のボディ領域23(第2ボディ領域)とを含み、さらに、ボディ領域23上に形成されたゲート絶縁膜24(第2ゲート絶縁膜)と、ゲート絶縁膜24上に形成されたゲート電極25(第2ゲート電極)とを含むPチャネル型のトランジスターである。ボディ領域23は、半導体層101の内のゲート電極25直下の領域に位置している。
ソース領域21には、コンタクト電極121が接続されている。
【0019】
絶縁層100は例えば酸化シリコン(SiO)層であり、半導体層101は例えば単結晶のシリコン(Si)層である。ゲート絶縁膜14及び24は例えば酸化シリコン(SiO)膜であり、ゲート電極15及び25は例えば金属によって形成されている。半導体装置1の周囲には、素子分離膜102が形成されている。また、第1及び第2トランジスターTr1及びTr2の上には層間絶縁膜103が形成されている。
【0020】
第2トランジスターTr2のP型のドレイン領域22は、第1トランジスターTr1のP型のボディ領域13に接続されている。
従って、第2トランジスターTr2のソース領域21を所定の電位に接続するとともに、第2トランジスターTr2をON状態とすることにより、第1トランジスターTr1のボディ領域13を上記所定の電位に設定(ボディコンタクト)することができる。従って、第1トランジスターTr1におけるヒストリー効果を抑制し、安定動作を実現することができる。
さらに、第2トランジスターTr2をOFF状態とすることにより、第1トランジスターTr1のボディ領域13を、上記所定の電位から遮断してフローティング化(ボディフロート)することができる。従って、第1トランジスターTr1のゲート容量が抑制され、高いON電流(ON/OFF比)を得ることができる。
【0021】
第1トランジスターTr1のゲート電極15と、第2トランジスターTr2のゲート電極25とは電気的に接続されている。従って、第1トランジスターTr1と第2トランジスターTr2とには、同じゲート電圧が印加される。第1トランジスターTr1と第2トランジスターTr2とに印加するゲート電圧を共通化することにより、信号線の本数や端子の数を削減することができる。
【0022】
この構成において、例えば、第1及び第2トランジスターTr1及びTr2のゲート電極15及び25に対してゲート電圧V1(第1のゲート電圧)を印加した場合に、Nチャネル型の第1トランジスターTr1をOFF状態にすると同時に、Pチャネル型の第2トランジスターTr2をON状態にすることが望ましい。また、第1及び第2トランジスターTr1及びTr2のゲート電極15及び25に対してゲート電圧V1よりも大きいゲート電圧V2(第2のゲート電圧)を印加した場合に、Nチャネル型の第1トランジスターTr1をON状態にすると同時に、Pチャネル型の第2トランジスターTr2をOFF状態にすることが望ましい。これにより、第1トランジスターTr1がOFF状態のときには第1トランジスターTr1のボディ電位を上記所定の電位に設定(ボディコンタクト)し、第1トランジスターTr1がON状態のときには第1トランジスターのボディ電位をフローティング化(ボディフロート)することができる。つまり、第1トランジスターTr1のON/OFF動作に同期して、第1トランジスターTr1のボディコンタクトとボディフロートとを切り替えることができる。
【0023】
第1トランジスターTr1などのMISFETにおいて、ドレイン電圧が1.1V以上の条件下では、インパクトイオン化現象が発生する結果、ボディ電位が上昇し、閾値電圧が低下するとともに、ON電流が増加するという作用がある。本実施形態において、第1トランジスターTr1は絶縁層上に形成されたSOI構造を有している。このため、第1トランジスターTr1のON動作に同期して第1トランジスターのボディ電位をフローティング化すれば、ボディ電位の上昇に伴う上述の作用が強く現れ、高いON電流を実現することができる。
ここで、仮に、ボディ電位をフローティング化したまま第1トランジスターTr1をOFFにする場合には、閾値電圧が既に低下しているため、第1トランジスターTr1にOFF電流が流れる可能性がある。しかしながら、本実施形態において、第1トランジスターTr1のOFF動作に同期して第1トランジスターのボディ電位を上記所定の電位に設定すれば、ボディ電位はリセットされ、閾値電圧を再び上昇させ、OFF電流を低下させることができる。
このように、第1トランジスターTr1のON/OFF動作に同期して、第1トランジスターTr1のボディコンタクトとボディフロートとを切り替えることにより、高いON電流だけでなく、低いOFF電流(高いON/OFF比)と急峻なサブスレッショルド特性を実現することもできる。
【0024】
図3は、第1の実施形態におけるトランジスターの伝達特性の例を示す図であり、図3(A)は第1トランジスターTr1の伝達特性、図3(B)は第2トランジスターTr2の伝達特性の例を示している。
第1トランジスターTr1には、高いON/OFF比が求められる。従って、図3(A)に示すように、ゲート電圧としてV1及びV2(V2>V1)の切り替えが可能である場合には、第1トランジスターTr1の閾値電圧Vth1を、ゲート電圧V1付近の値に設定することが望ましい(Vth1≒V1)。
一方、第2トランジスターTr2に求められるのは、電気信号としてのON/OFF比というよりも、むしろ、第1トランジスターTr1のボディ領域を所定電位に接続したり、フローティング状態にしたりすることである。つまり、第2トランジスターTr2においては、ゲート電圧V1においてドレイン電流を十分に流すとともに、ゲート電圧V2においてドレイン電流をなるべく0に近い値にすることが求められる。従って、図3(B)に示すように、第2トランジスターTr2の閾値電圧Vth2を、ゲート電圧V1とゲート電圧V2との間の値に設定することが望ましい(V2>Vth2>V1)。さらに、第2トランジスターTr2の閾値電圧Vth2とゲート電圧V2との差の絶対値が、第1トランジスターTr1の閾値電圧Vth1とゲート電圧V1との差の絶対値より大きいことが望ましい(|V2−Vth2|>|V1−Vth1|)。
【0025】
図1及び図2(B)を再び参照すると、第2トランジスターTr2は、第1トランジスターTr1のボディ領域13からみて、第1トランジスターTr1のドレイン領域12とは反対側の位置に形成されている。また、第2トランジスターTr2のドレイン領域22は、第1トランジスターTr1のソース領域11と直に接するように形成されている。第2トランジスターTr2のボディ領域23及びソース領域21は、第2トランジスターTr2のドレイン領域22からみて、第1トランジスターTr1のソース領域11とは反対側の位置に形成されている。従って、第1トランジスターTr1のボディ領域13と第2トランジスターTr2のドレイン領域22との接触面積を大きくとるとともに、第1トランジスターTr1の実効ゲート幅を小さくすることができる。また、この構成によれば、ゲート電極の面積が大きくなることが抑制されるので、ゲート容量の増大が抑制される。
【0026】
第1トランジスターTr1のソース領域11に接続されたコンタクト電極111と、第2トランジスターTr2のソース領域21に接続されたコンタクト電極121とは、図示しない導電体の配線によって接続されることが望ましい。例えば、第1トランジスターのソース領域11を第1の電源電位Vssに接続する場合には、第2トランジスターのソース領域21も第1の電源電位Vssに接続する。第1トランジスターのソース領域11に接続される電位と第2トランジスターのソース領域21に接続される電位との間に、第1トランジスターのソース領域11と第2トランジスターのドレイン領域22との間の順方向降下電圧を超える差がある場合には、第1トランジスターのソース領域11と第2トランジスターのドレイン領域22との間で順方向電流が流れてしまう場合があるからである。
【0027】
なお、ここでは第2トランジスターTr2のドレイン領域が第1トランジスターTr1のボディ領域13に接続されている例について説明したが、第2トランジスターTr2のソース領域が第1トランジスターTr1のボディ領域13に接続されていても良い。
その場合には、第2トランジスターTr2のドレイン領域を上記所定の電位に接続する。また、その場合には、第2トランジスターTr2のソース領域が、第1トランジスターTr1のソース領域11と接し、第2トランジスターTr2のボディ領域23及びドレイン領域は、第2トランジスターTr2のソース領域からみて、第1トランジスターTr1のソース領域11とは反対側の位置に形成される。また、その場合には、第1トランジスターのソース領域11に接続されたコンタクト電極111と、第2トランジスターTr2のドレイン領域に接続されたコンタクト電極とを、導電体の配線によって接続することが望ましい。
【0028】
<2.第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を示す平面模式図である。第2の実施形態に係る半導体装置2は、第3トランジスターTr3と第4トランジスターTr4とを具備している。第3トランジスターTr3はPチャネル型である点で、第1の実施形態におけるNチャネル型の第1トランジスターTr1と異なり、第4トランジスターTr4はNチャネル型である点で、第1の実施形態におけるPチャネル型の第2トランジスターTr2と異なるが、他の点については第1の実施形態と同様であり、重複する説明を省略する。
【0029】
第2の実施形態においては、第3及び第4トランジスターTr3及びTr4のゲート電極15及び25に対してゲート電圧V3(第2のゲート電圧)を印加した場合に、Pチャネル型の第3トランジスターTr3をON状態とし、Nチャネル型の第4トランジスターTr4をOFF状態とすることができる。また、第3及び第4トランジスターTr3及びTr4のゲート電極15及び25に対してゲート電圧V3よりも大きいゲート電圧V4(第1のゲート電圧)を印加した場合に、Pチャネル型の第3トランジスターTr3をOFF状態とし、Nチャネル型の第4トランジスターTr4をON状態とすることができる。従って、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、第1導電型と第2導電型との関係は逆になっても良い。
【0030】
図5は、第2の実施形態におけるトランジスターの伝達特性の例を示す図であり、図5(A)は第3トランジスターTr3の伝達特性、図5(B)は第4トランジスターTr4の伝達特性の例を示している。
第3トランジスターTr3には、高いON/OFF比が求められる。従って、図5(A)に示すように、ゲート電圧としてV3及びV4(V4>V3)の切り替えが可能である場合には、第3トランジスターTr3の閾値電圧Vth3を、ゲート電圧V4付近の値に設定することが望ましい(Vth3≒V4)。
一方、第4トランジスターTr4に求められるのは、電気信号としてのON/OFF比というよりも、むしろ、第3トランジスターTr3のボディ領域を所定電位に接続したり、フローティング状態にしたりすることである。つまり、第4トランジスターTr4においては、ゲート電圧V3においてドレイン電流をなるべく0に近い値にするとともに、ゲート電圧V4においてドレイン電流を十分に流すことが求められる。従って、図5(B)に示すように、第4トランジスターTr4の閾値電圧Vth4を、ゲート電圧V3とゲート電圧V4との間の値に設定することが望ましい(V4>Vth4>V3)。さらに、第4トランジスターTr4の閾値電圧Vth4とゲート電圧V3との差の絶対値が、第3トランジスターTr3の閾値電圧Vth3とゲート電圧V4との差の絶対値より大きいことが望ましい(|Vth4−V3|>|Vth3−V4|)。
【0031】
<3.第3の実施形態>
図6は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置を示す平面模式図である。第3の実施形態に係る半導体装置3においては、第2トランジスターTr2のドレイン領域22が、第1トランジスターTr1の2つのソース領域11に挟まれる位置に形成されており、第2トランジスターTr2のボディ領域23及びソース領域21が、第2トランジスターTr2のドレイン領域22からみて、第1トランジスターTr1のボディ領域13とは反対側の位置に形成されている点で、第1の実施形態における第2トランジスターTr2の配置と異なるが、他の点については第1の実施形態と同様であり、重複する説明を省略する。
【0032】
第3の実施形態においては、第1トランジスターTr1のゲート電極15と第2トランジスターTr2のゲート電極25とを接続するための配線を比較的長くとる必要があるため、ゲート容量が若干増大する可能性はあるが、第1の実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
なお、第2の実施形態において説明したPチャネル型の第3トランジスターTr3のボディ電位を、Nチャネル型の第4トランジスターTr4のON/OFFによって制御及びフローティング化する構成を、第3の実施形態と同様の配置構造において実現する場合でも、同様の効果を得ることができる。
【0033】
<4.第4の実施形態>
図7は、本発明の第4の実施形態に係る半導体装置を示す平面模式図である。第4の実施形態に係る半導体装置4においては、第1トランジスターTr1のゲート電極15と、第2トランジスターTr2のゲート電極25とが電気的に接続されず、分離されている点で、第1の実施形態と異なるが、他の点については第1の実施形態と同様であり、重複する説明を省略する。
【0034】
第4の実施形態においては、第1トランジスターTr1のゲート電極15と第2トランジスターTr2のゲート電極25とに対して、別々のゲート電圧を印加することができるので、第1トランジスターTr1と第2トランジスターTr2とを独立に制御することができる。その他の点においては、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、第2の実施形態において説明したPチャネル型の第3トランジスターTr3のボディ電位を、Nチャネル型の第4トランジスターTr4のON/OFFによって制御及びフローティング化する構成において、第3トランジスターTr3のゲート電極15と第4トランジスターTr4のゲート電極25とを分離した場合でも、同様の効果を得ることができる。
また、第3の実施形態において説明した配置構成において、第1トランジスターTr1のゲート電極15と第2トランジスターTr2のゲート電極25とを分離した場合でも、同様の効果を得ることができる。
【0035】
<5.第5の実施形態>
図8は、本発明の第5の実施形態に係る半導体装置を示す平面模式図である。第5の実施形態に係る半導体装置5においては、第1の実施形態において説明した第1及び第2トランジスターTr1及びTr2を有する半導体装置1と、第2の実施形態において説明した第3及び第4トランジスターTr3及びTr4を有する半導体装置2とを組み合わせて、インバーター回路を構成している。
【0036】
図8に示すように、第5の実施形態に係る半導体装置5においては、第1及び第2トランジスターTr1及びTr2のゲート電極(第1及び第2ゲート電極)15及び25と、第3及び第4トランジスターTr3及びTr4のゲート電極(第3及び第4ゲート電極)15及び25とは、共通の入力端子INに接続されている。第1及び第2トランジスターTr1及びTr2のソース領域(第1及び第2ソース領域)11及び21は第1の電源電位Vssに接続され、第3及び第4トランジスターTr3及びTr4のソース領域(第3及び第4ソース領域)11及び21は第2の電源電位Vddに接続されている。第1トランジスターTr1のドレイン領域(第1ドレイン領域)12と、第3トランジスターTr3のドレイン領域(第3ドレイン領域)12とは、共通の出力端子OUTに接続されている。入力端子INには、例えば、上述のゲート電圧V1(例えばV1=V3)と上述のゲート電圧V2(例えばV2=V4)とを選択的に印加することができる。
【0037】
第5の実施形態においては、第1の実施形態において説明した半導体装置1と第2の実施形態において説明した半導体装置2とを用いているので、第1トランジスターTr1及び第3トランジスターTr3が安定動作し、なおかつ高いON/OFF比が得られる。従って、動作の高速化及び低消費電力化が可能となる。
なお、第5の実施形態においては、第1の実施形態において説明した半導体装置と第2の実施形態において説明した半導体装置とを用いる例について説明したが、第3の実施形態において説明した配置構成を有する半導体装置や、第4の実施形態において説明したゲート電極構造を有する半導体装置を用いても良い。
また、上述の半導体装置を用いることにより、携帯機器のための低パワーデバイス、パーソナルコンピューターのプロセッサー、メモリ、その他高速動作を要するロジックデバイス等を作成することができる。
【符号の説明】
【0038】
1、2、3、4、5…半導体装置、11…ソース領域(第1ソース領域)、12…ドレイン領域(第1ドレイン領域)、13…ボディ領域(第1ボディ領域)、14…ゲート絶縁膜(第1ゲート絶縁膜)、15…ゲート電極(第1ゲート電極)、21…ソース領域(第2ソース領域)、22…ドレイン領域(第2ドレイン領域)、23…ボディ領域(第2ボディ領域)、24…ゲート絶縁膜(第2ゲート絶縁膜)、25…ゲート電極(第2ゲート電極)、100…絶縁層、101…半導体層、102…素子分離膜、103…層間絶縁膜、111、112、121…コンタクト電極、Tr1…第1トランジスター、Tr2…第2トランジスター、Tr3…第3トランジスター、Tr4…第4トランジスター、V1…ゲート電圧(第1のゲート電圧)、V2…ゲート電圧(第2のゲート電圧)、V3…ゲート電圧(第2のゲート電圧)、V4…ゲート電圧(第1のゲート電圧)、Vth1…第1トランジスターの閾値電圧、Vth2…第2トランジスターの閾値電圧、Vth3…第3トランジスターの閾値電圧、Vth4…第4トランジスターの閾値電圧、IN…入力端子、OUT…出力端子、Vss…第1の電源電位、Vdd…第2の電源電位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層に形成された第1導電型の第1ソース領域、第1導電型の第1ドレイン領域、及び、前記第1ソース領域と前記第1ドレイン領域との間に形成された第2導電型の第1ボディ領域と、
前記第1ボディ領域上に形成された第1ゲート絶縁膜と、
前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極と、
を含む部分空乏型の第1トランジスターと、
前記半導体層に形成された第2導電型の第2ソース領域、第2導電型の第2ドレイン領域、及び、前記第2ソース領域と前記第2ドレイン領域との間に形成された第1導電型の第2ボディ領域と、
前記第2ボディ領域上に形成された第2ゲート絶縁膜と、
前記第2ゲート絶縁膜上に形成された第2ゲート電極と、
を含む第2トランジスターと、
を具備し、
前記半導体層は絶縁層上に形成されており、
前記第1ボディ領域は、前記第2ソース領域及び第2ドレイン領域の内の一方に接続されている半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1ボディ領域からみて一方の側に前記第1ドレイン領域が形成され、他方の側に前記第1ソース領域と前記第2ソース領域及び第2ドレイン領域の内の前記一方とが形成されている半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第1ゲート電極と、前記第2ゲート電極とが電気的に接続されている半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項において、
前記第1ソース領域と、前記第2ソース領域及び第2ドレイン領域の内の前記一方とが接しており、
前記第1ソース領域と、前記第2ソース領域及び第2ドレイン領域の内の他方とが導電体によって接続されている半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項において、
前記半導体層に形成された第2導電型の第3ソース領域、第2導電型の第3ドレイン領域、及び、前記第3ソース領域と前記第3ドレイン領域との間に形成された第1導電型の第3ボディ領域と、
前記第3ボディ領域上に形成された第3ゲート絶縁膜と、
前記第3ゲート絶縁膜上に形成された第3ゲート電極と、
を含む部分空乏型の第3トランジスターと、
前記半導体層に形成された第1導電型の第4ソース領域、第1導電型の第4ドレイン領域、及び、前記第4ソース領域と前記第4ドレイン領域との間に形成された第2導電型の第4ボディ領域と、
前記第4ボディ領域上に形成された第4ゲート絶縁膜と、
前記第4ゲート絶縁膜上に形成された第4ゲート電極と、
を含む第4トランジスターと、
をさらに具備し、
前記第3ボディ領域は、前記第4ソース領域及び第4ドレイン領域の内の一方に接続されており、
前記第1トランジスターと前記第3トランジスターとによってインバーターを構成している半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の半導体装置を駆動する方法であって、
前記第1トランジスターをOFF状態、前記第2トランジスターをON状態とする第1のゲート電圧を、前記第1ゲート電極及び前記第2ゲート電極にそれぞれ印加しながら、前記第2トランジスターを介して前記第1トランジスターの第1ボディ領域に所定電圧を印加するステップと、
前記第1トランジスターをON状態、前記第2トランジスターをOFF状態とする第2のゲート電圧を、前記第1ゲート電極及び前記第2ゲート電極にそれぞれ印加しながら、前記第1トランジスターのソース・ドレイン間に電流を流すステップと、
を具備する駆動方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記第2トランジスターの閾値電圧の値が、前記第1のゲート電圧と前記第2のゲート電圧との間の値であり、前記第2トランジスターの閾値電圧と前記第2のゲート電圧との差が、前記第1トランジスターの閾値電圧と前記第1のゲート電圧との差より大きい駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−4151(P2012−4151A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134790(P2010−134790)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】