説明

半導体装置

【課題】寿命を可及的に長くすることの可能なMISFETを備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体領域2が形成された半導体基板1と、半導体領域に離間して形成されたソース領域5aおよびドレイン領域5bと、ソース領域とドレイン領域との間の半導体領域3上に形成され金属および酸素を含む金属酸化層12を有するゲート絶縁膜10と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極16と、を有するMISFETを備え、金属酸化層に含まれる金属はHf、Zrのうちから選択された少なくとも1つであり、金属酸化層は、更にRu、Cr、Os、V、Fe、Tc、Nb、Taのうちから選択された少なくとも1つの元素が添加され、金属酸化層は元素が添加されたことにより形成される電荷を捕獲または放出する電荷トラップを有し、金属酸化層中における元素の密度は、1×1015cm−3以上、2.96×1020cm−3以下の範囲にあり、電荷トラップは、金属酸化層の中央より半導体領域側にピークを有するように分布することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MISFETを有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MISFET(Metal-Insulator-Semiconductor Field Effect Transistor)においては、キャリアの膜中での直接トンネリング現象に起因してゲート電極と基板との間のリーク電流が増加することが問題とされており、こうしたトンネリング現象を回避すべく、SiOよりも比誘電率が大きい材料を用いてゲート絶縁膜を形成することが提案されている。具体的には、ZrOやHfO、あるいはそれとSiOとの化合物いわゆるシリケート等をはじめとする高誘電率の金属酸化物である。
【0003】
さらに、ゲート電極の空乏化による特性劣化、および閾値電圧の調整のため、ゲート電極には従来のポリシリコンに代わって、金属材料を使用することが検討されている。
【0004】
また、高誘電率の金属酸化層を有するゲート絶縁膜を備えたMISFETにおいては、ゲート絶縁膜の破壊寿命は、デバイスの保証をするために十分ではなく、ゲート絶縁膜をさらに高信頼化する必要がある。デバイスの寿命保障を行うためには通常、統計処理を行い、必要な面積、不良率に換算して、寿命を求める。特に、高誘電率の金属酸化層を有するゲート絶縁膜を備えたMISFETは、破壊寿命の分布が広すぎることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。このため、デバイスの保証に必要な面積、不良率に換算すると、非常に寿命が短くなってしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S. Inumiya et al., "DETERMINATION OF TIME TO BE BREAKDOWN OF 0.8-1.2 NM EOT HfSiON GATE DIELECTRICS WITH Poly-Si AND METAL GATE ELECTRODES" IEEE 06CH37728 44th Annual International Reliability Physics Symposium, Sa Joes, 2006, pp184-188
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、寿命を可及的に長くすることのできるMISFETを備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様による半導体装置は、半導体領域が形成された半導体基板と、前記半導体領域に離間して形成されたソース領域およびドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域上に形成され金属および酸素を含む金属酸化層を有するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、を有するMISFETを備え、前記金属酸化層に含まれる前記金属はHf、Zrのうちから選択された少なくとも1つであり、前記金属酸化層は、更にRu、Cr、Os、V、Tc、Nbのうちから選択された少なくとも1つの元素が添加され、前記金属酸化層は前記元素が添加されたことにより形成される電荷を捕獲または放出する電荷トラップを有し、前記金属酸化層中における前記元素の密度は、1×1015cm−3以上、2.96×1020cm−3以下の範囲にあり、前記電荷トラップは、前記金属酸化層の中央より前記半導体領域側にピークを有するように分布することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の第2の態様による半導体装置は、半導体領域が形成された半導体基板と、前記半導体領域に離間して形成されたソース領域およびドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域上に形成され金属および酸素を含む金属酸化層を有するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、を有するMISFETを備え、前記金属酸化層に含まれる前記金属は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選択された少なくとも1つであり、前記金属酸化層は、更にV、Cr、Mn、Fe、Zr、Nb、Mo、Tc、Rh、Hf、Ta、Re、Os、Irのグループから選択された少なくとも1つの元素が添加され、前記金属酸化層は前記元素が添加されたことにより形成される電荷を捕獲または放出する電荷トラップを有し、前記金属酸化層中における前記元素の密度は、1×1015cm−3以上、2.96×1020cm−3以下の範囲にあり、前記電荷トラップは、前記金属酸化層の中央より前記半導体領域側にピークを有するように分布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、寿命を可及的に長くすることの可能な半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】破壊寿命の分布(ワイブルプロット)による寿命の変化を示す図。
【図2】複数のサンプルの内容を示す図。
【図3】各サンプルにおける、ワイブル分布の傾きβと、各サンプル中を流れる多数キャリア/少数キャリアの相関を示す図。
【図4】MISFETに印加するストレスの波形とストレス印加条件を示す図。
【図5】図4に示す各ストレス条件に対する、複数のサンプルのワイブル分布を示す図。
【図6】図4に示すストレス条件を印加した際のワイブル分布の傾きと、ストレス印加中における多数キャリアに対する少数キャリアの比との相関を示す図。
【図7】第1実施形態による半導体装置を示す断面図。
【図8】ハフニアに、V、Cr、またはMnを添加した場合に形成される電子およびホールのアシストレベルを示す図。
【図9】ハフニアに、Nb、Tc、またはRuを添加した場合に形成される電子およびホールのアシストレベルを示す図。
【図10】ハフニアに、Ta、W、Osを添加した場合に形成される電子およびホールのアシストレベルを示す図。
【図11】ゲート絶縁膜がSiO層とHfSiON層との積層構図を有するpMISFETにおいて流れる電流成分を示す図。
【図12】pMISFETにおいてトラップが無いときの電子電流に対する電子トラップがあるときの電子電流の比に関する印加電圧依存性を示す図。
【図13】Eと、dJ/dEとの関係を示す図。
【図14】電源電圧下での、トラップレベルと、電子の注入レベルの関係を示す模式図。
【図15】pMISFETにおいてトラップが無いときの電子電流に対するトラップがあるときの電子電流の比に関するトラップレベルの依存性を示す図。
【図16】ゲート絶縁膜がSiO層とHfSiON層との積層構造を有するnMISFETにおいて流れる電流成分を示す図。
【図17】nMISFETおよびpMISFETのトラップ準位の好ましい範囲を示す図。
【図18】nMISFETおよびpMISFETの、望ましいトラップ位置の範囲を示す図。
【図19】第1実施形態のMISFETの製造工程を示す断面図。
【図20】第2実施形態による半導体装置を示す断面図。
【図21】トラップが無いときの電子電流に対する電子トラップがあるときの電子電流の比に関する印加電圧依存性を示す図。
【図22】電源電圧下での、トラップレベルと電子の注入レベルの関係を示す模式図。
【図23】トラップが無いときの電子電流に対する電子トラップがあるときの電子電流の比に関するトラップレベル依存性を示す図。
【図24】第2実施形態のMISFETにおけるトラップ準位の好ましい範囲を示す図。
【図25】第2実施形態のMISFETにおける、望ましいトラップ位置を示す図。
【図26】ランタンアルミネートに、V、Cr、Mn、またはFeを添加した場合の電子およびホールのアシストレベルを示す図。
【図27】ランタンアルミネートに、Zr、Nb、Mo、Tc、またはRhを添加した場合の電子およびホールのアシストレベルを示す図。
【図28】ランタンアルミネートに、Hf、Ta、Re、Os、Ir、またはPtを添加した場合の電子およびホールのアシストレベルを示す図。
【図29】第3実施形態のMISFETにおけるトラップ準位の好ましい範囲を示す図。
【図30】第3実施形態のMISFETにおける、望ましいトラップ位置を示す図。
【図31】第4実施形態のMISFETにおけるトラップ準位の好ましい範囲を示す図。
【図32】第4実施形態のMISFETにおける、望ましいトラップ位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明に至った経緯について説明する。
【0012】
通常、デバイスの破壊までの寿命はワイブル分布を用いて議論を行う。図1を参照してデバイスの破壊寿命の分布を示すワイブルプロットについて説明する。図1において、横軸は破壊寿命を示しており、縦軸は累積不良率Fの関数ln(−ln(1−F))を示している。ここで、ln()は、自然対数を表している。この分布の傾きをβとすると、実際のデバイスの寿命は、この累積不良率Fが非常に小さい値(例えば、100ppm(parts per million))のところを指標とするため、ワイブル分布の傾きβが大きくなるほど、寿命は長くなると考えられる。
【0013】
様々な材料からなるメタルゲート電極を有するnチャネルMISFET(以下、nMISFETともいう)のサンプルA〜Gを作成した。これらのサンプルA〜Gは、シリコン基板上にゲート絶縁膜として、SiO層と、このSiO層上に形成されたHfSiON層との積層構造を有し、ゲート絶縁膜の物理膜厚として2.3nm〜2.5nmでかつ酸化膜換算厚さEOT(Equivalent Oxide Thickness)が0.9nm〜1.1nmである。ゲート電極として、サンプルAはnポリシリコン、サンプルBはNiSi、サンプルCはTiN、サンプルDは膜厚が3nmのTaリッチのTaC、サンプルEは膜厚が5nmのTaリッチのTaC、サンプルFは膜厚が10nmのTaリッチのTaC、サンプルGは膜厚が10nmのCリッチのTaCからなっている。
【0014】
これらのサンプルA〜Gのワイブル分布の傾きβを、ゲート絶縁膜中を流れる多数キャリアに対する少数キャリアの比に対してプロットしたものを図3に示す。図3からわかるように、これらのサンプルA〜Gに用いられたゲート絶縁膜は同じであるにも係わらず、ワイブル分布の傾きβはゲート電極材料に強く依存し、ゲート絶縁膜中を流れる多数キャリアに対する少数キャリアの比(=少数キャリア/多数キャリア)が大きいほど、ワイブル分布の傾きβが大きくなる傾向があることがわかる。このことから、ゲート絶縁膜中の小数キャリアと多数キャリアの比を大きくすることによって、破壊寿命が長くなるように変調させることができると予測される。
【0015】
更に、nポリシリコンのゲート電極/HfSiON層/SiO層の積層ゲート構造を有するnMISFETにおいて、ストレスの印加方法を変えることにより、ゲート絶縁膜中を流れるキャリアのバランスを変調させ、その際の破壊寿命を調べた。その結果を図4(a)、4(b)に示す。ストレスの種類は、図4(a)に示すように、3種類ある。第1のストレスは一定の正電圧Vgst1、すなわちDCストレスである。第2のストレスは、第1および第2電圧Vgst1、Vgst2の印加期間をそれぞれT1、T2として、交互に印加するものであって、第2電圧Vgst2が0とするユニポーラストレスである。すなわち、ユニポーラストレスは、正の電圧が周期的に印加されるストレスである。第3のストレスは、第1および第2電圧Vgst1、Vgst2の印加期間をそれぞれT1、T2として、交互に印加するものであって、第2電圧Vgst2が負とするバイポーラストレスである。すなわち、バイポーラストレスは、正の電圧と負の電圧が交互に印加されるストレスである。したがって、DCストレスとユニポーラストレスではゲート絶縁膜中を流れるキャリアのバランスは同じであるが、バイポーラストレスにすると、逆極性のバイアスが印加されるため、ゲート絶縁膜中のキャリアのバランスが変化する。
【0016】
ゲート絶縁膜に印加したストレスの印加方法は、図4(b)に示すように、第1乃至第5の印加方法で印加した。第1の印加方法は、電圧Vgst1が2.5VであるDCストレスを印加し、第2の印加方法は電圧Vgst1が2.5V、電圧Vgst2が0Vで、T1=T2=10secとなるユニポーラストレスを印加し、第3の印加方法は、電圧Vgst1が2.5V、電圧Vgst2が−1Vで、T1=T2=10secとなるバイポーラストレスを印加し(以下、バイポーラストレス1もいう)、第4の印加方法は、電圧Vgst1が2.5V、電圧Vgst2が−1Vで、T1が10sec、T2が100secとなるバイポーラストレスを印加し(以下、バイポーラストレス2もいう)、第5の印加方法は、電圧Vgst1が2.5V、電圧Vgst2が−1Vで、T1が10sec、T2が1000secとなるバイポーラストレスを印加した(以下、バイポーラストレス3もいう)。すなわち、第3乃至第5の印加方法は、それぞれ反転側のストレス時間T1は一定(10秒)で、蓄積側のストレス時間T2を変化させている。バイポーラストレスでT2を長くすると、逆バイアス(蓄積側ストレス)でのキャリア注入が増えるため、ストレス印加中の少数キャリアの割合が増加する。
【0017】
このような第1乃至第5の印加方法を用いてnMISFETにストレスを印加させた際の破壊寿命のワイブルプロットを図5(a)、5(b)、5(c)、5(d)、5(e)にそれぞれ示す。図5(a)乃至図5(e)からわかるように、DCストレスまたはユニポーラストレスを印加した状態では、ワイブル分布の傾きβはほとんど1.2程度であるのに対して、バイポーラストレスを印加した状態ではワイブル分布の傾きβは1.5〜2.6と大きい値となる。また、バイポーラストレスの蓄積側のストレス時間T2が長いほどワイブル分布の傾きβが大きくなっていくことがわかった。
【0018】
ストレスを変化させた場合のワイブル分布の傾きβに関する、少数キャリアと多数キャリアの比の依存性を図6に示す。この図6からもわかるように、ゲート絶縁膜中を流れる多数キャリアに対する少数キャリアの比が大きいほど、ワイブル分布の傾きβが大きくなる傾向がある。
【0019】
以上の実験結果から、ゲート絶縁膜中の少数キャリアと多数キャリアの比を変えることによって、破壊寿命の分布を変調し、分布の傾きβを大きくすることができることがわかった。
【0020】
そこで、以下の本発明の各実施形態では、高誘電率の金属酸化層を有するゲート絶縁膜中に添加元素を添加することによって、意図的にゲート絶縁膜を構成する金属酸化層中に電荷(電子または正孔)をトラップ(捕獲または放出)する電荷トラップ(以下、単にトラップともいう)を生成し、この電荷トラップを介した電流を増やすことによって、多数キャリアに対する、少数キャリアの比を大きくし、それによって破壊寿命の分布が急峻な(傾きβの大きい)半導体装置を形成するようにしている。
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態および実施例について詳細に説明する。なお、以後の説明では、共通の構成に同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、実際の装置を製造する際は、以下の説明と公知の技術を参酌して判断することができる。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による半導体装置を図7に示す。この半導体装置は、MISFETであって、半導体基板1の半導体領域2に形成される。この半導体領域2は、半導体基板の一部領域であってもよいし、半導体基板に形成されたウェル領域であってもよい。また、SOI(Silicon On Insulator)基板のSOI層であってもよい。この半導体領域2には、半導体領域と異なる導電型のソース領域5aおよびドレイン領域5bが離間して形成されている。ソース領域5aは、接合深さの浅い不純物層6aと、接合深さの深い不純物層7aとを有し、ドレイン領域5bは、接合深さの浅い不純物層6bと、接合深さの深い不純物層7bとを有している。ソース領域5aおよびドレイン領域5bとの間の、チャネル3となる半導体領域2上に、界面酸化層11と、この界面酸化層11上に形成された高誘電体層12との積層構造を有するゲート絶縁膜10が形成されている。界面酸化層11は、シリコン酸化層もしくはシリコン酸窒化層であり、高誘電体層12は高誘電率の金属酸化層である。また、ゲート絶縁膜10上には、金属膜17と、金属膜上に形成された多結晶シリコン膜18との積層構造を有するゲート電極16が形成されている。ゲート絶縁膜10とゲート電極16の側面には絶縁体(例えば窒化シリコン)からなるゲート側壁19が形成されている。ソース領域5a、ドレイン領域5b、およびゲート電極16の多結晶シリコン膜18上には、金属シリサイド層20a、20b、20cがそれぞれ形成されている。
【0023】
ここまでの基本的な構造は、一般的なMISFETと同じであるが、本実施形態では、高誘電体層12には、高誘電率の金属酸化層であって、Ru、Cr、Os、V、Fe、Tc、Nb、Taのグループから選択された少なくとも1つの元素が添加されている。これらの添加元素のうち、Ruは、安価で容易に入手することができるとともに、半導体製造プロセスとの相性が良好である。なお、本実施形態においては、金属酸化層を構成する主要金属元素は、ハフニウム、ジルコニウムのうちから選択された少なくとも1つ元素である。
【0024】
Ru、Cr、Os、V、Tc、Nbから選択された元素は、ハフニア(HfO)層、ハフニウムシリケート(HfSiO)層、またはハフニウム窒化シリケート(HfSiON)層、またはハフニウムアルミネート層中に添加されると、第一原理計算から浅いトラップ準位を作ることがわかっている。
【0025】
図8は、V、Cr、Mnがハフニア中に作るトラップ準位を示し、図9は、Nb、Tc、Ruがハフニア中に作るトラップ準位を示し、図10は、Ta、W、Osがハフニア中に作るトラップ準位を示す。図8乃至図10からわかるように、ハフニアの伝導帯の浅い位置にトラップをつくる元素はV、Nb、Ru、Ta、Osであり、これらの元素は、pMISFETに対する添加元素として適しており、価電子帯に近いトラップをつくる元素はV、Cr、Tc、Ru、Osであり、これらの元素はnMISFETに対する添加元素として適している。
【0026】
以下では、界面酸化層11となるシリコン酸化層の層厚が1nmで、高誘電体層12となるハフニウム窒化シリケート層の層厚が1.5nmであるゲート絶縁膜10中に、添加元素としてRu(ルテニウム)を用いたpMISFETを例に挙げて説明する。図11に、pMISFETにおいて流れる電流成分を正孔電流(グラフg)と電子電流(グラフg)に分離して測定した結果を示す。電源電圧Vg=−1.1V付近で、多数キャリアは正孔電流で、少数キャリアは電子電流であることがわかる。
【0027】
この積層構造を有するゲート絶縁膜を流れる、少数キャリア(電子)によるリーク電流は、
【数1】

で表される。ここで、eは素電荷、mは真空における電子の質量、hはプランク定数、kはボルツマン定数、Tは温度、Eは電子の持つエネルギー、E(=E−E)は電子のトンネル方向(x軸方向)におけるエネルギー、Eは半導体基板のフェルミレベル、T(E)はゲート絶縁膜を流れる電子の実効的トンネル確率である。本発明の一実施形態では、この式を基に、異なる絶縁層の積層構造のゲート絶縁膜のトラップ準位を計算した。
【0028】
low−k層である界面酸化層11およびhigh−k層となる高誘電体層12のそれぞれの誘電率をεおよびεとし、界面酸化層11および高誘電体層12にそれぞれかかる電圧をVおよびVとするとき、誘電率が異なる絶縁層の積層構造において、電束密度が一定と仮定した場合、それぞれの絶縁層に異なる実電界がかかることになる。そのとき、界面酸化層および高誘電体層にかかる実電界をEおよびEとすると、
εox×Eox=ε×E=ε×E (3)
となる。ここで、εox(=3.9)はSiOの誘電率である。実電界は、E=V/T、E=V/Tと定義した。つまり、
ε×V/T=ε×V/T (4)
を満たす。(3)式からわかるように、高誘電体層よりも界面酸化層の方の実電界が強くなる。
【0029】
アシストレベル(トラップ準位)は、高誘電体層に電圧Vがかかるため、エネルギーレベルから見ると、Vの幅を持つことになる。しかし、この状況では、半導体基板のフェルミレベルEはアシストレベルよりも低いため、アシストレベルはリーク電流に影響しない。つまり、低電界では、アシストレベルのない同じ積層構造の絶縁膜と同じリーク電流になる。そのときの実効トンネル確率T(E)は、
【数2】

と表せる。ここで、
φb1=φb1+E−E、φb2=φb2+E−E−V
であり、mおよびmは、それぞれ界面酸化層および高誘電体層におけるトンネルする電子の有効質量である。またφb1およびφb2はそれぞれ界面酸化層および高誘電体層のバリアハイトである。有効質量は典型的な値として0.5mとした。ここで、mは真空における電子の質量である。また、TFNは、Fowler-Nordheim(F−N)トンネルの確率であって、0≦E<φの場合は、次の(6)式
【数3】

で定義され、φ≦Eの場合は、次の(7)式
FN(φ,m,E)=1 (7)
で定義される。ここで、mはトンネル絶縁膜中をトンネルしている電子の有効質量、φはトンネル絶縁膜の実効的なバリアハイト、Eはフェルミレベル、Eは電子のトンネル方向のエネルギー、eは素電荷、hはプランク定数、EおよびEはそれぞれ界面酸化層および高誘電体層における実電界を示す。なお、F−Nトンネルとは、小数キャリア(電子)が絶縁膜の傾斜した伝導帯を通り抜けるトンネルことを意味する。
【0030】
アシストレベルのある積層構造のゲート絶縁膜に高い電界Eoxをかけると、電界Eoxが高いので、それぞれの層にかかる電圧も高くなる。すると、界面酸化層には高い電圧Vがかかり、高誘電体層にはそれよりも低い電圧Vがかかる。電界Eoxがある程度高い場合には、界面酸化層に高い電圧がかかるため、高誘電体層の伝導帯の下端EがVだけ低くなり、それに伴い、アシストレベルもV低くなり、半導体基板のフェルミレベルEがアシストレベルの高さと重なる。すると、電子がアシストレベルを介してトンネルするようになる。したがって、アシストレベルのある積層構造のゲート絶縁膜においては、アシストレベルは小数キャリア(電子)がトンネルするのをアシストするレベルとして働き、いわゆるTAT(Trap assisted tunneling)が起きる。TATのメカニズムによると、電子が半導体基板からアシストレベルにトンネルする確率をp、電子がアシストレベルから電荷蓄積膜(MISFETにおいては、ゲート電極)にトンネルする確率をpとし、アシストレベルが占有されている確率をf(したがって、アシストレベルが非占有である確率は1−f)のとき、定常状態において、電流密度の連続性から、アシストレベルを介して流れる確率Pは、
P=p・(1−f)=p・f (8)
を満たす。このとき、f=p/(p+p)となるので、
P=1/(1/p+1/p) (9)
となる。アシストレベルを介さない場合の確率はpとpの積、p・pであり、(9)式よりも小さな値となる。それゆえ、アシストレベルを介するとリーク電流は、アシストレベルを介さない場合よりも高くなる。
【0031】
界面酸化層と高誘電体層の積層構造を有するゲート絶縁膜において、高誘電体層にだけアシストレベルがある場合には、トンネルする電子のエネルギーレベルExとφT2の位置関係によってトンネル確率は、次のようにまとめられる。
【数4】

【0032】
電子がアシストレベルを介さないでトンネルする場合は、高誘電体層と界面酸化層のそれぞれをトンネルする確率の積で表され、アシストレベルのない場合の(5)式と同じになる。アシストレベルを介してトンネルする場合は、
【数5】

となる。ここで、
φT2=φT2−φb2
と定義した。また、リーク電流の計算において、電極からゲート絶縁膜に入る電子はすべてアシストレベルに捕獲され放出されると仮定した。
【0033】
このような式から、トラップがない場合とトラップがある場合の電流が計算される。ここで一例として、ハフニウム窒化シリケートの高誘電体層にRuを添加した際のトラップ準位と電子の注入準位を、バンドダイアグラムを用いて模式的に示し説明する。ここでハフニウム窒化シリケートの電子のバリアハイトは1.6eVであり、Ruを添加したことによってできる膜中トラップレベルは1.1eV付近である。電源電圧(=−1.1V)を印加した際、このトラップを介在して電流が流れる。
【0034】
積層構造を有するゲート絶縁膜において、トラップが無い場合の電子電流に対する、トラップがある場合の電子電流の比に関するゲート電圧Vgの依存性を図12に示す。高誘電体層(ハフニウム窒化シリケート層)の誘電率εHKを12、界面酸化層(SiO層)の誘電率εILを3.9、高誘電体層のバリアハイトφHKを1.6eV、高誘電体層中のトラップ準位φtrapを1.1eV、高誘電体層および界面酸化層のそれぞれの層厚THKおよびTILを1.5nmおよび1nmとした。図12からわかるように、この積層構造を有するゲート絶縁膜に、電源電圧(=1.1V)を印加した際には、トラップの存在によって、電子電流が約5倍増加する。
【0035】
次に、トラップが膜厚方向のどの位置にあるのが好ましいかについて説明する。トンネル電流は、電極のエネルギーレベルEから絶縁膜を単位面積、単位時間あたりにトンネルした電子数dJ/dEを、エネルギーExで積分したものとして表現できる。EとdJ/dEとの関係を図13のグラフgに示す。横軸の0eVはゲート電極における電子のフェルミレベルを示しておりグラフgはゲート絶縁膜のバンドダイアグラムを示している。ここでEが高くなるほどトンネル確率は高くなるが、ゲート電極においてトンネル方向の電子数が少なくなるため、それらのトレードオフにより、電流が極大となるEが決まる。アシストレベルがある場合には、無い場合の極大値(E=0)に加えてさらにもう一つの極大値(E〜0.14eV)を持つ。これは、Eが高くなるほどトンネル方向の電子数が少なくなるが、アシストレベルのあるE(〜0.14eV)で電子がTATメカニズムにより伝導するので、トンネル確率が高くなるからである。このとき、膜厚方向のトラップ位置Xtrapは電源電圧を印加した際に電流が極大となるEx_trapとゲート絶縁膜中のトラップレベル(φtrap=1.1eV)が交差する位置から求められる。
【0036】
次に、図14を参照して膜厚方向のゲート電極からのトラップ位置Xtrapの導出方法について説明する。高誘電体層および界面酸化層にかかる電界EHK、EILは、それぞれ誘電率εHK、εILの逆数で分配されるため、
εIL×EIL=εHK×EHK (a)
で表される。高誘電体層にかかる電圧VHK、界面酸化層にかかる電圧VILはそれぞれ
HK=EHK×THK (b)
IL=EIL×TIL (c)
で表され、電源電圧Vgは
Vg=VHK+VIL
と表される。
【0037】
図14からわかるように、高誘電体層における電界EHKは、
HK=(φHK−φtrap−Ex_trap)/Xtrap (d)
と表される。(a)式〜(d)式により、トラップ位置Xtrapは、
trap=(ΦHK−Φtrap−Ex_trap)×(THK×εIL+TIL×εHK)/
(Vg×εIL) (e)
が得られる。このトラップ位置Xtrapは、トラップの分布のピーク位置を示す。
【0038】
このようにして、トラップ位置Xtrapを導いた結果、例えば、SiOの界面酸化層の層厚が1nm、ハフニウム窒化シリケート(HfSiON)の高誘電体層の層厚が1.5nmとし、高誘電体層にRuを添加した場合、トラップ位置Xtrap=1.5nmとなり、ほぼ界面酸化層と高誘電体層との界面近傍にトラップが存在すればよいことがわかった。
【0039】
ここで、界面酸化層の層厚が1nm、ハフニウム窒化シリケートの高誘電体層の層厚が1.5nmの積層構造を有するゲート絶縁膜において、トラップが無い場合の電子電流に対する、トラップがある場合の電子電流の比に関するトラップ準位の依存性を図15に示す。図15からわかるように、トラップ準位が深いほど、電流が増加する。しかし、デバイスの性能を考えると、あまりリーク電流が増加しすぎると、消費電力の観点から良くないと考えられる。
【0040】
既に示した図11は、HfSiONの高誘電体層の層厚が2.5nm、SiOの界面酸化層の層厚が1.0nmである積層構造のゲート絶縁膜を有するpMISFETのリーク電流の実験結果であった。この実験では、キャリアセパレーション法により、電子電流(グラフg)と正孔電流(グラフg)を分離している。図11からわかるように、電源電圧(=−1.1V)付近においては、正孔電流が多数キャリアであり、電子電流が少数キャリアであることから、全体のリーク電流はほぼ正孔電流で決まっている。また図11からわかるように、電子電流は正孔電流よりも約2桁小さい。そのため、トラップによって流れる電子電流が2桁増えても、多数キャリアと同等にしかリーク電流は増えず、全体のリーク電流へは大きな影響を及ぼさないと考えられる。そこで、ワイブル分布の傾きβを変調させるのに十分で、かつリーク電流を増やし過ぎないようなトラップ準位の領域を限定する必要がある。この限定は、pMISFETにおいては、電子電流の増加量が2倍〜100倍となるようなトラップ準位が望ましいと考えられる。
【0041】
また、HfSiONの高誘電体層の層厚が2.5nm、界面酸化層の層厚が1.0nmである積層構造のゲート絶縁膜を有するnMISFETのリーク電流の実験結果を図16に示す。ここで、キャリアセパレーション法により、正孔電流(グラフg)と電子電流(グラフg)を分離した。図16からわかるように、電源電圧(=1.1V)付近においては、電子電流が多数キャリアであり、正孔電流が少数キャリアであることから、全体のリーク電流はほぼ電子電流で決まっている。また、図16からわかるように、電源電圧下(=1.1V)では、正孔電流は電子電流よりも約3桁小さい。そのため、nMISFETにおいてはトラップによって流れる正孔電流が3桁増えても、多数キャリアと同等にしかリーク電流は増えず、全体のリーク電流へは大きな影響を及ぼさないと考えられる。そこで、ワイブル分布の傾きβを変調させるのに十分で、かつリーク電流を増やし過ぎないようなトラップ準位の領域を限定する必要がある。この限定は、nMISFETにおいては、正孔電流の増加量が2倍〜1000倍となるようなトラップ準位が望ましいと考えられる。
【0042】
nMISFET、pMISFETそれぞれにおいて、SiOの界面酸化層の層厚を1nmとして、HfSiONの高誘電体層の層厚を変化させた際の望ましいトラップ準位の領域を計算した結果を図17(a)、17(b)にそれぞれ示す。nMISFETの場合は、xをHfSiON層の層厚、yをホールトラップの準位とすると、2つの関数、y=2.19exp(−0.149x)と、y=2.38exp(−0.132x)とに挟まれた領域が望ましいトラップ準位の領域である(図17(a))。pMISFETの場合は、xをHfSiON層の層厚、yを電子トラップの準位とすると、2つの関数、y=1.61exp(−0.294x)と、y=1.66exp(−0.238x)とに挟まれた領域が望ましいトラップ準位の領域である(図17(b))。ここで、exp()は、自然対数の底をeとしたとき、eの指数関数を表す。これらの領域は、それぞれの膜厚、nMISFET,pMISFETにおいて、図15に示したようなトラップによる電流の増加量のトラップ準位の依存性を調べることにより、計算した。
【0043】
また、nMISFET、pMISFETそれぞれにおいて、SiOの界面酸化層の層厚を1nmとして、HfSiONの高誘電体層の層厚を変化させた際における、HfSiON層とSiO層との界面からのトラップ位置の、HfSiON層の層厚の依存性を計算した結果を図18(a)、18(b)にそれぞれ示す。図18(a)、18(b)からわかるように、トラップ位置は、ほぼHfSiON層とSiO層との界面近傍に分布していることが望ましい(図18(a)、18(b)の斜線部分)。
【0044】
次に、高誘電体層中に添加される元素の量について説明する。高誘電体層としてHfO層をとり、添加元素としてRuを例にとって説明する。HfOの格子定数をaとしたとき、a×a×aユニット中にはHfOが4組入る。したがって、2a×2a×2aユニット中には、Hfが32個、酸素が64個入る。2a×2a×2aユニットの中に1つ以上のRuを導入して、RuをHfと置換した場合は、隣接する添加元素との相互作用が生じ、金属的なバンド(ホッピングが可能なレベル)を形成し、高誘電体層の絶縁特性に問題が生じる。2a×2a×2aユニットの中に1つのRuを導入して、RuをHfと置換した場合のRuの濃度は、1/(32+64)×100=1.04at%となる。すなわち、添加元素の濃度が1at%を超えると、高誘電体層の絶縁特性に問題が生じることになる。
【0045】
しかし、3a×3a×3aユニット中に1個のRuを添加した場合には、添加元素であるRuは完全に局在化し、隣接する添加元素との相互作用は完全になくなる。この3a×3a×3aユニット中には、108(3×4)個のHfと、216個の酸素が入る。したがって、完全に局在化される場合の添加物Ruの濃度は、1/(108+216)×100=0.31at%となる。すなわち、高誘電体層に添加元素が添加されても、高誘電体層の絶縁特性を良好な状態に保つためには、添加元素の濃度の上限値は、0.31at%となる。この上限値は、添加元素の材料にはよらないが、高誘電体層の材料によって変化する。後述する実施形態において、高誘電体層として用いられるLaAlOを用いた場合は、同様にして求めると、1/230×100=0.43at%となる。また、下限値としては、一つのMISFETに添加元素が1個入るとした時の値であり、1×10−16at%である。このように、添加元素の添加濃度は、高誘電体層の材料に応じて変化するために、添加元素の量として密度をとる。3a×3a×3aユニット中に1個のRuを添加した場合の密度は、1/(3a×3a×3a)=2.96×1020cm−3となる。すなわち、高誘電体層に添加元素が添加されても、高誘電体層の絶縁特性を良好な状態に保つためには、添加元素の密度の上限値は、2.96×1020cm−3となる。また、添加元素の密度の下限値は、1×1015cm−3となる。この下限値は、濃度の下限値1×10−16at%に対応する値である。
【0046】
なお、ゲート絶縁膜からの金属の拡散を防止するために、ゲート絶縁膜にW(タングステン)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、またはTa(タンタル)の金属元素を5at%以下の濃度となるように添加する技術が特開2005−183422号公報に開示されている。しかし、上述したように、1at%以上の金属元素を添加した場合には、ゲート絶縁膜は金属化し、絶縁膜としては機能しない。そして、このようなことは、特開2005−183422号公報に開示されていないし、示唆する記載もない。
【0047】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。図19(a)乃至19(c)は本実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0048】
まず、図18(a)に示すように、半導体基板1の半導体領域(例えば、シリコンからなる半導体領域)2上に、熱酸化や水蒸気燃焼酸化により、界面酸化層となるシリコン酸化層を0.6nm〜1.5nmの厚さに形成する。続いて、CVD(Chemical Vapor Deposition)、ALD(Atomic Layer Deposition)法、またはスパッタ法により、ハフニウムシリケート(HfSiO)層を1nm〜3nm堆積する。続いてプラズマ窒化やアンモニア窒化などにより、ハフニウムシリケート(HfSiO)層に窒素を導入し、ハフニウム窒化シリケート(HfSiON)層12とする。ここで導入する窒素の量はハフニウム窒化シリケート層12が相分離や結晶化が起こらない必要最小の量である。続いて、Ru層13をスパッタ法もしくはALD法を用いて堆積する(図19(a))。このRu層13の堆積は、後述する熱処理によってRuをHfSiON層12へ添加(導入)するためである。なお、Ruのハフニウムシリケート層12中への導入は、Ru層13を堆積するかわりに、イオン注入法を用いて行ってもよい。Ruの添加量の範囲は、密度として、1×1015cm−3以上、2.96×1020cm−3以下となる。
【0049】
次に、図19(b)に示すように、Ru層13上に、TiNもしくはTaCなどの金属膜7を2nmから50nm程度の厚さに堆積する。その上に、例えば不純物を添加した多結晶シリコン膜18を10nmから1μm程度の厚さに堆積する。続いて、多結晶シリコン膜18、金属膜17、Ru層13、ハフニウム窒化シリケート層12、およびシリコン酸化層11を、RIE(Reactive Ion Etching)などの異方性エッチングによって選択的にエッチングすることにより、ゲート構造を作成する。このゲート構造中の金属膜17および多結晶シリコン膜18がゲート電極16を構成する。そして、このゲート構造をマスクにイオン注入を行い、接合深さの浅い不純物層6a、6bを形成する(図19(b))。
【0050】
次に、図19(c)に示すように、全面にシリコン窒化膜などの絶縁膜を堆積した後にエッチバックすることにより、ゲート構造の側部にゲート側壁19を形成する。その後、ゲート構造およびゲート側壁19をマスクとしてイオン注入することにより、不純物層6a、6bよりも高濃度に不純物が注入された不純物層7a、7bを形成する。続いて、これらの不純物層に注入された不純物を活性化するための熱処理を行う。不純物層6aおよび不純物層7aがソース領域5aを構成し、不純物層6bおよび不純物層7bがドレイン領域5bを構成する。この活性化のための熱処理により、Ru層13中のRu原子がハフニウム窒化シリケート層12中に拡散し、Ruが添加されたハフニウム窒化シリケート層12となる。本実施形態においては、Ruをハフニウム窒化シリケート層12中に拡散するための熱処理は、不純物層6a、6b、7a、7bの活性化のための熱処理によって行ったが、ゲート電極16となる多結晶シリコン膜18中の不純物の活性化の熱処理によって行ってもよい。また、これらの熱処理によらず、付加的な熱処理によって行ってもよい。この熱処理を行うことで、その熱処理条件に依存したような分布でRu層13中のRu原子はハフニウム窒化シリケート層12中に拡散する。ここで、Ru原子は優先的に、ハフニウム窒化シリケート層12中のHf原子と置き換わり、シリコン酸化層11へは拡散しない。シリコン酸化層11と、Ruが添加されたハフニウム窒化シリケート層12とによってゲート絶縁膜10が構成される。
【0051】
これ以降は、周知の技術を用いて、ゲート電極16、ソース/ドレイン領域5a、5b上に金属シリサイド11を形成することによって、図7に示す本実施形態のMISFETが完成する。
【0052】
なお、高誘電体層中に添加される元素の添加方法は、上述した方法の他にも、CVD法またはALD法または、スパッタ法により、ハフニウム窒化シリケートなどの高誘電体層を堆積し、その後、ゲート電極(金属膜17および多結晶シリコン膜18)を堆積した後、CVD法、またはALD法、またはスパッタ法により、ゲート電極上に添加元素の層を堆積し、その後の熱処理によって絶縁膜中に拡散させることができる。
【0053】
また、ハフニウム窒化シリケートなどの高誘電体層をALD法もしくはスパッタ法で堆積する途中で、添加元素をALD法、スパッタ法により堆積し、その後、再度ハフニウムシリ窒化ケート層をALD法もしくはスパッタ法で堆積し、高誘電体層中に添加元素を導入することもできる。
【0054】
もしくは、シリコン基板上にSiOの界面酸化層を堆積(もしくは熱酸化によって作製)した後、界面酸化層上に添加元素の層をALD法、CVD法、スパッタ法により堆積させ、その上にハフニウム窒化シリケートなどの高誘電体層をALD法、CVD法、スパッタ法により堆積し、その後の熱処理によって高誘電体層中に拡散させることもできる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、高誘電体層中に添加元素を添加することにより、高誘電体層の絶縁特性を良好な状態に保ちかつ高誘電体層にトラップを形成することが可能となるので、多数キャリアに対する少数キャリアの比を大きくすることができる。これにより、リーク電流を大きく増加させることなく、ワイブル分布の傾きβを大きくすることができ、破壊寿命を大幅に改善することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、界面酸化層はシリコン酸化層であったが、シリコン酸窒化層であってもよい。
【0057】
また、本実施形態においては、高誘電体層として、ハフニウム窒化シリケートの代わりにハフニア、ハフニウムシリケート、ハフニウムアルミネート等のハフニウムの酸化物を用いることができる。
【0058】
なお、本実施形態では高誘電体層としてハフニウム窒化シリケートを用い、添加物としてRuを用いて説明した。Hfの代わりに、Hfとほぼ同じ特性を有するZrを含む酸化物の高誘電体層を用いることができる。添加元素として、Ruに換えて、Nb、Cr、Os、V、Tc、またはTaを用いることができる。また、本実施形態ではpMISFETであったが、nMISFETにも適用することができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による半導体装置を図20に示す。本実施形態の半導体装置は、図7に示す第1実施形態の半導体装置において、界面酸化層11を除去した構成、すなわち、ゲート絶縁膜10が高誘電体層12のみからなっている構成となっている。このような構成の半導体装置は、半導体基板1の半導体領域2に離間して形成されたソース領域5aおよびドレイン領域5bと、ソース領域5aとドレイン領域5bとの間のチャネル3となる半導体領域2上に設けられた高誘電体層12からなるゲート絶縁膜10と、このゲート絶縁膜10上に設けられたゲート電極16とを備えている。ソース領域5aは、接合深さの浅い不純物層6aと、接合深さの深い不純物層7aとを有し、ドレイン領域5bは、接合深さの浅い不純物層6bと、接合深さの深い不純物層7bとを有している。ゲート電極16は、ゲート絶縁膜10上に設けられた金属膜17と、この金属膜17上に設けられた多結晶シリコン膜18とを有している。ゲート電極16の側部には、絶縁体(例えば、窒化シリコン)からなるゲート側壁19が設けられている。また、ソース領域5a、ドレイン領域5b、およびゲート電極16の多結晶シリコン膜18上には、金属シリサイド層20a、20b、20cがそれぞれ形成されている。
【0060】
本実施形態の半導体装置においても、第1実施形態と同様に、高誘電体層12には、Ru、Cr、Os、V、Tc、Nbの選択された少なくとも1つの元素が添加されており、その密度は、1×1015cm−3以上、2.96×1020cm−3以下となっている。
【0061】
ここで、一例として、高誘電体層として1.5nmのハフニウム窒化シリケート膜(HfSiON膜)にRuを添加した際のトラップ準位と電子の注入準位を、バンドダイアグラムを参照して説明する。ハフニウム窒化シリケートの電子のバリアハイトは1.6eVであり、Ruを添加したことによってできるハフニウム窒化シリケート膜中のトラップレベルは1.1eV付近である。電源電圧(=−1.1V)を印加した際、このトラップを介在して電流が流れる。トラップが無い場合の電子電流に対する、トラップがある場合(Ruを添加した際)の電子電流の比に関する印加電圧の依存性を図21に示す。ここで、電源電圧(−1.1V)を印加した際に、トラップの存在によって、電子電流が約25倍増加することがわかる。
【0062】
次に、トラップが膜厚方向のどの位置にあるのが好ましいかについては、第1実施形態で説明したように、電源電圧を印加した際に電流が極大となるEx_trapとゲート絶縁膜中のトラップレベル(φtrap=1.1eV)が交差する位置から求められる。
【0063】
次に、図22を参照して膜厚方向のゲート電極からのトラップ位置Xtrapの導出方法について説明する。高誘電体層にかかる電圧VHKは、
HK=EHK×THK (f)
で表され、電源電圧Vgは
Vg=VHK (g)
と表される。
【0064】
図22からわかるように、高誘電体層における電界EHKは、
HK=(φHK−φtrap−Ex_trap)/Xtrap (h)
と表される。(f)式〜(h)式により、トラップ位置Xtrapは、
trap=(ΦHK−Φtrap−Ex_trap)×THK/Vg (i)
が得られる。
【0065】
このようにしてXtrapを導いた結果、ハフニウム窒化シリケート膜のゲート絶縁膜の膜厚を1.5nmとし、このハフニウム窒化シリケート膜にRuを添加した場合、Xtrap=0.8nmとなり、トラップはハフニウム窒化シリケートのゲート絶縁膜中の中央よりSi基板側にあるのが望ましいと考えられる。
【0066】
次に、ハフニウム窒化シリケートのゲート絶縁膜の膜厚が1.5nmであるときのトラップが無い場合の電子電流に対する、トラップがある場合の電子電流の比に関するトラップ準位の依存性を図23に示す。図23からわかるように、トラップ準位が深いほど、電流が増加する。しかし、あまりリーク電流が増加しすぎると、消費電力の観点から良くないと考えられる。このため、第1実施形態で説明したように、ワイブル分布の傾きβを変調させるのに十分で、かつリーク電流を増やしすぎないようなトラップ準位の領域を限定する必要がある。すなわち第1実施形態と同様に、pMISFETにおいては、電子電流の増加量が2倍〜100倍となるようなトラップ準位が望ましく、nMISFETにおいては、正孔電流の増加量が2倍〜1000倍となるようなトラップ準位が望ましいと考えられる。
【0067】
nMISFET、pMISFETそれぞれにおいて、HfSiON膜12の膜厚を変化させた際の望ましいトラップ準位の領域を計算した結果を図24(a)、24(b)にそれぞれ示す。nMISFETの場合は、xをHfSiON膜の膜厚、yをホールトラップの準位とすると、2つの関数、y=1.66exp(−0.0806x)と、y=2.37exp(−0.130x)とに挟まれた領域が望ましいトラップ準位の領域である(図24(a))。pMISFETの場合は、xをHfSiON膜12の膜厚、yを電子トラップの準位とすると、2つの関数、y=1.11exp(−0.225x)と、y=1.68exp(−0.225x)とに挟まれた領域が望ましいトラップ準位の領域である(図24(b))。これらの領域は、それぞれの膜厚、nMISFET、pMISFETにおいて、図23に示したようなトラップによる電流の増加量のトラップ準位の依存性を調べることにより、計算した。
【0068】
また、nMISFET、pMISFETそれぞれにおいて、HfSiON膜12の膜厚を変化させた際における、半導体領域2との界面からのトラップ位置のHfSiON膜12の膜厚依存性を図25(a)、25(b)に示す。この結果から、トラップはほぼハフニウム窒化シリケート膜の中央から半導体領域側に分布していることが望ましい。
【0069】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、第1実施形態の半導体装置の製造方法において、界面酸化層の形成工程を行わないで、半導体領域2上に直接、高誘電体層12の形成を行う以外は、第1実施形態と同様の工程で行う。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、高誘電体層中に添加元素を添加することにより、高誘電体層の絶縁特性を良好な状態に保ちかつ高誘電体層にトラップを形成することが可能となるので、多数キャリアに対する小数キャリアの比を大きくすることができる。これにより、リーク電流を大きく増加させることなく、ワイブル分布の傾きβを大きくすることができ、破壊寿命を大幅に改善することができる。
【0071】
なお、本実施形態では高誘電体層としてハフニウムシリケートを用い、添加物としてを用いて説明した。Hfの代わりに、Zr、Ti、Al、Y、La、Ce、あるいはその他の希土類金属元素を含む酸化物の高誘電体層を用いることができる。添加元素として、Ruに換えて、Nb、Cr、Os、V、Tcを用いることができる。また、本実施形態ではpMISFETであったが、nMISFETにも適用することができる。
【0072】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による半導体装置を説明する。
【0073】
図7に示す第1実施形態の半導体装置においては、ゲート絶縁膜10を構成する高誘電体層12はハフニウムを含む酸化物からなっていた。第3実施形態においては、ゲート絶縁膜10を構成する高誘電体層12として、ランタンを含む酸化物、例えばランタンシリケートを用いた構成となっている。すなわち、ゲート絶縁膜10の高誘電体層12の材料が異なっている以外は、第1実施形態の半導体装置と同じ構成を有している。
【0074】
本実施形態における高誘電体層12としては、ランタン酸化物、ランタンシリケート、ランタンアルミネート、ランタンアルミシリケートのいずれかを用いることができる。そして、この高誘電体層12には、V、Cr、Mn、Fe、Zr、Nb、Mo、Tc、Rh、Hf、Ta、Re、Os、Irのグループから選択された少なくとも1つの元素が添加される。その添加元素の好ましい密度の範囲は、第1実施形態で説明したように、1×1015cm−3以上、2.96×1020cm−3以下となっている。
【0075】
これらの添加元素は、またはランタノイド系の元素を含む絶縁膜中で、トラップ準位を作ることが第一原理計算からわかっている。図26、図27、図28に、上記添加元素がLaAl中に作るトラップ準位を示す。図中に示したトラップ準位は実線で示したものはLaを添加元素で置換した場合にできる準位で、破線で示したものAlを添加元素で置換した場合にできるトラップ準位である。そのため、絶縁膜がランタンアルミネート、ランタンアルミシリケートにおいては、添加物がLaと置換する場合とAl置換する場合が考えられ、図26〜図28中の実線および点線の両方のトラップ準位ができうる。また、絶縁膜がランタン酸化物、ランタンシリケートの場合は、添加物がLaと置換する場合のトラップ準位(図26〜図28に示す実線)ができる。
【0076】
ここで、ランタンアルミネート、ランタンアルミシリケートにおいて、伝導帯に近い準位にトラップをつくる元素はZr、Nb、Tc、Hf、Ta、Reであり、これらの元素は、pMISFETに対して添加する元素として好ましい。価電子帯に近い準位にトラップをつくる元素は、V、Cr、Mn、Fe、Mo、Tc、Rh、Re、Os、Irであり、これらの元素は、nMISFETに対して添加する元素として好ましい。また、ランタン酸化物、ランタンシリケートにおいては、伝導帯に近い準位にトラップをつくる元素は、Zr、Nb、Hf、Taであり、これらの元素は、pMISFETに対して添加する元素として好ましい。価電子帯に近い準位にトラップを作る元素はV、Cr、Mn、Fe、Mo、Tc、Rh、Re、Os、Irであり、これらの元素は、nMISFETに対して添加する元素として好ましい。
【0077】
次に、第1実施形態で述べたような手順に従って、ワイブル分布の傾きβを大きくするために必要な、トラップ準位とそのトラップの膜厚方向の位置を求めた結果を図29(a)乃至図30(b)に示す。ここでランタンアルミネートの誘電率は25と、電子に対するバリアハイトは2.4eV、正孔に対するバリアハイトは3.0eVを用いた。nMISFETの場合は、xをLaAl層の層厚、yをホールトラップの準位とすると、2つの関数、y=2.91exp(−0.105x)と、y=3.13exp(−0.0977x)とに挟まれた領域が望ましいトラップ準位の領域である(図29(a))。pMISFETの場合は、xをLaAl層の層厚、yを電子トラップの準位とすると、2つの関数、y=2.40exp(−0.139x)と、y=2.49exp(−0.127x)とに挟まれた領域が望ましいトラップ準位の領域である(図29(b))。
【0078】
図29(a)、29(b)に示す結果に基づいて、それぞれの高誘電体層12の層厚、nMISFET、pMISFETに対して、適切な元素を図26〜図28から選ぶことができる。nMISFET、pMISFETそれぞれにおいて、LaAl層12の膜厚を変化させた際における、半導体領域2との界面からのトラップ位置のLaAl層12の層厚依存性を図30(a)、30(b)に示す。そして、図30(a)、30(b)に示すような位置にピークを持つように、添加元素を分布させることが望ましい。高誘電体層12となるランタンアルミネート層が2nmよりも厚いときには、図30(a)、30(b)からわかるように、ランタンアルミネート層のほぼ中央に分布していることが望ましく、ランタンアルミネート層が2nmよりも薄い時にはランタンアルミネート層と、界面酸化層となるSiOの層との界面の近傍領域に分布していることが望ましい。
【0079】
このような元素の入れ方は、CVD法またはALD法または、スパッタ法により、ランタンアルミネートなどの絶縁層を堆積した後、もしくはゲート電極を堆積した後、CVD法、またはALD法、またはスパッタ法により、添加元素の層を堆積させ、その後の熱処理によって絶縁膜中に拡散させることができる。
【0080】
また、ランタンアルミネートなどの絶縁層をALD法もしくはスパッタ法で堆積する途中で、添加元素の層をALD法、スパッタ法により堆積させ、その後また、ランタンアルミネートなどの絶縁層をALD法もしくはスパッタ法で堆積させ、絶縁層中に添加元素を導入することもできる。もしくは、シリコン基板上に界面酸化層となるSiO層を堆積もしくは熱酸化によって形成した後、SiO層上に添加元素の層をALD法、CVD法、スパッタ法により堆積させ、その上にランタンアルミネートなどの絶縁層をALD法、CVD法、スパッタ法により堆積させ、その後の熱処理によって絶縁層中に拡散させることもできる。もしくは、絶縁層の堆積後、イオン注入によっても絶縁層中に添加元素を導入することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、界面酸化層はシリコン酸化層であったが、シリコン酸窒化層であってもよい。
【0082】
本実施形態においては、高誘電体層はLaを含んでいたがLaの代わりにランタノイド(Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)から選択された少なくとも1つの元素を含んでいてもよい。
【0083】
以上説明したように、本実施形態によれば、高誘電体層中に添加元素を添加することにより、高誘電体層の絶縁特性を良好な状態に保ちかつ高誘電体層にトラップを形成することが可能となるので、多数キャリアに対する小数キャリアの比を大きくすることができる。これにより、リーク電流を大きく増加させることなく、ワイブル分布の傾きβを大きくすることができ、破壊寿命を大幅に改善することができる。
【0084】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態による半導体装置を説明する。
【0085】
本実施形態の半導体装置は、第3実施形態の半導体装置において、ゲート絶縁膜10から界面酸化層11を削除した構成となっている。すなわち、本実施形態においては、ゲート絶縁膜10は、ランタンアルミネート等の高誘電体層12からなっている。
【0086】
この第4実施形態においては、高誘電体層12に添加する添加元素は、第3実施形態で説明したと同様の添加元素が用いられ、その好ましい密度の範囲は、第1実施形態で説明したように、1×1015cm−3以上、2.96×1020cm−3以下となっている。
【0087】
次に、第1実施形態で述べたような手順に従って、ワイブル分布の傾きβを大きくするために必要な、トラップ準位とそのトラップの膜厚方向の位置を求めた結果を図31(a)乃至図31(b)に示す。ここで、ゲート絶縁膜10は、高誘電体層12としてランタンアルミネート膜(LaAl膜)からなっており、ランタンアルミネートの誘電率は25と、電子に対するバリアハイトは2.4eV、正孔に対するバリアハイトは3.0eVを用いた。nMISFETの場合は、xをLaAl膜の膜厚、yをホールトラップの準位とすると、2つの関数、y=2.29exp(−0.0585x)と、y=2.72exp(−0.0753x)とに挟まれた領域が望ましいトラップ準位の領域である(図31(a))。pMISFETの場合は、xをLaAl膜の膜厚、yを電子トラップの準位とすると、2つの関数、y=1.76exp(−0.0811x)と、y=2.90exp(−0.193x)とに挟まれた領域が望ましいトラップ準位の領域である(図31(b))。
【0088】
図31(a)、31(b)に示す結果に基づいて、それぞれの高誘電体層12としてのアルミネート膜(LaAl膜)の膜厚、nMISFET、pMISFETに対して、適切な元素を図26〜図28から選ぶことができる。nMISFET、pMISFETそれぞれにおいて、LaAl膜12の膜厚を変化させた際における、半導体領域2との界面からのトラップ位置のLaAl膜12の膜厚依存性を図32(a)、32(b)に示す。そして、図32(a)、32(b)に示すような位置にピークを持つように、添加元素を分布させることが望ましい。添加元素は、LaAl膜12の中央から半導体領域2側に分布していることが望ましい。
【0089】
なお、高誘電体層12への添加元素の導入は、第3実施形態で説明したと同じ方法で行う。
【0090】
以上説明したように、本実施形態も第3実施形態と同様に、高誘電体層中に添加元素を添加することにより、高誘電体層の絶縁特性を良好な状態に保ちかつ高誘電体層にトラップを形成することが可能となるので、多数キャリアに対する小数キャリアの比を大きくすることができる。これにより、リーク電流を大きく増加させることなく、ワイブル分布の傾きβを大きくすることができ、破壊寿命を大幅に改善することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 半導体基板(シリコン基板)
2 半導体領域(シリコン領域)
3 チャネル
5a ソース領域
5b ドレイン領域
6a、6b 不純物層
7a、7b 不純物層
10 ゲート絶縁膜
11 界面酸化層(SiO層)
12 高誘電体層
13 Ru層
16 ゲート電極
17 金属膜
18 多結晶シリコン膜
19 ゲート側壁
20a、20b、20c 金属シリサイド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体領域が形成された半導体基板と、
前記半導体領域に離間して形成されたソース領域およびドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域上に形成され金属および酸素を含む金属酸化層を有するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
を有するMISFETを備え、
前記金属酸化層に含まれる前記金属はHf、Zrのうちから選択された少なくとも1つであり、前記金属酸化層は、更にRu、Cr、Os、V、Tc、Nbのうちから選択された少なくとも1つの元素が添加され、前記金属酸化層は前記元素が添加されたことにより形成される電荷を捕獲または放出する電荷トラップを有し、前記金属酸化層中における前記元素の密度は、1×1015cm−3以上、2.96×1020cm−3以下の範囲にあり、前記電荷トラップは、前記金属酸化層の中央より前記半導体領域側にピークを有するように分布することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記MISFETがnMISFETである場合は、前記添加される元素は、Ru、Os、V、Cr、Tcのグループから選択された少なくとも1つであり、
前記MISFETがpMISFETである場合は、前記添加される元素は、Ru、Os、V、Nbのグループから選択された少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体領域が形成された半導体基板と、
前記半導体領域に離間して形成されたソース領域およびドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域上に形成され金属および酸素を含む金属酸化層を有するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
を有するMISFETを備え、
前記金属酸化層に含まれる前記金属は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選択された少なくとも1つであり、前記金属酸化層は、更にV、Cr、Mn、Fe、Zr、Nb、Mo、Tc、Rh、Hf、Ta、Re、Os、Irのグループから選択された少なくとも1つの元素が添加され、前記金属酸化層は前記元素が添加されたことにより形成される電荷を捕獲または放出する電荷トラップを有し、前記金属酸化層中における前記元素の密度は、1×1015cm−3以上、2.96×1020cm−3以下の範囲にあり、前記電荷トラップは、前記金属酸化層の中央より前記半導体領域側にピークを有するように分布することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
前記MISFETがnMISFETである場合は、前記添加される元素は、V、Cr、Mn、Fe、Mo、Tc、Rh、Re、Os、Irのグループから選択された少なくとも1つであり、
前記MISFETがpMISFETである場合は、前記添加される元素は、Zr、Nb、Hf、Taのグループから選択された少なくとも1つであることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記金属酸化層に含まれる金属として更にAlを含み、
前記MISFETがnMISFETである場合は、前記添加される元素は、V、Cr、Mn、Fe、Mo、Tc、Rh、Re、Os、Irのグループから選択された少なくとも1つであり、
前記MISFETがpMISFETである場合は、前記添加される元素は、Zr、Nb、Tc、Hf、Ta、Reのグループから選択された少なくとも1つであることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項6】
前記金属酸化層と、前記半導体領域との間に、シリコン酸化層またはシリコン酸窒化層が形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2010−226037(P2010−226037A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74427(P2009−74427)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】