説明

半導体装置

【課題】抵抗値の温度依存性の小さい抵抗素子を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、金属抵抗素子層Rm1,Rm2を有する。金属抵抗素子層Rm1は、金属抵抗膜層Rm11を含む。金属抵抗素子層Rm2は、金属抵抗膜層Rm12を含む。金属抵抗膜層Rm11は、窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗のうちの一方であり、金属抵抗膜層Rm12は、窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗のうちの他方である。窒化チタン抵抗の抵抗値は正の温度係数を有する一方、窒化タンタル抵抗の抵抗値は負の温度係数を有する。コンタクトプラグCP2によって、金属抵抗膜層Rm11と金属抵抗膜層Rm12とが電気的に接続されるので、窒化チタン抵抗の温度係数と窒化タンタル抵抗との温度係数が相殺される。これにより温度係数を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、半導体装置に含まれる抵抗素子の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロコンピュータと発振子とは別々に作製されていた。近年では、マイクロコンピュータのチップに発振子を含めることによって、半導体装置のレイアウト面積の縮小、コスト低減等が図られつつある。
【0003】
マイクロコンピュータのチップに発振子を内蔵するためには、電圧、温度などの条件が変化しても当該発振子の発振周波数が安定していることが求められる。一例として、マイクロコンピュータに含まれる高速OCO(On Chip Oscillator)回路では、発振周波数がたとえば40MHz±1%であることが求められる。
【0004】
高速OCO回路は、たとえば、定電流源から供給される電流を電圧に変換するための抵抗素子を含む。この電圧によって発振周波数が決定される。したがって抵抗素子の抵抗値が温度に応じて変動した場合には、高速OCO回路の発振周波数が変動する。このため、その抵抗素子の抵抗値の温度依存性を小さくすることが要求される。
【0005】
たとえば特開2007−149965号公報(特許文献1)、特開2006−216607号公報(特許文献2)は、正の温度係数を有する抵抗素子と負の温度係数を有する抵抗素子とを組み合わせることによって、抵抗値の温度依存性を抑制する技術を開示する。特許文献1は、ニッケルクロムによって形成された抵抗素子の抵抗値が正の温度係数を有するとともに、クロムシリコンによって形成された抵抗素子の抵抗値が負の温度係数を有することを開示する。特許文献2は、N型ポリシリコンによって形成された抵抗素子の抵抗値が正の温度係数を有し、P型ポリシリコンによって形成された抵抗素子の抵抗値が負の温度係数を有することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−149965号公報
【特許文献2】特開2006−216607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、抵抗値の温度係数を具体的に開示していない。このため特許文献1は、ニッケルクロム抵抗およびクロムシリコン抵抗によって構成された抵抗素子の抵抗値の温度変化率がどの程度小さくなるかを具体的に示していない。
【0008】
一方、特許文献2は、N型ポリシリコンとP型ポリシリコンとによって形成された抵抗素子の抵抗値の変化率が−0.02%(−45℃〜125℃の温度範囲)であることを開示する。上記の高速OCO回路のように、抵抗素子の抵抗値の精度が高いことが要求される回路の場合、抵抗値の温度依存性ができるだけ小さいことが求められる。したがって、N型ポリシリコンとP型ポリシリコンとによって形成された抵抗素子を、そのような回路に適用できない可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、抵抗値の温度依存性の小さい抵抗素子を有する半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例に従う半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に設けられた絶縁層と、絶縁層上に設けられた第1の抵抗素子と、第1の抵抗素子に電気的に接続された第2の抵抗素子とを備える。第1および第2の抵抗素子のうちの一方は、窒化チタンによって形成される。第1および第2の抵抗素子のうちの他方は、窒化タンタルによって形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施例によれば、抵抗値の温度依存性の小さい抵抗素子を有する半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置を含むマイクロコンピュータチップの全体構造を示した概略図である。
【図2】図1に示した高速OCO回路の構成の一例を示した回路図である。
【図3】窒化チタン抵抗の抵抗値の温度依存性を示した図である。
【図4】窒化タンタル抵抗の抵抗値の温度依存性を示した図である。
【図5】実施の形態1に係る抵抗素子の温度依存性を示した図である。
【図6】実施の形態1に係る抵抗素子の等価回路図である。
【図7】実施の形態1に係る抵抗素子の平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】最も単純な多層配線構造を有する半導体装置の例を模式的に示した断面図である。
【図10】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第1工程を示す概略断面図である。
【図11】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第2工程を示す概略断面図である。
【図12】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第3工程を示す概略断面図である。
【図13】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第4工程を示す概略断面図である。
【図14】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第5工程を示す概略断面図である。
【図15】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第6工程を示す概略断面図である。
【図16】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第7工程を示す概略断面図である。
【図17】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第8工程を示す概略断面図である。
【図18】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第9工程を示す概略断面図である。
【図19】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第10工程を示す概略断面図である。
【図20】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第11工程を示す概略断面図である。
【図21】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第12工程を示す概略断面図である。
【図22】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第13工程を示す概略断面図である。
【図23】実施の形態1に係る抵抗素子の第1の変形例を示した平面図である。
【図24】図23のXXIV−XXIV線断面図である。
【図25】実施の形態1に係る抵抗素子の第2の変形例を示した平面図である。
【図26】実施の形態2に係る抵抗素子の等価回路図である。
【図27】実施の形態2に係る抵抗素子の一例を示した平面図である。
【図28】図27のXXVIII−XXVIII線断面図である。
【図29】図27のXXIX−XXIX線断面図である。
【図30】図27のXXX−XXX線断面図である。
【図31】実施の形態3に係る抵抗素子の一例を示した平面図である。
【図32】図31のXXXII−XXXII線断面図である。
【図33】図31のXXXIII−XXXIII線断面図である。
【図34】実施の形態3に係る抵抗素子の他の例を示した断面図である。
【図35】実施の形態4に係る半導体装置が備える抵抗回路を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0014】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態に係る半導体装置を含むマイクロコンピュータチップの全体構造を示した概略図である。
【0015】
図1を参照して、マイクロコンピュータチップMC1は、RAM(Random Access Memory)形成領域MC11と、CPU(Central Processing Unit)形成領域MC12と、周辺回路形成領域MC13,MC15と、ROM(Read Only Memory)形成領域MC14と、電源回路領域MC16とを含む。電源回路領域MC16は、高速OCO回路100を含む。図1に示したレイアウトは一例であり、マイクロコンピュータチップの構成は図1に示されたように限定されるものではない。
【0016】
図2は、図1に示した高速OCO回路の構成の一例を示した回路図である。図2を参照して、高速OCO回路100は、たとえば容量素子の充電と放電との繰り返しによる発振動作によって、所定の発振周期(特に限定されないが、たとえば40MHz)を有する信号を発生させる。
【0017】
高速OCO回路100は、定電流源を含む定電圧回路101を含む。定電圧回路101は、デプレッション型のMOSFETQ1と、抵抗素子110と、エンハンスメント型のMOSFETQ2,Q3,Q4とを含む。MOSFETQ1,Q4は、NチャネルMOSFETである。MOSFETQ2,Q3はPチャネルMOSFETである。高速OCO回路100は、エンハンスメント型のMOSFETQ5〜Q7と、コンデンサC1と、差動増幅回路102と、遅延回路103と、昇圧回路104とをさらに含む。
【0018】
MOSFETQ1のソースは抵抗素子110の一端に接続される。MOSFETQ1のドレインとMOSFETQ2のドレインと、MOSFETQ2のゲートと、MOSFETQ3のゲートとが相互に接続される。MOSFETQ3のドレインと、MOSFETQ4のドレインと、MOSFETQ4のゲートと、MOSFETQ1のゲートとが相互に接続される。MOSFETQ2,Q3のソースが電源電圧Vccに接続される。抵抗素子110の他端およびMOSFETQ4のソースが接地電圧に接続される。
【0019】
定電圧回路101は、抵抗素子110を流れる一定の電流を発生させる。抵抗素子110の一端(ノードN2)からは、電流値と抵抗素子110の抵抗値(一例では5kΩ)との積によって決定される定電圧が出力される。この定電圧は、差動増幅回路102の負入力端子に入力される基準電圧である。
【0020】
MOSFETQ5のゲートは、MOSFETQ2のゲートおよびMOSFETQ3のゲートに接続される。MOSFETQ5のソースは電源電圧Vccに接続される。MOSFETQ5のドレインは、MOSFETQ6のソースに接続される。MOSFETQ6のドレインは、MOSFETQ7のドレインに接続される。MOSFETQ7のソースは接地電圧に接続される。
【0021】
MOSFETQ6のゲートおよびMOSFETQ7のゲートは、遅延回路103の出力端に接続される。MOSFETQ6のドレインおよびMOSFETQ7のドレインがともにコンデンサC1の一端(ノードN1)に接続されるとともに、差動増幅回路102の正入力端子に接続される。
【0022】
差動増幅回路102は、定電圧回路101により発生された電圧と、コンデンサC1の電圧とを比較する。この比較結果に応じてコンデンサC1が充電または放電される。コンデンサC1の充電および放電が繰り返されることによって、所定の発振周期を有する信号が遅延回路103を介して出力される。
【0023】
昇圧回路104は、インバータIV1と、エンハンスメント型のMOSFETQ12,Q13と、コンデンサC2,C3とを含む。MOSFETQ12,Q13はNチャネルMOSFETである。
【0024】
起動信号CLKが昇圧回路104に入力される。昇圧回路104は、起動信号CLKの電圧を昇圧するとともに、昇圧された電圧を、MOSFETQ4のゲートおよびMOSFETQ1のゲートに印加する。
【0025】
起動信号CLKは、インバータIV1およびMOSFETQ12のゲートに入力される。インバータIV1の出力端子はコンデンサC2の一端に接続される。コンデンサC2の他端はMOSFETQ12のドレイン、MOSFETQ13のドレインおよびMOSFETQ13のゲートに接続される。MOSFETQ13のソースは、コンデンサC3の一端(ノードN3)に接続される。MOSFETQ12のソースおよびコンデンサC3の他端は接地電圧に接続される。
【0026】
定電圧回路101から出力される電圧は、抵抗素子110の抵抗値および抵抗素子110を流れる電流によって決定される。この発明の実施の形態によれば、抵抗素子110の抵抗値が温度によって変動することを抑制することが可能となる。したがって定電圧回路101から出力される電圧を安定させることができる。定電圧回路101から出力される電圧を安定させることで、高速OCO回路から出力される信号の発振周波数を安定させることができる(たとえば40MHz±1%、あるいは40MHz±0.2%)。すなわちマイクロコンピュータのチップに内蔵された発振回路の周波数を安定化できる。
【0027】
抵抗値が温度によって変動することを防ぐために、従来では、抵抗素子110を、たとえばN型ポリシリコンとP型ポリシリコンとを組み合わせることで構成していた。N型ポリシリコンの抵抗値は正の温度係数を有するのに対して、P型ポリシリコンの抵抗値は負の温度係数を有する。両者を組み合わせることによって、正の温度係数と負の温度係数とが相殺されるので、抵抗値の温度係数を小さくすることができる。
【0028】
しかしながら、ポリシリコンの温度係数は、一般に数千ppm程度である。さらに、ポリシリコンの温度係数は、ポリシリコンの不純物濃度によって調整される。このため、小さな温度係数を有するポリシリコン抵抗を安定的に作成することは難しい。
【0029】
このため、半導体装置の温度保証範囲内で抵抗値の変動が小さい金属材料によって抵抗素子110を形成することが考えられる。たとえば窒化チタン(TiN)を抵抗素子110に用いることによって、ポリシリコン抵抗の温度係数よりも1桁小さい温度係数(数百ppm)を達成することができる。
【0030】
しかしながら発振周波数の精度をさらに高めることが要求される場合には、より小さな温度係数を有する抵抗が要求される可能性がある。本発明の実施の形態によれば、窒化チタン抵抗と、窒化タンタル(TaN)抵抗とを組み合わせることで抵抗素子110が構成される。
【0031】
図3は、窒化チタン抵抗の抵抗値の温度依存性を示した図である。図3を参照して、窒化チタン抵抗の抵抗値は、−40℃〜125℃の温度範囲内において正の温度係数(数百ppm程度、たとえば400ppm)を有する。なお、上記の温度範囲は一例である。
【0032】
図4は、窒化タンタル抵抗の抵抗値の温度依存性を示した図である。図4を参照して、窒化タンタル抵抗の抵抗値は、−40℃〜125℃の温度範囲内において負の温度係数(絶対値が数百ppm程度)を有する。
【0033】
図5は、実施の形態1に係る抵抗素子の温度依存性を示した図である。図5を参照して、実施の形態1に係る抵抗素子は、互いに電気的に接続された窒化チタン抵抗と窒化タンタル抵抗とを有する。この抵抗素子においては、窒化チタン抵抗の温度係数と窒化タンタル抵抗との温度係数が相殺される。したがって温度係数の絶対値をより小さくする、あるいは温度係数を0にすることができる。
【0034】
窒化チタン抵抗の抵抗値の温度係数および窒化タンタル抵抗の抵抗値の温度係数(絶対値)ともに、ポリシリコン抵抗の抵抗値の温度係数よりも1桁程度小さい。したがって、小さな温度係数を有する抵抗素子を安定的に作成することが可能になる。
【0035】
図6は、実施の形態1に係る抵抗素子の等価回路図である。図6を参照して、抵抗素子110は、互いに直列に接続された抵抗素子111,112を含む。抵抗素子111は、窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗のうちの一方であり、抵抗素子112は、窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗のうちの他方である。
【0036】
抵抗素子111の抵抗値をR1とし、抵抗素子112の抵抗値をR2とする。抵抗素子110の抵抗値Rは、以下の式(1)に従って表わされる(記号「*」は積を示す。以下同様)。
【0037】
R=R1+R2=R1s(1+ΔR1)+R2s(1+ΔR2)
=R1s+R2s+ΔR1*R1s+ΔR2*R2s …(1)
ΔR1,ΔR2は互いに逆の符号を有する値である。たとえば抵抗素子111が窒化チタン抵抗であり、かつ抵抗素子112が窒化タンタル抵抗であるとする。この場合、ΔR1は正の値であり、ΔR2は負の値である。抵抗値R1,R2を適切に設定することにより、ΔR1*R1s+ΔR2*R2sを0にすることができる。R1s,R2sは温度に依存しない成分である。ΔR1*R1s+ΔR2*R2s=0である場合、温度に依存しない抵抗値R(=R1s+R2s)を得ることができる。
【0038】
ΔR1とΔR2との間の関係は実験などによって予め求められる。これによって、ΔR1*R1s+ΔR2*R2s=0を得るためのR1sとR2sとの間の関係が求められる。抵抗値Rは、たとえば回路設計の段階で決定される。抵抗値R(設計値)および、R1sとR2sとの間の関係から抵抗値R1s,R2sが決定されて、抵抗値R1s,R2sの値がそれぞれ抵抗値R1,R2として定められる。窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗の各々の幅、長さ、厚みを適切に設定することで上記の抵抗値を得ることができる。
【0039】
図7は、実施の形態1に係る抵抗素子の平面図である。図8は、図7のVIII−VIII線断面図である。
【0040】
図7および図8を参照して、この半導体装置は、基板SUBと、基板SUBの上方に設けられた第1層間絶縁膜SO11とを有する。第1層間絶縁膜SO11の上には、タップ層Ma,Mbが設けられる。第1層間絶縁膜SO11の下層には多層配線構造が適用される。タップ層Ma,Mbは、複数の配線層のうちの最も上に位置する配線層である。
【0041】
タップ層Ma,Mbは、表面が平坦化された第2層間絶縁膜SO12に覆われる。この第2層間絶縁膜SO12の上には金属抵抗素子層Rm1が設けられる。金属抵抗素子層Rm1は、金属抵抗膜層Rm11および酸化防止膜層SN1の2層構造を有する。金属抵抗素子層Rm1は、抵抗素子111に対応する。
【0042】
金属抵抗素子層Rm1は、表面が平坦化された第3層間絶縁膜SO13に覆われる。この第3層間絶縁膜SO13の上には金属抵抗素子層Rm2が設けられる。金属抵抗素子層Rm2は、金属抵抗膜層Rm12および酸化防止膜層SN2の2層構造を有する。金属抵抗素子層Rm2は、抵抗素子112に対応する。
【0043】
金属抵抗素子層Rm1は、表面が平坦化された第4層間絶縁膜SO14に覆われる。第4層間絶縁膜SO14は、表面が平坦なパッシベーション膜SN12により覆われる。パッシベーション膜SN12は、表面が平坦な保護膜PFにより覆われる。
【0044】
金属抵抗膜層Rm11は、窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗のうちの一方であり、金属抵抗膜層Rm12は、窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗のうちの他方である。すなわち、窒化タンタル抵抗の層よりも上に位置する層に窒化チタン抵抗が形成されてもよく、逆に、窒化チタン抵抗の層よりも上に位置する層に窒化タンタル抵抗が形成されてもよい。
【0045】
コンタクトプラグCP1は、抵抗素子111の一方端とタップ層Maとを接続する。コンタクトプラグCP2は、抵抗素子111の他方端と抵抗素子112の一方端とを接続する。コンタクトプラグCP3は、抵抗素子112の他方端とタップ層Mbとを接続する。コンタクトプラグCP1〜CP3には、たとえばタングステン(W)が用いられる。コンタクトプラグCP3は、コンタクトプラグCP1と、コンタクトプラグCP1に接続されたコンタクトプラグCP2とによって構成される。
【0046】
コンタクトプラグCP1〜CP3の材料が、窒化チタンおよび窒化タンタルのいずれとも異なるため、コンタクトプラグCP1〜CP3の抵抗値の温度特性が抵抗素子110の抵抗値の温度特性に影響を与える可能性が考えられる。上記のようにコンタクトプラグCP1〜CP3の各々がタングステンによって形成される場合、タングステンの抵抗値の温度係数は、数千ppm(たとえば3000ppm)程度である。しかし、抵抗素子110の抵抗値とコンタクトプラグCP1〜CP3の抵抗値とを合計した全体の抵抗値に対する抵抗素子110の抵抗値の寄与分を大きくすることによって、コンタクトプラグCP1〜CP3の抵抗値の温度特性に起因する抵抗値の変動を小さくすることができる。
【0047】
図9は、最も単純な多層配線構造を有する半導体装置の例を模式的に示した断面図である。図9を参照して、基板SUB上に絶縁膜SO1が形成される。絶縁膜SO1上に配線層ML1が形成される。配線層ML1は絶縁膜SO2により覆われる。絶縁膜SO2上に配線層ML2が形成される。配線層ML2は絶縁膜SO3により覆われる。図9に示した構成によれば、配線層ML2が複数の配線層のうち最も上に位置する配線層である。したがって金属抵抗素子層Rm1,Rm2は、配線層ML2よりも上の位置、たとえば絶縁膜SO3上に形成される。
【0048】
多層配線構造を有する半導体装置の場合、配線層の数は複数であれば2に限定されるものでない。すなわち図8に示したタップ層Ma,Mbよりも下に位置する配線層の数は1以上であれば特に限定されるものではない。
【0049】
次に、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法が説明される。具体的には、図7および図8に示された抵抗素子110の製造工程が説明される。
【0050】
図10は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第1工程を示す概略断面図である。図10を参照して、基板SUBの上に公知の多層配線構造が形成された後、表面が平坦化された第1層間絶縁膜SO11が形成される。第1層間絶縁膜SO11には、シリコン酸化膜を用いる。シリコン酸化膜には、段差被覆性の良いHigh Density Plasma CVD法により成膜したUSG(Undoped Silicate Glass)膜(HDP−USG)およびプラズマCVD法により成膜したTEOS膜(P−TEOS)が用いられる。基板SUBは、半導体基板であり、トランジスタ等の回路素子(図示せず)が基板SUBに形成される。
【0051】
次に、第1層間絶縁膜SO11の上に配線層Mが形成される。配線層Mは複数の配線層のうちの最も上に位置する配線層である。配線層Mは、スパッタリング法で成膜される。配線層Mは、下層M1、配線本体M2および上層M3を有する。下層M1はTiN/Ti膜からなる。配線本体M2は銅添加アルミ(Al−Cu)膜からなる。上層M3は、TiN/Ti膜からなる。配線層Mの膜厚は、たとえば数百nmから1μm程度である。
【0052】
次に、配線層Mの上に反射防止膜SON11が形成される。反射防止膜SON11は、たとえばプラズマ酸窒化膜(P-SiON)であり、CVD法により形成される。
【0053】
図11は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第2工程を示す概略断面図である。図11を参照して、配線層Mおよび反射防止膜SON11のパターニングが行なわれる。パターニングには、写真製版技術およびドライエッチング処理が用いられる。パターニングによってタップ層Ma,Mbが形成される。なお、パターニングのための写真製版技術およびドライエッチング処理には公知の技術を適用できるので、ここでは詳細な説明を繰り返さない(以後の説明においても同様)。
【0054】
図12は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第3工程を示す概略断面図である。図12を参照して、タップ層Ma,Mbを覆う第2層間絶縁膜SO12が形成される。第2層間絶縁膜SO12には、HDP−USGおよびP−TEOSからなるシリコン酸化膜が用いられる。CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いた平坦化処理が実行されることによって、第2層間絶縁膜SO12の表面が平坦化される。
【0055】
図13は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第4工程を示す概略断面図である。図13を参照して、写真製版技術およびドライエッチング処理を用いて、タップ層Ma,Mbのそれぞれに連通するコンタクトホールVa1が、第2層間絶縁膜SO12に形成される。
【0056】
図14は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第5工程を示す概略断面図である。図14を参照して、コンタクトホールVa1内に、コンタクトプラグCP1が形成される。まず、バリアメタルとしてのTiN/Ti(チタン)積層膜CP11がスパッタリング法によりコンタクトホールVa1内に成膜される。次に、タングステン膜CP12がCVD法により成膜される。続いて、CMP法により、TiN/Ti積層膜CP11およびタングステン膜CP12の上面が平坦化される。
【0057】
図15は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第6工程を示す概略断面図である。図15を参照して、第2層間絶縁膜SO12の上に金属抵抗素子層Rm1が形成される。金属抵抗素子層Rm1は、金属抵抗膜層Rm11と酸化防止膜層SN1とを有する2層構造を有する。たとえば金属抵抗膜層Rm11は、スパッタリング法により形成されたTiN膜である。
【0058】
酸化防止膜層SN1には、たとえばプラズマ窒化(P−SiN)膜が用いられる。プラズマ窒化膜は、CVD法により形成される。
【0059】
次に、写真製版技術およびドライエッチング処理を用いて、金属抵抗素子層Rm1のパターニングが行なわれる。この工程により、金属抵抗素子層Rm1が形成されるとともに、金属抵抗素子層Rm1がコンタクトプラグCP1を介してタップ層Maと電気的に接続される。
【0060】
なお、酸化防止膜層SN1は酸素プラズマ雰囲気でレジスト除去を行なう際に、金属抵抗膜層Rm11の表面が酸素プラズマ雰囲気にさらされるのを防止している。
【0061】
図16は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第7工程を示す概略断面図である。図16を参照して、金属抵抗素子層Rm1を覆うように、第2層間絶縁膜SO12の上に第3層間絶縁膜SO13が形成される。第3層間絶縁膜SO13には、P−TEOS膜からなるシリコン酸化膜が用いられる。P−TEOS膜は、CVD法により形成される。さらにCMP法を用いた平坦化処理が実行されることによって、第3層間絶縁膜SO13の表面が平坦化される。
【0062】
図17は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第8工程を示す概略断面図である。図17を参照して、写真製版技術およびドライエッチング処理を用いて、コンタクトホールVa2が、第3層間絶縁膜SO13に形成される。タップ層Mb上では、コンタクトプラグCP1に連通するように、コンタクトホールVa2が第3層間絶縁膜SO13に形成される。さらに、金属抵抗膜層Rm11に連通するように、コンタクトホールVa2が第3層間絶縁膜SO13に形成される。
【0063】
図18は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第9工程を示す概略断面図である。図18を参照して、コンタクトホールVa2内に、コンタクトプラグCP2が形成される。まず、バリアメタルとしてのTiN/Ti積層膜CP13がスパッタリング法によりコンタクトホールVa2内に成膜される。その後、タングステン膜CP14がCVD法により成膜される。続いて、CMP法により、TiN/Ti積層膜CP13およびタングステン膜CP14の上面が平坦化される。
【0064】
タップ層Mb上では、コンタクトプラグCP1とコンタクトプラグCP2とが接続される。これによりコンタクトプラグCP3が形成される。
【0065】
図19は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第10工程を示す概略断面図である。図19を参照して、第3層間絶縁膜SO13の上に金属抵抗素子層Rm2が形成される。金属抵抗素子層Rm2は、金属抵抗膜層Rm12と酸化防止膜層SN2とを有する2層構造を有する。たとえば金属抵抗膜層Rm12は、スパッタリング法により形成されたTaN膜である。ただし上記のように金属抵抗膜層Rm11がTaN膜であり、金属抵抗膜層Rm12がTiN膜であってもよい。金属抵抗素子層Rm2はコンタクトプラグCP2を介してタップ層Maと電気的に接続される。
【0066】
次に、写真製版技術およびドライエッチング処理を用いて、金属抵抗素子層Rm2のパターニングが行なわれる。この工程により、金属抵抗素子層Rm2が形成される。酸化防止膜層SN2にはプラズマ窒化(P−SiN)膜が用いられる。プラズマ窒化膜は、CVD法により形成される。酸化防止膜層SN2は酸素プラズマ雰囲気でレジスト除去を行なう際に、金属抵抗膜層Rm12の表面が酸素プラズマ雰囲気にさらされるのを防止している。
【0067】
図20は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第11工程を示す概略断面図である。図20を参照して、第3層間絶縁膜SO13の上に第4層間絶縁膜SO14が形成される。さらにCMP法を用いた平坦化処理が実行されることによって、第4層間絶縁膜SO14の表面が平坦化される。
【0068】
図21は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第12工程を示す概略断面図である。図21を参照して、第4層間絶縁膜SO14の上にパッシベーション膜SN12が形成される。パッシベーション膜SN12には、P−SiN膜が用いられる。パッシベーション膜SN12はCVD法により成膜される。パッシベーション膜SN12は、半導体装置の表面を外的な損傷から保護するための被膜である。なお、図21には示されていないが、パッド開口部を形成するために、写真製版技術およびドライエッチング処理により、第2層間絶縁膜SO12、第3層間絶縁膜SO13、第4層間絶縁膜SO14、およびパッシベーション膜SN12が選択的に除去される。
【0069】
図22は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の第13工程を示す概略断面図である。図22を参照して、パッシベーション膜SN12の上に、保護膜PFが形成される。保護膜PFは、たとえば感光性ポリイミド膜である。なお、図22には示されていないが、写真製版処理によって、先の工程によって形成されたパッド開口部を覆うポリイミドが除去されたパターンが形成される。以上の工程により、図7および図8に示す半導体装置が完成する。
【0070】
この実施の形態では、複数の配線層のうち最も上に位置する配線層Mよりもさらに上に、絶縁膜を介在して金属抵抗素子層Rm1,Rm2が形成される。パッシベーション膜SN12および保護膜PFの良好なカバレッジを達成するために、第2層間絶縁膜SO12および第3層間絶縁膜SO13の各々の表面は平坦化される。したがって、スパッタリング法によって形成された金属抵抗膜層Rm11,金属抵抗膜層Rm12の厚みを均一にすることができる。金属抵抗膜層Rm11,金属抵抗膜層Rm12の厚みを精度よく制御できるので、抵抗素子111,112の各々の抵抗値の精度を高くすることができる。
【0071】
さらに、配線層Mよりも上に金属抵抗素子層Rm1,Rm2を配置することによって、抵抗素子111,112のレイアウトに関する制約を緩和することができる。たとえば所望の抵抗値を得るために、抵抗素子を長くする必要が生じる可能性がある。配線層Mあるいは配線層Mよりも下に位置する配線層を利用して金属抵抗素子層Rm1,Rm2を形成する場合、所望の抵抗値を得るために抵抗素子を長くしたことによって、チップ面積が増大する可能性がある。この実施の形態によれば、抵抗素子111,112のレイアウトに関する制約を緩和することができるため、チップ面積を増大させることなく抵抗素子を形成することができる。
【0072】
図23は、実施の形態1に係る抵抗素子の第1の変形例を示した平面図である。図24は、図23のXXIV−XXIV線断面図である。図23および図24を参照して、抵抗素子110Aは、抵抗素子111と抵抗素子112とが、タップ層McおよびコンタクトプラグCP1,CP3を介して接続される。この点において、抵抗素子110Aは、抵抗素子110と異なる。抵抗素子110Aの他の部分の構成は、抵抗素子110の対応する部分の構成と同様であるので、以後の詳細な説明は繰り返さない。
【0073】
タップ層Mcは、タップ層Ma,Mbと同様に、複数の配線層のうちの最も上に位置する配線層Mである。図23および図24に示されるように、複数の配線層のうちの最も上に位置する配線層Mを利用して、抵抗素子111と抵抗素子112とを直列に接続することもできる。
【0074】
図25は、実施の形態1に係る抵抗素子の第2の変形例を示した平面図である。図25を参照して、抵抗素子111,112は、ある方向(X方向とする)に沿って配置され、かつ、タップ層Mcから共通の向き(Y方向)に沿って延在する。この点において、抵抗素子110Bは、抵抗素子110Aと異なる。抵抗素子110Aの他の部分の構成は抵抗素子110の対応する部分の構成と同様であるので、以後の詳細な説明は繰り返さない。
【0075】
金属抵抗素子層Rm1,Rm2が配線層Mよりも上の位置に配置されるので、図7,図23および図25に示されるように、抵抗素子111,112の様々なレイアウトを実現できる。すなわち図7,図23および図25に示されたレイアウトは一例であり、他のレイアウトを採用することも可能である。
【0076】
以上のように実施の形態1によれば、半導体装置は、窒化チタン(TiN)抵抗と窒化タンタル(TaN)抵抗とを直列接続することによって構成された抵抗素子を含む。窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗は、抵抗値の温度係数が小さい(数百ppmであり、一例では400ppm)。さらに、窒化チタン抵抗の抵抗値は正の温度係数を有する一方で、窒化タンタル抵抗の抵抗値は負の温度係数を有する。窒化チタン抵抗と窒化タンタル抵抗とを組み合わせることによって、温度依存性が小さい、あるいは温度依存性を実質的に有さない抵抗素子を提供することができる。
【0077】
[実施の形態2]
実施の形態2では、半導体装置は、窒化チタン抵抗と窒化タンタル抵抗とが並列接続されることによって構成された抵抗素子を含む。この点において実施の形態2は実施の形態1と異なる。実施の形態1と同様に、この抵抗素子は、たとえばマイクロコンピュータチップに内蔵される高速OCO回路に含まれる(図1および図2参照)。よって、実施の形態2に係る抵抗素子を含む高速OCO回路、およびその高速OCO回路を含むマイクロコンピュータチップに関する詳細な説明は以後繰り返さない。
【0078】
図26は、実施の形態2に係る抵抗素子の等価回路図である。図26を参照して、抵抗素子120は、互いに並列に接続された抵抗素子111,112を含む。実施の形態1と同様に、抵抗素子111は、窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗のうちの一方であり、抵抗素子112は、窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗のうちの他方である。
【0079】
図27は、実施の形態2に係る抵抗素子の一例を示した平面図である。図28は、図27のXXVIII−XXVIII線断面図である。図29は、図27のXXIX−XXIX線断面図である。図30は、図27のXXX−XXX線断面図である。
【0080】
図27〜図30を参照して、抵抗素子120は、抵抗素子111と抵抗素子112とを有する。抵抗素子111の一方端は、コンタクトプラグCP3によってタップ層Mbに接続される。抵抗素子111の他方端は、コンタクトプラグCP1によってタップ層Mcに接続される。抵抗素子112の一方端は、コンタクトプラグCP1によってタップ層Mbに接続される。抵抗素子112の他方端は、コンタクトプラグCP1によってタップ層Mcに接続される。
【0081】
なお、図27と図25とを比較すると分かるように、抵抗素子120は、抵抗素子110Bにおいてタップ層Maとタップ層Mbとが接続された構成を有している。
【0082】
抵抗素子111の抵抗値をR1とし、抵抗素子112の抵抗値をR2とする。抵抗素子120の抵抗値Rは、以下の式(2)に従って表わされる。
R=1/(1/R1+1/R2)=R1*R2/(R1+R2)
={R1s(1+ΔR1)*R2s(1+ΔR2)}/{R1s(1+ΔR1)+R2s(1+ΔR2)}
≒(R1s*R2s+ΔR1*R1s+ΔR2*R2s)/(R1s+R2s+ΔR1*R1s+ΔR2*R2s)
=(1+ΔR1/R2s+ΔR2/R1s)/(1/R2s+1/R1s+ΔR1/R2s+ΔR2/R1s) …(2)
ΔR1,ΔR2は互いに逆の符号を有する値である(たとえばΔR1が正の値であり、ΔR2が負の値)。抵抗値R1,R2を適切な数値に設定することによって、ΔR1/R2s+ΔR2/R1s=0の関係を満たすことができる。これにより、温度に依存しない抵抗値Rを得ることができる。
【0083】
以上のように実施の形態2によれば、半導体装置は、窒化チタン抵抗と窒化タンタル抵抗とを並列接続することによって構成された抵抗素子を含む。実施の形態1と同様に、実施の形態2によれば、並列接続することによって構成された抵抗素子においても、温度依存性を小さくする、あるいは温度依存性を実質的にゼロとすることができる。
【0084】
[実施の形態3]
実施の形態3では、窒化チタン抵抗と窒化タンタル抵抗とが積み重ねられる。この点において実施の形態3は実施の形態1と異なる。実施の形態1と同様に、この抵抗素子は、マイクロコンピュータチップに内蔵される高速OCO回路に含まれる(図1および図2参照)。よって、実施の形態3に係る抵抗素子を含む高速OCO回路、およびその高速OCO回路を含むマイクロコンピュータチップに関する詳細な説明は以後繰り返さない。
【0085】
図31は、実施の形態3に係る抵抗素子の一例を示した平面図である。図31を参照して、抵抗素子130は、抵抗素子111および、抵抗素子111の上に配置された抵抗素子112を含む。抵抗素子111の一方端は、コンタクトプラグCP1を介してタップ層Maに接続される。抵抗素子111の他方端は、コンタクトプラグCP1を介してタップ層Mbに接続される。
【0086】
抵抗素子111の長さおよび抵抗素子112の長さはともにLである。抵抗素子111の幅はW1であるのに対し、抵抗素子111の幅はW2である。W1<W2である。実施の形態1,2と同様に、抵抗素子111は、窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗のうちの一方であり、抵抗素子112は、窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗のうちの他方である。
【0087】
図32は、図31のXXXII−XXXII線断面図である。図33は、図31のXXXIII−XXXIII線断面図である。図32および図33を参照して、第2層間絶縁膜SO12の上に金属抵抗素子層Rm3が設けられる。金属抵抗素子層Rm3は、金属抵抗膜層Rm11,Rm12および酸化防止膜層SN1の3層構造を有する。金属抵抗膜層Rm12は、金属抵抗膜層Rm11に重ねられる。金属抵抗膜層Rm11は、抵抗素子111に対応する。金属抵抗膜層Rm12は、抵抗素子112に対応する。酸化防止膜層SN1は、金属抵抗膜層Rm11,Rm12を覆う。
【0088】
金属抵抗素子層Rm3は、第3層間絶縁膜SO13により覆われる。実施の形態3に係る半導体装置は、第4層間絶縁膜SO14を有していない。この点において、実施の形態3に係る半導体装置は、実施の形態1に係る半導体装置と異なる(図8を参照)。第3層間絶縁膜SO13は、表面が平坦なパッシベーション膜SN12により覆われる。パッシベーション膜SN12は、表面が平坦な保護膜PFにより覆われる。
【0089】
図32および図33に示された半導体装置の他の部分の構成は、実施の形態1に係る半導体装置の対応する部分の構成と同様である(図8を参照)。すなわち、実施の形態1と同様に、金属抵抗膜層Rm11,Rm12は、複数の配線層のうちの最上層の配線よりも上に位置する。
【0090】
金属抵抗膜層Rm11は、窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗のうちの一方であり、金属抵抗膜層Rm12は、窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗のうちの他方である。すなわち、窒化チタン抵抗が窒化タンタル抵抗よりも上に形成されてもよく、逆に、窒化タンタル抵抗が窒化チタン抵抗よりも上に形成されてもよい。
【0091】
金属抵抗素子層Rm3を製造するための方法は特に限定されるものではないが、たとえば以下に説明する方法を用いることができる。まず、平坦化された第2層間絶縁膜SO12の表面に、スパッタリング法によりTiN膜(金属抵抗膜層Rm11)が形成される。次に、写真製版技術およびドライエッチング処理を用いて、金属抵抗膜層Rm11のパターニングが行なわれる。
【0092】
続いて、スパッタリング法によりTaN膜(金属抵抗膜層Rm12)が形成される。写真製版技術およびドライエッチング処理を用いて、TaN膜がTiN膜と重なるように金属抵抗素子層Rm2のパターニングが行なわれる。リフトオフ法によりTaN膜をTiN膜に重ねてもよい。すなわち、TiN膜と重なる部分にフォトレジストの開口部(抜きパターン)が形成されるように、写真製版技術を用いてフォトレジストのパターニングを行なう。次にスパッタリングによりTaN膜を成膜する。最後にフォトレジストを除去する。これにより、長さLおよび幅W2を有するTaN膜をTiN膜に重ねることができる。
【0093】
続いて、酸化防止膜層SN1(P−SiN膜)がCVD法により形成される。写真製版技術およびドライエッチング処理を用いて、酸化防止膜層SN1のパターニングが行なわれる。具体的には酸化防止膜層SN1の長さがL、かつ酸化防止膜層SN1の幅がW1となるように酸化防止膜層SN1のパターニングが行なわれる。
【0094】
図31〜33に示す抵抗素子120の等価回路は、図26に示した回路に等しい。すなわち、抵抗素子120は、互いに並列に接続された抵抗素子111,112を含む。
【0095】
抵抗素子111の抵抗値をR1とし、抵抗素子112の抵抗値をR2とする。抵抗素子110の抵抗値Rは、上記のように1/{(1/R1)+(1/R2)}=R1*R2/(R1+R2)と表わされる。R1=R1s(1+ΔR1)、R2=R2s(1+ΔR2)とすると、抵抗値Rは、以下の式(3)に従って表わされる。
【0096】
【数1】

【0097】
分数の分子に含まれるΔR1*ΔR2の項を省略する。さらに、分母をテーラー展開することで分子に移項する。これにより式(3)は、以下のように変形される。
【0098】
【数2】

【0099】
式(4)の右辺における括弧内の第2項を0とすることで、抵抗値Rの温度依存性をなくすことができる。すなわち、R2*ΔR1+R1*ΔR2=0となる条件が必要となる。
【0100】
図31および図32に示されるように、抵抗素子111,112の抵抗長が等しく、かつ、抵抗素子111,112の幅が異なる場合、R2*ΔR1+R1*ΔR2=0となる条件は、以下のようにして決定される。
【0101】
抵抗素子111のシート抵抗値をρ1とし、抵抗素子111の抵抗長をL1とし、抵抗素子111の幅をW1とする。抵抗素子112のシート抵抗値をρ2とし、抵抗素子112の抵抗長をL2とし、抵抗素子112の幅をW2とする。抵抗素子111の抵抗値R1はR1=ρ1*(L1/W1)と表わされ、抵抗素子112の抵抗値R2はR2=ρ2*(L2/W2)と表わされる。したがって、R2*ΔR1+R1*ΔR2=0は、以下の式(5)に置き換えられる。
【0102】
【数3】

【0103】
ここで、L1=L2である。従って、式(5)は以下のように変形できる。
【0104】
【数4】

【0105】
したがって、式(6)に示される関係が満たされるようにW1,W2の比を設定することで、抵抗値Rの温度依存性をなくすことができる。
【0106】
さらに図34に示されるように、金属抵抗膜層Rm11,Rm12の幅(すなわち抵抗素子111の幅W1と抵抗素子112の幅W2)を互いに等しくすることもできる。たとえば、スパッタリングによってTiN膜を作製し、ターゲットを変更してスパッタリングを連続的に行なうことによりTaN膜をTiN膜に重ねる。さらに、CVD法により、TaN膜およびTiN膜を覆うように酸化防止膜層SN1が作成される。続いてパターニング処理によって、図34に示されるように、幅が等しい抵抗素子111および抵抗素子112を作成することができる。
【0107】
この場合、抵抗値Rの温度依存性をなくすための条件(R2*ΔR1+R1*ΔR2=0)は、以下のようにして求められる。
【0108】
まず、シート抵抗ρは、体積抵抗σおよび膜厚tを用いてρ=σ/tと表わされる。抵抗素子111の体積抵抗をσ1、抵抗素子111の膜厚をt1、抵抗素子112の体積抵抗をσ2、抵抗素子112の膜厚をt2とすると、上記式(5)は、以下のように変形できる。
【0109】
【数5】

【0110】
L1=L2かつW1=W2である。したがって、式(7)は以下のように変形できる。
【0111】
【数6】

【0112】
式(8)で表わされる関係が満たされるように、膜厚t1,t2を選択することにより、温度依存性のない抵抗値Rを得ることができる。
【0113】
以上のように実施の形態3によれば、窒化チタン抵抗と窒化タンタル抵抗との一方が他方の上に積み重ねられる。これにより、窒化チタン抵抗と窒化タンタル抵抗とを相互に接続するためのコンタクトプラグ、あるいは、窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗の各々を、配線層M(図27および図28に示されるタップ層Mc)に接続するためのコンタクトプラグが不要になる。この結果、抵抗素子の抵抗値に対するコンタクトプラグの抵抗値の寄与分を低下させることができる。
【0114】
上記のように、コンタクトプラグの抵抗値の温度係数は、窒化チタン抵抗および窒化タンタル抵抗の各々の抵抗値の温度係数(絶対値)よりも大きい場合がある。実施の形態3によれば、実施の形態1または2に係る抵抗素子に比較して温度依存性がより低減される抵抗素子、あるいは、温度依存性を実質的に有さない抵抗素子を提供することができる。
【0115】
さらに実施の形態3によれば、実施の形態1に係る構成から第4層間絶縁膜SO14を省略することができる。したがって実施の形態3によれば、実施の形態1に比較して半導体装置の製造コストの低減を図ることができる。
【0116】
[実施の形態4]
実施の形態4に係る半導体装置は、実施の形態1〜3のいずれかに係る抵抗素子を複数備えることによって、抵抗値の調整を可能にする。
【0117】
図35は、実施の形態4に係る半導体装置が備える抵抗回路を示した図である。図35を参照して、抵抗回路150は、ノードNaとノードNbとの間に直列接続された抵抗素子151〜155と、抵抗素子151〜155にそれぞれ並列に接続されたMOSFETTr1〜Tr5とを備える。抵抗素子151〜155の各々は、実施の形態1〜3のいずれかに係る抵抗素子(110,110A,110B,120,130)である。
【0118】
抵抗回路150は、たとえば図2に示した定電圧回路101において、抵抗素子110の代わりに用いることができる。この場合には、ノードNaはMOSFETQ1のソースに接続されるとともに、ノードNbは接地電圧に接続される。
【0119】
抵抗素子151〜155の各々は、対応するMOSFETがオフした場合には選択される一方で、対応するMOSFETがオンした場合に非選択とされる。MOSFETTr1〜Tr5は互いに独立にオンまたはオフされる。したがって、ノードNaとノードNbとの間の抵抗値を制御することができる。また、抵抗値の温度依存性(温度係数)が抵抗素子151〜155の間で互いに異なることが考えられるが、これを利用して、ノードNaとノードNbとの間の抵抗値の温度依存性を微調整することが可能となる。
【0120】
なお、図35では、抵抗回路150に含まれる抵抗素子の数は5であるが、抵抗回路150に含まれる抵抗素子の数は複数であれば特に限定されるものではない。
【0121】
また、上記の実施の形態に係る抵抗素子は、OCO回路に使用されるものと限定されない。温度による抵抗値の変動をできるだけ小さくすることが必要とされる回路を含む半導体装置に本発明は適用可能である。
【0122】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、抵抗素子を有する半導体装置に特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0124】
100 高速OCO回路、101 定電圧回路、102 差動増幅回路、103 遅延回路、104 昇圧回路、110,110A,110B,111,112,120,130,151〜155 抵抗素子、150 抵抗回路、C1〜C3 コンデンサ、CLK 起動信号、CP1〜CP3 コンタクトプラグ、CP11,CP13 TiN/Ti積層膜、CP12,CP14 タングステン膜、IV1 インバータ、M,ML1,ML2 配線層、M1 下層、M2 配線本体、M3 上層、MC1 マイクロコンピュータチップ、MC11 RAM形成領域、MC12 CPU形成領域、MC13,MC15 周辺回路形成領域、MC14 ROM形成領域、MC16 電源回路領域、Ma〜Mc タップ層、N1〜N3,Na,Nb ノード、PF 保護膜、Q1〜Q7,Q12,Q13,Tr1〜Tr5 MOSFET、Rm1〜Rm3 金属抵抗素子層、Rm11,Rm12 金属抵抗膜層、SN1,SN2 酸化防止膜層、SN12 パッシベーション膜、SO1,SO2,SO3 絶縁膜、SO11 第1層間絶縁膜、SO12 第2層間絶縁膜、SO13 第3層間絶縁膜、SO14 第4層間絶縁膜、SON11 反射防止膜、SUB 基板、Va1,Va2 コンタクトホール、Vcc 電源電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた第1の抵抗素子と、
前記第1の抵抗素子に電気的に接続された第2の抵抗素子とを備え、
前記第1および第2の抵抗素子のうちの一方は、窒化チタンによって形成され、
前記第1および第2の抵抗素子のうちの他方は、窒化タンタルによって形成される、半導体装置。
【請求項2】
前記半導体装置は、
複数の配線層をさらに備え、
前記第1および第2の抵抗素子は、前記複数の配線層のうちの最も上に位置する配線層と、前記絶縁層を介在して配置される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の抵抗素子は、前記第1の抵抗素子に直列に接続される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の抵抗素子は、前記第1の抵抗素子に並列に接続される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の抵抗素子が前記第1の抵抗素子に直接的に接するように、前記第2の抵抗素子が前記第1の抵抗素子の上に重ねられる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1および第2の抵抗素子は、前記第1および第2の抵抗素子に定電流が流れることによって定電圧を発生させる定電圧回路に含まれる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記定電圧回路は、
各々が前記第1および第2の抵抗素子によって構成されて、互いに電気的に接続された複数の抵抗素子と、
前記複数の抵抗素子と並列にそれぞれ接続される複数のトランジスタとを含む、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記定電圧回路は、発振回路に含まれる、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記発振回路は、マイクロコンピュータのチップに内蔵される、請求項8に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2012−74481(P2012−74481A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217317(P2010−217317)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】