説明

半導体製造装置

【課題】ALD(Atomic Layer Deposition)法によりHfO2(ハフニウムオキサイド)膜を形成する装置にてTEMAHとO3を交互に反応室へ供給することにより、HfO2膜が形成される場合にTEMAHが反応室内の熱を受け加熱分解し、TEMAH供給ノズル内でHf膜が形成され、前記Hf膜が剥がれパーティクルという課題を解決する。
【解決手段】HfO2膜を形成する縦型のバッチ式半導体製造装置において、気化器からTEMAHの供給手段のガス導入口までの配管温度を気化器の気化温度以上、TEMAHの加熱分解温度以下に制御し、反応室内に供給する。前記手段により、TEMAH供給配管内でTEMAHの加熱分解が起きないため、Hf膜の形成を抑制できパーティクルを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ウェーハ(以下、ウェーハという)の表面にHfO2膜を形成して半導体装置を製造する、縦型のバッチ式半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縦型のバッチ式基盤処理装置として、反応ガスにTEMAH(Hf[NCH3254、テトラキスメチルエチルアミノハフニウム)と、酸化ガスとしてO3(オゾン)を用いALD(Atomic Layer Deposition)法によりHfO2(ハフニウムオキサイド)膜を形成する装置がある。この装置において、TEMAHは反応室内のウェーハ側の方向を避け、例えば反応室内の上部より供給するTEMAH供給ノズルにより供給され、O3はウェーハ側の方向に向けてガスを供給するO3供給ノズルにより供給される。そして、TEMAHとO3を交互に反応室へ供給することにより、膜厚均一性の良好なHfO2膜が形成できることが知られている。前記方法にてHfO2膜を形成すると、反応室内へ供給される前の段階で、TEMAHが反応室内の熱を受け加熱分解し、TEMAH供給ノズル内でHf膜が形成されてしまう。TEMAH供給ノズル内に形成されるHf膜は、累積膜厚0.5μm程度で剥がれパーティクルとなるため、累積膜厚0.5μm以下でTEMAH供給ノズルの交換、又はエッチングガスを用いたInsitu Cleaningが必要となる。HFをエッチングガスに用いたInsitu Cleaningを試みたところ、反応室内やウェーハ上に形成されるHfO2膜(組成比Hf:O=1:2)は除去できるが、TEMAHノズル内に形成されるHfO2膜(組成比Hf:O=30:1)はHfリッチであるため、エッチングにより完全に除去することができない。そこで、特許文献1ではTEMAHを反応室内に供給するステップにおいて、TEMAH供給ノズルからもO3を供給し、TEMAH供給ノズル内に形成されるHfO2膜を反応室内やウェーハ上に形成されるHfO2膜(組成比Hf:O=1:2)と同一にすることで、Insitu Cleaningを行うことが提案されている。
【特許文献1】特開2008−78448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、TEMAHを反応室内に供給するステップにおいて、TEMAH供給ノズルからもO3を供給する方法は、以下の課題がある。TEMAH供給ノズルは反応室内下部から反応室内上部まで延びているため、反応室内下部と反応室内上部の噴出し口付近ではガスが受ける熱量が異なる。このため、TEMAH供給ノズル内全面に均一なHfO2膜(組成比Hf:O=1:2)を形成することはできない。TEMAH供給ノズルの反応室内下部は熱量が小さいため、O3とHfが十分に反応せずHfリッチなHfO2膜が形成され、反応室内上部にいく程、熱量が大きくなり反応室内やウェーハ上に形成されるHfO2膜(組成比Hf:O=1:2)に近づく。また、TEMAH供給ノズル内の下部と上部で形成されるHfO2膜の膜厚も異なるためInsitu Cleaningを行ったとしても、ノズル内を均一にエッチングすることはできないため、膜残りやオーバーエッチを引き起こす。膜残りは膜剥がれによるパーティクルの原因となり、オーバーエッチは石英表面にダメージを与え、石英の交換周期を早めてしまう。
【0004】
本発明は、TEMAH供給ノズル内に形成されるHfO2膜の剥がれによるパーティクルの抑制を目的とし、膜厚の均一性が良好な半導体製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明の半導体製造装置には、まず、複数のウェーハを積層した状態で収容する反応室と、前記ウェーハ及び前記反応室内の雰囲気を加熱する加熱手段とが設けられている。次に、TEMAHを反応室内へ供給する第1のガス供給手段と、TEMAHを気化するための気化手段と、O3を供給する第2のガス供給手段とが設けられている。次に、前記処理室内の雰囲気を排出する排出手段と、前記加熱手段と、前記第1のガス供給手段と、前記気化手段と、前期第2のガス供給手段と、前記排出手段を制御する制御部を備えている。また、前記第1のガス供給手段の反応室内へのガス導入口は、積層されたウェーハよりも高い位置で開口し、前記第2のガス供給手段の反応室へのガス導入口は、前記反応室内に積層されたウェーハ側の方向を向き開口されている。さらに、本発明の半導体製造装置は、前記制御部により、TEMAHとO3を交互に供給、排気し、前記ウェーハ上にHfO2膜を形成する。
【0006】
そして、このような半導体製造装置において、気化手段から第1のガス供給手段のガス導入口までの配管温度を気化器の気化温度以上、TEMAHの加熱分解温度以下に制御し、TEMAHを反応室内に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、TEMAH供給ノズル内の温度を気化温度以上、加熱分解温度以下とすることで、気相で供給されるTEMAHの再液化を防止でき、且つTEMAH供給ノズル内のHf膜の堆積を抑制できるため、前記課題のHf膜の剥がれによるパーティクルを抑制できる。さらにエッチングガスを用いたInsitu Cleaningを実施する場合、本発明によりTEMAH供給ノズル内の温度を石英のエッチング温度以下に制御することで、TEMAH供給ノズル内をエッチングすることなく反応室内のCleanigが可能となる。よって、TEMAH供給ノズルの交換頻度を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0009】
図1は、本発明の半導体製造装置の構成図である。この図1において、反応管5は石英等の耐熱性、耐食性金属で形成され、マニュホールド8に支持される。マニュホールド8は下方に臨んで開口していて、反応管5の炉口を下方に延長している。マニュホールド8には排気配管14が接続され、排気配管14には反応室1内を真空引きするポンプ10と反応室の圧力制御を行う、圧力制御バルブ9が接続される。またマニュホールド8には成膜に使用する反応ガスであるO3のO3供給ノズル13と反応室内の温度を監視するための熱伝対17が接続される。
【0010】
反応室1を囲む様にヒータ室6内に円筒状のヒータ4が設けられ、反応室1内を所望の温度にするため、熱伝対17の値からコントローラ22で算出した必要電力を、ヒータ4にフィードバックし反応室1の温度を制御する。
【0011】
シールキャップ23上に設置されたボート2にはウェーハ3が装填され、前記ボート2を反応室1へ装入するためのボートエレベータ(図示せず)がシールキャップ23部に連結される。そして、ウェーハ3が充填されたボート2とシールキャップ部23とボート回転機構7を上下に駆動させ、反応室1内への装入と取り出しを行う。
【0012】
前記ボート2は、前記シールキャップ23の軸心部を上下に貫通する回転軸(図示せず)の先端部に取り付けられたボート支持台24の中央部に支持されており、回転軸はシールキャップ23の下部に取り付けられる。そして、シールキャップ23を固定系として回転駆動力を伝達するボート回転機構7に連結される。ボート回転機構7を駆動すると、回転軸が回転し、ボート支持台24を介してボート2が回転するので、反応管5内部の反応室1に供給されるTEMAHとO3が、各ウェーハ3に均等に接触するため面内膜厚の均一な環境が得られる。
【0013】
次に、成膜に用いるTEMAHとO3の供給系について説明する。
【0014】
TEMAHは常温で液体の液化ガスであるため、TEMAH流量制御部15にて所望の流量に制御されたTEMAHを気化器16により気化させ、反応室1内へ供給される。TEMAH流量制御部15の上流にはバルブ11aが設けられ、TEMAH使用時はバルブ11aを開け、未使用時は閉じる。気化器16の温度はTEMAHの気化温度以上であって、例えば150℃になるように温度が設定される。
【0015】
次に、図2、3を用い、TEMAH供給配管21について説明する。図3A,Bは、それぞれ図2における矢印A,Bによる断面の様子を表わしている。即ち図3AはTEMAH供給配管21の断面図であり、図3BはTEMHA供給配管21の断面を含む斜視図である。
【0016】
TEMAH供給配管21は気化器16に接続され、ヒータ室6を通り、反応管5の上部中央に接続される。TEMAH供給配管21は図3Aに示すよう、内管28と外管29を含む2重管構造とし、内管28内はTEMAHが流れる(TEMAH流路31)。また、内管28と外管29の間はTEMAH供給配管21の温度を制御する冷媒が流れる(冷媒流路32)。また、内管28と外管29の間には、図3A,Bに示すように、内管28と外管29に対し垂直で、長手方向に内管28と外管29管の体積を等分するように仕切り板30が設けられる。仕切り板30により分けられた、内管28と外管29間の空間の一方は冷媒供給路25となり、もう一方は冷媒排出路26となる。チラー20により所望の温度に冷媒の温度を制御し冷媒供給配管18から、冷媒供給路26に冷媒が供給され、冷媒排出路27から冷媒排出配管19を通りチラー20に戻る。前記サイクルを繰り返すことで、TEMAH供給配管21の温度を所望の温度に制御することができる。
【0017】
図4を用い、TEMAH供給配管21に供給する冷媒の最適温度について説明する。図4はTEMAHの加熱分解度合いを示す図面である。TEMAHは180℃近傍から加熱分解を始め、温度上昇に伴い増加していくが、160℃未満では加熱分解しない。つまり、TEMAH供給配管内21の温度を160℃以下とすることで、配管内へのHfO2膜の形成を防止できる。しかし、冷媒の温度を気化器16温度の150℃以下に設定すると、TEMAHは気相状態から液状態となる再液化が発生し、パーティクルの原因や膜質異常を引き起こす。前記に鑑み、本発明は、TEMAH供給配管21に供給する冷媒の温度は、気化器の温度以上、TEMAHの加熱分解温度以下に制御することを特徴とする。
【0018】
3はガス流量制御部12により、所望の流量に制御され、O3供給ノズルにより反応室1内へ供給される。ガス流量制御部12の下流にはバルブ11bが設けられ、O3使用時はバルブ11bを開け、未使用時は閉じる。O3供給ノズル13はボート2に充填されているウェーハ3に沿って反応管5の天井付近まで延び、反応室1内への導入口は複数の供給孔が設けられており、各ウェーハ3間にそれぞれ水平に導入されるように上下方向に所定間隔を隔てて設けられている。
【0019】
制御手段として動作するコントローラ22は、前記ガス流量制御部12、TEMAH流量制御部15の流量制御、バルブ12の開閉動作、圧力制御バルブ9の圧力調整動作、ヒータ4の温度調整、排出手段である真空ポンプ10の起動・停止動作、ボート回転機構7の回転速度調節を実行し、成膜レシピに基づいて制御する。
【0020】
次に、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いた成膜処理の一例として、半導体デバイスの製造工程の一つである、TEMAH及びO3を用いてHfO2膜を成膜する場合を説明する。ALD法は、ある成膜条件(温度、時間等)の下で、成膜に用いる少なくとも2種類の原料となる反応性ガスを1種類ずつ交互に基板上に供給し、1原子単位でウェーハ3の成膜面に吸着させ、表面反応を利用して成膜を行う手法である。このとき、膜厚の制御は、反応性ガスを供給するサイクル数で行う。
【0021】
<実施例1>
まず、上述したようにウェーハ3をボート2に充填し、反応室1に装入する。ボート2を反応室1に搬入後、後述する3つのステップを順次実行する。
【0022】
(ステップ1)
ステップ1では、バルブ11aを開け、TEMAH流量制御部15により0.01〜0.2g/minに流量を制御された液状のTEMAHを気化器16により気化させる。気化器の温度はTEMAHの気化温度以上、例えば150℃に設定する。この時、TEMAH供給配管21の温度を気化器16の温度以上、例えば150℃以上、TEMAHの加熱分解温度以下となるよう、チラー20の温度を設定し、TEMAH供給配管21内に冷媒を供給する。また、圧力制御バルブ9のバルブ開度は適正に調整され、反応室1内は所定の圧力に維持される。TEMAHガスにウェーハ30を晒す時間は30〜180秒間であり、このときヒータ4の温度はウェーハ3の温度が180〜250℃の範囲であって、例えば250℃になるように温度が設定される。TEMAHは、反応室1内に供給されることで、ウェーハ3上の下地膜などの表面部分と表面反応(化学吸着)される。
【0023】
(ステップ2)
TEMAHの供給後は、バルブ11aを閉め、TEMAHガスの供給を停止し、余剰分を排気(パージ)する。このとき圧力制御バルブ9は開の状態で保持し、真空ポンプ10によって排気し、残留TEMAHガスを反応室1内から排除する。このときN2等の不活性ガスを反応室1内へ供給すると、残留TEMAHガスの排気効率が向上する。
【0024】
(ステップ3)
バルブ11bを開け、ガス流量制御部12により所望の流量に制御されたO3をO3供給ノズル13により反応室1内へ供給される。このとき、排出手段としての真空ポンプ10により反応室1の排気が継続され、余剰分は排気配管14より排気される。この時、圧力制御バルブ9を適正に調整することで、反応室1内は所定の圧力に維持される。O3にウェーハ3を晒す時間は10〜120秒間であり、この時のウェーハ3の温度は、ステップ1のTEMAHガスの供給時と同じく180〜250℃の所定温度に維持するようにヒータ4の温度が設定される。O3の供給により、ウェーハ3の表面に化学吸着したTEMAHとO3との表面反応により、ウェーハ3上にHfO2膜が成膜される。成膜後、バルブ11bは閉の状態で保持し、真空ポンプ10により反応室1のガス雰囲気が真空排気される。この排気により、反応室1内に残留するO3が排除されるが、この際に、N2等の不活性ガスを反応室1内に供給した場合には、残留O3ガスの排気効率が大幅に向上する。上述したステップ1〜3を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すと、ウェーハ3上に所定の膜厚のHfO2膜が成膜される。
【0025】
上述の実施の形態によれば、TEMAHを反応室1内に供給するためのノズルを反応室1内に持たないため、TEMAHが反応室1内に供給する前の段階でヒータ4の熱を受け、TEMAHの加熱分解は起きない。しかし、TEMAHの反応室1内へ供給される導入口を反応管5の上部に接続する本発明の形態においても、TEMAH供給配管21はヒータ室6を経由する必要があるため、ヒータ室6の熱を受けてしまう。成膜温度を、250℃とした場合のヒータ室の温度を測定した結果、200〜205℃となるため、前記ヒータ室6内でTEMAHの加熱分解がおきてしまう。本発明では、前記の課題を解決するため、TEMAH供給配管21内の温度を気化器の温度以上、TEMAHの加熱分解温度以下とすることで、HfO2膜剥がれによるパーティクルを抑制し、膜厚均一性の良好な半導体製造装置を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上説明したように、本発明はHfO2膜を形成する縦型のバッチ式半導体製造装置において、パーティクルを抑制でき、且つ膜厚均一性の良好な半導体製造装置であり、半導体装置の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の半導体装置の構成図。
【図2】本発明の供給配管の構成図。
【図3】本発明の供給配管の断面図。
【図4】TEMAHの加熱分解度合いを示すグラフ。
【符号の説明】
【0028】
1 反応室
2 ボート
3 ウェーハ
4 ヒータ
5 反応管
6 ヒータ室
7 ボート回転機構
8 マニュホールド
9 圧力制御バルブ
10 真空ポンプ
11 バルブ
12 ガス流量制御部
13 O3供給ノズル
14 排気配管
15 TEMAH流量制御部
16 気化器
17 熱伝対
18 冷媒供給配管
19 冷媒排出配管
20 チラー
21 TEMAH供給配管
22 コントローラ
23 シールキャップ
24 ボート支持台
25 TEMAH流路
26 冷媒供給流路
27 冷媒排出流路
28 内管
29 外管
30 仕切り板
31 TEMAH流路
32 冷媒流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウェーハを積層した状態で収容する反応室と、前記ウェーハ及び前記反応室内の雰囲気を加熱する加熱手段と、TEMAHを反応室内へ供給する第1のガス供給手段と、TEMAHを気化するための気化手段と、O3を供給する第2のガス供給手段と、前記処理室内の雰囲気を排出する排出手段と、前記加熱手段と、前記第1のガス供給手段と、前記気化手段と、前記第2のガス供給手段と、前記排出手段を制御する制御部とを備え、
前記第1のガス供給手段の反応室内へのガス導入口は、積層されたウェーハよりも高い位置で開口し、前記第2のガス供給手段の反応室へのガス導入口は、前記反応室内に積層されたウェーハ側の方向を向き開口され、前記制御部により、TEMAHとO3を交互に供給、排気し、前記ウェーハ上にHfO2膜を形成する縦型のバッチ式半導体製造装置において、
前記気化手段から前記第1のガス供給手段のガス導入口までの配管温度を気化器の気化温度以上、TEMAHの加熱分解温度以下に制御し、TEMAHを反応室内に供給することを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−114188(P2010−114188A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284167(P2008−284167)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】