説明

半導体集積回路、動作周波数変更方法及びプログラム

【課題】LSI内部での動作モジュールの切り替え、動作周波数の変更時の急激な電流変動に伴うバウンスノイズにより、電源電圧を動作保証範囲内に抑える事が困難になってきている。また、LSI外部の電圧測定結果に基づき、LSIの動作モジュール、周波数切り替え等を実施する事が可能であるが、パッケージの影響を受け、正確な電圧測定が困難となる。
【解決手段】半導体集積回路に集積され、電源電圧の特定時間内の最大電圧ないし最小電圧を測定する測定手段(042)と、この測定の結果を保持する測定結果保持手段(041)と、測定結果保持手段(041)から測定の結果を読み出すための読み出し手段とを備える。このような構成を備えることで、半導体集積回路内での動作モジュールの切り替え、動作周波数の変更時にも、LSI電源電圧の変動を動作保証電圧範囲内に抑える事が可能となり、LSIの安定動作が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部電圧測定回路を備えた半導体集積回路(LSI)に関し、特に特定時間内の最大、最小電圧を測定可能な内部電圧測定回路を備えた半導体集積回路等に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスの向上により、半導体集積回路(LSI)の集積度、動作周波数は飛躍的に向上し、このLSIを使用した機器の処理能力も飛躍的に向上している。また、半導体プロセスの向上に伴い、電源電圧の低電圧化が進んでいる。
【0003】
LSIの電源電圧の低減に伴い、動作マージンの減少が問題となっている。例えば、動作保証電圧範囲を10%とした場合、2.5Vでは保証範囲が±250mVであるのに対し、1.0Vでは±100mV、0.8Vでは、±80mVとなり、動作マージンは低電圧化に伴い、減少している。
【0004】
一方で、LSIの集積度の向上によるLSI内部での動作モジュールの増加と動作周波数の向上により、LSI内部での消費電流は増加している。また、LSIの消費電力低減のため、動作モジュールの切り替え、動作周波数の変更等が必須技術となってきており、この時の急激な電流変化に伴う電源電圧のバウンスによる誤動作等が問題となってきている。
【0005】
図9に従来の動作周波数変更時の問題点を示す。バウンスノイズを低減するため、ポイントA,Bで動作周波数を序々に上げ、実際の動作周波数に上げるタイミングを示している。しかしながら、A,BのタイミングによってはA,B時の電流変化が重なり、動作電圧保証電圧範囲を越え、誤動作のおそれがある。
【0006】
例えば、特許文献1記載の発明では、テスト用パッドを設け、内部回路の電圧を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−181457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
LSI内部での動作モジュールの切り替え、動作周波数の変更時の急激な電流変動に伴うバウンスノイズにより、電源電圧を動作保証範囲内に抑える事が困難になってきている。また、LSI外部の電圧測定結果に基づき、LSIの動作モジュール、周波数切り替え等を実施する事が可能であるが、パッケージの影響を受け、正確な電圧測定が困難となる。本発明は係る問題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半導体集積回路は、半導体集積回路に集積され、電源電圧の特定時間内の最大電圧ないし最小電圧を測定する測定手段と、前記測定手段の測定の結果を保持する測定結果保持手段と、前記測定結果保持手段から測定の結果を読み出すための読み出し手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体集積回路内での動作モジュールの切り替え、動作周波数の変更時にも、LSI電源電圧の変動を動作保証電圧範囲内に抑える事が可能となり、LSIの安定動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のLSI内電圧測定手段の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る半導体集積回路の構成を示す図である。
【図3】本発明のクロックジェネレーターの構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における立ち上げシーケンスを示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る半導体集積回路の構成を示す図である。
【図6】本発明の電源コントロール回路の構成を示す図である。
【図7】本発明の電源制御信号とモジュール内の電源スイッチの関係を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における立ち上げシーケンスを示す図である。
【図9】立ち上げシーケンスにおける従来の問題点を示す図である。
【図10】本発明を用いた場合の問題点の改善を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0013】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態に係る半導体集積回路(LSI)について説明する。図1は、LSI内電圧測定手段(120)の構成を示す図であり、図2はLSIチップ(100)内の構成を示す図である。
【0014】
まず、図2を用いてLSIチップ(100)について説明する。図2においてLSIチップ(100)は、内部バス(110)、LSI内電圧測定手段(120)、クロックジェネレーター(130)、CPU(140)、n個の内部モジュール、モジュール0〜n(150−0〜150−n)、から構成される。151−0〜151−nはクロックジェネレーター(130)からのクロック出力であり、モジュール0〜モジュールnに接続される。クロックジェネレーター(130)により、モジュール0〜モジュールnのクロック制御が可能である。また、LSI内電圧測定手段(120)、クロックジェネレーター(130)、CPU(140)、及びモジュール0〜モジュールn(150−0〜150−n)は内部バス(110)で接続される。
【0015】
図1は、LSI内電圧測定手段(120)の構成を示す。LSI内電圧測定手段(120)は、データインターフェース手段(010)、電圧比較手段(020)、安定電圧保持手段(030)、電圧測定手段(040)から構成される。
【0016】
電圧比較手段(020)は、比較手段(022)、比較結果保持手段(021)から構成され、電圧測定手段(040)は、測定結果保持手段(041)、電圧測定手段(042)から構成される。
【0017】
データインターフェース手段(010)は、測定結果保持手段(041)のリセット及び保持結果の読み出しが可能である。ここで、リセットにより、測定結果保持手段(041)は標準電圧値が設定される。また、安定電圧保持手段(030)の保持内容の読み出し及び変更と、比較結果保持手段(021)の保持内容の読み出しが可能である。
【0018】
電圧測定手段(042)は、定常的に内部電圧のサンプリングを行い、測定結果は測定結果保持手段(041)に入力される。測定結果保持手段(041)では、最大電圧ないし最小電圧結果を保持する手段をもち、電圧測定手段(042)からの測定結果が保持している結果に対し、大きい、もしくは小さい場合に、それぞれ、最大、最小電圧を更新する。
【0019】
図3はクロックジェネレーター(130)の構成を示す図である。クロックジェネレーター(130)は、データインターフェース(260)、クロック周波数、クロックゲーティング設定手段(250)、クロック周波数変更手段(240)、クロックゲーティング手段0〜n(230−0〜230−n)より構成される。クロックジェネレーター(130)では、データインターフェース(260)を介してクロック周波数、クロックゲーティング設定手段(250)の設定が行われる。更に、クロック周波数、クロックゲーティング設定手段(250)の設定に基づき、クロック周波数変更手段(240)の発生周波数を変更する事が可能である。また、クロックゲーティング手段0〜n(230−0,230−n)への入力を制御する事で、特定モジュールへのクロック出力を制御可能である。
【0020】
以下、図4の立ち上げシーケンスに基づき、図1から図3の動作を説明する。図4は低消費電力化のため、スリープ状態にあるLSIチップを活性化するシーケンスを示している。
【0021】
(S000)では、外部からの割り込み等により、CPU(140)は立ち上げを開始する。
【0022】
(S001)では、CPU(140)は、内部バス(110)を介して、クロックジェネレーター(130)の設定を行い、動作周波数の変更もしくはクロックゲーティング解除によるモジュールの活性化を行う。
【0023】
(S002)では、CPU(140)は、測定結果保持手段(041)の最大、最小電圧保持結果のリセットを行い、最大、最小電圧の測定を開始させる。
【0024】
(S003)では、CPU(140)は一定時間ウェイトする(すなわち、特定時間内ウェイトする)。
【0025】
(S004)では、CPU(140)は、LSI内電圧測定手段(120)内の測定結果保持手段(041)の結果の読み出しを行う。
【0026】
(S005)では、CPU(140)は、読み出した測定結果を安定電圧レベルと比較し、電圧が不安定と判定した場合には、(S002)に戻り、最大、最小電圧の再測定を行う。
【0027】
(S006)では、全てのモジュールの活性化が終了し、動作周波数が実際に動作する周波数(実動作周波数)に達するまで、S001〜S005を繰り返し、実施する。
【0028】
(S007)では、全モジュールの活性化が終了し、実動作周波数に達した後、立ち上げシーケンスが終了し、実際の動作に移行する。
【0029】
以上、示したシーケンスにより、電圧を安定電圧に保ちながら、立ち上げシーケンスを実施する事が可能である。
【0030】
また、本シーケンスでは、安定電圧と、測定電圧の比較をCPU(140)で行った。しかしながら、LSI内電圧測定手段(120)の安定電圧保持手段(030)に安定電圧を設定し、比較結果保持手段(021)の結果を読み出す事で、安定電圧の判定を行う事が可能である。
【0031】
以上示したシーケンスにより、図10に示すように電源電圧が安定範囲に到達した後、他のモジュールの活性化もしくは、周波数の変更を行う事で、動作保証電圧範囲内に抑えながら、立ち上げ動作が可能である。また、本説明では、立ち上げシーケンスのみを説明したが、立ち下げシーケンスに関しても同様の手順により、動作保証電圧範囲を保ちながら立ち下げを行う事が可能である。
【0032】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る半導体集積回路(LSI)について説明する。図5はLSIチップ(300)内の構成を示した図である。
【0033】
図5において、LSIチップ(300)は、内部バス(310)、LSI内電圧測定手段(320)、電源コントロール(330)、CPU(340)、n個の内部モジュール、モジュール0〜n(350−0〜350−n)から構成される。351−0〜351−nは電源コントロール(330)からの制御信号であり、モジュール0〜モジュールnに接続される。電源コントロールにより、モジュール0〜モジュールnの電源スイッチの制御が可能である。
【0034】
LSI内電圧測定手段(320)、電源コントロール(330)、CPU(340)、及びモジュール0〜モジュールn(350−0〜350−n)は内部バス(310)で接続される。LSI内電圧測定手段(320)は、LSI内電圧測定手段(120)と同一構成である。
【0035】
図6は電源コントロール(330)の内部構成であり、電源コントロール(330)はデータインターフェース(410)、電源コントロール設定手段(420)から構成される。電源コントロール信号0〜n(351−0〜351−n)は、モジュール内の電源スイッチを制御するための信号であり、データインターフェース(410)を介した書き込みにより、電源コントロール設定手段(420)の設定を変更することで制御可能である。
【0036】
図7はモジュール0〜n(350−0〜350−n)と電源コントロール信号0〜n(351−0〜351−n)と、モジュール0〜n内の電源スイッチ(352−0〜352−n)の関係を示している。各モジュールは共通の電源(360)から電源供給されており、電源コントロール信号0〜n(351−0〜351−n)により、各モジュール内の電源スイッチ(352−0〜352−n)を制御することで、電源供給を制御可能である。
【0037】
以下、図8の立ち上げシーケンスに基づき、図5から図7の動作を説明する。図8は低消費電力化のため、スリープ状態にあるLSIチップを活性化するシーケンスを示している。
【0038】
(S100)では、外部からの割り込み等により、CPU(340)は立ち上げを開始する。
【0039】
(S101)では、CPU(340)は、内部バス(310)を介して、電源コントロール(330)の設定を行い、特定モジュールの電源スイッチをオンし、電源供給を開始する。
【0040】
(S102)では、CPU(340)は、測定結果保持手段の最大、最小電圧保持結果のリセットを行い、最大、最小電圧の測定を開始させる。
【0041】
(S103)では、CPU(340)は、一定時間ウェイトする。
【0042】
(S104)では、CPU(340)は、LSI内部電圧測定手段(320)内の測定結果保持手段(041)の結果の読み出しを行う。
【0043】
(S105)では、CPU(340)は、読み出した測定結果を安定電圧レベルと比較し、電圧が不安定と判定した場合には、(S002)に戻り、最大、最小電圧の再測定を行う。
【0044】
(S106)では、全てのモジュールの電源スイッチのオンが終了するまで、S001〜S005を繰り返し、実施する。
【0045】
(S107)では、全モジュールの活性化が終了し後、立ち上げシーケンスが終了し、実際の動作に移行する。
【0046】
以上、示したシーケンスにより、電圧を安定電圧に保ちながら、立ち上げシーケンスを実施する事が可能である。
【0047】
また、本実施の形態では、安定電圧と測定電圧の比較をCPU(340)で行ったが、LSI内電圧測定手段(320)の安定電圧保持手段(030)に安定電圧を設定し、比較結果保持手段(021)の結果を読み出す事で安定電圧の判定を行う事が可能である。
【0048】
以上、説明した手順により、LSI電源電圧を動作保証範囲内に保ちながら、LSI内部での動作モジュールの切り替え、動作周波数の変更(動作周波数変更)を行う事が可能となる。
【0049】
なお、上述の本発明の方法は、コンピュータに記憶されたプログラムによっても実現できることは当然である。
【符号の説明】
【0050】
010 データインターフェース手段、020 電圧比較手段、021 比較結果保持手段、022 比較手段、030 安定電圧保持手段、040 電圧測定手段、041 測定結果保持手段、042 電圧測定手段、100 半導体集積回路(LSI)、110 内部バス、120 LSI内電圧測定手段、130 クロックジェネレーター、140 CPU、150−0〜150−n 内部モジュール、151−0〜151−n クロック出力信号、210 クロック入力、230−0〜230−n クロックゲーティング手段、240 クロック周波数変更手段、250 クロック周波数、クロックゲーティング設定手段、260 データインターフェース、300 半導体集積回路(LSI)、310 内部バス、320 LSI内電圧測定手段、330 電源コントロール、340 CPU、350−0〜350−n 内部モジュール、351−0〜351−n 電源コントロール信号、352−0〜352−n 電源スイッチ、360 共通電源、410 データインターフェース、420 電源コントロール設定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路に集積され、電源電圧の特定時間内の最大電圧ないし最小電圧を測定する測定手段と、
前記測定手段の測定の結果を保持する測定結果保持手段と、
前記測定結果保持手段から測定の結果を読み出すための読み出し手段とを備えたことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体集積回路において、
安定電圧の範囲を保持するための安定電圧保持手段と、
前記安定電圧保持手段の安定電圧と前記測定結果保持手段の測定電圧とを比較するための比較手段と、
前記比較手段の比較の結果を保持するための保持手段と、
前記保持手段から比較の結果を読み出すための読み出し手段とを備えたことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項3】
半導体集積回路における動作周波数変更方法であって、
半導体集積回路の動作周波数を変更するための動作周波数変更工程と、
測定電圧と安定電圧との比較結果に基づいて動作周波数を変更する工程とを有することを特徴とする動作周波数変更方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法の各工程をコンピュータにて実施させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−212378(P2010−212378A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55604(P2009−55604)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】