説明

半導体集積回路

【課題】複数の無線通信チャンネルについて、PLL回路全体の動作特性に基づいて電圧制御発振器の精密なキャリブレーションを行う。
【解決手段】半導体集積回路は、高周波信号を生成する電圧制御発振器を含むPLL回路と、電圧制御発振器のトランジスタに選択的に負荷される複数のキャパシタと、複数の無線通信チャンネルについて電圧制御発振器の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を格納する格納部と、キャリブレーションモードにおいて、複数の無線通信チャンネルについてPLL回路のループ特性を測定することにより補正用キャパシタに関する情報を格納部に格納し、通常動作モードにおいて、選択された無線通信チャンネルに従って、格納部に格納されている情報を読み出すことにより補正用キャパシタを決定するキャリブレーション回路とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を行う無線マウス等の装置において、複数の無線通信チャンネルの内から選択された無線通信チャンネルの搬送周波数又は局部発振周波数を有する信号を生成する半導体集積回路等に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線通信チャンネルの内から選択された無線通信チャンネルの搬送周波数(例えば、2.4GHz周辺)を有する信号を用いて無線通信を行う装置においては、選択された無線通信チャンネルの搬送周波数又は局部発振周波数を有する信号(高周波信号)を生成するために、PLL(位相ロックドループ)回路が用いられる。PLL回路において、高周波信号を生成するのはVCO(電圧制御発振器)であるが、VCOの特性は、プロセス変動や温度変動によってばらつくので、これを補正するためにキャリブレーションが必要になる場合がある。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、送信用PLL回路を構成する発振回路を、受信用PLL回路を構成する発振回路や中間周波数用の発振回路と共に1つの半導体チップ上に形成する場合においても、広い周波数範囲に亘って発振動作することができると共に、送信用発振回路の使用バンドの選択を短時間に完了することができる通信用半導体集積回路が開示されている。
【0004】
この半導体集積回路においては、送信用PLL回路を構成する発振回路が複数のバンドで動作可能に構成され、送信用PLL回路を構成する発振回路の発振周波数を測定するカウンタと測定結果を記憶するレジスタとが設けられ、送信用PLL回路を構成する発振回路の使用バンドの決定が、受信用PLL回路を構成する発振回路や中間周波数用の発振回路の発振周波数を設定する値と上記記憶されている測定結果とに基づいて行われる。
【0005】
特許文献2には、送信用PLL回路を構成する発振回路(VCO)を、受信用PLL回路を構成する発振回路や中間周波数用の発振回路と共に1つの半導体チップ上に形成する場合においても、広い周波数範囲に亘って発振動作することができると共に、回路規模をそれほど増大させることなく周波数のバラツキを補正することができる通信用半導体集積回路(高周波IC)が開示されている。
【0006】
この半導体集積回路においては、送信用PLL回路を構成する発振回路が、受信用PLL回路を構成する発振回路や中間周波数用の発振回路と共に1つの半導体チップ上に形成されており、送信用PLL回路を構成する発振回路が複数のバンドで動作可能に構成され、かつ、送信用PLL回路を構成する発振回路の発振周波数を測定する回路と受信用PLL回路を構成する発振回路の発振周波数を測定する回路または中間周波数用の発振回路の発振周波数を測定する回路とが兼用される。
【0007】
特許文献1及び特許文献2によれば、送信用PLL回路を構成する発振回路の発振周波数を測定することにより、発振回路の使用バンドの決定が行われる。しかしながら、PLL回路の特性は、発振回路のみならず、PLL回路に含まれている全ての回路素子によって決定されるので、PLL回路全体の動作特性に基づいて発振回路のキャリブレーションを行うことが望まれる。また、特許文献2によれば、発振回路の発振周波数を測定する回路の規模の増大を抑制することができるものの、発振回路のキャリブレーションに要する時間を短縮することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−112750号公報(第1頁、図3)
【特許文献2】特開2004−112749号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、上記の点に鑑み、本発明の第1の課題は、複数の無線通信チャンネルの内から選択された無線通信チャンネルの搬送周波数又は局部発振周波数を有する信号を生成するために用いられる半導体集積回路において、複数の無線通信チャンネルについて、PLL回路全体の動作特性に基づいて電圧制御発振器の精密なキャリブレーションを行うことである。また、本発明の第2の課題は、複数の電圧制御発振器を内蔵する半導体集積回路において、複数の電圧制御発振器のキャリブレーションに要する時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る半導体集積回路は、無線通信において用いられる半導体集積回路であって、制御電圧に従う周波数で発振動作を行うことによって高周波信号を生成する電圧制御発振器を含むPLL回路と、電圧制御発振器のトランジスタに選択的に負荷される複数のキャパシタと、複数の無線通信チャンネルについて電圧制御発振器の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を格納する格納部と、キャリブレーションモードにおいて、複数の無線通信チャンネルについて、複数のキャパシタの内で電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを変化させながらPLL回路のループ特性を測定することにより、電圧制御発振器の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を格納部に格納し、通常動作モードにおいて、選択された無線通信チャンネルに従って、格納部に格納されている情報を読み出すことにより、複数のキャパシタの内で電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを決定するキャリブレーション回路とを具備する。
【0011】
ここで、PLL回路が、電圧制御発振器によって生成される高周波信号を設定された分周比で分周する分周回路と、分周回路によって分周された分周信号の位相と基準信号の位相とを比較して、電圧制御発振器の発振周波数を制御するための制御電圧を生成する制御電圧生成回路とをさらに含み、キャリブレーション回路が、キャリブレーションモードにおいて、複数の無線通信チャンネルについて、複数のキャパシタの内で電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを変化させながら制御電圧生成回路によって生成される制御電圧を測定することにより、電圧制御発振器の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を得るようにしても良い。
【0012】
また、本発明の第2の観点に係る半導体集積回路は、無線通信において用いられる半導体集積回路であって、制御電圧に従う周波数で発振動作を行うことによって第1の高周波信号を生成する第1の電圧制御発振器と、制御電圧に従う周波数で発振動作を行うことによって第2の高周波信号を生成する第2の電圧制御発振器と、第1の電圧制御発振器によって生成される第1の高周波信号を設定された分周比で分周する第1の分周回路と、第2の電圧制御発振器によって生成される第2の高周波信号を設定された分周比で分周する第2の分周回路と、第1の分周回路によって分周された分周信号と第2の分周回路によって分周された分周信号との内の一方を選択する選択回路と、選択回路によって選択された分周信号の位相と基準信号の位相とを比較して、第1又は第2の電圧制御発振器の発振周波数を制御するための制御電圧を生成する制御電圧生成回路と、第1及び第2の電圧制御発振器のトランジスタに選択的に負荷される複数のキャパシタと、キャリブレーションモードにおいて、第2の分周回路によって分周された分周信号を選択するように選択回路を制御して第2の電圧制御発振器を含むPLL回路を形成すると共に、第1の電圧制御発振器に所定の制御電圧を印加してオープンループで発振動作を行わせ、複数のキャパシタの内で第1の電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを変化させながら、第1の分周回路によって分周された分周信号の周波数の検出結果に基づいて、第1の電圧制御発振器の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を得る第1のキャリブレーションと、複数のキャパシタの内で第2の電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを変化させながら、PLL回路のループ特性に基づいて、第2の電圧制御発振器の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を得る第2のキャリブレーションとを並行して実行するキャリブレーション回路とを具備する。
【0013】
ここで、キャリブレーション回路が、第2の電圧制御発振器に対して第1のキャリブレーションを実行することにより、複数のキャパシタの内で第2の電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタの候補を選択した後に、第2の電圧制御発振器に対して第2のキャリブレーションを実行することにより、キャパシタの候補の内で第2の電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを決定するようにしても良い。
【0014】
あるいは、キャリブレーション回路が、第2のキャリブレーションにおいて、複数のキャパシタの内で第2の電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを変化させながら制御電圧生成回路によって生成される制御電圧を測定することにより、第2の電圧制御発振器の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を得るようにしても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の観点によれば、複数の無線通信チャンネルについて、電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを変化させながらPLL回路のループ特性を測定することにより、電圧制御発振器の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を格納部に格納し、選択された無線通信チャンネルに従って、格納部に格納されている情報を読み出すことにより、電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを決定するので、複数の無線通信チャンネルについて、PLL回路全体の動作特性に基づいて電圧制御発振器の精密なキャリブレーションを行うことができる。
【0016】
また、本発明の第2の観点によれば、第1の電圧制御発振器に対してオープンループによる粗いキャリブレーションを実行すると共に、第2の電圧制御発振器に対してPLL回路のループ特性に基づく精密なキャリブレーションを並行して実行することにより、複数の電圧制御発振器のキャリブレーションに要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路の構成を示すブロック図。
【図2】プリチャージの効果を示す波形図。
【図3】図1に示すVCOの構成例を示す回路図。
【図4】レジスタに格納されるキャパシタに関する情報の例を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路の構成を示すブロック図。
【図6】本発明におけるキャリブレーション動作の例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路の構成を示すブロック図である。この半導体集積回路は、無線通信を行う無線マウス等の装置において、複数の無線通信チャンネルの内から選択された無線通信チャンネルの搬送周波数又は局部発振周波数を有する信号を生成する。
【0019】
図1に示す半導体集積回路は、発振回路10と、位相比較回路21と、チャージポンプ22と、ループフィルタ23と、プリチャージ電圧発生回路24と、送信ブロック30と、受信ブロック40と、セレクタ(選択回路)51〜53と、電圧検出回路60と、ロック検出回路70と、制御回路80と、レジスタ(格納部)90とを含んでいる。なお、電圧検出回路60とロック検出回路70との内の一方を省略しても良い。
【0020】
発振回路10は、水晶振動子を用いて発振動作を行うことにより、所定の周波数を有する基準信号を生成する。ただし、発振回路10に接続される水晶振動子は、半導体集積回路の外部に設けられる。あるいは、発振回路10を省略して、半導体集積回路の外部から基準信号を供給するようにしても良い。
【0021】
送信ブロック30は、セレクタ51を介して供給される制御電圧に従う周波数で発振動作を行うことによって送信用の搬送周波数を有する信号(高周波信号)TXを生成する電圧制御発振器(VCO)31と、VCO31によって生成される信号TXを制御回路80によって設定された分周比で分周する可変分周回路33とを含んでいる。
【0022】
また、受信ブロック40は、セレクタ52を介して供給される制御電圧に従う周波数で発振動作を行うことによって受信用の搬送周波数又は局部発振周波数を有する信号(高周波信号)RXを生成する電圧制御発振器(VCO)41と、VCO41によって生成される信号RXを制御回路80によって設定された分周比で分周する可変分周回路43とを含んでいる。
【0023】
制御回路80の制御の下で、セレクタ53は、送信モードにおいて、送信ブロック30の可変分周回路33から出力される分周信号を選択し、受信モードにおいて、受信ブロック40の可変分周回路43から出力される分周信号を選択する。送信ブロック30及び受信ブロック40は、常時動作していても良いが、必要のないときには一方の動作を停止しても良い。
【0024】
このようにして、送信モードにおいては、送信ブロック30が、位相比較回路21〜ループフィルタ23と共にPLL回路を構成し、受信モードにおいては、受信ブロック40が、位相比較回路21〜ループフィルタ23と共にPLL回路を構成する。ここで、位相比較回路21〜ループフィルタ23は、可変分周回路33又は43によって分周された分周信号の位相と基準信号の位相とを比較して、VCO31又は41の発振周波数を制御するための制御電圧を生成する制御電圧生成回路に相当する。
【0025】
位相比較回路21は、発振回路10から供給される基準信号の位相とセレクタ53によって選択された分周信号の位相とを比較し、それらの位相差に応じた位相差信号を出力する。チャージポンプ22は、位相比較回路21から出力される位相差信号に基づいて、ループフィルタ23に電流を供給する。ループフィルタ23は、ローパス特性を有しており、チャージポンプ22から供給される電流を電圧に変換することにより、VCO31又は41を制御するための制御電圧を生成する。
【0026】
制御回路80の制御の下で、セレクタ51は、送信モードにおいて、PLL回路の動作開始から所定の期間内においては、プリチャージ電圧発生回路24によって発生されるプリチャージ電圧を制御電圧として選択し、PLL回路の動作開始から所定の時間が経過した後においては、ループフィルタ23から出力される制御電圧を選択する。また、セレクタ52は、受信モードにおいて、PLL回路の動作開始から所定の期間内においては、プリチャージ電圧発生回路24によって発生されるプリチャージ電圧を制御電圧として選択し、PLL回路の動作開始から所定の時間が経過した後においては、ループフィルタ23から出力される制御電圧を選択する。これにより、PLL回路が動作を開始してからロックするまでの時間(引き込み時間)を短縮することができる。
【0027】
図2は、プリチャージの効果を示す波形図である。図2において、横軸は時間を示し、縦軸はVCOの制御電圧を示している。プリチャージを行わない場合には、PLL回路が動作を開始してからロックするまでに相当な時間を要する。一方、プリチャージを行う場合には、目的の周波数を与える目標電圧に近いプリチャージ電圧を予めVCOに印加しておくことにより、PLL回路が動作を開始してからロックするまでの時間が大幅に短縮される。
【0028】
図1に示すような構成により、PLL回路は、分周信号の位相と基準信号の位相とを比較して制御電圧を生成し、制御電圧を用いてVCO31又は41の発振動作を制御することによって、基準信号の位相に同期した位相を有する信号TX又はRXを生成する。ここで、送信ブロック30の可変分周回路33における分周比をN:1に設定することにより、可変分周回路33が信号TXを1/Nに分周するので、送信モードにおいて、基準信号の周波数をN倍に逓倍した信号TXが得られる。また、受信ブロック40の可変分周回路43における分周比をN:1に設定することにより、可変分周回路43が信号RXを1/Nに分周するので、受信モードにおいて、基準信号の周波数をN倍に逓倍した信号RXが得られる。制御回路80は、送信モード及び受信モードにおいて、選択された無線通信チャンネルに従って可変分周回路33及び43の分周比を設定することにより、信号TX及びRXの周波数をそれぞれ設定する。
【0029】
送信ブロック30のVCO31によって生成される信号(搬送波)TXを送信データに基づいて変調し、変調された搬送波をアンテナに供給することにより、送信データを表す電波が外部に送信される。なお、変調回路の一部とVCO31とを一体的に構成しても良い。一方、外部から送信される電波をアンテナによって受信し、受信ブロック40のVCO41によって生成される信号(局部発振信号)RXを用いて受信信号をダウンコンバートして復調することにより、受信データが得られる。なお、局部発振周波数は、受信信号の搬送周波数と同一でも良いし、異なっていても良い。
【0030】
図3は、図1に示すVCOの構成例を示す回路図である。このVCOは、電源電位VDDに一端が接続されたインダクタLA及びLBと、インダクタLA及びLBの他端にドレインがそれぞれ接続されたNチャネルMOSトランジスタQA及びQBと、トランジスタQA及びQBのソースと電源電位VSS(図3においては、接地電位とする)との間に接続された定電流源CSと、制御電圧入力端子とトランジスタQA及びQBのドレインとの間にそれぞれ接続されたバリキャップ(バラクタダイオード)VA及びVBとを含んでいる。なお、インダクタLA及びLBは、半導体集積回路に外付けするようにしても良い。
【0031】
トランジスタQAのドレインは、出力端子A及びトランジスタQBのゲートに接続され、トランジスタQBのドレインは、出力端子B及びトランジスタQAのゲートに接続されている。VCOの発振周波数を調整するために、トランジスタQAのドレインには、キャパシタアレイを構成する複数のキャパシタ(図3においては、3つのキャパシタCA1〜CA3を示す)の一端が接続され、それらのキャパシタの他端と電源電位VSSとの間には、複数のスイッチ回路(図3においては、3つのスイッチ回路SA1〜SA3を示す)が接続されている。スイッチ回路は、例えば、NチャネルMOSトランジスタによって構成される。スイッチ回路がオンしたときに、そのスイッチ回路に接続されているキャパシタが、選択的にトランジスタQAのドレインと電源電位VSSとの間に負荷される。
【0032】
また、トランジスタQBのドレインにも、キャパシタアレイを構成する複数のキャパシタ(図3においては、3つのキャパシタCB1〜CB3を示す)の一端が接続され、それらのキャパシタの他端と電源電位VSSとの間には、複数のスイッチ回路(図3においては、3つのスイッチ回路SB1〜SB3を示す)が接続されている。スイッチ回路がオンしたときに、そのスイッチ回路に接続されているキャパシタが、選択的にトランジスタQBのドレインと電源電位VSSとの間に負荷される。
【0033】
図3に示す例においては差動増幅型のVCOが用いられているので、キャパシタCA1〜CA3の容量値はキャパシタCB1〜CB3の容量値とそれぞれ同一であり、スイッチ回路SA1〜SA3はスイッチ回路SB1〜SB3とそれぞれ同時にオン/オフするように制御される。しかしながら、本発明はこれに限定されず、シングル型のVCOを用いても良い。
【0034】
トランジスタQA及びQBのドレインと電源電位VSSとの間に負荷されたキャパシタは、インダクタLA及びLBやバリキャップVA及びVBと共に共振回路を構成する。トランジスタQA及びQBに負荷されるキャパシタの数が少ない場合には、VCOの発振周波数が高くなり、トランジスタQA及びQBに負荷されるキャパシタの数が多い場合には、VCOの発振周波数が低くなる。
【0035】
3つのキャパシタCA1〜CA3(CB1〜CB3)の容量値が互いに異なる場合には、制御回路80がスイッチ回路SA1〜SA3(SB1〜SB3)のオン/オフを制御することにより、2=8通りの発振周波数を実現することができる。従って、複数の無線通信チャンネルの搬送周波数に対応して、VCOの発振周波数を補正するキャリブレーションを行うことが可能である。
【0036】
図1に示すプリチャージ電圧発生回路24、電圧検出回路60、ロック検出回路70、及び、制御回路80は、VCOの発振周波数を補正するキャリブレーションを行うためのキャリブレーション回路を構成する。制御回路80は、実際に無線通信を行う通常動作モードに先立つキャリブレーションモードにおいて、無線通信において使用される複数の無線通信チャンネルについて、上記複数のキャパシタの内でVCOのトランジスタに負荷されるキャパシタを変化させながらPLL回路のループ特性を測定することにより、VCOの発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報をレジスタ90に格納しておく。VCOの発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報としては、VCOのトランジスタに負荷されるキャパシタを特定するための情報、又は、VCOのトランジスタに負荷されるキャパシタの容量値等が用いられる。
【0037】
PLL回路のループ特性は、電圧検出回路60又はロック検出回路70を用いて測定される。電圧検出回路60は、PLL回路が動作している際にループフィルタ23から出力される制御電圧を検出し、検出結果を制御回路80に出力する。制御回路80は、スイッチ回路SA1〜SA3及びSB1〜SB3のオン/オフを制御することにより、トランジスタQA及びQBに負荷されるキャパシタCA1〜CA3及びCB1〜CB3の状態を8通りに変化させながら、ループフィルタ23から出力される制御電圧を測定し、例えば、ループフィルタ23から出力される制御電圧が目標電圧に最も近くなったときにトランジスタQA及びQBに負荷されているキャパシタに関する情報をレジスタ90に格納する。
【0038】
一方、ロック検出回路70は、発振回路10から出力される基準信号と、送信ブロック30又は受信ブロック40から出力される分周信号とを比較することにより、それらの位相差に基づいて、PLL回路がロックしているか否かを検出する。例えば、ロック検出回路70は、基準信号と分周信号との位相差が所定の期間に亘って所定値以下である場合に、PLL回路がロックしたことを検出する。制御回路80は、トランジスタQA及びQBに負荷されるキャパシタCA1〜CA3及びCB1〜CB3の状態を8通りに変化させながら、PLL回路が動作を開始してからロックするまでの時間(引き込み時間)を測定し、例えば、引き込み時間が最も短くなったときにトランジスタQA及びQBに負荷されているキャパシタに関する情報をレジスタ90に格納する。
【0039】
このような測定を複数の無線通信チャンネルについて行うことにより、複数の無線通信チャンネルについて、VCOの発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報が、レジスタ90に格納される。図4は、レジスタに格納されるキャパシタに関する情報の例を示す図である。複数の無線通信チャンネル1、2、3、・・・について、キャパシタCA1〜CA3がトランジスタQAに負荷されるか否かが、「1」(負荷される)、又は、「0」(負荷されない)で示されている。キャパシタCB1〜CB3がトランジスタQBに負荷されるか否かについても、同じ情報に基づいて判断することができる。
【0040】
なお、キャリブレーションモードにおける測定は、無線通信フォーマットで規定されている全ての無線通信チャンネルについて行う必要はなく、その内から選択された複数の無線通信チャンネルについて測定を行い、測定によって得られた最適な容量値を補間又は流用することにより、他の無線通信チャンネルについて発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を求めても良い。
【0041】
次に、本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路のキャリブレーション動作の例について、図1及び図3を参照しながら詳しく説明する。本実施形態において、キャリブレーションは、半導体集積回路に電源電圧が投入された際、又は、無線通信の開始前、又は、所定の時間おきに実行される。以下においては、送信ブロック30のキャリブレーションについて説明するが、受信ブロック40のキャリブレーションもこれと同様に行われる。
【0042】
キャリブレーションモードにおいて、制御回路80は、所定のプリチャージ電圧を発生するようにプリチャージ電圧発生回路24を制御すると共に、選択された無線通信チャンネルに対応して、可変分周回路33における分周比を設定する。
【0043】
さらに、例えば、VCO31のトランジスタに負荷される容量が大きいほど制御電圧が高くなる場合には、制御回路80が、スイッチ回路SA1〜SA3及びSB1〜SB3をオンさせることにより、VCO31のトランジスタQAにキャパシタCA1〜CA3を負荷すると共に、トランジスタQBにキャパシタCB1〜CB3を負荷する。
【0044】
次に、制御回路80は、送信ブロック30を含むPLL回路の動作を開始させる。その際に、制御回路80は、PLL回路の動作開始から所定の期間内においては、プリチャージ電圧発生回路24によって発生されるプリチャージ電圧を制御電圧として選択し、PLL回路の動作開始から所定の時間が経過した後においては、ループフィルタ23から出力される制御電圧を選択するように、セレクタ51を制御する。電圧検出回路60は、制御回路80の制御の下で、さらに所定の時間が経過した後にループフィルタ23から出力される制御電圧を検出して、検出結果を制御回路80に出力する。
【0045】
さらに、制御回路80は、スイッチ回路SA1〜SA3及びSB1〜SB3のオン/オフを制御することにより、トランジスタQA及びQBに負荷される容量を段階的に減少させながら、ループフィルタ23から出力される制御電圧を測定する。ループフィルタ23から出力される制御電圧は段階的に低下するので、制御回路80は、ループフィルタ23から出力される制御電圧が目標電圧に最も近くなったときにトランジスタQA及びQBに負荷されているキャパシタに関する情報をレジスタ90に格納する。もっと簡単な方法としては、制御回路80は、ループフィルタ23から出力される制御電圧が目標電圧よりも初めて低下したときにトランジスタQA及びQBに負荷されているキャパシタに関する情報をレジスタ90に格納するようにしても良い。
【0046】
実際に無線通信を行う通常動作モードにおいて、制御回路80は、選択された無線通信チャンネルに従って、レジスタ90に格納されている情報を読み出すことにより、キャパシタCA1〜CA3及びCB1〜CB3の内でVCO31のトランジスタに負荷されるキャパシタを決定する。制御回路80は、スイッチ回路SA1〜SA3及びSB1〜SB3のオン/オフを制御することにより、キャパシタCA1〜CA3の内から決定されたキャパシタをVCO31のトランジスタQAに負荷すると共に、キャパシタCB1〜CB3の内から決定されたキャパシタをVCO31のトランジスタQBに負荷する。なお、レジスタ90に格納されている情報によっては、VCO31のトランジスタにキャパシタが負荷されない場合もあり得る。このような動作により、PLL回路全体の動作特性に基づいてキャリブレーションを行うことができる。
【0047】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路の構成を示すブロック図である。第2の実施形態に係る半導体集積回路においては、図1に示す第1の実施形態に係る半導体集積回路における送信ブロック30及び受信ブロック40の替わりに送信ブロック30a及び受信ブロック40aが用いられ、さらに、セレクタ54及び周波数検出回路100が追加されている。その他の点に関しては、第1の実施形態と同様である。
【0048】
送信ブロック30aは、セレクタ51を介して供給される制御電圧に従う周波数で発振動作を行うことによって送信用の搬送周波数を有する信号(高周波信号)TXを生成する電圧制御発振器(VCO)31と、VCO31によって生成される信号TXを所定の分周比で分周する分周回路(プリスケーラ)32と、分周回路32によって分周された信号を制御回路80によって設定された分周比で分周する可変分周回路33とを含んでいる。分周回路32は、例えば、VCO31によって生成される信号TXを2分周する。
【0049】
また、受信ブロック40aは、セレクタ52を介して供給される制御電圧に従う周波数で発振動作を行うことによって受信用の搬送周波数又は局部発振周波数を有する信号(高周波信号)RXを生成する電圧制御発振器(VCO)41と、VCO41によって生成される信号RXを所定の分周比で分周する分周回路(プリスケーラ)42と、分周回路42によって分周された信号を制御回路80によって設定された分周比で分周する可変分周回路43とを含んでいる。分周回路42は、例えば、VCO41によって生成される信号TXを2分周する。
【0050】
周波数検出回路100は、発振回路10から供給される基準信号を分周する分周回路101と、分周回路101によって分周された分周信号のパルス数をカウントすることにより一定の周波数検出期間を定めるカウンタ102と、セレクタ54によって選択された分周信号のパルス数をカウントするカウンタ103とを含んでいる。カウンタ103は、カウンタ102によって定められた周波数検出期間において分周信号のパルス数をカウントし、制御回路80は、カウンタ103によってカウントされた分周信号のパルス数に基づいて分周信号の周波数を算出する。ここで、周波数検出回路100は、プリチャージ電圧発生回路24、電圧検出回路60、ロック検出回路70、及び、制御回路80と共に、キャリブレーション回路を構成する。
【0051】
第2の実施形態においては、VCO31及び41の内の一方に対する第1のキャリブレーションと、VCO31及び41の内の他方に対する第2のキャリブレーションとが、並行して行われる。これにより、複数のVCOを内蔵する半導体集積回路において、複数のVCOのキャリブレーションに要する時間を短縮することができる。
【0052】
ここで、第1のキャリブレーションとは、周波数検出回路100を用いて、オープンループで発振動作を行うVCOの周波数を測定することにより、VCOの発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を得る粗いキャリブレーションであり、第2のキャリブレーションとは、電圧検出回路60又はロック検出回路70を用いて、VCOを含むPLL回路のループ特性を測定することにより、VCOの発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を得る精密なキャリブレーションである。
【0053】
さらに、VCO31及び41に対して、粗いキャリブレーションと精密なキャリブレーションとを交互に実施することにより、粗いキャリブレーションにおける測定結果を精密なキャリブレーションにおいて利用することができる。即ち、粗いキャリブレーションによって、VCOの発振周波数を補正するためのキャパシタの候補が選択された後に、精密なキャリブレーションによって、選択された候補の中から、VCOの発振周波数を補正するためのキャパシタが決定される。このようにすれば、キャリブレーションの精度を維持しつつ、複数のVCOのキャリブレーションに要する時間を短縮することができる。
【0054】
以下においては、最初に、送信ブロック30aに含まれているVCO31の粗いキャリブレーションが行われ、次に、送信ブロック30aに含まれているVCO31の精密なキャリブレーションと受信ブロック40aに含まれているVCO41の粗いキャリブレーションとが並行して行われる場合について説明する。
【0055】
キャリブレーションモードにおいて、制御回路80は、所定のプリチャージ電圧を発生するようにプリチャージ電圧発生回路24を制御すると共に、選択された無線通信チャンネルに応じて可変分周回路33及び43の分周比を設定する。また、制御回路80は、VCO31にプリチャージ電圧を印加するようにセレクタ51を制御することにより、VCO31にオープンループで発振動作を行わせ、可変分周回路33によって分周された第1の分周信号を選択するようにセレクタ54を制御する。
【0056】
制御回路80は、図3に示す複数のキャパシタの内でVCO31のトランジスタに負荷されるキャパシタを変化させながら第1の分周信号の周波数を検出し、その検出結果に基づいて、VCO31の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を得る粗いキャリブレーションを実行する。例えば、制御回路80は、第1の分周信号の周波数が基準信号の周波数に最も近くなったときにVCO31のトランジスタに負荷されているキャパシタに関する情報をレジスタ90に格納する。
【0057】
これにより、制御回路80は、図3に示す複数のキャパシタの内で、VCO31のトランジスタに負荷されるキャパシタの候補を選択する。キャパシタの候補としては、例えば、第1の分周信号の周波数が基準信号の周波数に最も近くなったときにVCO31のトランジスタに負荷されているキャパシタと、その前後の2種類の容量を実現する2種類のキャパシタとが選択される。
【0058】
ここで、第1の分周信号の周波数の検出は、周波数検出回路100によって行われる。あるいは、可変分周回路33及び43を高速カウンタ形式として、分周信号からベースバンド信号を抜き出し、ベースバンド信号の周波数に基づいて、VCOの発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を得るようにしても良い。
【0059】
次に、制御回路80は、図5に示すように、VCO41にプリチャージ電圧を印加するようにセレクタ52を制御することにより、VCO41にオープンループで発振動作を行わせ、可変分周回路43によって分周された第2の分周信号を選択するようにセレクタ54を制御すると共に、可変分周回路33によって分周された第1の分周信号を選択するようにセレクタ53を制御してVCO31を含むPLL回路を形成する。
【0060】
制御回路80は、選択されたキャパシタの候補の内でVCO31のトランジスタに負荷されるキャパシタを変化させながら、VCO31を含むPLL回路のループ特性に基づいて、VCO31の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を得る精密なキャリブレーションを実行する。これにより、選択されたキャパシタの候補の内で、VCO31のトランジスタに負荷されるキャパシタが最終的に決定される。PLL回路のループ特性の測定方法は、第1の実施形態におけるのと同様であり、VCOに対してプリチャージを行うことにより測定時間を短縮しても良い。
【0061】
それと同時に、制御回路80は、図3に示す複数のキャパシタの内でVCO41のトランジスタに負荷されるキャパシタを変化させながら第2の分周信号の周波数を検出し、その検出結果に基づいて、VCO41の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を得る粗いキャリブレーションを実行する。例えば、制御回路80は、第2の分周信号の周波数が基準信号の周波数に最も近くなったときにVCO41のトランジスタに負荷されているキャパシタに関する情報をレジスタ90に格納する。
【0062】
これにより、制御回路80は、図3に示す複数のキャパシタの内で、VCO41のトランジスタに負荷されるキャパシタの候補を選択する。キャパシタの候補としては、例えば、第2の分周信号の周波数が基準信号の周波数に最も近くなったときにVCO41のトランジスタに負荷されているキャパシタと、その前後の2種類の容量を実現する2種類のキャパシタとが選択される。
【0063】
その後、VCO41に対して、精密なキャリブレーションが実行される。このような測定を複数の無線通信チャンネルについて行うことにより、複数の無線通信チャンネルについて、VCOの発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報が、レジスタ90に格納される。
【0064】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路におけるキャリブレーション動作の例を従来例と比較して示すタイミングチャートである。図6の(a)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路におけるキャリブレーション動作の例を示しており、粗いキャリブレーションを「CAL1」で表し、精密なキャリブレーションを「CAL2」で表す。図6の(b)は、単純に精密なキャリブレーションを実行した場合の従来例を示している。
【0065】
この例においては、無線通信フォーマットにおいて40チャンネルが規定されているものとし、その内から、第0チャンネル(0ch)、第19チャンネル(19ch)、及び、第39チャンネル(39ch)の3つのチャンネルについて、図5に示す送信ブロック30aのVCO31及び受信ブロック40aのVCO41に対するキャリブレーションを行うものとする。残りのチャンネルについては、上記3つのチャンネルについて得られたキャパシタの容量値を補間することにより、VCO31及び41のトランジスタに負荷されるキャパシタを決定することができる。また、各々のVCOにおいて、互いに異なる容量を有する3つのキャパシタを選択的にトランジスタに負荷するものとする。従って、VCOのトランジスタに負荷される容量は8通りとなり、それらを「C0」〜「C7」で表す。
【0066】
本発明の場合には、図6の(a)に示すように、キャリブレーションが開始されると、第0チャンネル(0ch)について、送信ブロック30aのVCO31に対して粗いキャリブレーション(CAL1)が実行される。その結果、送信ブロック30aのVCO31の発振周波数を最適にする容量がC6であることが測定されると、VCO31のトランジスタに負荷される容量の候補として3種類の容量C5〜C7が選択される。
【0067】
次に、第0チャンネル(0ch)について、送信ブロック30aのVCO31に対する精密なキャリブレーション(CAL2)と、受信ブロック40aのVCO41に対する粗いキャリブレーション(CAL1)とが、並行して行われる。その結果、送信ブロック30aのVCO31のトランジスタに負荷される容量が、先に選択された3種類の容量C5〜C7の中から決定される。また、受信ブロック40aのVCO41の発振周波数を最適にする容量がC5であると測定されると、VCO41のトランジスタに負荷される容量の候補として、3種類の容量C4〜C6が選択される。
【0068】
次に、第19チャンネル(19ch)について、送信ブロック30aのVCO31に対する粗いキャリブレーション(CAL1)と、第0チャンネル(0ch)について、受信ブロック40aのVCO41に対する精密なキャリブレーション(CAL2)とが、並行して行われる。その結果、送信ブロック30aのVCO31の発振周波数を最適にする容量がC1であると測定されると、VCO31のトランジスタに負荷される容量の候補として、3種類の容量C0〜C2が選択される。また、受信ブロック40aのVCO41のトランジスタに負荷される容量が、先に選択された3種類の容量C4〜C6の中から決定される。
【0069】
次に、第19チャンネル(19ch)について、送信ブロック30aのVCO31に対する精密なキャリブレーション(CAL2)と、受信ブロック40aのVCO41に対する粗いキャリブレーション(CAL1)とが、並行して行われる。その結果、送信ブロック30aのVCO31のトランジスタに負荷される容量が、先に選択された3種類の容量C0〜C2の中から決定される。また、受信ブロック40aのVCO41の発振周波数を最適にする容量がC4であると測定されると、VCO41のトランジスタに負荷される容量の候補として、3種類の容量C3〜C5が選択される。
【0070】
次に、第39チャンネル(39ch)について、送信ブロック30aのVCO31に対する粗いキャリブレーション(CAL1)と、第19チャンネル(19ch)について、受信ブロック40aのVCO41に対する精密なキャリブレーション(CAL2)とが、並行して行われる。その結果、送信ブロック30aのVCO31の発振周波数を最適にする容量がC6であると測定されると、VCO31のトランジスタに負荷される容量の候補として、3種類の容量C5〜C7が選択される。また、受信ブロック40aのVCO41のトランジスタに負荷される容量が、先に選択された3種類の容量C3〜C5の中から決定される。
【0071】
次に、第39チャンネル(39ch)について、送信ブロック30aのVCO31に対する精密なキャリブレーション(CAL2)と、受信ブロック40aのVCO41に対する粗いキャリブレーション(CAL1)とが、並行して行われる。その結果、送信ブロック30aのVCO31のトランジスタに負荷される容量が、先に選択された3種類の容量C5〜C7の中から決定される。また、受信ブロック40aのVCO41の発振周波数を最適にする容量がC2であると測定されると、VCO41のトランジスタに負荷される容量の候補として、3種類の容量C1〜C3が選択される。
【0072】
最後に、第39チャンネル(39ch)について、受信ブロック40aのVCO41に対する精密なキャリブレーション(CAL2)が行われる。その結果、受信ブロック40aのVCO41のトランジスタに負荷される容量が、先に選択された3種類の容量C1〜C3の中から決定される。これによって、キャリブレーションが終了する。精密なキャリブレーションにおいては、PLL回路が所望の周波数の信号を安定的に出力するまでに、即ち、ロック状態になるまでに、かなりの時間を要し、さらに、無線通信チャンネルの搬送周波数やキャパシタの容量値をパラメータとして多数回の測定を行う必要があるが、本実施形態によれば、粗いキャリブレーションと精密なキャリブレーションとを並行して行い、粗いキャリブレーションにおいて容量値の候補を絞り込むことができるので、キャリブレーションに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0073】
一方、従来例の場合には、図6の(b)に示すように、キャリブレーションが開始されると、送信ブロック30aのVCO31に対して、第0チャンネル(0ch)、第19チャンネル(19ch)、及び、第39チャンネル(39ch)について精密なキャリブレーションが実行される。精密なキャリブレーションは、8種類の容量C0〜C7の全てについて行う必要がある。その間は、受信ブロック40aのVCO41に対してキャリブレーションを実行することができない。
【0074】
次に、受信ブロック40aのVCO41に対して、第0チャンネル(0ch)、第19チャンネル(19ch)、及び、第39チャンネル(39ch)について精密なキャリブレーションが実行される。精密なキャリブレーションは、8種類の容量C0〜C7の全てについて行う必要がある。その間は、送信ブロック30aのVCO31に対してキャリブレーションを実行することができない。このように、従来例においては、無線通信チャンネルの搬送周波数やキャパシタの容量値をパラメータとして、精密なキャリブレーションが繰り返して行われていたので、キャリブレーションのために多大な時間を費やしていた。
【0075】
以上の実施形態においては、発振回路を構成する振動子が水晶振動子である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、セラミック発振子や、SAW(surface acoustic wave:表面弾性波)共振子を用いることができる。
【符号の説明】
【0076】
10 発振回路、 21 位相比較回路、 22 チャージポンプ、 23 ループフィルタ、 24 プリチャージ電圧発生回路、 30、30a 送信ブロック、 40、40a 受信ブロック、 31、41 VCO、 32、42 分周回路、 33、43 可変分周回路、 51〜54 セレクタ、 60 電圧検出回路、 70 ロック検出回路、 80 制御回路、 90 レジスタ、 100 周波数検出回路、 101 分周回路、 102、103 カウンタ、 QA、QB トランジスタ、 LA、LB インダクタ、 VA、VB バリキャップ、 CS 定電流源、 CA1〜CA3、CB1〜CB3 キャパシタ、 SA1〜SA3、SB1〜SB3 スイッチ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信において用いられる半導体集積回路であって、
制御電圧に従う周波数で発振動作を行うことによって高周波信号を生成する電圧制御発振器を含むPLL回路と、
前記電圧制御発振器のトランジスタに選択的に負荷される複数のキャパシタと、
複数の無線通信チャンネルについて前記電圧制御発振器の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を格納する格納部と、
キャリブレーションモードにおいて、前記複数の無線通信チャンネルについて、前記複数のキャパシタの内で前記電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを変化させながら前記PLL回路のループ特性を測定することにより、前記電圧制御発振器の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を前記格納部に格納し、通常動作モードにおいて、選択された無線通信チャンネルに従って、前記格納部に格納されている情報を読み出すことにより、前記複数のキャパシタの内で前記電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを決定するキャリブレーション回路と、
を具備する半導体集積回路。
【請求項2】
無線通信において用いられる半導体集積回路であって、
制御電圧に従う周波数で発振動作を行うことによって第1の高周波信号を生成する第1の電圧制御発振器と、
制御電圧に従う周波数で発振動作を行うことによって第2の高周波信号を生成する第2の電圧制御発振器と、
前記第1の電圧制御発振器によって生成される第1の高周波信号を設定された分周比で分周する第1の分周回路と、
前記第2の電圧制御発振器によって生成される第2の高周波信号を設定された分周比で分周する第2の分周回路と、
前記第1の分周回路によって分周された分周信号と前記第2の分周回路によって分周された分周信号との内の一方を選択する選択回路と、
前記選択回路によって選択された分周信号の位相と基準信号の位相とを比較して、前記第1又は第2の電圧制御発振器の発振周波数を制御するための制御電圧を生成する制御電圧生成回路と、
前記第1及び第2の電圧制御発振器のトランジスタに選択的に負荷される複数のキャパシタと、
キャリブレーションモードにおいて、前記第2の分周回路によって分周された分周信号を選択するように前記選択回路を制御して前記第2の電圧制御発振器を含むPLL回路を形成すると共に、前記第1の電圧制御発振器に所定の制御電圧を印加してオープンループで発振動作を行わせ、前記複数のキャパシタの内で前記第1の電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを変化させながら、前記第1の分周回路によって分周された分周信号の周波数の検出結果に基づいて、前記第1の電圧制御発振器の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を得る第1のキャリブレーションと、前記複数のキャパシタの内で前記第2の電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを変化させながら、前記PLL回路のループ特性に基づいて、前記第2の電圧制御発振器の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を得る第2のキャリブレーションとを並行して実行するキャリブレーション回路と、
を具備する半導体集積回路。
【請求項3】
前記PLL回路が、前記電圧制御発振器によって生成される高周波信号を設定された分周比で分周する分周回路と、前記分周回路によって分周された分周信号の位相と基準信号の位相とを比較して、前記電圧制御発振器の発振周波数を制御するための制御電圧を生成する制御電圧生成回路とをさらに含み、
前記キャリブレーション回路が、キャリブレーションモードにおいて、前記複数の無線通信チャンネルについて、前記複数のキャパシタの内で前記電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを変化させながら前記制御電圧生成回路によって生成される制御電圧を測定することにより、前記電圧制御発振器の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を得る、請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記キャリブレーション回路が、前記第2の電圧制御発振器に対して第1のキャリブレーションを実行することにより、前記複数のキャパシタの内で前記第2の電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタの候補を選択した後に、前記第2の電圧制御発振器に対して第2のキャリブレーションを実行することにより、前記キャパシタの候補の内で前記第2の電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを決定する、請求項2記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記キャリブレーション回路が、第2のキャリブレーションにおいて、前記複数のキャパシタの内で前記第2の電圧制御発振器のトランジスタに負荷されるキャパシタを変化させながら前記制御電圧生成回路によって生成される制御電圧を測定することにより、前記第2の電圧制御発振器の発振周波数を補正するためのキャパシタに関する情報を得る、請求項2記載の半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−166473(P2011−166473A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27324(P2010−27324)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】