説明

単一加熱サイクルで2つ以上の異なる成形性材料から成形品を作るための方法

単一の加熱または成形サイクルで異なる成形温度を有する2つ以上の異なる成形性材料から成形品を作るための方法。成形性材料のうち1つ(20、120)が基準材料として選択され、残りの成形性材料(22、122)は、成形性材料の全てが実質的に同時にそれぞれの成形温度に達するように改変される。残りの成形性材料(22、122)の各々は、成形性材料の力率を調整するようにこれと適切な量の添加剤を混合することによって改変されることが望ましい。その後成形性材料全てが流動成形装置(10、110)に入れられ、成形品を成形するために成形性材料を横切る交番誘電電界が与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には流動成形の分野に関し、より特定的には、単一の加熱または成形サイクルで異なる成形温度を有する2つ以上の異なる成形性材料から成形品を作るための特異な流動成形工程に関する。
【背景技術】
【0002】
成形性プラスティック材料からプラスティック部品を成形するために誘電加熱を採用する各種の流動成形装置は既知である。これらの装置の全てにおいて、プラスティック材料が効果的にキャパシタの誘電体になるように、プラスティック材料は2つの電極の間に置かれる。電極の間に発生する交番電界は、電界の高速で変化する極性によってプラスティック材料の中の極性分子が引き付けられ跳ね除けられるようにする。この分子運動から生じる摩擦はプラスティック材料の質量全体を加熱して、それによって成形品を形成する。
【0003】
プラスティック部品を作るための技術上既知の1つの流動成形装置は、上部電極及び下部電極を含み、上部金型及び下部金型がその間に配置される。上部及び下部金型は、中にプラスティック材料を入れることができる成形キャビティを形成する。電流磁力線はプラスティック材料の表面に沿った全ての点でプラスティック材料と直交し、それによって材料全体に均等な温度を与えることが望ましい。さらに、プラスティック材料を均等に加熱するために上部電極と下部電極との間の距離が一定であるように、上部電極及び下部電極は製造されるプラスティック部品の形態に実質的に合致する。動作中、成形キャビティを横切って交番電界が与えられ、それによってプラスティック部品が成形される。このタイプの流動成形装置の一例が、米国特許第4,268,238号において開示されている。
【0004】
プラスティック部品を作るための技術上既知の別の流動成形装置は、上部電極及び下部電極を含み、その間に金型が配置される。金型は、金型と上部電極の間に入れられるプラスティック材料から非均等プラスティック部品を成形できるように、非均等の厚みを有する。プラスティック材料全体を均等に加熱するために、プラスティック部品の異なる厚み区画の全てを通じて一定のキャパシタンスが維持される。これは、プラスティック材料と金型との間の比誘電率を等化することによって、できれば添加剤を用いて金型の比誘電率を変動させることによって、可能になる。その代わりに、プラスティック部品の異なる厚み区画において上部電極と下部電極との間の間隔を修正することによって、キャパシタンスを等化することができる。この種の流動成形装置の一例が米国特許第4,441,876号において開示されている。
【0005】
発泡プラスティック部品を作るための技術上既知の別の流動成形装置は、上部電極及び下部電極を含み、その間に金型が配置される。プラスティックフォーム材料を金型のキャビティの中に入れて、加熱サイクル中これを圧縮することができる。加熱が終了した後、圧縮されたプラスティックフォーム材料はこれが冷却するとき金型の形状に合わせて膨張することができるので、それによって発泡プラスティック部品が成形される。この種の流動成形装置の一例が米国特許第4,524,037号において開示されている。
【0006】
発泡プラスティック部品を作るための技術上既知のさらに別の流動成形装置は、上部電極及び下部電極を含み、二個構成金型がその間に配置される。プラスティックフォーム材料を隔膜と下部金型との間に置けるように金型は隔膜を支える。まず隔膜を湾曲させることによって金型からほぼ全ての空気を排出するように流体が金型の隔膜より上に注入される。流体は、その後加熱サイクル中金型から引き出されて、金型の中が真空となり、それによってプラスティックフォーム材料の膨張を助ける。この種の装置の一例が米国特許第4,851,167号において開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の流動成形装置は全てこれまで単一プラスティック材料で作られるプラスティック部品を製造するために利用されてきた。異なるプラスティック材料の2つ以上の層から成るプラスティック部品を作るためには、別個の成形工程で各層を製造し、その後層を接合してプラスティック部品を構成する必要がある。従って、単一の加熱または成形サイクルで異なるプラスティック材料の2つ以上の層からプラスティック部品を製造することができる成形工程が、技術上必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、単一の加熱または成形サイクルで異なる成形温度を有する2つ以上の異なる成形性材料から成形品を作るための方法に関するものである。概略的には、成形性材料のうちの1つが基準材料として選択され、残りの成形性材料は、成形性材料の全てが実質的に同時にそれぞれの成形温度に達するように改変(modify)される。成形性材料の力率を調整するために適切な量の添加剤と混合することによって残りの成形性材料の各々が改変されることが望ましい。その後全ての成形性材料が流動成形装置に入れられ、この装置によって、成形品を成形するために成形性材料を横切って交番電界が与えられる。
【0009】
1つの方法例においては、成形品は、流動成形装置の上部金型と下部金型との間に置かれる2つの異なる成形性材料から作られる。この例において、第一の成形性材料が基準材料として選ばれる。従って、第一の成形性材料の力率を用いてその成形時間(すなわち第一の成形性材料がその成形温度に達するために掛かる時間)が計算される。
【0010】
次に、第一の成形性材料の成形時間を用いて、第二の成形性材料に要求される力率が計算される。第二の成形性材料に要求される力率は、第一の成形性材料がその成形温度に達するのと実質的に同時に第二の成形性材料がその成形温度に達することができるようにする力率である。両方の成形性材料の成形時間を等化することによって、同じ加熱または成形サイクルで成形品を成形することができる。
【0011】
上部金型及び下部金型に要求される力率を計算するためにも第一の成形性材料の成形時間を使用することができる。この例において、上部金型及び下部金型の温度は、成形品全体を一貫して硬化するように選択される。従って、上部金型に要求される力率は、加熱サイクルの終了時に第一の成形性材料が接触する上部金型の表面が第一の成形性材料の成形温度と実質的に同じ温度に達することができるようにする力率である。同様に、下部金型に要求される力率は、加熱サイクルの終了時に第二の成形性材料と接触する下部金型の表面が第二の成形性材料の成形温度と実質的に同じ温度に達することができるようにする力率である。その代わりに、フォーム材料を含む成形性材料の場合、硬化スキンが成形品の表面に形成されるように、成形性材料と接触する金型の温度を下げることができる。
【0012】
次に、それぞれの要求される力率に合わせるために第二の成形性材料、上部金型及び下部金型の力率が各々調整される。これらの材料の各々について、添加剤を選択し、力率が要求される力率と実質的に合致するように材料と混合される添加剤の量を計算し、算定された量の添加剤を材料と混合することによって、力率が調整される。最後に、第一及び第二の成形性材料が流動成形装置の上部金型と下部金型の間に置かれる。動作中、交番電界が第一及び第二の成形性材料を横切って加えられて、これらの材料は一緒に流れて相互に接合して、それによって成形品を形成する。
【0013】
概略的には、本発明の方法を用いて、異なる成形性材料が別個の層に配列される(すなわち各成形性材料が成形品の別個の層を含む)成形品を作ることができる。これに替えて、この方法を用いて、異なる成形性材料が混合される成形品を作ることができる。さらに、本発明の方法を用いて、1つまたはそれ以上の層が異なる成形性材料の混合物を含む別個の層を持つ成形品を作ることができる。
【0014】
本発明の方法は、成形品の製造に関係する加工時間及びコストを実質的に減少するように単一の加熱または成形サイクルで様々な成形性材料から成形物を作ることができるようにすることが有利である。さらに、この方法を用いて、様々な成形性材料の混合から成形品を作り、それによって改良された物理的特性と新規の化学組成を有する成形品の製造を可能にすることができる。
【0015】
本発明の方法について、本出願の一部である添付図面を参照して以下の詳細な説明においてさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、単一の加熱または成形サイクルで異なる成形温度を有する2つ以上の異なる成形性材料から成形品を作るための方法に関する。この方法に従って、成形性材料のうちの1つが基準材料として選択され、残りの成形性材料は、成形性材料の全てが実質的に同時にそれぞれの成形温度に達するように改変される。その後、成形性材料は流動成形装置の中に置かれ、成形品を形成するために成形性材料を横切って交番電界が与えられる。多様な様々な業界において使用される多様な様々なタイプの成形品を製造するために本発明の方法を使用できることが、当業者には判るだろう。
【0017】
本出願において使用される場合、「成形性材料」と言う言葉は、熱可塑性物質及び熱硬化性物質を含めて(ただし、これに限定されない)流動成形装置の金型内部で定められた形状を形成することができるように加熱することができる材料を意味する。成形性材料として使用するのに適する熱可塑性物質の例としては、ABS、アセタール、アクリル(プレキシガラス)、アクリル酸メチル、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレンビニルアルコール、エチレンアクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル(PVC)、プラスチゾル、ポリフッ化ビニリデン、サーリンアイオノマー、熱可塑性ウレタン及び熱可塑性オレフィンが含まれる。成形性材料として使用するのに適する熱硬化性物質の例としては、アクリル、エポキシ、フェノール、ポリエステル、メラミンホルムアルデヒド、複合材料及びゴムが含まれる。当然、本発明に従って他の熱可塑性及び熱硬化性物質も使用できる。一部の成形性材料は十分な極性を持たず、従って必要な極性(本発明の方法を用いてほぼどのような成形性材料も成形できるようにする)を得るために1つまたはそれ以上の極性添加剤と混合できることが判るはずである。
【0018】
一部のタイプの成形品の場合、フォーム材料を形成するために成形性材料と発泡剤及び(または)架橋剤を混合することが望ましい場合がある。成形性材料として使用するのに適するフォーム材料の例には、架橋PE−EVAフォーム、PVCフォーム、ビニルニトリルフォーム及びネオプレンフォームが含まれる。当然、本発明に従って他のフォーム材料を使用することができる。
【0019】
上記の成形性材料の各々は、それに関連する成形温度及び成形時間を有することが判るはずである。本出願において使用される場合、「成形温度」とは、成形性材料が流動成形装置の金型内で定められた形状を形成するように成形性材料が加熱される温度を意味する。例えば、熱可塑性物質の成形温度は一般にその溶融温度であり、熱硬化性物質の成形温度は、一般にその硬化温度である。また、フォーム材料の成形温度は、一般にフォーム材料が発泡しかつ(または)架橋するときの温度である。さらに、本出願において使用される場合、「成形時間」は、成形性材料がその成形温度に達するために必要とされる時間量(これは、下で説明する通り成形性材料の力率を調整することによって変えることができる)を意味する。
【0020】
図1を参照すると、本発明の方法は、非フォーム材料から成形品を作るために使用することができる全体が番号10で示される流動成形装置の図を参照して説明される(フォーム材料から成形品を作るために使用される装置については図2を参照して下に説明する)。流動成形装置10は、上部電極12及び下部電極14を含み、その両方が電極の間に交番電界を発生するよう機能する電磁エネルギー源(図には示されていない)に接続される。1MHzから500MHzまでの範囲の周波数で交番電界を発生することができ、10MHzから100MHzまでの範囲の周波数で交番電界を発生することが望ましく、26MHzか40MHzでこれを発生することが最も望ましい。装置10には、上部金型16及び下部金型18も含まれ、これらが一緒になってその間に成形キャビティを形成する。
【0021】
図に示される例において、第一の成形性材料20及び第二の成形性材料22(両方とも非フォーム材料を含む)は、第一の成形性材料20が上部金型16の底面と接触し、かつ第二の成形性材料22が下部金型18の上面と接触するように、成形キャビティ内に置かれる。当然、成形キャビティ内に2つを超える成形性材料を置くことができることが判るはずである。動作中、交番誘電電界が第一及び第二の成形性材料20及び22を横切って与えられて、この2つの材料は一緒に流れて相互に接合することによって、成形品を成形する。
【0022】
さらに図1を参照すると、上部電極12と下部電極14との間には4つの層、すなわち上部金型16(層1)、第一の成形性材料20(層2)、第二の成形性材料22(層3)及び下部金型18(層4)があることが判る。これらの4つの材料層に関して下記の一般式を確立することができる(これは、本発明の方法を説明するために下で使用される)。これらの式において下付き文字iは、特定の材料の層の番号を示すことが判るはずである(すなわち、下付き文字1は上部金型16(層1)を示し、下付き文字2は第一の成形性材料20(層2)を示し、下付き文字3は第二の成形性材料22(層3)を示し、下付き文字4は下部金型18(層4)を示す)。
【0023】
まず、各材料層のキャパシタンスを下記の式で表すことができる:
【数1】

ここで、
i=ピコファラッドで表される層iのキャパシタンス
εi=層iの比誘電率
i=平方インチで表される層iの面積
i=インチで表される層iの厚み
【0024】
4つの材料層全ての等価キャパシタンスは下記の式で与えられる:
【数2】

ここで、
Ceq=ピコファラッドで表される層の等価キャパシタンス
C1=ピコファラッドで表される層1のキャパシタンス
C2=ピコファラッドで表される層2のキャパシタンス
C3=ピコファラッドで表される層3のキャパシタンス
C4=ピコファラッドで表される層4のキャパシタンス
【0025】
次に、4つの全ての材料層の等価キャパシタンスと関連付けられる等価リアクタンスを下記の式で求めることができる:
【数3】

ここで、
eq=オームで表される層の等価リアクタンス
f=ヘルツで表される誘電電界の周波数
eq=ファラッドで表される等価キャパシタンス
【0026】
各材料層の抵抗は、その層の力率と等価リアクタンスの積に等しい。従って、数式(3)から得られる等価リアクタンスを用いて、各材料層の抵抗を下記の通りに表すことができる:
【数4】

ここで、
i=オームで表される層iの抵抗
pfi=層iの力率
f=ヘルツで表される誘電電界の周波数
i=ファラッドで表される層iのキャパシタンス
【0027】
次に、4つの材料層全てを通って上部電極12と下部電極14との間を流れる電流を下記の式で表すことができる:
【数5】

ここで、
I=アンペアで表される電流
V=ボルトで表される電極間の電圧
eq=オームで表される等価リアクタンス
eq=オームで表される等価抵抗
【0028】
4つの全ての材料層の等価抵抗が等価リアクタンスに比べて小さいと仮定すると、数式(5)を下記のとおり単純化できる:
【数6】

【0029】
さらに、誘電電界の給与によって各材料層において分散する仕事率を下記の式によって表すことができる:
【数7】

ここで、
i=誘電電界に起因するワットで表される層iの仕事率
i=オームで表される層iの抵抗
I=アンペアで表される電流
【0030】
数式(4)と(7)を組み合わせることによって、誘電電界の給与によって各材料層において分散する仕事率を下記の通りに表すことができる:
【数8】

【0031】
次に、加熱サイクル中の各材料層の温度の上昇を下記の式によって表すことができる:
【数9】

ここで、
ΔTi=摂氏で表される層iの温度上昇
i=誘電電界に起因するワットで表される層iの仕事率
i=秒で表される層iの成形時間
i=層iの比熱
i=層iの比重
i=インチで表される層iの厚み
【0032】
数式(8)と(9)を組み合わせて、その結果得られる式をtiについて解くことによって、各材料層の成形時間を下記の式によって表すことができる:
【数10】

【0033】
数式(10)をpfiについて解くことによって各材料層の力率を下記のとおりに表すことができる:
【数11】

【0034】
本発明の方法に従って、材料層のうちの1つが基準材料として選択される。この例において、第一の成形性材料20が基準材料として選択される(4つの材料層のうちいずれを基準材料として選択しても良いことが判るはずであるが)。数式(10)を用いて、第一の成形性材料20の成形時間(t2)(すなわち、第一の成形性材料20がその成形時間に達するために掛かる時間)を計算することができる。式(10)から、第一の成形性材料20の成形時間(t2)が下記の因子の関数であることが判る:第一の成形性材料20がその成形温度に達するために必要とされる温度上昇(ΔT2);第一の成形性材料20の比熱(h2)、第一の成形性材料20の比重(p2)、第一の成形性材料20の厚み(d2)及びキャパシタンス(C2)、第一の成形性材料20の力率(pf2)、上部電極12と下部電極14との間を流れる電流(I)(数式(6)から算出することができる)、及び誘電電界の周波数(f)。
【0035】
次に、第一の成形性材料20の成形時間(t2)を用いて、第二の成形性材料22に要求される力率(pf3)が計算される。第二の成形性材料に要求される力率(pf3)は、第一の成形性材料20がその成形温度に達するのと実質的に同時に第二の成形性材料22がその成形温度に達することができるようにする力率である。両方の成形性材料の成形時間を等化することによって、同じ加熱または成形サイクルで成形品を成形することができる。
【0036】
数式(11)を用いて、第二の成形性材料22に要求される力率(pf3)を計算することができる。数式(11)から、第二の成形性材料22に要求される力率(pf3)が下記の因子の関数であることが判る:第二の成形性材料22がその成形温度に達するために必要とされる温度上昇(ΔT3);第二の成形性材料22の比熱(h3)、第二の成形性材料22の比重(p3)、第二の成形性材料22の厚み(d3)及びキャパシタンス(C3)、誘電電界の周波数(f)、第一の成形性材料20の成形時間(t2)、上部電極12と下部電極14との間を流れる電流(I)(数式(6)から算出することができる)。
【0037】
上部金型16に要求される力率(pf1)及び下部金型18に要求される力率(pf4)を計算するためにも第一の成形材料20の成形時間(t2)が使用される。この例において、成形品全体が一貫して硬化するように上部金型16及び下部金型18の温度が選択されることが望ましい。従って、上部金型16に要求される力率(pf1)は、加熱サイクルの終了時に上部金型16の底面が第一の成形性材料20の成形温度と実質的に同じ温度に達することができるようにする力率である。同様に、下部金型18に要求される力率(pf4)は、加熱サイクルの終了時に下部金型18の上面が第二の成形性材料22の成形温度と実質的に同じ温度に達することができるようにする力率である。それぞれ第一の成形性材料20及び第二の成形性材料22の成形温度と実質的に同じ温度に達する上部金型16の底面及び下部金型の上面の厚みは1/8インチであることが望ましい。当然、本発明に従って他の値の厚みを使用することができる(厚みの値が大きいと、より多くのRFエネルギーを使用することにより、加熱サイクルの終了時に金型の冷却により長い時間を必要とするが)。
【0038】
数式(11)を用いて、上部金型16に要求される力率(pf1)及び下部金型18に要求される力率(pf4)を計算することができる。数式(11)から、上部金型16に要求される力率(pf1)が下記の因子の関数であることが判る:上部金型16が第一の成形性材料20の成形温度に達するために必要とされる温度上昇(ΔT1);上部金型16の比熱(h1)、上部金型16の比重(p1)、上部金型16の厚み(d1)及びキャパシタンス(C1)、誘電電界の周波数(f)、第一の成形性材料20の成形時間(t2)、及び上部電極12と下部電極14との間を流れる電流(I)(数式(6)から算出することができる)。同様に、下部金型18に要求される力率(pf4)は下記の因子の関数である:下部金型18が第二の成形性材料22の成形温度に達するために必要とされる温度上昇(ΔT4);下部金型18の比熱(h4)、下部金型18の比重(p4)、下部金型18の厚み(d4)及びキャパシタンス(C4)、誘電電界の周波数(f)、第一の成形性材料20の成形時間(t2)、及び上部電極12と下部電極14との間を流れる電流(I)(数式(6)から算出することができる)。
【0039】
次に、それぞれに要求される力率に合うように第二の成形性材料、上部金型16及び下部金型18の力率が各々調整される。技術上既知の各種の手段によってこれらの材料の各々の力率を調整することができ、力率は、添加剤を選択し、力率が要求される力率に実質的に合致するように材料と混合される添加剤の量を計算し、算定された量の添加剤を材料と混合することによって調整されることが望ましい。選択された添加剤は材料の力率を増減するために使用され、その他には材料の特性を変えないことが望ましいことが判るはずである。当然、加工時間をより速くするために、材料の力率を増大する機能を持つ極性添加剤または帯電防止剤を使用することが望ましいだろう(最も成形時間が速い材料が基準材料として選択されると、残りの材料のそれぞれの力率を増大するように残りの材料を改変しなければならない、と仮定して)。また、2つまたはそれ以上の添加剤の混合物を使用することが望ましい場合がある(温度の関数としての添加剤の各々の力率に応じて)ことも、当業者には判るだろう。
【0040】
材料の各々について添加剤が選択されたら、下記の一般式を用いて、力率が要求される力率と実質的に合致するように材料と混合される添加剤の量を計算することができる。まず、材料/添加剤混合物の力率当量を下記の式で表すことができる:
【数12】

ここで、
pfeq=材料/添加剤混合物の力率当量
pfmaterial=改変される材料の力率
pfadditive=選択された添加剤の力率
material=改変される材料の厚み
additive=選択された添加剤の厚み
εmaterial=改変される材料の比誘電率
εadditive=選択された添加剤の比誘電率
【0041】
次に、xが混合物に占める添加剤の容積パーセンテージとし、(100−x)が混合物に占める材料の容積パーセンテージとする。dadditiveをxに置き換えかつdmaterialを(100−x)に置き換えると、数式(12)を下記のとおりに書き換えることができる:
【数13】

【0042】
次に、xについて数式(13)を解き、下記の通りに書き換えることができる:
【数14】

【0043】
このように、数式(14)を用いて、混合物の力率当量(pfeq)が上で計算された第二の成形性材料22に要求される力率(pf3)と実質的に合致するように(すなわち、pfeq=pf3)、第二の成形性材料22と混合される選択された添加剤の量を計算することができる。同様に、数式(14)を用いて、混合物の力率当量(pfeq)が上で計算された上部金型16に要求される力率(pf1)と実質的に合致するように(すなわち、pfeq=pf1)、上部金型と混合される選択された添加剤の量を計算することができる。さらに、数式(14)を用いて、混合物の力率当量(pfeq)が上で計算された下部金型18に要求される力率(pf4)と実質的に合致するように(すなわち、pfeq=pf4)、下部金型18と混合される選択された添加剤の量を計算することができる。
【0044】
最後に、第二の成形性材料22、上部金型16及び下部金型18の力率がそれぞれの要求される力率に合致するように各々調整された後、第一及び第二の成形性材料20及び22は流動成形装置10の上部金型16と下部金型18との間に置かれる。動作中、交番誘電電界が第一及び第二の成形性材料20及び22(並びに上部及び下部金型16及び18)を横切って与えられ、それによって材料は実質的に同時にそれぞれの成形温度に達する。従って、本発明の方法に従えば、単一の加熱または成形サイクルで2つの異なる成形性材料で成形品を成形することができる。
【0045】
上に示される分析は、成形時間、要求される力率及び要求される力率を得るために各種材料層と混合される添加剤の量についての値の近似値を示すことが判るはずである。ただし、もっと正確な値が望ましい場合、隣接する材料層間の熱交換を考慮に入れる必要がある。言い換えると、上の式は、誘電電界の給与により各材料層において分散する仕事率(Pi)を含むが、加熱中に1つの材料層から別の材料層へ伝達される熱を考慮に入れていない。
【0046】
隣接する層i−1によって材料層iにおいて発生する熱を下記の通りに表すことができる:
【数15】

ここで、
i,i-1=ワットで表される層i−1からの熱交換による層iの仕事率
i-1=ワット/平方インチ/インチ/℃で表される層i−1の熱伝導率
i=ワット/平方インチ/インチ/℃で表される層iの熱伝導率
i-1=摂氏温度で表される層i−1の温度
i=摂氏温度で表される層iの温度
i=インチで表される層iの厚み
【0047】
同様に、隣接する層i+1によって材料層iにおいて発生する熱を下記の通りに表すことができる:
【数16】

ここで、
i,i+1=ワットで表される層i+1からの熱交換による層iの仕事率
i+1=ワット/平方インチ/インチ/℃で表される層i+1の熱伝導率
i=ワット/平方インチ/インチ/℃で表される層iの熱伝導率
i+1=摂氏温度で表される層i+1の温度
i=摂氏温度で表される層iの温度
i=インチで表される層iの厚み
【0048】
従って、数式(16)と(17)を組み合わせて、隣接する層i−1及びi+1の両方によって材料層iにおいて発生する熱を下記のとおりに表すことができる:
【数17】

【0049】
次に、数式(8)と(17)を組み合わせることによって、誘電電界の給与及び隣接する材料層の間の熱交換によって材料層iにおいて分散する合計仕事率を下記のとおりに表すことができる:
【数18】

【0050】
上述の分析に関連して(数式(8)の代わりに)数式(18)を用いて、第一の成形性材料20の成形時間、第二の成形性材料22、上部金型16及び下部金型18に要求される力率及び要求される力率を得るために第二の成形性材料22、上部金型16及び下部金型18と混合される添加剤の量のより正確な値を計算できることが、当業者には判るだろう。
【0051】
上述の分析は、材料層の各々の力率、比誘電率、比熱及び熱伝導率が温度に応じて変動する事実を考慮に入れていないことが判るはずである。従って、成形時間、要求される力率及び要求される力率を得るために各種材料層と混合される添加剤の量についてさらに正確な値を得るために、材料層の各々について定期的間隔(たとえば1秒間隔)で上記の式を計算する必要がある。こうすることによって、特定の時点での材料層の各々の温度に対応する力率、比誘電率、比熱及び熱伝導率の値を使用することができる。分析を単純化するために、これらの計算を行うようコンピュータをプログラムすることが望ましい。
【0052】
さらに、上述の分析は上部金型16と下部金型18との間に付加的成形性材料が置かれるときずっと複雑になることが判るはずである。特に、合計n個の材料層がある場合、誘電電界の給与によって毎秒特定の材料層iにおいて分散する合計仕事率を下記の式によって表すことができる:
【数19】

ここで、
i=ワットで表される誘電電界に起因する層iの仕事率
i=ワットで表される層iと層(i+1)及び層(i−1)との間の熱交換
V=ボルトで表される電極間の電圧
f=ヘルツで表される誘電電界の周波数
pfi=層iの力率
i=インチで表される層iの厚み
εi=層iの比誘電率
pf1,2...n=指定される層の力率
1,2...n=インチで表される指定される層の厚み
ε1,2...n=指定される層の比誘電率
i-1=ワット/平方インチ/インチ/℃で表される層i−1の熱伝導率
i+1=ワット/平方インチ/インチ/℃で表される層i+1の熱伝導率
i=ワット/平方インチ/インチ/℃で表される層iの熱伝導率
i-1=摂氏温度で表される層i−1の温度
i+1=摂氏温度で表される層i+1の温度
i=摂氏温度で表される層iの温度
【0053】
誘電電界の給与及び隣接する材料層間の熱交換によって毎秒特定の材料層iにおいて分散する合計仕事率は下記のようにも表すことができる:
【数20】

【0054】
上記の分析に関連して数式(19)または(20)を用いて基準材料層の成形時間、残りの材料層に要求される力率及び要求される力率を得るために残りの材料層の各々と混合される添加剤の量を計算できることが当業者には判るだろう。分析は、(上述の通り)コンピュータを用いて定期的間隔で計算を行うことによって、材料層の各々の力率、比誘電率、比熱及び熱伝導率が温度に応じて変動することを考慮に入れることが望ましい。
【0055】
さらに、フォーム材料に関しては、上記の分析は、発泡剤がその分解温度に達するとき(多くの発泡剤の場合150℃である)生じる発熱または吸熱反応を考慮に入れていないことが判るはずである。この発熱または吸熱反応によって生じる熱の変化は、時間によって変動し、望む場合にはこれを上記の式に加えることができる。発熱または吸熱反応は加熱サイクルの終了間際に生じ、大量のエネルギーを伴わないので、この反応の影響はあまり大きくないことが、当業者には判るだろう。
【0056】
次に図2を参照すると、フォーム材料及び非フォーム材料から成形品を作るために使用できる流動成形装置の図が、全体として番号110で示されている。流動成形装置110は、上部電極112及び下部電極114を含み、その両方が、電極間に交番電界を発生することができる電磁エネルギー源(図には示されていない)に接続される。この場合にも、1MHzから500MHzまでの範囲の周波数で交番電界を発生させることができ、10MHzから100MHzまでの範囲の周波数で発生させることが望ましく、26MHzか40MHzで発生させることが最も望ましい。装置110には上部金型または隔壁116及び下部金型118も含まれ、これらが一体となってその間に成形キャビティを形成する。
【0057】
図に示される例において、第一の成形性材料120(フォーム材料を含む)及び第二の成形性材料122(非フォーム材料を含む)は、第一の成形性材料120が隔膜116と隣接しかつ第二の成形性材料122が下部金型118の上面と接触するように成形キャビティ内に置かれる。当然、成形キャビティ内に2つを超える成形性材料を置くことができることも判るはずである。動作中、第一及び第二の成形性材料120及び122を横切って交番誘電電界が与えられ、隔膜116を圧縮することによって成形キャビティ内で第一の成形性材料120が膨張するとき第一の成形性材料に均等な圧力を与えるように、装置110の隔壁116の上へ導電性流体が注入される。加熱サイクル終了時、第一及び第二の成形性材料120及び122は相互に接合されて、成形品を形成する。
【0058】
図1の流動成形装置10及び成形性材料20及び22を参照して上述した分析が図2の流動成形装置110及び成形性材料120及び122にも当てはまることが判るはずである(下の例1及び2において詳細に示される通り)。流動成形装置10及び110が本発明の方法に従って成形品を作るために使用することができる装置の単なる例であることも判るはずである。米国特許第4,268,238号(US−4,268,238)、米国特許第4,441,876号(US−4,441,876)、米国特許第4,524,037号(US−4,524,037)及び米国特許第4,851,167号(US−4,851,167)(これら全てが参照により本出願に組み込まれる)において開示されるものなど、他の流動成形装置(及び関連する方法)を使用することもできる。
【0059】
次に、本発明の方法をさらに説明するために、図2の流動成形装置を参照して2つの例を示す。これらの例は、特定の成形性材料から成形品を製造するために本発明の方法をどのように使用するかを例示するためのものに過ぎず、決して本発明の範囲を限定するものではないと理解すべきである。
【実施例1】
【0060】
図2に示される通り、上部電極112と下部電極114との間には4つの材料層すなわち隔膜116(層1)、第一の成形性材料120(層2)、第二の成形性材料122(層3)及び下部金型118(層4)がある。この例において、隔膜116及び下部金型118が各々シリコンゴムV−1010(Rhodia Inc.社製造)によって作られ、第一の成形性材料120がプラスティックフォーム材料を含み、第二の成形性材料122がゴム材料層を含むと仮定する。
【0061】
下に示される表1は、これらの材料層の各々の各種の因子すなわち加熱サイクル終了時の望ましい温度(T)、厚み(d)、力率(pf)、比誘電率(ε)、比熱(h)、及び比重(p)を示すためのものである。これらの因子を用いて、本発明の方法に従って様々な計算を行う。
【表1】

【0062】
表1から判るとおり、加熱サイクル終了時のプラスティックフォーム材料120の希望の温度は200℃(これは、プラスティックフォーム材料120が発泡し架橋する温度である)である。また、加熱サイクル終了時のゴム材料122の希望の温度は167℃(これはゴム材料122の硬化温度である)である。この例において、隔膜116及び下部金型118の温度は、プラスティックフォーム材料120及びゴム材料122全体が一貫して硬化するように選択される。従って、加熱サイクル終了時の隔膜116の下面の希望の温度は200℃(プラスティックフォーム材料120の成形温度)であり、加熱サイクル終了時の下部金型118の上面の希望の温度は167℃(ゴム材料122の成形温度)である。その代わりに、本出願者の同時継続特許出願「成形品の表面に硬化スキンを形成するための方法」(参照により本出願に組み込まれる)において説明されるとおりプラスティックフォーム材料120の上面に硬化スキンが形成されるように隔膜116の温度を選択することができる。
【0063】
表1は、材料層の各々の厚み(d)の値も示しており、図2において厚みは成形品の長さに沿って一定であるように示されている。しかし、多くの成形品がその長さに沿った様々な点で厚みが変動する1つまたはそれ以上の層を持つことが判るはずである。例えば、プラスティックフォーム材料120の厚みが連続的に変動し、ゴム材料122の厚みが一定である場合がある。このような場合、下部金型118は、プラスティックフォーム材料120と下部金型118の厚み値の合計が一定であるようにその厚みを変動するよう構成されることが望ましいだろう。こうすれば、上部電極112と下部電極114との間の距離は一定となり、それによって、プラスティックフォーム材料120を均等に加熱することができる(米国特許第4,268,238号(US−4,268,238)において説明される通り)。プラスティックフォーム材料120が均等に加熱されるように(米国特許第4,441,876号(US−4,441,876)において論じられる通り)プラスティックフォーム材料120及び下部金型118の比誘電率(ε)は等化される(表1に示される通り)ことが望ましいことが判るはずである。
【0064】
さらに、表1は、材料層の各々について力率(pf)、比誘導率(ε)、比熱(h)及び比重(p)の値を示している。上述の通り、力率(pf)、比誘導率(ε)及び比熱(h)の値は温度に応じて変動する。例えば、図3は材料層の各々について力率(pf)の温度依存を示しており、図4は材料層の各々について比誘導率(ε)の温度依存を示しており、図5は材料層の各々について比熱(h)の温度依存を示している。図3−5の曲線が各々温度範囲全体に組み込まれていることが判るはずである。その結果の平均値が表1に示されている(この値は、上述の分析に従って成形時間及び要求される力率の近似値を示すために使用される)。
【0065】
本発明の方法に従って、プラスティックフォーム材料120が基準材料として選択される。次に、数式(1)−(11)を用いてプラスティックフォーム材料120の成形時間、並びにゴム材料122、隔膜116及び下部金型118に要求される力率を計算することができる。下記の式に使用される下付き文字は特定の材料の層の番号を示すことが判るはずである(すなわち、下付き文字1は隔膜116(層1)を示し、下付き文字2はプラスティックフォーム材料120(層2)を示し、下付き文字3はゴム材料(層3)を示し、下付き文字4は下部金型118(層4)を示す)。
【0066】
まず、表1に示される比誘電率(εi)及び厚み(di)の値を用いて数式(1)から材料層の各々のキャパシタンスを下記の通りに計算することができる(材料層の各々の面積を1平方インチと仮定する):
【数21】

【0067】
次に、上述の通り導出された材料層の各々のキャパシタンスの値を用いて数式(2)から等価キャパシタンスを計算することができる:
【数22】

【0068】
上述の通り導出された等価キャパシタンス(Ceq)を用いて数式(3)から等価リアクタンスを計算することができる(電界の周波数を40MHzと仮定する):
【数23】

【0069】
上述の通り導出された等価リアクタンス(Xeq)を用いて数式(6)から上部電極112と下部電極114の間を全ての材料層を通って流れる電流を計算することができる(電圧を4,000ボルトと仮定する):
【数24】

【0070】
最後に、上の通り導出された電流(I)及びキャパシタンス(C2)及び表1に示される温度(T2)、厚み(d2)、力率(pf2)、比熱(h2)及び比重(p2)を用いて数式(10)からプラスティックフォーム材料120の成形時間を計算することができる(開始温度を0℃と仮定する):
【数25】

【0071】
このようにして、プラスティックフォーム材料120の成形時間(すなわちプラスティックフォーム材料120がその成形温度200℃に達するために掛かる時間)が55秒であることが判る。
【0072】
次に、プラスティックフォーム材料120について算定された成形時間(t2)、上で導出された電流(I)及びキャパシタンス(C3)及び表1に示される温度(T3)、厚み(d3)、比熱(h3)及び比重(p3)の値を用いて数式(11)からゴム材料122に要求される力率を計算することができる(この場合にも、開始温度を0℃と仮定する):
【数26】

【0073】
このように、ゴム材料122に要求される力率(すなわち、プラスティックフォーム材料120がその成形温度200℃に達するのと実質的に同時にゴム材料122がその成形温度167℃に達することができるようにする力率)は0.0134である。
【0074】
プラスティックフォーム材料120について算定された成形時間(t2)、上で導出された電流(I)及びキャパシタンス(C1)及び表1に示される温度(T1)、厚み(d1)、比熱(h1)及び比重(p1)の値を用いて数式(11)から隔膜116に要求される力率も計算することができる(この場合にも、開始温度を0℃と仮定する):
【数27】

【0075】
このように、隔膜116に要求される力率(すなわち、プラスティックフォーム材料120がその成形温度200℃に達するのと実質的に同時に隔膜116の底面が200℃の温度に達することができるようにする力率)は0.0158である。
【0076】
同様に、プラスティックフォーム材料120について計算された成形時間(t2)、上で導出された電流(I)及びキャパシタンス(C4)及び表1に示される温度(T4)、厚み(d4)、比熱(h4)及び比重(p4)の値を用いて数式(11)から下部金型118に要求される力率も計算することができる(この場合にも、開始温度を0℃と仮定する):
【数28】

【0077】
このように、下部金型118に要求される力率(すなわち、ゴム材料122がその成形温度167℃に達するのと実質的に同時に下部金型118の上面が167℃の温度に達することができるようにする力率)は0.0115である。
【0078】
最後に、添加剤を選択し、力率が上で導出された要求される力率に合致するように材料と混合される添加剤の量を計算し、その後算定された量の添加剤を材料と混合することによって、ゴム材料122、隔膜116及び下部金型118の力率を各々調整する。この分析部分については、例2に関して下でもっと詳細に説明されているのが判るだろう。
【実施例2】
【0079】
再び図2を参照すると、この例においては、流動成形装置の隔膜116はシリコンゴム3112(Dow Chemical Corp.社製造)で作られ、隔膜に要求される力率はpfiであると仮定する。本発明の方法に従って、数式(13)及び(14)を用いて、力率当量pfeqが要求される力率pfiに合致するように隔膜116と混合する添加剤の量を決定することができる。
【0080】
この例において、隔膜116のシリコンゴム3112と混合するために帯電防止剤Cyastat SNが選択される。次に数式(13)を用いて、シリコンゴム3112と混合されるCyastat SNのパーセンテージの関数として力率当量pfeqを計算することができる(ここで、シリコンゴム3112の力率は0.0043であり、シリコンゴム3112の比誘電率は3.62であり、Cyastat SNの力率は0.60825であり、Cyastat SNの比誘電率は4.7663である):
【数29】

【0081】
シリコンゴム3112と混合されるCyastat SNのパーセンテージと力率当量pfeq(上で計算される通り)との間の関係が図6にグラフとして示されている。図6のグラフを用いて、要求される力率pfiに合致する力率当量pfeqを得るために隔膜116のシリコンゴム3112と混合しなければならないCyastat SNの体積パーセンテージを決定することができる。
【0082】
数式(14)を用いて、力率当量pfeqの関数としてシリコンゴム3112と混合されるCyastat SNの量を計算することができる(シリコンゴム3112とCyastat SNの力率及び比誘電率に同じ値を用いて):
【数30】

【0083】
力率当量pfeqとシリコンゴム3112と混合されるCyastat SNのパーセンテージ(上で計算される通り)との関係が図7にグラフとして示されている。図7のグラフを用いて、要求される力率pfiに合致する力率当量pfeqを得るために隔壁116のシリコンゴム3112と混合しなければならないCyastat SNの体積パーセンテージを決定することもできる。
【0084】
力率当量pfeqがその要求される力率と合致するように下部金型118と混合される選択された添加剤の量及び力率当量pfeqがその要求される力率と合致するようにゴム材料122と混合される選択された添加物の量を決定するためにも上の分析を使用できることが判るはずである(当然、プラスティックフォーム材料120が基準材料として選択されると仮定する)。
【0085】
最後に、本発明の方法を用いて、上述の例に示される通り異なる成形性材料が別個の層に配列される成形品を作ることができることが、判るはずである(例えば、成形品は、ゴムの第一の層及びEVAの第二の層を含む)。その代わりに、本発明の方法を用いて、異なる成形性材料が混合されている成形品を作ることができる(例えば、成形品はEVAとPVCの混合を含む)。さらに、この方法を用いて、1つまたはそれ以上の層が異なる成形性材料の混合を含む別個の層を持つ成形品を作ることができる(例えば、成形品はゴムの第一の層及びPVCと混合されたEVAの第二の層を含む)。これらの全ての場合において、成形性材料の全てが(別個の層であるか混合の一部であるかに関係なく)実質的に同時にそれぞれの成形温度に達するようにするために、上述の分析を使用することができる。
【0086】
本明細書において本発明は方法例を参照して説明され図示されるが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正を本発明の方法に加えることができることが判るはずである。従って、本発明は、特許請求の範囲において限定されない限り、本明細書において説明され図示される方法例に限定されないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の方法に従って成形品を作るための装置の上部金型と下部金型との間に2つの成形性材料(両方とも非フォーム材料)が置かれている、流動成形装置の図である。
【図2】本発明の方法に従って成形品を作るための装置の隔膜と下部金型との間に2つの異なる成形性材料(一方はフォーム材料、他方は非フォーム材料)が置かれている、流動成形装置の図である。
【図3】本発明の第一の例に従って隔膜、プラスティックフォーム材料、ゴム材料及び下部金型の各々について温度(T)対力率(pf)の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の第一の例に従って隔膜、プラスティックフォーム材料、ゴム材料及び下部金型の各々について温度(T)対誘電率(ε)の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第一の例に従って隔膜、プラスティックフォーム材料、ゴム製品及び下部金型の各々について温度(T)対比熱(h)の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第二の例に従って、シリコンゴム3112と混合される添加剤Cyastat SNのパーセンテージ対力率当量(pfeq)の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第二の例に従って力率当量(pfeq)対シリコンゴム3112と混合されるCyastat SNのパーセンテージの関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の加熱サイクルで少なくとも2つの異なる成形性材料から成形品を作るための方法であって、
第一の成形性材料を基準材料として選択するステップと、
前記第一の成形性材料及び第二の成形性材料の両方が実質的に同時にそれぞれの成形温度に達するように第二の成形材料を改変させるステップと、
前記第一及び第二の成形性材料を加熱して前記成形品を成形するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
該方法において、前記第一及び第二の成形性材料が流動成形装置において加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該方法において、前記流動成形装置が前記第一の成形性材料と接触する第一の表面を有する第一の金型及び前記第二の成形性材料と接触する第二の表面を有する第二の金型を含み、かつ該方法において、加熱サイクル終了時に前記第一及び第二の表面がそれぞれ前記第一及び第二の成形性材料の前記成形温度と実質的に同じ温度に達するように前記第一の金型及び第二の金型が改変される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該方法において、前記第一及び第二の成形性材料を横切って交番誘電電界が与えられることによって前記第一及び第二の成形性材料が加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該方法において、前記第一及び第二の成形性材料の各々が熱可塑性物質及び熱硬化性物質を含むグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該方法において、前記第一及び第二の成形性材料のうち少なくとも1つがフォーム材料である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該方法において、前記第二の成形材料がこれと添加剤を混合することによって改変される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該方法において、前記第一及び第二の成形性材料が前記成形品を成形するために別個の層に配列される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該方法において、前記第一と第二の成形性材料が前記成形品を成形するために混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
単一の加熱サイクルで少なくとも第一及び第二の成形性材料から成形品を作るための方法であって、
前記成形性材料の各々がこれと関連付けられる力率を持ち、
前記第一の成形性材料の成形時間を決定するステップと、
前記第一の成形性材料の前記成形時間に基づいて前記第二の成形性材料に要求される力率を決定するステップと、
前記要求される力率に実質的に合致するように前記第二の成形性材料の力率を調整するステップと、
前記第一及び第二の成形性材料を加熱して前記成形品を成形するステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
該方法において、前記第二の成形性材料の前記力率を調整することによって、前記第一及び第二の成形性材料が実質的に同時にそれぞれの成形温度に達することができるようにする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該方法において、前記第二の成形性材料の前記力率が
添付剤を選択し、
前記第二の成形性物質の前記力率が前記要求される力率にほぼ合致するように前記第二の成形性材料と混合される前記添加剤の量を決定し、かつ
前記量の前記添加物を前記第二の成形性材料と混合する、
ことによって調整される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
該方法において、前記第一及び第二の成形性材料が流動成形装置において加熱される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
該方法において、前記流動成形装置が前記第一の成形性材料と接触する第一の表面を有する第一の金型及び前記第二の成形性材料と接触する第二の表面を有する第二の金型を含み、該方法において、前記第二の成形性材料の前記力率を調整することによって前記第一及び第二の成形性材料が実質的に同時にそれぞれの成形温度に達することができるようにし、かつ該方法において、前記第一及び第二の表面が前記加熱サイクル終了時にそれぞれ前記第一及び第二の成形性材料の成形温度と実質的に同じ温度に達するように前記第一及び第二の金型が改変される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該方法において、前記第一及び第二の成形性物質を横切る交番誘電電界を与えることによって前記第一及び第二の成形性材料が加熱される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
該方法において、前記第一及び第二の成形性材料が前記成形品を成形するために2つの別個の層に配列される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
該方法において、前記第一と第二の成形性材料が前記成形品を成形するために混合される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
該方法において、前記第一及び第二の成形性材料の各々が熱可塑性物質及び熱硬化性物質から成るグループから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
該方法において、前記第一及び第二の成形性材料のうち少なくとも1つがフォーム材料である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
該方法において、前記成形品が少なくとも第三の成形性材料から作られる、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
単一の成形サイクルで複数の異なる成形性材料から成形品を作るための方法であって、
前記成形性材料のうちの1つを基準材料として選択するステップと、
前記成形性材料の全てが実質的に同時にそれぞれの成形温度に達するように残りの成形性材料の各々と添加剤を混合するステップと、
流動成形装置に前記成形性物質を置くステップと、
前記成形性材料を横切って交番誘電電界を与えて前記成形品を成形するステップと、
を含む、方法。
【請求項22】
該方法において、前記成形性材料が前記成形品を成形するために別個の層に配列される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
該方法において、前記成形性材料が前記成形品を成形するために混合される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
該方法において、前記別個の層のうち少なくとも1つが混合された複数の成形性材料を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
単一の成形サイクルで少なくとも第一及び第二の成形性材料から成形品を作るための方法であって、
前記成形性材料の各々がこれに関連付けられる力率を有し、
前記第一の成形性材料の前記力率に基づいて前記第一の成形性材料の成形時間を決定するステップと、
前記第一の成形性材料の前記成形時間に基づいて前記第二の成形性材料に要求される力率を決定するステップと、
前記第二の成形性材料の前記力率が前記要求される力率に実質的に合致するように前記第二の成形性材料と混合される添加剤の量を決定するステップと、
前記第二の成形性材料と前記量の前記添加剤を混合するステップと、
流動成形装置に前記第一及び第二の成形性材料を置くステップと、
前記第一及び第二の成形性材料を横切って交番誘電電界を与えて、前記成形品を成形するステップと、
を含む、方法。
【請求項26】
該方法において、前記第一及び第二の成形性材料の各々が熱可塑性物質及び熱硬化性物質から成るグループから選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
該方法において、前記第一及び第二の成形性材料のうち少なくとも1つがフォーム材料である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
該方法において、前記第二の成形性材料と前記量の前記添付剤を混合することによって前記第一及び第二の成形性材料が実質的に同時にそれぞれの成形温度に達することができるようにする、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
該方法において、前記流動成形装置が前記第一の成形性材料と接触する第一の表面を有する第一の金型及び前記第二の成形性材料と接触する第二の表面を有する第二の金型を含み、かつ該方法において、前記第一及び第二の表面が前記成形サイクルの完了時にそれぞれ前記第一及び第二の成形性材料の成形温度と実質的に同じ温度に達するように前記第一及び第二の金型が改変される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
該方法において、前記第一及び第二の成形性材料が前記成形品を成形するために2つの別個の層に配列される、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
該方法において、前記第一と第二の成形性材料が前記成形品を成形するために混合される、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
該方法において、前記成形品が少なくとも第三の成形性材料から成形される、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−506555(P2008−506555A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521564(P2007−521564)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/024668
【国際公開番号】WO2006/019732
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(507010474)バーテックス リミティド ライアビリティ カンパニー (3)
【Fターム(参考)】