説明

圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置

【課題】弁体を適正に開閉動作させることができる圧力調整弁等を提供する。
【解決手段】隔壁76を隔ててバルブハウジング64内に形成され、流入ポート71に連通する1次室67および流出ポート74に連通する2次室68と、1次室67と2次室68とを連通する連通流路69と1次室側開口縁部を弁座として、連通流路69を1次室67側から開閉する弁体70と、弁体70を大気圧基準で開閉動作させる受圧膜体73と、隔壁76に対向する1次室67の1の壁面を受けとして、受圧膜体73と拮抗しつつ弁体70を閉弁方向に付勢する弁体ばねと、を備え、弁体70は、1次室67に配設され弁座に対し直接開閉動作する弁体本体81と、これを保持する保持部と、を有し、受圧膜体73は、膜体本体73aの中心部に同心上に接着された受圧板73bから延び連通流路69を挿通して保持部に当接する作動軸部73cを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体を大気圧基準で開閉する圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サブタンクの機能液を、所定の圧力に減圧して機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁が知られている(特許文献1)。この圧力調整弁は、バルブハウジング内に形成された流入ポートに連通する1次室および流出ポートに連通する2次室と、1次室と2次室との間の隔壁を連通する連通流路と、1次室側の連通流路の開口縁部を弁座として連通流路を1次室側から開閉する弁体と、2次室の1の面を構成すると共に、弁体を大気圧基準で開閉するダイヤフラム(受圧膜体)と、弁体を閉弁方向に付勢する弁体ばねと、を備えている。弁体は、環状のシール(Oリング)を有する弁体本体と、その中心から連通流路に遊嵌され2次室側に延びる軸部と、で一体形成されている。また、ダイヤフラムは、フィルム状のダイヤフラム本体と、その内側に貼着した平板状の受圧板と、から構成されている。
この圧力調整弁では、弁体ばねにより付勢された弁体が、閉弁状態で軸部の先端が受圧板に当接または所定の間隙を有している。そして、2次室内が負圧となると、ダイヤフラム本体が凹形状となり受圧板を介して軸部を押し込むことで弁体が開弁する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−163733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような圧力調整弁での弁体の開閉は、ダイヤフラムにかかる大気圧によるが、重力の影響や取付け時の残留応力等のため、開弁の際には常に一様に撓むわけではない。この場合、ダイヤフラムが不均一に撓むと、平坦に形成された受圧板が、軸部の先端部分に斜め方向から接触する。すると、軸部に回転力が作用して弁体が微妙に傾き、弁体本体を構成するOリングが弁座に対し片当りし、開閉動作が不安定になる。このため、所定の圧力制御特性が得られないという問題があった。
【0005】
本発明は、弁体を適正に開閉動作させることができる圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力調整弁は、隔壁を隔ててバルブハウジング内に形成され、流入ポートに連通する1次室および流出ポートに連通する2次室と、隔壁に貫通形成され、1次室と2次室とを連通する連通流路と、連通流路を形成した隔壁の1次室側開口縁部を弁座として、連通流路を1次室側から開閉する弁体と、隔壁に平行な2次室の1の面を構成すると共に弁体を大気圧基準で開閉動作させる受圧膜体と、隔壁に対向する1次室の1の壁面を受けとして、受圧膜体と拮抗しつつ弁体を閉弁方向に付勢する弁体ばねと、を備え、弁体は、1次室に配設され弁座に対し直接開閉動作する弁体本体と、弁体本体を保持する保持部と、を有し、受圧膜体は、膜体本体と、膜体本体の中心部に同心上に接着された受圧板と、受圧板から延び連通流路を挿通して保持部に当接する作動軸部と、を有していることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、弁体ではなく受圧板に作動軸部を設けることで、弁体を短く形成することができる。このため、大気圧に押された受圧膜体が不均一に撓んで、受圧板から延びた作動軸部が、弁体の保持部に斜めに接触した場合でも、弁体に加わるモーメント(回転力)は小さくなり、弁体に対しては、直進方向(開閉方向)への力が主に作用する。すなわち、弁体にかかる力のモーメントを低減することができるため、弁体は開閉方向に平行移動する。これにより、弁体が弁座に片当りすることがなく、適正な開弁を行うことができ、適正な圧力制御特性を維持することができる。
【0008】
この場合、保持部と作動軸部との当接部分において、作動軸部は、半球状に形成され、保持部は平坦に形成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、弁体が、受圧膜体から軸線に対し傾いた力を受けても、当接部分の滑りにより、分力を逃がすことができるため、弁体には、直進力のみが伝わる。これにより、弁体の開閉方向への直進性を適切に確保することができる。
【0010】
また、この場合、弁体本体、保持部、膜体本体、受圧板および作動軸部は、同一軸線上に配設されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、高い直進性をもって、弁体を平行移動させることができる。これにより、弁体の開閉動作を精度良く行うことができ、所定の圧力調整が可能となる。
【0012】
さらに、この場合、流入ポートを介して機能液供給手段から供給された機能液を、圧力調整し、流出ポートを介してインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに供給することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、大気圧基準で圧力調整された機能液を、機能液滴吐出ヘッドに対して安定供給することができる。
【0014】
本発明の液滴吐出装置は、上記した圧力調整弁と、機能液供給手段と、機能液滴吐出ヘッドと、を備え、ワークに対し機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、ワーク上に機能液を吐出して描画を行なうことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、適正に圧力調整された機能液を、機能液滴吐出ヘッドに対して供給することができるため、液滴吐出装置の吐出不良を適切に防止することができる。これにより、液滴吐出装置で製造する製品の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】液滴吐出装置に搭載されたキャリッジユニット(ヘッドユニット)を模式的に表した平面図である。
【図3】機能液滴吐出ヘッドの表裏外観斜視図である。
【図4】機能液供給ユニットを模式的に示した系統図である。
【図5】キャリッジユニットに搭載された圧力調整弁の外観側面図である。
【図6】圧力調整弁の流入コネクター側の縦断面図(a)および流出コネクター側の縦断面図(b)である。
【図7】圧力調整弁の連通流路、弁体および受圧膜体の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る圧力調整弁を備えた液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、有機EL装置の各画素となる発光層やカラーフィルタのフィルタエレメント等を形成するものである。また、圧力調整弁は、機能液を機能液滴吐出ヘッドに所定の圧力で減圧供給するものである。
【0018】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース12a上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在してワークWをX軸方向に移動させるX軸テーブル12と、複数本の支柱11を介してX軸テーブル12を跨ぐように架け渡された1対のY軸支持ベース13a上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル13と、Y軸テーブル13に移動自在に吊設され、複数(12個)の機能液滴吐出ヘッド25が搭載された13個のキャリッジユニット14と、から構成されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を、温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバー15と、チャンバー15を貫通して機能液滴吐出ヘッド25に機能液を供給する機能液供給ユニット16(機能液供給手段)と、を備えており、チャンバー15の側壁の一部には、機能液供給ユニット16の主要部を為すメインタンク40等を収納するタンクキャビネット50が設けられている。この液滴吐出装置1は、制御装置17により装置全体が統括制御され、X軸テーブル12およびY軸テーブル13の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド25を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット16から供給された6色の機能液滴を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンが描画される。
【0019】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット21、吸引ユニット22、ワイピングユニット23、吐出性能検査ユニット24から成るメンテナンス装置18を備えており、これらユニットを機能液滴吐出ヘッド25の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド25の機能維持・機能回復を図るようになっている。本実施形態の液滴吐出装置1では、X軸テーブル12とY軸テーブル13とが交わる部分にキャリッジユニット14を臨ませてワークWの描画を行い、Y軸テーブル13とメンテナンス装置18(吸引ユニット22、ワイピングユニット23)が交わる部分にキャリッジユニット14を臨ませて、機能液滴吐出ヘッド25の機能維持・機能回復を行う。
【0020】
図1および図2に示すように、各キャリッジユニット14は、R・G・B・C・M・Yの6色、各2個(計12個)の機能液滴吐出ヘッド25と、12個の機能液滴吐出ヘッド25を6個ずつ2群に分けて支持するヘッドプレート26と、各機能液滴吐出ヘッド25に機能液を大気圧基準で供給する12個の圧力調整弁27と、を有するヘッドユニット19を備えている。各圧力調整弁27は、ヘッドプレート26上において機能液滴吐出ヘッド25の分割方向と直交する方向に6個ずつ2群に分割して配設されている。各キャリッジユニット14は、一対のY軸支持ベース13aに掛け渡されたブリッジプレート13bに吊設されている。各キャリッジユニット14は、ブリッジプレート13b上に配設されたサブタンク41から自然水頭を利用し、かつ圧力調整弁27を介して各機能液滴吐出ヘッド25に機能液が供給されるようになっている(図4参照)。なお、キャリッジユニット14の個数および各キャリッジユニット14に搭載される機能液滴吐出ヘッド25の個数は任意である。
【0021】
図3に示すように、機能液滴吐出ヘッド25は、いわゆる2連のインクジェットヘッドであり、2連の接続針34を有する機能液導入部31と、機能液導入部31の側方に連なる2連のヘッド基板32と、ヘッド基板32の下方に連なる2連のポンプ部33と、ポンプ部33に連なるノズルプレート35と、を備えている。機能液導入部31には、後述する2本の2次側チューブ43bが接続され(図4参照)、ノズルプレート35のノズル面NFには、2列のノズル列NLが相互に平行に列設されており、各ノズル列NLは、等ピッチで並べた180個の吐出ノズル36で構成されている。ヘッド基板32は、フレキシブルフラットケーブル(図示省略)を介して上記の制御装置17が接続されており、制御装置17から出力された駆動波形が各ポンプ部33(の圧電素子)に印加されることで、各吐出ノズル36から機能液が吐出される。
【0022】
図1および図4に示すように、機能液供給ユニット16は、チャンバー15に併設のタンクキャビネット50に収容された6個(6色)のメインタンク40と、各ブリッジプレート13b上に配設された複数(13個)のサブタンク41と、メインタンク40と複数のサブタンク41とを接続するタンク側チューブ42と、各サブタンク41と各機能液滴吐出ヘッド25を接続する複数のヘッド側チューブ43と、を備えている。各ヘッド側チューブ43には、機能液滴吐出ヘッド25と共にキャリッジユニット14に搭載された圧力調整弁27が介設されており、ヘッド側チューブ43は、サブタンク41と圧力調整弁27とを接続する1次側チューブ43aと、圧力調整弁27と機能液滴吐出ヘッド25とを接続する2次側チューブ43bと、を有している。
【0023】
メインタンク40から送液された機能液は、タンク側チューブ42を通って各サブタンク41に貯留される。各サブタンク41の機能液は、各機能液滴吐出ヘッド25の駆動に応じ、ヘッド側チューブ43および圧力調整弁27を介して、機能液滴吐出ヘッド25に自然水頭で供給される。一方、キャリッジユニット14(ヘッドユニット19)を交換する場合には、1次側チューブ43aに介設された開閉バルブ43cを閉弁した後、1次側チューブ43aを圧力調整弁27から接続を解除(離脱)し、この状態で交換が行われる。
【0024】
図1に示すように、フラッシングユニット21は、一対の描画前フラッシングユニット21aと、定期フラッシングユニット21bと、を有し、描画処理直前や、ワークWの載換え時等の描画処理休止時に行われる、機能液滴吐出ヘッド25の捨て吐出を受ける。吸引ユニット22は、13台のキャップユニット44を有し、各機能液滴吐出ヘッド25の吐出ノズル36から機能液を強制的に吸引すると共に、キャッピングを行う。ワイピングユニット23は、吸引後の機能液滴吐出ヘッド25のノズル面NFを拭取る。吐出性能検査ユニット24は、機能液滴吐出ヘッド25の吐出の有無および飛行曲りを検査する。
【0025】
本実施形態における液滴吐出装置1の稼動停止時には、Y軸テーブル13により13個のキャリッジユニット14が13台の吸引ユニット22の位置まで移動し、キャップユニット44を密接位置に上昇させ、全機能液滴吐出ヘッド25に対し、いわゆるキャッピングが行われる。一方、稼動開始時には、全機能液滴吐出ヘッド25に対し、キャッピングされた状態でエジェクター(図示省略)を駆動して吸引処理が行なわれ(初期充填)、続いてキャリッジユニット14単位でワイピング処理が行なわれる。そして、13台のキャリッジユニット14は順次、X軸テーブル12にセットされたワークW上に移動する。
【0026】
次に、図5ないし図7を参照して、圧力調整弁27について説明する。圧力調整弁27は、主要部を成す調整弁本体60と、調整弁本体60の流入側に差込み接合した流入コネクター61と、調整弁本体60の流出側に差込み接合した流出コネクター62と、を備えている。そして、流入コネクター61には、サブタンク41に連なる1次側チューブ43aが接続され、他方、流出コネクター62には、機能液滴吐出ヘッド25に連なる2次側チューブ43bが接続されている。
【0027】
調整弁本体60は、略円板状で、且つ前面および後面の中央部が凹型形成されたバルブハウジング64と、バルブハウジング64と共に1次室67を画成する蓋体65と、バルブハウジング64に受圧膜体73(ダイヤフラム)を固定することでバルブハウジング64と共に2次室68を画成するドーナツ状の膜体押え部材66と、で構成されている。また、1次室67および2次室68は、バルブハウジング64の一部を構成する隔壁76を隔てて同軸上に配設されており、隔壁76の中心部(軸心)には、1次室67および2次室68を連通する連通流路69が貫通形成されている。なお、バルブハウジング64、蓋体65および膜体押え部材66は、ステンレス等の耐食性材料で形成されている。
【0028】
蓋体65および膜体押え部材66は、円形の受圧膜体73の中心を通る軸線と同心円となる外形を有しており、バルブハウジング64を前後方向から挟み込むようにネジ止めされている(図示省略)。また、蓋体65および膜体押え部材66は、バルブハウジング64に対し、各々シールリングSを挟み込んで相互に固定され、1次室67および2次室68を液密に構成している。
【0029】
1次室67は、受圧膜体73と同心となる略円柱形状に形成され、1次室67の上部には、1次室67から径方向斜めに延びる流入ポート71が形成されている。また、1次室67側の隔壁76の中心部には、連通流路69に連なる1次室側開口部78aが開口している(図7参照)。1次室側開口部78aには、1次室67側から連通流路69を開閉する弁体70が臨む一方、これに対応して、1次室側開口部78aの周縁部には、弁体70が離接する弁座となる弁座形成部位78bが構成されている(図7参照)。流入ポート71には、流入コネクター61が差し込み接合されており、流入コネクター61と1次室67とを連通する流入流路部72が形成されている(図6(a)参照)。
【0030】
2次室68は、受圧膜体73が膜体押え部材66によりバルブハウジング64に取り付けられ、バルブハウジング64(隔壁76)に凹型形成した内面壁68aと受圧膜体73とによって、全体として受圧膜体73を底面とする円錐台形状に形成されている。すなわち、内面壁68aは、テーパー部位68bを有する有底すり鉢状に形成されている。また、2次室68側の隔壁76の中心部には、連通流路69に連なる2次室側開口部78cが開口している(図7参照)。
【0031】
図6(b)に示すように、2次室68の下部から真下に延びる流出ポート74には、流出コネクター62が差し込み接合されており、流出コネクター62と2次室68とを連通する流出流路部75が形成されている。流出流路部75は、2次室68内下部のテーパー部位68bに開口して、後方斜め下方に向かって形成されており、前後方向、略中央で流出コネクター62に連通している。
【0032】
次に、図6および図7を参照して、連通流路69、弁体70および受圧膜体73について詳細に説明する。連通流路69は、後述する受圧膜体73の作動軸部73cがスライド自在に挿通する軸遊挿部69aと、軸遊挿部69aから径方向四方に延びる十字状断面の流路部69bと、から構成されている(図5参照)。なお、1次室67、2次室68および連通流路69(の軸遊挿部69a)は、受圧膜体73と同心の円形断面を有している。
【0033】
受圧膜体73(ダイヤフラム)は、樹脂フィルムで構成した膜体本体73aと、膜体本体73aの中央部に接着した樹脂製の受圧板73bと、受圧板73bから連通流路69(の軸遊挿部69a)を挿通して延在する作動軸部73cと、から構成されている。受圧板73bは、膜体本体73aと同心の円板状に、且つ膜体本体73aに対し十分に小さい径に形成されている。また、2次室側開口部78cの周縁部と受圧板73bとの間には、受圧板73b(受圧膜体73)を前方向に向かって付勢する膜体付勢ばね79が介設されている。
【0034】
作動軸部73cは、受圧板73bの中央から直角に突出するように設けられており、且つ軸遊挿部69aに挿通可能な径に形成されている。また、作動軸部73cの先端部分は、半球形状に形成された半球部位73dとなっている。この半球部位73dが、後述する弁ホルダー82の当接面82aに当接し、後方に弁体70を押し込むことで開弁するようになっている。
【0035】
弁体70は、弾性材で構成され、弁の機能を奏するリング状の弁体本体81と、弁体本体81を保持する弁ホルダー82(保持部)と、を備えている。弁体本体81は、弁座形成部位78bに離接することで連通流路69を開閉する。弁ホルダー82(保持部)は、段付円柱状に形成されたものであり、その段部に弁体本体81を保持している。弁ホルダー82の弁体本体81を保持した面には、作動軸部73cの半球部位73dが当接する平坦な当接面82aが形成されており、この当接面82aが、作動軸部73c(および受圧板73b)を介して膜体本体73aにかかる大気圧による力を受けるようになっている。また、弁ホルダー82と蓋体65との間には、弁体付勢ばね83が介設されており、弁体70は、この弁体付勢ばね83によって、閉弁方向(2次室68側)に弱い力で付勢されている。
【0036】
この弁体70は、連通流路69の開閉にのみ使用されるものであるため、その形状を簡素で且つ小型に形成することができる。したがって、弁体70は、その全長を短くすることができる。このため、例えば、当接面82aに対し、作動軸部73cが斜めに接触した場合でも、弁体70に加わるモーメント(回転力)は小さくなり、弁体70に対しては、直進方向(開閉方向)への力が主に作用する。すなわち、弁体70にかかる力のモーメントを低減することができるため、弁体70は開閉方向に平行移動する。なお、弁体本体81、弁ホルダー82、膜体本体73a、受圧板73bおよび作動軸部73cは、同一軸線上に配設されている。これにより、高い直進性をもって、弁体70を平行移動させることができ、弁体70の開閉動作を精度良く行うことができ、所定の圧力調整が可能となる。
【0037】
このように構成された圧力調整弁27では、機能液の吐出等により2次室68の圧力が低くなると、受圧膜体73が後方(内側)に変形し、受圧板73b(および作動軸部73c)が弁体70を後方に押して開弁し、1次室67から2次室68に機能液が流入する。機能液の流入が進み2次室68の圧力が高まると、受圧膜体73が前方(外側)に変形し、弁体70が閉弁する。すなわち、圧力調整弁27は、大気圧と2次室68の内部圧力とのバランスにより受圧膜体73が変形することで連通流路69を開閉する。
【0038】
上記のように、弁体70の開閉は、膜体本体73aにかかる大気圧によるため、開弁の際に、膜体本体73a(受圧膜体73)が常に一定の形状変化を伴って撓むわけではなく、不均一に撓み、作動軸部73cが斜め方向から弁ホルダー82の当接面82aに当接する場合がある。しかし、このような場合であっても、この圧力調整弁27では、上記したように、弁体70にかかる力のモーメントが低減し、開閉方向への適切な平行移動が可能であるため、弁座形成部位78bに片当りすることなく、適正な開弁を行うことができ、適正な圧力制御特性を維持することができる。また、平坦な当接面82aに対して、作動軸部73cの半球部位73dが当接するため、受圧膜体73から軸線に対し傾いた力を受けても、当接部分が滑り易く、開閉方向以外に働く分力を逃がすことができる。このため、弁体70には、直進力のみが伝わり、弁体70の開閉方向への直進性を適切に確保することができる。
【0039】
以上の構成によれば、大気圧に押された受圧膜体73が、弁体70に対して斜め方向に撓むような場合でも、適正な開弁を行うことができ、適正な圧力制御特性を維持することができる。これにより、大気圧基準で適正に圧力調整された機能液を、機能液滴吐出ヘッド25に対して供給することができるため、液滴吐出装置1の吐出不良を適切に防止することができ、液滴吐出装置1で製造する製品の信頼性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1:液滴吐出装置、25:機能液滴吐出ヘッド、27:圧力調整弁、64:バルブハウジング、67:1次室、68:2次室、69:連通流路、70:弁体、71:流入ポート、73:受圧膜体、73a:膜体本体、73b:受圧板、73c:作動軸部、73d:半球部位、74:流出ポート、76:隔壁、78a:1次室側開口部、78b:弁座形成部位、81:弁体本体、82:弁ホルダー、82a:当接面、83:弁体付勢ばね、W:ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁を隔ててバルブハウジング内に形成され、流入ポートに連通する1次室および流出ポートに連通する2次室と、
前記隔壁に貫通形成され、前記1次室と前記2次室とを連通する連通流路と、
前記連通流路を形成した前記隔壁の1次室側開口縁部を弁座として、前記連通流路を前記1次室側から開閉する弁体と、
前記隔壁に平行な前記2次室の1の面を構成すると共に前記弁体を大気圧基準で開閉動作させる受圧膜体と、
前記隔壁に対向する前記1次室の1の壁面を受けとして、前記受圧膜体と拮抗しつつ前記弁体を閉弁方向に付勢する弁体ばねと、を備え、
前記弁体は、前記1次室に配設され前記弁座に対し直接開閉動作する弁体本体と、前記弁体本体を保持する保持部と、を有し、
前記受圧膜体は、膜体本体と、前記膜体本体の中心部に同心上に接着された受圧板と、前記受圧板から延び前記連通流路を挿通して前記保持部に当接する作動軸部と、を有していることを特徴とする圧力調整弁。
【請求項2】
前記保持部と前記作動軸部との当接部分において、
前記作動軸部は、半球状に形成され、
前記保持部は平坦に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁。
【請求項3】
前記弁体本体、前記保持部、前記膜体本体、前記受圧板および前記作動軸部は、同一軸線上に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧力調整弁。
【請求項4】
前記流入ポートを介して機能液供給手段から供給された機能液を、圧力調整し、前記流出ポートを介してインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに供給することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧力調整弁。
【請求項5】
請求項4に記載の圧力調整弁と、
前記機能液供給手段と、
前記機能液滴吐出ヘッドと、を備え、
ワークに対し前記機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、前記ワーク上に機能液を吐出して描画を行なうことを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−188296(P2010−188296A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36562(P2009−36562)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】