説明

地図表示装置、方法およびプログラム

【課題】経路上の任意の地点から経路近傍に存在する所定の地点に立ち寄った場合の時間情報(所定地点までの到達時間、到達時間に当初の経路までの復帰時間を加算した往復時間、ロスタイムなど)を地図上に視認性良く表示することができる地図表示装置、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】地図情報格納部の地図データを使って、第一出発地から目的地までの第一経路を探索する第一経路探索部と、第一経路上の少なくとも1つのノードを第二出発地とし、第二出発地のそれぞれから所定時間内に到達可能な複数の経由地を探索する第二経路探索部と、複数の経由地を繋ぐことにより第一経路上からの時間的な離れ具合を表す時間曲線を求める時間曲線算出部と、第一経路と時間曲線を前記地図データとともに表示する表示部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図上に時間情報を融合表示する地図表示装置、方法およびプログラムに関し、例えば移動体に搭載し経路誘導案内、施設検索を行う際に適用して好適とされる。
【背景技術】
【0002】
近年、HDDやDVDなどに記憶される地図情報に自車両の現在位置や出発地から目的地までの最短経路を分かりやすく表示および案内するナビゲーション装置が広く普及している。
【0003】
このようなナビゲーション装置において、現在地近傍の所定の複数地点への最短時間経路を算出し、所要時間等を対比する形態で表示装置に表示することによりいずれの地点へ立ち寄るかを使用者に選択させることができる車両用経路誘導方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両用経路誘導方法は、ある特定の目的地への経路誘導中に、別の所定の地点に到達するまでの時間やそこに立ち寄った場合のロスタイム(迂回した場合に当初の目的地に到達する時間に対してどれくらい余計に時間がかかるのかといった情報)を、使用者が認識できることに加え、その地点を経由する迂回路の中の最短時間経路を知ることもできる。
【特許文献1】特開平8−292057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、当初の目的地とは別の迂回地点の存在位置を地図上の実際の位置に表示し、時間情報(到達時刻や往復時間やロスタイム等)は一覧として別に表示するため、迂回地点の数が多くなると情報量が増え、どの施設が自分の要求に最も合致しているかを即座に判断することができない。また、指定した迂回地点の情報しか表示されないので、所定のロスタイム等で行く事のできる迂回地点を地図を見ながら探すことができない。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものである。すなわち本発明によれば、設定されている経路から一旦外れて、所定の寄り道時間内に立ち寄ることが可能な範囲を地図上に視認性に優れた形態で表示し、直感的に所望の立ち寄り地点を探すことができる地図表示装置、方法および時間曲線算出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明における地図表示装置の第1の局面は、地図情報格納部の地図データを使って、第一出発地から目的地までの第一経路を探索する第一経路探索部と、第一経路上の少なくとも1つのノードを第二出発地とし、第二出発地のそれぞれから所定時間内に到達可能であるか、または往復時間が所定時間範囲内である複数の経由地を探索する第二経路探索部と、複数の経由地を繋ぐことにより第一経路上からの時間的な離れ具合を表す時間曲線を求める時間曲線算出部と、第一経路と時間曲線を前記地図データとともに表示する表示部と、を有することを特徴とする。
【0007】
さらに、好ましい実施態様では、第2の局面は、第一出発地から目的地までの経由地を通る第三経路を探索する第三経路探索部をさらに有し、時間曲線算出部は、複数の経由地の中で、第三経路と第一経路との所要時間の差が所定時間となる経由地を繋ぐことにより第一経路上からの時間的な離れ具合を表す時間曲線を求めることを特徴とする。第3の局面は、時間曲線算出部は、複数の前記第二出発点のそれぞれから求めた複数の前記経由地を繋いで各々閉曲線とし、複数の前記閉曲線を繋ぐことにより時間曲線を求めることを特徴とする。第4の局面は、複数の第二出発点のそれぞれから求めた複数の閉曲線の交わる内部に経由地が存在する場合、時間曲線を求める対象としないことを特徴とする。
【0008】
これらの構成により、これから移動体が経路上を進行する予定となっている地点から一定時間内に到達可能な範囲(往復時間で到達可能な範囲、ロスタイムの範囲)を表示することができる。特に、通常表示される地図上に経路と時間曲線を同時に表示することで、使用者は経路沿いから地図上の複数の地点への距離的な遠近感、時間的な遠近感などを同時に確認でき、立ち寄る地点の決定に際して有効である。
【0009】
第5の局面は、複数の第二出発点のそれぞれから求めた複数の閉曲線が交わらないとき、表示部は、時間曲線が表示できない旨のメッセージを表示することを特徴とする。
【0010】
第6の局面は、現在地の属するリンクにある第二出発地から探索した経由地を繋いだ閉曲線を他の閉曲線と識別可能に表示することを特徴とする。これにより、経路上のそれぞれの地点から時間曲線で描かれた範囲が、それぞれの地点から所定の時間で到達できる(所定の往復時間で到達できる、ロスタイムが所定の時間で到達できる)ことをより明確に提示することができる。
【0011】
第7の局面は、時間情報に関する指示を入力するための入力部を有し、表示部は、入力部による時間情報と関連付けられた任意点の移動指示に応じた時間曲線に変更することを特徴とする。第8の局面は、表示部には時間情報を変更可能なスライダバーが表示されており、表示部は、入力部によるスライダバーの設定に応じた時間曲線を表示することを特徴とする。これにより、時間曲線の直感的な操作が実現できる。
【0012】
第9の局面は、第一経路と時間曲線に囲まれた範囲の施設検索を行う検索部を有することを特徴とする。これにより、施設検索時点で経路沿いの時間情報を加味した検索を行うことができ、使用者の利便性を向上することができる。
【0013】
第10の局面は、地図情報格納部の地図データを使って、第一出発地から目的地までの第一経路を探索する第一経路探索部と、第一経路上の少なくとも1つのノードを第二出発地とし、第二出発地のそれぞれを中心とする所定の距離範囲内の施設を検索する施設検索部と、第二出発地のそれぞれから施設検索部により検索されたそれぞれの施設への経路を探索する第二経路探索部と、第二経路探索部により探索された施設の中から、第二出発地の各々から施設への到達時間または往復時間が所定時間範囲内であるか、若しくは第一経路と前記第一出発地から前記施設を経由して前記目的地までを探索した第三経路との所要時間差が所定時間範囲内の複数の施設位置を座標点として抽出する座標点抽出部と、第一出発地と座標点と目的地を繋ぐことにより、第一経路上からの時間的な離れ具合を表す時間曲線を求める時間曲線算出部と、第一経路と時間曲線を地図データとともに表示する表示部と、を有することを特徴とする。これにより、より簡便に時間曲線を求めることができ、処理性能があまり高くない地図表示装置においても適用可能となる。
【0014】
なお、本発明は、このような地図表示装置として実現することができるだけでなく、その方法やプログラム、そのプログラムを格納する記憶媒体としても実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記説明した課題を解決するための手段から明らかなように、経路上の任意の地点から経路近傍に存在する所定の地点に立ち寄った場合の時間情報(所定地点までの到達時間、到達時間に当初の経路までの復帰時間を加算した往復時間、ロスタイムなど)を地図上に視認性良く表示することができ、直感的に立ち寄り地点を設定することが可能となる。
【0016】
また、経路上の時間曲線で描かれた範囲が、それぞれの地点から所定の時間で到達できる(所定の往復時間で到達できる、ロスタイムが所定の時間で到達できる)ことをより明確に提示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1に係る地図表示装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態の地図表示装置全体の構成を示す構成図である。地図表示装置1は、制御部11、地図情報格納部12、測位部13、ワーキングエリア部15、入力部16、交通情報受信部17、出力部18から構成されている。また、経路探索部141、別経路探索部142、時間曲線算出部143、表示制御部144、施設検索部145は、制御部11の構成の一部である。また、出力部18は、表示装置181、スピーカ182から構成されている。なお、各図面において、本発明に関係のない構成要素は省略している。
【0019】
制御部11は、地図表示装置1全体の動作を制御するCPUやMPUとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)である。また、制御部11は、ワーキングエリア部15としてのメモリ(典型的にはRAM(Random Access Memory))に処理に必要な情報を読書きしながら処理を進めてもよい。なお、処理内容を表す詳細な動作フローについては後述する。
【0020】
地図情報格納部12は、ノード、リンクを含む道路ネットワークデータや背景データ、施設情報等の地図情報が格納される、例えば、HDDやDVDである。しかしながら、これに限らず、図示しない通信手段(例えば、携帯電話、PHS等)によって地図情報格納部12に格納する情報をセンター設備(非図示)より都度ダウンロードする構成も可能である。
【0021】
測位部13は、地図表示装置1の現在位置や速度、方位を測位するための手段であり、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機、車速センサ、ジャイロ(角速度)センサ、加速度センサなどである。GNSS受信機は、例えば、GPS受信機であり、複数の衛星からの電波を受信し、それを復調することで受信機の絶対位置を計測するものである。なお、現在位置や速度、方位の測位には、GNSS受信機や各種センサを単独又は複合利用して行う。
【0022】
入力部16は、利用者が経路探索や施設検索などの希望する機能を実行するために必要な情報を入力するもので、押圧式のスイッチを所定数並べた構成を採るものや、タッチパネル式のもの、リモコン、あるいは利用者の声を認識して地図表示装置1への入力情報に変換する、マイクロフォン、音声認識エンジン等で構成される。
【0023】
交通情報受信部17は、提供される交通渋滞情報の種類に応じて各種のものが利用でき、FM放送波、光/電波ビーコン、DSRC受信機、携帯電話などに対応する受信装置が用いられる。また、これに限らず、地図表示装置1内部に過去の渋滞統計データを記憶した渋滞予測データベースを設け、ここから交通渋滞情報を受け取っても良い。
【0024】
表示装置181は、制御部11により作成される表示画像データに従って画像を表示する、例えば液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどである。
【0025】
スピーカ182は、制御部11により作成される経路案内データなどの音声データに従って、音声を出力する。なお、アンプ等は省略している。
【0026】
なお、制御部11の一部を構成する経路探索部141、別経路探索部142、時間曲線算出部143、表示制御部144、施設検索部145は、図示しないセンター設備に格納されている場合もあり、そのような場合には、地図表示装置1は、センター設備から演算結果をダウンロードして利用することとなる。
【0027】
経路探索部141は、入力部16により入力された目的地を地図情報格納部12に格納された地図情報から検索する機能と、測位部13が測位する現在地又は別経路探索部142から指示された出発地から当該目的地に至るまでの推奨経路を地図情報格納部12に格納される道路ネットワークデータから探索する機能との2つの機能を有するものである。推奨経路の探索には、周知のダイクストラやA*アルゴリズムが用いられる。また、探索条件としては、一般道優先、高速道優先、距離優先、時間優先、料金節約、幹線優先などの条件を単独又はこれらのいずれかを複合した条件が用いられる。時間優先の条件が含まれる場合には、交通情報受信部17で受信する交通渋滞情報が探索する際のコスト計算に加味される。
【0028】
別経路探索部142は、推奨経路上の1以上のノード(n個として以下説明する)を出発地とし、地図情報格納部12に格納された道路ネットワークデータを参照しながら、所定範囲内の別経路を全方位にわたり探索(すなわち、目的地は複数となる)する機能を有するものである。なお、探索条件としては、時間優先が用いられ、交通情報受信部17で受信する交通渋滞情報が探索する際のコスト計算に加味される。また、探索終了条件は以下のいずれかを満たしたときとする。
(1)到達時間が所定時間に達したとき
(2)到達時間に推奨経路までの復帰時間を加算した往復時間が所定時間に達したとき(往路と復路で同じ道を通るものとする)
(3)ロスタイムが所定時間に達したとき
なお、(1)〜(3)のいずれを用いるかは、事前に図示しない設定メニュー画面等を用いて使用者に選択させておくことが好ましい。
【0029】
上記ロスタイムとは、目的地が入力部16により入力され経路探索部141により推奨経路が探索された状態で、新たな経由地を経由して目的地に行く場合に、当初の推奨経路を通って行く場合よりも余計にかかる時間をいう。具体的に、(3)が探索終了条件の場合を説明すると、別経路探索部142は経路探索部141と協調しながら経路探索範囲を広げていき経由地を探索する。ここまでは、(1)、(2)を探索終了条件とした場合と同じである。その後、別経路探索部142が探索を広げる過程で所定のノード(到達時間=Ti、i=1〜n)をさらに、経路探索部141の出発地とし、当初の目的地までの経路探索を実行する(目的地までの到達時間=Ti’、i=1〜n)。このとき、経路探索部141によって算出された現在地から目的地に至る推奨経路の到達時間をTとすると、ロスタイムはLTi=(Ti+Ti’)−Tとして算出される。なお、現在地から別経路探索部142が探索を広げる過程の所定のノードを経由地とし、目的地に至る経路全てを経路探索部141により再探索してもよい。
【0030】
時間曲線算出部143は、別経路探索部142の処理結果としての複数ノードを1周する形でつないでいくことで、経路探索部141によって算出された現在地から目的地に至る推奨経路からの時間的な離れ具合を表す時間曲線を求める機能を有している。場合によっては、複数ノードに加え、補間点を求め、補間点も接続される時間曲線を求める。
【0031】
表示制御部144は、経路探索部141が算出した現在地から目的地に至る推奨経路や時間曲線算出部143が算出した時間曲線を表示装置181に表示される地図上に合成表示する機能を有している。なお、時間曲線が表示できない場合には、時間曲線が表示できない旨を示すメッセージを表示装置181に表示する。表示制御部144は、さらに、経路誘導案内中に移動体の位置に応じて時間曲線上の一部区間を他の区間と識別可能に表示する機能を有している。これにより、経路上のすべての地点から時間曲線で描かれた範囲が、所定の時間で到達できる(所定の往復時間で到達できる、ロスタイムが所定の時間で到達できる)といった誤解を招くことを避けることができる。表示制御部144は、さらに、表示される時間曲線に対する使用者の操作を入力部16より受付けると、それに応じて任意の時間情報に変化させる機能を有している。
【0032】
施設検索部145は、入力部16により入力された施設を検索するために必要なキーワード(例えば、ファミリーレストランやガソリンスタンドなどのジャンル名)に基づき、推奨経路と時間曲線の間に存在する施設を地図情報格納部12に格納される地図情報から検索する機能を有している。
【0033】
次に、表示制御部144により表示される推奨経路と時間曲線の様子を図2を用いて説明する。図2は、表示制御部144により表示される推奨経路と時間曲線の表示例を示す模式図である。図2において、2aは推奨経路であり、2bは時間曲線、2cは時間情報を表すマークであり、表示装置181に表示される。なお、推奨経路2a以外の道路ネットワークデータや背景データ、縮尺レベル、方位マーク、施設情報(例えば、ファミリーレストランやガソリンスタンドを示すランドマークアイコン)、その他メニュー等の表示は説明を簡略化するために省略している。
【0034】
図2に示すように、現在地から目的地までの推奨経路2aに対して、経路上の任意の地点から経路近傍に存在する所定の地点に立ち寄った場合の時間情報を時間曲線2bという形で地図上に視認性良く表示することで、使用者は候補となる複数の地点の中から立ち寄り地点を決める場合などにおいて、直感的に対比しながら把握することができる。
【0035】
次いで、地図表示装置1により処理される時間曲線表示処理の流れを図3〜図6に基づき説明する。なお、以下説明する時間曲線表示処理は、前述した経路探索部141、別経路探索部142、時間曲線算出部143、表示制御部144により実行されるものである。
【0036】
図3は、現在地と目的地がセットされてから地図上に推奨経路と時間曲線を合成表示するまでの動作を示す動作フロー図である。図4は、図3の動作フローを補足する模式図である。また、図5は、図3の動作フロー図におけるステップS15の処理について詳細説明する動作フロー図である。図6は、図5の動作フロー図を補足する模式図である。
【0037】
図3において、まず、現在地および目的地がセットされると(ステップS10)、推奨経路が探索される(ステップS11)。ステップS11は、前述の経路探索部141により実行される。次いで、推奨経路上の接続リンク数が3以上の条件を満たす1以上のノードを抽出する(ステップS12)。すなわち、三差路以上の交差点ノードが抽出される。ここで、図4におけるノード4a、4b、4cがステップS12で抽出されたノードに対応している。なお、抽出されるノードは接続リンク数が3以上の条件を満たす推奨経路上のすべてのノードとしても良いし、経路誘導案内を行う分岐点となるノードとしても良い。次に、抽出した各ノードを出発地とする所定範囲内の別経路を全方位にわたり探索する(ステップS13)。そして、前述の探索終了条件が成立したときに探索を終了させ、探索が広がった地点のノードの中から暫定代表ノードを抽出する(ステップS14)。ここで、図4におけるP〜P16がノード4aを出発地として別経路が探索された場合の暫定代表ノードである。同様に、Q〜Q16がノード4bを出発地として別経路が探索された場合の暫定代表ノードであり、R〜R16がノード4cを出発地として別経路が探索された場合の暫定代表ノードである。この暫定代表ノードの算出方法は、出発地を中心に対象地図をm方向に等分割し、方向1から方向mまでの領域の中で出発地から最も遠い到達可能な位置(ノード)を代表ノードとする(特開平11−16094号公報に開示されるアメーバ表示ノード抽出処理と同様の方法)。なお、S12〜S14は前述の別経路探索部142により実行される。図3の動作フローに説明を戻す。ステップS15では、推奨経路近傍に存在する所定の地点までの時間曲線を算出する。ここで、図6における時間曲線6がステップS15で算出された時間曲線を表している。なお、ステップS15は時間曲線算出部143によって実行される。次に、ステップS16では時間曲線が求まったか否かを判定する。時間曲線が求まらなかった場合には(ステップS16:No)、地図上に推奨経路を表示するとともに、時間曲線は算出できなかった旨のメッセージを表示する(ステップS17)。一方、時間曲線が求まった場合には(ステップS16:Yes)、地図上に推奨経路と時間曲線を表示する(ステップS18)。なお、ステップS17及びS18は、表示制御部144によって実行される。
【0038】
次に、図5を用いて、時間曲線算出部143が時間曲線を算出するまでの詳細な動作フローを説明する。
【0039】
図5において、まず、図3のS14で求めたすべての暫定代表ノードを確定代表ノードとして登録する(ステップS20)。確定代表ノードとは、最終的に時間曲線を引くための代表ノードを表している。次いで、すべての推奨経路上のノードに対する暫定代表ノードを結ぶ暫定曲線を引く(ステップS21)。このステップS21で結ぶ暫定曲線は図4に示す5a、5b、5cであり、P〜P16、〜Q16、R〜R16の暫定代表ノードをそれぞれベジエ曲線やスプライン曲線で連続的に接続したものである。なお、この暫定曲線5a、5b、5cは、地図表示装置1のワーキングエリア部15で引かれる(管理される)ものであり、表示装置181へ実際には表示されない。次に、ステップS22では、全ての暫定曲線が交わるかを判定する。もし交わらない場合は(ステップS22:No)、時間曲線は算出できないものとする(ステップS23)。全ての曲線が交わる場合には(ステップS22:Yes)、ステップS24に処理を進める。ステップS24では、曲線と曲線の交わる内部に暫定代表ノードが存在するかを確認する。存在する場合には(ステップS24:Yes)、ステップS25に処理を進め、存在しない場合には(ステップS24:No)、ステップS26に処理を進める。ここで、曲線と曲線の交わる内部の暫定代表ノードとは、図4で示した暫定代表ノードの中で、P〜P3、〜Q、Q〜Q、R〜R、R12〜R14のことである。ステップS25では、当該暫定代表ノードを確定代表ノードから抹消する。次いで、確定代表ノードを整列する(ステップS26)。ここで、図4の場合、P〜P16、、R〜R11、・・・、R15〜R16、Q〜Q16という具合に時間曲線を順番に1周するように確定代表ノードを整列する。そして、この整列された確定代表ノードを結ぶ時間曲線をベジエ曲線やスプライン曲線を用いて連続的に接続する(ステップS27)。このようにして、図6に示した時間曲線6が引かれることになる。
【0040】
以上のように、これから移動体が経路上を進行する予定となっている地点から一定時間内に到達可能な範囲(往復時間で到達可能な範囲、ロスタイムの範囲)を表示することができる。特に、通常表示される地図上に経路と時間曲線を同時に表示することで、使用者は経路沿いから地図上の複数の地点への距離的な遠近感、時間的な遠近感などを同時に確認でき、立ち寄る地点の決定に際して有効となる。
【0041】
また、時間曲線の算出方法は、図5の動作フローに示した方法だけに限らず他の方法を採用することもできる。図7は他の方法により表示される時間曲線の表示例を示す模式図である。図7に示すように、暫定曲線5a、5b、5cの交わる点であるS〜Sを補間点として、時間曲線7を求めるようにしても良い。これにより、時間曲線6と比べ、より正確な時間曲線を引くことができる。
【0042】
図8は、表示制御部144により表示される推奨経路と時間曲線の他の表示例を示す模式図である。図8において、8aは推奨経路であり、8b、8dは時間曲線、8c、8eは時間情報を表すマークであり、表示装置181に表示される。なお、推奨経路8a以外の道路ネットワークデータや背景データ、縮尺レベル、方位マーク、施設情報(例えば、ファミリーレストランやガソリンスタンドを示すランドマークアイコン)、その他メニュー等の表示は説明を簡略化するために省略している。
【0043】
図8に示すように、現在地から目的地までの推奨経路8aに対して、経路上の任意の地点から経路近傍に存在する所定の地点に立ち寄った場合の時間情報を時間曲線8b、8dという形で地図上に複数本表示するようにしても良い。このように時間曲線を複数本表示することで、1本だけ表示するのと比べて、所定の方向に対する混雑具合をまるで等高線の勾配変化のように把握することができる。つまり、時間曲線の間隔が狭いとその分だけ渋滞していることを表し、時間曲線の間隔が広いとその分だけスムーズに進行できることを表すこととなるので、複数の時間曲線の間隔を相対比較しながら、使用者はより時間曲線の間隔が広い箇所で立ち寄り地点を決めるといった判断ができ有益である。
【0044】
次いで、地図表示装置1により処理される経路誘導案内中の時間曲線表示処理の流れを図9〜図10に基づき説明する。なお、以下説明する経路誘導案内中の時間曲線表示処理は、前述した表示制御部144により実行されるものである。
【0045】
図9は、経路誘導案内中の時間曲線表示処理の流れを示す動作フロー図である。また、図10は、図9の動作フローを補足する模式図である。
【0046】
図9において、まず、推奨経路上の現在地の属するリンクをマップマッチング処理により算出し、自車位置マークを更新する(ステップS30)。次いで、ステップS30で求めたリンクから目的地寄りでかつ図3のステップS12で抽出したノードを探索する(ステップS31)。ここで、ステップS31により探索されるノードについて図10を用いて説明する。図10における推奨経路上の区間dに現在地(自車位置マーク)があるときは、ノード4aが探索されることになる。同様に、区間d、dに現在地があるときは、ノード4b、4cがそれぞれ探索される。図9の動作フローに説明を戻す。ステップS32では、時間曲線上のステップS31で求めたノードに対応する一部区間を他の区間と識別可能に表示する。ここで、時間曲線上のステップS31で求めたノードに対応する一部区間とは、図10におけるe、e、eのことであり、時間曲線6と暫定曲線5a、5b、5cの重なる区間である。よって、例えば現在地が区間dにあるときは、時間曲線上のeの区間が全体の時間曲線の表示とは識別可能に表示する。識別可能に表示とは、例えば色を変更したり、点滅させたり、線の太さを太くしたり、その他の方法で強調したりすることを表している。なお、同時に対応するノード4a、4b、4cを強調させて表示しても良い。図9の動作フローに説明を戻す。ステップS33では、目的地に到着したかを判断する。目的地に到着していない場合には(ステップS33:No)、ステップS30に処理を戻す。一方、目的地に到着した場合には(ステップS33:Yes)、経路誘導案内を終了する。上記説明したように、経路上のすべての地点から時間曲線で描かれた範囲が、所定の時間で到達できる(所定の往復時間で到達できる、ロスタイムが所定の時間で到達できる)といった誤解を招くことを避けることができる。
【0047】
図11は、表示制御部144によって表示される時間曲線に対する使用者の操作を入力部16(この場合、表示装置181と一体になっているタッチパネル式のもの)より受付けると、それに応じて任意の時間情報に変化させる機能を説明した図である。
【0048】
図11(a)、(b)に示すように、表示されている時間曲線(到達時間=10分、あるいは、往復時間=10分、あるいは、ロスタイム=10分)上の時間マークを押下し、そのままスライドさせて時間情報=20分を表示させている例を示している。当然時間曲線は10分と20分の間の時間においても表示されても良く、使用者が押下した任意の位置における時間曲線が連続的に表示される。なお、時間マークは使用者が押下している間は、反応色に変える等しても良い。
【0049】
また、図11(c)、(d)では、画面上にスライダバーが表示されており、使用者がそのスライダを左右に移動させることで任意の時間情報の時間曲線を表示可能にしたものである。なお、スライダバーが上下方向に縦長に表示されている場合には、スライダを上下方向に移動させるようにしても良い。これにより、時間曲線の直感的な操作が実現できる。
【0050】
このように図11に示したタッチパネル式のもの以外にも、リモコンなどで時間曲線に対する操作を受付けても良い。
【0051】
また、時間情報(到達時間あるいは往復時間あるいはロスタイム)の小さい値から大きい値へと波紋状に順次表示する効果を出すようにしても良い。これにより、連続的なきめ細かい単位で時間曲線を表示することができるので、使用者の視覚に訴え、時間情報の把握がより理解しやすいものとなる。
【0052】
次いで、地図表示装置1により処理される施設検索処理の流れを図12及び図13に基づき説明する。なお、以下説明する施設検索処理は、前述した施設検索部145により実行されるものである。
【0053】
図12は、使用者により施設検索要求が発生した場合の動作を示す動作フロー図である。図13は、図12の動作フローを補足する模式図である。
【0054】
図12において、使用者による施設検索要求が発生するまでは待機状態を保つ(ステップS40及びステップS41:No)。なお、このときには出発地から目的地までの経路とその時間曲線は算出されているものとする。施設検索要求が発生した場合には(ステップS41:Yes)、ステップS42に処理を進める。ここで、図13に例示する検索メニュー画面9aにおいて、ファミリーレストランが選択され、検索ボタン91が押下された場合について以下説明する。ステップS42では、推奨経路と時間曲線の範囲内に存在する施設を検索する。そして、該当する施設(地点L〜Lとする)の検索結果が表示される(ステップS43)。ここで、該当する施設の検索結果は図13における検索結果画面9bに示す形態で表示される。図13では、検索結果が経路沿いでかつ経路からの到着時間が近い順にソートされた結果が表示されている一例を表している。もちろん、往復時間、ロスタイムが近い順にソートすることも可能である。次いで、使用者により地点L〜Lのうち1つの施設が選択されると(ステップS44)、経路が再探索される(ステップS45)。ただし、時間情報が往復時間の場合には、当初の出発地から目的地までの経路は変更しない。使用者は施設に立ち寄った後、また当初の経路まで戻ってくるためである。
【0055】
これにより、施設検索の際、既に設定されている経路からの当該施設までの時間情報を加味した検索を行うことができ、使用者の利便性を向上することができる。
【0056】
また、図13において、時間UP/DOWNボタン92を操作することにより、経路からの時間情報をさらに操作することもできる。時間情報を操作した後は、絞込みボタン93を選択することにより、施設をさらに絞り込む(又は広げる)ことができる。
【0057】
また、図5の動作フロー図において、全ての暫定曲線が交わらない場合には、時間曲線算出不可としたが、所定の閾値を設け、数箇所程度交わらない箇所があったとしても時間曲線を求めるようにしても良い。図14を用いて詳しく説明する。
【0058】
図14は、全ての暫定曲線が交わらない場合でも、所定の閾値を設け、数箇所程度交わらない箇所があったとしても時間曲線を表示する様子を示す模式図である。図14において、10aは推奨経路であり、10b、10dは時間曲線、10c、10eは時間情報を表すマークであり、表示装置181に表示される。なお、10f、10gは暫定曲線であり、表示装置181には実際には表示されない。図14に示すように、1箇所だけ暫定曲線10f、10gが交わらない箇所があったとしても、時間曲線10b、10dをそれぞれ別の閉曲線として求めることにより、経路上からの時間的な離れ程度を表現しても良い。
【0059】
以上説明した実施の形態1に係る地図表示装置により、経路上の任意の地点から経路近傍に存在する所定の地点に立ち寄った場合の時間情報(所定地点までの到達時間、到達時間に当初の経路までの復帰時間を加算した往復時間、ロスタイムなど)を地図上に視認性良く表示することができる。よって、使用者は地図上の施設がどのくらいの追加時間で行けるのかを即座に知ることができ、立ち寄ることが可能かどうかや最適な立ち寄り場所がどこであるかを容易に認識することが可能となる。
【0060】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。特に、本装置を携帯型の地図表示装置、パソコン上に表示する地図表示アプリケーションとしても利用できる。
【0061】
(実施の形態2)
実施の形態1に係る地図表示装置では、時間曲線を求めるために推奨経路上の複数のノードを出発地とする所定範囲内の経路を全方位にわたり探索終了条件が成立するまで探索する。しかしながら、実施の形態2では、事前に推奨経路近傍に存在する希望施設を入力することにより、より簡便に時間曲線を求める構成とする。
【0062】
以下、本発明の実施の形態2に係る地図表示装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0063】
本実施の形態の地図表示装置全体の構成は図1と同じであるので、地図表示装置の構成に関する説明を省略する。
【0064】
まず、制御部11に格納されている経路探索部141、別経路探索部142、時間曲線算出部143、表示制御部144、施設検索部145の概要を説明する。なお、これらの構成は、図示しないセンター設備に格納されている場合もあり、そのような場合には、地図表示装置1は、センター設備から演算結果をダウンロードして利用することができる。
【0065】
経路探索部141は、入力部16により入力された目的地を地図情報格納部12に格納された地図情報から検索する機能と、測位部13が測位する現在地から当該目的地に至るまでの推奨経路を地図情報格納部12に格納される道路ネットワークデータから探索する機能との2つの機能を有するものである。推奨経路の探索には、周知のダイクストラやA*アルゴリズムが用いられる。また、探索条件としては、一般道優先、高速道優先、距離優先、時間優先、料金節約、幹線優先などの条件を単独又はこれらのいずれかを複合した条件が用いられる。時間優先の条件が含まれる場合には、交通情報受信部17で受信する交通渋滞情報が探索する際のコスト計算に加味される。
【0066】
別経路探索部142は、推奨経路上の1以上のノードを出発地とし、後述する施設検索部145により検索される希望施設までの立ち寄り経路又は、希望施設までの立ち寄り経路と希望施設から推奨経路までの復帰経路又は、希望施設までの立ち寄り経路と希望施設から目的地までの新経路を探索する機能を有している。なお、探索条件としては、時間優先が用いられ、交通情報受信部17で受信する交通渋滞情報が探索する際のコスト計算に加味される。
【0067】
時間曲線算出部143は、経路探索部141によって算出された現在地から目的地に至る推奨経路から、入力部16より入力される希望時間に対応付けられる時間的な離れ具合を表す時間曲線を別経路探索部142の処理結果を用いて求める。ここで、希望時間とは、使用者が下記の(1)〜(3)のいずれかを希望する時間である。
(1)推奨経路からの希望施設までの到達時間
(2)推奨経路からの希望施設までの到達時間に希望施設から推奨経路までの復帰時間を加算した往復時間(往路と復路で必ずしも同じ道を通るとは限らない)
(3)ロスタイム
なお、(1)〜(3)のいずれを用いるかは、事前に図示しない設定メニュー画面等を用いて使用者に選択させておくことが好ましい。また、入力部16により希望時間を入力する画面(非図示)で選択させてもよい。
【0068】
表示制御部144は、経路探索部141が算出した現在地から目的地に至る推奨経路や時間曲線算出部143が算出した時間曲線、さらには、後述する施設検索部145が検索する希望施設のリストを表示装置181に表示される地図上に合成表示する機能を有している。なお、時間曲線が表示できない場合には、時間曲線が表示できない旨を示すメッセージを表示装置181に表示する。
【0069】
施設検索部145は、入力部16により入力された施設を検索するために必要なキーワード(例えば、ファミリーレストランやガソリンスタンドなどのジャンル名)に基づき、推奨経路上の1以上のノードを中心とする所定距離範囲内の希望施設を地図情報格納部12に格納される地図情報から検索する機能を有している。
【0070】
表示制御部144によって表示される推奨経路と時間曲線の様子は図2に示した模式図と同じであり、図2に示すように、現在地から目的地までの推奨経路2aに対して、経路上の任意の地点から経路近傍に存在する所定の地点に立ち寄った場合の時間情報を時間曲線2bという形で地図上に視認性良く表示することで、使用者は候補となる複数の地点の中から立ち寄り地点を決める場合などにおいて、直感的に対比しながら把握することができる。
【0071】
次いで、地図表示装置1により処理される時間曲線表示処理の流れを図15〜図19に基づき説明する。なお、以下説明する時間曲線表示処理は、前述した経路探索部141、別経路探索部142、時間曲線算出部143、表示制御部144、施設検索部145により実行されるものである。
【0072】
図15は、地図上に時間曲線と施設リストを合成表示するまでの動作を示す動作フロー図である。図16は、図15の動作フローを補足する模式図である。また、図17は、図15の動作フロー図におけるステップS57の処理について詳細説明する動作フロー図である。図18は、図16の一部の拡大図である。図19は、図17の動作フロー図によって求められる時間曲線を表す模式図である。
【0073】
図15において、まず、現在地及び目的地がセットされると(ステップS50)、推奨経路が探索される(ステップS51)。ステップS51は、前述の経路探索部141により実行される。次いで、地図上に推奨経路が表示される(ステップS52)。ステップS52は表示制御部144により実行される。次いで、使用者により入力部16を介して希望時間と希望施設の入力を受け付けると(ステップS53)、推奨経路上の1以上のノードを抽出する(ステップS54)。さらに、ステップS54で抽出した各ノードを中心とする所定距離範囲内の希望施設を検索する(ステップS55)。所定距離は例えば5kmと固定の値を取ることもできるし、希望時間と平均車速によって可変の値を取ることもできる。可変の値を取る場合、例えば、希望時間(推奨経路からの希望施設までの到達時間)が10分で平均車速が30km/hのときには、所定距離は5kmと設定される。平均車速はあらかじめ地図情報格納部12に格納される値を用いるか交通情報受信部17を介して取得することができる。なお、ステップS54及びステップS55の処理は施設検索部145により実行される。次いで、ステップ56では、ステップ54で求めた推奨経路上の1以上のノードを出発地とし、希望施設までの立ち寄り経路(希望時間が(1)のとき)又は、希望施設までの立ち寄り経路と希望施設から推奨経路までの復帰経路(希望時間が(2)のとき)又は、希望施設までの立ち寄り経路と希望施設から目的地までの新経路(希望時間が(3)のとき)を探索する。なお、ステップS56は別経路探索部142により実行される。次いで、ステップS53の希望時間に対する時間曲線をステップS56の探索結果を用いて求める(ステップS57)。そして、地図上に時間曲線と施設リストを表示する(ステップS58)。
【0074】
なお、ステップS55において、希望施設の検索が1件もヒットしないときは、時間曲線が表示できない旨を示すメッセージを表示装置181に表示する。すなわち、いくつかの希望施設がヒットしないと時間曲線が書けないことを表している。
【0075】
ここで、図16を用いてステップS54〜ステップS56を補足する。以下の説明では、希望時間は、上述の(1)とし、別経路探索部142はステップS56にて、希望施設までの立ち寄り経路を探索されたものとして説明する。
【0076】
図16において、21、22はノードであり、ステップS54で抽出されたノードに対応している。また、ステップS55により、ノード21を中心とする半径5km円20b内に希望施設23a、24aの2箇所が、また、ノード22を中心とする半径5km円20c内に希望施設25a、26aの2箇所が検索されたことを表している。23b、24bは、ステップS56により求められる推奨経路20a上のノード21から希望施設23a、24aまでの経路である。同様に、25b、26bは、ステップS56により求められる推奨経路20a上のノード22から希望施設25a、26aまでの経路である。また、希望施設23aまでは8分で、希望施設24aまでは12分で、希望施設25aまでは14分で、希望施設26aまでは7分で到着できるものとして説明する。
【0077】
次に、図17を用いて、時間曲線算出部143が時間曲線を算出するまでの詳細な動作フローを説明する。
【0078】
図17において、まず、希望施設まで希望時間内に到着するかを判定する(ステップS60)。希望時間内に到着する場合には(ステップS60:Yes)、推奨経路から希望施設までの経路上の希望時間に対応する座標点を求める(ステップS61)。一方、希望時間内に到着しない場合には(ステップS60:No)、希望施設から推奨経路に対し垂線を引く(ステップS62)。次いで、垂線上の希望時間に対応する座標点を求める(ステップS63)。次いで、ステップS64では、出発地、目的地を座標点に追加、整列を行う。そして、座標点を順番に結ぶことで時間曲線を求める(ステップS65)。推奨経路の片側に対して1本、計2本の時間曲線を引くことになる。なお、時間曲線はベジエ曲線やスプライン曲線を用いて連続的に接続する。
【0079】
ここで、図16、図18、図19を用いて図17の動作フロー図を補足する。以下の説明では希望時間は10分であるものとして説明を行う。
【0080】
図16において、座標点24c、25cが図17のステップS61で求められた座標点に対応している。垂線23d、26dが図17のステップS62で求められた垂線に対応している。また、座標点23c、26cが図17のステップS63で求められた座標点に対応している。なお、図16における半径5km円20b、20c及び垂線23d、26dは、地図表示装置1のワーキングエリア部15で引かれる(管理される)ものであり、表示装置181へ実際には表示されない。また、図16では、半径5km円20b、20cが交わらないように描いているが、もし交わる場合には、重複する希望施設が施設検索部145の検索にヒットすることになるが、希望時間が短い方が採用されることになる。
【0081】
ステップS63で求められる座標点23cは、より具体的には、図18に示すように、垂線23d上で推奨経路から希望施設23aまでの長さと希望施設23aから座標点23cまでの長さの比が8:2になるように求める(希望時間は10分であるため、垂線23d上の10分付近と想定される座標点を求める)。
【0082】
また、図19において、時間曲線20d、20eが図17のステップS65で引かれる時間曲線を表しており、表示装置181に表示される。20fは時間マークを表している。このように、座標点をなめらかに結ぶ時間曲線を引くことができる。さらに、図19に示すように希望施設までの経路23b、24b、25b、26bを表示装置181に時間曲線20d、20eとともに表示することで、推奨経路20aのどの地点から希望施設に向かえば良いかを使用者は容易に把握できる。
【0083】
このように、実施の形態2に係る地図表示装置では、実施の形態1の地図表示装置と比べ、事前に推奨経路近傍に存在する希望施設を入力する必要があるが、より簡便に時間曲線を求めることができ、処理性能があまり高くない地図表示装置においても実用に耐え得ることができる。
【0084】
また、上記の説明では、別経路探索部142は、推奨経路から希望施設までの立ち寄り経路を探索し、希望時間を推奨経路から希望施設までの到達時間として説明したが、別経路探索部142が希望施設までの立ち寄り経路と希望施設から推奨経路までの復帰経路を探索する場合には、希望時間を上述の(2)とし、同様に希望施設までの立ち寄り経路と希望施設から目的地までの新経路を探索する場合には希望時間を上述の(3)とする時間曲線を同様に求めることが可能である。特に希望時間を(2)とする場合には、表示装置181に希望施設までの経路に加え、推奨経路までの復帰経路を同時に表示しても良い。また、希望時間を(3)とする場合には表示装置181に希望施設までの経路に加え、目的地までの新経路を同時に表示しても良い。
【0085】
上記説明した実施の形態2に係る地図表示装置により、経路上の任意の地点から経路近傍に存在する所定の地点に立ち寄った場合の時間情報(所定地点までの到達時間、到達時間に当初の経路までの復帰時間を加算した往復時間、ロスタイムなど)を地図上に視認性良く表示することができる地図表示装置および時間曲線算出部を実現することができる。
【0086】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。特に、本装置を携帯型の地図表示装置、パソコン上に表示する地図表示アプリケーションとしても利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の地図表示装置は、移動体に設置され、移動体の現在位置を含む経路情報を地図とともに表示する地図表示装置、車載情報端末として有用である。また、携帯型の地図表示装置、パソコン上に表示する地図表示アプリケーションにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本実施の形態1に係る地図表示装置の概略の構成を示す構成図
【図2】表示制御部144により表示される推奨経路と時間曲線の表示例を示す模式図
【図3】現在地と目的地がセットされてから地図上に推奨経路と時間曲線を合成表示するまでの動作を示す動作フロー図
【図4】図3の動作フローを補足する模式図
【図5】図3の動作フロー図におけるステップS15の処理について詳細説明する動作フロー図
【図6】図5の動作フロー図を補足する模式図
【図7】他の方法により表示される時間曲線の表示例を示す模式図
【図8】表示制御部144により表示される推奨経路と時間曲線の他の表示例を示す模式図
【図9】経路誘導案内中の時間曲線表示処理の流れを示す動作フロー図
【図10】図9の動作フローを補足する模式図
【図11】表示制御部144によって表示される時間曲線に対する使用者の操作を入力部16より受付けると、それに応じて任意の時間情報に変化させる様子を示した図
【図12】使用者により施設検索要求が発生した場合の動作を示す動作フロー図
【図13】図12の動作フローを補足する模式図
【図14】全ての暫定曲線が交わらない場合に、所定の閾値を設け、数箇所程度交わらない箇所があったとしても時間曲線を表示する様子を示す模式図
【図15】地図上に時間曲線と施設リストを合成表示するまでの動作を示す動作フロー図
【図16】図15の動作フローを補足する模式図
【図17】図15の動作フロー図におけるステップS57の処理について詳細説明する動作フロー図
【図18】図16の一部の拡大図
【図19】図17の動作フロー図によって求められる時間曲線を表す模式図
【符号の説明】
【0089】
1 地図表示装置
2a、8a、10a、20a 推奨経路
2b、6、7、8b、8d、10b、10d、20d、20e 時間曲線
2c、8c、8e、10c、10e、20f 時間マーク
4a、4b、4c、21、22 ノード
5a、5b、5c、10f、10g 暫定曲線
9a 検索メニュー画面
9b 検索結果画面
11 制御部
12 地図情報格納部
13 測位部
15 ワーキングエリア部
16 入力部
17 交通情報受信部
18 出力部
20b、20c 半径5km円
23a、24a、25a、26a 希望施設
23b、24b、25b、26b 推奨経路から希望施設までの経路
23c、24c、25c、26c、27、28 座標点
23d、26d 垂線
91 検索ボタン
92 時間UP/DOWNボタン
93 絞込みボタン
141 経路探索部
142 別経路探索部
143 時間曲線算出部
144 表示制御部
145 施設検索部
181 表示装置
182 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報格納部の地図データを使って、第一出発地から目的地までの第一経路を探索する第一経路探索部と、
前記第一経路上の少なくとも1つのノードを第二出発地とし、前記第二出発地のそれぞれから所定時間内に到達可能であるか、または往復時間が所定時間範囲内である複数の経由地を探索する第二経路探索部と、
複数の前記経由地を繋ぐことにより前記第一経路上からの時間的な離れ具合を表す時間曲線を求める時間曲線算出部と、
前記第一経路と前記時間曲線を前記地図データとともに表示する表示部と、
を有することを特徴とする地図表示装置。
【請求項2】
前記第一出発地から前記目的地までの前記経由地を通る第三経路を探索する第三経路探索部をさらに有し、
前記時間曲線算出部は、複数の前記経由地の中で、前記第三経路と前記第一経路との所要時間の差が所定時間となる経由地を繋ぐことにより前記第一経路上からの時間的な離れ具合を表す時間曲線を求めることを特徴とする請求項1に記載の地図表示装置。
【請求項3】
前記時間曲線算出部は、複数の前記第二出発点のそれぞれから求めた複数の前記経由地を繋いで各々閉曲線とし、複数の前記閉曲線を繋ぐことにより時間曲線を求めることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の地図表示装置。
【請求項4】
複数の前記第二出発点のそれぞれから求めた複数の前記閉曲線の交わる内部に前記経由地が存在する場合、時間曲線を求める対象としないことを特徴とする請求項3に記載の地図表示装置。
【請求項5】
複数の前記第二出発点のそれぞれから求めた複数の前記閉曲線が交わらないとき、前記表示部は、時間曲線が表示できない旨のメッセージを表示することを特徴とする請求項3に記載の地図表示装置。
【請求項6】
現在地の属するリンクにある前記第二出発地から探索した経由地を繋いだ閉曲線を他の閉曲線と識別可能に表示することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の地図表示装置。
【請求項7】
時間情報に関する指示を入力するための入力部を有し、
前記表示部は、前記入力部による前記時間情報と関連付けられた任意点の移動指示に応じた時間曲線に変更することを特徴とする請求項3に記載の地図表示装置。
【請求項8】
前記表示部には時間情報を変更可能なスライダバーが表示されており、
前記表示部は、前記入力部によるスライダバーの設定に応じた時間曲線を表示することを特徴とする請求項3に記載の地図表示装置。
【請求項9】
前記第一経路と前記時間曲線に囲まれた範囲の施設検索を行う検索部を有することを特徴とする請求項3に記載の地図表示装置。
【請求項10】
地図情報格納部の地図データを使って、第一出発地から目的地までの第一経路を探索する第一経路探索部と、
前記第一経路上の少なくとも1つのノードを第二出発地とし、前記第二出発地のそれぞれを中心とする所定の距離範囲内の施設を検索する施設検索部と、
前記第二出発地のそれぞれから前記施設検索部により検索されたそれぞれの前記施設への経路を探索する第二経路探索部と、
前記第二経路探索部により探索された施設の中から、前記第二出発地の各々から前記施設への到達時間または往復時間が所定時間範囲内であるか、若しくは前記第一経路と前記第一出発地から前記施設を経由して前記目的地までを探索した第三経路との所要時間差が所定時間範囲内の複数の施設位置を座標点として抽出する座標点抽出部と、
前記第一出発地と前記座標点と前記目的地を繋ぐことにより、前記第一経路上からの時間的な離れ具合を表す時間曲線を求める時間曲線算出部と、
前記第一経路と前記時間曲線を前記地図データとともに表示する表示部と、
を有することを特徴とする地図表示装置。
【請求項11】
地図および出発地から目的地までの経路を表示するための地図表示方法であって、
地図情報格納部の地図データを使って、第一出発地から目的地までの第一経路を探索する第一経路探索ステップと、
前記第一経路上の少なくとも1つのノードを第二出発地とし、前記第二出発地のそれぞれから所定時間内に到達可能であるか、または往復時間が所定時間範囲内である複数の経由地を探索する第二経路探索ステップと、
複数の前記経由地を繋ぐことにより前記第一経路上からの時間的な離れ具合を表す時間曲線を求める時間曲線算出ステップと、
前記第一経路と前記時間曲線を前記地図データとともに表示する表示ステップと、
を有することを特徴とする地図表示方法。
【請求項12】
前記第一出発地から前記目的地までの前記経由地を通る第三経路を探索する第三経路探索ステップをさらに有し、
前記時間曲線算出ステップは、複数の前記経由地の中で、前記第三経路と前記第一経路との所要時間の差が所定時間となる経由地を繋ぐことにより前記第一経路上からの時間的な離れ具合を表す時間曲線を求めることを特徴とする請求項11に記載の地図表示方法。
【請求項13】
地図および出発地から目的地までの経路を表示するためのコンピュータ実行可能なプログラムであって、
地図情報格納部の地図データを使って、第一出発地から目的地までの第一経路を探索する第一経路探索ステップと、
前記第一経路上の少なくとも1つのノードを第二出発地とし、前記第二出発地のそれぞれから所定時間内に到達可能であるか、または往復時間が所定時間範囲内である複数の経由地を探索する第二経路探索ステップと、
複数の前記経由地を繋ぐことにより前記第一経路上からの時間的な離れ具合を表す時間曲線を求める時間曲線算出ステップと、
前記第一経路と前記時間曲線を前記地図データとともに表示する表示ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項14】
前記第一出発地から前記目的地までの前記経由地を通る第三経路を探索する第三経路探索ステップをさらに有し、
前記時間曲線算出ステップは、複数の前記経由地の中で、前記第三経路と前記第一経路との所要時間の差が所定時間となる経由地を繋ぐことにより前記第一経路上からの時間的な離れ具合を表す時間曲線を求めることを特徴とする請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
地図および出発地から目的地までの経路を表示するための地図表示方法であって、
地図情報格納部の地図データを使って、第一出発地から目的地までの第一経路を探索する第一経路探索ステップと、
前記第一経路上の少なくとも1つのノードを第二出発地とし、前記第二出発地のそれぞれを中心とする所定の距離範囲内の施設を検索する施設検索ステップと、
前記第二出発地のそれぞれから前記施設検索ステップにより検索されたそれぞれの前記施設への経路を探索する第二経路探索ステップと、
前記第二経路探索ステップにより探索された施設の中から、前記第二出発地の各々から前記施設への到達時間または往復時間が所定時間範囲内であるか、若しくは前記第一経路と前記第一出発地から前記施設を経由して前記目的地までを探索した第三経路との所要時間差が所定時間範囲内の複数の施設位置を座標点として抽出する座標点抽出ステップと、
前記第一出発地と前記座標点と前記目的地を繋ぐことにより、前記第一経路上からの時間的な離れ具合を表す時間曲線を求める時間曲線算出ステップと、
前記第一経路と前記時間曲線を前記地図データとともに表示する表示ステップと、
を有することを特徴とする地図表示方法。
【請求項16】
地図および出発地から目的地までの経路を表示するためのコンピュータ実行可能なプログラムであって、
地図情報格納部の地図データを使って、第一出発地から目的地までの第一経路を探索する第一経路探索ステップと、
前記第一経路上の少なくとも1つのノードを第二出発地とし、前記第二出発地のそれぞれを中心とする所定の距離範囲内の施設を検索する施設検索ステップと、
前記第二出発地のそれぞれから前記施設検索ステップにより検索されたそれぞれの前記施設への経路を探索する第二経路探索ステップと、
前記第二経路探索ステップにより探索された施設の中から、前記第二出発地の各々から前記施設への到達時間または往復時間が所定時間範囲内であるか、若しくは前記第一経路と前記第一出発地から前記施設を経由して前記目的地までを探索した第三経路との所要時間差が所定時間範囲内の複数の施設位置を座標点として抽出する座標点抽出ステップと、
前記第一出発地と前記座標点と前記目的地を繋ぐことにより、前記第一経路上からの時間的な離れ具合を表す時間曲線を求める時間曲線算出ステップと、
前記第一経路と前記時間曲線を前記地図データとともに表示する表示ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−218770(P2007−218770A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40567(P2006−40567)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】