説明

基板の処理装置

【課題】この発明は上下一対のエアーナイフの下方への撓みを矯正することができるようにした処理装置を提供することにある。
【解決手段】基板の上面に気体を所定の傾斜角度で噴射するとともに、長手方向中途部に上部フックが設けられた上部エアーナイフ7と、基板の下面に気体を所定の傾斜角度で噴射するとともに、長手方向中途部に下部フックが設けられた下部エアーナイフ8と、上部エアーナイフの上方と下部エアーナイフの下方に平行に設けられた上部支持部材25及び下部支持部材26と、上部支持部材の長手方向の中途部に垂直方向に位置決め可能に設けられ下端に上部フック31が揺動可能に係合する上部係止部29を有する吊り下げ部材27と、下部支持部材の長手方向の中途部に垂直方向に位置決め可能に設けられ上端に下部フック35が揺動可能に係合する下部係止部34を有する押し上げ部材32を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は洗浄処理された基板に付着残留する処理液をエアーナイフから噴射される気体によって乾燥処理する基板の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、液晶表示装置や半導体装置の製造工程においては、これら装置の処理対象物であるガラス基板や半導体ウエハなどの基板にレジストを塗布し、この基板を現像処理してからエッチング処理することで、表面に回路パターンを精密に形成する。基板に回路パターンを形成したならば、その基板の表面に付着しているレジスト膜やレジスト残渣などの有機物を洗浄液によって除去する洗浄処理が行われる。
【0003】
洗浄処理された基板に洗浄液が残留するとウオータマークなどの汚れの原因になる。そこで、洗浄液によって洗浄された基板の上下面にエアーナイフから気体を噴射し、基板に付着残留した洗浄液を除去する乾燥処理が行われる。
【0004】
上記乾燥処理は、基板を処理装置のチャンバ内へ水平搬送し、この基板の上下面に上下一対のエアーナイフによって気体を噴射し、その気体によって基板に付着した洗浄液を除去するようにしている。
【0005】
一対のエアーナイフを用いて基板を乾燥処理する場合、基板の板面をむらなく均一に、しかも効率よく確実に乾燥処理することが要求される。そのため、上下一対のエアーナイフと基板の板面との間隔をエアーナイフの長手方向全長にわたって精度よく均一に設定することが重要となる。
【0006】
最近では基板が大型化する傾向にある。その場合、エアーナイフは基板の幅寸法よりも長尺にする必要があるから、たとえば3m以上の長さのものが用いられることがある。長尺化したエアーナイフを、チャンバ内に基板の搬送方向と交差する方向に沿って架設すると、基板の上方のエアーナイフは自重によって下方へ撓んで長手方向の中途部が両端部に比べて基板の上面に接近することになる。また、下方のエアーナイフは同じく自重によって下方へ撓んで長手方向の中途部が両端部に比べて基板の下面との間隔が大きくなる。
【0007】
このように、基板の上面及び下面に対してエアーナイフとの対向間隔が不均一になると、エアーナイフ長手方向において基板の板面が受ける気体の速度が一定とならないから、基板を幅方向全長にわたって均一に乾燥処理することができなくなるということがある。
【0008】
そこで、エアーナイフを自重によって撓みが生じることのない剛性を備えた厚手の材料で構成するということが行われている。しかしながら、その場合、エアーナイフが高重量化するから、組立作業などの取扱いが不便となるばかりか、エアーナイフはステンレス鋼などの高価な材料が用いられるから、コスト高になるということがある。
【0009】
そこで、特許文献1に示されるようにエアーナイフが長尺化した場合であっても、エアーナイフ自体の剛性を高めることなく、撓みが生じないようにすることが提案されている。すなわち、特許文献1の図8に示されるようにエアーナイフの長手方向の中途部に支持具を装着し、この支持具に連結部材の一端を連結する。この連結部材の他端は、上記エアーナイフと平行に配置された給気管に連結する。この給気管とエアーナイフはチューブによって接続され、エアーナイフに気体を供給できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−245328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に示されたエアーナイフの支持構造によると、連結部材の一端にエアーナイフに装着される支持具が連結固定されていて、この連結部材の他端は給気管に連結固定されている。そのため、給気管に撓みが生じた場合、この給気管の撓みを吸収することができないから、給気管とともにエアーナイフにも撓みが生じてしまうということがある。
【0012】
また、エアーナイフは基板の板面に対して高さ及び傾斜角度を調整することが要求される。しかしながら、特許文献1に示されたように、エアーナイフに撓みが生じないようにするために、連結部材を介して給気管に連結固定された支持具にエアーナイフを装着する構成では、上記エアーナイフの高さや傾きを調整することができないということがある。
【0013】
この発明は、エアーナイフの剛性を高めずに、撓みが生じるのを防止することができるようにし、しかも基板の板面に対してエアーナイフの高さや傾きを調整することができるようにした基板の処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、チャンバ内を水平搬送される基板の上面と下面に気体を噴射してこの基板を乾燥処理する処理装置であって、
上記チャンバ内を搬送される上記基板の上面に対向して配置されこの基板の上面に気体を所定の傾斜角度で噴射するとともに、長手方向中途部に上部フックが設けられた上部エアーナイフと、
上記基板の下面に対向して配置されこの基板の下面に気体を所定の傾斜角度で噴射するとともに、長手方向中途部に下部フックが設けられた下部エアーナイフと、
上記上部エアーナイフの上方と上記下部エアーナイフの下方にそれぞれ各エアーナイフと同方向に沿って平行に設けられた上部支持部材及び下部支持部材と、
上記上部支持部材の長手方向の中途部に垂直方向に位置決め可能に設けられ下端に上記上部フックが揺動可能に係合する上部係止部を有する吊り下げ部材と、
上記下部支持部材の長手方向の中途部に垂直方向に位置決め可能に設けられ上端に上記下部フックが揺動可能に係合する下部係止部を有する押し上げ部材と
を具備したことを特徴とする基板の処理装置にある。
【0015】
上記上部係止部と下部係止部は円柱状であって、
上記上部フックと下部フックは一端が上記上部エアーナイフ及び下部エアーナイフにそれぞれ固定され他端が上記上部係止部と下部係止部にそれぞれ係合する鉤部に形成されていることが好ましい。
【0016】
上記上部エアーナイフと上記下部エアーナイフの長手方向の一端と他端は、連結部材の上下方向の中途部にそれぞれ傾斜角度及び上下方向の位置決め可能に取り付けられていて、
上記上部支持部材と上記下部支持部材の長手方向の一端部と他端部は、上記一対の連結部材の上端と下端にそれぞれ連結固定されることが好ましい。
【0017】
上記上部支持部材と下部支持部材の長手方向の中途部には、複数の上記吊り下げ部材と押し上げ部材が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、上部エアーナイフに設けられた上部フックが吊り下げ部材の上部係止部に揺動可能に係合し、しかも上部支持部材に対して垂直方向に位置決め可能となっているから、上部エアーナイフが下方へ撓むのを防止することができるばかりか、上部エアーナイフの基板の板面に対する角度及び上下方向の位置決め調整が可能となる。
【0019】
また、下部エアーナイフに設けられた下部フックが押し上げ部材の下部係止部に揺動可能に係合し、しかも下部支持部材に対して垂直方向に位置決め可能となっているから、下部エアーナイフが下方へ撓むのを防止することができるばかりか、下部エアーナイフの基板の板面に対する角度及び上下方向の位置決め調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施の形態を示すチャンバの長手方向に沿う縦断面図。
【図2】エアーナイフユニットの一部を省略した正面図。
【図3】エアーナイフユニットの一端部の斜視図。
【図4】上部エアーナイフと下部エアーナイフの撓みを防止する機構を示す側面図。
【図5】上部エアーナイフの撓みを測定したグラフ。
【図6】下部エアーナイフの撓みを測定したグラフ。
【図7】(a)は上部エアーナイフの撓みが矯正されていないときの基板上における気体の風速を測定したグラフ、(b)は上部エアーナイフの撓みを矯正したときの基板上における気体の風速を測定したグラフ、(c)は基板上の風速を測定するときの条件を示した図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は基板の処理装置の長手方向に沿う縦断面図であって、この処理装置はチャンバ1を備えている。このチャンバ1内には図示しない駆動機構によって回転駆動される複数の搬送ローラ2が上記長手方向に沿って所定間隔で配置されている。
【0022】
上記チャンバ1の長手方向一端には搬入口3が開口形成され、他端には搬出口4が開口形成されている。上記搬入口3からチャンバ1内には、前工程で洗浄処理された基板Wが供給される。チャンバ1内に供給された基板Wは上記搬送ローラ2によって矢印で示す方向に水平搬送されて上記搬出口4から搬出される。そして、上記基板Wは、上記チャンバ1内を搬送される間に、エアーナイフユニット6によって上下面に付着残留した洗浄液が除去される乾燥処理が行われる。
【0023】
上記エアーナイフユニット6は、図2と図3に示すように先端面に気体の噴出孔7a,8aが長手方向のほぼ全長にわたって形成された上部エアーナイフ7と下部エアーナイフ8を有する。これら各エアーナイフ7,8はステンレス鋼板などの耐蝕性を有する2枚の板材を重ね合わせて形成されている。
【0024】
図3に示すように各エアーナイフ7,8の長手方向の一端と他端の側面(一方のみ図示)には、幅方向の一端部に一対の長孔11が形成された矩形板状の高さ調整部材12が上記長孔11を介して一対の取り付けねじ13によって連結されている。
【0025】
なお、各エアーナイフ7,8の側面には上記噴出孔7a,8aから噴出する圧縮空気などの気体を供給する気体供給部にチューブ(ともに図示せず)を介して接続される複数の気体供給口体7b,8bが設けられている。
【0026】
上記高さ調整部材12の幅方向の一端には突出部14が設けられている。この突出部14には、上記各エアーナイフ7,8の後端面に設けられた取付け片15に螺合された高さ調整ねじ16によって押圧されるようになっている。
【0027】
上記一対の取り付けねじ13を緩めた状態で、上記高さ調整ねじ16によって上記突出部14を押圧すれば、上記高さ調整部材12に対して各エアーナイフ7,8を各側面の高さ方向、つまり上下方向に沿って移動させることができるようになっている。
【0028】
上記高さ調整部材12の幅方向の他端部には帯板状の角度調整部材18の端面が一対の止めねじ19によって取り付け固定されている。上記角度調整部材18は一端部を各エアーナイフ7,8の先端面から突出させている。一対の角度調整部材18の一端部は重合されていて、その重合部分は側面形状がコ字状の連結部材21の中途部に角度調整ねじ22によって回動可能かつ所定の回動角度で固定可能に取り付けられている。
【0029】
したがって、上部エアーナイフ7と下部エアーナイフ8は、上記連結部材21に対し、上記角度調整部材18を介して上記角度調整ねじ22によって角度調整可能であり、上記高さ調整部材12を介して上記高さ調整ねじ16によって高さ調整可能となっている。
【0030】
そして、図2に示すように上部エアーナイフ7と下部エアーナイフ8の長手方向の一端と他端に設けられた一対の連結部材21の上辺には上部支持部材25の長手方向の一端部と他端部が取り付け固定され、下辺には下部支持部材26の長手方向の一端部と他端部が取り付け固定されている。
【0031】
上記上部支持部材25と下部支持部材26は荷重に対して比較的撓みが生じ難い形状の部材、たとえばアングル材が用いられている。上部支持部材25の長手方向中途部の2箇所にはボルトからなる吊り下げ部材27が設けられている。
【0032】
図4に示すように、上記吊り下げ部材27の中途部には上記上部支持部材25の一辺を挟んで一対の固定ナット28が螺合されている。それによって、上記吊り下げ部材27は上記上部支持部材25に対して上下方向に位置決め調整可能となっている。
【0033】
上記吊り下げ部材27の下端には、円柱状の上部係止部29が軸線を吊り下げ部材27の軸線と直交させて設けられている。
【0034】
上記上部係止部29の円弧状の外周面には、上記上部エアーナイフ7の長手方向中途部の後端面に一端が取り付け固定された上部フック31の他端に形成されたL字の鉤部31aが係合している。つまり、上記鉤部31aは上記上部係止部29に対して揺動可能に係合している。なお、上記鉤部31aには溝部31bが形成され、この溝部31aに上記吊り下げ部材27が通されている。
【0035】
それによって、上記上部支持部材25に対する上記吊り下げ部材27の上下方向の位置を一対の固定ナット28によって調整すれば、この吊り下げ部材27の下端に設けられた上部係止部29と、上記上部エアーナイフ7に設けられた上部フック31との係合によって上記上部エアーナイフ7の下方への撓みを除去することができるようになっている。
【0036】
上記上部エアーナイフ7の角度を上記角度調整ねじ22を緩めて上記角度調整部材18を回動させて調整すると、上部エアーナイフ7の回動に応じて上部フック31の鉤部31aが上部係止部29に対して上部エアーナイフ7の長手方向と交差する方向に揺動するから、上部エアーナイフ7の角度を変更することができる。
【0037】
図2に示すように、上記下部支持部材26の長手方向中途部の2箇所にはボルトからなる押し上げ部材32が設けられている。この押し上げ部材32の中途部には図4に示すように上記下部支持部材26の一辺を挟んで一対の固定ナット33が螺合されている。それによって、上記押し上げ部材32は上記下部支持部材26に対して上下方向に位置決め調整可能となっている。
【0038】
上記押し上げ部材32の上端には、円柱状の下部係止部34が軸線を押し上げ部材32の軸線と直交させて設けられている。上記下部係止部34の円弧状の外周面には、上記下部エアーナイフ8の長手方向中途部の後端面に一端が取り付け固定された下部フック35の他端に形成されたL字状の鉤部35aが係合している。つまり、上記鉤部35aは上記下部係止部34に対して上記下部エアーナイフ8の長手方向と交差する方向に対して揺動可能に係合している。
【0039】
それによって、上記下部支持部材26に対する上記押し上げ部材32の上下方向の位置を一対の固定ナット33によって調整すれば、この押し上げ部材32の上端に設けられた下部係止部34と、上記下部エアーナイフ8に設けられた下部フック35との係合によって上記下部エアーナイフ8の下方への撓みを除去することができるようになっている。
【0040】
また、下部エアーナイフ8の角度を上記連結部材21に螺合された角度調整ねじ22を緩めて上記角度調整部材18を回動させて調整すると、下部エアーナイフ8の回動に応じて下部フック35の鉤部35aが下部係止部34に対して揺動するから、下部エアーナイフ8の角度を変更することができる。
【0041】
上記上部エアーナイフ7、下部エアーナイフ8、上部支持部材25及び下部支持部材26は、これら一対のエアーナイフ7,8の両端部に設けられた一対の連結部材21によって一体化された上記エアーナイフユニット6となっている。
【0042】
このようにして構成されたエアーナイフユニット6はチャンバ1内に組み込まれる。すなわち、図に示すように上記チャンバ1の上記基板Wの搬送方向に対して交差する方向の幅方向両端部の外方には、L字状の支持部材37が水平部分の先端部を上記チャンバ1内に突出させて設けられている。
【0043】
上記支持部材37の垂直部の下端は、チャンバ1が載置される架台などの固定部38に固定されている。そして、左右一対の支持部材37の水平部分の先端部に上記エアーナイフユニット6の連結部材21の中間部の外面に設けられた取り付け部21aが連結固定される。
【0044】
なお、上記エアーナイフユニット6の上下一対のエアーナイフ7,8は、これらの噴出孔7a,8aを基板Wの搬送方向上流側に向くよう垂直方向に対して所定の角度、例えば55度の角度で傾斜し、しかも基板Wの搬送方向と直交する幅方向と平行な水平方向に対して所定の角度で傾斜して配置されている。つまり、基板Wの花方向に対して斜めになっている。さらに、上下一対のエアーナイフ7,8は、これらの噴出孔7a,8aが開口した先端面間に上記基板Wが通過する高さになるよう、上記一対の支持部材37に取り付け固定されている。
【0045】
このように構成された処理装置によれば、上部エアーナイフ7と下部エアーナイフ8を、厚手の板材を用いずに形成すると、十分な剛性が得られないから、上部エアーナイフ7は図4に矢印D1で示す斜め下方に向かって撓もうとし、下部エアーナイフ8が同図に矢印D2で示す斜め下方に向かって撓もうとする。
【0046】
しかしながら、上部エアーナイフ7は長手方向の中途部の2箇所に上部フック31が設けられ、これら上部フック31が吊り下げ部材27の下端に設けられた上部係止部29に揺動可能に係合している。したがって、上記上部フック31と上記上部係止部29との係合によって上部エアーナイフ7が矢印D1で示す斜め下降に向かって撓むのが阻止されることになる。
【0047】
上記吊り下げ部材27は上部支持部材25に取り付けられているから、この上部支持部材25に上記吊り下げ部材27を介して上部エアーナイフ7の重量が加わることで、上部支持部材25とともに上部エアーナイフ7が撓む虞がある。
【0048】
しかしながら、上記吊り下げ部材27は上部支持部材25に対して上下方向の取り付け位置を調整することができるから、上部支持部材25に下方への撓みが生じた場合には、その分、吊り下げ部材27の上部支持部材25に対する取り付け位置を上方へずらせば、上部エアーナイフ7の撓みを除去することができる。
【0049】
上部エアーナイフ7は矢印D1で示すように斜め下方に向かって撓みが生じる。それに対して吊り下げ部材27は垂直方向に上下動する。しかしながら、上部エアーナイフ7に設けられた上部フック31の鉤部31aは吊り下げ部材27の下端に設けられた上部係止部29に対して揺動可能に係合している。
【0050】
そのため、上部エアーナイフ7の撓み方向D1に対して吊り下げ部材27の上昇方向が同一直線状に位置する逆方向とならなくても、上記吊り下げ部材27を上部エアーナイフ7の撓み量に応じて上昇させることで、この上部エアーナイフ7の撓みを確実に除去することができる。
【0051】
しかも、連結部材21に対する角度調整部材18の取り付け角度を変えて基板Wの板面に対する上部エアーナイフ7の傾斜角度の変更する場合、上部エアーナイフ7に設けられた上部フック31の鉤部31aが吊り下げ部材27の下端に設けられた上部係止部29に対して揺動するから、その角度変更を確実に行うことができる。
【0052】
すなわち、上部エアーナイフ7の撓みを除去するため、従来のように上部エアーナイフ7に設けられた上部フック31と上部支持部材25を連結固定せずにすむ。そのため、上部支持部材25に対する吊り下げ部材27の取り付け位置を調整して上部エアーナイフ7の撓みを除去することができるばかりか、上部エアーナイフ7の角度設定も行うことが可能となる。
【0053】
上部エアーナイフ7と同様に、下部エアーナイフ8の長手方向の中途部の2箇所には下部フック35が設けられ、これら下部フック35が押し上げ部材32の上端に設けられた下部係止部34に揺動可能に係合している。
【0054】
したがって、下部エアーナイフ8が矢印D2で示す斜め下方に撓んでも、その撓み量に応じて押し上げ部材32を垂直方向に上昇させて位置決めすれば、下部エアーナイフ8の斜め下方への撓みを除去することができる。しかも、下部フック35が押し上げ部材32の上端に設けられた下部係止部34に揺動可能に係合しているから、下部エアーノズル8の角度設定も可能である。
【0055】
図5のグラフにおいて、折れ線Aは上部エアーナイフ7が吊り下げ部材27によって支持されていないときの撓み量を測定したグラフであり、折れ線Bは上部エアーナイフ7の長手方向中途部を1つの吊り下げ部材27で支持したときの撓み量を測定したグラフであり、折れ線Cは長手方向中途部を2つの吊り下げ部材27で支持したときの撓み量を測定したグラフである。なお、図5のグラフの縦軸は撓み量(mm)で、横軸はエアーナイフ7の長手方向を11等分した位置を示す。
【0056】
このグラフA〜Cから明らかなように、上部エアーナイフ7を吊り下げ部材27で支持することで、撓み量が大きく減少することが分かる。なお、上部エアーナイフ7は長さが3mで、材質はステンレス鋼板で作られたものである。
【0057】
図6のグラフにおいて、折れ線Dは下部エアーナイフ8が押し上げ部材32によって支持されていないときの撓み量を測定したグラフであり、折れ線Eは下部エアーナイフ8の長手方向中途部を1つの押し上げ部材32で支持したときの撓み量を測定したグラフであり、折れ線Fは長手方向中途部を2つの押し上げ部材32で支持したときの撓み量を測定したグラフである。
【0058】
このグラフD〜Fから明らかなように、下部エアーナイフ8を押し上げ部材32で支持することで、撓み量が大きく減少することが分かる。なお、下部エアーナイフ8は上部エアーナイフ7と同様、長さが3mで、材質はステンレス鋼板である。図6のグラフの縦軸は撓み量(mm)で、横軸はエアーナイフ7の長手方向を11等分した位置を示す。
【0059】
なお、下部エアーナイフ8は上部エアーナイフ7と撓み方向が図4にD1とD2で示すように基板Wの搬送方向に対して上部エアーナイフ7と逆方向となる。したがって、上部エアーナイフ7の下方への撓み量をマイナスで示し、下部エアーナイフ8の下方への撓み量をプラスで示している。
【0060】
図7(a)は上部エアーナイフ7の撓みを矯正することなく、その上部エアーナイフ7に圧縮気体を3000NL/minで供給したときの基板Wの板面における気体の速度を長手方向の38箇所で測定したグラフである。上部エアーナイフ7は、図7(c)に示すように基板Wの板面に対する傾斜角度θは55度で、かつ上部エアーナイフ7の長手方向中心の下端と基板Wの板面との間隔dは5mmになるよう配置した。
【0061】
つまり、上部エアーナイフ7の撓みが矯正されない状態であると、上部エアーナイフ7の長手方向中心ではその先端から基板Wまで距離が5mmであるが、両端に行くにつれてその距離が大きくなる。つまり、上部エアーナイフ7の先端と基板Wの上面との距離が一定とならない。
【0062】
上部エアーナイフ7の先端と基板Wの上面との距離が一定でないと、図7(a)に示すように上部エアーナイフ7の長手方向において、基板Wの上面での気体の流速が上部エアーナイフ7の先端と基板Wとの距離に応じて差が生じる。つまり、距離が大きくなるにつれて流速が低くなる。それによって、基板Wの幅方向の乾燥処理が均一に行えなくなるから、乾燥ムラが生じることになる。
【0063】
図7(b)は上部エアーナイフ7の撓みを矯正し、その上部エアーナイフ7に圧縮気体を3000NL/minで供給したときの基板Wの板面における気体の速度を長手方向の38箇所で測定したグラフである。なお、基板Wの板面に対する上部エアーナイフ7の配置は、図7(c)に示すよう55の角度で傾斜し、長手方向中央に先端と基板Wの上面との距離が5mmとなるよう設定した。
【0064】
図7(b)から分かるように、上部エアーナイフ7の撓みが矯正されると、この上部エアーナイフ7の長手方向において、基板Wの上面での気体の流速にほとんど差が生じなくなる。それによって、基板Wの幅方向の乾燥処理が均一に行われるから、乾燥ムラが生じることもなくなる。
【0065】
図7(a),(b)のグラフにおいて、縦軸は基板Wの上面における風速で、横軸は上部エアーナイフ7の長手方向における測定位置を示している。
【0066】
なお、上記一実施の形態では上部及び下部のエアーナイフの長手方向中途部の2箇所を吊り下げ部材及び押し上げ部材で保持するようにしたが、各エアーナイフを保持する箇所は2箇所に限定されず、1箇所或いは3箇所以上であっても差し支えない。
【符号の説明】
【0067】
1…チャンバ、6…エアーナイフユニット、7…上部エアーナイフ、8…下部エアーナイフ、12…高さ調整部材、16…高さ調整ねじ、18…角度調整部材、25…上部支持部材、26…株支持部材、27…吊り下げ部材、29…上部係止部、31…上部フック、32…押し上げ部材、34…下部係止部、35…下部フック、支持部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内を水平搬送される基板の上面と下面に気体を噴射してこの基板を乾燥処理する処理装置であって、
上記チャンバ内を搬送される上記基板の上面に対向して配置されこの基板の上面に気体を所定の傾斜角度で噴射するとともに、長手方向中途部に上部フックが設けられた上部エアーナイフと、
上記基板の下面に対向して配置されこの基板の下面に気体を所定の傾斜角度で噴射するとともに、長手方向中途部に下部フックが設けられた下部エアーナイフと、
上記上部エアーナイフの上方と上記下部エアーナイフの下方にそれぞれ各エアーナイフと同方向に沿って平行に設けられた上部支持部材及び下部支持部材と、
上記上部支持部材の長手方向の中途部に垂直方向に位置決め可能に設けられ下端に上記上部フックが揺動可能に係合する上部係止部を有する吊り下げ部材と、
上記下部支持部材の長手方向の中途部に垂直方向に位置決め可能に設けられ上端に上記下部フックが揺動可能に係合する下部係止部を有する押し上げ部材と
を具備したことを特徴とする基板の処理装置。
【請求項2】
上記上部係止部と下部係止部は円柱状であって、
上記上部フックと下部フックは一端が上記上部エアーナイフ及び下部エアーナイフにそれぞれ固定され他端が上記上部係止部と下部係止部にそれぞれ係合する鉤部に形成されていることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項3】
上記上部エアーナイフと上記下部エアーナイフの長手方向の一端と他端は、連結部材の上下方向の中途部にそれぞれ傾斜角度及び上下方向の位置決め可能に取り付けられていて、
上記上部支持部材と上記下部支持部材の長手方向の一端部と他端部は、上記一対の連結部材の上端と下端にそれぞれ連結固定されることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項4】
上記上部支持部材と下部支持部材の長手方向の中途部には、複数の上記吊り下げ部材と押し上げ部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−258035(P2010−258035A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103154(P2009−103154)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】