説明

基板処理方法

【課題】基板に吸着したガスに含まれる不純物を効果的に除去しつつ基板処理することができる基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板を処理室内へ搬入する搬入工程と、前記処理室内へ搬入された基板に、第1のガスを吸着させる第1ガス供給工程と、前記第1ガス供給工程の後、前記処理室内から第1のガスを排気する第1ガス排気工程と、前記第1ガス排気工程の後、前記基板に付着した第1のガスを、分解機構により分解する第1分解工程と、前記第1分解工程の後、前記処理室内へ第2のガスを供給しつつ、前記分解機構により第2のガスを分解する第2ガス供給工程と、前記第2ガス供給工程の後、前記基板を処理室内から搬出する搬出工程とから、基板処理方法を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外光やプラズマ等の処理ガス分解機構を用いた基板処理技術に関し、例えば、半導体集積回路装置(以下、ICという。)の製造装置や製造方法において、半導体集積回路が作り込まれる半導体基板(例えば、半導体ウエハ)に、酸化膜等を堆積(デポジション)して成膜等するうえで有効な基板処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ICの製造においては、ICの高集積化に伴い、ICを構成する素子の微細化が求められている。例えば、ICの素子分離形成方法として、現在では、寸法の制御性に優れ、かつ占有面積の小さいSTI(Shallow Trench Isolation)法が用いられている。STI法は、半導体基板に溝を形成した後、TEOS(テトラエトキシシラン)とO(オゾン)を用いた常圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法や、TEOSを用いたプラズマCVD法、真空紫外光を用いた光CVD法等により、前記形成した溝中に絶縁膜を埋め込むことにより、素子分離領域を形成する方法である。
材料ガスに真空紫外光を照射して、基板上にシリコン酸化膜を形成する技術が、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−87475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1のように、材料ガスに真空紫外光を照射して、基板上にシリコン酸化膜を形成する技術においては、光エネルギによって分解された材料ガスからは、同時に副生成物(不純物)が発生し、この副生成物が処理室内の構造物や形成されたシリコン酸化膜中に取り込まれやすくなり、その結果、形成されたシリコン酸化膜の品質が低下するという課題があった。
本発明の目的は、材料ガスに含まれる不純物を効果的に除去しつつ基板処理することができる基板処理方法を提供することにあり、例えば、処理ガスを分解して薄膜を形成する際に、薄膜中に取り込まれる不純物の量を低減し、高品質な薄膜を形成することのでできる基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明に係る基板処理方法は、処理室内へ搬入された基板に第1のガスを吸着させた後、余分な第1のガスを処理室内から排気し、次に、基板に付着した第1のガスを分解し、それから処理室内へ第2のガスを供給しつつ第2のガスを分解して基板処理するものである。
本発明に係る基板処理方法の代表的な構成は、次のとおりである。
基板を処理室内へ搬入する搬入工程と、
前記処理室内へ搬入された基板に、第1のガスを吸着させる第1ガス供給工程と、
前記第1ガス供給工程の後、前記処理室内から第1のガスを排気する第1ガス排気工程と、
前記第1ガス排気工程の後、前記基板に付着した第1のガスを、分解機構により分解する第1分解工程と、
前記第1分解工程の後、前記処理室内へ第2のガスを供給しつつ、前記分解機構により第2のガスを分解する第2ガス供給工程と、
前記第2ガス供給工程の後、前記基板を処理室内から搬出する搬出工程とを有する基板処理方法。
【発明の効果】
【0006】
このように基板処理方法を構成すると、材料ガス(第1のガス)に含まれる不純物を、効果的に除去しつつ基板処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の基板処理方法を実施可能な基板処理装置の構成例における垂直断面図である。
【図2】本発明の実施例における処理工程のタイムチャートである。
【図3】本発明の実施例における効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の基板処理工程を実施する基板処理装置の構成例について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の基板処理方法を実施可能な基板処理装置の構成例における垂直断面図である。図1において、1は、その内部で基板を処理する基板処理室である。2は処理対象の基板である。3は、基板2を処理する際に、基板2を載置するサセプタ(基板載置部)である。4は、紫外光を発光する発光部である。5は、前記発光部4から発光された紫外光を、処理室1内に透過させる透過窓であり、本例では石英から構成される。6は、基板2を加熱するためのヒータユニットで、本実施例では、抵抗ヒータで構成されている。7は、基板2の温度を検出するための温度検出器である。9は、処理室1内の圧力等を制御する制御部である。ヒータユニット6と温度検出器7は、制御部9に電気的に接続される。制御部9は、基板2の温度が所望のタイミングにて所望の温度分布となるように、前記温度検出器7により検出された温度情報に基づいてヒータユニット6への通電量を制御する。
【0009】
本基板処理装置においては、発光部4の内部には、エキシマランプを備えるとともに、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等の希ガスが封入されている。これらの希ガスを封入することにより、紫外光の波長を設定することができる、例えば、Arを封入した場合は波長126nmの紫外光、Krを封入した場合は波長146nmの紫外光、Xeを封入した場合は波長172nmの紫外光を発生することができる。本実施例では、Xeを封入して紫外光を発生させる。発生した紫外光は、石英製の透過窓5を通して、基板処理室1内に供給される。
基板処理室1と発光部4とは、石英製の透過窓5により、気密に分離されている。したがって、発光部4の内部の希ガスは、基板処理室1に流出せず、また、基板処理室1内の第1のガス等が、発光部4内に流入することもない。
【0010】
次に、処理ガス等のガス供給系について説明する。図1に示すように、処理室1のガス導入管14には、第1のガス供給管15、第2のガス供給管25、不活性ガス供給管35が接続されている。第1のガス供給管15には、上流から順に、第1のガスを供給する第1のガス源13、流量制御装置としてのMFC(マスフローコントローラ)12、及び開閉バルブ11がそれぞれ設けられている。第2のガス供給管25には、上流から順に、第2のガスを供給する第2のガス源23、MFC22、及び開閉バルブ21がそれぞれ設けられている。不活性ガス供給管35には、上流から順に、例えば、N2(窒素)等の不活性ガスを供給する不活性ガス源33、MFC32、及び開閉バルブ31がそれぞれ設けられている。
第2のガス供給管25と、導入管14との間には、高周波印加部24が設けられている。高周波印加部24は、第2のガス供給管25から導入管14に流れるガスに高周波電力を印加し、該流れるガスをプラズマ化する等により、第2のガスを活性化することができる。
【0011】
MFC12、22、32及び開閉バルブ11、21、31は、制御部9に電気的に接続されている。制御部9は、処理室1内に供給するガスの種類が所望のタイミングにて所望のガス種となるよう、また、供給するガスの流量が所望のタイミングにて所望の流量となるよう、MFC12、22、32及び開閉バルブ11、21、31を制御する。
【0012】
第1のガスとしては、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)、TRIES(トリエトキシシラン)などのポリシロキサン系原料を含む有機シリコンガスのうち、1種類のガスを用いることができる。第2のガスとしては、例えば酸素含有ガス、具体的には酸素ガスを用いることができる。
なお、第1のガスを処理室1内に供給する際は、必要に応じ、同時に不活性ガスを供給してもよい。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素ガス等を用いることができる。
【0013】
次に、処理室1のガス排気系について説明する。図1に示すように、処理室1内の雰囲気を排気するガス排気管64には、上流から順に、圧力センサ61、圧力調整バルブとしてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ62、真空排気装置としての真空ポンプ63が設けられている。真空ポンプ63は、処理室1内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう、処理室1内を真空排気するように構成されている。APCバルブ62および圧力センサ61は、制御部9に電気的に接続されている。制御部9は、処理室1内の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となるように、圧力センサ61により検出された圧力値に基づいてAPCバルブ62の開度を制御するように構成されている。
前記制御部9は、図示しない操作部、入出力部等を備えており、レシピ(成膜プロセスの制御シーケンス)に基づく温度制御や圧力制御、流量制御および機械駆動制御等を行う。また、制御部9は、ハードウェア構成として、CPU(中央演算ユニット)とメモリとを備えるものである。
【0014】
次に、本発明に係る基板処理方法の実施例を、図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施例における処理工程のタイムチャートである。なお、図2においては、(A)基板搬入工程、(G)分解停止工程、(K)基板搬出工程は省略している。
(A)基板搬入工程
まず、基板2が、基板搬入口(不図示)から基板処理室1内のサセプタ3に載置される。続いて、排気管64を介して真空ポンプ63により、基板処理室1の内部が所定の真空度(例えば、1Pa以下の真空)に減圧され、ヒータユニット6により、基板2が所定の温度に昇温され、維持される。
【0015】
(B)第1ガス供給工程
次に、第1ガス供給工程において、TEOS等の所定の材料ガス(第1のガス)が、第1のガス供給源13からガス導入管14を介して基板処理室1内へ供給される。本実施例では、第1のガスとしてTEOSを用いる。このとき、窒素ガス等の不活性ガスが、不活性ガス供給源33から処理室1に供給されるようにしてもよい。第1のガスが、基板処理室1に供給されている状態において、APC62と真空ポンプ63により基板処理室1内を所定の圧力に調整する。このようにして、基板2の表面に第1のガスが吸着する。このとき、図2に示すように、発光部4から紫外光を照射しない(分解OFF)ので、紫外光により、TEOS等のポリシロキサン系原料を含む有機シリコンガスが分解されて生じる不純物が発生することを防止できる。
第1ガス供給工程においては、基板2の温度を、第1のガスが吸着するのに適した25℃以上100℃以下とし、かつ、基板処理室1内の圧力を10Pa以下とすることが望ましい。その理由は、温度が高すぎる場合や圧力が低すぎる場合は、基板表面に吸着される量が少なくなり成膜レートが極端に低下し、温度が低すぎる場合は、基板処理室内で結露するためである。本実施例では、基板2の温度を50℃、基板処理室1内の圧力を10Paとした。
【0016】
(C)第1ガス排気工程
次に、図2に示すように、開閉バルブ11を閉じて第1のガスの供給を停止し、第1ガス供給工程において基板2に過剰に吸着された第1のガス、および基板2に吸着されずに基板処理室1内に滞留している第1のガスを、基板処理室1内から排気する。このときも、図2に示すように、第1のガスに向けて、発光部4から紫外光を照射しない(分解OFF)ので、紫外光により、TEOS等のポリシロキサン系原料を含む有機シリコンガスが分解されて生じる不純物が発生することを防止できる。
第1ガス排気工程においては、基板2の温度を25℃以上100℃以下とし、かつ、基板処理室1内の圧力を1Pa以下とすることが望ましい。本実施例では、基板2の温度を50℃、基板処理室1内の圧力を1Pa以下とした。
【0017】
(D)第1分解工程
次に、基板処理室1内を真空ポンプ63により排気している状態で、図2に示すように、発光部4から基板処理室1内へ向けて紫外光を照射する(分解ON)。光源には、基板2表面に吸着したガス分子に対し、該ガス分子の結合を切断したい箇所の結合エネルギよりも大きいフォトンエネルギを有する波長の光を用いる。例えば、真空紫外光である波長172nmのキセノンエキシマ光源の場合、7.2eVのエネルギをもつフォトンが、基板2表面に吸着したガス分子に対し、照射される。したがって、この場合、7.2eVより小さい結合エネルギをもつ結合箇所は、原理的に切断が可能である。この原理を利用すれば、所望の結合箇所を選択的に切断することができる。この切断処理により、ガスを分解する。
【0018】
例えば、TEOS分子に前述のキセノンエキシマ光を照射すれば、3.7eVのエネルギをもつ、炭素(C)と酸素(O)間の一重結合(C−O結合)を切断することが可能である。また、同様の理由から、3.9eVのエネルギをもつ、シリコン(Si)と酸素(O)間の一重結合(Si−O結合)を切断することができる。切断できる結合の量は、吸着したガス分子の表面密度と入射フォトンの密度により決まる。
結合が切断されることにより、吸着したガス分子は、分子量の小さい単位へ分解される。分解された分子は、蒸気圧の大きいものから先に、基板2の表面から離脱する。
このように、(B)第1ガス供給工程で基板2に吸着したガスを、(C)第1ガス排気工程により、1分子から数分子程度の厚さに最適化させておくので、(D)第1分解工程において、基板2に吸着したガスを分解し、分解した成分の離脱を効率的に行うことができる。
【0019】
第1のガスとしてTEOSを用いる場合は、Si原子を囲んでいるエトキシ基(−OC)が不純物源となるが、このエトキシ基が基板2の表面から優先的に離脱し、基板処理室1内から排気される。その結果、基板2の表面には、主に、シリコン(Si)を主成分とする蒸気圧の小さい成分が残存する。
第1のガスとしてTEOS以外のガスを用いる場合であっても、第1のガスが有機シリコンガスであり、メチル基等、炭素(C)、水素(H)を含むガスであれば、TEOS同様に、エトキシ基が基板2の表面から優先的に離脱し、基板2の表面には、主に、シリコン(Si)を主成分とする蒸気圧の小さい成分が残存する。
【0020】
第1分解工程においては、基板2の温度を25℃以上100℃以下とし、かつ、基板処理室1内の圧力を10Pa以下とすることが望ましい。その理由は、温度が高すぎる場合や圧力が低すぎる場合は、基板表面に吸着される量が少なくなり成膜レートが極端に低下し、温度が低すぎる場合は、基板処理室内で結露したり、紫外光で切断された副生成物が多くなってしまうためである。本実施例では、基板2の温度を50℃、基板処理室1内の圧力を10Paとした。
なお、上述の例では、分解機構として発光部4からの紫外光を用いて、基板2表面に吸着したガス分子を分解したが、分解機構として、ICP(Inductively Coupled Plasma)等のプラズマ生成機構、あるいは加熱用ヒータを用いることもできる。
【0021】
(E)第2ガス供給工程
次に、第2ガス供給工程において、図2に示すように、発光部4から基板処理室1内へ向けて紫外光を照射している状態(分解ON)で、酸素ガス等の酸素含有ガス(第2のガス)が、第2のガス供給源23からガス導入管14を介して基板処理室1内へ供給される。本実施例では、第2のガスとして酸素ガスを用いる。第2のガスが、基板処理室1に供給されている状態において、APC62と真空ポンプ63により基板処理室1内を所定の圧力に調整する。このようにして、発光部4からの紫外光により、酸素ガスが分解され、該分解により生じた活性酸素により、(D)第1分解工程において基板2の表面に残存したシリコン(Si)成分の酸化が行われ、シリコン酸化膜が生成される。
【0022】
(D)第1分解工程において基板2の表面に残存したシリコン(Si)成分は、数原子層で構成されているので、活性酸素は、容易に残存シリコン膜中に侵入し、残存シリコン膜を酸化することができる。このとき、活性酸素は、シリコン膜を酸化するとともに、基板2の表面に微量残存する有機成分であるエトキシ基も酸化し、一酸化炭素(CO)又は二酸化炭素(CO)として、シリコン膜から排出する。
【0023】
第2ガス供給工程においては、活性酸素の生存時間を長くするため、基板2の温度を25℃以上100℃以下とし、かつ、基板処理室1内の圧力を10Pa以下とすることが望ましい。本実施例では、基板2の温度を50℃、基板処理室1内の圧力を10Paとした。
なお、上述の例では、分解機構として発光部4からの紫外光を用いて、酸素ガスを分解したが、分解機構として、高周波印加部24やICP(Inductively Coupled Plasma)等のプラズマ生成機構、あるいは加熱用ヒータを用いて、酸素ガスを分解することもできる。また、オゾン(O)ガスにより、シリコン(Si)成分を酸化することもできる。
本実施例では、(E)第2ガス供給工程の分解機構として発光部4からの紫外光を用いているので、100℃以下の低温でシリコン酸化膜を形成でき、また、(D)第1分解工程と(E)第2ガス供給工程の分解機構を共通化することができる。
【0024】
(F)第2ガス排気工程
次に、図2に示すように、酸素ガスの基板処理室1内への供給が停止され、(E)第2ガス供給工程におけるシリコン(Si)成分の酸化処理が完了する。このとき、図2に示すように、発光部4から基板処理室1内へ向けて紫外光を照射している状態(分解ON)で、真空ポンプ63により、基板処理室1内の酸素ガスが排気される。紫外光照射により、(E)第2ガス供給工程で形成したシリコン酸化膜から、不純物成分である一酸化炭素(CO)又は二酸化炭素(CO)を、効率的に排出することができる。その理由は、紫外光(172nm)により、酸素(O)とメチル基(C)の間を優先的に切断できるためである。
第2ガス排気工程においては、基板2の温度を25℃以上100℃以下とし、かつ、基板処理室1内の圧力を1Pa以下とすることが望ましい。本実施例では、基板2の温度を50℃、基板処理室1内の圧力を1Pa以下とした。
【0025】
(G)分解機構停止工程
次に、基板処理室1内を真空ポンプ63により排気している状態で、発光部4からの紫外光照射を停止する。
【0026】
(H)繰返し工程
以上説明した(B)第1ガス供給工程、(C)第1ガス排気工程、(D)第1分解工程、(E)第2ガス供給工程、(F)第2ガス排気工程、(G)分解機構停止工程から構成される一連の工程を、1回行うか、又は複数回繰り返して行うことにより、不純物の少ない所望の膜厚のシリコン酸化膜を形成することができる。
【0027】
(K)基板搬出工程
以上のようにして所望のシリコン酸化膜が形成された後に、窒素ガス等の不活性ガスが、不活性ガス供給源33から処理室1内に供給され、不活性ガスにより、基板処理室1内が置換され、処理室1内が大気圧に復帰した後に、処理済みの基板2が処理室1の外部に搬出される。
【0028】
図3は、本発明を適用して薄膜(シリコン酸化膜)を形成した場合と、従来方法で薄膜(シリコン酸化膜)を形成した場合の電気特性を示す図であり、本発明の実施例における効果を示す図である。図3において、縦軸は、形成した薄膜の電流密度(A/cm)、横軸は、形成した薄膜の電界強度(MV/cm)を示す。55は、本発明を適用して薄膜を形成した場合であり、56は、従来方法で薄膜を形成した場合である。
従来方法で薄膜を形成した56では、約9(MV/cm)で絶縁破壊が発生しているのに対し、本発明を適用して薄膜を形成した55では、少なくとも約12(MV/cm)までは絶縁破壊が発生しないことが理解される。
また、本発明を適用して薄膜を形成した55の方が、従来方法で薄膜を形成した56よりも、全体的に電流密度が小さく、絶縁膜として品質が良いことが理解される。
以上述べたように本実施例の基板処理方法によれば、処理ガスを分解して基板上に薄膜を形成する際に、薄膜中に取り込まれる不純物の量を低減し、高品質な薄膜を形成することができる。
【0029】
本明細書には、少なくとも次の発明が含まれる。すなわち、第1の発明は、
基板を処理室内へ搬入する搬入工程と、
前記処理室内へ搬入された基板に、第1のガスを吸着させる第1ガス供給工程と、
前記第1ガス供給工程の後、前記処理室内から第1のガスを排気する第1ガス排気工程と、
前記第1ガス排気工程の後、前記基板に付着した第1のガスを、分解機構により分解する第1分解工程と、
前記第1分解工程の後、前記処理室内へ第2のガスを供給しつつ、前記分解機構により第2のガスを分解する第2ガス供給工程と、
前記第2ガス供給工程の後、前記基板を処理室内から搬出する搬出工程とを有する基板処理方法。
このように基板処理方法を構成すると、基板に付着した第1のガスに含まれる不純物を、効果的に除去することができる。
【0030】
第2の発明は、
前記第1の発明の基板処理方法であって、
前記分解機構は、紫外光を照射する分解機構である基板処理方法。
このように基板処理方法を構成すると、100℃以下の低温で基板処理することができる。
【0031】
第3の発明は、
前記第1の発明又は前記第2の発明の基板処理方法であって、
前記第2ガス供給工程の後、前記分解機構を作動させた状態で、前記処理室内の第2のガスを排気する第2ガス排気工程を有する基板処理方法。
このように基板処理方法を構成すると、前記第2ガス供給工程で処理された基板表面に含まれる不純物を、効果的に除去することができる。
【0032】
第4の発明は、
前記第3の発明の基板処理方法であって、
前記第2ガス排気工程の後、前記分解機構の作動を停止する分解機構停止工程を有し、
前記第1ガス供給工程、前記第1ガス排気工程、前記第1分解工程、前記第2ガス供給工程、前記第2ガス排気工程、前記分解機構停止工程を含む一連の工程を複数回行う基板処理方法。
このように基板処理方法を構成すると、不純物を効果的に除去しつつ、所望の基板処理を行うことができる。
【0033】
第5の発明は、
前記第1の発明ないし前記第4の発明の基板処理方法であって、
前記第1のガスは有機シリコンガスであり、前記第2のガスは酸素ガスである基板処理方法。
このように基板処理方法を構成すると、不純物を効果的に除去し、純度の高いシリコン酸化膜を形成することができる。
【0034】
第6の発明は、
基板を処理する処理室と、
有機シリコンガスを処理室内へ供給する第1のガス供給部と、
酸素含有ガスを処理室内へ供給する第2のガス供給部と、
処理室内の雰囲気を排気する排気部と、
処理室の外に設けられ処理室内へ紫外光を照射する紫外光発光部と、
処理室の隔壁に設けられた紫外光を透過させるための透過窓と、
制御部とを備え、
該制御部は、前記第1のガス供給部から前記処理室内へ有機シリコンガスを供給して、有機シリコンガスを基板表面に吸着させ、次に、前記排気部を用いて前記処理室内から有機シリコンガスを排気した後、前記基板に付着した有機シリコンガスを前記紫外光発光部からの紫外光により分解し、その後、前記紫外光発光部から処理室内へ紫外光を照射しつつ、前記第2のガス供給部から前記処理室内へ酸素含有ガスを供給し、その後、前記紫外光発光部から処理室内へ紫外光を照射しつつ、前記排気部を用いて前記処理室内から酸素含有ガスを排気するよう制御する制御部である基板処理装置。
このように基板処理装置を構成すると、有機シリコンガスを分解して基板上にシリコン酸化膜を形成する際に、シリコン酸化膜中に取り込まれる不純物の量を低減し、高品質なシリコン酸化膜を形成することができる。
なお、前記第1のガス供給部は、前記第1のガス源13、前記MFC12、前記開閉バルブ11等から構成される。前記第2のガス供給部は、前記第2のガス源23、前記MFC22、前記開閉バルブ21等から構成される。前記排気部は、真空ポンプ63、ガス排気管64等から構成される。
【符号の説明】
【0035】
1:基板処理室、2:基板、3:サセプタ(基板載置部)、4:紫外光発光部、5:紫外光透過窓、6:ヒータユニット、7:温度検出器、9:制御部、11:開閉バルブ、12:MFC、13:第1のガス源、14:ガス導入管、15:第1のガス供給管、21:開閉バルブ、22:MFC、23:第2のガス源、25:第2のガス供給管、24:高周波印加部、31:開閉バルブ、32:MFC、33:不活性ガス源、35:不活性ガス供給管、61:圧力センサ、62:APCバルブ、63:真空ポンプ、64:ガス排気管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理室内へ搬入する搬入工程と、
前記処理室内へ搬入された基板に、第1のガスを吸着させる第1ガス供給工程と、
前記第1ガス供給工程の後、前記処理室内から第1のガスを排気する第1ガス排気工程と、
前記第1ガス排気工程の後、前記基板に付着した第1のガスを、分解機構により分解する第1分解工程と、
前記第1分解工程の後、前記処理室内へ第2のガスを供給しつつ、前記分解機構により第2のガスを分解する第2ガス供給工程と、
前記第2ガス供給工程の後、前記基板を処理室内から搬出する搬出工程とを有する基板処理方法。
【請求項2】
前記分解機構は、紫外光を照射する分解機構である請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第2ガス供給工程の後、前記分解機構を作動させた状態で、前記処理室内の第2のガスを排気する第2ガス排気工程を有する請求項1又は請求項2に記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−64867(P2012−64867A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209520(P2010−209520)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】