説明

基板処理装置および異常処理方法

【課題】基板の処理中に異常が生じた場合に当該基板に損傷が加わることを抑制または防止できる枚葉型の基板処理装置および異常処理方法を提供すること。
【解決手段】基板処理装置は、1枚の基板を保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持された基板に薬液を供給する薬液ノズルと、スピンチャックに保持された基板にリンス液を供給するリンス液ノズルと、基板処理装置の異常を検知する異常検知手段と、異常処理手段としてのメイン制御部とを備えている。基板の薬液処理中に基板処理装置に異常が生じると、異常検知手段により異常が検知され(ステップS41)、メイン制御部によりリンス液ノズルが制御されて、異常処理の一工程としてのリンス処理が基板に行われる。これにより、基板表面から薬液が排除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を1枚ずつ処理する枚葉型の基板処理装置、および枚葉型の基板処理装置において使用される異常処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板を処理するための基板処理装置が用いられる。この種の基板処理装置には、複数枚の基板に対して一括して処理を行うバッチ型のものと、基板を一枚ずつ処理する枚葉型のものとがある。
バッチ型の基板処理装置は、たとえば、薬液が貯留された薬液処理槽およびリンス液が貯留されたリンス処理槽を含む複数の処理槽と、これらの処理槽の間で複数枚の基板を一括して搬送する搬送ロボットとを備えている(例えば特許文献1参照)。複数枚の基板に対して一括して処理が行われる場合には、複数枚の基板が搬送ロボットによって複数の処理槽に順次浸漬されていく。
【0003】
一方、枚葉型の基板処理装置は、たとえば、1枚の基板を水平に保持して回転させるスピンチャックと、このスピンチャックに保持された基板の上面に向けて処理液を供給する処理液ノズルとを備えている(例えば特許文献2参照)。1枚の基板に対して処理が行われる場合には、スピンチャックにより基板が回転され、回転状態の基板に薬液およびリンス液が順次供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−190529号公報
【特許文献2】特開2005−39205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板処理装置は、バッチ型および枚葉型の何れの場合においても、機械部品等の複数の部品により構成されている。したがって、基板処理装置が故障して、基板の処理が途中で中断または中止される場合がある。また、使用者の安全性確保や基板処理装置の損傷の防止等のため、基板の処理が途中で中断または中止される場合もある。
しかしながら、たとえばバッチ型の基板処理装置において複数枚の基板が薬液処理槽に浸漬されているときに処理が中断等されると、これらの基板が薬液処理槽に浸漬された状態で放置される。したがって、薬液処理が必要以上に進行して、これらの基板に損傷が加わるおそれがある。同様に、枚葉型の基板処理装置において基板に薬液が供給されているときに処理が中断等されると、薬液が付着した状態で当該基板が放置される。したがって、基板に損傷が加わるおそれがある。
【0006】
そのため、特許文献1に係るバッチ型の基板処理装置では、複数枚の基板が薬液処理槽に浸漬されているときに処理が中断等された場合には、複数枚の基板がリンス処理槽に移動され、これらの基板がリンス処理槽で待機される。これにより、薬液処理が必要以上に進行することが抑制または防止されている。
一方、枚葉型の基板処理装置では、通常、リンス処理槽などの処理槽が設けられていない。したがって、バッチ型の基板処理装置と同様の方法により、薬液処理の進行を抑制または停止することができない。そのため、薬液処理中に異常が生じた場合には、基板に損傷が加わって当該基板が不良品になってしまうおそれがある。
【0007】
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、基板の処理中に異常が生じた場合に当該基板に損傷が加わることを抑制または防止できる枚葉型の基板処理装置および異常処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板を1枚ずつ処理する枚葉型の基板処理装置であって、1枚の基板(W)を保持する基板保持手段(8)と、この基板保持手段に保持された基板に薬液を供給する薬液ノズル(9)と、前記基板保持手段に保持された基板にリンス液を供給するリンス液ノズル(10、41b、72)と、前記基板処理装置の異常を検知する異常検知手段(60,62〜67)と、基板の処理中に前記異常検知手段によって異常が検知された場合に、前記リンス液ノズルからリンス液を吐出させて基板表面の薬液を排除させるリンス処理を含む異常処理を実行する異常処理手段(60)とを含む、基板処理装置(1、201、301)である。
【0009】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この発明によれば、基板保持手段に保持された1枚の基板に薬液ノズルから薬液が供給され基板の処理(薬液処理)が行われる。また、異常検知手段によって基板の処理中における基板処理装置の異常の監視が行われる。そして、異常が検知された場合には、異常処理手段によって異常処理が実行される。具体的には、基板保持手段に保持された基板に向けてリンス液ノズルからリンス液が吐出され、基板表面の薬液を排除させるリンス処理を含む処理が実行される。これにより、基板の処理中(薬液処理中)に基板の処理が途中で中断または中止されたとしても、当該基板上から薬液を排除できる。したがって、薬液が付着した状態で基板が放置されることを防止することができる。そのため、薬液処理が必要以上に進行して基板に損傷が加わることを抑制または防止することができる。これにより、基板の処理が途中で中断または中止された場合であっても、処理中の基板が不良品になることを抑制または防止することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記基板保持手段に保持された基板を乾燥させる乾燥手段(16)と、基板を搬送する搬送手段(CR)とをさらに含み、前記異常処理手段は、前記リンス処理と、当該リンス処理の施された基板を前記乾燥手段によって乾燥させる乾燥処理と、当該乾燥処理により乾燥された基板を前記搬送手段によって前記基板保持手段から払い出す基板回収処理とを含む異常処理を実行するものである、請求項1記載の基板処理装置である。
【0011】
この発明によれば、異常検知手段によって基板の処理中における基板処理装置の異常が検知された場合に、リンス処理を含む複数の処理(異常処理)が異常処理手段によって実行される。具体的には、リンス処理が行われた後、基板保持手段に保持された基板を乾燥手段が乾燥させる乾燥処理と、乾燥処理により乾燥された基板を搬送手段が基板保持手段から払い出す基板回収処理を含む複数の処理が実行される。これにより、基板の処理が途中で中断または中止された場合であっても、処理中の基板が不良品になることを抑制または防止することができる。さらに、基板が乾燥された状態で払い出されるので、基板に付着している液により搬送手段等が濡れたり、汚染されたりすることを抑制または防止することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記薬液ノズルに供給される薬液を貯留する薬液タンク(27)と、前記基板保持手段に保持された基板表面から排出される使用済み薬液を捕獲して前記薬液タンクに回収する回収手段(50,52,55,56,58)と、前記薬液タンク内の液を新液に交換する交換手段(29,30,31,32)と、前記交換手段を制御して、前記異常処理手段による前記異常処理が行われた場合に、前記薬液タンク内の液を新液に交換させる交換処理を実行する交換処理手段(60)とをさらに含む、請求項1または2記載の基板処理装置である。
【0013】
この発明によれば、薬液タンクに貯留された薬液が、薬液ノズルに供給され、薬液ノズルを介して基板保持手段に保持された基板に供給される。また、基板に供給された薬液は、当該基板から排出され、使用済み薬液として回収手段に捕獲される。そして、回収手段から薬液タンクに回収される。
一方、この発明によれば、リンス処理を含む異常処理が異常処理手段によって行われた場合に、薬液タンク内の液を新液(未使用の薬液)に交換させる交換処理が行われる。具体的には、リンス処理を含む異常処理が行われた場合に、たとえば次の基板(異常回復後に処理される基板)の処理が開始されるまでに、交換手段が、薬液タンク内の液を排液させ、新液を補充する。これにより、異常処理が実行されているときに、リンス液ノズルからのリンス液が回収手段によって薬液タンクに回収され、薬液タンク内の薬液が薄まったとしても、薄まった薬液が次の基板に供給されることを防止することができる。したがって、薄まった薬液により不十分な薬液処理が次の基板に行われることを防止することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記リンス液ノズル内を吸引する吸引手段(68、368)をさらに含み、前記異常処理手段は、前記リンス処理と、前記リンス処理後に前記吸引手段によって前記リンス液ノズル内を吸引させる吸引処理とを含む異常処理を実行するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
前記リンス液ノズルは、前記基板保持手段の真上に配置されていてもよい。また、前記リンス液ノズルは、異常処理を実行するための専用のノズルであってもよい。さらに、前記異常処理手段が、前記リンス処理と、前記乾燥処理と、前記吸引処理とを含む異常処理を実行する場合には、前記吸引処理は、前記乾燥処理が終了するまでに開始されてもよい。
【0015】
この発明によれば、異常検知手段によって基板の処理中における基板処理装置の異常が検知された場合に、リンス処理を含む複数の処理(異常処理)が異常処理手段によって実行される。具体的には、リンス処理が行われた後に、吸引手段によってリンス液ノズル内が吸引される(吸引処理)。これにより、リンス液ノズル内に残っているリンス液が除去される。したがって、たとえば、リンス液ノズルが基板保持手段の真上に配置されている場合(特に、基板保持手段の真上から退避できない構造のノズルである場合)には、リンス処理後にリンス液ノズルからリンス液が落ちて、基板保持手段に保持された基板にリンス液が付着することを防止することができる。さらに、吸引処理が乾燥処理が終了するまでに開始される場合には、乾燥処理が終了するまでにリンス液ノズル内に残っているリンス液が除去される。したがって、リンス液ノズルから落ちたリンス液が乾燥した基板に付着して、基板が再び濡れることを防止することができる。
【0016】
また、リンス処理後にリンス液ノズル内に残っているリンス液を除去することにより、リンス液ノズル内にリンス液が残った状態で放置されることを防止することができる。これにより、たとえば、リンス液ノズルが異常処理を実行するための専用のノズルであって長時間使用されない場合でも、バクテリアがリンス液ノズル内で発生することを防止することができる。そのため、異常処理が行われるときに、リンス液とともにバクテリアがリンス液ノズルから吐出されることがなく、このようなバクテリアによって基板が汚染されることを防止することができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、基板(W)を1枚ずつ薬液で処理する枚葉型の基板処理装置(1、201、301)による基板の処理中において、当該基板処理装置の異常の有無を検知するステップ(S41)と、基板の処理中に前記異常が生じた場合に、リンス液を基板に供給して当該基板の表面から薬液を排除するリンス処理を含む異常処理を実行するステップ(S101〜S108、S201〜S209、S301〜S311、S401〜S411)とを含む、異常処理方法である。
【0018】
この発明によれば、枚葉型の基板処理装置による基板の処理中において当該基板処理装置の異常が検知された場合に、リンス処理を含む異常処理が実行される。これにより、基板の処理中(薬液処理中)において基板の処理が途中で中断または中止されたとしても、当該基板上から薬液を排除できる。したがって、薬液が付着した状態で基板が放置されることを防止することができる。そのため、薬液処理が必要以上に進行して基板に損傷が加わることを抑制または防止することができる。これにより、基板の処理が途中で中断または中止された場合であっても、処理中の基板が不良品になることを抑制または防止することができる。
【0019】
請求項6記載の発明は、前記異常処理を実行するステップは、前記リンス処理を実行するステップ(S305、S405)と、前記基板にリンス液を供給するリンス液ノズル内を前記リンス処理後に吸引する吸引処理を実行するステップ(S309、S409)とを含む、請求項5記載の異常処理方法である。この発明によれば、請求項4記載の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の第1実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す図解的な平面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理部の概略構成を示す図解的な側面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図4】この発明の第1実施形態に係る基板処理装置の異常を検知して異常処理を実行するまでのフローチャートである。
【図5】この発明の第1実施形態に係る基板処理装置において行われる異常処理の第1実施例のフローチャートである。
【図6】この発明の第1実施形態に係る基板処理装置において行われる異常処理の第2実施例のフローチャートである。
【図7】この発明の第1実施形態に係る基板処理装置において異常処理が行われた後に薬液タンク内の液を新液に交換するまでのフローチャートである。
【図8】この発明の第2実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理部の概略構成を示す図解的な側面図である。
【図9】この発明の第2実施形態に係る基板処理装置において行われる異常処理の第3実施例のフローチャートである。
【図10】この発明の第3実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理部の概略構成を示す図解的な側面図である。
【図11】この発明の第3実施形態に係る基板処理装置において行われる異常処理の第4実施例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1のレイアウトを示す図解的な平面図である。
この基板処理装置1は、半導体ウエハ等の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉型の装置である。基板処理装置1は、各種の処理を基板Wに施すことができる。基板処理装置1は、インデクサブロック2と、インデクサブロック2に結合された処理ブロック3とを備えている。
【0022】
インデクサブロック2は、キャリア保持部4と、インデクサロボットIRと、インデクサロボット移動機構5(以下では、「IR移動機構5」という。)とを備えている。キャリア保持部4は、複数枚の基板Wを収容できるキャリアCを保持することができる。キャリアCは、所定の配列方向U(以下「キャリア配列方向U」という。)に沿って配列された状態で、キャリア保持部4に保持される。IR移動機構5は、キャリア配列方向Uに沿ってインデクサロボットIRを水平移動させることができる。したがって、IR移動機構5は、インデクサロボットIRを各キャリアCに対向させることができる。
【0023】
また、インデクサロボットIRは、第1上アームの先端に取り付けられた第1上ハンドH1と、第1下アームの先端に取り付けられた第1下ハンドH2とを備えている。第1上ハンドH1および第1下ハンドH2は、互いに干渉しないように高さをずらして配置されている。図1では、第1上ハンドH1および第1下ハンドH2が上下に重なり合っている状態が示されている。インデクサロボットIRは、各ハンドH1,H2によって基板Wを保持することができる。インデクサロボットIRは、各キャリアCに処理済の基板Wを搬入する搬入動作、および未処理の基板Wを各キャリアCから搬出する搬出動作を行うことができる。
【0024】
一方、処理ブロック3は、それぞれ基板Wを一枚ずつ処理する複数の処理部6と、センターロボットCR(搬送手段)とを備えている。本実施形態では、処理部6がたとえば4つ設けられている。これらの処理部6は、平面視においてセンターロボットCRを取り囲むように配置されている。各処理部6では、たとえば、洗浄、エッチング、剥離等の処理が基板Wに行われる。
【0025】
また、センターロボットCRは、第2上アームの先端に取り付けられた第2上ハンドH3と、第2下アームの先端に取り付けられた第2下ハンドH4とを備えている。第2上ハンドH3および第2下ハンドH4は、互いに干渉しないように高さをずらして配置されている。図1では、第2上ハンドH3および第2下ハンドH4が上下に重なり合っている状態が示されている。センターロボットCRは、各ハンドH3,H4によって基板Wを保持することができる。
【0026】
センターロボットCRは、鉛直軸線まわりに回転(自転)可能に構成されている。第2上ハンドH3および第2下ハンドH4は、センターロボットCRの回転によって、各処理部6に対向させられる。センターロボットCRは、各処理部6に対して未処理の基板Wを搬入する搬入動作、および処理済の基板Wを各処理部6から搬出する搬出動作を行うことができる。さらに、センターロボットCRは、インデクサロボットIRから未処理の基板Wを受け取ることができ、処理済の基板WをインデクサロボットIRに渡すことができる。
【0027】
各キャリアCに収容された未処理の基板Wは、インデクサロボットIRによって搬出される。そして、この未処理の基板Wは、インデクサロボットIRからセンターロボットCRに渡される。さらに、この未処理の基板Wは、センターロボットCRによって何れかの処理部6に搬入される。センターロボットCRは、インデクサロボットIRから受け渡される基板Wを複数の処理部6に順次搬入していく。
【0028】
一方、各処理部6で処理された処理済の基板Wは、センターロボットCRによって搬出される。そして、この処理済の基板Wは、センターロボットCRからインデクサロボットIRに渡される。さらに、この処理済の基板Wは、インデクサロボットIRによって何れかのキャリアC内に搬入される。センターロボットCRは、複数の処理部6から処理済の基板Wを順次搬出していく。このようにして、複数枚の基板Wが処理される。
【0029】
図2は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1に備えられた処理部6の概略構成を示す図解的な側面図である。
各処理部6は、隔壁7で区画された処理室内に、1枚の基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック8(基板保持手段)と、スピンチャック8に保持された基板Wの上面(表面または裏面)に薬液を供給する薬液ノズル9と、スピンチャック8に保持された基板Wの上面にリンス液を供給するリンス液ノズル10と、スピンチャック8の上方に配置された遮断板11とを備えている。
【0030】
図示はしないが、隔壁7には、たとえば自動開閉式の扉が備えられている。センターロボットCRは、この扉が開かれた状態で、第2上ハンドH3および第2下ハンドH4を処理室内に進入させることができる。これにより、センターロボットCRは、各処理部6のスピンチャック8との間で基板Wの受け渡しを行うことができる。
また、隔壁7には、脱着式の脱着カバー12が取り付けられている。脱着カバー12は、処理室で基板Wを処理するときなどの通常時には隔壁7に取り付けられている。一方、脱着カバー12は、たとえばスピンチャック8などの隔壁7内の構成をメンテナンスするときには隔壁7から取り外される。そして、脱着カバー12が隔壁7から取り外された状態で、メンテナンス作業が行われる。
【0031】
スピンチャック8は、鉛直な方向に延びる回転軸13と、回転軸13の上端に水平に取り付けられた円盤状のスピンベース14と、このスピンベース14上に配置された複数個の挟持部材15と、回転軸13に結合されたチャック回転駆動機構16(乾燥手段)とを備えている。複数個の挟持部材15は、スピンベース14の上面周縁部において基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。複数個の挟持部材15は、互いに協働して1枚の基板Wを水平な姿勢で挟持(保持)することができる。複数個の挟持部材15によって基板Wが保持された状態で、チャック回転駆動機構16の駆動力が回転軸13に入力されることにより、保持された基板Wがその中心を通る鉛直な軸線回りに回転する。
【0032】
また、回転軸13は中空に形成されている。回転軸13の内部には、第1下側処理液供給管17が非接触状態で挿通されている。第1下側処理液供給管17の上端には、基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出する下面ノズル18が設けられている。下面ノズル18は、その吐出口18aが複数個の挟持部材15により保持された基板Wの下面中央部に近接するように配置されている。
【0033】
第1下側処理液供給管17には、第2下側処理液供給管19が接続されており、この第2下側処理液供給管19を介して図示しない処理液供給源からの処理液(薬液またはリンス液)が供給される。これにより、第1下側処理液供給管17から下面ノズル18に処理液が供給される。そして、下面ノズル18の吐出口18aから基板Wの下面中央部に向けて処理液が吐出される。第2下側処理液供給管19には、下面ノズル18への処理液の供給および供給停止を切り換えるための下側処理液バルブ20が介装されている。
【0034】
また、回転軸13と第1下側処理液供給管17との間には、第1下側処理液供給管17を取り囲む下側ガス供給路21が形成されている。下側ガス供給路21の上端は、スピンベース14の上面において開口している。下側ガス供給路21の上端は、環状の下側ガス吐出口22を形成している。下側ガス供給路21には、下側ガス供給管23が接続されており、この下側ガス供給管23を介して図示しないガス供給源からのガスが供給される。下側ガス供給路21に供給されたガスは、下側ガス吐出口22から上方に吐出される。下側ガス供給管23には、下側ガス供給路21へのガスの供給および供給停止を切り換えるための下側ガスバルブ24が介装されている。下側ガス供給路21に供給されるガスとしては、たとえば、不活性ガスの一例である窒素ガスが用いられている。
【0035】
薬液ノズル9は、たとえば、連続流の状態で薬液を吐出するストレートノズルである。薬液ノズル9は、水平に延びるノズルアーム25の先端部に取り付けられている。薬液ノズル9は、その吐出口が下方に向けられた状態で、スピンチャック8よりも上側に配置されている。薬液ノズル9には、薬液供給管26が接続されており、この薬液供給管26を介して薬液タンク27からの薬液が供給される。薬液供給管26には、薬液ノズル9への薬液の供給および供給停止を切り換えるための薬液バルブ28が介装されている。薬液ノズル9に供給される薬液としては、たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水のうちの少なくとも1つを含む液が挙げられる。
【0036】
薬液タンク27には、補充バルブ29が介装された薬液補充管30と、排液バルブ31が介装された排液配管32とが接続されている。たとえば薬液タンク27内の液量が所定量以下になった場合には、補充バルブ29が開かれ、薬液補充管30を介して薬液タンク27に新液(未使用の薬液)が補充される。また、薬液タンク27内の液を排液するときには、排液バルブ31が開かれ、排液配管32を介して薬液タンク27内の液が排液される。本実施形態では、1つの薬液タンク27が複数の処理部6で共用されており、薬液タンク27に貯留された薬液が、各処理部6の薬液ノズル9に供給される。本実施形態では、補充バルブ29、薬液補充管30、排液バルブ31および排液配管32が、交換手段として機能する。
【0037】
また、ノズルアーム25には、鉛直方向に延びる支持軸33が結合されている。ノズルアーム25は、この支持軸33によって支持されている。支持軸33は、その中心軸線まわりに揺動可能とされている。支持軸33には、たとえばモータ等で構成されたノズル揺動駆動機構34が結合されている。ノズル揺動駆動機構34の駆動力が支持軸33に入力されることにより、薬液ノズル9およびノズルアーム25が、支持軸33の中心軸線まわりに一体的に水平移動する。これにより、薬液ノズル9がスピンチャック8の上方に配置された処理位置と、スピンチャック8の上方から退避した原点位置との間で、薬液ノズル9およびノズルアーム25を一体的に移動させることができる。図2では、薬液ノズル9およびノズルアーム25が処理位置に配置された状態を示している。
【0038】
リンス液ノズル10は、たとえば、連続流の状態でリンス液を吐出するストレートノズルである。リンス液ノズル10は、水平に延びるノズルアーム35の先端部に取り付けられている。リンス液ノズル10は、その吐出口が下方に向けられた状態で、スピンチャック8よりも上側に配置されている。リンス液ノズル10には、リンス液供給管36が接続されており、このリンス液供給管36を介して図示しないリンス液供給源からのリンス液が供給される。リンス液供給管36には、リンス液ノズル10へのリンス液の供給および供給停止を切り換えるためのリンス液バルブ37が介装されている。
【0039】
リンス液ノズル10に供給されるリンス液としては、たとえば、純水(脱イオン水)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、磁気水や、希釈濃度(たとえば、1ppm程度)のアンモニア水などが挙げられる。本実施形態では、リンス液として純水が用いられている。
また、ノズルアーム35には、鉛直方向に延びる支持軸38が結合されている。ノズルアーム35は、この支持軸38によって支持されている。支持軸38は、その中心軸線まわりに揺動可能とされている。支持軸38には、たとえばモータ等で構成されたノズル揺動駆動機構39が結合されている。ノズル揺動駆動機構39の駆動力が支持軸38に入力されることにより、リンス液ノズル10およびノズルアーム35が、支持軸38の中心軸線まわりに一体的に水平移動する。これにより、リンス液ノズル10がスピンチャック8の上方に配置された処理位置と、スピンチャック8の上方から退避した原点位置との間で、リンス液ノズル10およびノズルアーム35を一体的に移動させることができる。図2では、リンス液ノズル10およびノズルアーム35が原点位置に配置された状態を示している。
【0040】
遮断板11は、基板Wとほぼ同じ直径(あるいは基板Wよりも少し大きい直径)を有する円板状の部材である。遮断板11は、鉛直方向に延びる支軸40の下端に連結されている。遮断板11は、その中心軸線が回転軸13と共通の軸線上に位置するように、スピンチャック8の上方で水平に配置されている。遮断板11の下面は、平坦に形成されており、スピンチャック8に対向している。この実施形態では、遮断板11の下面が、スピンチャック8に保持された基板Wに対向する基板対向面となっている。
【0041】
また、遮断板11の中央部には、当該遮断板11を鉛直方向に貫通する貫通孔が形成されている。貫通孔の下端は、遮断板11の下面中央部において開口している。支軸40は中空であり、その内部空間は貫通孔に連通している。支軸40には、第1上側処理液供給管41が非接触状態で挿通されている。第1上側処理液供給管41の下端は、遮断板11の貫通孔に至っている。
【0042】
第1上側処理液供給管41の下端には、基板Wの上面中央部に向けて処理液を吐出するための吐出口41aを有する遮断板ノズル41bが形成されている。第1上側処理液供給管41には、第2上側処理液供給管42が接続されており、この第2上側処理液供給管42を介して図示しない処理液供給源からの処理液(薬液またはリンス液)が供給される。第1上側処理液供給管41に供給された処理液は、遮断板ノズル41bの吐出口41aから下方に吐出される。第2上側処理液供給管42には、第1上側処理液供給管41への処理液の供給および供給停止を切り換えるための上側処理液バルブ43が介装されている。
【0043】
また、支軸40と第1上側処理液供給管41との間には、第1上側処理液供給管41を取り囲む上側ガス供給路44が形成されている。上側ガス供給路44には、上側ガス供給管45が接続されている。上側ガス供給路44には、上側ガス供給管45を介して図示しないガス供給源からのガスが供給される。上側ガス供給路44に供給されたガスは、上側ガス供給路44を下方に流れ、遮断板11の貫通孔から下方に吐出される。遮断板11の内周面(貫通孔を区画する面)と遮断板ノズル41bの外周面との間が、上側ガス供給路44からのガスを吐出する上側ガス吐出口46となっている。上側ガス供給路44に供給されるガスとしては、たとえば、不活性ガスの一例である窒素ガスが用いられている。また、上側ガス供給管45には、上側ガス供給路44へのガスの供給および供給停止を切り換えるための上側ガスバルブ47が介装されている。
【0044】
また、支軸40には、遮断板昇降駆動機構48および遮断板回転駆動機構49が結合されている。遮断板昇降駆動機構48の駆動力が支軸40に入力されることにより、遮断板11の下面が基板Wの上面に近接した近接位置と、スピンチャック8の上方に大きく退避した原点位置との間で、支軸40および遮断板11が一体的に昇降する。図2では、支軸40および遮断板11が原点位置に配置された状態を示している。
【0045】
また、遮断板回転駆動機構49の駆動力が支軸40に入力されることにより、支軸40および遮断板11が一体的に回転する。これにより、たとえば、スピンチャック8による基板Wの回転に同期させて(あるいは若干回転速度を異ならせて)支軸40および遮断板11を回転させることができる。遮断板回転駆動機構49は省略されていてもよく、遮断板11は非回転状態で固定されていてもよい。
【0046】
また、スピンチャック8は、有底容器状の処理カップ50(回収手段)に収容されている。処理カップ50の底部には、排液溝51と、回収溝52(回収手段)とが形成されている。排液溝51は、スピンチャック8の周囲を取り囲むように形成されており、回収溝52は、排液溝51を取り囲むように形成されている。排液溝51は、基板Wの処理に用いられた後のリンス液(純水)を排液するための溝である。また、回収溝52は、基板Wの処理のために用いられた後の薬液を回収するため溝である。排液溝51および回収溝52は、それらの間に形成された筒状の仕切壁53によって区画されている。排液溝51には、リンス液排液配管54が接続されており、回収溝52には、薬液回収管55(回収手段)が接続されている。薬液回収管55は、前述の薬液タンク27に接続されており、回収溝52に集められた薬液は、薬液回収管55を介して薬液タンク27に回収される。
【0047】
また、処理カップ50の上方には、基板Wからの処理液(薬液または純水)が外部に飛散することを防止するためのスプラッシュガード56(回収手段)が設けられている。スプラッシュガード56は、基板Wの回転軸線に対して回転対称な形状を有している。スプラッシュガード56の上端部の内面には、基板Wの回転軸線に対向するように開いた断面横向きV字状のリンス液捕獲部57が形成されている。また、スプラッシュガード56の下端部には、下方に向かうに従って内径が大きくなる凹湾曲状の薬液捕獲部58(回収手段)が形成されている。薬液捕獲部58の上方には、処理カップ50の仕切壁53を受け入れるための仕切壁収納溝59が形成されている。
【0048】
また、スプラッシュガード56には、たとえばボールねじ機構等で構成されたガード昇降駆動機構(図示せず)が設けられている。ガード昇降駆動機構の駆動力がスプラッシュガード56に入力されることにより、スプラッシュガード56が上下動する。これにより、回収位置、排液位置、および原点位置を含む複数の位置にスプラッシュガード56を移動させることができる。回収位置は、薬液捕獲部58がスピンチャック8に保持された基板Wの周端面に対向する位置であり、排液位置は、リンス液捕獲部57がスピンチャック8に保持された基板Wの周端面に対向する位置である。また、原点位置は、スプラッシュガード56の上端がスピンチャック8の基板保持位置よりも低くなる位置である。図2では、スプラッシュガード56が回収位置に配置された状態を示している。
【0049】
基板Wから排出される使用済み薬液を捕獲して薬液タンク27に回収するときには、スプラッシュガード56を回収位置に配置させる。これにより、基板Wから外方へ飛散した薬液を薬液捕獲部58により回収溝52に導いて、薬液タンク27に回収することができる。また、基板Wから排出される使用済みリンス液(純水)を捕獲して排液するときには、スプラッシュガード56を排液位置に配置させる。これにより、基板Wから外方へ飛散した純水をリンス液捕獲部57により排液溝51に導いて、リンス液排液配管54から排液させることができる。さらに、センターロボットCRとスピンチャック8との間で基板Wの受け渡しをするときには、センターロボットCRが衝突しないように、薬液ノズル9、リンス液ノズル10、遮断板11およびスプラッシュガード56をそれぞれの原点位置に配置させる。
【0050】
次に、各処理部6において行われる基板Wの処理の一例について説明する。
各処理部6において基板Wが処理されるときは、たとえば、センターロボットCRからスピンチャック8に基板Wが渡された後、薬液ノズル9が処理位置に移動される。さらに、スプラッシュガード56が回収位置に移動される。そして、下側ガス吐出口22から窒素ガスが吐出された状態で、複数個の挟持部材15によって保持された基板Wが回転される。その後、下側ガス吐出口22から窒素ガスが吐出された状態で、薬液ノズル9から基板Wの上面に向けて薬液が吐出される。このとき、薬液ノズル9は、吐出された薬液が基板Wの上面における回転中心を含む範囲やその近傍に着液する位置で固定されていてもよいし、薬液の着液位置が前記回転中心と基板W上面の周縁との間で移動するように移動されてもよい。
【0051】
吐出された薬液が前記回転中心を含む範囲やその近傍に着液する位置で薬液ノズル9が固定される場合には、前記回転中心を含む範囲やその近傍に着液した薬液が、基板Wの回転による遠心力によって基板W上面の周縁に向かって広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に薬液が供給され、基板Wの上面全域に薬液による処理が行われる。
また、薬液の着液位置が前記回転中心と基板W上面の周縁との間で移動される場合には、薬液の着液位置が基板Wの上面全域を通過し、薬液ノズル9から基板Wの上面全域に薬液が直接供給される。これにより、基板Wの上面全域に薬液による処理が行われる。
【0052】
基板Wの上面に供給され当該上面の周縁に達した薬液は、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの周囲に振り切られる。そして、振り切られた薬液は、スプラッシュガード56の薬液捕獲部58により捕獲され、処理カップ50の回収溝52に導かれる。これにより、基板Wから排出された使用済みの薬液が回収溝52に集められる。そして、回収溝52に集められた薬液が薬液回収管55を介して薬液タンク27に回収される。
【0053】
基板Wの上面に対する薬液処理が所定時間にわたって行われた後は、薬液ノズル9からの薬液の吐出が停止され、スプラッシュガード56が排液位置まで降下される。そして、薬液ノズル9が原点位置に移動され、薬液ノズル9に代わってリンス液ノズル10が処理位置に移動される。その後、下側ガス吐出口22から窒素ガスを吐出させた状態で、リンス液ノズル10から基板Wの上面に向けてリンス液としての純水が吐出される。これにより、基板W上の薬液が純水によって洗い流され、基板Wの上面全域にリンス処理が行われる。リンス液ノズル10から純水が吐出されるとき、リンス液ノズル10は、吐出された純水が前記回転中心を含む範囲やその近傍に着液する位置で固定されていてもよいし、純水の着液位置が前記回転中心と基板W上面の周縁との間で移動するように移動されてもよい。
【0054】
リンス液ノズル10から基板Wに供給され基板W上面の周縁に達した純水は、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの周囲に振り切られ、スプラッシュガード56のリンス液捕獲部57により捕獲される。そして、捕獲された純水が処理カップ50の排液溝51に導かれる。これにより、基板Wから排出された使用済みの純水が排液溝51に集められ、集められた純水がリンス液排液配管54を通じて排液溝51から排液される。
【0055】
基板Wの上面に対するリンス処理が所定時間にわたって行われた後は、リンス液ノズル10からの純水の吐出が停止される。そして、リンス液ノズル10が原点位置に移動され、遮断板11が近接位置に配置される。その後、上側ガス吐出口46から窒素ガスが吐出された状態で、基板Wが高速回転される。これにより、基板Wに付着している液が基板Wの回転による遠心力によって基板Wの周囲に振り切られ、基板Wから排出される。このようにして、基板Wに対するスピンドライ処理が行われる。基板Wに対するスピンドライ処理が行われるとき、遮断板11は、スピンチャック8による基板Wの回転に同期するように(あるいは回転速度が若干異なるように)回転されていてもよいし、非回転状態で固定されていてもよい。
【0056】
基板Wに対するスピンドライ処理が所定時間にわたって行われた後は、薬液ノズル9、リンス液ノズル10、遮断板11およびスプラッシュガード56がそれぞれの原点位置に配置される。そして、センターロボットCRによって処理済の基板Wがスピンチャック8から搬出される。これにより、スピンチャック8から処理済の基板Wが払い出される。
前述のように、この基板Wの処理の一例では、下側ガス吐出口22から窒素ガスを吐出させた状態で、薬液および純水が、それぞれ、薬液ノズル9およびリンス液ノズル10から吐出される。したがって、基板Wの下面側に回り込んだ薬液およびリンス液が、下側ガス吐出口22を通じて下側ガス供給路21に進入することが抑制または防止されている。
【0057】
また、この基板Wの処理の一例では、遮断板11が近接位置に配置され、さらに、上側ガス吐出口46から窒素ガスが吐出されている状態で、スピンドライ処理が行われる。そのため、スピンドライ処理が行われているときに、遮断板11と基板W上面との間の雰囲気が窒素ガス雰囲気に置換されている。したがって、基板Wの上面は窒素ガス雰囲気で乾燥される。これにより、ウォータマークなどの乾燥不良が基板W上面に生じることが抑制または防止されている。
【0058】
図3は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。
以下では、図1〜図3を参照して、基板処理装置1の電気的構成について説明する。
この基板処理装置1は、メイン制御部60(異常検知手段、異常処理手段、交換処理手段)を備えている。メイン制御部60は、CPU(中央演算処理装置)を含むコンピュータ等からなる。図1に示すように、メイン制御部60は、インデクサブロック2に設けられている。
【0059】
また、図3に示すように、メイン制御部60には、インデクサロボットIR、センターロボットCR、IR移動機構5、および各処理部6が制御対象として接続されている。インデクサロボットIR、センターロボットCR、IR移動機構5、および各処理部6の動作は、メイン制御部60によって制御される。
また、図3に示すように、メイン制御部60には、操作部61が接続されている。図示はしないが、操作部61は、処理レシピ(基板Wの処理のための各種条件)を入力するための入力部や、基板処理装置1の稼働状況等を表示するための表示部を含む。使用者は、操作部61を操作することにより、処理レシピ等を入力することができる。また、使用者は、操作部61を操作することにより、基板処理装置1を自動運転モードから手動運転モード、または手動運転モードから自動運転モードに切り替えることができる。
【0060】
自動運転モードとは、基板処理装置1を予め決められたプログラム(処理レシピなど)にしたがって稼働させることができるモードである。また、手動運転モードとは、操作部61からの操作に応じて基板処理装置1を稼働させることができるモードである。使用者は、手動運転モードにおいて操作部61を操作することにより、その操作に応じた動作をインデクサロボットIR、センターロボットCR、IR移動機構5、および各処理部6に行わせることができる。
【0061】
また、図2に示すように、各処理部6には、スピンチャックセンサ62、薬液ノズルセンサ63、リンス液ノズルセンサ64、遮断板センサ65、脱着カバーセンサ66、スプラッシュガードセンサ67などの複数のセンサ(異常検知手段)が設けられている。スピンチャックセンサ62は、スピンチャック8の回転速度を検出するためのものであり、薬液ノズルセンサ63は、薬液ノズル9の位置を検出するためのものである。また、リンス液ノズルセンサ64は、リンス液ノズル10の位置を検出するためのものであり、遮断板センサ65は、遮断板11の位置を検出するためのものである。また、脱着カバーセンサ66は、脱着カバー12が隔壁7に取り付けられているか否かを検出するためのものであり、スプラッシュガードセンサ67は、スプラッシュガード56の位置を検出するためのものである。
【0062】
図3に示すように、これらのセンサ62〜67は、メイン制御部60に接続されている。メイン制御部60は、これらのセンサ62〜67からの入力信号により、基板処理装置1の異常の有無を検知することができる。すなわち、メイン制御部60は、スピンチャック8が所望の回転速度で回転しているか、薬液ノズル9、リンス液ノズル10、遮断板11およびスプラッシュガード56がそれぞれ所定の位置に配置されているか、脱着カバー12が隔壁7に取り付けられているかを複数のセンサ62〜67からの入力信号に基づいて判断し、何れかの処理部6において異常が発生しているか否かを検知する。
【0063】
以下では、各処理部6において基板Wが処理されているときに、基板処理装置1の異常を検知して異常処理を行うまでの流れ、およびそれに関連する処理の流れについて具体的に説明する。
図4は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の異常を検知して異常処理を実行するまでのフローチャートである。
【0064】
各処理部6で基板Wの処理が行われているとき、メイン制御部60は、各処理部6において、当該処理部6の動作を即時に停止させるべき異常の発生を監視する(ステップS41)。そして、何れかの処理部6において異常が検知された場合(ステップS41でYesの場合)には、メイン制御部60が異常処理を実行すべきかを判断する(ステップS42)。また、異常が検知されなかった場合(ステップS41でNoの場合)には、異常発生の監視が継続される。
【0065】
各処理部6の動作を即時に停止させるべき異常とは、たとえば、スプラッシュガード56が所定位置まで移動していない場合、スピンチャック8が回転していない場合、基板Wの処理中において脱着カバー12が隔壁7から取り外された場合、処理液が各ノズル9,10に至る経路において処理液の漏れが発生している場合などである。
処理部6の動作を即時に停止させるべき異常が発生し、異常処理を実行すべきと判断された場合(ステップS42でYesの場合)には異常処理が実行される。すなわち、異常が発生した処理部6において、スピンチャック8による基板Wの回転や、基板Wへの処理液の供給が即時に停止される(ステップS43)。また、異常が発生した処理部6以外の処理部6(正常な処理部6)においては、処理中の基板Wがあれば、当該基板Wに対して行われるべき一連の処理が完了した後に動作が停止される。以下では、基板Wに対して行われるべき一連の処理が完了した後に処理部6の動作が停止されることを、「サイクル停止」という。
【0066】
一方、処理部6の動作を即時に停止させるべき異常が発生した場合であっても、異常処理を実行すべきでないと判断された場合(ステップS42でNoの場合)には、各処理部6が即時停止またはサイクル停止されるが(ステップS44)、その後の異常処理は実行されない。
異常処理を実行すべきでない場合とは、たとえば、異常処理を実行するのに使用される構成(スピンチャック8等)が動作しない場合や、基板Wの処理中において隔壁7から脱着カバー12が取り外された場合などである。具体的には、たとえば、何れかの処理部6において、リンス液ノズル10から純水を吐出させているときに、隔壁7から脱着カバー12が取り外された場合には、スピンチャック8による基板Wの回転や、基板Wへの純水の供給を即時に停止させ、異常処理を実行せずに、アラームやランプ等により基板処理装置1に異常が発生したことを報知する。
【0067】
図5は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1において行われる異常処理の第1実施例のフローチャートである。
この第1実施例に係る異常処理では、最初に、アラームやランプ等により基板処理装置1の異常が報知される(ステップS101)。そして、薬液ノズル9、リンス液ノズル10、遮断板11およびスプラッシュガード56がそれぞれの原点位置に移動される(ステップS102)。その後、下側ガス吐出口22から窒素ガスが吐出され(ステップS104)、スピンチャック8により基板Wが回転される(ステップS105)。
【0068】
基板Wが回転された後は、リンス液ノズル10が処理位置に配置される。そして、リンス液ノズル10からスピンチャック8に保持された基板Wの上面に向けてリンス液としての純水が吐出される(ステップS105)。これにより、基板Wの上面に純水が供給され、異常処理の一工程としてのリンス処理が基板Wの上面全域に行われる。そして、リンス処理が実行されている間、メイン制御部60により、リンス処理を終了させるためのリセット操作が行われたか否かが検知される(ステップS106)。具体的には、たとえば、操作部61に設けられたリセットボタン(図示せず)が使用者により操作されたか否かがメイン制御部60により検知される。
【0069】
リセット操作が行われていない場合(ステップS106でNoの場合)には、引き続きリンス処理が実行される。一方、リセット操作が行われた場合(ステップS106でYesの場合)には、たとえば、操作部61に設けられた表示部(図示せず)に、リンス処理を終了させるかどうかの確認を促すダイヤログ(リンス終了確認ダイヤログ)が表示される(ステップS107)。
【0070】
リンス終了確認ダイヤログが表示されても、確認操作が行われない場合(ステップS107でNoの場合)には、引き続きリンス処理が実行される。一方、確認操作が行われた場合(ステップS107でYesの場合)には、スピンチャック8による基板Wの回転が停止され、リンス液ノズル10から基板Wへの純水の供給が停止される(ステップS108)。これにより、リンス処理が停止され、第1実施例に係る異常処理が終了する。
【0071】
異常処理が終了された後は、基板処理装置1を手動運転モードに切り換えて、操作部61を操作することにより、スピンチャック8に保持された基板WをセンターロボットCRによって回収してもよいし、異常処理終了後に基板Wが回収されるように予めプログラミングしておいて、引き続き自動運転モードで、スピンチャック8に保持された基板WをセンターロボットCRによって回収させてもよい。
【0072】
基板Wを回収するときの具体例としては、薬液ノズル9、リンス液ノズル10、遮断板11およびスプラッシュガード56がそれぞれの原点位置に配置されたときに、スピンチャック8上に基板Wがあれば、センターロボットCRによって当該基板Wが回収されるように予めプログラミング(基板回収プログラミング)しておく。そして、異常処理終了後に、手動運転モードで操作部61を操作して、薬液ノズル9、リンス液ノズル10、遮断板11およびスプラッシュガード56をそれぞれの原点位置に移動させる。その後、操作部61を操作することにより、基板処理装置1を手動運転モードから自動運転モードに切り換える。これにより、基板回収プログラミングが実行されて、スピンチャック8に保持された基板WがセンターロボットCRによって回収される。
【0073】
この第1実施例に係る異常処理では、異常処理の一工程としてリンス処理を行うことにより、たとえば薬液処理中に異常が生じて基板Wに薬液が付着した状態で処理部6の動作が即時停止となっても、基板W上の薬液を純水によって洗い流して基板W上から排除することができる。したがって、薬液が付着した状態で基板Wが放置されることを防止することできる。これにより、薬液処理が必要以上に進行して基板Wが不良品となることを抑制または防止することができる。
【0074】
図6は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1において行われる異常処理の第2実施例のフローチャートである。
この第2実施例に係る異常処理では、第1実施例に係る異常処理と同様に、最初に、アラームやランプ等により基板処理装置1の異常が報知される(ステップS201)。そして、薬液ノズル9、リンス液ノズル10、遮断板11およびスプラッシュガード56がそれぞれの原点位置に移動される(ステップS202)。その後、下側ガス吐出口22から窒素ガスが吐出され(ステップS203)、スピンチャック8により基板Wが回転される(ステップS204)。
【0075】
基板Wが回転された後は、リンス液ノズル10が処理位置に配置される。そして、リンス液ノズル10からスピンチャック8に保持された基板Wの上面に向けてリンス液としての純水が吐出される(ステップS205)。これにより、基板Wの上面に純水が供給され、異常処理の一工程としてのリンス処理が基板Wの上面全域に行われる。
基板Wの上面に対するリンス処理が所定時間にわたって行われた後は、スピンチャック8による基板Wの回転が継続されたまま、リンス液ノズル10から基板Wへの純水の供給が停止される(ステップS206)。これにより、リンス処理が終了される。そして、スピンチャック8による基板Wの回転速度が高められ、基板Wが高速回転される(ステップS207)。これにより、基板Wに付着している液が基板Wの回転による遠心力によって基板Wの周囲に振り切られ、基板Wが乾燥される。このようにして、異常処理の一工程としてのスピンドライ処理が行われる。
【0076】
基板Wの上面に対するスピンドライ処理が所定時間にわたって行われた後は、スピンチャック8による基板Wの回転が停止され(ステップS208)、薬液ノズル9、リンス液ノズル10、遮断板11およびスプラッシュガード56がそれぞれの原点位置に配置される。そして、センターロボットCRによってスピンチャック8から基板Wが搬出され、乾燥された基板Wがスピンチャック8から払い出される(ステップS209)。このようにして、乾燥された基板Wをスピンチャック8から払い出す基板回収処理が、異常処理の一工程として行われる。この第2実施例に係る異常処理では、異常が報知されてからリンス処理を経て基板回収処理が行われるまでの一連の処理が自動で行われる。
【0077】
この第2実施例に係る異常処理では、第1実施例に係る異常処理と同様に、異常処理の一工程としてリンス処理を行うことにより、たとえば薬液処理中に異常が生じて基板Wに薬液が付着した状態で処理部6の動作が即時停止となっても、基板W上の薬液を純水によって洗い流して基板W上から排除することができる。これにより、薬液処理が必要以上に進行して基板Wが不良品となることを抑制または防止することができる。
【0078】
また、この第2実施例に係る異常処理では、基板回収処理までの一連の処理が全て自動で行われるので、基板Wを回収するための手動操作を行う必要がない。また、基板Wを乾燥させた状態で回収するので、センターロボットCRなどが基板Wに付着した液により濡れたり、汚染されたりすることを防止することができる。
図7は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1において異常処理が行われた後に薬液タンク27内の液を新液に交換するまでのフローチャートである。この図7において、基板処理装置1の異常が検知され異常処理が実行されるまでの流れは、図4において説明した流れと同一であるので、図4と同一のステップの符号を付してその説明を省略する。
【0079】
異常処理が行われた後、メイン制御部60は、薬液タンク27内の液を新液(未使用の薬液)に交換すべきかを判断する(ステップS71)。具体的には、異常の内容がスプラッシュガード56の故障(スプラッシュガード56を昇降させるガード昇降駆動機構の故障)であり、薬液捕獲部58がスピンチャック8に保持された基板Wの周端面に対向した位置(回収位置またはその近傍。以下では単に「回収位置等」という。)でスプラッシュガード56が停止しているか否かを検知する。
【0080】
異常の内容がスプラッシュガード56の故障であり、スプラッシュガード56が回収位置等で停止している場合(ステップS71でYesの場合)には、薬液タンク27内の液を新液に交換させる(ステップS72)。具体的には、メイン制御部60が、排液バルブ31を開いて薬液タンク27内の全ての液を排液配管32から排液させる。その後、メイン制御部60が、補充バルブ29を開いて薬液補充管30から薬液タンク27内に新液を補充させる。これにより、薬液タンク27内の液が新液に交換され、交換処理が行われる。
【0081】
一方、異常の内容がスプラッシュガード56の故障でない場合や、異常の内容がスプラッシュガード56の故障であってもたとえばスプラッシュガード56が排液位置で停止している場合(ステップS71でNoの場合)には、薬液タンク27内の液が新液に交換されない。
すなわち、異常の内容がスプラッシュガード56の故障であり、スプラッシュガード56が回収位置等で停止してしまった場合に異常処理の一工程としてのリンス処理が行われると、基板Wに供給された純水が薬液タンク27内に回収され、薬液タンク27内の薬液が純水によって薄まってしまう。
【0082】
一方、異常の内容がスプラッシュガード56の故障でない場合や、異常の内容がスプラッシュガード56の故障であってもたとえばスプラッシュガード56が排液位置で停止している場合には、異常処理の一工程としてのリンス処理が行われても、薬液タンク27内の薬液が純水によって薄まることはない。
薬液タンク27内の薬液が純水によって薄まっても、薬液濃度の低下が僅かであれば、薬液タンク27内の液を新液に交換せずに、次の基板W(基板処理装置1の異常回復後に処理される基板W)に使用しても、当該基板Wに対する薬液処理に与える影響は殆どない。しかし、薬液濃度の低下が大きい場合には、このような薬液を引き続き使用すると所望の薬液処理を基板Wに実施できないおそれがある。
【0083】
具体的には、本実施形態では、1つの薬液タンク27が複数の処理部6で共用されている。したがって、何れかの処理部6に異常が生じたときに他の正常な処理部6をサイクル停止させるまでに異常処理の一工程としてのリンス処理が行われると、薬液タンク27内に純水が回収され、薬液タンク27内の薬液が純水によって薄まってしまうおそれがある。しかしながら、通常、サイクル停止されるまでの薬液タンク27内における薬液濃度の低下は僅かであるので、サイクル停止されるまでは、薄まった薬液を引き続き使用しても、薬液処理に与える影響は殆どない。
【0084】
ところが、次の基板W(基板処理装置1の異常回復後に処理される基板W)を処理するときには、異常処理が終了しており、薬液濃度の低下がさらに進んでいる。したがって、薬液タンク27内の液を交換せずに引き続き使用すると、所望の薬液処理を基板Wに実施できないおそれがある。また、薬液濃度の低下が比較的小さいとしても、このような濃度の低下した薬液を引き続き使用するのは好ましくない。したがって、本実施形態のように、異常の内容がスプラッシュガード56の故障であり、スプラッシュガード56が回収位置等で停止している場合に、薬液タンク27内の液を新液に交換することにより、十分な処理能力を有する薬液を次の基板Wに供給することができる。これにより、次の基板Wに対して所望の薬液処理を行うことができる。
【0085】
以上のように本実施形態では、基板Wの処理中において基板処理装置1に異常が生じた場合に、当該異常が検知され異常処理が実行される。具体的には、基板Wの上面に純水を供給して基板Wの上面を洗い流す。これにより、基板Wの上面に薬液が付着していたとしても、基板W上から薬液が排除され、薬液が付着した状態で基板Wが放置されることが防止される。そのため、薬液処理が必要以上に進行して基板Wに損傷が加わることを抑制または防止することができる。これにより、基板Wの処理が途中で中断または中止された場合であっても、処理中の基板Wが不良品になることを抑制または防止することができる。
【0086】
図8は、この発明の第2実施形態に係る基板処理装置201に備えられた処理部206の概略構成を示す図解的な側面図である。この図8において、前述の図1〜図7に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この第2実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、処理液を吸引するための吸引機構68(吸引手段)が、遮断板ノズル41b(リンス液ノズル)に繋がる処理液供給路に接続されていることである。吸引機構68は、吸引管69と、吸引管69に介装された吸引バルブ70と、吸引装置71とを備えている。吸引管69の一端は、第2上側処理液供給管42の所定位置(上側処理液バルブ43が介装された位置よりも下流側の位置)に接続されている。吸引装置71は、吸引管69を介して第2上側処理液供給管42に接続されている。吸引装置71は、たとえば常時駆動されており、吸引力を常時発生させている。上側処理液バルブ43が閉じられ、吸引バルブ70が開かれると、吸引装置71の吸引力が、第2上側処理液供給管42および遮断板ノズル41b内に作用する。一方、吸引バルブ70が閉じられると、吸引装置71の吸引力の伝達が吸引バルブ70によって遮断される。吸引バルブ70の開閉は、メイン制御部60(図1参照)によって制御される。
【0087】
図9は、この発明の第2実施形態に係る基板処理装置201において行われる異常処理の第3実施例のフローチャートである。
この第3実施例に係る異常処理では、最初に、アラームやランプ等により基板処理装置201の異常が報知される(ステップS301)。そして、薬液ノズル9、リンス液ノズル10、遮断板11およびスプラッシュガード56がそれぞれの原点位置に移動される(ステップS302)。その後、下側ガス吐出口22から窒素ガスが吐出され(ステップS303)、スピンチャック8により基板Wが回転される(ステップS304)。
【0088】
基板Wが回転された後は、上側処理液バルブ43が開かれて、遮断板ノズル41bからスピンチャック8に保持された基板Wの上面に向けてリンス液としての純水が吐出される(ステップS305)。遮断板ノズル41bの吐出口41aから吐出された純水は、基板Wの上面の回転中心を含む範囲に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて外方に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に純水が供給され、異常処理の一工程としてのリンス処理が基板Wの上面全域に行われる。そして、リンス処理が所定時間にわたって行われた後は、スピンチャック8による基板Wの回転が継続されたまま、上側処理液バルブ43が閉じられて、遮断板ノズル41bから基板Wへの純水の供給が停止される(ステップS306)。これにより、リンス処理が終了される。
【0089】
リンス処理が終了された後は、スピンドライ処理および基板回収処理が順次行われる。また、スピンドライ処理と並行して吸引処理が行われる。より具体的には、リンス処理が終了されると、スピンチャック8による基板Wの回転速度が高められ、基板Wが高速回転される(ステップS307)。したがって、基板Wに付着している液が基板Wの回転による遠心力によって基板Wの周囲に振り切られる。これにより、基板Wが乾燥され、異常処理の一工程としてのスピンドライ処理が行われる。そして、スピンドライ処理が所定時間にわたって行われた後は、スピンチャック8による基板Wの回転が停止される(ステップS308)。これにより、スピンドライ処理が終了される。スピンドライ処理が行われているとき、遮断板11は、遮断板11の下面が基板Wの上面に近接した近接位置に配置されていてもよいし、近接位置に配置されていなくてもよい。
【0090】
一方、リンス処理が終了されると、スピンドライ処理と並行して吸引処理が行われる。より具体的には、リンス処理が終了した後、吸引バルブ70が開かれる(ステップS309)。これにより、吸引装置71の吸引力が第2上側処理液供給管42および遮断板ノズル41b内に作用して、第2上側処理液供給管42において上側処理液バルブ43が介装された位置から遮断板ノズル41bまでの範囲に残っている純水が吸引される(吸引処理)。そのため、この範囲から純水が除去される。そして、吸引バルブ70が開かれて所定時間が経過すると、吸引バルブ70が閉じられて、異常処理の一工程としての吸引処理が終了される(ステップS310)。
【0091】
スピンドライ処理が行われた後は、薬液ノズル9、リンス液ノズル10、遮断板11およびスプラッシュガード56がそれぞれの原点位置に配置される。そして、センターロボットCRによってスピンチャック8から基板Wが搬出され、乾燥された基板Wがスピンチャック8から払い出される(ステップS311)。このようにして、乾燥された基板Wをスピンチャック8から払い出す基板回収処理が、異常処理の一工程として行われる。
【0092】
以上のように、この第3実施例に係る異常処理では、リンス処理が終了した後に遮断板ノズル41bおよび当該遮断板ノズル41bに至る処理液供給路を含む所定範囲に残っている純水が、吸引処理によって前記所定範囲から除去される。これにより、前記所定範囲内に残っている純水が、遮断板ノズル41bの吐出口41aからぼたぼたと落ちて、基板Wに付着することが防止される。これにより、乾燥した基板Wや、センターロボットCRなどが濡れることを抑制または防止することができる。
【0093】
図10は、この発明の第3実施形態に係る基板処理装置301に備えられた処理部306の概略構成を示す図解的な側面図である。この図10において、前述の図1〜図9に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この第3実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、異常処理の一工程であるリンス処理を行うための専用の固定ノズル72(リンス液ノズル)が各処理部306に設けられていることである。固定ノズル72は、たとえば、連続流の状態で処理液を吐出するストレートノズルである。固定ノズル72は、吐出された処理液が基板Wの上面における回転中心を含む範囲に着液するように、処理室内の所定位置に固定されている。より具体的には、固定ノズル72は、たとえば、スピンチャック8の真上を除くスピンチャック8よりも高い位置に配置されている。さらに、固定ノズル72は、薬液ノズル9やスプラッシュガード56などの可動部品に干渉しない位置に配置されている。
【0094】
また、固定ノズル72は、リンス液供給管73に接続されている。固定ノズル72には、このリンス液供給管73を介して図示しないリンス液供給源からのリンス液が供給される。リンス液供給管73には、固定ノズル72へのリンス液の供給および供給停止を切り換えるためのリンス液バルブ74が介装されている。固定ノズル72には、リンス液の一例である純水が供給される。
【0095】
また、固定ノズル72は、吸引機構368(吸引手段)に接続されている。吸引機構368は、吸引管369と、吸引管369に介装された吸引バルブ370と、吸引装置371とを備えている。吸引管369の一端は、リンス液供給管73の所定位置(リンス液バルブ74が介装された位置よりも下流側の位置)に接続されている。吸引装置371は、吸引管369を介してリンス液供給管73に接続されている。吸引装置371は、たとえば常時駆動されており、吸引力を常時発生させている。リンス液バルブ74が閉じられ、吸引バルブ370が開かれると、吸引装置371の吸引力が、リンス液供給管73および固定ノズル72内に作用する。一方、吸引バルブ370が閉じられると、吸引装置371の吸引力の伝達が吸引バルブ370によって遮断される。吸引バルブ370の開閉は、メイン制御部60(図1参照)によって制御される。
【0096】
図11は、この発明の第3実施形態に係る基板処理装置301において行われる異常処理の第4実施例のフローチャートである。
この第4実施例に係る異常処理では、最初に、アラームやランプ等により基板処理装置301の異常が報知される(ステップS401)。そして、薬液ノズル9、リンス液ノズル10、遮断板11およびスプラッシュガード56がそれぞれの原点位置に移動される(ステップS402)。その後、下側ガス吐出口22から窒素ガスが吐出され(ステップS403)、スピンチャック8により基板Wが回転される(ステップS404)。
【0097】
基板Wが回転された後は、リンス液バルブ74が開かれて、固定ノズル72からスピンチャック8に保持された基板Wの上面に向けてリンス液としての純水が吐出される(ステップS405)。固定ノズル72から吐出された純水は、基板Wの上面の回転中心を含む範囲に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて外方に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に純水が供給され、異常処理の一工程としてのリンス処理が基板Wの上面全域に行われる。そして、リンス処理が所定時間にわたって行われた後は、スピンチャック8による基板Wの回転が継続されたまま、リンス液バルブ74が閉じられて、固定ノズル72から基板Wへの純水の供給が停止される(ステップS406)。これにより、リンス処理が終了される。
【0098】
リンス処理が終了された後は、スピンドライ処理および基板回収処理が順次行われる。また、スピンドライ処理と並行して吸引処理が行われる。より具体的には、リンス処理が終了されると、スピンチャック8による基板Wの回転速度が高められ、基板Wが高速回転される(ステップS407)。したがって、基板Wに付着している液が基板Wの回転による遠心力によって基板Wの周囲に振り切られる。これにより、基板Wが乾燥され、異常処理の一工程としてのスピンドライ処理が行われる。そして、スピンドライ処理が所定時間にわたって行われた後は、スピンチャック8による基板Wの回転が停止される(ステップS408)。これにより、スピンドライ処理が終了される。スピンドライ処理が行われているとき、遮断板11は、遮断板11の下面が基板Wの上面に近接した近接位置に配置されていてもよいし、近接位置に配置されていなくてもよい。
【0099】
一方、リンス処理が終了されると、スピンドライ処理と並行して吸引処理が行われる。より具体的には、リンス処理が終了した後、吸引バルブ370が開かれる(ステップS409)。これにより、吸引装置371の吸引力がリンス液供給管73および固定ノズル72内に作用して、リンス液供給管73においてリンス液バルブ74が介装された位置から固定ノズル72までの範囲に残っている純水が吸引される(吸引処理)。そのため、この範囲から純水が除去される。そして、吸引バルブ370が開かれて所定時間が経過すると、吸引バルブ370が閉じられて、異常処理の一工程としての吸引処理が終了される(ステップS410)。
【0100】
スピンドライ処理が行われた後は、薬液ノズル9、リンス液ノズル10、遮断板11およびスプラッシュガード56がそれぞれの原点位置に配置される。そして、センターロボットCRによってスピンチャック8から基板Wが搬出され、乾燥された基板Wがスピンチャック8から払い出される(ステップS411)。このようにして、乾燥された基板Wをスピンチャック8から払い出す基板回収処理が、異常処理の一工程として行われる。
【0101】
以上のように、この第4実施例に係る異常処理では、リンス処理が終了した後に固定ノズル72および当該固定ノズル72に至る処理液供給路を含む所定範囲に残っている純水が、吸引処理によって前記所定範囲から除去される。これにより、前記所定範囲内に純水が残った状態で放置されることを防止することができる。より具体的には、固定ノズル72は、異常処理を行うための専用のノズルであるから、長時間使用されない場合がある。すなわち、通常、基板処理装置301の異常は、頻繁には発生しないから、固定ノズル72は頻繁には使用されない。そのため、前記所定範囲から純水が除去されない場合には、固定ノズル72内に純水が残った状態で長時間放置され易い。したがって、吸引処理によって前記所定範囲から純水を除去することにより、前記所定範囲内に純水が残った状態で放置されることを防止することができる。これにより、前記所定範囲内でバクテリアが発生することを防止することができる。そのため、異常処理が行われるときに、純水とともにバクテリアが固定ノズル72から吐出されることがなく、このようなバクテリアによって基板Wが汚染されることを防止することができる。
【0102】
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の第1〜第3実施形態に係る基板処理装置1、201、301では、スピンチャック8として基板Wの周端面を挟持する挟持式のスピンチャックを例示したが、これに限らず、たとえば、基板Wの下面(裏面)を真空吸着することにより基板Wを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な軸線まわりに回転することにより、その保持した基板Wを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)がスピンチャック8として採用されてもよい。
【0103】
また、前述の第1〜第3実施形態に係る基板処理装置1、201、301では、水平に保持され回転させられている基板Wに処理液を供給して当該基板Wを処理するものを取り上げたが、回転していない状態(非回転状態)の基板Wに処理液を供給して基板Wを処理するものであってもよい。なお、前記非回転状態の基板Wとは、回転も移動もしていない状態(静止状態)の基板Wであってもよいし、回転せずに所定の方向に移動している状態(移動状態)の基板Wであってもよい。
【0104】
また、前述の異常処理の第3および第4実施例では、異常処理の一工程である吸引処理が、スピンドライ処理と並行して実施される場合について説明したが、吸引処理は、スピンドライ処理と並行して実施されなくてもよい。すなわち、吸引処理の全体または一部が、スピンドライ処理が実施されている期間に実施されてもよいし、吸引処理の全体が、スピンドライ処理が実施されていない期間に実施されてもよい。同様に、吸引処理の全体または一部が、基板回収処理が実施されている期間に実施されてもよいし、吸引処理の全体が、基板回収処理が実施されていない期間に実施されてもよい。さらに、吸引処理は、スピンドライ処理および基板回収処理が実施されていない期間に実施されてもよい。
【0105】
また、前述の異常処理の第3実施例では、スピンチャック8の真上に配置された遮断板ノズル41bが異常処理を行うためのノズルとして使用されている場合に、吸引処理が実施される場合について説明した。さらに、前述の異常処理の第4実施例では、処理室内の所定位置に固定された固定ノズル72が異常処理を行うためのノズルとして使用されている場合に、吸引処理が実施される場合について説明した。しかし、リンス液ノズル9のように、スピンチャック8の真上と、スピンチャック8の真上から離れた位置との間で移動されるように構成されたノズルが異常処理を行うためのノズルとして使用されている場合に、吸引処理が実施されてもよい。
【0106】
また、前述の第2〜第3実施形態に係る基板処理装置201、301では、吸引装置71、371が常時駆動されている場合について説明した。しかし、吸引装置71、371は、吸引処理が行われるときのみ駆動されてもよい。またこの場合、吸引バルブ70、370は設けられていなくてもよい。すなわち、吸引装置71、371のオン・オフの制御により、遮断板ノズル41bまたは固定ノズル72内の吸引が行われてもよい。吸引処理が行われるときのみ吸引装置71、371を駆動させることにより、吸引装置71、371を駆動するためのエネルギを低減することができる。これにより、基板処理装置201、301のランニングコストを低減することができる。
【0107】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 基板処理装置
8 スピンチャック(基板保持手段)
9 薬液ノズル
10 リンス液ノズル
16 チャック回転駆動機構(乾燥手段)
27 薬液タンク
29 補充バルブ(交換手段)
30 薬液補充管(交換手段)
31 排液バルブ(交換手段)
32 排液配管(交換手段)
41b 遮断板ノズル(リンス液ノズル)
50 処理カップ(回収手段)
52 回収溝(回収手段)
55 薬液回収管(回収手段)
56 スプラッシュガード(回収手段)
58 薬液捕獲部(回収手段)
60 メイン制御部(異常検知手段、異常処理手段、交換処理手段)
62 スピンチャックセンサ(異常検知手段)
63 薬液ノズルセンサ(異常検知手段)
64 リンス液ノズルセンサ(異常検知手段)
65 遮断板センサ(異常検知手段)
66 脱着ガードセンサ(異常検知手段)
67 スプラッシュガードセンサ(異常検知手段)
68 吸引機構(吸引手段)
72 固定ノズル(リンス液ノズル)
201 基板処理装置
301 基板処理装置
368 吸引機構(吸引手段)
CR センターロボット(搬送手段)
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を1枚ずつ処理する枚葉型の基板処理装置であって、
1枚の基板を保持する基板保持手段と、
この基板保持手段に保持された基板に薬液を供給する薬液ノズルと、
前記基板保持手段に保持された基板にリンス液を供給するリンス液ノズルと、
前記基板処理装置の異常を検知する異常検知手段と、
基板の処理中に前記異常検知手段によって異常が検知された場合に、前記リンス液ノズルからリンス液を吐出させて基板表面の薬液を排除させるリンス処理を含む異常処理を実行する異常処理手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記基板保持手段に保持された基板を乾燥させる乾燥手段と、
基板を搬送する搬送手段とをさらに含み、
前記異常処理手段は、前記リンス処理と、当該リンス処理の施された基板を前記乾燥手段によって乾燥させる乾燥処理と、当該乾燥処理により乾燥された基板を前記搬送手段によって前記基板保持手段から払い出す基板回収処理とを含む異常処理を実行するものである、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記薬液ノズルに供給される薬液を貯留する薬液タンクと、
前記基板保持手段に保持された基板表面から排出される使用済み薬液を捕獲して前記薬液タンクに回収する回収手段と、
前記薬液タンク内の液を新液に交換する交換手段と、
前記交換手段を制御して、前記異常処理手段による前記異常処理が行われた場合に、前記薬液タンク内の液を新液に交換させる交換処理を実行する交換処理手段とをさらに含む、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記リンス液ノズル内を吸引する吸引手段をさらに含み、
前記異常処理手段は、前記リンス処理と、前記リンス処理後に前記吸引手段によって前記リンス液ノズル内を吸引させる吸引処理とを含む異常処理を実行するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
基板を1枚ずつ薬液で処理する枚葉型の基板処理装置による基板の処理中において、当該基板処理装置の異常の有無を検知するステップと、
基板の処理中に前記異常が生じた場合に、リンス液を基板に供給して当該基板の表面から薬液を排除するリンス処理を含む異常処理を実行するステップとを含む、異常処理方法。
【請求項6】
前記異常処理を実行するステップは、前記リンス処理を実行するステップと、前記基板にリンス液を供給するリンス液ノズル内を前記リンス処理後に吸引する吸引処理を実行するステップとを含む、請求項5記載の異常処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−109347(P2010−109347A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223262(P2009−223262)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】