説明

基板処理装置

【課題】高温条件下で行われるSiCエピタキシャル膜成長において複数枚の基板を均一に成膜することができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】複数枚の基板を鉛直方向に夫々が間隔を成すように積層して保持する基板保持体と、前記基板保持体を収容し、該基板保持体に保持された複数枚の基板を処理する処理室と、前記処理室内へ処理ガスを供給する複数のガス供給穴が設けられ、鉛直方向に延在するガス供給ノズルとを備えた基板処理装置において、前記ガス供給ノズルは、複数のノズルユニットで構成され、複数のノズルユニットの夫々は、その表面が保護膜でコーティングされるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハ等の基板を処理する工程を有する基板処理技術や半導体装置の製造技術に関し、特に、炭化珪素(SiC)エピタキシャル膜を基板上に成膜する工程を有する、縦型バッチ式の基板処理装置や半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC、シリコンカーバイド)は、珪素(Si、シリコン)に比べエネルギーバンドギャップが大きいことや、絶縁耐圧が高いことから、特にパワーデバイス用素子材料として注目されている。一方でSiCは、融点がSiに比べて高いこと、常圧下での液相を持たないこと、不純物拡散係数が小さいことなどから、Siに比べて基板やデバイスの作成が難しいことが知られている。
例えばSiCエピタキシャル成膜装置は、Siのエピタキシャル成膜温度が900℃〜1200℃であるのに比べ、SiCのエピタキシャル成膜温度が1500℃〜1800℃程度と高いことから、成膜装置の構成部品の耐熱構造や分解抑制に技術的な工夫が必要である。またSiとCの2元素の反応で成膜が進むため、膜厚や成膜組成均一性の確保、ドーピングレベルの制御技術にもシリコン系の成膜装置に無い工夫が必要となる。
【0003】
量産用のSiCエピタキシャル成長装置として市場に供されている装置としては、「パンケーキ型」や「プラネタリ型」と称される形態の装置が主流である。図9と図10に、「プラネタリ型」SiCエピタキシャル成長装置を示す。図9は、従来のSiCエピタキシャル成膜装置を側面からみた垂直断面図を示す。図10は、図9におけるA−A断面図である。図9に示すように、SiCウェハ903がウェハホルダ902に把持され、吊るすようにしてサセプタ901に支持されている。材料ガスは、供給ガス経路905を通って下方から上昇し、SiCウェハ903の下面を通過し、反応容器壁910の側面から、矢印906で示すように排気される。SiCウェハ902は、回転軸904aの周りを自転しつつ、回転軸904bの周りを公転しながら、誘導コイル907により加熱処理される。
【0004】
このように従来装置では、高周波等で成膜温度まで加熱したサセプタ上に、数枚〜十数枚程度のSiC基板を平面的に並べ、原料ガスやキャリアガスを供給する方法で成膜している。下記の特許文献1には、サセプタに対向する面への原料ガスに起因する堆積物の付着及び、原料ガス対流が発生することによるSiCエピタキシャル成長の不安定化を抑制するために、サセプタの基板を保持する面を下方に向くように配置した真空成膜装置が開示されている。
これらの従来装置では、炭素(C)原料としてC (プロパン)やC(エチレン)、Si原料としてSiH (モノシラン)が多く採用されており、キャリアとしてはH(水素)が使用される。気相中でのシリコン核形成の抑制や結晶の品質向上を狙って塩化水素(HCl)を添加する場合や、塩素(Cl)を構造中に含むトリクロルシラン(SiHCl)、テトラクロルシラン(SiCl、四塩化珪素)などの原料を使う場合もある。
【0005】
これら従来のSiCエピタキシャル成膜装置には以下のような問題があった。図9に示すような反応室構造では、平面的に配置されたウェハに対し、シリコン成膜材料ガスとカーボン成膜材料が、中心部に設置されたガス供給部から供給され、排気は周辺部から行われるのが一般的であり、ガス供給口から排気口にかけてガスの濃度分布は大きく変化する。これに伴う膜厚の不均一性を、ウェハおよびサセプタを成膜時に回転させて回避することも一般的に行われているが、ガス供給方向からガス排気口方向(半径方向)に2枚以上並べると前述のガス濃度差の問題により処理ウェハ間に膜厚差が発生するため、一度に処理できる実用的なウェハ枚数が制限されるという問題がある。
また、一度に処理できる基板枚数を増やすにはサセプタの直径を大きくすれば良いが、サセプタの直径を大きくすると装置サイズが大きくなりコストが増大するという問題がある。この問題はウェハ径が大きくなるほど、より深刻となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−196807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方で、シリコンの成膜装置で用いられている縦型成膜装置は、ウェハ1枚相当のフットプリントにて一度に複数(例えば25〜100枚)のウェハを縦方向に積み上げて一括して処理できる構造を持つことから大量生産に非常に有利である。そこで本願発明者等は、縦型成膜装置をSiC成膜に適用することを検討した。
この縦型成膜装置をSiC成膜に適用する場合の問題として、反応室構成部材の材質がある。Siの成膜装置は主に1200℃以下で処理されるため、反応室材料としては主に高純度で安定した石英ガラス等を使用している。しかしながら、SiCエピタキシャル成長は1500℃以上の高温で処理されるため、従来の石英ガラスでは耐熱温度に問題があり使用できない。従って、石英ガラスに代わる耐熱材料を検討する必要がある。
【0008】
本発明の目的は、縦型バッチ式SiCエピタキシャル製造装置等の1500℃以上に加熱する基板処理装置において、例えば原料ガスを安定して供給できるようなガス供給ノズルを備えた基板処理装置や、該基板処理装置を用いた半導体装置の製造方法や基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための本発明に係る基板処理装置の代表的な構成は、次のとおりである。
複数枚の基板を鉛直方向に夫々が間隔を成すように積層して保持する基板保持体と、
前記基板保持体を収容し、該基板保持体に保持された複数枚の基板を処理する処理室と、
前記処理室内へ処理ガスを供給する複数のガス供給穴が設けられ、鉛直方向に延在するガス供給ノズルとを備え、
前記ガス供給ノズルは、複数のノズルユニットで構成され、複数のノズルユニットの夫々は、その表面が保護膜でコーティングされた基板処理装置。
【発明の効果】
【0010】
このように構成すると、超高温に加熱される縦型装置に用いられる長尺ノズルを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態における半導体製造装置の斜視図を示す。
【図2】本発明の実施形態における処理炉を側面からみた垂直断面図を示す。
【図3】本発明の実施形態における処理炉を上面からみた水平断面図を示す。
【図4】本発明の実施形態における半導体製造装置の制御部の構成を示す。
【図5】本発明の実施形態における処理炉及びその周辺構造の略図を示す。
【図6】本発明の実施形態における処理炉を上面からみた水平断面図を示す。
【図7】本発明の実施形態におけるガス供給ノズルを示す。
【図8】図6の変形例における処理炉を上面からみた水平断面図を示す。
【図9】従来のSiCエピタキシャル成膜装置を側面からみた垂直断面図を示す。
【図10】図9におけるA−A断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態におけるSiCエピタキシャル膜を成膜する基板処理装置としての半導体製造装置10の一例であり、斜視図にて示す。この半導体製造装置10は、バッチ式縦型熱処理装置であり、主要部が配置される筐体12を有する。半導体製造装置10では、例えば、Si又はSiC等で構成された基板としてのウェハ14を収納する基板収納器としてフープ(以下、ポッドという)16が、ウェハキャリアとして使用される。この筐体12の正面側には、ポッドステージ18が配置されており、このポッドステージ18にポッド16が、装置10の外部から搬送される。ポッド16には、例えば25枚のウェハ14が収納され、蓋が閉じられた状態でポッドステージ18にセットされる。
【0013】
筐体12内の正面側であって、ポッドステージ18に対向する位置にはポッド搬送装置20が配置されている。また、このポッド搬送装置20の近傍には、ポッド収容棚22、ポッドオープナ24及び基板枚数検知器26が配置されている。ポッド収容棚22は、ポッドオープナ24の上方に配置され、ポッド16を複数個載置した状態で保持するように構成されている。基板枚数検知器26は、ポッドオープナ24に隣接して配置される。ポッド搬送装置20は、ポッドステージ18とポッド収容棚22とポッドオープナ24との間でポッド16を搬送する。ポッドオープナ24はポッド16の蓋を開けるものであり、基板枚数検知器26は蓋を開けられたポッド16内のウェハ14の枚数を検知する。
【0014】
筐体12内には基板移載機28、基板保持体としてのボート30が配置されている。基板移載機28は、アーム(ツィーザ)32を有し、図示しない駆動手段により、上下回転動作が可能な構造になっている。アーム32は例えば5枚のウェハを取り出すことができ、このアーム32を動かすことにより、ポッドオープナ24の位置に置かれたポッド16及びボート30間にてウェハ14を搬送する。
【0015】
ボート30は、例えばカーボングラファイトやSiC等の耐熱性材料で構成されており、複数枚のウェハ14を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積み上げて保持するように構成されている。なお、ボート30の下部には、例えばSiC等の耐熱性材料で構成された円筒形状の断熱部材としてのボート断熱部34が配置されており、後述する被加熱体48からの熱が処理炉40の下方側に伝わりにくくなるように構成されている(図2参照)。
筐体12内の背面側上部には、処理炉40が配置されている。この処理炉40内に複数枚のウェハ14を装填したボート30が搬入され熱処理が行われる。
【0016】
図2は、本発明の実施形態におけるSiCエピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置10の処理炉40の側面断面図を示す。図3は、本発明の実施形態における処理炉40を上面からみた水平断面図を示す。図2及び図3において、第1のガス供給口68を有する第1のガス供給ノズル60、第2のガス供給口72を有する第2のガス供給ノズル70、及び第1のガス排気口90が図示されている。第1のガス供給口68は、少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスとを供給するものである。第2のガス供給口72は、少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとを供給するものである。また、反応室を形成する反応管42と断熱材54との間に、不活性ガスを供給する第3のガス供給口360、第2のガス排気口390が図示されている。
【0017】
処理炉40は、円筒形状の反応室44を形成する反応管42を備える。反応管42は、石英またはSiC等の耐熱材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管42の内側の筒中空部には、反応室44が形成されている。反応室44は、Si又はSiC等で構成されたウェハ14を、ボート30に、水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積み上げて保持した状態で収納可能に構成されている。
【0018】
反応管42の下方には、この反応管42と同心円状にマニホールド91が配設されている。マニホールド91は、たとえばステンレス等で構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。このマニホールド91は反応管42を支持するように設けられている。なお、このマニホールド91と反応管42との間にはシール部材としてOリング(不図示)が設けられている。このマニホールド91が保持体(不図示)に支持されることにより、反応管42は垂直に据えつけられた状態になっている。この反応管42とマニホールド91により反応容器が形成されている。
【0019】
処理炉40は、加熱される被加熱体48、及び磁場発生部としての誘導コイル50を備える。被加熱体48は、反応室44内に配設されている。この被加熱体48は、反応管42の外側に設けられた誘導コイル50により発生される磁場によって、加熱される構成となっている。誘導コイル50は、反応管42の周囲を巻き回すように設けられる。被加熱体48が発熱することにより、反応室44内が加熱される。被加熱体48は、誘導コイル50により発生する誘導電流により誘導加熱されやすく、且つ、耐熱性に優れた材料、例えば、カーボングラファイト等の材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。
被加熱体48の近傍には、反応室44内の温度を検出する温度検出体として図示しない温度センサが設けられている。誘導コイル50及び温度センサには、温度制御部52が電気的に接続されており、温度センサにより検出された温度情報に基づき誘導コイル50への通電量を調節することにより、反応室44内の温度が所定のタイミングにて所定の温度分布となるよう制御するように構成されている(図4参照)。
被加熱体48の内部は、第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル70や第1のガス排気口90が設けられ、反応ガスが供給される反応空間45(処理室)を形成する。
【0020】
なお、好ましくは、反応室44内において第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル70と第1のガス排気口90との間であって、被加熱体48とウェハ14との間には構造物400を設けることが良い。構造物400を設けることにより、基板であるウェハ14が縦方向に積載された領域(基板の配列領域)に流れる反応ガスの流速や流量が均一化される。例えば、図3に示すように、対向する位置にそれぞれ構造物400を設ける。構造物400は、図3に示すように、その水平断面が弓形形状、つまり内周と外周が円弧を描くような形状をした柱であり、少なくとも、縦方向に積載されるウェハ14の存在する領域(基板の配列領域)に対応するように設けられる。構造物400は、好ましくは、断熱材若しくはカーボンフェルト等で構成すると、耐熱性をもち、パーティクルが発生することを抑制することができる。
【0021】
被加熱体48と反応管42の間には、断熱材54が設けられ、この断熱材54を設けることにより、被加熱体48の熱が反応管42あるいは反応管42の外側へ伝達するのを抑制することができる。断熱材54は、例えば誘導されにくいカーボンフェルト等で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。
また、誘導コイル50の外側には、反応室44内の熱が外側に伝達するのを抑制するための、例えば水冷構造である外側断熱壁92が、反応室44を囲むように設けられている。外側断熱壁92は、誘導コイル50から発生される誘導電流により誘導加熱されにくい材料、例えば、銅(Cu)等の材料から構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。更に、外側断熱壁92の外側には、誘導コイル50により発生された磁場が外側に漏れるのを防止する磁気シールド58が設けられている。好ましくは、磁気シールド58は、誘導コイルから発生される誘導電流により誘導加熱されにくい材料、例えば、銅(Cu)もしくはアルミニウム(Al)等の材料から構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。
【0022】
図2に示すように、被加熱体48とウェハ14との間に、第1のガス供給ノズル60に少なくとも1つ設けられた第1のガス供給口68、及び第2のガス供給ノズル70に少なくとも1つ設けられた第2のガス供給口72、第1のガス排気口90が配置されている。第1のガス供給口68は、少なくとも、シリコン含有ガスと塩素含有ガスとを供給する。第2のガス供給口72は、少なくとも、炭素含有ガスと還元ガスとを供給する。また、反応管42と断熱材54の間に、第3のガス供給口360、第2のガス排気口390が配置されている。それぞれについて詳細に説明をする。
【0023】
第1のガス供給ノズル60は、反応空間45内に設けられている。第1のガス供給ノズル60は、1500℃以上の高温にも耐えられるようにカーボングラファイトで構成され、マニホールド91を貫通するようにマニホールド91に取り付けられている。なお、第1のガス供給ノズル60は複数本設けても良い。第1のガス供給ノズル60に少なくとも1つ設けられる第1のガス供給口68は、シリコン含有ガスとして例えばシラン(SiH4)ガス、塩素含有ガスとして例えば塩化水素(HCl)ガスを、反応空間45内に供給する。
第1のガス供給ノズル60の構造については、詳しく後述する。
【0024】
第1のガス供給ノズル60は、第1のガスライン(ガス供給管)222に接続されている。この第1のガスライン222は、本例では、流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(以下、MFCとする。)211a及びバルブ212aを介して、シラン(SiH)ガス源210aに接続されている。また、この第1のガスライン222は、MFC211b及びバルブ212bを介して、塩化水素(HCl)ガス源210bに接続されている。
この構成により、反応空間45内に供給されるシラン(SiH)ガス、塩化水素(HCl)ガスそれぞれの供給流量、濃度、分圧を制御することができる。バルブ212a、212b、MFC211a、211bは、ガス流量制御部78に電気的に接続されており、それぞれ供給するガスの流量が、所定のタイミングにて所定流量となるよう制御される(図4参照)。本例では、シラン(SiH)ガス源210a、塩化水素(HCl)ガス源210b、バルブ212a、212b、MFC211a、211b、第1のガスライン222、第1のガス供給ノズル60、第1のガス供給口68により、第1のガス供給系が構成される。
【0025】
なお、上述の例では、シリコン含有ガスとしてシラン(SiH)ガスを例示したが、これに限らず、ジシラン(Si)ガス、トリシラン(Si)ガス等を用いても良く、また、これらのガスを組み合わせて用いても良い。
また、上述の例では、塩素含有ガスとして塩化水素(HCl)ガスを例示したが、これに限らず、塩素ガスを用いても良く、また、これらのガスを組み合わせて用いても良い。い。
なお、上述の例では、第1のガス供給ノズル60にシリコン含有ガスと塩素含有ガスとを供給したが、シリコンと塩素とを含むガス、例えば、テトラクロロシラン(SiCl)ガス、トリクロロシラン(SiHCl)ガス、ジクロロシラン(SiHCl)ガスを供給しても良い。
【0026】
少なくとも炭素含有ガスと還元ガス供給する第2のガス供給ノズル70は、反応空間45内に設けられている。第2のガス供給ノズル70は、1500℃以上の高温にも耐えられるようにカーボングラファイトで構成され、マニホールド91を貫通するようにマニホールド91に取り付けられている。なお、第2のガス供給ノズル70は複数本設けても良い。第2のガス供給ノズル70に設けられる第2のガス供給口72は、炭素含有ガスとして例えばプロパン(C)ガス、還元ガスとして例えば水素(H)ガスを、反応空間45内に供給する。
【0027】
第2のガス供給ノズル70は、第2のガスライン(ガス供給管)260に接続されている。この第2のガスライン260は、本例では、MFC211c及びバルブ212cを介してプロパン(C)ガス源210cに接続され、また、MFC211d及びバルブ212dを介して水素(H)ガス源210dに接続されている。
この構成により、反応空間45内に供給されるプロパン(C)ガス、水素(H)ガスの供給流量、濃度、分圧を制御することができる。バルブ212c、212d、MFC211c、211dはガス流量制御部78に電気的に接続されており、供給するガスの流量が、所定のタイミングにて所定の流量となるよう制御される(図4参照)。本例では、プロパン(C)ガス源210c、水素(H)ガス源210d、バルブ212c、212d、MFC211c、211d、第2のガスライン260、第2のガス供給ノズル70、第2のガス供給口72により、第2のガス供給系が構成される。
【0028】
なお、炭素含有ガスとしてプロパン(C)ガスを例示したが、これに限らず、エチレン(C)ガス、アセチレン(C)ガス等を用いても良く、また、これらのガスを組み合わせて用いても良い。
なお、第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72は、それぞれ、ボート30に水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積み上げて保持された複数枚のウェハ14に対し、ウェハ14の1枚毎にガスを供給するように設けることが好ましい。これにより、ウェハ14それぞれの膜厚面内均一性を制御しやすくなる。
しかし、これに限らず、第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72は、それぞれ、縦方向に積層されたウェハ14の配列領域(基板の配列領域)に少なくとも1つ設けるようにしてもよい。
なお、上述の実施形態では、第1のガス供給ノズル60よりシリコン含有ガス、塩素含有ガス、及び第2のガス供給ノズル70より炭素含有ガス、還元ガスを供給したが、これに限らず、ガス種ごとにガス供給ノズルを設けて供給してもよい。
【0029】
ここで、上述の第1のガス供給系及び第2のガス供給系を構成する理由を説明する。
SiC等から構成される複数枚のウェハ14を、水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積み上げて保持し、シリコン含有ガスと炭素含有ガスと還元ガス等で構成される原料ガスを、縦方向に延在される1本の長尺のガス供給ノズルから供給した場合は、ガス供給ノズル内で原料ガスが消費され、ガス供給ノズルの下流側で原料ガス不足が生じ、また、ガス供給ノズル内で反応し堆積したSiC膜等の堆積物が、ガス供給ノズルを閉塞し、あるいは、原料ガス供給が不安定になることやパーティクルを発生させること等の問題が生じ易くなる。
【0030】
そこで、第1のガス供給ノズル60より、少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスとを供給し、第2のガス供給ノズル70より、少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとを供給することで、ガス供給ノズル内での供給ガスの消費を抑制し、ガス供給ノズル内の閉塞を抑制し、それに伴うパーティクル発生を防ぐことができる。
【0031】
好ましくは、第1のガス供給ノズル60より、シリコン含有ガスと塩素含有ガスとキャリアガスとして希ガスの例えばアルゴン(Ar)ガスとを供給し、第2のガス供給ノズル70より、炭素含有ガスと還元ガスとしての例えば水素(H)ガスとを供給すると良い。
【0032】
さらに好ましくは、第1のガス供給ノズル60より、シリコンと塩素とを含有するガスとして例えばテトラクロロシラン(SiCl)ガスと、キャリアガスとして例えばアルゴン(Ar)ガス等の希ガスとを供給し、第2のガス供給ノズル70より、炭素含有ガスと、還元ガスとしての例えば水素(H)ガスとを供給すると良い。
なお、第1の供給口68又は第2のガス供給口72より、反応空間45内へ、更に不純物を含有するドーパントガスも供給しても良い。しかし、これに限らず、ドーパントガスを供給するために更にガス供給ノズルを設けて、ドーパントガスを反応空間45内へ供給しても良い。
【0033】
なお、還元ガスとして水素(H)ガスを例示したが、これに限らず、水素を含有するガスと、次に示す希ガスのうち少なくとも1つの希ガスと組み合わせされたガスを供給しても良い。ここで、希ガスとしては、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0034】
また、図3に示すように、第1のガス排気口90が、第1のガス供給口68に接続されたガス供給ノズル60及び第2のガス供給口72に接続されたガス供給ノズル70の位置に対して対向面に位置するように配置され、マニホールド91には、第1のガス排気口90に接続されたガス排気管230が貫通するように設けられている。ガス排気管230の下流側には圧力検出器として圧力センサ93及び圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller、以下APCとする)バルブ214を介して真空ポンプ等の真空排気装置220が接続されている。圧力センサ93及びAPCバルブ214には、圧力制御部98が電気的に接続されており、この圧力制御部98は圧力センサ93により検出された圧力に基づいて、APCバルブ214の開度を調整することにより反応空間45内の圧力が、所定のタイミングにて所定の圧力になるよう制御するように構成されている(図4参照)。
【0035】
このように、第1のガス供給口68から少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスとを供給し、第2のガス供給口72から少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとを供給し、供給されたガスはシリコン又は炭化珪素で構成されたウェハ14の表面に対し平行に流れ、第1の排気口90に向かって流れるため、ウェハ14全体が効率的にかつ均一にガスに晒される。
【0036】
また、図3に示すように、第3のガス供給口360は反応管42と断熱材54との間に配置されており、マニホールド91を貫通するように取り付けられている。更に、第2のガス排気口390が、反応管42と断熱材54との間に配置され、第3のガス供給口360に対して対向面に位置するように配置され、マニホールド91には第2のガス排気口390に接続されたガス排気管230が貫通するように設けられている。この第3のガス供給口360には、不活性ガスとして例えば希ガスのアルゴン(以下、Arとする)ガスが供給される。これにより、SiCエピタキシャル膜成長に寄与するガスとして、例えばシリコン含有ガス又は炭素含有ガス又は塩素含有ガス又はそれらの混合ガスが反応管42と断熱材54との間に侵入するのを防ぎ、反応管42の内壁又は断熱材54の外壁が劣化してしまうことや不要な生成物が付着するのを防止することができる。
【0037】
反応管42と断熱材54との間に供給された不活性ガスは、第2のガス排気口390よりガス排気管230を介して真空ポンプ220から排気される。
【0038】
次に、処理炉40周辺の構成について説明する。
図5は、処理炉40及びその周辺構造の概略図を示す。処理炉40の下方には、この処理炉40の下端開口を機密に閉塞するための炉口蓋体としてシールキャップ102が設けられている。シールキャップ102は、例えばステンレス等の金属で構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ102の上面には、処理炉40の下端と当接するシール材としてのOリングが設けられている。シールキャップ102には回転機構218が設けられている。回転機構218の回転軸106は、シールキャップ102を貫通してボート30に接続されており、このボート30を回転させることで、ウェハ14を回転させるように構成されている。シールキャップ102は、処理炉40の外側に向けられた昇降機構として後述する昇降モータ122によって、垂直方向に昇降されるように構成されており、これにより、ボート30を処理炉40に対し搬入搬出することが可能となっている。回転機構218及び昇降モータ122には、駆動制御部108が電気的に接続されており、所定のタイミングにて所定の動作をするよう制御するよう構成されている(図4参照)。
【0039】
予備室としてのロードロック室110の外面に、下基板112が設けられている。下基板112には、昇降台114と嵌合するガイドシャフト116及びこの昇降台114と螺合するボール螺子118が設けられている。下基板112に立設したガイドシャフト116及びボール螺子118の上端に、上基板120が設けられている。ボール螺子118は、上基板120に設けられた昇降モータ122により回転される。ボール螺子118が回転することにより、昇降台114が昇降するように構成されている。
【0040】
昇降台114には、中空の昇降シャフト124が垂設され、昇降台114と昇降シャフト124の連結部は気密となっている。昇降シャフト124は、昇降台114と共に昇降するようになっている。昇降シャフト124は、ロードロック室110の天板126を遊貫する。昇降シャフト124が貫通する天板126の貫通穴は、この昇降シャフト124に対して接触することがないよう十分な余裕がある。ロードロック室110と昇降台114との間には、昇降シャフト124の周囲を覆うように伸縮性を有する中空伸縮体としてベローズ128が、ロードロック室110を気密に保つために設けられている。ベローズ128は、昇降台114の昇降量に対応できる十分な伸縮量を有し、このベローズ128の内径は、昇降シャフト124の外形に比べ十分に大きく、ベローズ128の伸縮により接触することがないように構成されている。
【0041】
昇降シャフト124の下端には、昇降基板130が水平に固着されている。昇降基板130の下面には、Oリング等のシール部材を介して駆動部カバー132が気密に取り付けられる。昇降基板130と駆動部カバー132とで、駆動部収納ケース134が構成されている。この構成により、駆動部収納ケース134内部は、ロードロック室110内の雰囲気と隔離される。
【0042】
また、駆動部収納ケース134の内部には、ボート30の回転機構218が設けられ、この回転機構218の周辺は、冷却機構136により冷却される。
【0043】
電力ケーブル138は、昇降シャフト124の上端からこの昇降シャフト124の中空部を通り、回転機構218に導かれて接続されている。また、冷却機構136及びシールキャップ102には、冷却水流路140が形成されている。冷却水配管142は、昇降シャフト124の上端からこの昇降シャフト124の中空部を通り、冷却流路140に導かれて接続されている。
【0044】
昇降モータ122が駆動されボール螺子118が回転することで、昇降台114及び昇降シャフト124を介して、駆動部収納ケース134を昇降させる。
駆動部収納ケース134が上昇することにより、昇降基板130に気密に設けられているシールキャップ102が、処理炉40の開口部である炉口144を閉塞し、ウェハ処理が可能な状態となる。駆動部収納ケース134が下降することにより、シールキャップ102と共にボート30が降下され、ウェハ14を外部に搬出できる状態となる。
【0045】
図4は、SiCエピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置10を構成する各部の制御構成を示す。温度制御部52、ガス流量制御部78、圧力制御部98、駆動制御部108は、半導体製造装置10全体を制御する主制御部150に電気的に接続されている。主制御部150は、図示しない操作部及び入出力部を備える。これら、温度制御部52、ガス流量制御部78、圧力制御部98、駆動制御部108は、コントローラ152として構成されている。
【0046】
次に、上述したように構成された熱処理装置10を用いて、半導体デバイスの製造工程の一工程として、SiC等で構成されるウェハ14などの基板に、例えばSiC膜を形成する方法について説明する。なお、以下の説明において、熱処理装置10を構成する各部の動作は、コントローラ152により制御される。
【0047】
まず、ポッドステージ18に複数枚のウェハ14を収容したポッド16がセットされると、ポッド搬送装置20により、ポッド16をポッドステージ18からポッド収容棚22へ搬送し、このポッド収容棚22にストックする。次に、ポッド搬送装置20により、ポッド収容棚22にストックされたポッド16をポッドオープナ24に搬送してセットし、このポッドオープナ24によりポッド16の蓋を開き、基板枚数検知器26によりポッド16に収容されているウェハ14の枚数を検知する。
【0048】
次に、基板移載機28により、ポッドオープナ24の位置にあるポッド16からウェハ14を取り出し、ボート30に移載する。
複数枚のウェハ14がボート30に装填されると、複数枚のウェハ14を保持したボート30は、昇降モータ122による昇降台114及び昇降シャフト124の昇降動作により反応室44内に搬入(ボートローディング)される。この状態で、シールキャップ102はOリングを介してマニホールド91の下端をシールした状態となる。
【0049】
反応空間45内が所定の圧力(真空度)となるように、真空排気装置220によって真空排気される。この際、反応室44内の圧力は、圧力センサ93で測定され、この測定された圧力に基づき第1のガス排気口90及び第2のガス排気口390に連通するAPCバルブ214がフィードバック制御される。また、ウェハ14及び反応空間45内が所定の温度となるように、被加熱体48により加熱される。このとき、反応空間45内が所定の温度分布となるように、温度センサが検出した温度情報に基づき、誘導コイル50への通電量がフィードバック制御される。続いて、回転機構218により、ボート30が回転されることでウェハ14が周方向に回転される。
【0050】
続いて、SiCエピタキシャル成長反応に寄与するシリコン含有ガス及び塩素含有ガスは、それぞれ、ガス源210a、210bから供給され、ガス供給口68より反応空間45内に噴出され、また炭素含有ガス及び還元ガスである水素(H)ガスは、ガス源210c、210dから供給され、ガス供給口72より反応室44内に噴出されて、SiCエピタキシャル成長反応をする。
【0051】
このとき、シリコン含有ガス及び塩素含有ガスは、所定の流量となるように、対応するMFC211a、211bの開度が調整された後、バルブ212a、212bが開かれ、それぞれのガスが第1のガス供給管222を流通した後、第1のガス供給ノズル60内を流通して、第1のガス供給口68から反応室44内に供給される。また、炭素含有ガス及び還元ガスである水素(H)ガスは、所定の流量となるように、対応するMFC211c、211dの開度が調整された後、バルブ212c、212dが開かれ、それぞれのガスが第2のガス供給管260内を流通した後、第2のガス供給ノズル70内を流通して、第2のガス供給口72より反応空間45内に導入される。
【0052】
第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72より供給されたガスは、反応室44内の被加熱体48の内側である反応空間45を通り、第1のガス排気口90からガス排気管230を通り排気される。第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72より供給されたガスは、反応空間45内を通過する際に、SiC等で構成されるウェハ14と接触し、ウェハ14の表面上にSiCエピタキシャル膜成長がなされる。
【0053】
またガス供給源210eより、不活性ガスとしての希ガスであるアルゴン(Ar)ガスが、所定の流量となるように、対応するMFC211eの開度が調整された後、バルブ212eが開かれ、第3のガス供給管240内を流通した後、第3のガス供給口360から反応室44内に供給される。第3のガス供給口360から供給されたアルゴン(Ar)ガスは、反応室44内の断熱材54と反応管42との間を通過し、第2のガス排気口390から排気される。
【0054】
予め設定された時間が経過すると、上述のガスの供給が停止され、SiCエピタキシャル膜成長は停止される。また、図示しない不活性ガス供給源から反応室44内に不活性ガスが供給され、反応室44内が不活性ガスで置換されると共に、反応室44内の圧力が常圧に復帰される。
【0055】
その後、昇降モータ122によりシールキャップ102が下降されて、マニホールド91の下端が開口されると共に、処理済ウェハ14がボート30に保持された状態でマニホールド91の下端から反応管42の外部に搬出(ボートアンローディング)され、ボート30に支持された全てのウェハ14が冷えるまで、ボート30を所定位置で待機させる。次に、待機させたボート30のウェハ14が所定温度まで冷却されると、基板移載機28により、ボート30からウェハ14を取り出し、ポッドオープナ24にセットされている空のポッド16に搬送して収容する。その後、ポッド搬送装置20により、ウェハ14が収容されたポッド16をポッド収容棚22、またはポッドステージ18に搬送する。このようにして半導体製造装置10の一連の作用が完了する。
【0056】
以上により、ガス供給ノズル内での堆積膜の成長を抑制し、反応空間45内ではガス供給ノズルより供給されるシリコン含有ガスと炭素含有ガスと塩素含有ガスと還元ガスである水素(H)ガスが反応することで、SiC等から構成される複数枚のウェハ14が、水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列されて縦方向に積み上げて保持される状態において、均一に炭化珪素エピタキシャル成長を行うことができる。
【0057】
次に、本実施形態におけるガス供給ノズルについて、図6と図7を用いて説明する。図6は、本発明の実施形態における処理炉40を上面からみた水平断面の模式図を示す。図6に示すように、第1のガス供給ノズル60と第2のガス供給ノズル70は、それぞれのガス供給口68と72が対向するように設置されている。このようにすると、よりウェハ14に近い空間で反応ガスが混合され、ウェハ14全体に供給することができ、これにより、ウェハ14に均一にSiC膜を形成することができる。
【0058】
なお、図8の変形例に示す様に、第1のガス供給ノズル60と第2のガス供給ノズル70を、反応室44内の被加熱体48の内周に沿って複数本設け、第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72をそれぞれウェハ14の中心に向けてガスを噴出可能にすると共に、第2のガス供給ノズル70を両端に配置してもよい。図8は、本実施形態の変形例における処理炉を上面からみた水平断面の模式図を示す。図8の変形例では、第2のガス供給口72から供給される還元ガスにより、第1のガス供給口68から供給される成膜ガスがウェハ14に供給されやすくなると共に、ウェハ14以外の箇所にSi膜やSiC膜が析出するのを抑制することができる。
更に、上記構成に加え、図8に示す様に、第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル70を交互に設けてもよい。これにより、第1のガス供給口68より供給される成膜ガスと、第2のガス供給口72より供給される還元ガスとが混合される箇所が増え、ウェハ14に達する前に成膜ガスと還元ガスを効率よく混合させることができるので、供給ガスの偏りを抑制し、より一層膜厚面内均一性が向上する。
【0059】
図7は、本発明の実施形態における第1のガス供給ノズル60を示す。なお、第2のガス供給ノズル70も同様な構造である。
まず、図7に示すガス供給ノズルでは、石英に代わる基材の耐熱材料として、カーボン系のグラファイト材を使用している。ただし、表面がカーボンそのままの状態だと、エピタキシャル成長の原料ガスのキャリアガスとして使用されるH(水素)と反応し、CH(メタンガス)化し、カーボン表面がエッチングされてしまう恐れがある。また、カーボン系のグラファイト材料は、耐熱温度は高いが密度が小さく、その表面がポーラス状(多孔質状)となっている。従って、カーボン系のグラファイト材をそのまま用いると、原料ガスがポーラス状のカーボン基材に侵入してしまう恐れがある。
【0060】
そこで、本実施形態では、ガス供給ノズルの基材であるカーボングラファイトより密度の高い膜でコーティングを行う。このような保護膜としては、SiC(シリコンカーバイド)やTaC(タンタルカーバイド)でのコーティングが挙げられる。
このような保護膜でカーボングラファイトを基材としたガス供給ノズルの内面をコーティングすることにより、水素ガスによるエッチングを抑制し、ガス供給ノズルの長寿命化を実現できる。また、ガス供給ノズルの基材よりも密度の高い保護膜をその内面にコーティングすることで基材内部への成膜ガスの侵入を抑制でき、真空排気時の脱ガス量を低減することができる。
また、これらのコーティングはCVD装置などにより生成されるが、本実施形態のガス供給ノズルは、高さ方向に並んだ基板に沿って配置されるため、非常に長い。このように長い部材に対するコーティングは、装置大型化によるランニングコストアップの原因となり、また、膜厚均一性などの技術的な難度も高い。
【0061】
そこで、図7において、円筒状のグラファイト製ノズル60は、複数のノズルユニットに分割されている。このようにノズルユニットに分割することで、コーティングの対象となる部材が短くなるため、コーティング用のCVD装置の大型化を避けることができ、また、技術的にも筒内面まで均一に保護膜のコーティングが可能となり、コーティングされずにカーボンが露出してしまう部分をなくすることができる。
また、分割されたこれらの各ノズルユニット60a〜60gは、ねじ込みにより結合され、一体化することが可能な構造となっている。最下流部(最上部)のノズルユニット60gの上端部は袋状になっており、ノズルユニット60f〜60bは円筒形状となっている。グラファイトは石英ガラスの様に溶接加工ができないため、各ノズルユニットはグラファイト製インゴットを切削で加工する。
【0062】
ここで、単に差込みではなくねじ込みとしている理由は、次の通りである。即ち、コーティングのために長尺のガスノズルを複数のガスユニットに分割すると一つのガスユニットの自重が軽くなる。一方、炭化珪素エピタキシャル成長のように厚い膜を基板上に形成する場合、ガスノズルから多量のガスを供給する必要があるため、ガスノズル内の圧力が上昇する。そこで、自重が軽くなったノズルユニット同士をねじ込みのような抜け出し防止手段により結合することにより、ガスノズル内の圧力上昇による抜け出しを防止することが可能となる。なお、すべてのノズルユニットに抜け出し防止手段を設ける必要はない。例えば、上部側(下流側)のノズルユニット60g、60f、及び、60eを抜け出し防止手段により一体的に結合するのみで、ガスノズル内の圧力に対しノズルユニット60g、60f、60eの自重で抜け出しが防止できるのであれば、下部側(上流側)のノズルユニット60d、60c、60b、60aは、差込み型としてもよい。
【0063】
図7の例では、ノズルユニット60fと接続されるノズルユニット60gの下端の接続部にはメネジが加工され、ノズルユニット60gの結合相手であるノズルユニット60fの上端の接続部にはオネジが加工されている。ノズルユニット60gの下端のメネジとノズルユニット60fの上端のオネジが、ネジ締めにより接続されて、ノズルユニット60gとノズルユニット60fが結合される。同様にして、ノズルユニット60fとノズルユニット60e、ノズルユニット60eとノズルユニット60d、ノズルユニット60dとノズルユニット60c、ノズルユニット60cとノズルユニット60bが、ねじ込みにより結合される。
【0064】
マニホールド91と接続される最上流部(最下部)の基端部ノズルユニット60aは、マニホールド91の側面を貫通し、ガス供給管と接続する必要がある。そこで、基端部ノズルユニット60aが配置される箇所は、炉の下部で温度が低いため、グラファイト製のノズルユニットとは異なり加工しやすい石英ガラス製とすることにより容易にL字型の形状とすることができる。ノズルユニット60aには、複数のノズルユニットが積み上げられる方向に交差する方向に、図7の例では水平方向にシール部が設けられている。ノズルユニット60aの上端の接続部にはオネジが加工されており、ノズルユニット60bの下端のメネジと、ねじ込みにより結合される。
ノズルユニット60aのマニホールド91へのシール方法は、従来のSiデバイス用の縦型装置と同様に、マニホールド91に設けた公知のOリングシール式継手などで行う。
【0065】
原料ガス供給用のガス供給穴68は、垂直方向に一列に等間隔に配置されている。各段のガス供給穴68は、同じ方向に向いている必要がある。分割された各ノズルユニット60c〜60gのガス供給穴68を組立前に加工した場合、分割されたそれぞれのノズルユニットのガス供給穴68が回転方向にずれることがある。それを防止するために、本実施形態では、ガス供給穴68の加工前に、石英ガラス製の供給部ノズルユニット60aも含めて組立を行い、その組み立てた状態でガス供給穴68の位置を決め穴あけ加工をする。穴あけ加工後、分解し短い各ノズルユニットの状態で保護膜のコーティングを行う。コーティング後、再度組立を行い一体型のコーティングされたノズルとする。
【0066】
このようにすると、長尺ノズルであっても、短いノズルユニットに分割してコーティングするので、コーティング厚の均一性が向上し、特に、コーティングされない場所ができることが抑制される。また、ノズルを組立てた状態でガス供給穴68の穴あけ加工をするので、ガス供給穴68が回転方向にずれることを抑制できる。
なお、ノズル60を組み立てた状態でガス供給穴68の位置決めを行い、その後分解して、短い各ノズルユニットの状態で穴あけ加工をし、穴あけ加工後、保護膜のコーティングを行うようにしてもよい。
【0067】
コーティングの材料としては、SiC(シリコンカーバイド)コーティングやTaC(タンタルカーバイド)コーティングなどを用いる。コーティング方法としては、CVD方式などを用いる。特にTaCは、クリーニングガスとして一般的に使用されているClF等に対し、耐食性を有する。従って、ClF等を用いたドライクリーニングが可能となり、メンテナンスサイクルを長くすることができる。
また、グラファイト製のガスユニットにコーティングを施す際に、オネジ部やメネジ部のような差込み部にもコーティングを行う。これにより、差込み時(若しくはねじ込み時)に摩擦が発生するが、差込み部より硬質のコーティングが施されているためごみの発生を防ぐことができる。
更には、コーティングするための処理ガスを組立て後のノズルユニット内部に流すことが好ましい。これにより接合部がコーティングされ、接合部からのガス漏れを少なくすることもできる。
【0068】
本実施形態のノズル構造によれば、下記の優れた効果のうち、少なくとも1つを発揮することができる。
(1)ガス供給ノズルの基材をグラファイトとしたため、1500℃を超える高温下で使用することができる。
(2)基材であるグラファイトの表面に基材よりも密度の高い保護膜でコーティングをおこなっているため、基材内部に成膜ガスが侵入することを防止できる。
(3)ノズルを分割することにより、ノズル内面へのコーティングの膜厚を均一にできる。
(4)したがって、グラファイト製のノズル全面に均一にコーティングを行うことができ、該コーティングされたグラファイトで、縦型装置用の長尺ノズルを実現できる。
(5)上記(2)により、プロセスガス供給時において、ノズルのグラファイト基材からのパーティクル発生を抑制できる。
(6)上記(2)により、Hガスによる、ノズルのグラファイト基材のエッチングを抑制できる。
(7)上記の(1)ないし(6)の効果により、初期のノズル形状を長期間保つことができ、劣化によるノズル交換サイクルを延長できる。それによって、装置メンテナンスによるダウンタイムを短縮できるため、生産性を向上できる。
(8)グラファイト製ノズルが、高温環境でHと反応しCH(メタン)化するのを抑制できるため、プロセスへの影響を抑えることができる。
(9)TaCコーティングを施した場合、ClFなどのクリーニングガスによるドライクリーニングが可能となり、更にメンテナンスサイクルを長くできる。
(10)分割された各ノズルはねじ込み等の抜け出し防止手段で結合されているため、ガス供給時に、仮にノズル内部の圧力が上昇しても、抜けて外れることがない。
【0069】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
例えば、前記実施形態においては、バッチ式縦型装置を用いて説明したが、これに限られるものではなく、本発明は、横型装置等にも適用することができる。
また、前記実施形態においては、ウェハに処理が施される場合について説明したが、処理対象はホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、コンパクトディスクおよび磁気ディスク等であってもよい。
また、前記実施形態においては、SiCエピタキシャル成長について説明したが、これに限られるものではなく、高温処理以外であってもコーティングが必要な長尺ノズルが必要な場合に適用可能であることは言うまでもない。
【0070】
本明細書の記載事項には、次の発明が含まれる。
すなわち、第1の発明は、
処理すべき複数の基板が配置された処理室内へ処理ガスを供給する複数のガス供給穴が設けられたガス供給ノズルであって、
前記ガス供給ノズルの基材は、カーボングラファイトで形成され、
前記ガス供給ノズルの内面は、その密度が前記基材の密度より高い材質でコーティングされるガス供給ノズルである。
これにより、カーボン表面は、水素ガスによりエッチングされることを抑制すると共に、基材内部への成膜ガスの侵入を抑制することができる。
【0071】
第2の発明は、
処理すべき複数の基板が配置された処理室内へ処理ガスを供給する複数のガス供給穴が設けられたガス供給ノズルであって、
前記ガス供給ノズルは、複数のノズルユニットで構成され、複数のノズルユニットの夫々は、その表面が保護膜でコーティングされたガス供給ノズルである。
このように構成すると、縦型装置に用いられるような長尺ノズルであっても、筒内面等への保護膜のコーティング厚の均一性が向上し、特に、コーティングされない場所ができることが抑制される。
【0072】
第3の発明は、第2の発明において、
前記複数のノズルユニットの夫々は、抜け出し防止手段を有するガス供給ノズルである。
ノズルを分割することにより、夫々のノズルユニットの自重が軽くなり、ノズル内のガス圧力により抜け出す可能性が高まるが、第2の発明のように構成すると、ノズル内のガス圧力により抜け出すことを防止できる。特にSiCエピタキシャル膜を形成する際は、形成する膜厚を厚くする必要があり、そのためガスの流量を大きくする必要があるが、抜け出し防止手段によりノズル内の圧力を大きくできるため、ガスの流量を多くすることが可能となる。
【0073】
第4の発明は、第3の発明において、
前記抜け出し防止手段は、オネジ又はメネジで構成されたガス供給ノズルである。
このように構成すると、抜け出し防止手段を切り削りで構成することができ、製造が容易である。
【0074】
第5の発明は、第4の発明において、
前記抜け出し防止手段は、前記オネジ及び前記メネジの部分に硬質コーティングが施されたガス供給ノズルである。
このように構成すると、ねじ込み時に摩擦が発生するオネジ部及びメネジ部に、オネジ部及びメネジ部の構成材料よりも硬度の高い硬質コーティングがされているため、ねじ込み時のごみの発生を抑えることができる。
【0075】
第6の発明は、第2の発明において、
前記ガス供給ノズルの最上流部のノズルユニットは石英で構成され、前記複数のガス供給穴が設けられるノズルユニットはグラファイトで構成されたガス供給ノズルである。
このように構成すると、処理室内の高温領域のノズルユニットは、高温に耐えるグラファイトで構成し、比較的低温領域にある最上流部のノズルユニットは、溶接が可能な石英で構成することにより、最上流部のノズルユニットを複雑な構造に形成することができる。
【0076】
第7の発明は、第1または第2の発明において、
前記コーティングの材質は、TaCであるガス供給ノズルである。
このように構成すると、TaCの有する耐食性により、ClFなどのクリーニングガスによるドライクリーニングが可能となる。
【0077】
第8の発明は、
複数枚の基板を鉛直方向に夫々が間隔を成すように積層して保持する基板保持体と、
前記基板保持体を収容し、該基板保持体に保持された複数枚の基板を処理する処理室と、第1から第7の発明のいずれか一つにおけるガス供給ノズルとを具備した基板処理装置である。
【0078】
第9の発明は、
ノズルユニット同士を接続する接続部に、オネジ又はメネジを形成する工程と、
前記ノズルユニットの接続部同士をネジ締めして、複数のノズルユニットを接続する工程と、
前記接続部同士をネジ締めして接続した状態で、複数のノズルユニットのそれぞれに、複数のガス供給穴の位置決めを行う工程と、
前記ガス供給穴の位置決め工程の後、前記接続部同士のネジ締めを解除して、前記複数のノズルユニットの接続を解除する工程と、
前記ガス供給穴の位置決めを行ったノズルユニットにガス供給穴を形成する工程と、
前記接続が解除されたノズルユニットの表面を保護膜でコーティングする工程と、を備えるノズルユニットの製造方法である。
【符号の説明】
【0079】
10…基板処理装置、14…ウェハ、12…筐体、16…ポッド、18…ポッドステージ、22…ポッド収容棚、28…基板移載機、30…ボート、40…処理炉、42…反応管、44…反応室、45…反応空間、48…被加熱体、50…誘導コイル、54…断熱材、60…第1のガス供給ノズル、60a〜60g…ノズルユニット、68…第1のガス供給口、70…第2のガス供給ノズル、72…第2のガス供給口、90…第1のガス排気口、91…マニホールド、93…圧力センサ、102…シールキャップ、152…コントローラ、210a…シリコン含有ガス供給源、210b…塩素含有ガス供給源、210c…炭素含有ガス供給源、210d…還元ガス供給源、210e…不活性ガス供給源、211a〜211e…MFC、212a〜212e…開閉バルブ、214…APCバルブ、218…ボート回転機構、220…真空ポンプ、222…第1のガス供給管、260…第2のガス供給管、240…第3のガス供給管、230…ガス排気管、360…第3のガス供給口、390…第2のガス排気口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板を鉛直方向に夫々が間隔を成すように積層して保持する基板保持体と、
前記基板保持体を収容し、該基板保持体に保持された複数枚の基板を処理する処理室と、
前記処理室内へ処理ガスを供給する複数のガス供給穴が設けられ、鉛直方向に延在するガス供給ノズルとを備え、
前記ガス供給ノズルは、複数のノズルユニットで構成され、複数のノズルユニットの夫々は、その表面が保護膜でコーティングされた基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された基板処理装置であって、
前記複数のノズルユニットの夫々は、抜け出し防止手段を有する基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載された基板処理装置であって、
前記抜け出し防止手段は、オネジ又はメネジで構成された基板処理装置。
【請求項4】
複数枚の基板を鉛直方向に夫々が間隔を成すように積層して保持する基板保持体と、
前記基板保持体を収容し、該基板保持体に保持された複数枚の基板を処理する処理室と、
前記処理室内へ処理ガスを供給する複数のガス供給穴が設けられ、鉛直方向に延在するガス供給ノズルとを備え、
前記ガス供給ノズルの基材は、カーボングラファイトで形成され、
前記ガス供給ノズルの内面は、その密度が前記基材の密度より高い材質でコーティングされた基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−175072(P2012−175072A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38737(P2011−38737)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】