説明

基板処理装置

【課題】液体原料中の溶存ガスに起因して出現し得る気泡が気化器における気化量制御に悪影響を及ぼすのを回避する。
【解決手段】液体原料を不活性ガスにより圧送する液体原料供給源と、液体原料供給源が圧送する液体原料の流路となる液体原料供給管と、液体原料供給源から液体原料供給管を通じて供給された液体原料を気化して気化ガスを生成する気化器と、気化器が生成した気化ガスが供給される処理室とを有する基板処理装置において、液体原料供給管の経路途中に液体原料供給管内を流れる液体原料を貯留する液体原料溜め部を設け、液体原料供給管内での圧力低下によって液体原料中に現れる気泡を液体原料溜め部内にて除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程で用いられる成膜方法の一つとして、原子層成膜(Atomic
Layer Deposition:ALD)法が知られている。ALD法による処理を行う基板処理装置としては、液体原料供給源から液体原料を不活性ガスにより圧送して気化器へ供給し、その気化器で液体原料を気化して気化ガスを生成し、生成した気化ガスを処理室内へ供給して、その処理室内に収容されている基板に対する処理を行うように構成されたものがある。かかる基板処理装置では、処理室内への気化ガスの供給にあたり、気化ガスの流量を流量検知器であるマスフローメータ(MFM)でモニタし、そのモニタ結果に基づいて気化器での液体原料の気化量をフィードバック制御することが、一般的に行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した構成の基板処理装置においては、液体原料供給源から気化器への不活性ガスの圧送時に、当該液体原料中に不活性ガスが溶け込むことが考えられる。そのため、例えば液体原料供給源を階下に設置し気化器を階上に設置するといったように、これらを高低差のある各場所に離れて設置した場合には、液体原料供給源から気化器へ至るまでの間に液体原料の圧力低下が生じ、これにより当該液体原料中の溶存ガスが飽和状態となり、当該液体原料中にて気泡となって現れる可能性がある。このような気泡の出現は、気化器で気化ガスを生成する際の気化量制御に悪影響を及ぼし、その結果として処理室内の基板に対する気化ガス供給の安定性が損なわれてしまうおそれがある。
【0004】
本発明は、液体原料中の溶存ガスに起因して出現し得る気泡が気化器における気化量制御に悪影響を及ぼすのを回避して、処理室内への気化ガス供給を安定して行うことができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、液体原料を不活性ガスにより圧送する液体原料供給源と、前記液体原料供給源が圧送する液体原料の流路となる液体原料供給管と、前記液体原料供給源が配された位置よりも高い位置に配され、当該液体原料供給源から前記液体原料供給管を通じて供給された液体原料を気化して気化ガスを生成する気化器と、基板が収容され、前記気化器が生成した気化ガスが供給される処理室と、を有し、前記液体原料供給管の経路途中には、当該液体原料供給管内を流れる液体原料を貯留する液体原料溜め部が設けられ、前記液体原料溜め部は、前記液体原料供給源が配された位置よりも高い位置に設けられ、前記液体原料溜め部には、当該液体原料溜め部の内部の雰囲気を排気する溶存ガス排気系が接続されている基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る基板処理装置によれば、液体原料中の溶存ガスに起因して出現し得る気泡が気化器における気化量制御に悪影響を及ぼすのを回避することができ、処理室内への気化ガス供給を安定して行うことが実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第一実施形態にかかる基板処理装置が備える処理炉の概略構成図であり、(a)は処理炉の縦断面概略図を、(b)は処理炉の横断面概略図をそれぞれ示す図である。
【図3】本発明の第一実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。
【図4】本発明の参考例となる従来構成による気化ガス供給工程の概要を示す模式図である。
【図5】本発明の第一実施形態にかかる基板処理装置が備える液体原料供給系の模式図であり、液体原料圧送工程における状態を示す図である。
【図6】本発明の第一実施形態にかかる基板処理装置が備える液体原料供給系の模式図であり、気泡除去行程における状態を示す図である。
【図7】本発明の第一実施形態にかかる基板処理装置が備える液体原料供給系の模式図であり、液体原料供給工程における状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の第一実施形態>
以下に本発明の第一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
まず、本発明の第一実施形態にかかる基板処理装置101の構成例について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の第一実施形態にかかる基板処理装置の概略構成図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態にかかる基板処理装置101は筐体111を備えている。シリコン等からなるウエハ(基板)200を筐体111内外へ搬送するには、複数のウエハ200を収納するウエハキャリア(基板収納容器)としてのカセット110が使用される。筐体111内側の前方(図中の右側)には、カセットステージ(基板収納容器受渡し台)114が設けられている。カセット110は、図示しない工程内搬送装置によってカセットステージ114上に載置され、また、カセットステージ114上から筐体111外へ搬出されるように構成されている。
【0011】
カセット110は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させ、カセット110内のウエハ200を水平姿勢とさせ、カセット110のウエハ出し入れ口を筐体111内の後方を向かせることが可能なように構成されている。
【0012】
筐体111内の前後方向の略中央部には、カセット棚(基板収納容器載置棚)105が設置されている。カセット棚105には、複数段、複数列にて複数個のカセット110が保管されるように構成されている。カセット棚105には、後述するウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。また、カセットステージ114の上方には、予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0013】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置(基板収納容器搬送装置)118が設けられている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ(基板収納容器昇降機構)118aと、カセット110を保持したまま水平移動可能な搬送機構としてのカセット搬送機構(基板収納容器搬送機構)118bと、を備えている。これらカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連携動作により、カセットステージ114、カセット棚105、
予備カセット棚107、移載棚123の間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0014】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構(基板移載機構)125が設けられている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bと、を備えている。なお、ウエハ移載装置125aは、ウエハ200を水平姿勢で保持するツイーザ(基板移載用治具)125cを備えている。これらウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連携動作により、ウエハ200を移載棚123上のカセット110内からピックアップして後述するボート(基板支持部材)217へ装填(チャージング)したり、ウエハ200をボート217から脱装(ディスチャージング)して移載棚123上のカセット110内へ収納したりするように構成されている。
【0015】
筐体111の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部には開口が設けられ、かかる開口は炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。なお、処理炉202の構成については後述する。
【0016】
処理炉202の下方には、ボート217を昇降させて処理炉202内外へ搬送する昇降機構としてのボートエレベータ(基板支持部材昇降機構)115が設けられている。ボートエレベータ115の昇降台には、連結具としてのアーム128が設けられている。アーム128上には、ボート217を垂直に支持するとともに、ボートエレベータ115によりボート217が上昇したときに処理炉202の下端部を気密に閉塞する蓋体としてのシールキャップ219が水平姿勢で設けられている。
【0017】
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ200を、水平姿勢で、かつその中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に保持するように構成されている。ボート217の詳細な構成については後述する。
【0018】
カセット棚105の上方には、供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット134aが設けられている。クリーンユニット134aは、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0019】
また、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびボートエレベータ115側と反対側である筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給フアンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット(図示せず)が設置されている。図示しない前記クリーンユニットから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置125a及びボート217の周囲を流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部に排気されるように構成されている。
【0020】
(2)基板処理装置の動作
次に、本実施形態にかかる基板処理装置101の動作について説明する。
【0021】
まず、カセット110が、図示しない工程内搬送装置によって、ウエハ200が垂直姿勢となりカセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させられる。その結果、カセット110内のウエハ200は水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口は筐体111内の後方を向く。
【0022】
カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へ自動的に搬送されて受け渡されて一時的に保管された後、カセット棚105又は予備カセット棚107から移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0023】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200は、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cによって、ウエハ出し入れ口を通じてカセット110からピックアップされ、ウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作によって移載室124の後方にあるボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載機構125は、カセット110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0024】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ147によって開放される。続いて、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより、ウエハ200群を保持したボート217が処理炉202内へ搬入(ローディング)される。ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理が実施される。かかる処理については後述する。処理後は、ウエハ200およびカセット110は、上述の手順とは逆の手順で筐体111の外部へ払出される。
【0025】
(3)処理炉の構成
続いて、本発明の第一実施形態にかかる処理炉202の構成について、図面を参照しながら説明する。図2は、本発明の第一実施形態にかかる基板処理装置が備える処理炉の概略構成図であり、(a)は処理炉の縦断面概略図を、(b)は図2(a)に示す処理炉の横断面概略図をそれぞれ示している。
【0026】
(処理室)
本発明の第一実施形態にかかる処理炉202は、反応管203とマニホールド209とを有している。反応管203は、例えば石英(SiO)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性を有する非金属材料から構成され、上端部が閉塞され、下端部が開放された円筒形状となっている。マニホールド209は、例えばSUS等の金属材料から構成され、上端部及び下端部が開放された円筒形状となっている。反応管203は、マニホールド209により下端部側から縦向きに支持されている。反応管203とマニホールド209とは、同心円状に配置されている。マニホールド209の下端部は、上述したボートエレベータ115が上昇した際に、シールキャップ219により気密に封止されるように構成されている。マニホールド209の下端部とシールキャップ219との間には、処理室201内を気密に封止するOリングなどの封止部材220が設けられている。
【0027】
反応管203及びマニホールド209の内部には、基板としてのウエハ200が収容される処理室201が形成されている。処理室201内には、基板保持具としてのボート217が下方から挿入されるように構成されている。反応管203及びマニホールド209の内径は、ウエハ200を装填したボート217の最大外形よりも大きくなるように構成されている。
【0028】
ボート217は、複数枚(例えば75枚から100枚)のウエハ200を、略水平状態で所定の隙間(基板ピッチ間隔)をもって多段に保持するように構成されている。ボート217は、ボート受け218上に搭載されている。ボート受け218は、回転軸255により下方から支持されている。回転軸255は、処理室201内の気密を保持しつつ、シールキャップ219の中心部を貫通するように設けられている。シールキャップ219の下方には、回転軸255を回転させる回転機構267が設けられている。回転機構267
により回転軸255を回転させることにより、処理室201内の気密を保持したまま、複数のウエハ200を搭載したボート217を回転させることが出来るように構成されている。
【0029】
反応管203の外周には、反応管203と同心円状に加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207が設けられている。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0030】
(気化ガス供給系)
マニホールド209には、気化ガス導入部としての気化ガスノズル233aが設けられている。気化ガスノズル233aは、垂直部と水平部とを有するL字形状に構成されている。気化ガスノズル233aの垂直部は、反応管203の内壁を沿うように鉛直方向に配設されている。気化ガスノズル233aの垂直部側面には、気化ガス供給孔248aが鉛直方向に複数設けられている。気化ガス供給孔248aの開口径は、それぞれ下部から上部にわたって同一とされていてもよく、下部から上部にわたって徐々に大きくされていてもよい。気化ガスノズル233aの水平部は、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。
【0031】
マニホールド209の側壁から突出した気化ガスノズル233aの水平端部(上流側)には、気化ガスを処理室201内へ供給する気化ガス供給管240aの下流端が接続されている。気化ガス供給管240aの上流側には、気化器260が接続されている。気化器260は、後述する液体原料供給系から供給される液体原料を受け取ると、これを所定温度に加熱して気化させ、気化ガス(原料ガス)を生成するように構成されている。気化ガス供給管240aには、上流側から順に、流量検知器であるマスフローメータ(MFM)261、開閉バルブ241aが設けられている。開閉バルブ241aを開けることにより、気化器260にて生成された気化ガスが処理室201内へ供給されるように構成されている。また、マスフローメータ(MFM)261が気化ガスの流量をモニタすることにより、モニタされた値が後述するコントローラ280を通じて気化器260へ送られ、気化器260内の図示せぬコントロールバルブによって気化量が制御されるように構成されている。
【0032】
主に、気化ガスノズル233a、気化ガス供給管240a、気化器260、マスフローメータ(MFM)261、開閉バルブ241aにより、本実施形態に係る気化ガス供給系が構成されている。この気化ガス供給系によって、例えば、シリコン原料ガス、すなわち第1の元素としてシリコン(Si)を含むガス(シリコン含有ガス)が、処理室201内に供給される。シリコン含有ガスとしては、例えばトリスジメチルアミノシラン(TDMAS、SiH[N(CH)ガス等の液体原料を用いることができる。
【0033】
(液体原料供給系)
気化器260の上流側には、気化器260内に液体原料を供給する液体原料供給管240cの下流端が接続されている。
【0034】
液体原料供給管240cの上流側は、液体原料としてのTDMASを貯留する液体原料供給タンク266に接続されている。液体原料供給管240cの上流側端部は、液体原料供給タンク266内に貯留された液体原料内に浸されている。
【0035】
液体原料供給タンク266の上面部には、ヘリウム(He)ガスや窒素(N)ガス等の不活性ガスを供給する圧送ガス供給管240dの下流端が接続されている。圧送ガス供給管240dの上流端は、圧送ガスとしてのHeガスやNガス等の不活性ガスを供給する図示しない圧送ガス供給源に接続されている。圧送ガス供給管240dには、開閉バル
ブ241dが設けられている。開閉バルブ241dを開けることにより液体原料供給タンク266内に圧送ガスが供給される。
【0036】
液体原料供給管240cには、上流側から順に、開閉バルブ243c、液体原料溜め部である液体原料貯留タンク270、液体流量コントローラ(LMFC)242c、開閉バルブ241cが設けられている。
【0037】
液体原料貯留タンク270は、液体原料供給管240cの経路途中に設けられており、上流側からの液体原料を液体原料貯留タンク270の上面部から受け取って貯留し、貯留した液体原料を液体原料貯留タンク270の下面部から下流側へ送り出せるように構成されている。
【0038】
液体原料貯留タンク270の上面部には、ヘリウム(He)ガスや窒素(N)ガス等の不活性ガスを供給する圧送ガス供給管271aが接続されている。圧送ガス供給管271aの上流端は、圧送ガスとしてのHeガスやNガス等の不活性ガスを供給する図示しない圧送ガス供給源に接続されている。この圧送ガス供給源は、液体原料供給タンク266への不活性ガス供給を行う圧送ガス供給源と同じものであってもよいし、別に設けたものであってもよい。圧送ガス供給管271aには、開閉バルブ271bが設けられている。開閉バルブ271bを開けることにより液体原料貯留タンク270内に圧送ガスが供給される。
【0039】
圧送ガス供給管240dの開閉バルブ241dを開けることにより、液体原料供給タンク266内に圧送ガスが供給され、さらに液体原料供給管240cの開閉バルブ243cを開け、液体原料供給管240cの開閉バルブ241cおよび圧送ガス供給管271aの開閉バルブ271bを閉じることにより、液体原料供給タンク266内の液体原料が液体原料供給管240cを通じて液体原料貯留タンク270へ圧送され、液体原料貯留タンク270内に貯留されるように構成されている。また、圧送ガス供給管271aの開閉バルブ271bを開けることにより、液体原料貯留タンク270内に圧送ガスが供給され、さらに液体原料供給管240cの開閉バルブ243cを閉じ、液体原料供給管240cの開閉バルブ241cを開けることにより、液体原料貯留タンク270内に貯留されている液体原料が液体原料供給管240cを通じて気化器260内へ圧送(供給)されるように構成されている。なお、気化器260内への液体原料の供給流量(すなわち、気化器260内で生成され処理室201内へ供給される気化ガスの流量)は、液体流量コントローラ242cによって制御可能なように構成されている。
【0040】
主に、液体原料供給管240c、液体原料供給タンク266、開閉バルブ243c、液体原料貯留タンク270、液体流量コントローラ(LMFC)242c、開閉バルブ241c、圧送ガス供給管240d、開閉バルブ241d、圧送ガス供給管271a、開閉バルブ271bにより、本実施形態に係る液体原料供給系が構成されている。また、液体原料供給タンク266、圧送ガス供給管240d、開閉バルブ241d、図示しない圧送ガス供給源により、本実施形態に係る液体原料供給源が構成されている。
【0041】
(溶存ガス排気系)
液体原料貯留タンク270の上面部には、液体原料貯留タンク270の内部の雰囲気を排気する排気管272aの上流端が接続されている。排気管272aには、上流側から順に、開閉バルブ272bが設けられている。排気管272aの下流端は、後述する排気管231の下流側(後述するAPCバルブ231aと真空ポンプ231bとの間)に接続されている。真空ポンプ231aを作動させつつ、開閉バルブ272bを開けることにより、液体原料貯留タンク270の内部の雰囲気を排気して減圧状態にすることが可能なように構成されている。
【0042】
主に、排気管272a、開閉バルブ272b、真空ポンプにより、本実施形態に係る溶存ガス排気系が構成されている。
【0043】
(キャリアガス供給系)
気化器260の上流側には、気化器260内にキャリアガスを供給するキャリアガス供給ラインとしてのキャリアガス供給管240fの下流端が接続されている。
【0044】
キャリアガス供給ラインとしてのキャリアガス供給管240fの上流端は、キャリアガスとしてのヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、窒素(N)等の不活性ガスを供給する図示しないキャリアガス供給源に接続されている。キャリアガス供給管240fには、上流から順に、流量コントローラ(MFC)242f、開閉バルブ241fが設けられている。開閉バルブ241f及び開閉バルブ241aを開けることにより気化器260内にキャリアガスが供給され、気化ガスとキャリアガスとの混合ガスが気化ガス供給管240aを介して処理室201内に供給されるように構成されている。気化器260内にキャリアガスを供給することにより、気化ガスの気化器260内からの排出及び処理室201内への供給を促すことが可能となる。気化空間261内へのキャリアガスの供給流量(すなわち、処理室201内へのキャリアガスの供給流量)は、流量コントローラ242fによって制御可能なように構成されている。なお、本実施形態においては、気化器260内に液体原料を供給していない時(気化ガスを生成していない時)であっても、気化器260内に常に一定量のキャリアガスを供給し続けることができるように構成されている。
【0045】
主に、キャリアガス供給管240f、流量コントローラ(MFC)242f、開閉バルブ241f、図示しないキャリアガス供給源、キャリア供給ポート262bにより、本実施形態に係るキャリアガス供給系が構成されている。
【0046】
(反応ガス供給系)
マニホールド209には、反応ガス導入部としての反応ガスノズル233bが設けられている。反応ガスノズル233bは、垂直部と水平部とを有するL字形状に構成されている。反応ガスノズル233bの垂直部は、反応管203の内壁を沿うように鉛直方向に配設されている。反応ガスノズル233bの垂直部側面には、反応ガス供給孔248bが鉛直方向に複数設けられている。反応ガス供給孔248bの開口径は、それぞれ下部から上部にわたって同一とされていてもよく、下部から上部にわたって徐々に大きくされていてもよい。反応ガスノズル233bの水平部は、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。
【0047】
マニホールド209の側壁から突出した反応ガスノズル233bの水平端部(上流側)には、反応ガスを処理室201内へ供給する反応ガス供給管240bの下流端が接続されている。反応ガス供給管240bの上流側には、図示せぬ反応ガス供給源が接続されている。反応ガス供給管240bには、上流から順に、流量コントローラ(MFC)242b、開閉バルブ241bが設けられている。開閉バルブ241bを開けることにより図示せぬ反応ガス供給源からの反応ガスが反応ガス供給管240bを介して処理室201内へ供給されるように構成されている。なお、処理室201内への反応ガスの供給流量は、流量コントローラ242bによって制御することが可能なように構成されている。
【0048】
主に、反応ガスノズル233b、反応ガス供給管240b、流量コントローラ(MFC)242b、開閉バルブ241、図示せぬ反応ガス供給源により、本実施形態に係る反応ガス供給系が構成されている。この反応ガス供給系によって、例えば、処理室201内に供給する反応ガスとしては、例えば、第2の元素として酸素(O)を含むガス(酸素含有
ガス)が、処理室201内に供給される。酸素含有ガスとしては、例えばオゾン(O)ガス等を用いることができる。
【0049】
(ベント管)
気化ガス供給管240aにおけるマスフローメータ(MFM)261と開閉バルブ241aとの間には、気化ガスベント管240iの上流端が接続されている。気化ガスベント管240iの下流端は、後述する排気管231の下流側(後述するAPCバルブ231aと真空ポンプ231bとの間)に接続されている。気化ガスベント管240iには開閉バルブ241iが設けられている。開閉バルブ241aを閉め、開閉バルブ241iを開けることにより、気化器260における気化ガスの生成を継続したまま、処理室201内への気化ガスの供給を停止することが可能なように構成されている。気化ガスを安定して生成するには所定の時間を要するが、開閉バルブ241a、開閉バルブ241iの切り替え動作によって、処理室201内への気化ガスの供給・停止をごく短時間で切り替えることが可能なように構成されている。
【0050】
同様に、反応ガス供給管240bにおける図示せぬ反応ガス供給源と流量コントローラ242bとの間には、反応ガスベント管240jの上流端が接続されている。反応ガスベント管240jの下流端は、図示せぬ除害装置又は排気管231の下流側(APCバルブ231aと真空ポンプ231bとの間)に接続されている。反応ガスベント管240jには開閉バルブ241jが設けられている。開閉バルブ241bを閉め、開閉バルブ241jを開けることにより、反応ガス供給源による反応ガス供給を継続したまま、処理室201内への反応ガスの供給を停止することが可能なように構成されている。反応ガスを安定して供給するには所定の時間を要するが、開閉バルブ241b、開閉バルブ241jの切り替え動作によって、処理室201内への反応ガスの供給・停止をごく短時間で切り替えることが可能なように構成されている。
【0051】
(パージガス供給管)
気化ガス供給管240aにおける開閉バルブ241aの下流側には、第1パージガス管240gの下流側が接続されている。第1パージガス管240gには、上流側から順に、Nガス等の不活性ガスを供給する図示しないパージガス供給源、流量コントローラ(MFC)242g、開閉バルブ241gが設けられている。開閉バルブ241aを閉め、開閉バルブ241i及び開閉バルブ241gを開けることにより、気化ガスの生成を継続したまま処理室201内への気化ガスの供給を停止すると共に、処理室201内へのパージガスの供給を開始することが可能なように構成されている。処理室201内へパージガスを供給することにより、処理室201内からの気化ガスの排出を促すことが可能となる。
【0052】
同様に、反応ガス供給管240bにおける開閉バルブ241bの下流側には、第2パージガス管240hの下流側が接続されている。第2パージガス管240hには、上流側から順に、Nガス等の不活性ガスを供給する図示しないパージガス供給源、流量コントローラ(MFC)242h、開閉バルブ241hが設けられている。開閉バルブ241bを閉め、開閉バルブ241j及び開閉バルブ241hを開けることにより、処理室201内への反応ガスの供給を停止すると共に、反応ガス供給を継続したまま処理室201内へのパージガスの供給を開始することが可能なように構成されている。処理室201内へパージガスを供給することにより、処理室201内からの反応ガスの排出を促すことが可能となる。
【0053】
(排気系)
マニホールド209の側壁には、処理室201内の雰囲気を排気する排気系としての排気管231が接続されている。排気管231には、上流側から順に、圧力検出器としての圧力センサ245、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Cont
roller)バルブ231a、真空排気装置としての真空ポンプ231bが設けられている。真空ポンプ231bを作動させつつ、APCバルブ242の開閉弁の開度を調整することにより、処理室201内を所望の圧力とすることが可能なように構成されている。
【0054】
主に、排気管231、圧力センサ245、APCバルブ231a、真空ポンプ231bにより、本実施形態に係る排気系が構成されている。
【0055】
(シールキャップ)
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217を下方から支持しており、回転機構267を作動させることでウエハ200を回転させることが可能なように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に配置された昇降機構としてのボートエレベータ215によって、垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート217を処理室201内外に搬送することが可能となっている。
【0056】
(コントローラ)
制御部(制御手段)であるコントローラ280は、ヒータ207、APCバルブ231a、真空ポンプ231b、回転機構267、ボートエレベータ215、通電加熱ヒータ264、開閉バルブ241a,241b,242c,243c,241d,241e,241f,241g,241h,241i,241j、液体流量コントローラ242c、流量コントローラ242b、242f、242g、242h等に接続されている。コントローラ280により、ヒータ207の温度調整動作、APCバルブ231aの開閉及び圧力調整動作、真空ポンプ231bの起動・停止、回転機構267の回転速度調節、ボートエレベータ215の昇降動作、開閉バルブ241a,241b,242c,243c,241d,241e,241f,241g,241h,241i,241jの開閉動作、液体流量コントローラ242c、流量コントローラ242b,242f,242g,242hの流量調整等の制御が行われる。
【0057】
また、コントローラ280は、マスフローメータ(MFM)261に接続され、マスフローメータ(MFM)261から気化ガス供給管240aの気化ガス流量の測定値を受信することができるように構成されている。また、コントローラ280は、後述する気化ガスを供給する工程(S31)において、マスフローメータ(MFM)261による気化ガス流量の測定値に基づいて、気化器260での液体原料の気化量をフィードバック制御することができるように構成されている。
【0058】
(4)基板処理工程
続いて、本発明の一実施形態としての基板処理工程について、図3を参照しながら説明する。図3は、本発明の一実施形態としての基板処理工程を示すフロー図である。なお、本実施形態は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法の中の1つであるALD法を用いてウエハ200の表面に成膜をする方法であり、半導体装置の製造工程の一工程として実施される。一例として、第1の元素をシリコン(Si)、第2の元素を酸素(O)とし、第1の元素を含む気化ガスとしてシリコン含有ガスであるTDMASガスを、第2の元素を含む反応ガスとして酸素含有ガスであるOガスを用い、ウエハ200上にSiO膜を形成する場合を説明する。なお、以下の説明において、基板
処理装置101を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
【0059】
(基板搬入工程(S10))
まず、複数枚のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)する。そして、複数枚のウエハ200を保持したボート217を、ボートエレベータ215によって持ち上げて処理室201内に搬入(ボートローディング)する。この状態で、シールキャップ219はOリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。基板搬入工程(S10)においては、開閉バルブ241g、開閉バルブ241hを開けて、処理室201内にパージガスを供給し続けることが好ましい。
【0060】
(減圧及び昇温工程(S20))
続いて、開閉バルブ241g、開閉バルブ241hを閉め、処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように、処理室201内を真空ポンプ231bにより排気する(S20)。この際、処理室201内の圧力を圧力センサ245で測定して、この測定された圧力に基づき、APCバルブ231aの開度をフィードバック制御する。また、処理室201内が所望の温度となるように、ヒータ207によって加熱する(S20)。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサが検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合をフィードバック制御する。そして、回転機構267によりボート217を回転させ、ウエハ200を回転させる。
【0061】
(成膜工程(S30))
続いて、成膜工程(S30)を実施する。成膜工程(S30)では、ウエハ200上に気化ガスを供給する気化ガス供給工程(S31)と、処理室201内をパージするパージ工程(S32)と、ウエハ200上に反応ガスを供給する反応ガス供給工程(S33)と、処理室201内をパージするパージ工程(S34)と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返す。
【0062】
(気化ガス供給工程(S31))
気化ガス供給工程(S31)では、開閉バルブ243c,272bが閉の状態で、開閉バルブ271bを開けて、液体原料供給タンク270内に圧送ガスを供給する。そして、液体原料供給タンク270内の液体原料(TDMAS)を、気化器260へ向けて液体原料供給管240c内へと圧送(供給)する。
【0063】
このとき、気化器260へ向けた液体原料の圧送(供給)は、液体原料圧送工程、気泡除去行程、液体原料供給工程の各工程を経て行う。なお、これらの各工程については、詳細を後述する。
【0064】
そして、液体原料供給タンク266内からの液体原料が気化器260に供給されると、気化器260内が所定の温度雰囲気(例えば120℃から150℃)になるように加熱し、気化器260内に供給された液体原料を気化させて気化ガス(原料ガス)を生成する。また、開閉バルブ241fを開けて気化器260内にキャリアガスを供給する。気化ガスが安定して生成されるまでは、開閉バルブ241aを閉め、開閉バルブ241iを開けて、気化ガスとキャリアガスとの混合ガスを気化ガスベント管240iから排出しておく。気化ガスが安定して生成されるようになったら、開閉バルブ241iを閉め、開閉バルブ241aを開けて、気化ガスとキャリアガスとの混合ガスを処理室201内へと供給する。その結果、積層されたウエハ200間に混合ガスが供給され、ウエハ200の表面に気化ガスのガス分子が吸着する。混合ガスの供給を所定時間継続したら、開閉バルブ241aを閉め、開閉バルブ241iを開けて、気化ガスの生成を継続したまま処理室201内への混合ガスの供給を停止する。
【0065】
(パージ工程(S32))
パージ工程(S32)では、開閉バルブ241gを開けて処理室201内へパージガスを供給し、処理室201内からの気化ガスの排出を促す。処理室201内の雰囲気がパージガスに置換されたら、開閉バルブ241gを閉めて処理室201内へのパージガスの供給を停止する。
【0066】
(反応ガス供給工程(S33))
反応ガス供給工程(S33)では、開閉バルブ241bを開けて、反応ガスを処理室201内へ供給する。その結果、積層されたウエハ200間に反応ガスが供給され、ウエハ200の表面に吸着している気化ガスのガス分子と反応ガスとが化学反応し、ウエハ200の表面にSiN膜が生成される。反応ガスの供給を所定時間継続したら、開閉バルブ241bを閉め、開閉バルブ241jを開けて、反応ガスの生成を継続したまま処理室201内への反応ガスの供給を停止する。
【0067】
(パージ工程(S34))
パージ工程(S34)では、開閉バルブ241hを開けて処理室201内へパージガスを供給し、処理室201内からの反応ガス及び反応生成物の排出を促す。処理室201内の雰囲気がパージガスに置換されたら、開閉バルブ241hを閉めて処理室201内へのパージガスの供給を停止する。
【0068】
以上、気化ガス供給工程(S31)〜パージ工程(S34)を1サイクルとして、このサイクルを所定回数繰り返すことにより、ウエハ200上に所望の厚さのSiN膜が形成されたら成膜工程(S30)を終了する。
【0069】
(昇圧工程(S40)、基板搬出工程(S50))
続いて、APCバルブ231aの開度を小さくし、開閉バルブ241g、開閉バルブ241hを開けて、処理室201内の圧力が大気圧になるまで処理室201内にパージガスを供給する(S40)。そして、基板搬入工程(S10)と逆の手順により、成膜済のウエハ200を処理室201内から搬出する(S50)。基板搬出工程(S50)においては、開閉バルブ241g、開閉バルブ241hを開けて、処理室201内にパージガスを供給し続けることが好ましい。
【0070】
(5)液体原料圧送工程、気泡除去行程、液体原料供給工程
次に、上述の気化ガス供給工程(S31)における液体原料圧送工程、気泡除去行程、液体原料供給工程の各工程について説明する。
【0071】
図4は、本発明の参考例となる従来構成による気化ガス供給工程の概要を示す模式図である。従来構成による気化ガス供給工程では、液体原料供給タンク266内から気化器260に対して直接的に液体原料の圧送(供給)を行っていた。ところが、例えば、液体原料供給源を構成する液体原料供給タンク266を階下に設置し、気化ガスを生成する気化器260を階上に設置するといったように、これらを高低差のある各場所に離れて設置した場合には、液体原料供給タンク266から気化器260へ至るまでの間に液体原料の圧力低下が生じてしまう。この現象は、例えばエネルギー保存則(ベルヌーイの定理)や管内を流体が流れる際の圧力損失等によって説明することが可能である。HeガスやNガス等の不活性ガスによる液体原料の圧送を行っている場合に、当該液体原料の圧力が低下すると、液体原料中に溶存している不活性ガス(溶存ガス)が飽和状態となり、当該液体原料中にて気泡となって現れる可能性がある。このような気泡の出現は、気化器260で気化ガスを生成する際の気化量制御に悪影響を及ぼし、その結果として処理室201内のウエハ200に対する気化ガス供給の安定性が損なわれてしまうおそれがある。
【0072】
液体原料中における気泡出現を防止するためには、液体原料の圧力を低下させなければよい。しかしながら、液体原料供給タンク266や気化器260の設置スペース等を考慮すると、液体原料の圧力低下が生じないようにすること現実的ではない。そこで、本願発明者は、液体原料供給タンク266と気化器260との間、すなわち液体原料供給管240cの経路途中に、気泡トラップとしての液体原料貯留タンク270を設け、さらに気化ガス供給工程として液体原料圧送工程、気泡除去行程、液体原料供給工程を順に経ることに想到した。以下、液体原料貯留タンク270、液体原料圧送工程、気泡除去行程、液体原料供給工程について説明する。
【0073】
図5〜図7は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置が備える液体原料供給系の模式図であり、図5は液体原料圧送工程における状態を、図6は気泡除去行程における状態を、図7は液体原料供給工程における状態を、それぞれ示している。
【0074】
液体原料貯留タンク270は、液体原料供給管240cの経路途中に設けられ、液体原料供給管240c内を流れる液体原料を貯留する。これにより、液体原料供給源を構成する液体原料供給タンク266から圧送された液体原料の液体原料供給管240c内での圧力低下によって、当該液体原料中に現れる気泡を、当該液体原料中から除去するように構成されている。
【0075】
具体的には、液体原料中からの気泡除去のために、液体原料貯留タンク270を、以下に述べる一態様のように配置することが考えられる。例えば、液体原料供給タンク266が階下で気化器260が階上にあるといったように、これらを高低差のある各場所に離れて設置した場合、液体原料貯留タンク270を、液体原料の圧送元である液体原料供給タンク266が配された位置よりも高い位置に配置する。つまり、液体原料供給タンク266との関係については、液体原料貯留タンク270を液体原料供給タンク266に対して高低差を有した高い位置に配置する。また、気化器260との関係については、液体原料貯留タンク270を気化器260が配された位置と同じ高さの位置、または気化器260が配された位置よりも高い位置に配置することが好ましい。
【0076】
液体原料貯留タンク270の容量は、少なくとも、数バッチ分の気化ガス供給工程に必要な液体原料を貯留し、その液体原料に出現する気泡を当該液体原料から分離可能な容量であればよい。このような容量の具体的な値は、基板処理装置101の仕様や経験則等に基づいて決定することが考えられる。液体原料貯留タンク270は、上述した容量を下限とし、極力小容量に形成されていることが、気化器260に近づけて配するためには好ましい。
【0077】
(液体原料圧送工程)
以上に説明した液体原料貯留タンク270を含む液体原料供給系により気化ガス供給工程(S31)を実施する場合には、まず、図5に示すように、液体原料圧送工程を行う。液体原料圧送工程では、開閉バルブ241dを開けて、液体原料供給タンク266内に圧送ガスとしてのHeガスやNガス等の不活性ガスを供給する。そして、開閉バルブ243cを開け、液体原料供給タンク266内の液体原料を不活性ガスにより液体原料供給管240c内へ圧送する。このとき、液体原料供給管240cの開閉バルブ241c、圧送ガス供給管271aの開閉バルブ271bは、閉じた状態にしておく。これにより、液体原料供給タンク266内の液体原料は、液体原料供給管240cを通じて液体原料貯留タンク270へ圧送され、その液体原料貯留タンク270内に貯留される。
【0078】
液体原料貯留タンク270内には、所定量(例えば、少なくとも1サイクル分の気化ガス供給工程に必要な量。)の液体原料を貯留する。つまり、液体原料供給タンク266と気化器260との間において、所定量の液体原料を一旦液体原料貯留タンク270内に貯
留する。したがって、液体原料の圧力低下によって当該液体原料中に気泡が現れても、液体原料貯留タンク270内にて気泡を分離させて液体原料中から除去することが可能になる。このように、液体原料貯留タンク270を液体原料供給タンク266に対して高低差を有した高い位置に配置して、液体原料貯留タンク270を気泡トラップとして機能させることで、液体原料中からの気泡の分離除去が実現可能にする。
【0079】
(気泡除去行程)
液体原料圧送工程の後は、図6に示すように、気泡除去行程を行う。気泡除去行程では、液体原料供給管240cの開閉バルブ243c,241cを閉じ、さらに圧送ガス供給管271aの開閉バルブ271bを閉じた状態にしておく。そして、溶存ガス排気系を構成する図示せぬ真空ポンプを作動させつつ、排気管272aの開閉バルブ272bを開ける。これにより、液体原料貯留タンク270は、内部の雰囲気が排気されて減圧状態になる。
【0080】
液体原料貯留タンク270内が減圧状態になると、その液体原料貯留タンク270内に貯留されている液体原料中から溶存ガスが強制的に脱気される。したがって、単に液体原料貯留タンク270内に貯留するだけでは排除できなかった溶存ガスについても、液体原料中から強制的に抜き取ることが可能になる。
【0081】
(液体原料供給工程)
気泡除去行程の後は、図7に示すように、液体原料供給工程を行う。液体原料供給工程では、液体原料供給管240cの開閉バルブ243cを閉じ、さらに排気管272aの開閉バルブ272bを閉じた状態にしておく。そして、圧送ガス供給管271aの開閉バルブ271bを開けて、液体原料貯留タンク270内に圧送ガスとしてのHeガスやNガス等の不活性ガスを供給しつつ、液体原料供給管240cの開閉バルブ241cを開ける。これにより、液体原料貯留タンク270内に貯留されていた気泡除去済みの液体原料は、液体原料貯留タンク270内から送り出され液体原料供給管240cを通じて気化器260へ圧送(供給)される。
【0082】
気化器260へ供給される液体原料は、液体原料貯留タンク270内にて気泡が分離除去され、さらに溶存ガスが強制的に脱気されている。また、液体原料貯留タンク270が気化器260と同じ高さの位置、または気化器260よりも高い位置に配置されていれば、液体原料貯留タンク270から気化器260へ至るまでの間に、液体原料の圧力低下による当該液体原料中の気泡出現を抑制することができる。
【0083】
(6)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0084】
本実施形態にかかる基板処理装置は、液体原料供給管240cの経路途中に液体原料溜め部としての液体原料貯留タンク270を設け、その液体原料貯留タンク270内に液体原料を一旦貯留することで、液体原料供給タンク266内から圧送された液体原料の液体原料供給管240c内での圧力低下によって当該液体原料中に現れる気泡を当該液体原料中から除去する。したがって、気化器260へ供給する液体原料中からの気泡の分離除去が可能となり、当該気泡が気化器260で気化ガスを生成する際の気化量制御に悪影響を及ぼしてしまうのを抑制することができる。また、気化器260での気化量制御を正しく行い得ることから、液体原料中に気泡が出現し得る従来構成の場合に比べて、処理室201内のウエハ200に対する気化ガス供給の安定性向上が図れる。さらには、液体原料供給管240cの経路途中に液体原料貯留タンク270を設けるという簡素な構成で気泡の分離除去が可能になることから、例えば液体原料供給タンク266を含む液体原料供給系の出口に高価な脱気システムを設けた構成に比べて、コスト面においても非常に有効であ
る。
【0085】
また、本実施形態にかかる基板処理装置は、液体原料溜め部としての液体原料貯留タンク270が、液体原料供給タンク266を含む液体原料供給源が配された位置よりも高い位置に設けられている。したがって、液体原料供給タンク266と液体原料貯留タンク270との高低差による圧力低下を利用して、液体原料貯留タンク270内に貯留する液体原料から当該液体原料内に現れる気泡を分離除去することができる。つまり、高低差による圧力低下を利用するという非常に簡素な構成で液体原料中の気泡を分離除去することができる。このような構成は、例えば液体原料供給タンク266を階下に設置し気化器260を階上に設置する装置構成に適用すると、非常に好適なものとなる。
【0086】
また、本実施形態にかかる基板処理装置は、液体原料溜め部としての液体原料貯留タンク270が、気化器260が配された位置と同じ高さの位置または気化器260が配された位置よりも高い位置に設けられている。したがって、液体原料貯留タンク270での貯留により気泡を分離除去した液体原料について、液体原料貯留タンク270と気化器260との間で高低差による圧力低下が生じることがないので、気化器260へ供給する液体原料に気泡が現れるのを抑制することができる。
【0087】
さらに、本実施形態にかかる基板処理装置は、液体原料溜め部としての液体原料貯留タンク270に、排気管272a、開閉バルブ272b、真空ポンプによる溶存ガス排気系が接続されている。したがって、液体原料貯留タンク270内に貯留する液体原料について、強制的な溶存ガスの脱気を行うことができる。つまり、単に液体原料貯留タンク270内に貯留するだけでは排除できなかった溶存ガスについても、液体原料中から強制的に抜き取ることが可能になり、単に液体原料を貯留するだけの場合に比べて更なる気泡の分離除去効果が得られる。
【0088】
このように、本実施形態にかかる基板処理装置は、液体原料貯留タンク270内への貯留による液体原料中からの気泡の分離除去と、液体原料貯留タンク270内の液体原料に対する溶存ガス排気系による強制的な溶存ガスの脱気とを、併せて行うようになっている。したがって、気化器260へ供給する液体原料に気泡が混じるのを確実に防止して、気化器260での気化量制御の信頼性を非常に高いものとすることが実現可能である。
【0089】
また、本実施形態にかかる基板処理装置は、液体原料貯留タンク270の容量が、少なくとも数バッチ分の気化ガス供給工程に必要な液体原料を貯留し、その液体原料に出現する気泡を当該液体原料から分離可能な容量となっている。したがって、液体原料貯留タンク270は、液体原料供給タンク266に比べると非常に小容量で済み、気化器260に近づけて配することが可能になる等、配置の自由度を十分に確保することができる。
【0090】
以上のような本実施形態にかかる基板処理装置を用いて半導体装置の製造工程の一工程としての基板処理工程を実施すれば、処理室201内のウエハ200に対する気化ガス供給の安定性向上が図れ、その結果として高精度、高効率の半導体装置の製造を行うことが実現可能となる。
【0091】
<本発明の他の実施形態>
上述した第一実施形態では、本発明をSiO膜の処理炉に適用させた場合を例に挙げているが、本発明はかかる形態に限定されない。すなわち、本発明は、膜種にはよらず、常温常圧で液体であるような原料を用いた他の膜種にも適用可能であり、例えば基板上に窒化膜、酸化膜、金属膜、半導体膜等の他の膜を形成する基板処理装置、及び半導体装置の製造方法にも好適に適用可能である。
【0092】
上述した第一実施形態では、気化ガスと反応ガスとをウエハ200上へ交互に供給するALD法を実施する場合について説明したが、本発明はかかる形態に限定されない。すなわち、液体原料を気化させた気化ガスを用いる限り、例えば、CVD(Chemical
Vapor Deposition)法等の他の方法を実施する場合にも好適に適用可能である。
【0093】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0094】
本発明の一態様によれば、
液体原料を不活性ガスにより圧送する液体原料供給源と、
前記液体原料供給源が圧送する液体原料の流路となる液体原料供給管と、
前記液体原料供給源が配された位置よりも高い位置に配され、当該液体原料供給源から前記液体原料供給管を通じて供給された液体原料を気化して気化ガスを生成する気化器と、
基板が収容され、前記気化器が生成した気化ガスが供給される処理室と、
を有し、
前記液体原料供給管の経路途中には、当該液体原料供給管内を流れる液体原料を貯留して、前記液体原料供給源から圧送された液体原料の前記液体原料供給管内での圧力低下によって当該液体原料中に現れる気泡を当該液体原料中から除去する液体原料溜め部が設けられている
基板処理装置が提供される。
【0095】
好ましくは、
前記液体原料供給源は、前記気化器が配された位置よりも低い位置から当該気化器に向けて液体原料を圧送するものであり、
前記液体原料溜め部は、前記液体原料供給源が配された位置よりも高い位置に設けられている。
【0096】
また好ましくは、前記液体原料溜め部は、前記気化器が配された位置と同じ高さの位置または前記気化器が配された位置よりも高い位置に設けられている。
【0097】
また好ましくは、前記液体原料溜め部には、当該液体原料溜め部の内部の雰囲気を排気する溶存ガス排気系が接続されている。
【0098】
本発明の他の態様によれば、
処理室内に基板を搬入する基板搬入工程と、
液体原料を気化器に供給し当該気化器で当該液体原料を気化して気化ガスを生成し、生成した気化ガスを前記処理室内に供給して当該処理室内の基板を処理する気化ガス供給工程と、
前記処理室内での処理後の基板を当該処理室外へ搬出する基板搬出工程と
を有する半導体装置の製造方法であって、
前記気化ガス供給工程は、
前記液体原料を不活性ガスにより液体原料供給管内へ圧送する液体原料圧送工程と、
前記液体原料供給管の経路途中に設けられた液体原料溜め部内に当該液体原料供給管を流れる液体原料を貯留して、前記液体原料供給管内へ圧送された液体原料の当該液体原料供給管内での圧力低下によって当該液体原料中に現れる気泡を当該液体原料中から除去する気泡除去行程と、
気泡除去後の液体原料を前記液体原料溜め部内から送り出して前記気化器に供給する液体原料供給工程と
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0099】
101 基板処理装置
201 処理室
240c 液体原料供給管
260 気化器
266 液体原料供給タンク
270 液体原料貯留タンク
271a 圧送ガス供給管
272a 排気管
280 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体原料を不活性ガスにより圧送する液体原料供給源と、
前記液体原料供給源が圧送する液体原料の流路となる液体原料供給管と、
前記液体原料供給源が配された位置よりも高い位置に配され、当該液体原料供給源から前記液体原料供給管を通じて供給された液体原料を気化して気化ガスを生成する気化器と、
基板が収容され、前記気化器が生成した気化ガスが供給される処理室と、
を有し、
前記液体原料供給管の経路途中には、当該液体原料供給管内を流れる液体原料を貯留する液体原料溜め部が設けられ、
前記液体原料溜め部は、前記液体原料供給源が配された位置よりも高い位置に設けられ、
前記液体原料溜め部には、当該液体原料溜め部の内部の雰囲気を排気する溶存ガス排気系が接続されている
ことを特徴とする基板処理装置。


【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−49324(P2012−49324A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189806(P2010−189806)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】