説明

基板搬送装置及び基板処理システム

【課題】パターン倒れの発生を抑えると共に、簡素な構成の基板搬送装置等を提供する。
【解決手段】基板搬送装置の搬送トレイ50は基板を保持する底板511、521と、その周囲に設けられた側周壁512、522とから構成されると共に、底板511、521には基板の受け渡しを行う相手である昇降部材が通過するための開口部53が設けられている。さらに搬送トレイ50には、開口部53内の昇降部材を搬送トレイ50の外側に通り抜けさせる空間54が一時的に形成されると共に、基板の搬送時には搬送トレイ50内に液体が溜められ、基板の上面側が当該液体に接した状態で基板を搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にパターンが形成された半導体ウエハなどの基板に対して洗浄処理や超臨界処理などを行う基板処理装置に基板を搬送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板である例えば半導体ウエハ(以下、ウエハという)表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造工程などにおいては、ウエハ表面の微小なごみや自然酸化膜などを薬液により除去する液処理工程が設けられている。
【0003】
この液処理工程に用いられる液処理装置の一つである枚葉式のスピン洗浄装置は、ノズルを用いてウエハの表面に例えばアルカリ性や酸性の薬液を供給しながらウエハを回転させることによってウエハ表面のごみや自然酸化膜などを除去する。この場合にはウエハ表面に残った薬液は例えば純水などによるリンス洗浄を行った後、ウエハを回転させることによる振切乾燥などによって除去される。
【0004】
ところが半導体装置の高集積化に伴い、こうした薬液などを除去する処理において、いわゆるパターン倒れの問題が大きくなってきている。パターン倒れは、例えばウエハ表面に残った薬液を乾燥させる際に、パターンを形成する凹凸の例えば凸部の左右に残っている薬液が不均一に乾燥すると、この凸部を左右に引っ張る表面張力のバランスが崩れて薬液の多く残っている方向に凸部が倒れる現象である。
【0005】
こうしたパターン倒れを抑えつつウエハ表面に残った薬液を除去する手法として超臨界状態の流体(超臨界流体)を用いた乾燥方法が知られている。超臨界流体は、液体と比べて粘度が小さく、また液体を溶解する能力も高いことに加え、液体-気体間の界面が存在しない。そこで、薬液の付着した状態のウエハを超臨界流体と接触させ、ウエハ表面の薬液を超臨界流体に溶解させると、表面張力の影響を受けることなく薬液を乾燥させることができる。
【0006】
ここで超臨界状態は高温高圧の条件を必要とすることから、例えば薬液による洗浄、リンスを終えたウエハは、液体の付着したままの状態で超臨界乾燥を行うための超臨界処理装置へと搬送される。しかしながら、液処理装置から超臨界処理装置へとウエハを搬送する間にウエハ表面の液体が自然乾燥すると、この自然乾燥の過程でパターン倒れが発生してしまうおそれがある。
【0007】
表面の自然乾燥を抑えながらウエハを搬送する技術として特許文献1及び特許文献2には、蓋状の部材によってウエハの表面を覆い、これら蓋状の部材とウエハとの間の空間を液体で満たした状態でウエハを搬送する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−17628号公報:第0011段落、図1
【特許文献2】特許第3933507号公報;第0030段落、図3(b)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで特許文献1に記載の技術は、蓋状部材とウエハとの間に満たされた液体によってウエハを吸着保持し、ウエハの下面を保持することなく搬送する技術であるが、ウエハと蓋状部材との隙間から液体が零れ落ちるおそれが高い。この点、特許文献2に記載の技術では、ウエハの下方に零れ落ちる液体を受け止める受皿が設けられているが、ウエハの上下を両面から覆う必要があるため、装置構成や動作制御が複雑となり、搬送時間が長くなってしまってスループット低下などの問題が生じる。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パターン倒れの発生を抑えると共に、簡素な構成の基板搬送装置及びこの装置を備えた基板処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る基板搬送装置は、基板の上面側に液体が接した状態で基板を搬送し、基板の下面を支持する昇降部材との間で基板を受け渡す基板搬送装置において、
その上面に基板を保持する底板と、この底板における基板が保持される領域の周囲に設けられた側周壁と、を備えた搬送トレイと、
この搬送トレイの底面に形成され、前記昇降部材が通過するための開口部と、
前記搬送トレイを水平移動させる移動機構と、
前記搬送トレイを水平移動させたときに、前記昇降部材が前記開口部と搬送トレイの外側との間で通り抜けができるように一時的に空間を形成する空間形成部と、を備え、
基板搬送時には、前記底板及びこの底板に保持された基板と前記側周壁とで囲まれる液溜め空間内に前記液体を溜めることを特徴とする。
【0012】
基板搬送装置は、以下の特徴を備えてもよい。
(a)前記搬送トレイは、前記開口部を挟んで2つに分割されたトレイ部材を含み、前記空間形成部は、これらトレイ部材を、互いに接合される位置と両トレイ部材の間に前記通り抜けのための空間が形成される位置との間で移動させるトレイ部材移動部を供えること。
(b)前記液溜め空間内に溜めた液体に浸漬した状態で基板を搬送すること。
(c)前記側周壁と前記基板が保持される領域との間の底板には、前記空間内の液体を排出するための、開閉弁を備えた排液ラインが設けられていること。
【0013】
次いで、他の発明に係る基板処理システムは、基板の表面に液体を供給して当該表面を洗浄する第1の処理装置である液処理装置と、
この液処理装置から前記処理容器内に搬入された基板を超臨界状態の処理流体により処理することにより、前記液処理装置にて当該基板の表面に付着した液体を除去する第2の処理装置である超臨界処理装置と、
前記液処理装置と、前記超臨界処理装置との間で基板を搬送する上述の各基板搬送装置と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
基板処理システムは、以下の特徴を備えてもよい。
(d)前記液処理装置は、前記搬送トレイに保持された基板に、前記超臨界処理装置にて超臨界状態となる流体と同種の物質を液体の状態で供給し、前記基板搬送装置は、基板の上面側に液体である前記物質が接した状態で基板を搬送すること。
(e)前記液処理装置は、前記搬送トレイに保持された基板に、前記超臨界処理装置にて超臨界状態となる流体とは別種の液体を供給し、前記基板搬送装置は、基板の上面側に前記別種の液体が接した状態で基板を搬送すること。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板を保持した搬送トレイに液体を溜め、この液体が基板の上面に接した状態で当該基板を搬送するので、簡単な構成の装置にて例えば基板の表面に形成されたパターンのパターン倒れの発生を抑制することができると共に、例えば基板を上下両面から覆った空間内に液体を満たした状態で基板の搬送を行う場合などと比較して、装置構成や動作が簡素となり、搬送時間の短縮化によるスループットの向上に寄与できる。またこの搬送トレイの底板には基板の受け渡し相手である基板処理装置に設けられた昇降部材を通過させるための開口部が設けられており、さらにこの搬送トレイには基板の受け渡し時に、当該昇降部材を前記開口部と搬送トレイの外側との間で通り抜けさせるための空間が一時的に形成されるので、昇降部材と干渉せずに搬送トレイを水平移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る液処理システムの全体構成を示す横断平面図である。
【図2】前記液処理システムに設けられている液処理装置の構成を示す縦断側面図である。
【図3】前記液処理システムに設けられている超臨界処理装置の構成を示す縦断側面図である。
【図4】前記液処理システムに設けられているウエハ搬送装置の外観構成を示す側面図である。
【図5】前記ウエハ搬送装置の斜視図である。
【図6】前記ウエハ搬送装置に設けられている第2の搬送アームの斜視図である。
【図7】前記第2の搬送アームに設けられている搬送トレイを駆動させる機構を示す説明図である。
【図8】前記搬送トレイを駆動させる機構を示す第2の説明図である。
【図9】搬送トレイに液溜まりを形成した様子を示す説明図である。
【図10】第2の搬送アームを用いてウエハの受け渡しを行う様子を示す説明図である。
【図11】前記液処理システムの作用を示す第1の作用図である。
【図12】前記液処理システムの作用を示す第2の作用図である。
【図13】前記液処理システムの作用を示す第3の作用図である。
【図14】前記液処理システムの作用を示す第4の作用図である。
【図15】第2の搬送アームの他の例を示す平面図である。
【図16】前記他の例に係る搬送トレイを駆動させる機構の構成例を示す第1の説明図である。
【図17】前記他の例に係る搬送トレイを駆動させる機構の第2の説明図である。
【図18】前記他の例に係る搬送トレイを駆動させる機構の第3の説明図である。
【図19】第2の搬送アームのさらに他の例を示す斜視図である。
【図20】前記さらに他の例に係る搬送トレイを駆動させる機構の構成例を示す説明図である。
【図21】前記さらに他の例に係る搬送トレイを駆動する様子を示す説明図である。
【図22】第2の搬送アームのこの他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る超臨界処理装置を備えた基板処理システムの一例として、基板であるウエハWに薬液を供給して液処理を行った後、超臨界乾燥を行う液処理システム1の実施の形態について説明する。図1は液処理システム1の全体構成を示す横断平面図であり、当該図に向かって左側を前方とすると、液処理システム1は複数枚のウエハWを収納したキャリアCが載置されるキャリア載置部11と、このキャリアCからウエハWを取り出して液処理システム1内に搬入する搬送部12と、搬送部12にて取り出されたウエハWを後段の液処理部14に受け渡すための受け渡し部13と、受け渡し部13から受け渡されたウエハWを各液処理装置3、超臨界処理装置4内に順番に搬入して液処理及び超臨界乾燥を実行する液処理部14と、を前方からこの順番に接続した構造となっている。
【0018】
キャリア載置部11は、例えば4個のキャリアCを載置可能な載置台として構成され、載置台上に載置された各キャリアCを固定して、搬送部12に接続する役割を果たす。搬送部12は、各キャリアCとの接続面に設けられた開閉扉を開閉する不図示の開閉機構と、キャリアCからウエハWを取り出して受け渡し部13へと搬送するための搬送機構121とを共通の筐体内に設けた構造となっている。搬送機構121は例えば前後方向に進退自在、左右方向に移動自在、及び回動、昇降自在に構成された搬送アーム及びその駆動部から構成されており、搬送部12と受け渡し部13とを区画する区画壁に設けられた第1の開口部122を介して、ウエハWを受け渡し部13に搬入出する役割を果たす。
【0019】
受け渡し部13は、前後を搬送部12と液処理部14とに挟まれた位置に設けられた筐体内の空間であり、例えば搬送部12側の既述の第1の開口部122と、液処理部14側の区画壁に設けられた第2の開口部132との間に、液処理前後のウエハWを載置するための受け渡し棚131が設けられている。受け渡し棚131は例えば8枚のウエハWを載置可能であり、受け渡し棚131は搬送部12側から搬入出されるウエハWと、液処理部14側から搬入出されるウエハWとを一時的に載置するバッファとしての役割を果たしている。
【0020】
液処理部14は受け渡し部13の後段に接続された筐体内に、ウエハWに対する液処理を実行する液処理装置3及びこの液処理にてウエハWに付着した処理液を除去する超臨界処理装置4を備えている。液処理部14内には、受け渡し部13との区画壁に設けられた既述の第2の開口部132から前後方向に伸びるウエハWの搬送路141が設けられており、例えば第2の開口部132から見て左側には例えば6台の液処理装置3が搬送路141沿って列設されており、右側には例えば同じく6台の超臨界処理装置4が液処理装置3に対向するように列設されている。
【0021】
搬送路141内には、搬送路141に沿って移動可能、搬送路141の左右に設けられた各液処理装置3、超臨界処理装置4に向けて進退可能、そして回動、昇降可能に構成された本実施の形態に係るウエハ搬送装置2が設けられており、既述の受け渡し棚131と各液処理装置3、超臨界処理装置4との間でウエハWを搬送することができる。本実施の形態に係るウエハ搬送装置2はウエハWのパターン倒れの発生を抑えるために、液体に接した状態のままで液処理装置3から超臨界処理装置4へとウエハWを搬送する機能を備えているが、その詳細な構成については後述する。ここで図1には1組のウエハ搬送装置2を設けた例を示したが、設けられている液処理装置3や超臨界処理装置4の台数に応じて液処理部14は2組以上のウエハ搬送装置2を備えていてもよい。
【0022】
図2に示すように、液処理装置3は、ウエハWに対する液処理、リンス洗浄の各処理が実行される密閉された処理空間を形成するアウターチャンバー31と、このアウターチャンバー31内に設けられ、ウエハWをほぼ水平に保持した状態で回転させるウエハ保持部33と、ウエハ保持部33に保持されたウエハWの上面側に薬液及びリンス液を供給するノズル並びに後述のHFEを供給するノズルを備えたノズルアーム34と、ウエハ保持部33を取り囲むようにアウターチャンバー31内に設けられ、回転するウエハWから周囲に飛散した薬液を受けるためのインナーカップ32とを備えている。液処理装置3はウエハ搬送装置2との間でウエハWの受け渡しを行う本実施の形態における第1の処理装置に相当する。
【0023】
アウターチャンバー31は、図1に示すように互いに隣り合う他の液処理装置3とは区画された筐体内に設けられており、不図示のウエハ搬入口を介してウエハ搬送装置2によりウエハWが搬入出される。図中、311はアウターチャンバー31の底部に溜まる薬液などを排出する排液口であり、312はアウターチャンバー31内の排気を行う排気口である。
【0024】
ウエハ保持部33は、水平保持されたウエハWの下面に対向するように設けられたアンダープレート331をその上端部に備えた円筒形状の部材である。ウエハ保持部33は、内部に設けられた薬液供給路361を介して回転するウエハWの下面に、ウエハW表面のパーティクルや有機性の汚染物質を除去するためのアルカリ性の薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)、ウエハW表面の自然酸化膜を除去する酸性薬液である希フッ酸水溶液(以下、DHF(Diluted HydroFluoric acid)液という)及びこれらの薬液をリンス洗浄するための純水を供給することができるようになっている。
【0025】
上述の薬液供給路361は、詳細にはウエハ保持部33内に設けられたリフター36内に形成されている。リフター36の上端部には、ウエハ搬送装置2との間でウエハWの受け渡しを行うための、例えば円板形状に形成されたウエハ保持部362が設けられており、薬液供給路361は例えばこのウエハ保持部362の上面側中央部に開口している。薬液供給路361の下端側は昇降機構363に接続されており、ウエハ保持部362はこの昇降機構363によってアンダープレート331の上面から突没自在に構成されている。ウエハ保持部362は、突出時にはウエハ搬送装置2とのウエハWの受け渡し位置まで上昇し、また没入時にはウエハ保持部362の上面がアンダープレート331の上面と面一となる。リフター36及びウエハ保持部362は本実施の形態における昇降部材に相当している。
【0026】
ノズルアーム34は、先端部に薬液供給用のノズルを備えており、このノズルからは既述のSC1液、DHF液、及びこれらの薬液をリンス洗浄するための純水をウエハWの上面に供給することができる。ノズルアーム34は、ウエハ保持部33に保持されたウエハW中央側の上方位置と、アウターチャンバー31の外部に設けられた待機位置との間で、不図示の駆動機構により移動自在に構成されている。
【0027】
インナーカップ32は、ウエハ保持部33に保持されたウエハWを取り囲む処理位置と、この処理位置の下方へ退避した退避位置との間を昇降することができるようになっている。インナーカップ32の底部には、ウエハWの周囲に飛び散り、処理位置にて受け止めた薬液を排出するための排液口321が設けられている。
【0028】
次に図3を参照しながら超臨界処理装置4の構成について説明する。超臨界処理装置4は、ウエハWに対する超臨界乾燥が行われる処理容器41並びにその底板42と、この処理容器41内にウエハWを格納する機構と、処理容器41に処理液を供給して超臨界状態とするための機構とを備えている。超臨界処理装置4はウエハ搬送装置2との間でウエハWの受け渡しを行う本実施の形態における第2の処理装置に相当する。
【0029】
処理容器41は、ウエハWを格納すると共にウエハWに対する超臨界乾燥が行われる処理空間40を成す凹部が下面側に形成された例えば扁平な円盤形状の耐圧容器であり、例えばステンレススチールなどから構成される。処理容器41の下面側に設けられた凹部は、後述するウエハWの載置台421と嵌合して例えば直径300mmのウエハWを格納する処理空間40を構成する。
【0030】
処理容器41には、処理空間40の側面に向かって開口する3つの流路411、412、413が形成されている。411は処理空間40内に処理流体であるハイドロフルオロエーテル(沸点が例えば70℃程度。以下、HFEと記す)を液体の状態で供給するHFE供給路、412は処理空間40からHFEを排出するHFE排出路、413は処理空間40からの排気を行うための排気路であり、この排気路413は処理空間40からのHFEの排出時には当該排気路413から処理容器41の外部の雰囲気を取り込んで処理空間40内をパージする役割も有している。
【0031】
処理容器41は梁状の押さえ部材481を介して筐体48の上面に固定されており、高圧となる処理空間40内の超臨界流体から受ける力に抗して処理容器41を下方側に向けて押さえつけることができる。
【0032】
底板42は処理容器41の凹部を底面側から塞いで、処理空間40を形成すると共に、ウエハWを保持する役割を果たす。底板42は、例えばステンレススチールなどから構成され、処理容器41の凹部の開口面よりも例えばひとまわり大きな円板状の部材として形成されている。底板42の上面には処理容器41の凹部内に嵌合可能な円板状に形成された例えばステンレススチール製の載置台421が固定されている。載置台421の上面にはウエハ載置領域424をなす凹部が形成されている。
【0033】
また底板42は、支持棒451とその駆動機構452とからなる底板昇降機構45によって昇降自在に構成されており、ウエハ搬送装置2との間でウエハWの受け渡しを行う下方側の受け渡し位置と、処理容器41の凹部を塞いで処理空間40を形成し、ウエハWに対して超臨界乾燥を行う処理位置との間を移動することができる。図中、44は昇降時に底板42の昇降軌道をガイドするガイド部材であり、ガイド部材44は底板42の周方向に沿って例えば3箇所にほぼ等間隔で配置されている。
【0034】
ここで超臨界乾燥を実行中の処理空間40内の圧力は、例えば絶対圧で3MPaもの高圧となり、底板42には下向きの大きな力が働くため、底板42の下方には底板42の底面を支持する支持機構43が設けられている。支持機構43は、底板42の底面を支持して処理容器41側へ抑えつけると共に、底板42の昇降動作に合わせて昇降する支持部材431と、この支持部材431の昇降軌道をなすガイド部材432と、例えば油圧ポンプなどから構成される駆動機構433とから構成される。支持機構43は、既述のガイド部材44と同様に、底板42の周方向に沿って例えば3箇所にほぼ等間隔で配置されている。
【0035】
底板42の中央部には、ウエハ搬送装置2との間でウエハWの受け渡しをするためのリフター461が設けられている。リフター461は底板42及び載置台421のほぼ中央を上下方向に貫通し、その上端部にはウエハWをほぼ水平に保持するための例えば円板状に形成されたウエハ保持部463が固定されていると共に、下端部には駆動機構462が設けられている。載置台421の上面には、上述のウエハ保持部463を格納する凹部が設けられており、底板42とは独立してリフター461を昇降させることにより、この底板42からウエハ保持部463を突没させて、ウエハ搬送装置2とウエハ載置領域424との間でウエハWを受け渡すことができる。底板42の凹部内に格納されたとき、ウエハ保持部463の上面はウエハ載置領域424である載置台421の上面と面一となる。リフター461及びウエハ保持部463は本実施の形態における昇降部材に相当している。
【0036】
さらに底板42の内部には、処理空間40内に供給された処理流体であるHFEを例えば300℃に昇温すると共に、この流体の膨張を利用して処理空間40内を例えば既述の3MPaに昇圧し処理流体を超臨界状態とするための例えば抵抗発熱体からなるヒーター423が埋設されている。ヒーター423は不図示の電源部に接続されており、この電源部から供給される電力により発熱して載置台421及びその上面に載置されたウエハWを介して処理空間40内の処理流体を加熱することができる。
【0037】
以上に説明した液処理装置3にて液処理を行ったウエハWに対して超臨界処理装置4にて超臨界乾燥を実行するにあたり、本実施の形態に係るウエハ搬送装置2は自然乾燥によるパターン倒れの発生を防止するため、液体に接した状態のままで(濡れた状態のままで)ウエハWを液処理装置3から超臨界処理装置4へと搬送する機能を備えている。以下、図1、図4〜図9を参照しながらウエハ搬送装置2の詳細な構成について説明する。
【0038】
図1に示すようにウエハ搬送装置2は液処理部14の搬送路141内に設けられており、当該搬送路141に設けられた走行レール201を前後方向に進退自在に構成されている。また図4、図5に示すように、本実施の形態に係るウエハ搬送装置2は、液体の付着していない状態のウエハWを保持する第1の搬送アーム21と、ウエハWに液体が付着した状態で保持する第2の搬送アーム5との例えば2つの搬送アーム21、5を備えている。
【0039】
第1の搬送アーム21及び第2の搬送アーム5は、その基端側に設けられたアーム支持部材221、222を、基台23の両側面に長手方向に設けられた案内溝231に沿ってスライドさせることにより、各々独立して水平方向に移動できる。なお、第2の搬送アーム5をスライドさせるための案内溝231は、図4に向かって紙面の反対側に位置する基台23の側面に設けられている。アーム支持部材221、222を案内溝231の先端まで移動させた位置が、各処理装置3、4との間でウエハWの受け渡しを行うための受け渡し位置に相当し、同じく案内溝231の後端まで後退させた位置が、搬送時にウエハWを保持する搬送位置に相当している。基台23やその内部の駆動機構、並びにアーム支持部材222は本発明の移動機構に相当する。このように本例ではウエハ搬送装置2は2つの搬送アーム21、5を備えた構成としているが、例えば液体が付着した状態でウエハWを保持可能な搬送アーム5を1つだけ備えたウエハ搬送装置2として構成してもよい。
【0040】
図4、図5は両搬送アーム21、5を搬送位置まで後退させた状態を示しており、この状態においては、各搬送アーム21、5は上下方向に互いに重なり合うように配置されている。
【0041】
また図4に示すように基台23は駆動機構24を介して走行レール201上に設けられており、駆動機構24は鉛直軸まわりに回転、昇降可能に構成されると共に既述の走行レール201を走行可能となっている。この結果、ウエハ搬送装置2は鉛直軸周りに回転自在、且つ昇降自在、並びに走行レール201に沿って進退自在となっている。
【0042】
図1、図5に示すように第1の搬送アーム21は、ウエハWの裏面側周縁領域を支持する、例えばほぼ円環形状の薄板であり、その基端側からは当該第1の搬送アーム21を支持する部材が伸び出して既述のアーム支持部材221に接続されている。一方、当該搬送アーム21の先端側は液処理装置3のリフター36や超臨界処理装置4のリフター461との交差が可能なように円環の一部を切り欠いた形状となっている。
【0043】
次に第2の搬送アーム5の詳細な構成について説明すると、図6に示すように第2の搬送アーム5は液処理後のウエハWが載置される搬送トレイ50と、この搬送トレイ50を支持する支持部材56と、液処理装置3や超臨界処理装置4のリフター36、461が搬送トレイ50と干渉せずにウエハWの受け渡しを行うために、これらリフター36、461を通り抜けさせるための空間を一時的に形成するための機構と、を備えている。
【0044】
搬送トレイ50は既述のアーム支持部材222から、第2の搬送アーム5のスライド方向に伸びる支持部材56の先端部に支持されたトレイ形状の部材であり、支持部材56の基端側から見て左右に分割された2つのトレイ部材51、52よりなる。各トレイ部材51、52はほぼ半円形状の底板511、521から構成されており、各底板511、521の外縁部には、円周に沿って側周壁512、522が形成されていて、側周壁512、522の高さは、後述する液溜め空間内に液を溜めたときに、ウエハW全体を液内に浸漬させることが可能な高さとなっている。そしてこれらトレイ部材51、52を切断面にて接合させることにより、既述のように例えば300mmのウエハWが載置可能であり、周囲に側周壁512、522が設けられた搬送トレイ50が形成される。
【0045】
搬送トレイ50の底板511、521中央領域には、ウエハWの受け渡し時に液処理装置3や超臨界処理装置4のリフター36、461やウエハ保持部362、463を通過させるための例えば円形に開口した開口部53が設けられている。また搬送トレイ50には、ウエハWを保持した状態のリフター36、461を当該開口部53から搬送トレイ50の外側へ向けて通り抜けさせるための通り抜け空間54を一時的に形成する機構が設けられている。以下、当該機構の詳細な構成について説明する。
【0046】
通り抜け空間54を形成する機構に関し、各トレイ部材51、52は固定部材651、652を介して支持部材56に固定されており、これら固定部材651、652は支持部材56内に設けられた機構によって、支持部材56の伸びる方向と直交する方向に水平にスライドすることができる。図7に示すように支持部材56の内部は空洞となっており、当該空洞内の先端部分には固定部材651、652を走行させるための走行レール61が設けられている。
【0047】
走行レール61は固定部材651、652の走行方向に沿って配置された例えば丸棒形状の部材であり、当該走行レール61の固定部材651、652が走行する領域には互いに逆向きの雄ネジが切ってある。そしてこれら逆ネジの切られた部位は、対応する雌ネジの切られた走行リング632、635に貫挿されており、これら各走行リング632、635には、上方に向けて伸びるように支持部材641、642が設けられている。既述の固定部材651、652はこれら支持部材641、642の先端部に固定されている。
【0048】
さらに支持部材56の内部には、走行レール61とほぼ平行となるように例えば丸棒状のガイドレール62が配置されており、このガイドレール62は2つのガイドリング633、636に貫挿されている。そして、図7に示すように一方側の走行リング632とガイドリング633とが連結部材631を介して接続され、また他方側の走行リング635とガイドリング636とが連結部材634を介して接続されており、走行レール61を回転させても走行リング632、635自体が回転してしまわないようになっている。走行レール61の一端にはモーター67が設けられていて、このモーター67によって走行レール61を回転させることにより、各走行リング632、635を走行レール61及びガイドレール62に沿って走行させることが可能となる。
【0049】
このとき走行リング632、635が走行する領域の走行レール61には既述のように互いに逆方向にネジが切ってあるので、走行レール61を所定の方向に回転させると、2つの走行リング632、635は互いに近づく方向に走行し、これとは反対の方向に走行レール61を回転させると2つの走行リング632、635は互いに離間する方向へと走行する。
【0050】
この結果、各走行リング632、635に接続された固定部材651、652は図8に示すように互いに近づく方向と離間する方向とに切り替えて走行することが可能となり、これら固定部材651、652に固定された各トレイ部材51、52についても固定部材651、652の動きにあわせてスライドする。かかる構成により搬送トレイ50は、例えば図5に示すように2つのトレイ部材51、52が互いに接合される位置と、図6に示すようにこれら2つのトレイ部材51、52の間に通り抜け空間54が形成される位置との間をスライドすることができる。本例では、支持部材56内の走行レール61や走行リング632、635、モーター67や固定部材651、652などは第2の搬送アーム5に通り抜け空間54を形成する空間形成部であり、且つ、トレイ部材51、52を移動させるトレイ部材移動部に相当している。
【0051】
以上に説明した構成を備えた第2の搬送アーム5において、ウエハWは図5に示したように2つのトレイ部材51、52を接合させた状態の搬送トレイ50上に保持される。搬送トレイ50には例えば図9(a)に示すようにその中央領域に凹部501が形成されており、ウエハWはこの凹部501内に載置される。なお図5、図6などにおいては凹部501の記載は省略した。
【0052】
ここで搬送トレイ50の中央領域に開口する開口部53は、ウエハWの直径よりも開口径が小さく、且つ、既述の凹部501内に開口しており、搬送トレイ50上にウエハWが載置された状態では開口部53はウエハWによって塞がれた状態となる。この結果、例えば図9(a)に示すように底板521、522及びこれら底板521、522に保持されたウエハWと側周壁512、522とで囲まれる空間(液溜め空間)内に液体、例えば超臨界乾燥処理にて用いられるHFEを溜めて、例えばこのHFEの液溜まり内に浸漬させた状態(ウエハWの上面に液体が接した状態)でウエハWを搬送することができる。
【0053】
ここで上面に液体が接した状態でのウエハWの搬送は、図9(a)に示したようにウエハWを液体内に浸漬する場合に限定されず、例えば図9(b)に示すようにウエハWの上面全体に液体を、いわゆる液盛りした状態で搬送する場合も含まれる。以下、本実施の形態では図9(a)の場合について説明する。
【0054】
さらに搬送トレイ50の例えば一方側のトレイ部材52には、例えば図6や図9(a)などに示すように、液溜め空間内のHFEを排出するための排液ライン55が設けられている。排液ライン55には開閉弁551が介設されており、この開閉弁551の開閉動作により、例えば超臨界処理装置4の筐体48内に設けられた後述の液受け部49に向けてHFEを排出することができる。
【0055】
ここで液処理システム1全体の作用を説明する前に、上述の構成を備えた第2の搬送アーム5の動作について、例えば超臨界処理装置4のリフター461との間でウエハWの受け渡し行う動作を例に挙げて、図10(a)〜図10(c)を参照しながら簡単に説明しておく。ウエハWの受け渡し時において、リフター461はウエハWの載置される載置台421の上面からウエハ保持部463を突出させた状態で待機しており、第2の搬送アーム5は搬送トレイ50にウエハWを保持した状態でウエハ保持部463の上方へ向かって水平方向に進入する(図10(a))。
【0056】
搬送トレイ50がウエハWの受け渡し位置に到達したら、リフター461を上昇させ、搬送トレイ50とリフター461とを上下方向に交差させて、(図10(b))開口部53内にウエハ保持部463を通過させ、搬送トレイ50からウエハ保持部463上にウエハWを受け渡す。
【0057】
ウエハWの受け渡しを終えたら、トレイ部材51、52を左右に移動させて通り抜け空間54を形成し、リフター461がこの通り抜け空間54を通り抜けるように搬送トレイ50を水平方向に後退させてウエハWの受け渡しを完了する(図10(c))。
【0058】
以上、第2の搬送アーム5から超臨界処理装置4のリフター461にウエハWを受け渡す際の動作について説明したが、液処理装置3のウエハ保持部362から第2の搬送アーム5へとウエハWを受け渡す場合には、上述の受け渡し動作とは反対に図10(c)→図10(b)→図10(a)の順番で第2の搬送アーム5及びリフター36を動作させる。なお後述するように、搬送トレイ50とリフター36とを上下方向に交差させる動作は、搬送トレイ50側を上昇させることにより行われる点が、上述の第2の搬送アーム5と超臨界処理装置4との間でのウエハWの受け渡し動作とは異なる。
【0059】
液処理システム1の構成の説明に戻ると、液処理システム1には、図1に示すように制御部7が接続されている。制御部7は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には当該液処理処理システム1の作用、つまり、各液処理装置3や超臨界処理装置4内にウエハWを順番に搬入し、液処理装置3にて液処理を施してから、超臨界処理装置4にて超臨界乾燥を行い、搬出するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0060】
以上の構成を備えた本実施の形態に係る液処理システム1の作用について説明する。液処理システム1が処理を開始すると、搬送機構121はキャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、受け渡し部13内の受け渡し棚131に順次載置する。
【0061】
ウエハ搬送装置2は第1の搬送アーム21を用いて受け渡し棚131から処理対象のウエハWを取り出し、例えば図1に示した液処理装置3の一つに水平に進入する。このときリフター36はウエハ保持部33のアンダープレート331からウエハ保持部362を突出させた状態で待機しており、図11(a)に示すように液処理装置3内へ進入した第1の搬送アーム21はウエハ保持部362の上方に到達してから下降する。
【0062】
そして図11(b)に示すように第1の搬送アーム21からウエハ保持部362へとウエハWが受け渡されたら、第1の搬送アーム21は液処理装置3の外へ退避させ、次いでリフター36を下降させてウエハ保持部362をアンダープレート331の凹部内に格納することによりウエハWがウエハ保持部33に保持される(図11(c))。
【0063】
液処理装置3内へのウエハWの搬入を終えたらノズルアーム34をウエハW中央側の上方位置まで移動させ、インナーカップ32を処理位置まで上昇させて、ウエハ保持機構33により回転させながらウエハWの上面側及び下面側にSC1液を供給する。これによりウエハWの上下面に薬液の液膜が形成されてアルカリ性薬液洗浄が行われる。
【0064】
アルカリ性薬液洗浄が終了すると、インナーカップ32が退避位置に移動し、またノズルアーム34及びウエハ保持機構33の薬液供給路361へ純水を供給することによりウエハW表面のSC1液を除去するリンス洗浄が実行され、次いでウエハWへの純水の供給を停止する。
【0065】
リンス洗浄後、再びインナーカップ32を処理位置まで上昇させ、ウエハWを回転させながら、ノズルアーム34及び薬液供給路361より、ウエハWの上下面にDHF液を供給する。これによりこれらの面にDHF液の液膜が形成され、酸性薬液洗浄が行われる。そして所定時間の経過後、インナーカップ32を退避位置に下降させ、薬液の供給系統を純水に切り替えて再びリンス洗浄を行う。
【0066】
リンス洗浄の後、ノズルアーム34に設けられたHFE供給用のノズルから、ウエハ保持機構33に保持された基板の表面にHFEを供給して、ウエハW表面の液体をHFEにて置換し、液処理を終える。
【0067】
液処理を終えると、ウエハ搬送装置2は第1の搬送アーム21に代えて先端部に搬送トレイ50を備えた第2の搬送アーム5を液処理装置3内に進入させ、液処理後のウエハWの受け渡しを行う。ウエハWの受け渡しに際しては、液処理装置3はリフター36を上昇させて、HFEの液盛りされた状態のウエハWをウエハ保持部362上に保持した状態で待機している。第2の搬送アーム5は図6に示したように各トレイ部材51、52を移動させて通り抜け空間54を形成し、液処理装置3側のリフター36がこの通り抜け空間54内を通り抜けるように搬送トレイ50を水平方向に移動させて、図12(a)に示すように搬送トレイ50の開口部53がウエハ保持部362の下方に到達する位置まで進入する。
【0068】
所定の位置まで搬送トレイ50を進入させたら、図12(b)に示すようにリフター36を下降させてウエハWを搬送トレイ50の凹部501内に受け渡し、次いで例えばノズルアーム34の先端に設けられたHFE供給用の専用ノズルから搬送トレイ50に向けてHFEを供給する。この結果、搬送トレイ50内にHFEの液溜まりが形成され、この液溜まり内にウエハWが浸漬された状態となったら、図12(c)に示すように搬送トレイ50を後退させてウエハWを液処理装置3から搬出する。
【0069】
液処理装置3からウエハWを搬出したウエハ搬送装置2は、搬送路141内を走行し、図1に示した超臨界処理装置4の一つに水平に進入する。このときウエハWはHFEの液溜まり内に浸漬され、その上面側が液体と接した状態となっているので自然乾燥によるパターン倒れの発生しにくい状態で搬送が行われる。また搬送トレイ50を構成するトレイ部材51、52は互いに接合した状態となっており、開口部53はウエハWによって塞がれていると共に、搬送トレイ50には周囲に側周壁512、522が形成されているので搬送トレイ50上に溜まったHFEは搬送路141などに殆ど零れ落ちることがない。
【0070】
ウエハWの搬入時において、超臨界処理装置4は底板42及びリフター461を下降させて搬送トレイ50の進入経路と干渉しない位置まで退避させている。第2の搬送アーム5は超臨界処理装置4の搬入出口482を介して筐体48内に進入し、図13(a)に示すように筐体48内に設けられた液受け部49の上方に排液ライン55の下端部が到達した位置にて第2の搬送アーム5を停止させ、図9(a)に示した開閉弁551を開として搬送トレイ50内のHFEを排出する。このとき例えば搬送トレイ50を排液ライン55に向けて傾斜可能に構成し、HFEを排出しやすくしてもよい。なお図13、図14中、483は搬入出口482のシャッターである。
【0071】
図13(a)に示すようにHFEの排出は、ウエハWの側方に設けられた開閉弁551にて行われ、液溜め空間からのHFEの排出を終えた後もウエハWの上面にはHFEが液盛りされた状態で残ることになる。こうしてHFEの排出を終えたら搬送トレイ50をさらに進入させ、図13(b)に示すように搬送トレイ50の開口部53がウエハ保持部463の上方に到達した位置にて停止する。次いで図14(a)に示すようにリフター461を上昇させて、開口部53内にウエハ保持部463を通過させ、搬送トレイ50からウエハ保持部463にウエハWを受け渡した後、当該ウエハ保持部463を搬送トレイ50の移動経路と干渉しない位置までさらに上昇させる。
【0072】
そして、第2の搬送アーム5は図6に示したように各トレイ部材51、52を移動させて通り抜け空間54を形成し、超臨界処理装置4側のリフター461がこの通り抜け空間54内を通り抜けるように搬送トレイ50を水平方向に後退させて、超臨界処理装置4の筐体48内から第2の搬送アーム5を退出させる。
【0073】
次いで図14(b)に示すように超臨界処理装置4はガイド部材44にてガイドさせながら底板42を上昇させてリフター461のウエハ保持部463を載置台421の凹部内に格納し、ウエハWを載置台421上に載置すると共に、載置台421を処理容器41の開口部に嵌合させてウエハWを処理空間40内に格納する。このとき支持機構43の支持部材431は底板42の動作に合わせて上昇し、底板42の底面を支持固定する。なお、図示の便宜上、図13(a)、図13(b)及び図14(a)、図14(b)においては支持機構43とガイド部材44とを一組ずつ示してある。
【0074】
上述のように、搬送トレイ50にて搬送されるウエハWは処理空間40内に格納される直前までHFE内に浸漬された状態となっており、また搬送トレイ50内のHFEを排出して、ウエハWを処理空間40内への格納を終えた後も、ウエハWの表面にはHFEが液盛りされ、表面が濡れた状態となっているので、液体の自然乾燥に起因するパターン倒れの発生しにくい状態で超臨界処理装置4における超臨界乾燥を開始することができる。
【0075】
処理空間40内にウエハWが格納されてヒーター423の設けられた載置台421上に載置されると、HFE供給路411及び排気路413を開き、HFE供給路411から処理空間40内にHFEを供給すると共に処理空間40内の雰囲気を排気路413から排出して処理空間40内をHFEで置換する。処理空間40内に所定量、例えば処理空間40の容量の80%程度のHFEを供給したら、HFE供給路411、HFE排出路412並びに排気路413を閉止して処理空間40を密閉する。
【0076】
ヒーター423により、密閉した処理空間40内でHFEの加熱を継続することにより、HFEが昇温され、膨張して超臨界状態となる。そして所定時間が経過したら、HFE排出路412、排気路413を開いて処理空間40内を脱圧しながら処理空間40からHFEを排出する。このとき、HFEは超臨界状態のまま処理空間30から排出されるため、ウエハW表面のパターンには殆ど表面張力が働かず、パターン倒れを発生させずにHFEを排出し、ウエハW表面を乾燥状態とすることができる。
【0077】
HFEを排出し、処理空間内が脱圧されたら、今度は乾燥したウエハWを搬送する第1の搬送アーム21を超臨界処理装置4内に進入させて、搬入時とは逆の経路でウエハWを搬出する。超臨界処理装置4から取り出されたウエハWは第1の搬送アーム21に保持された状態で、ウエハ搬送装置2によって受け渡し棚131に搬送された後、搬送機構121により取り出されてキャリア載置部11のキャリアC内に格納される。これらの動作を連続的に行うことにより液処理システム1は各液処理装置3及び超臨界処理装置4にて並行して液処理及び超臨界乾燥を実行しながら複数枚のウエハWを洗浄、乾燥することができる。
【0078】
本実施の形態に係る液処理システム1によれば以下の効果がある。ウエハWを保持した搬送トレイ50にHFEを溜め、このHFEの液溜まりにウエハWを浸漬した状態(ウエハWの上面がHFEに接した状態)で当該ウエハWを搬送し、またウエハWの上面に液が乗った状態(液盛りされた状態)で超臨界乾燥を開始することができるので、簡単な構成の装置にてウエハWの表面に形成されたパターンのパターン倒れの発生を抑制することができる。また搬送トレイ50が第2の搬送アーム5と一体に構成されているので、例えば背景技術にて例示したウエハWの上下両面を覆って搬送するタイプの基板搬送装置と比較して装置構成や動作制御が簡素となる。そして、これら搬送トレイ50と第2の搬送アーム5とが一体に構成されていることにより、ウエハWの受け渡し後、直ちに搬送トレイ50への液体(本例ではHFE)の供給を行い、ウエハWを搬出し、直接、超臨界処理装置4へウエハWの搬入をすることができるので、搬送時間全体のスループットの向上に寄与できる。さらにまたこの搬送トレイ50のトレイ部材51、52にはウエハWの受け渡し相手である液処理装置3、超臨界処理装置4に設けられた昇降部材(リフター36、461、ウエハ保持部362、463)を通過させるための開口部53が設けられており、さらにこの搬送トレイ50にはウエハWの受け渡し時に、当該昇降部材を前記開口部53と搬送トレイ50の外側との間で通り抜けさせるための通り抜け空間54が一時的に形成されるので、昇降部材と干渉せずに搬送トレイ50を水平移動させることができる。
【0079】
上述の実施の形態においては、超臨界乾燥を行う際に用いられる流体と同種の流体であるHFEを搬送トレイ50に供給して液溜まりを形成し、この中にウエハWを浸漬した状態でウエハWを搬送する例を示したが、搬送トレイ50に供給する液体は超臨界処理装置4内で超臨界状態となる流体と同種の物質に限られない。当該流体と別種の液体、例えばIPAを供給して液溜まりを形成し、ウエハWの上面がこのIPAに接した状態でウエハWの搬送を行ってもよい。
【0080】
ここで開口部53と搬送トレイ50の外側との間を液処理装置3や超臨界処理装置4の昇降部材(リフター36、461、ウエハ保持部362、463)が通り抜けることができるようにするための通り抜け空間54を形成する手法は、図6〜図8を用いて説明したように各トレイ部材51、52を水平方向にスライドさせる場合に限定されない。例えば図15に示すように、扇が開くようにトレイ部材51、52を回動させることにより通り抜け空間54を形成してもよい。
【0081】
この場合のトレイ部材51、52の駆動機構について簡単に説明しておくと、図16〜図18に示すように、各トレイ部材51、52は例えば細長い板状の支持部材56の先端部に設けられた第1の作動片81、第2の作動片82の先端に取り付けられている。トレイ部材52を支える第1の作動片81は、図17に示すように基端側が屈曲したL字形状の部材として構成され、またトレイ部材51を支える第2の作動片82は基端側が第1の作動片81とは逆の方向に屈曲した逆L字形状の部材でとして構成されている。
【0082】
これら2つの作動片81、82は屈曲部分同士が重なるように上下に配置されると共に、各屈曲部分には共通の回転軸84が貫通されており、この回転軸84の下端は支持部材56の上面に固定されていて、各作動片81、82は回転軸84周りに回転することができる。
【0083】
支持部材56の上面には作動片81、82の後方側であって、且つ、支持部材56の幅方向中央位置に、第1の作動片81の上面と同じ高さの取り付け部材83がほぼ垂直方向に設設置されている。一方、図17、図18に示すように各作動片81、82の後端位置であって、各屈曲部の先端部には、前記取り付け部材83とほぼ同じ高さの突片811、821が支持部材56の上面に対してほぼ垂直となるように設けられている。第1の作動片81側の突片811と取り付け部材83との間、第2の作動片82側の突片821と取り付け部材83との間には、各々常時縮退方向に付勢された引張バネ813、823が設けられている。この結果、上下に重ねて配置された2つの作動片81、82は引張バネ813、823の復元力を受けて図16に示すように、各トレイ部材51、52が取り付けられている方向に伸びるL字形状、逆L字形状の部材の先端部が互いにほぼ平行となるように配置され、この結果、トレイ部材51、52が互いに接合して一体となり搬送トレイ50を形成する。
【0084】
一方、2つの作動片81、82の既述の先端部には、図16〜図18に示すように通電によって互いに反発する斥力が働く電磁石812、822が互いに対向するように設けられている。これら電磁石812、822を作動させることにより、引張バネ813、814の復元力に抗して斥力が働き、作動片81、82を回転軸84の周りに回転させてトレイ部材52、51を各々時計回り、反時計回りに回動させると通り抜け空間54が形成される。
【0085】
さらに他の実施の形態として、図19(a)、図19(b)に示すように、トレイ部材51、52を振り子状に左右に回動させ、通り抜け空間54を形成してもよい。この場合には、図19、図20に示すように互いに平行に伸びるクランク軸851、852の先端にトレイ部材51、52を固定し、これらクランク軸851、852をモーター861、862で回転させることにより、図21に示す如く各トレイ部材51、52の上方に位置する回転軸周りにトレイ部材51、52を振り子状に回転させて通り抜け空間54を形成してもよい。ここで図20に示した853はクランク軸851、852を支持するガイド部材であり、863はモーター861、862を固定するモーター固定部材である。
【0086】
また上述の各実施の形態では、搬送トレイ50を2つのトレイ部材51、52に分割してこれらトレイ部材51、52を互いに離間する方向に移動させることにより通り抜け空間54を形成しているが、通り抜け空間54を形成する手法は搬送トレイ50を2つの半円形状のトレイ部材51、52に分割する場合に限定されない。例えば図22(a)、図22(b)に示すように通り抜け空間54の形状に搬送トレイ50を切り欠いて切り欠き部材57を形成し、この切り欠き部材57が通り抜け空間54に勘合されて搬送トレイ50と一体となる位置(図22(a))と、切り欠き部材57を取り外して通り抜け空間54を形成する位置(図22(b))との間で切り欠き部材57を移動させてもよい。
【符号の説明】
【0087】
W ウエハ
1 液処理システム
2 ウエハ搬送装置
21 第1の搬送アーム
201 走行レール
3 液処理装置
36 リフター
331 アンダープレート
4 超臨界処理装置
5 第2の搬送アーム
50 搬送トレイ
51、52 トレイ部材
511、521
底板
512、522
側周壁
53 開口部
54 通り抜け空間
55 排液ライン
7 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上面側に液体が接した状態で基板を搬送し、基板の下面を支持する昇降部材との間で基板を受け渡す基板搬送装置において、
その上面に基板を保持する底板と、この底板における基板が保持される領域の周囲に設けられた側周壁と、を備えた搬送トレイと、
この搬送トレイの底面に形成され、前記昇降部材が通過するための開口部と、
前記搬送トレイを水平移動させる移動機構と、
前記搬送トレイを水平移動させたときに、前記昇降部材が前記開口部と搬送トレイの外側との間で通り抜けができるように一時的に空間を形成する空間形成部と、を備え、
基板搬送時には、前記底板及びこの底板に保持された基板と前記側周壁とで囲まれる液溜め空間内に前記液体を溜めることを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
前記搬送トレイは、前記開口部を挟んで2つに分割されたトレイ部材を含み、前記空間形成部は、これらトレイ部材を、互いに接合される位置と両トレイ部材の間に前記通り抜けのための空間が形成される位置との間で移動させるトレイ部材移動部を供えたことを特徴とする請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記液溜め空間内に溜めた液体に浸漬した状態で基板を搬送することを特徴とする請求項1または2に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記側周壁と前記基板が保持される領域との間の底板には、前記空間内の液体を排出するための、開閉弁を備えた排液ラインが設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の基板搬送装置。
【請求項5】
基板の表面に液体を供給して当該表面を洗浄する第1の処理装置である液処理装置と、
この液処理装置にて液体の付着した基板を密閉可能な処理容器内の載置台に載置し、前記液体が付着した基板に対して、超臨界状態の処理流体によって液体を除去する処理を行う第2の処理装置である超臨界処理装置と、
前記液処理装置と、前記超臨界処理装置との間で基板を搬送する請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板搬送装置と、を備えたことを特徴とする基板処理システム。
【請求項6】
前記液処理装置は、前記搬送トレイに保持された基板に、前記超臨界処理装置にて超臨界状態となる流体と同種の物質を液体の状態で供給し、前記基板搬送装置は、基板の上面側に液体である前記物質が接した状態で基板を搬送することを特徴とする請求項5に記載の基板処理システム。
【請求項7】
前記液処理装置は、前記搬送トレイに保持された基板に、前記超臨界処理装置にて超臨界状態となる流体とは別種の液体を供給し、前記基板搬送装置は、基板の上面側に前記別種の液体が接した状態で基板を搬送することを特徴とする請求項5に記載の基板処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−182817(P2010−182817A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24025(P2009−24025)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】