説明

基板洗浄装置および基板洗浄方法

【課題】基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去する基板洗浄装置および基板洗浄方法において、低い温度に保たれた冷却ガスを安定的に基板に供給することのできる技術を提供する。
【解決手段】スピンベース23上に保持され、表面に液膜を形成されて回転する基板Wに対し、冷却ガスを吐出する冷却ガス吐出ノズル3をスキャンすることにより液膜を凍結させてパーティクル等を除去する。冷却ガスを生成するガス冷却ユニット640を、冷却ガス吐出ノズル3を支持するアーム34の回転軸33に取り付け、アーム34とともに揺動するようにしている。このため、冷却ガス供給管648を短くすることができ、輸送中にガス温度が上昇するのが防止されて、低温のガスを安定して供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための基板洗浄装置および基板洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための処理の1つとして凍結洗浄技術が知られている。この技術では、基板表面に形成した液膜を凍結させ、この凍結膜を除去することにより基板表面からパーティクル等を凍結膜とともに除去している。例えば、特許文献1および2に記載の技術においては、基板表面に純水またはDIW(脱イオン水)による液膜を形成した後、基板に冷却媒体としての液体窒素または極低温の窒素ガスを走査移動するノズルから供給して液膜を凍結させ、さらに純水またはDIWを基板表面に供給して凍結膜とともにパーティクルを基板表面から除去している。
【0003】
また、冷却されたガスを処理チャンバに導入して所定の処理を行う技術としては、例えば特許文献3に記載されたものがある。この技術においては、単一の冷却系で生成した低温のガスを複数の洗浄室に振り分けながら供給している。
【0004】
【特許文献1】特開平11−031673号公報
【特許文献2】特開2008−071875号公報
【特許文献3】特開2003−059889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に記載された従来の凍結洗浄技術においては、基板を洗浄する処理チャンバの外部で極低温まで冷却した冷却ガスを生成し、これを装置内に導入するという構成を採っている。このような構成では次のような解決すべき課題が残されていた。まず、冷却設備から処理チャンバまでガス輸送管を通して冷却ガスが輸送される間にガスの温度が上昇してしまうため、十分に低い温度の冷却ガスを基板に供給することができない。特に、冷却ガスの供給が停止している間はガス輸送管内でガスの温度が上昇するため、基板への供給開始直後の冷却ガスの温度が高くなってしまう。
【0006】
また、特許文献3に記載のように、1つの冷却系から複数の処理チャンバへ冷却ガスを供給しようとすると、1つの処理チャンバへのガス供給の状態が他の処理チャンバへのガス供給に影響を与えてしまうため、ガス供給量が不安定になりやすい。さらに、供給すべきガスの量が多くなると冷却機構も大型化してしまい、冷却機構を設置するのに大きなフットプリントを要するという問題が生じる。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板表面に形成した液膜を凍結させることにより、基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去する基板洗浄装置および基板洗浄方法において、低い温度に保たれた冷却ガスを安定的に基板に供給することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる基板洗浄装置は、上記目的を達成するため、処理チャンバと、前記処理チャンバ内に設けられ表面に液膜を形成された基板を略水平に保持する基板保持手段と、前記処理チャンバ内に設けられ前記基板保持手段に保持された基板表面の液膜に対し該液膜を構成する液体の凝固点よりも低温の冷却ガスを供給する冷却ガス供給手段とを備え、前記冷却ガス供給手段は、前記処理チャンバ外から導入したガスを冷却して前記冷却ガスとして出力する冷却ユニットを有することを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかる基板洗浄方法は、上記目的を達成するため、表面に液膜を形成した基板を処理チャンバ内で略水平に保持する基板保持工程と、前記処理チャンバ内に設けた冷却ユニットにガスを導入し、前記液膜を構成する液体の凝固点よりも低温まで前記ガスを該冷却ユニットにより冷却して冷却ガスを生成するガス冷却工程と、前記冷却ガスを基板表面の液膜に供給する冷却ガス供給工程とを備えることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、処理チャンバ内で冷却ガスを生成し基板に供給する。そのため、冷却ユニットから出力されて基板表面に供給される冷却ガスの流路の長さを最小限にすることができ、流路上でのガス温度の上昇を最小限に抑えることができる。また、複数の処理チャンバ内で同時に処理を行う場合でも、各処理チャンバ内で冷却ガスを生成するので、各処理チャンバでは他のチャンバの処理状況に影響されることなく、安定的に冷却ガスを基板に供給することができる。また、冷却ユニットは当該処理チャンバ内で使用される冷却ガスの量に応じた冷却ガス生成能力を有していれば足りるので小型に構成することができ、処理チャンバ内に組み込んでも装置を大型化させることにはならない。
【0011】
上記のように構成された基板処理装置において、前記冷却ガス供給手段は、前記基板表面に向けて前記冷却ガスを吐出する冷却ガス吐出ノズルと、前記基板表面に対し前記冷却ガス吐出ノズルを走査移動させるノズル駆動機構とを備えるようにしてもよい。このような構成では、基板表面に対し冷却ガス吐出ノズルを走査移動させることにより、基板表面の液膜全体を凍結させることができる。また、冷却ガス吐出ノズルの吐出範囲が基板全面をカバーする必要がないので、冷却ガス吐出ノズルを小型に構成することができる。
【0012】
また、液膜を構成する液体を始めとして各種の処理液を用いる処理チャンバ内は高湿度環境となるため、冷却ガスを輸送する配管の周囲に結露や霜などの付着物を生じることがある。このような環境下で、上記のように基板表面近傍で冷却ガス吐出ノズルを移動させるとその付着物が基板上に落下し基板を汚染するおそれがある。しかしながら、冷却ユニットを処理チャンバ内に設けることで配管の可動部分を最少限にすることができるので、このような問題を生じる確率を低くすることができる。
【0013】
この場合において、前記ノズル駆動機構は、一方端を前記基板を通らない鉛直軸上で軸支され他方端に前記冷却ガス吐出ノズルを装着されたアームと、前記アームを前記鉛直軸周りに遥動駆動する駆動部とを備えており、前記冷却ユニットは、前記駆動部に取り付けられてもよい。このようにすると、基板上方には冷却ユニットや可動部分を配置しなくてもよいので、冷却ユニットの周囲に発生する結露や霜などの付着物が基板上に落下するのを防止することができる。特に、基板保持手段に保持された基板の表面を含む平面よりも下方に冷却ユニットを設けると、付着物が基板上に落下するのをより確実に防止することが可能である。
【0014】
さらに、前記駆動部は、前記鉛直軸周りに回転自在に構成され前記アームの他方端を支持する回転部材を有しており、前記冷却ユニットが前記回転部材に取り付けられて前記アームと一体的に回転するようにしてもよい。このような構成によれば、冷却ユニット、アームおよび冷却ガス吐出ノズルが一体的に揺動することとなり、冷却ユニットから冷却ガス吐出ノズルまでの間に可動性を要しない。そのため、結露や霜などの付着物が基板上に落下するのをより確実に防止することができる。
【0015】
また、前記ノズル駆動機構は、一方端を前記基板を通らない鉛直軸上で軸支され他方端に前記冷却ガス吐出ノズルを装着されたアームと、前記アームを前記鉛直軸周りに遥動駆動する駆動部とを備えており、前記冷却ユニットは、前記アームに取り付けられて該アームと一体的に揺動するように構成されてもよい。このようにしても、冷却ユニットから冷却ガス吐出ノズルまでの間に可動性を要しないため、結露や霜などの付着物が基板上に落下するのを確実に防止することができる。また、冷却ユニットと冷却ガス吐出ノズルとの距離を極めて短く、あるいはこれらを直結することでその距離をゼロとすることが可能であり、結露や霜などの発生自体を防止することも可能である。
【0016】
また、前記冷却ユニットは、ガス通送路を冷媒によって冷却することにより該ガス通送路を流れるガスを冷却する熱交換器と、該熱交換器を収容する断熱容器とを備えるようにしてもよい。このような構成では、ガス通送路を流れるガスを冷媒に触れさせることなく冷却することができる。このため、清浄な冷却ガスを基板に供給することができる。また、熱交換器を断熱容器内に収容することにより、熱交換器への結露や霜の付着を防止することができる。
【0017】
一方、上記のように構成された基板洗浄方法において、前記冷却ガス供給工程では、前記冷却ガスを吐出する冷却ガス吐出ノズルを前記基板表面に対し走査移動させるようにしてもよい。このような構成では、上記装置と同様に、基板表面に対し冷却ガス吐出ノズルを走査移動させることにより、基板表面の液膜全体を凍結させることができる。また、冷却ガス吐出ノズルの吐出範囲が基板全面をカバーする必要がないので、冷却ガス吐出ノズルを小型に構成することができる。
【0018】
さらに、前記冷却ガス供給工程によって前記基板表面の液膜を凍結させた後に、該凍結した液膜を除去する凍結膜除去工程を備えてもよい。基板表面に形成した液膜を凍結させ、次いでこの液膜を基板表面から除去することによって、基板表面からパーティクル等の付着物を遊離させ取り去ることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、処理チャンバ内で冷却ガスを生成し基板に供給するので、冷却ユニットから出力されて基板表面に供給される冷却ガスの流路の長さを最小限にすることができ、流路上でのガス温度の上昇を最小限に抑えることができる。また、複数の処理チャンバ内で同時に処理を行う場合でも、各処理チャンバ内で冷却ガスを生成するので、各処理チャンバでは他のチャンバの処理状況に影響されることなく、安定的に冷却ガスを基板に供給することができる。また、冷却ユニットは当該処理チャンバ内で使用される冷却ガスの量に応じた冷却ガス生成能力を有していれば足りるので小型に構成することができ、装置を大型化させることなく処理チャンバ内に組み込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1はこの発明にかかる基板洗浄装置の一実施形態を装備した基板処理システムを示す平面レイアウト図である。この基板処理システムは、半導体ウエハ等の基板Wに付着したパーティクルや各種金属不純物など(以下、「パーティクル等」という)の汚染物質を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理システムである。
【0021】
この基板処理システムは、基板処理部PSと、この基板処理部PSに結合されたインデクサ部IDとを備えている。インデクサ部IDは、複数枚の基板Wを収納したカセットC(複数の基板Wを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)から処理を行うべき基板Wを1枚ずつ搬出するとともに処理を終えた基板Wを再度カセットC内に搬入するためのインデクサロボット11を備えている。各カセットCは、複数枚の基板Wを微小な間隔をあけて上下方向に積層して保持するための複数段の棚(図示省略)を備えており、各段の棚に1枚ずつ基板Wを保持することができるようになっている。各段の棚は、基板Wの下面の周縁部に接触し、基板Wを下方から保持する構成となっており、基板Wはほぼ水平な姿勢でカセットCに収容されている。
【0022】
基板処理部PSは、平面視においてほぼ中央に配置された基板搬送ロボット12と、この基板搬送ロボット12が取付けられたフレーム100とを有している。また、このフレーム100には、基板搬送ロボット12を取り囲むように、複数個(この実施形態では4個)の基板洗浄装置10が設けられている。本発明にかかる基板洗浄装置の一実施形態であるこれらの基板洗浄装置10はいずれも同一構成を有しており、いわゆる凍結洗浄技術によりそれぞれ基板洗浄を行う。
【0023】
基板搬送ロボット12は、4個の基板洗浄装置10に対して基板Wを搬送することが可能となっている。また、基板搬送ロボット12はインデクサ部IDに配置されたインデクサロボット11から未処理の基板Wを受け取るとともに、インデクサロボット11に処理済の基板Wを受け渡すように動作する。このため、未処理の基板Wはインデクサロボット11および基板搬送ロボット12によって基板洗浄装置10のいずれかに搬入されて当該基板洗浄装置10による基板洗浄処理を受け、また洗浄処理済の基板Wは基板搬送ロボット12によって基板洗浄装置10から搬出された後にインデクサロボット11を介してカセットCに戻される。
【0024】
また、この基板処理システムは、後述するように4つの基板洗浄装置10それぞれでの基板洗浄処理に消費される液体窒素(LN2)および窒素(N2)ガスをそれぞれ供給する液体窒素供給ユニット110および窒素ガス供給ユニット120を備えている。この基板処理システムが設置される工場内にこれらに相当する設備が既存である場合には、それら既存の設備を利用してもよい。また、基板処理システムの内部にこれらのユニットを組み込んでももちろん構わない。
【0025】
図2は図1の基板処理システムにおける液体窒素および窒素ガスの供給態様を示す図である。図2に示すように、この基板処理システムでは、液体窒素供給ユニット110から延設された配管111が途中で分岐して4つの基板洗浄装置10に接続されており、液体窒素供給ユニット110から送り出される液体窒素が各基板洗浄装置10に供給される。同様に、窒素ガス供給ユニット120から延設された配管121が途中で分岐して4つの基板洗浄装置10に接続されており、窒素ガス供給ユニット120から送り出される窒素ガスが各基板洗浄装置10に供給されている。
【0026】
図3はこの発明にかかる基板洗浄装置の第1実施形態を示す図である。また、図4は図3の基板洗浄装置の制御構成を示すブロック図である。この装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfに付着しているパーティクル等の汚染物質を除去するための基板洗浄処理を実行可能な枚葉式の基板洗浄装置である。より具体的には、微細パターンが形成された基板表面Wfについて、その表面Wfに液膜を形成してそれを凍結させ、該凍結膜を除去することで凍結膜とともにパーティクル等を基板表面から除去する凍結洗浄処理を実行する基板洗浄装置である。凍結洗浄技術については上記特許文献1および2を始めとして多くの公知文献があるので、この明細書では詳しい説明を省略する。
【0027】
この基板洗浄装置10は、基板Wの表面Wfを上方に向けて略水平姿勢に保持した状態で、基板Wを回転させるためのスピンチャック2を有している。このスピンチャック2の中心軸21の上端部には、円板状のスピンベース23がネジなどの締結部品によって固定されている。この中心軸21はモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されている。そして、装置全体を制御する制御ユニット4からの動作指令に応じてチャック回転機構22が駆動されると、中心軸21に固定されたスピンベース23が回転中心A0を中心に回転する。
【0028】
また、スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。各チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。また、各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0029】
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、各チャックピン24を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、各チャックピン24を押圧状態とする。各チャックピン24を押圧状態とすると、各チャックピン24は基板Wの周縁部を把持して、基板Wがスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持されることとなる。これにより、基板Wは、その表面Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。
【0030】
また、上記のように構成されたスピンチャック2の上方には遮断部材9が配置されている。この遮断部材9は、中心部に開口を有する円板状に形成されている。また、遮断部材9の下面は、基板Wの表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。この遮断部材9は略円筒形状を有する支持軸91の下端部に略水平に取り付けられている。この支持軸91は、水平方向に延びるアーム92により、基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転可能に保持されている。また、アーム92には、遮断部材回転機構93と遮断部材昇降機構94とが接続されている。
【0031】
遮断部材回転機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、支持軸91を基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転させる。また、制御ユニット4は、遮断部材回転機構93の動作を制御して、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材9を回転させる。
【0032】
遮断部材昇降機構94は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、遮断部材9をスピンベース23に近接させたり、逆に離間させる。具体的には、制御ユニット4は、遮断部材昇降機構94の動作を制御して、基板処理装置に対して基板Wを搬入出させる際には遮断部材9をスピンチャック2の上方の離間位置(図3に示す位置)に上昇させる一方、基板Wに対して所定の処理を施す際には遮断部材9をスピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで下降させる。
【0033】
図5は遮断部材およびスピンベースの内部構造を示す図である。遮断部材9の支持軸91は中空になっており、その内部に、遮断部材9の下面(基板対向面)で開口するガス供給管95が挿通されている。このガス供給管95は乾燥ガス供給部65に接続されている。この乾燥ガス供給部65は、窒素ガス供給ユニット120から供給される窒素ガスを基板Wに供給するもので、適当なタイミングで遮断部材9と基板Wの表面Wfとの間に形成される空間に向けてガス供給管95から窒素ガスを供給する。なお、この実施形態では、乾燥ガス供給部65から乾燥ガスとして窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを供給するようにしてもよい。
【0034】
ガス供給管95の内部には、液体供給管96が挿通されている。この液体供給管96の下方端部は遮断部材9の下面で開口しており、その先端に液体吐出ノズル97が設けられている。一方、液体供給管96の他方端部は液体供給ユニット62に接続されている。この液体供給ユニット62は、凍結洗浄処理において基板表面Wfに液膜を構成する液体やリンス液を供給するものであり、本実施形態では液膜を構成する液体とリンス液としてDIW(脱イオン水:deionized water)を用いている。
【0035】
また、スピンチャック2の中心軸21は円筒状の空洞を有する中空になっており、中心軸21の内部には、基板Wの裏面Wbに液体を供給するための円筒状の液供給管25が挿通されている。液供給管25は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面側である裏面Wbに近接する位置まで延びており、その先端に基板Wの下面の中央部に向けて液体を吐出する液吐出ノズル27が設けられている。液供給管25は、上記した液体供給ユニット62に接続されており、基板Wの裏面Wbに向けてDIWをリンス液として供給する。
【0036】
また、中心軸21の内壁面と液供給管25の外壁面との隙間は、横断面リング状のガス供給路29になっている。このガス供給路29は乾燥ガス供給部65に接続されており、乾燥ガス供給部65からガス供給路29を介してスピンベース23と基板Wの裏面Wbとの間に形成される空間に窒素ガスが供給される。
【0037】
また、図3に示すように、この実施形態では、スピンチャック2の周囲に受け部材51が固定的に取り付けられている。この受け部材51には、円筒状の仕切り部材が3個立設されて3つの空間が排液槽として形成されている。また、これらの排液槽の上方にはスプラッシュガード52がスピンチャック2に水平姿勢で保持されている基板Wの周囲を包囲するようにスピンチャック2の回転軸に対して昇降自在に設けられている。このスプラッシュガード52は回転軸に対して略回転対称な形状を有している。そして、ガード昇降機構(図示省略)の駆動によりスプラッシュガード52を段階的に昇降させることで、回転する基板Wから飛散する液膜形成用DIW、リンス液やその他の用途のために基板Wに供給される処理液などを分別して図示を省略する排液処理ユニットへ排出することが可能となっている。
【0038】
この基板洗浄装置では、冷却ガス吐出ノズル3がスピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて液膜凍結用冷却ガスを吐出可能に設けられている。また、このノズル3を駆動するためにノズル駆動機構31が設けられている。このノズル駆動機構31では、回転モータ32がスピンチャック2の周方向外側かつスピンチャック2に保持される基板Wよりも下方に設けられている。この回転モータ32は、ベース部材35に回転自在に取り付けられた回転軸33に結合されており、回転軸33を回転中心軸J周りに回転させる。回転軸33にはアーム34が水平方向に延びるように接続され、さらに当該アーム34の先端に上記冷却ガス吐出ノズル3が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて回転モータ32が駆動されると、アーム34が略鉛直方向の回転中心軸J回りに揺動し、冷却ガス吐出ノズル3が以下のように移動する。
【0039】
図6は冷却ガス吐出ノズルの動きを示す図である。制御ユニット4からの動作指令に基づき回転モータ32が駆動されてアーム34が回転中心軸J周りに揺動すると、冷却ガス吐出ノズル3は、スピンベース23の回転中心上に相当する回転中心位置Pcと基板Wの対向位置から側方に退避した待機位置Psとの間を移動軌跡Tに沿って水平移動する。すなわち、回転モータ32は、冷却ガス吐出ノズル3を基板Wの表面Wfに沿って基板Wに対して相対移動させる。
【0040】
冷却ガス吐出ノズル3は冷却ガス供給部64に接続されている。この冷却ガス供給部64は、制御ユニット4からの動作指令に応じて冷却ガスを冷却ガス吐出ノズル3に供給するものである。冷却ガス供給部64は、ノズル駆動機構31の回転軸33の側面に装着された冷却ガスユニット640を備えている。後に詳述するように、冷却ガスユニット640には窒素ガス供給ユニット120から送出される窒素ガスおよび液体窒素供給ユニット110から送出される液体窒素が導入されており、液体窒素によって冷却した窒素ガスを冷却ガスとして冷却ガス吐出ノズル3に送出する。また、ノズル駆動機構31は、冷却ガス吐出ノズル3が冷却ガスを吐出する際にアーム34を回転中心軸J周りに揺動させることにより、該ノズル3を基板表面Wfに対し走査移動させて基板表面Wf全体に冷却ガスを行き渡らせる。そして、表面Wfに液膜を形成され所定の回転速度で回転する基板Wに対し、冷却ガス吐出ノズル3が冷却ガスを吐出しながら基板表面Wfに対し走査移動することによって、基板表面Wfに形成された液膜全体を凍結させることができる。
【0041】
基板Wの表面Wfからの冷却ガス吐出ノズル3の高さは、冷却ガスの供給量によっても異なるが、例えば50mm以下、好ましくは数mm程度に設定される。このような基板Wの表面Wfからの冷却ガス吐出ノズル3の高さおよび冷却ガスの供給量は、(1)冷却ガスが有する冷熱を液膜に効率的に付与する観点、(2)冷却ガスにより液膜の液面が乱れることがないように液膜を安定して凍結する観点などから実験的に定められる。なお、ノズル駆動機構31の下部には例えばボールねじを用いたアーム昇降機構36が設けられており、アーム34および冷却ガス吐出ノズル3を一体的に昇降させることができる。これにより、冷却ガス吐出ノズル3の高さを調節することが可能である。
【0042】
冷却ガスは、基板Wの表面Wfに形成された液膜を構成する液体の凝固点、すなわちこの実施形態では0°Cより低い温度を有する。この冷却ガスは、以下に説明するように、冷却ユニット640内に貯留されている液体窒素内を通るパイプに窒素ガスを流すことにより生成され、この実施形態では例えば−100°Cに冷却されている。
【0043】
図7は冷却ユニットの内部構造を示す図である。冷却ユニット640の筐体は内部容器641とこれを覆う外部容器642との二重構造となっている。内部容器641は内部に液体窒素を貯留するタンク状となっており、液体窒素温度に耐えうる材料、例えば、ガラス、石英またはHDPE(高密度ポリエチレン)により形成されている。一方、外部容器642は処理チャンバ1内の雰囲気と内部容器641との間での熱移動を抑制する断熱容器であり、断熱性の高い材料、例えば発泡性樹脂やPVC(塩化ビニル樹脂)などにより形成される。
【0044】
内部容器641には、液体窒素を取り入れる液体窒素導入口643が設けられており、該導入口643と、処理チャンバ1の液面に設けられた液体窒素導入口101との間はフレキシブルパイプ644により接続されている。液体窒素導入口101には液体窒素供給ユニット110から液体窒素が供給されており、したがって、液体窒素供給ユニット110から送出される液体窒素はフレキシブルパイプ644から液体窒素導入口643を経て内部容器641内に導入される。
【0045】
内部容器641内には液面センサ645が設けられて、容器内の液体窒素の量を一定に保っている。さらに、内部容器641の上部にはガス抜き弁646が設けられており、気化する液体窒素によって内部容器641の内圧が上昇するのを抑えている。
【0046】
また、内部容器641の内部には、ステンレス、銅などの金属管で形成されたコイル状の熱交換パイプ647がガス通送路として設けられている。熱交換パイプ647は内部容器641に貯留された液体窒素に浸漬されており、その内部には窒素ガス供給ユニット120から窒素ガスが供給されている。これにより、窒素ガスが液体窒素により冷やされて冷却ガスとして出力される。すなわち、この実施形態では、液体窒素を貯留する内部容器641およびその内部に設けられた熱交換パイプ647が熱交換器を構成している。
【0047】
外部容器642はその内部に上記した熱交換器を収容して外部雰囲気との間での熱移動を抑制する断熱容器として機能している。また、外部容器642はアーム34と結合された回転軸33に取り付けられているため、回転モータ32により回転軸33が回転駆動されると、該回転軸33、冷却ガス吐出ノズル3、アーム34およびガス冷却ユニット640が一体的に回転中心軸J周りに揺動することとなる。
【0048】
冷却ユニット640から出力される冷却ガスは、アーム34に沿って延設されて冷却ユニット640と冷却ガス吐出ノズル3とを接続する冷却ガス供給管648を介して冷却ガス吐出ノズル3に供給される。冷却ガス供給管648は、内部に冷却ガスを通送する内管と断熱性樹脂により形成された外管との二重構造になっており、冷却ガス吐出ノズル3に到達する前に冷却ガスの温度が上昇するのを防止する。
【0049】
なお、この実施形態では冷却ガス吐出ノズル3、アーム34およびガス冷却ユニット640は一体的に揺動するように構成されており、冷却ガス吐出ノズル3とガス冷却ユニット640との相対的な位置関係が変化しないので、冷却ガス供給管648に可動性、可撓性は必要とされない。このようにすることで、次のような利点が得られる。
【0050】
処理チャンバ1内では各種の処理液が使用されるため、処理チャンバ1内は不可避的に高湿度環境となる。このような環境に冷却ガスを輸送する配管を設けたとき、その周囲には結露や霜等の付着物を生じることが予想される。そのため、基板Wの上方で配管を移動させると、これらの付着物が基板上に落下し基板を汚染してしまうおそれがある。特に、配管に可動性または可撓性を持たせた場合、配管に付着している霜等の付着物が配管の変形に起因して脱落する可能性が高い。また、低温のため配管が硬化しアーム34の動きを制約することも考えられる。
【0051】
これに対し、本実施形態のように、冷却ガス吐出ノズル3、ガス冷却ユニット640およびこれらの間を接続する冷却ガス供給管648が一体的に動くように構成することで、冷却ガス供給管648の変形による霜等の落下を抑えることができる。また、冷却ガス供給管648に可動性を持たせる必要がないことから、冷却ガス供給管648を構成する部品の材質および形状の設計自由度が高くなり、冷却ガス供給管648自体を断熱性の高い構造とすることができる。こうすることにより、冷却ガス供給管648への霜等の付着自体を抑制することが可能となる。
【0052】
なお、処理チャンバ外部からガス冷却ユニット640へ液体窒素を引き込む部位にはフレキシブルパイプ644が用いられているが、処理液の供給箇所からは離れているので結露や着霜は発生しにくく、また仮にこれらが発生したとしても、基板W上部空間から側方へ退避した位置であるので付着物が脱落しても基板W上に落下するおそれはない。また、窒素ガス供給ユニット120からガス冷却ユニット640に窒素ガスを引き込むための配管については、ガス温度が高く結露、着霜のおそれがないので、公知の樹脂製チューブ等を用いることができる。
【0053】
次に、上記のように構成された基板洗浄装置における基板洗浄処理について、図8を参照しながら説明する。図8はこの実施形態の基板洗浄処理を示すフローチャートである。この装置では、未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット4が装置各部を制御して該基板Wに対して一連の洗浄処理が実行される。ここで、基板がその表面Wfに微細パターンを形成されたものである場合、該基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが処理チャンバー1内に搬入され、スピンチャック2に保持される(ステップS101;基板保持工程)。なお、遮断部材9は離間位置にあり、基板Wとの干渉を防止している。
【0054】
スピンチャック2に未処理の基板Wが保持されると、遮断部材9が対向位置まで降下され、基板表面Wfに近接配置される(ステップS102)。これにより、基板表面Wfが遮断部材9の基板対向面に近接した状態で覆われ、基板Wの周辺雰囲気から遮断される。続いて液膜形成処理を実行する(ステップS103)。すなわち、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させるとともに、ノズル97から常温のDIWを基板表面Wfに供給する。基板表面に供給されたDIWには、基板Wの回転に伴う遠心力が作用し、基板Wの径方向外向きに均一に広げられ、その一部が基板外に振り切られる。これによって、基板表面Wfの全面にわたって液膜の厚みを均一にコントロールして、基板表面Wfの全体に所定の厚みを有する液膜(水膜)が形成される。なお、液膜形成に際して、上記のように基板表面Wfに供給されたDIWの一部を振り切ることは必須の要件ではない。例えば、基板Wの回転を停止させた状態あるいは基板Wを比較的低速で回転させた状態で基板WからDIWを振り切ることなく基板表面Wfに液膜を形成してもよい。
【0055】
そして、遮断部材9を上方に退避させ(ステップS104)、代わって冷却ガス吐出ノズル3を基板Wの回転中心AO上方の回転中心位置Pc(図6)へ移動させる(ステップS105)。続いて液膜凍結処理を実行する(ステップS106)。すなわち、ガス冷却ユニット640に窒素ガスを送り込んで冷却ガスを生成するとともに(ガス冷却工程)、液膜を形成された基板Wを回転させながら、冷却ガスを吐出する冷却ガス吐出ノズル3を基板の回転中心AOから端部に向けて走査移動させる(冷却ガス供給工程)。これにより、基板表面Wf全面に冷却ガスを供給して液膜を凍結させる。基板の端部にまで到達した時点で冷却ガスの吐出を停止させる一方、冷却ガス吐出ノズル3をさらに外側へ移動させ、最終的に待機位置Psで停止させる。
【0056】
その後、遮断部材9を再び基板表面Wfに近接させる(ステップS107)。この状態で、基板の両面にリンス液としてのDIWを供給してリンス処理を行う(ステップS108)。これにより、基板表面Wfの凍結膜が除去され(凍結膜除去工程)、これとともに凍結膜に取り込まれたパーティクル等も基板表面Wfから取り去られる。
【0057】
続いて、基板を乾燥させる乾燥処理を行う(ステップS109)。すなわち、遮断部材9およびスピンベース23から基板両面に窒素ガスを供給しながら基板Wを高速度で回転させることにより、基板Wに残留するDIWを振り切り基板Wを乾燥させる。こうして乾燥処理が終了すると、処理済みの基板Wを搬出することによって1枚の基板に対する処理が完了する(ステップS110)。
【0058】
以上のように、この実施形態では、基板表面Wfに形成された液膜に冷却ガスを吐出することによって液膜を凍結させ、該凍結膜を除去することにより、基板表面Wfに付着するパーティクル等の汚染物質を除去している。そして、処理チャンバ1の内部にガス冷却ユニット640を設け、極低温の冷却ガスを処理チャンバ1内で生成するようにしている。そのため、冷却ガスの輸送経路を極めて短くすることができ、これにより、輸送経路上でのガス温度の上昇を抑えることができ、基板上の液膜に対し、十分に低温でしかも温度の安定した冷却ガスを供給することができる。
【0059】
また、ガス冷却ユニット640が処理チャンバ1内に設けられることにより、ガス冷却ユニット640は当該処理チャンバ1内で使用する冷却ガスのみを生成すればよい。そのため、ガス冷却ユニット640は小型のものでよく、処理チャンバ内でさほど場所を取らずにその内部に組み込むことができる。当然ながら、処理チャンバ外部に冷却設備を設ける必要はない。また、複数の基板洗浄装置10のそれぞれにガス冷却ユニット640を設けることにより、各基板洗浄装置10では他の装置での処理状況に影響されることなく、安定して冷却ガスを基板に供給することができる。
【0060】
また、ガス冷却ユニット640を基板Wの上部空間よりも外側の側方に配置しているので、ガス冷却ユニット640の周囲に付着した水滴や霜などの付着物が脱落しても基板W上に落下することが防止されている。また、アーム34の回転中心軸Jが基板Wを通らないようにすることで、アーム34の揺動に起因して可動部分から発生するゴミ等が基板W上に落下することが防止されている。
【0061】
また、ガス冷却ユニット640をノズル駆動機構31の回転軸33に取り付けアーム34および冷却ガス吐出ノズル3と一体的に揺動するようにしているので、冷却ガス吐出ノズル3とガス冷却ユニット640とを接続する冷却ガス供給管648に可動性を持たせる必要がなく、管に付着した水滴や霜が管の変形に起因して脱落し基板W上に落下することが防止される。
【0062】
次に、この発明にかかる基板洗浄装置の第2実施形態について説明する。上記した第1実施形態の装置では、ガス冷却ユニット640が揺動するアーム34の回転軸33に取り付けられていた。これに対し、以下に説明する第2実施形態の装置では、アーム34上にガス冷却ユニットが取り付けられて、アーム34と一体的に揺動するように構成されている。この点を除く各部の構成や動作は上記した第1実施形態のものと同一であるので、ここでは同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
図9はこの発明にかかる基板洗浄装置の第2実施形態を示す図である。この実施形態では、回転中心軸J周りに揺動するアーム34の上部にガス冷却ユニット740が取り付けられている。ガス冷却ユニット740の内部構造は、基本的に上記した第1実施形態のもの(図7)と同一であり、単にその形状が異なっているのみであるので説明を省略する。ガス冷却ユニット740の一方端面740aは冷却ガスノズル703の直近位置まで延設されており、冷却ガスノズル703が極めて短い冷却ガス供給管748を介してガス冷却ユニット740に接続されている。
【0064】
一方、ガス冷却ユニット740の他方端面740bは、図9に破線で示す基板Wの外周位置よりも外側にまで延びている。そして、ガス冷却ユニット740内に液体窒素を導入するための配管744が取り付けられている。こうすることで、配管744が基板W上を通るのを回避することができる。そのため、配管744に付着した水滴や霜が基板W上に落下することが防止される。
【0065】
このような構成によれば、冷却ガスノズル703とガス冷却ユニット740とが近接配置されているため、これらを接続する冷却ガス供給管748を極めて短くすることが可能である。さらには、ガス冷却ユニット740の一方端面740aをノズル直上まで延長して冷却ガスノズル703を直接取り付けるようにしてもよい。こうすれば、冷却ガス供給管への結露や着霜の問題が原理的に発生しない。なお、ガス冷却ユニット740については、熱交換器を断熱容器に収容して結露や着霜を防止することが比較的容易である。
【0066】
なお、ノズル直近位置で吐出ガスの温度調整を行う公知技術としては、例えば特開平8−037261号公報、特開2008−071875号公報に記載されたものがある。しかしながら、これらの技術は高温の冷却対象物を常温に近づけるべく冷却するものであって、本実施形態のように高湿度環境下で極低温の冷却ガスを生成する技術とは、技術分野も解決すべき課題も全く異なるものである。
【0067】
図10はこの発明にかかる基板洗浄装置の第3および第4実施形態を示す図である。これらの実施形態においても、ガス冷却ユニットの配置およびこれに伴う冷却ガス吐出ノズルの形状が第1実施形態とは異なるものの、その他の点については第1実施形態のものと同一であるので説明を省略する。
【0068】
図10(a)に示す第3実施形態の装置では、アーム34の下部にガス冷却ユニット840を設けている。この構成による作用効果は上記した第2実施形態と同じである。この場合においても、ガス冷却ユニット840の一方端面840aを冷却ガスノズル803の直近位置に設けて冷却ガスノズル803を直接接続することができる。ガス冷却ユニット840をアーム34の下部に設けた場合、落下した水滴や霜は基板Wに直接落下することになるが、冷却ガス供給管を設けないことにより結露や着霜が生じないので、そのような問題が発生しない。また、この場合においても、ノズルを取り付けられた端面840aとは反対側の他方端面840bが基板の外周位置よりも外側となるようにすることで、液体窒素を通送する配管844から基板Wへの水滴や霜の落下を防止することができる。
【0069】
また、図10(b)に示す第4実施形態の装置では、冷却ガス吐出ノズル903の直上位置にガス冷却ユニット940を設け、アーム34の上部に液体窒素を通送する配管944を設けている。こうすることによっても、ガス冷却ユニット940と冷却ガス吐出ノズル903とを直結することが可能となる。この場合、液体窒素を通送する配管944が長くなり、また基板Wの上部を通過することになる。この問題に対しては、断熱効果の高い材質、例えばフッ素樹脂(一例として、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体))による樹脂チューブを用い、さらにチューブの厚みを厚くすればより高い断熱効果を得ることができる。また、配管944はアーム34の揺動に応じて動く必要があるが、例えばアーム34上に固定部材349を設けて基板外周位置よりも外側で配管944を固定するようにすれば、基板W上で配管944が変形するのを防止し、水滴や霜の基板上への落下を抑制することができる。
【0070】
以上説明したように、これらの実施形態においては、スピンチャック2が本発明の「基板保持手段」として機能している。また、冷却ガス吐出ノズル3、ガス冷却ユニット640、ノズル駆動機構31等が一体として本発明の「冷却ガス供給手段」として機能している。また、これらの実施形態では、回転モータ32および回転軸33が一体として本発明の「駆動部」として機能する一方、回転軸33は本発明の「回転部材」としても機能している。
【0071】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、本発明の液膜を形成する液体としてDIWを用いているが、これに限られず、例えば純水、炭酸水、水素水、脱気水、溶存酸素や溶存窒素などの溶存気体成分を調整した純水、SC1溶液(アンモニア水と過酸化水素水との混合水溶液)等の薬液などを用いてもよい。
【0072】
また、上記各実施形態では、ガス冷却ユニットの水平方向の設置位置が基板表面Wfよりも上方となっているが、設置スペースに制約がなければ、基板表面Wfよりも下方に設けられることがより好ましい。こうすることで、ガス冷却ユニットやそれに付随する配管等から落下した水滴や霜が基板上に落下することがより確実に防止される。
【0073】
また、上記各実施形態では、冷却ガス源として窒素ガスを、また冷媒として液体窒素を用いる熱交換器によって窒素ガスを冷却することにより冷却ガスを生成しているが、冷却ガスのガス種およびその冷却方法はこれに限定されるものではない。例えば、アルゴンガスなど他の不活性ガスや清浄な乾燥空気を冷却ガスとして用いてもよい。また、ガス冷却ユニットとしては、他の冷媒を用いる熱交換器を有するものやペルチェ効果など他の原理に基づきガスを冷却するものであっても、必要な温度までガスを冷却することが可能なものであれば利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般の表面に形成された液膜を凍結させてパーティクル等の除去を行う基板洗浄装置および基板洗浄方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明にかかる基板洗浄装置の一実施形態を装備した基板処理システムを示す平面レイアウト図である。
【図2】図1の基板処理システムにおける液体窒素および窒素ガスの供給態様を示す図である。
【図3】この発明にかかる基板洗浄装置の第1実施形態を示す図である。
【図4】図3の基板洗浄装置の制御構成を示すブロック図である。
【図5】遮断部材およびスピンベースの内部構造を示す図である。
【図6】冷却ガス吐出ノズルの動きを示す図である。
【図7】冷却ユニットの内部構造を示す図である。
【図8】この実施形態の基板洗浄処理を示すフローチャートである。
【図9】この発明にかかる基板洗浄装置の第2実施形態を示す図である。
【図10】この発明にかかる基板洗浄装置の第3および第4実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
2…スピンチャック(基板保持手段)
3,703,803,903…冷却ガス吐出ノズル
4…制御ユニット
9…遮断部材
31…ノズル駆動機構
32…回転モータ(駆動部)
33…回転軸(回転部材)
34…アーム
640,740,840,940…ガス冷却ユニット(冷却ユニット)
W…基板
Wf…基板表面(パターン形成面)
Wb…基板裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内に設けられ、表面に液膜を形成された基板を略水平に保持する基板保持手段と、
前記処理チャンバ内に設けられ、前記基板保持手段に保持された基板表面の液膜に対し、該液膜を構成する液体の凝固点よりも低温の冷却ガスを供給する冷却ガス供給手段と
を備え、
前記冷却ガス供給手段は、前記処理チャンバ外から導入したガスを冷却して前記冷却ガスとして出力する冷却ユニットを有することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
前記冷却ガス供給手段は、前記基板表面に向けて前記冷却ガスを吐出する冷却ガス吐出ノズルと、前記基板表面に対し前記冷却ガス吐出ノズルを走査移動させるノズル駆動機構とを備える請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記ノズル駆動機構は、一方端を前記基板を通らない鉛直軸上で軸支され他方端に前記冷却ガス吐出ノズルを装着されたアームと、前記アームを前記鉛直軸周りに遥動駆動する駆動部とを備えており、前記冷却ユニットは、前記駆動部に取り付けられている請求項2に記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記鉛直軸周りに回転自在に構成され前記アームの他方端を支持する回転部材を有しており、前記冷却ユニットが前記回転部材に取り付けられて前記アームと一体的に回転する請求項3に記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記ノズル駆動機構は、一方端を前記基板を通らない鉛直軸上で軸支され他方端に前記冷却ガス吐出ノズルを装着されたアームと、前記アームを前記鉛直軸周りに遥動駆動する駆動部とを備えており、前記冷却ユニットは、前記アームに取り付けられて該アームと一体的に揺動する請求項2に記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記冷却ユニットは、ガス通送路を冷媒によって冷却することにより該ガス通送路を流れるガスを冷却する熱交換器と、該熱交換器を収容する断熱容器とを備える請求項1ないし5のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
表面に液膜を形成した基板を処理チャンバ内で略水平に保持する基板保持工程と、
前記処理チャンバ内に設けた冷却ユニットにガスを導入し、前記液膜を構成する液体の凝固点よりも低温まで前記ガスを該冷却ユニットにより冷却して冷却ガスを生成するガス冷却工程と、
前記冷却ガスを基板表面の液膜に供給する冷却ガス供給工程と
を備えることを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項8】
前記冷却ガス供給工程では、前記冷却ガスを吐出する冷却ガス吐出ノズルを前記基板表面に対し走査移動させる請求項7に記載の基板洗浄方法。
【請求項9】
前記冷却ガス供給工程によって前記基板表面の液膜を凍結させた後に、該凍結した液膜を除去する凍結膜除去工程を備える請求項7または8に記載の基板洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−80819(P2010−80819A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249693(P2008−249693)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】