説明

導電性部材および導電性部材の製造方法

【課題】 被覆層表面欠陥に起因した現像不良が発生しない導電性部材とその製造方法を提供することである。
【解決手段】 芯金の外周に導電性弾性層を有し、該弾性層の外周面上に被覆層を有する導電性部材において、導電性弾性層が、芯金を中央に保持した駒で両端が塞がれた金属製円筒状型内の弾性層形成空間に芯金を保持する駒に設けられた注入口より弾性層形成材料が注入され、加熱硬化されて形成されたものであり、該弾性層の外周面上に設けられる被覆層が弾性層形成材料の注入側とは逆端側から被覆層用塗工液を少なくとも1回塗工して形成されたものであること特徴とする導電性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリおよび複写機等の電子写真方式を採用した画像形成装置における現像、帯電、転写、クリーニング、除電等に用いる導電性部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンタ等のOA機器は高画質化が進んでおり、それに伴い感光体上の静電潜像をトナーにより可視化する現像プロセスにおいては、現像剤担持部材として弾性層を有する現像剤担持部材を用い、感光体に均一に圧接して現像を行う接触現像方式が採用されている。この接触現像方式においては、現像剤担持部材は、感光体への均一な圧接幅を確保するために、弾性材料により構成される弾性層を有すると共に、電圧を印加してトナー像を感光体上に形成するために、均一な導電性や耐リーク性が求められる。
【0003】
そこで、例えば導電性支持体上に、電子導電剤やイオン導電剤を分散して所望の抵抗値に調節した弾性層を形成し、その外周に、耐摩耗性やトナー帯電性、トナー搬送性を得るために、ナイロン、ウレタン等の樹脂と、適宜表面粗さを確保するための粗し粒子や、導電性を確保するための導電剤を添加した被覆材料からなる被覆層を設ける場合が多い。また現像剤担持部材の抵抗安定化のために、弾性層と被覆層の間に抵抗調整層(中間層)を設ける場合もある。特にトナー搬送性を得るために、被覆層に添加される粗し粒子は、現像剤担持部材の現像性能を左右し、高温高湿下や低温低湿下等のあらゆる環境でトナー搬送性を満足しなければならない。
【0004】
前述した様に、現像剤担持部材は、弾性材料で構成される弾性層により感光体への均一な圧接幅を確保した上で、粗し粒子により、均一な表面粗さが付与された被覆層で、均一量のトナー搬送が行われるが、現像剤担持部材の被覆層に欠陥があると、トナー搬送量が局所的に不均一となり画像不良として現れ易い。また近年、高画質化のニーズが高まる中、益々被覆層の欠陥を無くす要求が強くなっている。
【0005】
一般に被覆層の形成方法としては、導電性粒子や粗し粒子を予め添加した塗工液を用いディップ塗工やロールコート法、スプレー塗工、リング塗工等の種々の塗工方法が採用され、厚さ数μm〜数十μmの膜が形成されるが、これらの形成前に、弾性層の表面に付着しているバリ屑や研磨屑、および静電気により付着した塵等を十分に取り除かないと、被覆層に欠陥が生じ、現像剤担持部材として不良品となってしまう。
【0006】
従来、弾性層表面に付着したバリ屑や研磨屑や塵埃等を取り除く方法として、圧縮空気の吹き付け、粘着テープとの接触、弾性層を侵さない有機溶剤での洗浄等が一般に用いられてきたが、その効果はどれも充分といえるものではなかった。
【0007】
そこで、研磨材を含む洗浄液を圧縮空気と共に噴射して、該研磨材を軟質発泡体よりなる帯電ローラの表面に付着している塵埃等にたたきつけることにより、該塵埃等を、剥離して除去する洗浄方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0008】
しかし、この方法では、研磨材を含む洗浄液を洗浄ガンのノズルから勢いよく噴射するため、ノズルが摩耗してしまう恐れがある。また研磨材を含む水や水性の洗浄液を用いるため、洗浄した後、ローラ表面に残留物が残り易く、リンス洗浄が必要となってくるため、工程が複雑である。
【0009】
また別の従来技術としては、ゴムロールの外径に向けて圧力水を噴射しながら、ゴムロールの外径にブラシを摺接することで、ゴムロール表面に付着したゴム粉等を洗浄し、さらにブラシの汚染や目詰まりも防止できるとしている。(例えば、特許文献2)
【0010】
しかし、この方法では、ブラシをゴムロールに摺接するため、ゴムロールの材質によっては、ゴムロール外径表面を傷付けてしまう可能性がある。またここで使用されるブラシの汚染や目詰まりは、ゴムロールの外径表面を洗浄すると同時に防止されるが、ブラシ中に入ったゴム粉や塵埃は、極めて取れづらく直接ブラシに圧力の大きい高圧水を噴射する等しないと取れる様なものでない。このため、ブラシは連続使用により、ブラシ自体が摩耗するばかりか、ブラシ中に塵埃が蓄積し、逆にゴムローラを汚染してしまう恐れがある。
【特許文献1】特開2001−51482号公報
【特許文献2】特開2001−327932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記に鑑みてなされたものであって、トナー搬送性およびトナー帯電性を満足する適正な表面粗さを備え、被覆層表面欠陥に起因する現像不良が発生しない導電性部材とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、被覆層形成条件に付き鋭意検討した結果、被覆層材料として樹脂材料と絶縁性微粒子を含む塗工液を使用し、その弾性層上への塗工方法を特定とすることにより、上記課題が解決されることを見出し、さらに検討して、本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明は、芯金の外周に導電性弾性層を有し、該弾性層の外周面上に被覆層を有する導電性部材において、導電性弾性層が、芯金を中央に保持した駒で両端が塞がれた金属製円筒状型内の該弾性層形成空間に芯金を保持する駒に設けられた弾性層形成材料の注入口より弾性層形成材料が注入され、加熱硬化されて形成されたものであり、該弾性層の外周面上に設けられる被覆層が弾性層形成材料の注入側とは逆端側から被覆層容塗工液が少なくとも1回塗工してされて形成されたものであること特徴とする導電性部材である。
【0014】
また、本発明は、芯金の外周に導電性弾性層を配し、該弾性層の外周面上に被覆層を形成する導電性部材の製造方法において、導電性弾性層を、芯金を中央に保持した駒で両端を塞いだ金属製円筒状型内の該弾性層形成空間に芯金を保持する駒に設けた弾性層形成材料の注入口より弾性層形成材料を注入し、加熱硬化して形成する工程、該被覆層を形成するための被覆層用塗工液を調製する工程、該弾性層の外周面上に、弾性層形成材料の注入側とは逆端側から被覆層用塗工液を少なくとも1回塗工して被覆層を形成する工程、及び該被覆層を乾燥する工程からなることを特徴とする導電性部材の製造方法である。
【0015】
さらに、本発明では、被覆層用塗工液が、平均粒径3〜30μmである絶縁性粒子を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子写真装置に好適に使用できる、トナー搬送性を満足する適正な表面粗さを備え、被覆層表面欠陥に起因する現像不良が発生しない導電性部材が提供でき、また、該導電性部材が効率よく、製造することが可能な方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、導電性部材として、ローラ形状の現像剤担持部材を例にして本発明を詳述する。ローラ形状の現像剤担持部材以外の、帯電部材、転写部材、クリーニング部材、除電部材等の被接触物を電気的にコントロールするローラ形状導電性部材においても、同様の考え方を適用することができる。
【0018】
本発明が対象とする導電性部材の概略断面図を図1に示す。図1において(a)は軸に対し長手方向断面図であり、(b)は軸に対し垂直方向断面図である。
【0019】
本発明の導電性部材は、金属製の軸心(芯金)1の外周に導電性弾性層2を有しており、さらにその外周面上に被覆層3が形成されている。
【0020】
該導電性弾性層2は芯金1への外周への形成は、図2に概略断面図で示すような成型用金型により行なわれる。
【0021】
すなわち、芯金1が弾性層用原料を注入する注入口6を有する注入側駒4と弾性層原料が注入される際に弾性層形成キャビティ9内の空気及び過剰に供給された弾性層原料がオーバーフローする排出口7を有する排出側駒5とに把持され、円筒状金型8に収められ、インジェクション装置にセットされ、次いで、所定の温度にされた後、弾性層形成キャビティ9へ弾性層原料が注入口6より注入され、さらに、弾性層原料が硬化する温度、時間で加熱硬化されて、芯金1の外周に導電性弾性層2が形成される。なお、ここで駒4、5は同形のものを用いることも可能であり、そうすることによってインジェクション装置へ方向を意識することなくセットできる。このようにして製造された芯金に弾性層が形成された導電性部材は必要により更に2事項か処理されて以下の被覆層形成に供される。
【0022】
この際に、注入口6側の弾性層2端には弾性層形成キャビティ9内へ注入されず、注入側駒4内の注入ラインに残り、そのまま硬化してものや、キャビティ9内に原料が注入されるに際し注入側では原料注入圧が排出側に較べ高くなるため、注入側駒4と円筒状金型8の間に原料がしみこむことになりそれが硬化したものが排出側よりも多くなる。また、注入側駒4は原料注入のコントロールのため注入路や弾性層端への接触面に種々の機構が形成され、排出側駒5より複雑な形状となることが多く、そのことによっても弾性層は形成時の原料注入側に形成された微少の塵埃が付着していることが多い。また、形成された弾性層の排出側はもともと注入側よりバリ等の発生は少ないのであるが、排出側駒5は成型時のバリ等の発生が少ないように形成することが可能である。
【0023】
そこで、本発明では、上記のように金型内で形成された被覆層形成前の導電性部材に被覆層を形成するに際し、導電性弾性層の原料注入側とは逆の側(すなわち、排出側)から被覆層用塗工液を塗布する。このようにすることにより、被覆層への塵埃の付着による表面異状は防ぐことが可能となる。
【0024】
本発明において、芯金として、鉄、銅、ステンレス、アルミニウムおよびニッケル等の金属材料の丸棒を用いることができ、その表面に防錆や耐傷性付与を目的としてメッキ処理を施しても構わないが、導電性を損なわないことが必要である。
【0025】
弾性層用原料として、天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、ネオプレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)等のゴム材料に、必要に応じて導電剤(カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉等)あるいはイオン導電剤(アルカリ金属塩およびアンモニウム塩)を添加したものや、導電性ゴム等を適宜用いることができる。この場合、導電剤は2種以上併用してもよい。導電剤の添加量は、ゴム材料100質量部に対し、通常、2〜20質量部とすればよい。硬さ、圧縮永久歪みを考慮した場合、付加反応型導電性シリコーンゴムが好ましい。
【0026】
付加反応型導電性シリコーンを用いた場合には、芯金をセットした金型をインジェクション成形装置内に予め加熱した状態でセットしておき、80〜200℃で1〜30分間加熱し、加熱硬化して弾性層を形成し、次いで、金型を十分に冷却した後、コマを外し、脱型する。その後は、必要に応じて、二次硬化処理を行い、弾性層を得る。
【0027】
なお、現像剤担持部材を製造するのであれば、弾性層の厚みは通常、1〜6mmとするのが好ましい。
【0028】
現像剤担持部材は、弾性層を有するが、この弾性層は多層とすることも可能であり、その場合には、弾性層の硬度調整や抵抗調整がし易くなるなどのメリットが上げられる。多層の弾性層のうち最外層(その外周面に被覆層を形成する層)を付加反応型導電性シリコーンゴムで形成いる場合には、その反応阻害とならない様な材質を下層の弾性層用に選択する必要がある。また弾性層を多層とする場合には、少なくとも多層の弾性層のうち最外層は形成用金型を用い、芯金を保持する駒の一方からその原料を注入し熱硬化させる工程から得られる弾性層である必要がある。なお、この際は、芯金の外周に下層の弾性層を形成したものを直接形成用金型にセットする。ここで、最外層の弾性層を形成する芯金に下層の弾性層を形成したものの製造は、特に限定されないが、成形用金型を用いる場合はすべての層が同じ側からの原料注入で形成されることが好ましく、また、チューブ状に押しだされたものを芯金に被せることでもよい。また、必要により研磨処理されているものでも構わない。
【0029】
本発明では、上記のようにして製造された芯金の外周に導電層が形成されものに、さらにその外周面上に、弾性層中に含有される軟化油や可塑剤等の成分が導電性部材表面へブリードアウトするのを防止する目的で、または、導電性部材全体の電気抵抗を調整する目的で少なくとも1層の被覆層が設けられている。
【0030】
導電性部材が現像剤担持部材であるとき、この被覆層の厚みは、ブリードアウトを防止するため、通常、8μm以上とするのが好ましく、また弾性層の柔軟性を損なうことなく、また耐摩耗性を考慮すると、100μm以下とするのが好ましい。なお、被覆層を多層とする場合には、被覆層の厚みが合計としてこの範囲となるようにすればよい。
【0031】
被覆層用原料は、樹脂材料に、平均粒径3〜30μmの絶縁性粒子および導電性微粒子を含むものであることが好ましい。
【0032】
樹脂材料として、例えば、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーおよび塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。これらの樹脂材料は、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。また、これらの樹脂材料は単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0033】
被覆層3は、接触現像方式においては現像剤担持部材では感光体への均一な圧接が必要であり、該現像材担持部材上にトナーの層厚を規制する規制ブレードとも接触しているため、変形した跡が残ると、それが画像不良として現れてしまう。その様なことから、現像剤担持部材では、複写機やプリンタ等に用いられる環境温度に対し、高い圧縮永久歪みが要求され、このような要請に容易に対応できることからポリウレタン樹脂が好ましい。
【0034】
ここで用いるウレタン樹脂は被覆層を形成するのに適応できるものならば何れでも使用できる。すなわち、ウレタン樹脂に用いられるポリオール化合物としては、ポリエチレングリコール、テトラメチレングリコールポリエチレンジアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリカーボネートポリオール、ポリプロピレングリコール等の公知のポリウレタン用ポリオールが使用可能である。ポリオール化合物は、その分子鎖が長いほど、より高い柔軟性を有するポリウレタン被覆層を生成することができる。
【0035】
また、イソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のジイソシアネート、およびそれらのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレタン変性体等を好ましく使用することができる。特に好ましいイソシアネート化合物は、HDIおよびそのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレタン変性体等が挙げられる。
【0036】
本発明では平均粒径3〜30μm、絶縁性粒子を使用することが好ましい。また、本発明において使用する絶縁性粒子の平均粒径を3μm以上とすると、被覆層の表面凹凸が大きくなり、現像剤担持部材としたとき、十分なトナー搬送性が得られ、また平均粒径を30μm以下とすると、(最外層)被覆層の表面凹凸の平均間隔が適切な大きさとなり、トナー搬送量を適切な量とすることが容易となり、結果として画像が良好となる。好ましくは5〜15μmである。
【0037】
絶縁性粒子の平均粒径Dvは、粒子径Diを有する粒子数をniとしたとき、下記式で求められる体積平均粒径である。
Dv=(Σnii3/Σni1/3
【0038】
また、本発明では絶縁性粒子の粒径の変動係数は40%以下であることが好ましい。ここで変動係数とは、絶縁性粒子の粒径の標準偏差を上記平均粒径(体積平均粒径)で除しこれを100倍した値をいう。絶縁性粒子の変動係数を40%以下とすると、絶縁性粒子の粒度分布が狭くなり、現像剤担持部材の被覆層の表面粗さや表面凹凸の間隔の制御が容易となる。
【0039】
絶縁性粒子としては、例えば、ウレタン粒子、ナイロン粒子、アクリル粒子、シリコーン粒子等をあげることができる。形状としては球形が好ましい。
【0040】
絶縁性粒子の添加量は、被覆層用原料中の樹脂材料を100質量部としたとき、絶縁性粒子は、通常、2〜50質量部とする。絶縁性粒子の添加量をこの範囲とすると、現像剤担持部材として適度のトナー搬送性を持つ、被覆層表面が得られる。
【0041】
本発明における被覆層用原料は、現像剤担持部材全体の電気抵抗を調整する目的のため、導電性微粒子を含むことが好ましい。導電性微粒子としては、各種電子伝導機構を有する導電剤(カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉等)あるいはイオン導電剤(アルカリ金属塩およびアンモニウム塩)の微粒子を用いることができる。これら導電剤の2種以上を併用してもよい。また導電性微粒子を樹脂材料100質量部に対し、通常、5〜200質量部添加するのが好ましい。導電性微粒子の添加量を5質量部以上とすると、被覆層は導電性を付与することができ、200質量部まで必要量の導電性微粒子を加えることにより、導電性をコントロールすることが可能となる。15〜30質量部を添加するのがより好ましい。なお、使用する導電性微粒子は、感光体を汚染する材料は不適当である。
【0042】
被覆層の形成に用いることのできる有機溶剤としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、キシレン、トルエン等の芳香族類、n−酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、テトラヒドロピラン等のエーテル類が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。また樹脂等が溶解する場合は、水等も溶剤として用いることができる。
【0043】
これらの材料を溶剤中に添加し、適宣希釈し、導電剤を分散し、被覆層用塗工液を作製する。
【0044】
塗工前の弾性層の表面清浄化は、従来の方法が利用でき、本発明の塗工液を弾性層の材料を注入側とは逆の側〈排出側)から塗工して被覆層を形成する方法と組み合わせることで、更に高い効果が期待できる。
【0045】
その具体的な方法としては、例えば、圧縮空気の吹き付け、粘着テープとの接触、弾性層材料を侵さない有機溶剤での洗浄、高圧水での洗浄、水での洗浄等である。
【0046】
塗工方法としては、ディップ塗工、リング塗工、ロール塗工等、一方向から選択的に塗工液を塗布する方法を選択する塗布方法であれば特に限定されない。なお、ディップ塗工では浸漬と引き上げの2方向あるが、浸漬の際に被覆層用塗工液に先に接触させる方を塗工の開始側とする。
【0047】
ディップ塗工においては、弾性層材料を注入した端部側を上にして、弾性層ローラ長手を液面に対し、鉛直にして浸漬した後、これを引き上げることで被覆層用塗工液を弾性層の外周面上に塗布する。浸漬の際、上側端部(液面に対して反対側端部)は塗工液中に浸漬しない様に、弾性層長手方向の面を塗工液中に浸漬させる。そうすることで、バリやバリ屑の多い弾性層原料注入側端部が塗工液中に浸漬されないため、塗工液中にバリ等が落下しない。また弾性層端部に付着しているバリ屑も殆ど塗工液に触れないため、バリ屑が付着した被覆層とならない。
【0048】
リング塗工やロール塗工等においては、弾性層用原料を注入した側とは逆側から弾性層の外周上を、連続的に被覆層用塗工液を塗布していく。そうすることにより、バリやバリ屑の多い注入側端部で塗工終了となるため、被覆層にバリやバリ屑が含まれず被覆層の欠陥とならない。またリング塗工機やロール塗工機のヘッド部分(弾性層に近接もしくは接して塗工液を塗布する部分)をバリやバリ屑が汚染してしまい、次の弾性層を塗布する際、被覆層欠陥を生じさせてしまうが、この場合、ヘッドクリーニング機構等を設ければよい。
【0049】
塗工液の作製において粉砕工程を加える場合は、ボールミル、サンドミル又は振動ミル等を用いる。
【0050】
次に、上記のような塗工方法で作製した膜を乾燥するが、乾燥の方法としては、熱を加えない風乾、加熱乾燥、熱硬化性樹脂の場合は、反応温度までの加熱処理等、用いる材料によって選択することができる。
【0051】
なお、本発明に従って、注入側と排出側で導電層の導電性に差があるときには、被覆層に形成時に被覆層厚みをコントロールすることによって導電性部材表面と芯金の間の抵抗を均一にすることができる。
【0052】
導電性部材として、ローラ形状の現像剤担持部材以外の、帯電部材、転写部材、クリーニング部材、除電部材等の被接触物を電気的にコントロールする導電性部材を挙げることが可能である。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。尚、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0054】
実施例1
φ8mmステンレス製芯金を内径16mmの円筒状金型内に弾性層キャビティと同心となるように両側から駒で把持して成形用金型を組み立て、インジェクション装置にセットし、金型を115℃にし、次いで、液状ゴムを、注入条件(注入時間10秒、金型内に注入する液状ゴムの量40ml、4ml/秒の一定速さ)で注入した。
【0055】
ここで用いた液状ゴムは、液状導電性シリコーンゴム(東レダウコーニング社製、体積固有抵抗1×106Ωcm品)を用い、一方の液に白金触媒を、他方の液に硬化剤を配合した2液混合の付加反応タイプのものとした。
【0056】
液状ゴムが注入された金型は成形装置内の熱盤にて110℃、6分間加熱硬化し、脱型した後、200℃のオーブンで4時間2次加硫を行い、芯金上に厚み4mmの弾性層を有する現像剤担持部材前駆体を得た。
【0057】
次に、ウレタン塗料(ニッポランN5033;商品名、日本ポリウレタン社製)を固形分濃度10%となるように、メチルエチルケトンで希釈し、導電剤としてカーボンブラック(MA100;商品名、三菱化学社製)を上記ウレタン塗料の固形分100質量部に対し70質量部、絶縁性粒子として平均粒径14μmのウレタン粒子(アートパールC400;商品名、根上工業社製)を上記ウレタン塗料の固形分100質量部に対し10質量部添加した後、十分を分散したものに、硬化剤(コロネートL;商品名、日本ポリウレタン社製)を上記ウレタン塗料の固形分100質量部に対し10質量部添加し撹拌し、塗工液を調製した。次にこの塗工液を縦ディップ塗工装置の循環機中に投入し、約1時間塗工液を慣らし循環した。循環機中から塗工液の一部を抜き取り、B型粘度型にロータNo.1のロータをセットし、液温度23±1℃で、ロータ回転数60rpmにて粘度を測定した。このときの液粘度は14.0mPa・sであった。
【0058】
上記方法で得られた現像剤担持部材前駆体の液状ゴムを注入した側を上にして、すなわち、排出側を下にして、塗工パレットに把持し、液浸入スピード10mm/秒、液中停止時間10秒、引き上げ速度平均200mm/秒の条件で、縦ディップ塗布し、80℃のオーブンで15分乾燥し、140℃のオーブンで4時間硬化し、被覆層を形成し、現像剤担持部材を得た。
【0059】
実施例2
実施例1において、被覆層の形成時に添加する絶縁性粒子として、平均粒径6μmのウレタン粒子(アートパールC800;商品名、根上工業社製)を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製のエルボジェット分級機)で微粉成分および粗大粉成分を除去し、平均粒径3μmの分級して得たウレタン粒子を用い、添加量を30重量部と増した他は実施例1と同様にして現像剤担持部材を作製した。
【0060】
実施例3
実施例1において、被覆層の形成時に添加する絶縁性粒子として、平均粒径21μmのウレタン粒子(アートパールC300;商品名、根上工業社製)を、多分割分級装置(日鉄鉱業社製のエルボジェット分級機)で超微粉、微粉成分を除去し、平均粒径30μmの分級ウレタン粒子を用い、添加量を3重量部と減らした他は実施例1と同様にして現像剤担持部材を作製した。
【0061】
比較例1
実施例1において、現像剤担持部材前駆体の液状ゴムを注入した側(注入側)を下にして塗工パレットに把持する他は実施例1と同様にして現像剤担持部材を作製した。
【0062】
比較例2
実施例2において、現像剤担持部材前駆体の液状ゴムを注入した側(注入側)を下にして塗工パレットに把持する他は実施例2と同様にして現像剤担持部材を作製した。
【0063】
比較例3
実施例3において、現像剤担持部材前駆体の液状ゴムを注入した側(注入側)を下にして塗工パレットに把持する他は実施例3と同様にして現像剤担持部材を作製した。
【0064】
上記実施例、比較例で得られた現像剤担持部材の表面を目視にて観察し、バリ屑が被覆層表面に付着してできる凸状欠陥を各100本について発生数を調べた。その結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表1から明らかなように、弾性層形成用金型への弾性層用原料注入側の逆側(排出側)から被覆層を塗工した実施例1〜3では、バリやバリ屑の多い原料注入側の端部が被覆層用塗工液中に浸漬されないため、被覆層用塗工液がバリ屑で汚染されず、また弾性層に付着しているバリ屑も殆ど被覆層用塗工液に触れないため、被覆層にバリ屑が付着することがなかった。すなわち、塗工100本で凸状欠陥不良は1本も発生しなかった。また粗し粒子も平均粒径が3〜30μmの範囲であれば、バリ屑による凸欠陥不良数は特に影響を受けることなく現像剤担持部材が得られる。
【0067】
これに対し、比較例1〜3は弾性層材料を注入した側を下にして、現像剤担持部材前駆体を塗工液中に浸漬したため、バリ屑の付着が多い被覆層となってしまった。また塗工液もバリ屑で汚染されてしまった。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】現像剤担持部材の概略断面図((a)長手方向、(b)芯金垂直)である。
【図2】弾性層形成用金型の概略図である。
【符号の説明】
【0069】
1 芯金
2 弾性層
3 被覆層
4 駒(注入側)
5 駒(排出側)
6 注入口
7 排出口
8 円筒状金型
9 弾性層形成キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金の外周に導電性弾性層を有し、該弾性層の外周面上に被覆層を有する導電性部材において、
導電性弾性層が、芯金を中央に保持した駒で両端が塞がれた金属製円筒状型内の弾性層形成空間に芯金を保持する駒に設けられた注入口より弾性層形成材料が注入され、加熱硬化されて形成されたものであり、
該弾性層の外周面上に設けられる被覆層が弾性層形成材料の注入側とは逆端側から被覆層用塗工液を少なくとも1回塗工して形成されたものであること特徴とする導電性部材。
【請求項2】
被覆層用塗工液が、平均粒径3〜30μmの絶縁性粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
芯金の外周に導電性弾性層を配し、該弾性層の外周面上に被覆層を形成する導電性部材の製造方法において、
導電性弾性層を、芯金を中央に保持した駒で両端を塞いだ金属製円筒状型内の該弾性層形成空間に芯金を保持する駒に設けた弾性層形成材料の注入口より弾性層形成材料を注入し、加熱硬化して形成する工程、
該被覆層を形成するための被覆層用塗工液を調製する工程、
該弾性層の外周上に、弾性層形成材料の注入側とは逆端側から被覆層用塗工液を少なくとも1回塗工して被覆層を形成する工程、および
該被覆層を乾燥する工程からなることを特徴とする導電性部材の製造方法。
【請求項4】
被覆層用塗工液が、平均粒径3〜30μmである絶縁性粒子を含むことを特徴とする請求項3に記載の導電性部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−77120(P2006−77120A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262435(P2004−262435)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】