少なくとも1つの窒化材料層を有するハイブリッド基板の製造法
本発明は電子工学分野での応用を目的とする、少なくとも1つのIII/N型窒化材料層を具備してなるハイブリッド基板の製造法であって;六方単結晶の結晶構造を有するIII/N型窒化材料でできた原材基板(1)を選択する工程;前記基板内部に多数のナノ空隙(12)を生じさせて活性層(14)の境界となる脆弱領域(13)を作ることを目的として、前記窒化材料の「c」結晶軸に平行もしくは略平行な平面内にある「注入面」(10)と呼ばれる面の一つを通して、1×1016He+/cm2から1×1017He+/cm2のヘリウムイオンHe+を前記原材基板(1)に注入する工程;および、少なくとも前記ナノ空隙を空隙(12’)へと成長させることが可能な熱授受を含む授受からなる、活性層(14)を原材基板(1)から分離させることが可能な全エネルギー授受を施すことによって前記活性層(14)を移設する工程;からなることを特徴とする製造法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド基板、すなわち、少なくとも1つのIII/N型窒化材料層を含む複数の層からなる基板の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような基板は、電子工学、光学、太陽光発電、光エレクトロニクスなどの分野での応用を目的とするものである。
【0003】
III/N型窒化材料は、周期律表のIII族元素と結合した窒素、特に、窒化ガリウム(GaN)やインジウム(In)、ホウ素(B)およびアルミニウム(Al)をベースとした様々な窒化物または複合窒化物からなる材料である。
【0004】
これらは、可視光や紫外光を発する発光ダイオード(LED)あるいは青色/紫色レーザーダイオードなどの高出力高周波電子機器や高温にさらされる機器などへの応用に有望な材料である。
【0005】
参考のため、以下でGaNの結晶構造が六方晶系であることを再確認し、その構造を図1に模式的に示した。
【0006】
図より、窒化ガリウムの六方晶系構造はプリズム形の単位結晶格子からなり、プリズム形格子の底面の辺は等しい長さa(3.1896Åまたは0.31896nm)を持ち、互いに120°の方向を向いていることが分かる。また、プリズムの高さはc(5.1855Åまたは0.51855nm)で表わされる。六方晶系では、結晶面を示すベクトルa1、a2、a3およびcと関連する4つの指数(h,k,i,l)に基づいた表記を行うのが、一般的な慣習である。
【0007】
最も一般的な窒化ガリウム(GaN)基板は表面の法線方向にc結晶軸を有している。基板の成長はc軸に沿う、あるいは、成長面はc面であると言われている。以下では、このような基板を「標準GaN」基板と呼び、極性であるという。
【0008】
B.A.Haskellらによる「Structure and morphological characteristics of polar (11-20)a-plane gallium nitride grown by hydride vapor phase epitaxy」、Applied Physics Letters、第83巻、第8号、2003年8月、1554−1556頁で説明されているように、標準GaNでできた基板には、望まない自然ピエゾ電気偏光効果が生じるという欠点がある。
【0009】
従って、標準GaN基板は上記の技術的応用に用いる電子部品の製造に、必ずしも常に好適であるとは言えない。
【0010】
さらに、III/N型窒化材料層を基板上に簡単に移設する工業的な方法は存在しない。
【0011】
A. Tauzinらによる論文「Transfer of two-inch GaN film by the Smart-CutTM technology」、Electronics Letters、2005年5月26日、第41巻、第11号には、スマートカット(商品名)技術による標準GaN膜の支持基板上への移設の可能性が記載されている。この論文ではGaN材料中にブリスター泡を生じさせる条件が研究されている。ブリスター泡は、GaNに少なくとも2×1017H+/cm2以上の水素を注入した場合だけに生じる。
【0012】
I. Raduらによる「Formation of nanovoids in high-dose hydrogen implanted GaN」、Applied Physics Letters、89、031912、(2006)、またR. Signhらによる「Investigation of hydrogen implantation induced blistering in GaN」、Phys. Stat. Sol.、(c)3、第6号、1754−1757、さらにS.O. Kucheyevらによる「Blistering of H-implanted GaN」、Journal of Applied Physics、第91巻、第6号、2002年3月15日、3928−3930頁などの論文では、2.6×1017H+/cm2以上の水素を注入した標準GaNのアニール処理後に生じるブリスター欠陥について言及している。
【0013】
C.H. Seagerらによる論文「Infrared and transmission electron microscopy studies of ion-implanted H in GaN」、Journal of Applied Physics、第85巻、第5号、1999年3月1日、2568−2573頁にも、2×1016H+/cm2から1×1017H+/cm2のH+を注入し、約890℃で1時間の熱授受を経た標準GaNに生じた角柱状空隙が示されている。
【0014】
上記のすべて数値から判るように、GaNを破断するためのイオン注入量はケイ素を破断するのに必要な量の少なくとも5倍であり、そのため、工業的製法への応用がさらに困難になっている。なぜなら、使用する注入流量密度にもよるが、これらの注入量を得るためには注入操作を数10時間継続する必要があるかもしれないからである。
【0015】
また最後にD, Alquireらによる論文"Interaction between dislocation and He-implantation-induced voids in GaN epitaxial layers"、Applied Physics Letters、86、211911(2005) には標準GaNにヘリウムイオンHe+を注入する実験の結果が述べられている。
【0016】
この論文では、GaNに1×1016He+/cm2を超える量のHe+を注入し1000℃から1100℃で2分間の熱処理を行うと空隙が生じ、その空隙のなかには円筒形のものや角柱形のものもあると述べられている。
【0017】
しかしながら、この論文では工業的な層移設プロセスの実施については述べられてない。
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的の一つは、六方晶系の結晶構造を持つIII/N型窒化材料の層、特に、窒化ガリウムの層を移設する方法を提供することである。窒化ガリウム層の移設は、従来の文献で述べられている注入量、例えば、A. Tauzinらによる論文"Transfer of two-inch GaN film by the Smart-CutTM technology"、Electronics Letters、2005年5月26日、第41巻、第11号で述べられている2×1017H+/cm2から5×1017H+/cm2よりも少ない注入量を用いることで容易に工業化できる。
【0019】
さらに、本発明は、イオン注入や層移設工程の後でも良好な結晶性を有する六方晶系構造のIII/N型窒化材料層を提供することにもある。
【0020】
この目的のため、本発明は、電子工学、光学、あるいは光エレクトロニクスなどの分野での応用を目的とする、少なくとも1つのIII/N型窒化材料「活性」層を具備するハイブリッド基板を得る方法に関するものである。
【0021】
本発明による製造法は、
−六方単結晶の結晶構造を有するIII/N型窒化材料でできた「原材」基板(1)を選択する工程、
−前記基板内部の制御した平均注入深度に多数のナノ空隙(12)を生じさせて、前記活性層(14)を決定する脆弱領域(13)を作ることを目的として、前記窒化材料の「c」結晶軸に平行もしくは略平行な平面内にある「注入面」(10)と呼ばれる面の一つを通して、1×1016He+/cm2以上のヘリウムイオンHe+を前記原材基板(1)に注入する工程、および
−前記ナノ空隙(12)をより大きな空隙へと変形させることが可能な「空隙成長熱授受」と呼ばれる熱授受と、活性層(14)を原材基板(1)の他の残余部分(15)から分離させることが可能な「分離エネルギー授受」と呼ばれる補助的エネルギー授受とからなる、全エネルギー授受を施すことによって前記活性層(14)を移設する工程、
からなることを特徴とする。
【0022】
これら本発明の特徴によって、注入時間を短縮することができ、従って、総製造時間も短縮できる。さらに、注入時にイオンが材料を透過することで生じる損傷や製造コストも低減することが可能になる。
【0023】
本発明の他の有利な特徴として、以下のようなものを特に制限なく、個々に、あるいは組み合わせて特徴とすることができる。
−前記原材基板(1)へのイオン注入がヘリウムイオンHe+のみによって独占的に行われること;
−ヘリウムイオンHe+の注入量が1×1016He+/cm2から1×1017He+/cm2の間であること;
−前記窒化材料活性層の移設が、前記原材基板の注入面に接合材を結合させる分子接着工程を含むこと;
−空隙成長熱授受を、接合材を結合させる前に行うこと;
−空隙成長熱授受を、接合材を結合させた後に行うこと;
−前記窒化材料活性層の移設が、前記原材基板の注入面に材料層を蒸着させる工程を含むこと:
−前記蒸着がホモエピタキシャル成長またはヘテロエピタキシャル成長であること;
−エピタキシャル成長工程が、空隙成長熱授受の一部もしくは全部をなすこと;
−エピタキシャル成長工程が、分離エネルギー授受の一部もしくは全部をなすこと;
−エピタキシャル成長工程が、前記活性層を移設するための全エネルギー授受をなすこと;
−前記空隙成長熱授受が、800℃以上での加熱を含むこと;
−前記分離エネルギー授受が、機械的な由来のものであること;
−ヘリウムイオンHe+の注入エネルギーが、30から250keVの間であること;
−窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、窒化ホウ素(BN)およびアルミニウム、ガリウム、ホウ素、インジウムから選ばれる少なくとも2種類の材料の複合窒化物、から選ばれる材料で前記原材基板ができていること;
−六方単結晶の結晶構造を有する、成長面がc面であるバルクIII/N型窒化材料で前記原材基板ができていて、そのバルク材料を、一つの面が前記バルク材料のc結晶軸に平行もしくは略平行な平面内にあるように切り出すことで原材基板が得られたものであること;
−六方単結晶の結晶構造を有する、成長面がa面またはm面であるバルクIII/N型窒化材料で前記原材基板ができていること;および
−前記原材基板が、自由面がc結晶軸に平行もしくは略平行であり、成長面がa面またはm面である窒化ガリウム(GaN)単結晶層で覆われた種子支持材からなる複合基板であること。
【0024】
また、本発明は、電子工学、光学、あるいは光エレクトロニクスなどの分野での応用を目的とするハイブリッド基板に関するものでもある。本発明によるハイブリッド基板は、そのハイブリッド基板の面のうち「前」面と呼ばれる面に対して平行もしくは略平行なc結晶軸を持つ六方単結晶の結晶構造を有するIII/N型窒化材料の活性層を具備しており、その活性層が分子結合によって接合材と結合していて、さらに、前記ハイブリッド基板が上記のいずれかの製造法によって得られたものであることを特徴としている。
【0025】
本発明の他の特徴や利点を、以下に述べる記述より明らかにする。以下では、本発明を実施するための数種の可能な手順を示した添付図面を参照しながら説明するが、これらは例を示したものであって、決して本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】六方晶系の窒化ガリウム(GaN)の結晶構造を示す図である。
【図2】図2Aから2Eは、本発明による製造法を実施するための2つの異なる一連の手順のひとつを説明する図である。
【図3】図3Aから3Eは、本発明による製造法を実施するための2つの異なる一連の手順のひとつを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図2Aには、III/N型窒化材料でできた「原材」基板が示されている。III/N型窒化材料は六方単結晶の結晶構造を有していて、そのc結晶軸は面10に平行もしくは略平行である。
【0028】
上記材料の例としては、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、窒化インジウム(InN)、あるいはアルミニウム、ガリウム、ホウ素、インジウムから選ばれる少なくとも2種類の材料の複合窒化物、例えば、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)および窒化ホウ素ガリウム(BGaN)のような3元複合窒化物、また、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)のような4元複合窒化物、などを挙げることができる。
【0029】
原材基板1は、六方単結晶の結晶構造を有するIII/N型窒化材料でできていて、その成長面がc面、すなわち(0001)面であるか、または(11−20)面のようなa面、あるいは(10−10))のようなm面であることが好ましい。ここで注意すべきは、a面やm面は複数存在するが、c面は一つしか存在しないことである。
【0030】
第一の場合として、バルク材料の成長面がc面である場合は、そのc面に垂直もしくは略垂直に材料をウエハー状に切り出して、得られる原材基板1の面10がバルク材料のc結晶軸に平行もしくは略平行な平面内にあるようにする。
【0031】
第二の場合として、バルク材料の成長面がa面またはm面である場合は、原材基板1の面10は、もともとバルク材料のc結晶軸に平行もしくは略平行な平面内にあるので切り出す必要はない。
【0032】
ここで「略垂直」とは、角度が垂直軸から±5°の範囲内にあることをいう。
【0033】
a面またはm面の原材基板1は、種子基板上にエピタキシャル成長させることで得てもよい。種子基板材料の表面は、当業者には良く知られている適切な結晶面を有している(T.S.Koらによる論文"Study on optical growth of a-plane GaN frown on r-plane sapphire by metal-organic chemical vapor deposition"、Journal of Crystal Growth 300 (2007) 308-313を参照のこと)。
【0034】
a面GaNは、例えば、表面がr面のサファイア基板上にエピタキシャル成長させることで得てもよい。また、m面GaNはm面SiC基板あるいは(100)LiAlO2基板から得られる。
【0035】
次に、図2Bに示したように、原材基板1にヘリウムイオン(He+)注入を行う。このイオン注入は面10上で行うことが好ましい。以下の記述および請求項では、この面を「注入面」と呼ぶこととする。
【0036】
場合によっては、このイオン注入を、反対の面11から行うことも可能である。
【0037】
すなわち、イオン注入は原材基板1の「c」結晶軸に垂直もしくは略垂直に行う。
【0038】
注入量は、少なくとも1×1016He+/cm2以上で4×1017He+/cm2未満であることが好ましい。さらに好ましくは1×1016He+/cm2と1×1017He+/cm2の間である。
【0039】
注入エネルギーは数十keVから数百keVであり、破断に好適な脆弱域および移設する層を所望の厚さにするのに必要な注入深度を得るためには、30から250keVであることが好ましい。
【0040】
イオン注入は、ヘリウムイオンHe+のみによって独占的に行われることが好ましい。あるいは、必要に応じて、1種もしくは数種の他のイオン種を原材基板1に注入してもよい。これらの共注入はヘリウムイオンの注入と同時でも、また、連続的に行ってもよい。
【0041】
イオン注入によって、原材基板1内の制御した平均注入深度に多数のナノ空隙、すなわちナノスケールの大きさの空隙、を生じさせることができる。これらの空隙は球形もしくは略球形であり、その直径は約1から2nmである。これらによって、脆弱域13が定められる。
【0042】
脆弱域13は、一方では、注入面10にまで及ぶ活性層14と、他方では、面11までに及ぶ残余部分15との間の境界である。
【0043】
この脆弱域13を生成したい深さ、正確には、最終的に得られる基板内に作る活性層14をどのくらいの厚さにしたいのかに応じて、注入エネルギーを調節する。
【0044】
例えば、窒化ガリウム(GaN)基板に90keVでHe+を注入すると、注入面から約400nmの深さに脆弱域13を生じさせることができる。
【0045】
ここで注意すべきことは、上記のヘリウム注入量が、先行技術による窒化ガリウム層の移設で一般的に用いられるH+イオン注入量である3から5×1017H+/cm2と比べて、少量であることである。
【0046】
従って、この注入量の少なさに比例して、本発明の製造法では注入時間を大幅に短縮できる。
【0047】
次に。活性層14を移設するが、そのためには、まず、活性層14を原材基板1の残余部分15から分離する必要がある。
【0048】
この活性層14の移設は、以下で「全エネルギー授受」と呼ぶ、上記の分離を完遂するのに十分なエネルギーの授受によって行う。
【0049】
この「全エネルギー授受」は、前記ナノ空隙12を大きな空隙へと変形させることが可能な「空隙成長熱授受」と呼ばれる熱授受と、活性層14を原材基板1の残余部分15から分離させることが可能な「分離エネルギー授受」と呼ばれる補助的エネルギー授受からなっている。
【0050】
図2Cから2Dに示した、本発明を実施する第1の方法では、まず、原材基板1の注入面10上に接合材2を分子接着結合させて、その後に、ナノ空隙12を成長させる、すなわち、ナノ空隙を大きくさせるのに十分な熱授受を、少なくとも1回行うことで移設を行う。
【0051】
なお、ここで「熱授受」とは、「熱処理時間/その処理を行う温度」の組合せを意味する。
【0052】
この熱授受の作用によって、ナノ空隙12は成長し空隙12’となる。空隙12’の大部分は円筒形で、原材基板1のc−軸に平行もしくは略平行に向いている。これらの空隙の大きさは、例えば、1×1017He+/cm2の注入量、100keVのエネルギーでイオン注入し、1000℃から1100℃で数分間のアニール処理した後の長さで、数十nmに達する。この工程を図2Dに示した。
【0053】
接合材2は、結合後に施される破断熱処理の際にあまり高い応力を受けないように、活性層14との熱膨張係数(CTE)の差が十分に小さな材料から選ばれることが好ましい。
【0054】
さらに、接合材の材料は、最終的に得られる構造物3の用途に応じて選んでもよい。もし、構造物3をエピタキシー成長に用いるなら、接合材の材料はエピタキシー成長させる物質に近いCTEを持つように選ぶのが有利となる。
【0055】
接合材2の材料と活性層14の材料とでCTEが大きく異なる場合、例えば、GaNとサファイアのような場合、両材料を結合させて得られる構造物は高温の熱処理に耐えられない。GaNとサファイアの場合、両者の複合構造体が分解せずに耐えられる熱処理温度は、せいぜい300℃までである。従って、空隙12’を生成させるのに必要な「成長」熱授受は、接合材を結合する前に行うほうが賢明である。
【0056】
次に、結合を安定化するためにアニール処理を行うが、これはGaNを破断するために施すエネルギー授受の一部をなす。これは機械的な応力を与えることで補助してもよい。
【0057】
ナノ空隙12を成長させるための熱授受は、少なくとも数分間、800℃以上で行う。
【0058】
当業者であれば、窒化材料の性質および注入条件(特に、ヘリウム注入量)に応じて、この授受を調節できる。
【0059】
例えば、窒化ガリウム(GaN)について行った実験では、660℃で3時間行った熱処理では空隙12’は生じなかったが、1100℃で2分間行った熱処理では空隙12’が生じ始めた。当業者であれば、比較的低い温度で熱処理を行う場合は比較的長い時間の処理が必要であることは公知である。
【0060】
例えば、窒化ガリウムでは、熱処理を800℃で1時間行うと空隙12’が生成する。
【0061】
空隙成長熱授受を行った後に、分離のために補助的エネルギー授受、例えば、ブレード刃や超音波を用いた機械的な切開を行う。
【0062】
また、熱リン酸(H3PO4)や水酸化カリウム(KOH)を用いた化学エッチング処理によって活性層14を分離してもよい。
【0063】
ただし、この場合は、処理してはならない基板面を保護しておくことが前提となる。
【0064】
さらに、補助的エネルギー授受は熱的なものであってもよい。
【0065】
残余部分15から分離して得られたハイブリッド基板を図2Eに示す。得られた基板は、参照番号3で表わされ、接合材2と窒化材料活性層14からなっている。
【0066】
接合材2が薄い場合、すなわち、5μm程度の厚さの場合、接合材は単に活性層14のいわゆる「剥離」移設を行うためだけに機能する。しかし、接合材2が厚い場合、すなわち、100μm程度の厚さの場合は、得られるハイブリッド基板3は十分に厚くなり、自己支持できるようになるとともに、例えば、さらなるエピタキシャル成長を行うのに使用することが出来るようになる。
【0067】
本発明を実施する第2の方法を図3Aから3Eに示した。この方法における各要素は、第1の実施方法と同様で、上記と同じ参照番号で表わされている。
【0068】
この方法では、前記原材基板1の注入面10上に材料層4を蒸着させることで移設を行う。この材料層4の形成を図3Cに示した。この蒸着は、図3Dに示したように、例えば、最終的に自立支持構造が得られるような特定の厚さに到達するまで行う。
【0069】
この蒸着はエピタキシャル成長で行ってもよい。
【0070】
このエピタキシャル成長は、MOCVD(有機金属化学蒸着)、HVPE(ハイブリッド気相エピタキシャル成長)、MBE(分子線エピタキシャル成長)およびELOG(エピタキシャル横方向成長)などの当業者に公知の方法で、結晶成長装置を用いて行うことが好ましい。
【0071】
このエピタキシャル成長は、材料層4や原材基板1の物性に応じて、ホモエピタキシャル成長でもヘテロエピタキシャル成長でもよい。
【0072】
ヘテロエピタキシャル成長の場合、層4の材料は、例えば、欠陥密度の低い結晶構造が成長するように活性層14と同じ格子定数を持つように選択する。あるいは、活性層14との熱膨張係数(CTE)の違いよって、冷却の際に、活性層、材料層の一方に亀裂が生じないように選んでもよい。
【0073】
第1の実施方法では、ナノ空隙をより大きな空隙に成長させるのに十分な熱授受となるように、エピタキシャル成長は適切な温度で適切な時間行う。
【0074】
空隙12’を生成するのに必要な熱量に達する前に、エピタキシャル成長層が所望の厚さになった場合は、熱授受に付加的な熱処理を追加してもよい。
【0075】
その後、補助的なエネルギー授受を施す。これは、第1の実施方法で述べたものと同様である。(例えば、ブレード刃や、超音波、化学エッチング、加熱などを利用する。)
【0076】
第2の実施方法では、エピタキシャル成長工程の前に空隙成長熱授受を行う。
【0077】
その後のエピタキシャル成長工程で供給されるエネルギーは、活性層14の分離にも貢献する。必要に応じて、このエネルギー授受は補完されてもよい。すなわち、この場合、エピタキシャル成長は分離エネルギー授受の一部または全部をなしている。
【0078】
最後に、第3の実施方法として、活性層14を移設するのに必要な全エネルギー授受を、エピタキシャル成長単独で十分まかなえる場合もある。
【0079】
図3Eに示したように、分離によって得られたものが、エピタキシャル成長層4上に移設された活性層14を有するハイブリッド基板3’である。
【0080】
以下に、二つの本発明の実施例を詳細に記述する。
【実施例1】
【0081】
六方晶系の窒化ガリウム(GaN)基板のc結晶軸に平行な注入面に、注入量6×1016He+/cm2、注入エネルギー90keVでヘリウムイオンを注入した。
【0082】
イオン注入によって、注入面から400nmの深さに脆弱域を生成する空隙が生じた。
【0083】
次に、基板上に上記のHVPE技術を用いたGaNエピタキシャル成長を行い、約数ミクロンの厚さのGaN層を得た。
【0084】
成長は約1000℃の温度で3時間続け、その後、原材基板を脆弱域の面で破断した。このようにしてハイブリッド基板を得た。本実施例の場合、エピタキシャル成長は、空隙成長熱授受と分離エネルギー授受の両方の働きをしている。
【実施例2】
【0085】
六方晶系の窒化ガリウム(GaN)基板のc結晶軸に平行な注入面に、注入量6×1016He+/cm2、注入エネルギー90keVでヘリウムイオンを注入した。
【0086】
次に、1000℃から1100℃で適切な時間熱授受を行って、ナノ空隙12を空隙12’に成長させた。この熱授受で基板1の表面にブリスター泡が生じることも、活性層14が剥離することもなかった。
【0087】
続いて、基板のブリスター泡が生じなかった注入面に、GaN基板と大きく異なるCTEを有する接合材2、本実施例の場合、サファイアを密着させた。
【0088】
得られた接合体にアニール処理を施して接合境界面を強化した。このアニール処理は両者が分離する温度よりも低い温度で行った。
【0089】
試料にブレード刃を用いた機械的応力を加えて、GaNの脆弱域で破断した。
【0090】
このようにしてGaN層で覆われたサファイア支持体からなるハイブリッド基板を得た。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド基板、すなわち、少なくとも1つのIII/N型窒化材料層を含む複数の層からなる基板の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような基板は、電子工学、光学、太陽光発電、光エレクトロニクスなどの分野での応用を目的とするものである。
【0003】
III/N型窒化材料は、周期律表のIII族元素と結合した窒素、特に、窒化ガリウム(GaN)やインジウム(In)、ホウ素(B)およびアルミニウム(Al)をベースとした様々な窒化物または複合窒化物からなる材料である。
【0004】
これらは、可視光や紫外光を発する発光ダイオード(LED)あるいは青色/紫色レーザーダイオードなどの高出力高周波電子機器や高温にさらされる機器などへの応用に有望な材料である。
【0005】
参考のため、以下でGaNの結晶構造が六方晶系であることを再確認し、その構造を図1に模式的に示した。
【0006】
図より、窒化ガリウムの六方晶系構造はプリズム形の単位結晶格子からなり、プリズム形格子の底面の辺は等しい長さa(3.1896Åまたは0.31896nm)を持ち、互いに120°の方向を向いていることが分かる。また、プリズムの高さはc(5.1855Åまたは0.51855nm)で表わされる。六方晶系では、結晶面を示すベクトルa1、a2、a3およびcと関連する4つの指数(h,k,i,l)に基づいた表記を行うのが、一般的な慣習である。
【0007】
最も一般的な窒化ガリウム(GaN)基板は表面の法線方向にc結晶軸を有している。基板の成長はc軸に沿う、あるいは、成長面はc面であると言われている。以下では、このような基板を「標準GaN」基板と呼び、極性であるという。
【0008】
B.A.Haskellらによる「Structure and morphological characteristics of polar (11-20)a-plane gallium nitride grown by hydride vapor phase epitaxy」、Applied Physics Letters、第83巻、第8号、2003年8月、1554−1556頁で説明されているように、標準GaNでできた基板には、望まない自然ピエゾ電気偏光効果が生じるという欠点がある。
【0009】
従って、標準GaN基板は上記の技術的応用に用いる電子部品の製造に、必ずしも常に好適であるとは言えない。
【0010】
さらに、III/N型窒化材料層を基板上に簡単に移設する工業的な方法は存在しない。
【0011】
A. Tauzinらによる論文「Transfer of two-inch GaN film by the Smart-CutTM technology」、Electronics Letters、2005年5月26日、第41巻、第11号には、スマートカット(商品名)技術による標準GaN膜の支持基板上への移設の可能性が記載されている。この論文ではGaN材料中にブリスター泡を生じさせる条件が研究されている。ブリスター泡は、GaNに少なくとも2×1017H+/cm2以上の水素を注入した場合だけに生じる。
【0012】
I. Raduらによる「Formation of nanovoids in high-dose hydrogen implanted GaN」、Applied Physics Letters、89、031912、(2006)、またR. Signhらによる「Investigation of hydrogen implantation induced blistering in GaN」、Phys. Stat. Sol.、(c)3、第6号、1754−1757、さらにS.O. Kucheyevらによる「Blistering of H-implanted GaN」、Journal of Applied Physics、第91巻、第6号、2002年3月15日、3928−3930頁などの論文では、2.6×1017H+/cm2以上の水素を注入した標準GaNのアニール処理後に生じるブリスター欠陥について言及している。
【0013】
C.H. Seagerらによる論文「Infrared and transmission electron microscopy studies of ion-implanted H in GaN」、Journal of Applied Physics、第85巻、第5号、1999年3月1日、2568−2573頁にも、2×1016H+/cm2から1×1017H+/cm2のH+を注入し、約890℃で1時間の熱授受を経た標準GaNに生じた角柱状空隙が示されている。
【0014】
上記のすべて数値から判るように、GaNを破断するためのイオン注入量はケイ素を破断するのに必要な量の少なくとも5倍であり、そのため、工業的製法への応用がさらに困難になっている。なぜなら、使用する注入流量密度にもよるが、これらの注入量を得るためには注入操作を数10時間継続する必要があるかもしれないからである。
【0015】
また最後にD, Alquireらによる論文"Interaction between dislocation and He-implantation-induced voids in GaN epitaxial layers"、Applied Physics Letters、86、211911(2005) には標準GaNにヘリウムイオンHe+を注入する実験の結果が述べられている。
【0016】
この論文では、GaNに1×1016He+/cm2を超える量のHe+を注入し1000℃から1100℃で2分間の熱処理を行うと空隙が生じ、その空隙のなかには円筒形のものや角柱形のものもあると述べられている。
【0017】
しかしながら、この論文では工業的な層移設プロセスの実施については述べられてない。
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的の一つは、六方晶系の結晶構造を持つIII/N型窒化材料の層、特に、窒化ガリウムの層を移設する方法を提供することである。窒化ガリウム層の移設は、従来の文献で述べられている注入量、例えば、A. Tauzinらによる論文"Transfer of two-inch GaN film by the Smart-CutTM technology"、Electronics Letters、2005年5月26日、第41巻、第11号で述べられている2×1017H+/cm2から5×1017H+/cm2よりも少ない注入量を用いることで容易に工業化できる。
【0019】
さらに、本発明は、イオン注入や層移設工程の後でも良好な結晶性を有する六方晶系構造のIII/N型窒化材料層を提供することにもある。
【0020】
この目的のため、本発明は、電子工学、光学、あるいは光エレクトロニクスなどの分野での応用を目的とする、少なくとも1つのIII/N型窒化材料「活性」層を具備するハイブリッド基板を得る方法に関するものである。
【0021】
本発明による製造法は、
−六方単結晶の結晶構造を有するIII/N型窒化材料でできた「原材」基板(1)を選択する工程、
−前記基板内部の制御した平均注入深度に多数のナノ空隙(12)を生じさせて、前記活性層(14)を決定する脆弱領域(13)を作ることを目的として、前記窒化材料の「c」結晶軸に平行もしくは略平行な平面内にある「注入面」(10)と呼ばれる面の一つを通して、1×1016He+/cm2以上のヘリウムイオンHe+を前記原材基板(1)に注入する工程、および
−前記ナノ空隙(12)をより大きな空隙へと変形させることが可能な「空隙成長熱授受」と呼ばれる熱授受と、活性層(14)を原材基板(1)の他の残余部分(15)から分離させることが可能な「分離エネルギー授受」と呼ばれる補助的エネルギー授受とからなる、全エネルギー授受を施すことによって前記活性層(14)を移設する工程、
からなることを特徴とする。
【0022】
これら本発明の特徴によって、注入時間を短縮することができ、従って、総製造時間も短縮できる。さらに、注入時にイオンが材料を透過することで生じる損傷や製造コストも低減することが可能になる。
【0023】
本発明の他の有利な特徴として、以下のようなものを特に制限なく、個々に、あるいは組み合わせて特徴とすることができる。
−前記原材基板(1)へのイオン注入がヘリウムイオンHe+のみによって独占的に行われること;
−ヘリウムイオンHe+の注入量が1×1016He+/cm2から1×1017He+/cm2の間であること;
−前記窒化材料活性層の移設が、前記原材基板の注入面に接合材を結合させる分子接着工程を含むこと;
−空隙成長熱授受を、接合材を結合させる前に行うこと;
−空隙成長熱授受を、接合材を結合させた後に行うこと;
−前記窒化材料活性層の移設が、前記原材基板の注入面に材料層を蒸着させる工程を含むこと:
−前記蒸着がホモエピタキシャル成長またはヘテロエピタキシャル成長であること;
−エピタキシャル成長工程が、空隙成長熱授受の一部もしくは全部をなすこと;
−エピタキシャル成長工程が、分離エネルギー授受の一部もしくは全部をなすこと;
−エピタキシャル成長工程が、前記活性層を移設するための全エネルギー授受をなすこと;
−前記空隙成長熱授受が、800℃以上での加熱を含むこと;
−前記分離エネルギー授受が、機械的な由来のものであること;
−ヘリウムイオンHe+の注入エネルギーが、30から250keVの間であること;
−窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、窒化ホウ素(BN)およびアルミニウム、ガリウム、ホウ素、インジウムから選ばれる少なくとも2種類の材料の複合窒化物、から選ばれる材料で前記原材基板ができていること;
−六方単結晶の結晶構造を有する、成長面がc面であるバルクIII/N型窒化材料で前記原材基板ができていて、そのバルク材料を、一つの面が前記バルク材料のc結晶軸に平行もしくは略平行な平面内にあるように切り出すことで原材基板が得られたものであること;
−六方単結晶の結晶構造を有する、成長面がa面またはm面であるバルクIII/N型窒化材料で前記原材基板ができていること;および
−前記原材基板が、自由面がc結晶軸に平行もしくは略平行であり、成長面がa面またはm面である窒化ガリウム(GaN)単結晶層で覆われた種子支持材からなる複合基板であること。
【0024】
また、本発明は、電子工学、光学、あるいは光エレクトロニクスなどの分野での応用を目的とするハイブリッド基板に関するものでもある。本発明によるハイブリッド基板は、そのハイブリッド基板の面のうち「前」面と呼ばれる面に対して平行もしくは略平行なc結晶軸を持つ六方単結晶の結晶構造を有するIII/N型窒化材料の活性層を具備しており、その活性層が分子結合によって接合材と結合していて、さらに、前記ハイブリッド基板が上記のいずれかの製造法によって得られたものであることを特徴としている。
【0025】
本発明の他の特徴や利点を、以下に述べる記述より明らかにする。以下では、本発明を実施するための数種の可能な手順を示した添付図面を参照しながら説明するが、これらは例を示したものであって、決して本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】六方晶系の窒化ガリウム(GaN)の結晶構造を示す図である。
【図2】図2Aから2Eは、本発明による製造法を実施するための2つの異なる一連の手順のひとつを説明する図である。
【図3】図3Aから3Eは、本発明による製造法を実施するための2つの異なる一連の手順のひとつを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図2Aには、III/N型窒化材料でできた「原材」基板が示されている。III/N型窒化材料は六方単結晶の結晶構造を有していて、そのc結晶軸は面10に平行もしくは略平行である。
【0028】
上記材料の例としては、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、窒化インジウム(InN)、あるいはアルミニウム、ガリウム、ホウ素、インジウムから選ばれる少なくとも2種類の材料の複合窒化物、例えば、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)および窒化ホウ素ガリウム(BGaN)のような3元複合窒化物、また、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)のような4元複合窒化物、などを挙げることができる。
【0029】
原材基板1は、六方単結晶の結晶構造を有するIII/N型窒化材料でできていて、その成長面がc面、すなわち(0001)面であるか、または(11−20)面のようなa面、あるいは(10−10))のようなm面であることが好ましい。ここで注意すべきは、a面やm面は複数存在するが、c面は一つしか存在しないことである。
【0030】
第一の場合として、バルク材料の成長面がc面である場合は、そのc面に垂直もしくは略垂直に材料をウエハー状に切り出して、得られる原材基板1の面10がバルク材料のc結晶軸に平行もしくは略平行な平面内にあるようにする。
【0031】
第二の場合として、バルク材料の成長面がa面またはm面である場合は、原材基板1の面10は、もともとバルク材料のc結晶軸に平行もしくは略平行な平面内にあるので切り出す必要はない。
【0032】
ここで「略垂直」とは、角度が垂直軸から±5°の範囲内にあることをいう。
【0033】
a面またはm面の原材基板1は、種子基板上にエピタキシャル成長させることで得てもよい。種子基板材料の表面は、当業者には良く知られている適切な結晶面を有している(T.S.Koらによる論文"Study on optical growth of a-plane GaN frown on r-plane sapphire by metal-organic chemical vapor deposition"、Journal of Crystal Growth 300 (2007) 308-313を参照のこと)。
【0034】
a面GaNは、例えば、表面がr面のサファイア基板上にエピタキシャル成長させることで得てもよい。また、m面GaNはm面SiC基板あるいは(100)LiAlO2基板から得られる。
【0035】
次に、図2Bに示したように、原材基板1にヘリウムイオン(He+)注入を行う。このイオン注入は面10上で行うことが好ましい。以下の記述および請求項では、この面を「注入面」と呼ぶこととする。
【0036】
場合によっては、このイオン注入を、反対の面11から行うことも可能である。
【0037】
すなわち、イオン注入は原材基板1の「c」結晶軸に垂直もしくは略垂直に行う。
【0038】
注入量は、少なくとも1×1016He+/cm2以上で4×1017He+/cm2未満であることが好ましい。さらに好ましくは1×1016He+/cm2と1×1017He+/cm2の間である。
【0039】
注入エネルギーは数十keVから数百keVであり、破断に好適な脆弱域および移設する層を所望の厚さにするのに必要な注入深度を得るためには、30から250keVであることが好ましい。
【0040】
イオン注入は、ヘリウムイオンHe+のみによって独占的に行われることが好ましい。あるいは、必要に応じて、1種もしくは数種の他のイオン種を原材基板1に注入してもよい。これらの共注入はヘリウムイオンの注入と同時でも、また、連続的に行ってもよい。
【0041】
イオン注入によって、原材基板1内の制御した平均注入深度に多数のナノ空隙、すなわちナノスケールの大きさの空隙、を生じさせることができる。これらの空隙は球形もしくは略球形であり、その直径は約1から2nmである。これらによって、脆弱域13が定められる。
【0042】
脆弱域13は、一方では、注入面10にまで及ぶ活性層14と、他方では、面11までに及ぶ残余部分15との間の境界である。
【0043】
この脆弱域13を生成したい深さ、正確には、最終的に得られる基板内に作る活性層14をどのくらいの厚さにしたいのかに応じて、注入エネルギーを調節する。
【0044】
例えば、窒化ガリウム(GaN)基板に90keVでHe+を注入すると、注入面から約400nmの深さに脆弱域13を生じさせることができる。
【0045】
ここで注意すべきことは、上記のヘリウム注入量が、先行技術による窒化ガリウム層の移設で一般的に用いられるH+イオン注入量である3から5×1017H+/cm2と比べて、少量であることである。
【0046】
従って、この注入量の少なさに比例して、本発明の製造法では注入時間を大幅に短縮できる。
【0047】
次に。活性層14を移設するが、そのためには、まず、活性層14を原材基板1の残余部分15から分離する必要がある。
【0048】
この活性層14の移設は、以下で「全エネルギー授受」と呼ぶ、上記の分離を完遂するのに十分なエネルギーの授受によって行う。
【0049】
この「全エネルギー授受」は、前記ナノ空隙12を大きな空隙へと変形させることが可能な「空隙成長熱授受」と呼ばれる熱授受と、活性層14を原材基板1の残余部分15から分離させることが可能な「分離エネルギー授受」と呼ばれる補助的エネルギー授受からなっている。
【0050】
図2Cから2Dに示した、本発明を実施する第1の方法では、まず、原材基板1の注入面10上に接合材2を分子接着結合させて、その後に、ナノ空隙12を成長させる、すなわち、ナノ空隙を大きくさせるのに十分な熱授受を、少なくとも1回行うことで移設を行う。
【0051】
なお、ここで「熱授受」とは、「熱処理時間/その処理を行う温度」の組合せを意味する。
【0052】
この熱授受の作用によって、ナノ空隙12は成長し空隙12’となる。空隙12’の大部分は円筒形で、原材基板1のc−軸に平行もしくは略平行に向いている。これらの空隙の大きさは、例えば、1×1017He+/cm2の注入量、100keVのエネルギーでイオン注入し、1000℃から1100℃で数分間のアニール処理した後の長さで、数十nmに達する。この工程を図2Dに示した。
【0053】
接合材2は、結合後に施される破断熱処理の際にあまり高い応力を受けないように、活性層14との熱膨張係数(CTE)の差が十分に小さな材料から選ばれることが好ましい。
【0054】
さらに、接合材の材料は、最終的に得られる構造物3の用途に応じて選んでもよい。もし、構造物3をエピタキシー成長に用いるなら、接合材の材料はエピタキシー成長させる物質に近いCTEを持つように選ぶのが有利となる。
【0055】
接合材2の材料と活性層14の材料とでCTEが大きく異なる場合、例えば、GaNとサファイアのような場合、両材料を結合させて得られる構造物は高温の熱処理に耐えられない。GaNとサファイアの場合、両者の複合構造体が分解せずに耐えられる熱処理温度は、せいぜい300℃までである。従って、空隙12’を生成させるのに必要な「成長」熱授受は、接合材を結合する前に行うほうが賢明である。
【0056】
次に、結合を安定化するためにアニール処理を行うが、これはGaNを破断するために施すエネルギー授受の一部をなす。これは機械的な応力を与えることで補助してもよい。
【0057】
ナノ空隙12を成長させるための熱授受は、少なくとも数分間、800℃以上で行う。
【0058】
当業者であれば、窒化材料の性質および注入条件(特に、ヘリウム注入量)に応じて、この授受を調節できる。
【0059】
例えば、窒化ガリウム(GaN)について行った実験では、660℃で3時間行った熱処理では空隙12’は生じなかったが、1100℃で2分間行った熱処理では空隙12’が生じ始めた。当業者であれば、比較的低い温度で熱処理を行う場合は比較的長い時間の処理が必要であることは公知である。
【0060】
例えば、窒化ガリウムでは、熱処理を800℃で1時間行うと空隙12’が生成する。
【0061】
空隙成長熱授受を行った後に、分離のために補助的エネルギー授受、例えば、ブレード刃や超音波を用いた機械的な切開を行う。
【0062】
また、熱リン酸(H3PO4)や水酸化カリウム(KOH)を用いた化学エッチング処理によって活性層14を分離してもよい。
【0063】
ただし、この場合は、処理してはならない基板面を保護しておくことが前提となる。
【0064】
さらに、補助的エネルギー授受は熱的なものであってもよい。
【0065】
残余部分15から分離して得られたハイブリッド基板を図2Eに示す。得られた基板は、参照番号3で表わされ、接合材2と窒化材料活性層14からなっている。
【0066】
接合材2が薄い場合、すなわち、5μm程度の厚さの場合、接合材は単に活性層14のいわゆる「剥離」移設を行うためだけに機能する。しかし、接合材2が厚い場合、すなわち、100μm程度の厚さの場合は、得られるハイブリッド基板3は十分に厚くなり、自己支持できるようになるとともに、例えば、さらなるエピタキシャル成長を行うのに使用することが出来るようになる。
【0067】
本発明を実施する第2の方法を図3Aから3Eに示した。この方法における各要素は、第1の実施方法と同様で、上記と同じ参照番号で表わされている。
【0068】
この方法では、前記原材基板1の注入面10上に材料層4を蒸着させることで移設を行う。この材料層4の形成を図3Cに示した。この蒸着は、図3Dに示したように、例えば、最終的に自立支持構造が得られるような特定の厚さに到達するまで行う。
【0069】
この蒸着はエピタキシャル成長で行ってもよい。
【0070】
このエピタキシャル成長は、MOCVD(有機金属化学蒸着)、HVPE(ハイブリッド気相エピタキシャル成長)、MBE(分子線エピタキシャル成長)およびELOG(エピタキシャル横方向成長)などの当業者に公知の方法で、結晶成長装置を用いて行うことが好ましい。
【0071】
このエピタキシャル成長は、材料層4や原材基板1の物性に応じて、ホモエピタキシャル成長でもヘテロエピタキシャル成長でもよい。
【0072】
ヘテロエピタキシャル成長の場合、層4の材料は、例えば、欠陥密度の低い結晶構造が成長するように活性層14と同じ格子定数を持つように選択する。あるいは、活性層14との熱膨張係数(CTE)の違いよって、冷却の際に、活性層、材料層の一方に亀裂が生じないように選んでもよい。
【0073】
第1の実施方法では、ナノ空隙をより大きな空隙に成長させるのに十分な熱授受となるように、エピタキシャル成長は適切な温度で適切な時間行う。
【0074】
空隙12’を生成するのに必要な熱量に達する前に、エピタキシャル成長層が所望の厚さになった場合は、熱授受に付加的な熱処理を追加してもよい。
【0075】
その後、補助的なエネルギー授受を施す。これは、第1の実施方法で述べたものと同様である。(例えば、ブレード刃や、超音波、化学エッチング、加熱などを利用する。)
【0076】
第2の実施方法では、エピタキシャル成長工程の前に空隙成長熱授受を行う。
【0077】
その後のエピタキシャル成長工程で供給されるエネルギーは、活性層14の分離にも貢献する。必要に応じて、このエネルギー授受は補完されてもよい。すなわち、この場合、エピタキシャル成長は分離エネルギー授受の一部または全部をなしている。
【0078】
最後に、第3の実施方法として、活性層14を移設するのに必要な全エネルギー授受を、エピタキシャル成長単独で十分まかなえる場合もある。
【0079】
図3Eに示したように、分離によって得られたものが、エピタキシャル成長層4上に移設された活性層14を有するハイブリッド基板3’である。
【0080】
以下に、二つの本発明の実施例を詳細に記述する。
【実施例1】
【0081】
六方晶系の窒化ガリウム(GaN)基板のc結晶軸に平行な注入面に、注入量6×1016He+/cm2、注入エネルギー90keVでヘリウムイオンを注入した。
【0082】
イオン注入によって、注入面から400nmの深さに脆弱域を生成する空隙が生じた。
【0083】
次に、基板上に上記のHVPE技術を用いたGaNエピタキシャル成長を行い、約数ミクロンの厚さのGaN層を得た。
【0084】
成長は約1000℃の温度で3時間続け、その後、原材基板を脆弱域の面で破断した。このようにしてハイブリッド基板を得た。本実施例の場合、エピタキシャル成長は、空隙成長熱授受と分離エネルギー授受の両方の働きをしている。
【実施例2】
【0085】
六方晶系の窒化ガリウム(GaN)基板のc結晶軸に平行な注入面に、注入量6×1016He+/cm2、注入エネルギー90keVでヘリウムイオンを注入した。
【0086】
次に、1000℃から1100℃で適切な時間熱授受を行って、ナノ空隙12を空隙12’に成長させた。この熱授受で基板1の表面にブリスター泡が生じることも、活性層14が剥離することもなかった。
【0087】
続いて、基板のブリスター泡が生じなかった注入面に、GaN基板と大きく異なるCTEを有する接合材2、本実施例の場合、サファイアを密着させた。
【0088】
得られた接合体にアニール処理を施して接合境界面を強化した。このアニール処理は両者が分離する温度よりも低い温度で行った。
【0089】
試料にブレード刃を用いた機械的応力を加えて、GaNの脆弱域で破断した。
【0090】
このようにしてGaN層で覆われたサファイア支持体からなるハイブリッド基板を得た。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子工学、光学、太陽光発電あるいは光エレクトロニクスの分野での応用を目的とする、III/N型窒化材料の“活性”層(14)を少なくとも1つ具備してなるハイブリッド基板(3,3’)を得る方法であって、
−六方単結晶の結晶構造を有するIII/N型窒化材料でできた「原材」基板(1)を選択する工程、
−前記基板内部の制御した平均注入深度に多数のナノ空隙(12)を生じさせて、前記活性層(14)を決定する脆弱領域(13)を作ることを目的として、前記窒化材料の「c」結晶軸に平行もしくは略平行な平面内にある「注入面」(10)と呼ばれる面の一つを通して、1×1016He+/cm2以上のヘリウムイオンHe+を前記原材基板(1)に注入する工程、および
−前記ナノ空隙(12)をより大きな空隙へと変形させることが可能な「空隙成長熱授受」と呼ばれる熱授受と、活性層(14)を原材基板(1)の他の残余部分(15)から分離させることが可能な「分離エネルギー授受」と呼ばれる補助的エネルギー授受とからなる、全エネルギー授受を施すことによって前記活性層(14)を移設する工程、
からなることを特徴とするハイブリッド基板製造法。
【請求項2】
前記原材基板(1)へのイオン注入がヘリウムイオンHe+のみによって独占的に行われることを特徴とする請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
ヘリウムイオンHe+の注入量が1×1016He+/cm2から1×1017He+/cm2の間であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造法。
【請求項4】
前記窒化材料活性層(14)の移設が、前記原材基板(1)の注入面(10)に接合材(2)を結合させる分子接着工程を含むことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の製造法。
【請求項5】
空隙成長熱授受を、接合材(2)を結合させる前に行うことを特徴とする請求項4に記載の製造法。
【請求項6】
空隙成長熱授受を、接合材(2)を結合させた後に行うことを特徴とする請求項4に記載の製造法。
【請求項7】
前記窒化材料活性層(14)の移設が、前記原材基板(1)の注入面(10)に材料層(4)を蒸着させる工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造法。
【請求項8】
前記蒸着がホモエピタキシャル成長であることを特徴とする請求項7に記載の製造法。
【請求項9】
前記蒸着がヘテロエピタキシャル成長であることを特徴とする請求項7に記載の製造法。
【請求項10】
エピタキシャル成長工程が、空隙成長熱授受の一部もしくは全部をなすことを特徴とする請求項8または9に記載の製造法。
【請求項11】
エピタキシャル成長工程が、分離エネルギー授受の一部もしくは全部をなすことを特徴とする請求項8または9に記載の製造法。
【請求項12】
エピタキシャル成長工程が、前記活性層(14)を移設するための全エネルギー授受をなすことを特徴とする請求項8または9に記載の製造法。
【請求項13】
前記空隙成長熱授受が、800℃以上での加熱を含むことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の製造法。
【請求項14】
前記分離エネルギー授受が、機械的な由来のものであることを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の製造法。
【請求項15】
ヘリウムイオンHe+の注入エネルギーが、30から250keVの間であることを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の製造法。
【請求項16】
窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、窒化ホウ素(BN)およびアルミニウム、ガリウム、ホウ素、インジウムから選ばれる少なくとも2種類の材料の複合窒化物、から選ばれる材料で前記原材基板(1)ができていることを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の製造法。
【請求項17】
六方単結晶の結晶構造を有する、成長面がc面であるバルクIII/N型窒化材料で前記原材基板(1)ができていて、そのバルク材料を、一つの面(10)が前記バルク材料のc結晶軸に平行もしくは略平行な平面内にあるように切り出すことで原材基板(1)が得られたものであることを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の製造法。
【請求項18】
六方単結晶の結晶構造を有する、成長面がa面またはm面であるバルクIII/N型窒化材料で前記原材基板(1)ができていることを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の製造法。
【請求項19】
前記原材基板(1)が、自由面(10)がc結晶軸に平行もしくは略平行であり、成長面がa面またはm面である窒化ガリウム(GaN)単結晶層で覆われた種子支持材からなる複合基板であることを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の製造法。
【請求項20】
電子工学、光学、太陽光発電あるいは光エレクトロニクスの分野での応用を目的とするハイブリッド基板(3,3’)であって、前記ハイブリッド基板の面のうち「前」面と呼ばれる面(30、30’)に対して平行もしくは略平行なc結晶軸を持つ六方単結晶の結晶構造を有するIII/N型窒化材料の活性層(14)を具備しており、前記活性層(14)が分子結合によって接合材(2)と結合していて、さらに、前記ハイブリッド基板(3,3’)が上記請求項のいずれかに記載の製造法によって得られたものであることを特徴とするハイブリッド基板。
【請求項1】
電子工学、光学、太陽光発電あるいは光エレクトロニクスの分野での応用を目的とする、III/N型窒化材料の“活性”層(14)を少なくとも1つ具備してなるハイブリッド基板(3,3’)を得る方法であって、
−六方単結晶の結晶構造を有するIII/N型窒化材料でできた「原材」基板(1)を選択する工程、
−前記基板内部の制御した平均注入深度に多数のナノ空隙(12)を生じさせて、前記活性層(14)を決定する脆弱領域(13)を作ることを目的として、前記窒化材料の「c」結晶軸に平行もしくは略平行な平面内にある「注入面」(10)と呼ばれる面の一つを通して、1×1016He+/cm2以上のヘリウムイオンHe+を前記原材基板(1)に注入する工程、および
−前記ナノ空隙(12)をより大きな空隙へと変形させることが可能な「空隙成長熱授受」と呼ばれる熱授受と、活性層(14)を原材基板(1)の他の残余部分(15)から分離させることが可能な「分離エネルギー授受」と呼ばれる補助的エネルギー授受とからなる、全エネルギー授受を施すことによって前記活性層(14)を移設する工程、
からなることを特徴とするハイブリッド基板製造法。
【請求項2】
前記原材基板(1)へのイオン注入がヘリウムイオンHe+のみによって独占的に行われることを特徴とする請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
ヘリウムイオンHe+の注入量が1×1016He+/cm2から1×1017He+/cm2の間であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造法。
【請求項4】
前記窒化材料活性層(14)の移設が、前記原材基板(1)の注入面(10)に接合材(2)を結合させる分子接着工程を含むことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の製造法。
【請求項5】
空隙成長熱授受を、接合材(2)を結合させる前に行うことを特徴とする請求項4に記載の製造法。
【請求項6】
空隙成長熱授受を、接合材(2)を結合させた後に行うことを特徴とする請求項4に記載の製造法。
【請求項7】
前記窒化材料活性層(14)の移設が、前記原材基板(1)の注入面(10)に材料層(4)を蒸着させる工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造法。
【請求項8】
前記蒸着がホモエピタキシャル成長であることを特徴とする請求項7に記載の製造法。
【請求項9】
前記蒸着がヘテロエピタキシャル成長であることを特徴とする請求項7に記載の製造法。
【請求項10】
エピタキシャル成長工程が、空隙成長熱授受の一部もしくは全部をなすことを特徴とする請求項8または9に記載の製造法。
【請求項11】
エピタキシャル成長工程が、分離エネルギー授受の一部もしくは全部をなすことを特徴とする請求項8または9に記載の製造法。
【請求項12】
エピタキシャル成長工程が、前記活性層(14)を移設するための全エネルギー授受をなすことを特徴とする請求項8または9に記載の製造法。
【請求項13】
前記空隙成長熱授受が、800℃以上での加熱を含むことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の製造法。
【請求項14】
前記分離エネルギー授受が、機械的な由来のものであることを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の製造法。
【請求項15】
ヘリウムイオンHe+の注入エネルギーが、30から250keVの間であることを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の製造法。
【請求項16】
窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、窒化ホウ素(BN)およびアルミニウム、ガリウム、ホウ素、インジウムから選ばれる少なくとも2種類の材料の複合窒化物、から選ばれる材料で前記原材基板(1)ができていることを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の製造法。
【請求項17】
六方単結晶の結晶構造を有する、成長面がc面であるバルクIII/N型窒化材料で前記原材基板(1)ができていて、そのバルク材料を、一つの面(10)が前記バルク材料のc結晶軸に平行もしくは略平行な平面内にあるように切り出すことで原材基板(1)が得られたものであることを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の製造法。
【請求項18】
六方単結晶の結晶構造を有する、成長面がa面またはm面であるバルクIII/N型窒化材料で前記原材基板(1)ができていることを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の製造法。
【請求項19】
前記原材基板(1)が、自由面(10)がc結晶軸に平行もしくは略平行であり、成長面がa面またはm面である窒化ガリウム(GaN)単結晶層で覆われた種子支持材からなる複合基板であることを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の製造法。
【請求項20】
電子工学、光学、太陽光発電あるいは光エレクトロニクスの分野での応用を目的とするハイブリッド基板(3,3’)であって、前記ハイブリッド基板の面のうち「前」面と呼ばれる面(30、30’)に対して平行もしくは略平行なc結晶軸を持つ六方単結晶の結晶構造を有するIII/N型窒化材料の活性層(14)を具備しており、前記活性層(14)が分子結合によって接合材(2)と結合していて、さらに、前記ハイブリッド基板(3,3’)が上記請求項のいずれかに記載の製造法によって得られたものであることを特徴とするハイブリッド基板。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【公表番号】特表2010−537936(P2010−537936A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523487(P2010−523487)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061488
【国際公開番号】WO2009/030662
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(503368410)エス.オー.アイ.テック、シリコン、オン、インシュレター、テクノロジーズ (49)
【氏名又は名称原語表記】S.O.I.TEC SILICON ON INSULATOR TECHNOLOGIES
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061488
【国際公開番号】WO2009/030662
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(503368410)エス.オー.アイ.テック、シリコン、オン、インシュレター、テクノロジーズ (49)
【氏名又は名称原語表記】S.O.I.TEC SILICON ON INSULATOR TECHNOLOGIES
【Fターム(参考)】
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