説明

差動論理回路、分周回路、及び周波数シンセサイザ

【課題】動作電流を変えても直流出力電圧の変わらない差動論理回路及び分周回路、さらには、周波数シンセサイザにおける動作電流の調整方法を提供する。
【解決手段】複数対の差動論理信号を入力し論理演算を行ってその結果を一対の差動信号出力端子から出力する差動論理部と、差動論理部に電流を供給する電流源回路であって前記電流の大きさが制御可能な電流源回路と、差動信号出力端子に接続された負荷回路と、負荷回路に接続され、一対の差動信号出力端子の直流出力電圧が一定の電圧になるように負荷回路の負荷を制御する負荷制御回路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動論理回路、分周回路、及び周波数シンセサイザに関する。特に、動作電流が制御可能である差動ラッチ回路、その差動ラッチ回路を用いた分周回路及び周波数シンセサイザに関する。
【背景技術】
【0002】
通信機、移動通信端末及びそれに用いられる高周波集積回路には高周波通信キャリアを発生するため、周波数シンセサイザが広く用いられている。図1は、一般的な周波数シンセサイザの構成を示すブロック図である。図1に示す周波数シンセサイザは、電圧制御発振器(VCO)200、分周器910、位相比較器及びチャージポンプ220、ループフィルタ230を含むPLL周波数シンセサイザである。電圧制御発振器(VCO)200は、ループフィルタ230が出力する制御電圧によって発振周波数が制御され、高周波のクロック信号fvcoを出力する。クロック信号fvcoは高周波通信キャリアとして用いることができる。分周器910は、高周波のクロック信号fvcoを分周する。位相比較器及びチャージポンプ220は、分周器910で分周したクロック信号を基準となるリファレンスクロックと周波数、位相を比較する位相比較器と、位相比較器の比較結果に基づいて、電荷を充放電するチャージポンプ回路とから構成される。ループフィルタ230は、チャージポンプによって充放電された電荷を平滑化して電圧制御発振器(VCO)の発振周波数を制御する制御電圧を生成する。この構成により、分周器910の出力するクロック信号は、リファレンスクロックと位相の揃った所望の周波数の信号が得られる。また、分周器を可変分周回路で構成し、分周比を変えることで、電圧制御発振器VCOの出力するクロック信号fvcoを所望の周波数に設定することができる。
【0003】
上記周波数シンセサイザの構成において、電圧制御発振器200と分周器910は高い周波数において動作するため、大きな電力を消費する。更に、近年、無線通信のマルチバンド対応や、広帯域化のため、使用上限周波数が高くなっており、周波数シンセサイザはより大きいな電力を消費することになる。一方、通信機、特に移動通信端末は、長時間動作をさせるため、さらには、電池の小型化して端末をより小型化にするため、送受信回路全体の低消費電力化と共に、周波数シンセサイザの低消費電力化が望まれている。
【0004】
特許文献1には、低消費電力で広い発振周波数範囲に対応したPLL回路が記載されている。図2は、特許文献1に記載されているPLL回路(周波数シンセサイザ)のブロック図である。図2のPLL回路の構成のうち、電圧制御発振器200、分周器911、第1の位相比較器921、チャージポンプ922、フィルタ230は、ほぼ図1の記載の周波数シンセサイザの構成に相当する。図2では、この構成に加えて、第2の位相比較器923と電流制御回路924を備えている。第2の位相比較器923は、第1の位相比較器921より長い期間における分周器911で分周したクロック信号fDIVとリファレンスクロック信号fREFの位相差を時間平均して求める。電流制御回路924は、その第2の位相比較回路923の比較結果に基づいて、分周器911の動作電流を制御する。図2の構成によれば、PLL回路が第2の位相比較器により安定したロック状態に入ったか否かを検出し、安定したロック状態に入ったときに分周回路911の動作電流を低減することにより、分周回路の消費電力を低減できる。
【0005】
また、図3は、特許文献1に記載されている分周器911の内部の構成である。分周器911は、電圧制御発振器の発振信号fvcoを入力して分周する固定分周器912と、固定分周器912の分周した周波数をさらに分周して周波数を低くするプリスケーラ913と、可変分周回路であるプログラマブルカウンタ914により構成され、プログラムブルカウンタの出力信号が位相比較器によりリファレンスクロックと位相が比較される。これらの構成のうち、最も高速に動作する固定分周器912には、制御入力端子915が設けられており、電流制御回路924により動作電流が制御可能に構成されている。
【0006】
上記固定分周器912のような高周波で動作する回路には、複数の差動ラッチ回路の組み合わせにより構成する1/2分周回路が用いられる。従来の差動ラッチ回路900を図4に、差動ラッチ回路900を使用した1/2分周回路を図5に示す。図4に示す差動ラッチ回路は、データ入力部となる差動対(M1、M4)と、保持部(M2、M3)と、電流源930と、負荷抵抗R11、R12を備え、データ端子D、Dbから入力されたデータ信号をクロック端子Ck、Ckbから入力されるクロック信号同期してラッチし、データ出力端子Q、Qbから出力する。
【0007】
また、図5に示す1/2分周回路990は、図4の差動ラッチ回路900−1と、911−2を2つ用いてクロック端子Ck、Ckbから入力したクロック信号を1/2分周してデータ出力端子Q、Qbから出力する分周回路である。図4に示す差動ラッチ回路、図5に示す1/2分周回路は差動で動作するため、高速な動作が可能である。なお、図4の差動ラッチ回路及び図5の1/2分周回路に相当するラッチ回路及び分周回路が特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−205601号公報
【特許文献2】特開2007−116257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以下の分析は本発明により与えられる。図3の固定分周回路912において、図5の1/2分周回路や、図4の差動ラッチ回路を複数用いて構成される分周回路を用い、電流源930に流す電流の大きさを制御することにより、動作周波数を調整すると共に、希望動作周波数に合わせて電流値を設定することも考えられる。図4の差動ラッチ回路において、データ出力端子Q又はQbの立下り速度は、電流源930に流す電流により制御することができる。
【0010】
しかし、データ出力端子Q又はQbの立ち上がり速度は、負荷抵抗R11、R12の抵抗値と出力端子に接続した素子と配線の寄生容量により決まり、電流源930に流す電流値を変えても変わらない。すなわち、図4に記載されているような従来の差動ラッチ回路を用いた場合には、固定負荷抵抗を使用しているため、電流源の電流の大きさを調整しても、データ出力端子Q又はQbの立ち上がり速度が変わらないため、差動ラッチ回路の最大トグル周波数可変範囲は小さい。また、電流源に流す電流を変えると差動ラッチ回路の直流出力電圧が変わり、次段の動作に影響を与えるため、電流源に流す電流を大きく変えることはできない。したがって、従来の差動ラッチ回路を用いた分周回路では、回路電流の調整による分周回路の最大動作可能周波数の調整範囲が狭い。このような差動ラッチ回路及び分周回路では、近年の低消費電力化、広帯域化とマルチバンド化が進む移動通信端末に使用される周波数シンセサイザには、対応できない。広い周波数範囲に対応し、どの周波数バンドにおいても可能な限りの低消費電力化を実現できるような差動ラッチ回路及び分周回路が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の側面による差動論理回路は、複数の論理信号を入力し、論理演算を行ってその結果を一対の差動信号出力端子から出力する差動論理部と、前記差動論理部に電流を供給する電流源回路であって前記電流の大きさが制御可能な電流源回路と、前記差動信号出力端子に接続された負荷回路と、前記負荷回路に接続され、前記一対の差動信号出力端子の直流出力電圧が一定の電圧になるように前記負荷回路の負荷を制御する負荷制御回路と、を備える。
【0012】
本発明の第2の側面による分周回路は、前記差動論理部が、複数の論理信号をデータ信号として入力し、前記一対の差動信号出力端子に接続された差動対と、前記差動信号出力端子の状態を保持する保持部と、一対の差動論理信号を差動クロック信号として入力し、前記差動クロック信号に基づいて、前記差動対又は前記保持部を選択的に前記電流源回路へ接続するスイッチ回路と、を備え、データラッチとして機能する差動論理回路である差動ラッチ回路が、前段の前記差動信号出力端子が後段の前記論理信号として入力し、後段のいずれかの前記差動信号出力端子が初段の前記論理信号として入力するように複数縦続接続され、前記複数縦続接続された差動ラッチ回路に共通に前記差動クロック信号が与えられ、前記差動クロック信号に同期して分周する。
【0013】
本発明の第3の側面による分周回路は、前記差動論理部が、複数の論理信号をデータ信号として入力し、前記一対の差動信号出力端子に接続された差動対と、前記差動信号出力端子の状態を保持する保持部と、一対の差動論理信号を差動クロック信号として入力し、前記差動クロック信号に基づいて、前記差動対又は前記保持部を選択的に前記電流源回路へ接続するスイッチ回路と、を備え、データラッチとして機能する差動論理回路である第1の差動ラッチ回路と第2の差動ラッチ回路とを備える。前記第1の差動ラッチ回路と第2の差動ラッチ回路は、前記クロック信号の位相が反転して共通に接続され、前記第1の差動ラッチ回路の前記一対の差動出力端子が前記第2の差動ラッチ回路の一対の差動信号入力端子に接続され、前記第2の差動ラッチ回路の前記一対の差動出力端子が前記第1の差動ラッチ回路の一対の差動信号入力端子に接続され、前記第1の差動ラッチ回路と前記第2の差動ラッチ回路で前記負荷制御回路が共通に設けられている。
【0014】
本発明の第4の側面による周波数シンセサイザは、電圧制御発振器と、前記電圧制御発振器の出力信号を分周する分周器と、前記分周器で分周した分周クロック信号とリファレンスクロック信号との位相を比較する位相比較器と、を備え、前記位相比較器で比較した位相差に基づいて、前記電圧制御発振器の電圧を制御して前記電圧制御発振器を所望の周波数で発振させる周波数シンセサイザにおいて、前記分周器が前記差動論理回路を含み、前記電圧制御発振器の発振周波数を制御する信号として、前記位相比較器で比較した位相差に基づく電圧信号を与えるか、前記電圧制御発振器の発振周波数が最大周波数となる定電圧信号を与えるか切り替える制御電圧切り替えスイッチと、前記制御電圧切り替えスイッチを定電圧信号側に切り替えて、前記電圧制御発振器を前記最大周波数となる発振周波数で発振させると共に、前記差動論理回路の前記電流源回路に流す前記電流の大きさを変化させながら前記分周クロック信号の周波数を評価し、その評価結果に基づいて、前記制御電圧切り替えスイッチを前記位相比較器で比較した位相差に基づく電圧信号に切り替えたときに前記電流源回路に流す電流の大きさを決定する動作電流調整部と、をさらに、備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の差動論理回路及び分周回路によれば、電流源回路に流す電流の大きさに係わらず、差動信号出力端子の直流出力電圧が一定の電圧を保持するように負荷回路の負荷を制御するので、電流源回路に流す電流を制御することにより、広い範囲で動作電流が変えられる。従って、回路に要求される動作速度に応じて、高速、かつ、低消費電力な差動論理回路及び分周回路が得られる。
【0016】
また、本発明の周波数シンセサイザによれば、分周器に要求される動作周波数に合わせて、最適な分周器の動作電流を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一般的な周波数シンセサイザの構成を示すブロック図である。
【図2】特許文献1に記載の従来の周波数シンセサイザの回路ブロック図である。
【図3】特許文献1に記載されている従来の分周器の構成を示すブロック図である。
【図4】従来の差動ラッチ回路の回路ブロック図である。
【図5】従来の差動ラッチ回路を用いた1/2分周回路の回路ブロック図である。
【図6】本発明の実施例1による差動ラッチ回路の回路ブロック図である。
【図7】実施例1における定電圧制御ループの回路ブロック図である。
【図8】実施例1における制御電圧と能動負荷の等価抵抗の関係を示す図である。
【図9】実施例1における差動ラッチ回路の動作タイミング図である。
【図10】実施例2における負荷制御回路の回路ブロック図である。
【図11】実施例3による1/2分周回路の回路ブロック図である。
【図12】実施例3における1/2分周回路の動作タイミング図である。
【図13】実施例4による差動論理回路の回路ブロック図である。
【図14】実施例5による1/4分周回路の回路ブロック図である。
【図15】実施例6による1/3分周回路の回路ブロック図である。
【図16】実施例7による1/7分周回路の回路ブロック図である。
【図17】実施例8による周波数シンセサイザのブロック図である。
【図18】実施例8による分周器の動作電流設定方法の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の具体的な実施例について説明に入る前に、本発明の実施形態の概要について説明しておく。なお、概要の説明で引用する図面及び図面の符号は実施形態の一例として示すものであり、それにより本発明による実施形態のバリエーションを制限するものではない。
【0019】
本発明の一実施形態による差動論理回路は、一例を図6、図13、図15(特に511)、図16(特に511A)に示すように、複数の論理信号(D、Db;Ck、Ckb;D−1,D−1b;D−2,D−2b;Q2b、Q4b;Q2b,Q4b,Q6)を入力し、論理演算を行ってその結果を一対の差動信号出力端子(Q、Qb)から出力する差動論理部(410、410A)と、差動論理部(410、410A)に電流を供給する電流源回路130であって電流の大きさが制御可能な電流源回路130と、差動信号出力端子(Q、Qb)に接続された負荷回路150と、負荷回路150に接続され、一対の差動信号出力端子(Q、Qb)の直流出力電圧が一定の電圧になるように負荷回路150の負荷を制御する負荷制御回路160と、を備える。従って、電流源回路に流す電流の大小によらず、一対の差動出力端子(Q、Qb)を構成する非反転信号出力端子Qの出力電圧と反転信号出力端子Qbの出力電圧とを平均した電圧である直流出力電圧を一定の電圧に保つことができる。これにより、差動論理回路に必要な動作速度に合わせて、広い範囲で電流源回路に流す電流の大きさを変えることができる。
【0020】
また、一実施形態による差動論理回路は、図6に一例を示すように、差動論理部410が、複数の論理信号(D、Db)をデータ信号として入力し、一対の差動信号出力端子(Q、Qb)に接続された差動対110と、差動信号出力端子(Q、Qb)の状態を保持する保持部120と、第2対の差動論理信号(Ck、Ckb)を差動クロック信号として入力し、差動クロック信号(Ck、Ckb)に基づいて、差動対110又は保持部120を選択的に電流源回路130へ接続するスイッチ回路140と、を備え、データラッチとして機能することが好ましい。
【0021】
また、差動クロック信号として入力する一対の差動論理信号(Ck、Ckb)を第1対の差動論理信号としたときに、差動対110には、第2対の差動論理信号(D、Db)がデータ信号として入力することが好ましい。
【0022】
また、図15の511、図16の511Aに一例を示すように、差動対の一方が前記複数の論理信号をそれぞれ入力する複数のトランジスタ(図15の11、12、図16の14〜16)により構成されると共に、差動対の他方が比較基準電圧信号を入力するトランジスタ(図15の13、図16の17)により構成され、複数の論理信号による組み合わせ論理演算を行った結果を差動信号出力端子から出力する組み合わせ論理演算機能付データラッチとして機能することが好ましい。
【0023】
一例を図6、図7、図10に示すように、負荷回路150は、電源VDDと一対の差動信号出力端子(Q、Qb)との間に接続された能動負荷回路(M8、M9)を含み、負荷制御回路160は、一対の差動信号出力端子(Q、Qb)の中間電圧Nvoが第一の差動入力端子Nvoに入力し、基準電圧信号Vr1が第二の差動入力端子に入力する差動増幅回路(170、170A)を備え、差動増幅回路(170、170A)は、中間電圧Nvoと基準電圧Vr1との電位差に基づいて前記能動負荷回路(M8、M9)を制御することが好ましい。
【0024】
また、負荷制御回路160は、一対の差動信号出力端子(Q、Qb)間に直列に接続された抵抗値の等しい第1抵抗R1と第2抵抗R2を含み、第1抵抗R1と第2抵抗R2との接続点Nvoの電圧が中間電圧として第一の差動入力端子に入力されていることが好ましい。上記構成によれば、非反転信号出力端子Qの出力電圧と反転信号出力端子Qbの出力電圧とを加算して2で割った直流出力電圧が差動増幅回路(170、170A)に入力されることになる。差動増幅回路(170、170A)はこの直流出力電圧を一定電圧に保つように負荷回路150の負荷を制御することもできる。なお、R1とR2は抵抗値が等しければよく、その抵抗値は負荷回路150の負荷に影響を与えないほど大きな抵抗値でもよい。抵抗値の大きさは必要に応じて決めることができる。
【0025】
また、図7に一例を示すように、差動増幅回路170は、電流出力型差動増幅回路であり、電流出力型差動増幅回路170の出力端子が能動負荷回路の制御端子Nvcに接続されると共に、基準電圧Vr1を第1の基準電圧Vr1としたときに、第2の基準電圧Vr2と制御端子Nvcとの間に接続された第3抵抗Raと、制御端子Nvcと接地との間に接続された第4抵抗Rbとをさらに備えることが好ましい。すなわち、差動増幅回路170は、電位差を電流に変換するいわゆるOTA(Operational Transconductance amplifier)であってもよい。
【0026】
また、図10に一例を示すように、差動増幅回路170Aの電圧出力端子が能動負荷回路150の制御端子に接続されていることが好ましい。すなわち、差動増幅回路170Aは、入力端子間の電位差に基づいた電圧を電圧出力端子から出力する電圧出力型の一般的な演算増幅回路(オペアンプ)であってもよい。
【0027】
図13に一例を示すように、差動論理部410Aが、それぞれ異なる差動信号(D−1とD−1b、D−2とD−2b)を入力する複数の差動対を組み合わせて構成されていることが好ましい。
【0028】
また、本発明の一実施形態による分周回路は、一例を図11に示すように、上記差動論理回路である差動ラッチ回路(100−1、100−2)が、前段の前記差動信号出力端子(Q1、Q1b)が後段の論理信号(D2b、D2)として入力し、後段のいずれかの差動信号出力端子(Q2、Q2b)が初段の論理信号(D1b、D1)として入力するように複数縦続接続され、複数縦続接続された差動ラッチ回路に共通に差動クロック信号(Ck、Ckb)が与えられ、差動クロック信号に同期して分周する。
【0029】
一例を図11、図14〜図16に示すように、負荷制御回路160が複数の差動ラッチ回路(100−1、100−2;501〜504;511、502〜504等)で共通に設けられていることが好ましい。
【0030】
また、本発明の一実施形態による分周回路は、一例を図11に示すように、第1の差動ラッチ回路100−1と第2の差動ラッチ回路100−2とを備え、第1の差動ラッチ回路100−1と第2の差動ラッチ回路100−2は、クロック信号(Ck、Ckb)の位相が反転して共通に接続され、第1の差動ラッチ回路1000−1の一対の差動出力端子が第2の差動ラッチ回路100−2の一対の差動信号入力端子(D2、D2b)に接続され、第2の差動ラッチ回路100−2の一対の差動出力端子(Q、Qb)が第1の差動ラッチ回路の一対の差動信号入力端子(D1、D1b)に接続され、第1の差動ラッチ回路100−1と第2の差動ラッチ回路100−2で負荷制御回路160が共通に設けられていることが好ましい。
【0031】
さらに、本発明の一実施形態による周波数シンセサイザ300は、一例を図14に示すように、電圧制御発振器200と、電圧制御発振器の出力信号を分周する分周器210と、分周器210で分周した分周クロック信号Cdivとリファレンスクロック信号Crefとの位相を比較する位相比較器220と、を備え、位相比較器220で比較した位相差に基づいて、電圧制御発振器200の電圧Vcntを制御して電圧制御発振器200を所望の周波数で発振させる周波数シンセサイザ300において、分周器210が上記差動論理回路(100、190、400)を含み、電圧制御発振器200の発振周波数を制御する信号として、位相比較器220で比較した位相差に基づく電圧信号VLPを与えるか、電圧制御発振器200の発振周波数が最大周波数となる定電圧信号Vmaxを与えるか切り替える制御電圧切り替えスイッチ320と、制御電圧切り替えスイッチ320を定電圧信号Vmax側に切り替えて、電圧制御発振器200を最大周波数となる発振周波数で発振させると共に、差動論理回路(100、190、400)に含まれる電流源回路130に流す電流の大きさを変化させながら分周クロック信号Cdivの周波数を評価し、その評価結果に基づいて、制御電圧切り替えスイッチ320を位相比較器220で比較した位相差に基づく電圧信号VLPに切り替えたときに電流源回路130に流す電流の大きさを決定する動作電流調整部310と、をさらに、備える。
【0032】
実施形態の概要をまとめると以上である。以下、本発明のより具体的な実施例について、図面を参照して詳しく説明する。
【実施例1】
【0033】
図6は、実施例1による差動論理回路である差動ラッチ回路100の回路ブロック図である。差動論理回路は、差動論理回路に電源を供給する電流源回路130と、所望の差動論理を実現する差動論理部410と、負荷回路150と、負荷制御回路160を備えている。
【0034】
電流源回路130は、ゲートが電流制御端子に接続され、ソースがグランド(接地)に接続されたNチャンネルMOSトランジスタM7を備え、差動論理回路410の電源電流(動作電流)を供給する。なお、ドレインから出力する動作電流は、電流制御端子から入力される電流制御信号Icontの電圧によって、制御可能なように構成されている。
【0035】
差動論理部410には、差動ラッチ回路100の論理を実現する回路が設けられている。差動論理部410の内部は、差動対110と保持部120とスイッチ回路140が設けられている。差動対110は、一対の差動信号入力端子(D、Db)と、一対の差動出力端子(Q、Qb)とに接続され、非反転クロック信号Ckがハイレベル、反転クロック信号Ckbがロウレベルのときに、差動信号入力端子(D、Db)から入力された信号に基づいて、差動出力端子(Q、Qb)を駆動する。差動対110は、ドレインが非反転信号出力端子Qに接続され、ゲートが反転信号入力端子Dbに接続されたNチャンネルMOSトランジスタM1と、ソースがNチャンネルMOSトランジスタM1のソースと共通接続され、ドレインが反転信号出力端子Qbに接続され、ゲートが非反転信号入力端子Dに接続されたNチャンネルMOSトランジスタM4を備えている。
【0036】
保持部120は、ゲートが反転信号出力端子Qbにドレインが非反転信号出力端子Qに接続されたNチャンネルMOSトランジスタM2と、ソースがNチャンネルMOSトランジスタM2のソースと共通接続されゲートが非反転信号出力端子Qにドレインが反転信号出力端子Qbに接続されたNチャンネルMOSトランジスタM3を備えている。保持部120は、反転クロック信号Ckbがハイレベル、非反転クロック信号Ckがロウレベルのときに、差動出力端子(Q、Qb)の論理レベルの保持を行う。
【0037】
スイッチ回路140は、ソースが電流源回路130のNチャンネルMOSトランジスタM7のドレインに接続され、ゲートに非反転クロック信号Ckが接続され、ドレインが差動対110のNチャンネルMOSトランジスタM1、M4の共通接続されたソースに接続されたNチャンネルMOSトランジスタM5と、ソースが電流源回路130のNチャンネルMOSトランジスタM7のドレインに接続され、ゲートに反転クロック信号Ckbが接続され、ドレインが保持部120のNチャンネルMOSトランジスタM2、M3の共通接続されたソースに接続されたNチャンネルMOSトランジスタM6と、を備える。
【0038】
スイッチ回路140は、クロック信号Ckがハイレベル、Ckbがロウレベルのときに、電流源回路130から供給される電流を差動対110に供給する。また、クロック信号Ckbがハイレベル、Ckがロウレベルのときは、電流源回路130から供給される電流を保持部120に供給する。すなわち、スイッチ回路はクロック信号の論理レベルに応じて、電流源回路から供給される電流を差動対110又は、保持部120のどちらか一方に供給する。
【0039】
この差動対110と保持部120とスイッチ回路140により、クロック信号Ckがハイレベル、Ckbがロウレベルのときに、差動信号入力端子D、Dbから入力したデータを差動信号出力端子Q、Qbから出力し、クロック信号Ckがロウレベル、Ckbハイレベルのときは、差動信号出力端子Q、Qbの論理レベルを保持する差動ラッチ回路100の論理を実現している。この差動論理部410の構成を変えることにより、様々な差動論理回路が構成できる。
【0040】
負荷回路150は、ソースが電源VDDにドレインが非反転信号出力端子Qに接続されたPチャンネルMOSトランジスタM8と、ソースが電源VDDにドレインが反転信号出力端子Qbに接続されたPチャンネルMOSトランジスタM9を備えている。
【0041】
負荷制御回路160は、非反転信号出力端子Qと反転信号出力端子Qbとの間に直列に接続された第1抵抗R1及び第2抵抗R2と、定電圧制御ループ161を備えている。第1抵抗R1と第2抵抗R2は、抵抗値が互いに等しい抵抗で、第1抵抗R1と第2抵抗R2との接続点Nvoには、非反転信号出力端子Qの出力電圧と反転信号出力端子Qbの出力電圧のちょうど中間電圧、すなわち、差動論理回路(差動ラッチ回路)100の直流出力電圧が得られる。
【0042】
この接続点Nvoは、差動論理回路100の直流出力電圧検出ノードとして、定電圧制御ループ161の入力端子に接続される。定電圧制御ループ161の出力端子は、負荷回路150の電圧制御ノードであるNvcに接続される。定電圧制御ループ161は、直流出力電圧検出ノードNvoの電圧に基づいて、電流源回路130を流れる電流の大きさに係わらず、差動論理回路(差動ラッチ回路)100の直流出力電圧が一定の電圧になるように、負荷回路150の電圧制御ノードNvcの電圧を制御する。
【0043】
図7は、定電圧制御ループ161の内部の構成を示す回路ブロック図である。差動増幅回路170は、電流出力型の差動増幅回路である。電流出力型の差動増幅回路170は非反転信号入力端子が直流出力電圧検出ノードNvoに、反転信号入力端子が第1の基準電圧Vr1に接続され、電流出力端子が電圧制御ノードNvcに接続される。電流出力型の差動増幅回路170は、非反転信号入力端子と反転信号入力端子との電位差に比例する電流を電流出力端子から出力する。この電流出力型の差動増幅回路170は、いわゆるOTA(Operational Transconductance amplifier)である。また、第2の基準電圧Vr2と電圧制御ノードNvcとの間に接続された抵抗Raと、電圧制御ノードNvcとグランド電位(接地電位)との間に接続された抵抗Rbとを備えている。
【0044】
負荷制御回路160は、第1の基準電圧Vr1と第2の基準電圧Vr2、抵抗Raと抵抗Rbの抵抗値に基づいて、差動ラッチ回路の差動信号出力端子Q、Qbの直流出力電圧(ノードNvoの電圧)が電流源回路130に流す電流に係わらず、一定の電圧になるように制御する。すなわち、直流出力電圧検出ノードNvoの電圧Voが第1の基準電圧Vr1より上昇した場合には、電流出力型の差動増幅回路170は電流出力端子から電流を出力する。これにより電圧制御ノードNvcの電圧Vcを上昇させ、負荷回路150の能動負荷M8、M9に電流が流れにくくなるように制御して能動負荷の等価抵抗を大きくし、直流出力電圧検出ノードNvoの電圧Voを下げるように制御する。一方、直流出力電圧検出ノードNvoから入力される電圧Voが第1の基準電圧Vr1より下降した場合には、電流出力型の差動増幅回路170は電流出力端子から電流を吸い込む。これにより電圧制御ノードNvcから出力する電圧Vcを下降させ、負荷回路150の能動負荷M8、M9に電流が流れやすくするように制御して能動負荷の等価抵抗を小さくし、直流出力電圧検出ノードNvoの電圧Voを上げるように制御する。すなわち、負荷制御回路160は、差動論理回路(差動ラッチ回路)100の直流出力電圧を一定電圧に保つ定電圧制御ループとして機能する。
【0045】
図8は、実施例1における制御電圧Vcと能動負荷(M8、M9)の等価抵抗の関係を示す図である。差動ラッチ回路100の能動負荷としたPチャンネルMOSトランジスタM8とM9の等価抵抗と制御電圧Vcとの関係は、以下のとおりである。すなわち、制御電圧Vcが電圧Vc2以下の場合は、能動負荷M8とM9は、線形領域にあり、制御電圧Vcが大きくなるに伴って、等価抵抗が単調的に増加する特性を持つ。すなわち、M8とM9が線形領域で動作する場合、能動負荷の等価抵抗値の絶対値が小さく、変化が緩やかであり、トランジスタのゲート長とゲート幅によっては、その等価抵抗値を数百Ωから数千Ωまでの範囲で変化させることができる。一方、制御電圧が電圧Vc2以上のときは、M8とM9は飽和領域で動作することになり、能動負荷としての等価抵抗値は絶対値が数百キロオームと大きくなり、変化率も大きい。本発明はこの等価抵抗の変化特性を利用し、能動負荷のM8とM9のソースとドレイン間の電圧降下が一定になるように制御することによって、差動ラッチ回路の最大トグル周波数可変範囲を広げることができる。
【0046】
差動ラッチ回路の直流出力電圧Voを一定電圧に制御する動作についてもう少し詳しく説明する。初期状態では、差動ラッチ回路100は電源電圧VDDが印加され、電流源回路130に接続される電流制御信号Icontや、クロック信号(Ck、Ckb)及びデータ信号(D、Db)が印加されていない、トランジスタM1〜M7はいずれかも遮断状態である。その時、トランジスタM8とM9は暗電流の存在で、ドレイン電圧が電源電圧VDDと同レベルになる。よって、出力電圧入力端子の電圧Voは電源VDDと同電圧になる。その状態で負荷制御回路160が動作すると、出力電圧入力端子の電圧Voは第1の基準電圧Vr1よりも大きいため、電流出力型差動増幅回路170が出力端子からソース電流を流れ出し、制御電圧出力端子は第2の基準電圧Vr2に近い電圧が出力され、制御電圧Vcとして能動負荷M8とM9のゲートに印加され、スタンバイ状態になる。
【0047】
次に、差動ラッチ回路100にクロック信号(Ck、Ckb)とデータ信号(D、Db)が印加され、電流制御端子(M7のゲート)に一定電圧を印加すると、M7のドレインに一定の電流が流れようとする。この電流は差動対110又は、保持部120を介して
能動負荷M8とM9のドレインから供給されるものである。よって、差動ラッチ回路100の出力端子(Q、Qb)の直流電圧レベルが急に下がり、出力電圧入力端子の電圧Voも急激に下がって、負荷制御回路160の第1の基準電圧Vr1よりも小さくなる。
【0048】
そこで、電流出力型差動増幅回路170の非反転信号入力端子電圧Voが反転信号入力端子電圧Vr1よりも小さいため、出力電流がシンク電流になり、制御電圧出力端子の電圧Vcが下がる。よって、トランジスタM8とM9で構成された能動負荷の等価抵抗が小さくなり、ソースからドレインへ流れる電流が大きくなる。よって、差動ラッチ回路100の直流出力電圧レベルが大きくなり、電圧Voも大きくなる。
【0049】
出力電圧入力端子の電圧Voが第1の基準電圧Vr1と同じになると、電流出力型差動増幅回路170の出力電流が流れなくなり、制御電圧Vcは参考電圧2から抵抗RaとRbで分圧した電圧値と同等になり、定電圧制御ループの制御目標値と一致し、制御ループが収束する。ここで、例えば何らかの原因でVoが第1の基準電圧Vr1よりも大きくなると、電流出力型差動増幅回路170の動作により、制御電圧Vcが大きくなり、能動負荷の等価抵抗が大きくなって、M8とM9のソースドレイン間電圧降下が大きくなり、Voの電圧が小さくなる。逆に、例えば何らかの原因でVoが参考電圧1よりも小さくなると、電流出力型差動増幅回路170の動作により、制御電圧Vcが小さくなり、能動負荷の等価抵抗が小さくなって、M8とM9のソースドレイン間電圧降下が小さくなり、Voの電圧が大きくなる。即ち、負荷制御回路160の定電圧制御ループ動作により、Voの電圧が第1の基準電圧Vr1と等しい一定の電圧に保たれるように制御される。
【0050】
また、Voが一定電圧に制御され、電流源回路130に一定の電流が流れると、差動ラッチ回路100は印加されるデータ信号(D、Db)とクロック信号(Ck、Ckb)によって、セットアップ動作及びラッチ動作をする。この動作について、図9の差動ラッチ回路の動作タイミング図を用いて説明する。なお、図9では、非反転クロック信号Ck、非反転データ入力端子D、非反転データ出力端子Qのみについて示すが、反転クロック信号Ckb、反転データ入力端子Db、反転データ出力端子Qbは、それぞれ非反転信号とは、逆の論理レベルの信号が入出力しているものとする。例えば、非反転信号がハイレベルならば、反転信号はロウレベル、非反転信号がロウレベルならば、反転信号はハイレベルであるとする。
【0051】
差動ラッチ回路100は、クロック信号Ckがハイレベルのときは、データ入力端子Dから入力した信号をそのままスルーでデータ出力端子Qから出力する。一方、クロック信号Ckがロウレベルになると、クロック信号Ckがロウレベルになる直前のデータ出力端子Qの論理レベルを維持する。クロック信号Ckがロウレベルである期間にデータ入力端子Dの論理レベルが変化した場合は、クロック信号Ckが次にロウレベルからハイレベルに立ち上がった後、セットアップ時間だけ遅れてデータ入力端子Dの論理レベルがデータ出力端子Qから出力される。
【0052】
また、差動ラッチ回路100を分周回路に用いる場合など、データ入力端子から入力されるデータDがクロック信号Ckの立ち下がりのエッジにより変化する場合は、クロック信号Ckが立ち下がってから(図9のタイミングt04)入力データDが変化するまで(タイミングt05)の時間が問題となる。図4、図5に示す従来の差動ラッチ回路900では、セットアップ時間、ラッチ遅延時間とも、データ出力端子Q、Qbやデータ入力短端子の立下り速度(傾き)は、電流源に流す電流量を制御することで可能であったが、データ出力端子やデータ入力端子の立ち上がり速度(傾き)は、負荷抵抗R11、R12の値で制約を受け、自由に変えることができなかった。それに対して、図6に示す実施例1の差動ラッチ回路100では、電流源回路130に流す電流を増加させて差動ラッチ回路の動作電流を増加させると、それにつれて、負荷回路150の等価抵抗も小さな値になる。従って、電流源130に流す電流を増加させて、差動ラッチ回路の動作電流を増やせば、図9に示すデータ出力端子Qの立下りばかりでなく、立ち上がりの傾きについても同時に急峻にすることができ、セットアップ時間を短縮することができる。
【0053】
なお、差動ラッチ回路100の非反転データ出力端子Qと反転データ出力端子Qbの信号は差動信号であるため、第1抵抗R1と第2抵抗R2の接続端の電圧は交流成分が互いにキャンセルし、直流成分のみが出力電圧入力端子に電圧Voとして入力される。よって、差動ラッチ回路がセットアップ動作(差動対が動作するタイミング)及びラッチ動作(保持回路が動作するタイミング)のどちらの状態でも、負荷制御回路160の定電圧制御ループは上記のとおり動作し、直流出力電圧Voが第1の基準電圧Vr1と同じになるように制御される。
【実施例2】
【0054】
実施例1で説明した図7の負荷制御回路(定電圧制御ループ)の内部回路構成は最も好ましい構成例であるが、電流出力型差動増幅回路170を用いた図7の構成に限られず、負荷制御回路は、もっと一般的な電圧出力型差動増幅回路を用いたものであってもよい。図10は、実施例2における負荷制御回路160Aの回路ブロック図である。図10には、実施例2における負荷制御回路160Aの他、負荷回路150も記載している。図10において、電圧出力型差動増幅回路170Aは、非反転信号入力端子に印加された信号と反転信号入力端子に印加された信号の電位差を無限大に増幅して電圧出力端子から出力する電圧出力型の演算増幅回路である。差動増幅回路170Aの非反転入力端子は、負荷制御回路160Aの出力電圧入力端子に接続され負荷回路の出力電圧Voを入力する。反転入力端子は、基準電圧Vr1に接続され、出力端子は、負荷制御回路160Aの制御電圧出力端子に接続され、制御電圧Vcを出力する。この負荷制御回路を使用した差動ラッチ回路では、制御電圧出力端子から出力される能動負荷M8とM9のゲート制御電圧Vcは、0V〜電源電圧までの広範囲で変化させることが可能になり、能動負荷M8とM9が飽和動作領域でも動作することができる。図8に示した能動負荷等価抵抗の制御電圧依存性から、能動負荷M8とM9が飽和動作領域になっても、制御電圧が大きくなるに伴って、等価抵抗が単調増加する。従って、定電圧制御ループとしての動作及び差動ラッチ回路に組み込まれたときのラッチ回路動作は実施例1の動作と同様である。
【0055】
実施例2の負荷制御回路160では、差動増幅回路を実施例1の電流出力型差動増幅回路より回路構成が簡単な電圧出力型差動増幅回路(演算増幅回路、オペアンプ)で構成することができるため、回路はよりシンプルで、小型化することができる。また、集積回路の場合、チップサイズを小さくすることができるため、コストを低減することに繋がる。
【実施例3】
【0056】
図11は、実施例3による1/2分周回路の回路ブロック図である。図11の1/2分周回路190は、実施例1による差動ラッチ回路100−1と100−2を2つ組み合わせて構成されている。ただし、負荷制御回路160は、100−1と100−2の2つの差動ラッチ回路で共通に設けられている。差動ラッチ回路100−1の能動負荷M8とM9のゲートは、差動ラッチ回路100−2の能動負荷M18とM19のゲートと共通に、負荷制御回路160の制御電圧出力端子に接続され、制御電圧Vcが供給される。また、負荷制御回路160の抵抗R1とR2は、差動ラッチ回路100−2の出力端子Q、Qbに接続されている。
【0057】
差動クロック信号入力端子Ck、Ckbから入力される非反転クロック信号Ckと反転クロック信号Ckbは、差動ラッチ回路100−1と100−2のスイッチ回路(M5とM6、及びM15とM16)に共通に接続されるが、差動ラッチ回路100−1と100−2では、逆相のクロック信号が接続されている。従って、差動ラッチ回路100−1s100−2のうち、一方の差動対が電流源回路に接続されるときは、他方の保持回路が電流源回路に接続され、一方の保持回路が電流源回路に接続されるときは他方の差動対が電流源回路に接続される。
【0058】
また、差動ラッチ回路100−1の非反転データ出力ノードQ1と反転データ出力ノードQ1bが、それぞれ、差動ラッチ回路100−2の反転データ入力ノードD2bと非反転データ入力ノードD2に接続され、差動ラッチ回路100−2の非反転データ出力ノードQ2と反転データ出力ノードQ2bが、それぞれ、差動ラッチ回路100−1の非反転データ入力ノードD1と反転データ入力ノードD1bに接続されている。さらに、差動ラッチ回路100−2の非反転データ出力ノードQ2と反転データ出力ノードQ2bが、それぞれ非反転データ出力端子Qと反転データ出力端子Qbに接続されている。この構成により、差動クロック信号入力端子Ck、Ckbから入力されるクロック信号を1/2分周して非反転データ出力端子Qと反転データ出力端子Qbから出力する差動の1/2分周回路として機能する。
【0059】
この差動ラッチ回路100−1と100−2は、マスタースレーブ型Tフリップフロップ回路として動作し、クロックCkが立ち上がると、マスターの差動ラッチ回路100−1がセットアップ動作をすると同時に、スレーブ側の差動ラッチ回路100−2がラッチ動作(保持動作)をする。逆に、クロックCkが立ち下がると、マスター側の差動ラッチ100−1がラッチ動作すると同時に、スレーブ側の差動ラッチ回路100−2がセットアップ動作をする。
【0060】
図12に、実施例3における1/2分周回路の動作タイミング図を示す。初期状態タイミングt10では、クロックCkがロウレベル、クロックCkbがハイレベルで、Q2、Q1bが共にロウレベル(Q2b、Q1が共にハイレベル)だとする。タイミングt11で、クロックCkが立ち上がると、マスター側の非反転データ入力D1がロウレベルであるのでマスター側差動ラッチ回路100−1のセットアップ動作により、マスター側の反転データ出力ノードQ1b即ちスレーブ側の非反転データ入力ノードD2が立ち上がる。続いて、タイミングt12でクロックCkが立ち下がると、マスター側差動ラッチ回路100−1は状態を保持する一方、スレーブ側の差動ラッチ回路100−2がセットアップ動作をし、非反転出力ノードQ2は立ち上がる。また、出力ノードQ2は入力ノードD1に接続されているため、入力ノードD1もハイレベルとなる。次にタイミングt13でCkが立ち上がると、マスター側差動ラッチ回路100−1がセットアップ動作を行い、出力ノードQ1bがロウレベルにセットされる。さらに、タイミングt14でクロックCkbが立ち上がると非反転出力ノードQ2は立ち下がる。このようにして、分周器の出力は、入力クロックCkが1周期分でハイレベルに固定され、もう1周期分ではロウレベルに固定され、繰返して動作する。つまり、Ckが2周期の信号を入力されると、出力端には1周期の信号が出力される。このように、1/2分周回路して動作する。
【0061】
この1/2分周回路を最高速で動作させるためには、クロック信号Ck、Ckbが立ち上がってから、各出力ノード(Q1、Q1b、Q2、Q2b)の立ち上がり、立下りの動作が完了するまでの遅延時間(セットアップ時間)が問題となる。各出力ノードの立下り遅延時間は、電流源回路130に流す電流の大きさに依存する。電流源回路130に流す電流の大きさを大きくすれば、各出力ノードの立下り遅延時間を短くすることができる。
一方、各出力ノードの立ち上がり遅延時間は、負荷回路150の等価抵抗の大きさに依存する。この実施例3によれば、電流源回路130に流す電流を大きくして各出力ノードの立下り時間を短くすると、それにつれて、負荷抵抗の大きさも小さくなり、各出力ノードの立ち上がり時間も短くなる。すなわち、電流源回路130に流す電流を増加させれば、各出力ノードの立下り時間が短くなるばかりでなく、立ち上がり時間も短くすることができる。よって、電流源回路130に流す電流を増加させれば、1/2分周回路を最高速で動作させることができる。一方、1/2分周回路にそれほどの高速動作が必要ない場合は、電流源回路に流す電流を小さくして消費電力を節約することができる。なお、電流源回路に流す電流を変えても、負荷制御回路160により、直流出力電圧を一定に保つことができるので、1/2分周回路の後段に設ける回路の論理スレッシュホールドレベルが影響を受けることはない。
【0062】
なお、図11では、差動ラッチ回路100−2の出力ノード(Q2、Q2b)をデータ出力端子(Q、Qb)に接続しているので、クロック信号Ckの立ち下がりでデータ出力端子が変化しているが、差動ラッチ回路100−1の出力ノード(Q1、Q1b)をデータ出力端子(Q、Qb)に接続すれば、クロック信号Ckの立ち上がりでデータ出力端子が変化する1/2分周回路が構成できる。
【実施例4】
【0063】
図13は、実施例4による差動論理回路400の回路ブロック図である。本発明による差動論理回路は、差動ラッチ回路及び差動ラッチ回路を利用した1/2分周回路だけでなく、差動論理回路一般に適用することができる。図13は、差動入力、差動出力の2入力NAND回路である。差動論理回路400は、実施例1の差動論理部410が差動論理部410Aに置き換わっていることを除いて他の回路構成は実施例1の差動ラッチ回路100とほぼ同一である。従って、差動論理部410Aの構成と動作について説明する。差動論理部410Aは、NチャンネルMOSトランジスタM21〜M24の4つのトランジスタを備えている。また、差動論理部410Aには、非反転データ入力端子(D−1、D−2)と、反転データ入力端子(D−1b、D−2b)が接続され、上記NチャンネルMOSトランジスタM21〜M24のオンオフを制御する。非反転データ出力端子Qは、非反転データ入力端子(D1、D2)が共にハイレベルであるときのみロウレベルを出力し、それ以外のときは、ハイレベルを出力する。一方、反転データ出力端子Qbは、反転データ信号D1b、D2bが共にロウレベルのとき、すなわち、非反転データ入力端子(D1、D2)が共にハイレベルであるときのみハイレベルを出力し、それ以外のときは、ロウレベルを出力する。すなわち、差動論理回路400は、非反転データ入力端子(D1、D2)から入力される信号の論理NANDを取ってその非反転出力信号を非反転データ出力端子Qから出力し、反転出力信号を反転データ出力端子Qbから出力する差動NAND回路として機能する。図13の差動論理回路は、実施例1〜実施例3と同様に、差動であるので、高速に論理演算を行いその結果を出力することができる。特に、広い範囲で電源源回路の電流の大きさを変えることが可能であるので、回路に要求させる動作速度に合わせて電流源回路の電流を制御することで、高速化、低消費電力化を実現することができる。
【0064】
なお、図13の差動論理回路400は、2入力NAND回路であるが、図13の回路は、入出力端子の接続を変えるだけで簡単に2入力AND回路、2入力NOR回路、2入力OR回路に変更することができる。
【0065】
すなわち、NAND回路とAND回路は、出力が反転しているだけであるので、図13の2入力NAND回路の反転データ出力端子Qbを非反転データ出力端子Qとして、非反転データ出力端子Qを反転データ出力端子Qbとすることにより、2入力AND回路になる。
【0066】
また、反転データ入力端子(D1b、D2b)を非反転データ入力端子(D1、D2)と入れ替えて接続すれば、図13の2入力NAND回路は、2入力NOR回路となる。
【0067】
さらに、データ入力端子とデータ出力端子を共に入れかえれば、図13の2入力NAND回路は、2入力OR回路となる。また、3入力以上の論理回路についても容易に差動論理回路を構成することができる。
【0068】
上記差動論理部(410、410A)は、実施例1で説明したように、クロックに同期して動作する順序回路も、実施例3で説明したような組み合わせ回路も構成することができるので、差動論理部(410、410A)の構成を変えるだけで、電流源回路130、負荷回路150、負荷制御回路160の基本的な構成を変えずに、複数の差動論理回路を組み合わせることにより、ほとんどの論理回路を実現することができる。
【0069】
また、上記実施例1乃至4で説明した差動ラッチ回路やその他の差動論理回路を組み合わせることにより、任意の分周比の分周器を構成することができる。その際、負荷制御回路160は、定電圧制御ループは一つで統一的に能動負荷のゲート電圧を制御しても良いし、いくつかのグループに分けて、それぞれのグループに一つずつの定電圧制御ループ回路を設置しても良い。分周器で分周する周波数に合わせて、最適な動作電流を設定することができる。
【実施例5】
【0070】
図14は、実施例5による1/4分周回路500の回路ブロック図である。図14の1/4分周回路は、実施例1の差動ラッチ回路501〜504を前段の差動出力端子(例えば、501のQ1、Q1b等)が次段(502)の差動信号入力端子に接続し、最終段(504)の差動信号出力端子(Q4、Q4b)が初段の差動信号入力端子に接続するように、縦続接続している。また、各差動ラッチ回路501〜504のクロック信号Ck、Ckbは前段の差動ラッチ回路に供給されるクロック信号とは位相が反転するように各段に共通に接続されている。また、4つの差動ラッチ回路501〜504に共通に負荷制御回路160が設けられ、負荷制御回路160は、1/4分周回路190の差動信号出力端子(Q、Qb)に接続されている。また、電流制御端子Icontも各差動ラッチ回路501〜504に共通に接続され、各差動ラッチ回路501〜504に流れる電流が等しくなるように制御されている。
【0071】
上記構成により、図14の1/4分周回路500は、クロック信号Ck、Ckbの立ち上がりと立ち下がりに同期して前段の差動ラッチ回路から出力される信号を取り込み、さらに後段の差動ラッチ回路に伝える動作を繰り返す。この動作により、全体として、クロック信号Ck、Ckbから入力されたクロック信号を4倍の周期のクロック信号に分周して差動出力端子(Q、Qb)から出力する1/4分周回路として機能する。
【実施例6】
【0072】
図15は、実施例6の1/3分周回路510の回路ブロック図である。実施例6の1/3分周回路510は、図14における1/4分周回路の差動ラッチ回路501が組み合わせ論理演算機能付差動ラッチ回路511に置き換わっている。その他の構成は、実施例5の1/4分周回路500の構成と同じである。差動ラッチ回路511の差動対の一方は、ソースとドレインが共通に接続されたNMOSトランジスタ11と12の2つのトランジスタにより構成されている。NMOSトランジスタ11のゲートには、差動ラッチ回路502の反転出力信号Q2bが、NMOSトランジスタ12のゲートには、差動ラッチ回路504の反転出力信号Q4bが接続されている。また、差動ラッチ回路511の差動対の他方は、NMOSトランジスタ13により構成され、NMOSトランジスタ13のゲートには、比較基準電圧Vr3が接続されている。比較基準電圧Vr3には、差動ラッチ回路502〜504、511の差動信号出力端子から出力されるハイレベル出力電圧、ロウレレベル出力電圧の中間電圧が印加される。
【0073】
この差動ラッチ回路511は、クロック信号Ckがハイレベルのとき、NMOSトランジスタ11、12のいずれかのゲートにハイレベルが印加されると、非反転信号出力端子Q1からロウレベル、反転出力端子Q1bからハイレベルを出力し、NMOSトランジスタ11、12のいずれのゲートにもロウレベルが印加されると、非反転信号出力端子Q1からハイレベル、反転出力端子Q1bからロウレベルを出力するNOR回路として機能する。また、この差動ラッチ回路511は、他の差動ラッチ回路502〜504と同様に保持部を備えているので、クロック信号Ckが立ち下がると、クロック信号Ckが立ち下がる直前の出力端子の論理レベルを保持部に保持するというラッチ回路としての機能も備えている。すなわち、差動ラッチ回路511は、NOR回路機能付差動ラッチ回路として機能する。
【0074】
このNOR回路機能付差動ラッチ回路511の出力は、差動ラッチ回路502と差動ラッチ回路504の出力論理の組み合わせにより状態が決まり、図15の回路全体では、1/3分周回路として機能する。
【実施例7】
【0075】
図6は、実施例7の1/7分周回路520の回路ブロック図である。実施例7の1/7分周回路は、実施例3の1/2分周回路190と1/2分周回路190の状態により分周比が制御される可変分周回路510Aにより構成される。可変分周回路510Aの差動出力信号が1/2分周回路190の差動クロック信号として供給されている。また、1/2分周回路190の非反転出力信号Qが可変分周回路510Aの制御信号として接続されている。
【0076】
可変分周回路510Aは、論理演算機能付差動ラッチ回路511Aの組み合わせ論理が実施例6の差動ラッチ回路511と異なっていることを除いて、実施例6の分周回路510と構成、動作はほぼ同一である。論理演算機能付差動ラッチ回路511Aの差動対の一方は、NMOSトランジスタ14〜16の3つのトランジスタにより構成されている。NMOSトランジスタ14と15はそれぞれソースドレインが直列に接続され、直列に接続されたNMOSトランジスタ14、15と並列に、NMOSトランジスタ16のソースドレインが接続されている。なお、差動対の他方は、ゲートが比較基準電圧Vr3に接続されたNMOSトランジスタ17により構成される。
【0077】
上記構成により、差動ラッチ回路511Aは、クロック信号Ckがハイレベルのときに、NMOSトランジスタ14と15のゲートが共にハイレベルとなるか、NMOSトランジスタ16のゲートがハイレベルとなる場合は、非反転信号出力端子よりロウレベル、反転信号出力端子よりハイレベルを出力し、NMOSトランジスタ14〜16の論理が上記以外のときに、非反転信号出力端子よりハイレベル、反転信号出力端子よりロウレベルを出力する。
【0078】
1/7分周回路520では、NMOSトランジスタ14のゲートは、全体の非反転出力信号Q、NMOSトランジスタ16のゲートは可変分周回路510Aの反転出力信号Q4bに、NMOSトランジスタ15のゲートはQ2bに接続されているので、可変分周回路510Aは、全体の非反転出力端子Qの論理レベルによって、1/3分周と1/4分周を交互に繰り返し、これを1/2分周回路190によって1/2分周するので、全体で1/7分周回路が得られる。
【0079】
以上、実施例3乃至実施例7で説明したように、差動ラッチ回路と差動論理回路とを組み合わせることにより、任意の分周比の分周回路を実現することができる。なお、差動論理回路には、図15、図16で説明したような組み合わせ論理回路とラッチ回路とを組み合わせた差動論理回路(511、511A)を用いてもよいし、実施例1、2で説明した差動ラッチ回路と、実施例4による差動論理回路を用いてもよい。いずれの場合も、分周回路を構成する差動ラッチ回路、差動論理回路の電流源回路に流れる電流を制御可能な電流源回路と、差動信号出力端子の直流出力電圧が一定の電圧になるように制御する負荷制御回路とを備えているので、要求される動作速度に応じて、広い範囲で動作電流が変えられる任意の分周比の分周回路が得られる。
【実施例8】
【0080】
上記実施例1乃至7で説明した差動論理回路(差動ラッチ回路、1/2分周回路を含む)を用いれば、従来になかったような広いレンジで電流源回路に流す電流を変えることが可能になる。ただし、電流源回路に流す電流を最適な電流値に設定するためには、電流値の調整が必要となる。実施例8は、この差動論理回路を周波数シンセサイザに用いた場合に、電流源回路に流す電流値を調整する機能を有する周波数シンサセイザと、周波数シンサセイザにおける動作電流調整方法の実施例である。
【0081】
図14は、実施例8による周波数シンセサイザ300のブロック図である。図1に示す従来の周波数シンセサイザと構成、動作が同一である部分については、重複した説明を省略する。分周器210は、全部又は一部に実施例1乃至7の差動論理回路を用いている。また、実施例8では、分周器自体の基本的な機能、内部のブロック構成は、図3に示す従来の分周器の構成をそのまま用いることもできる。動作電流調整部310は、分周器210に用いられる差動論理回路の動作電流を好適な動作電流に調整する。また、制御電圧切り替えスイッチは、電圧制御発振器200の発振周波数を制御する電圧Vcntにループフィルタの出力電圧VLPを与えるか、電圧制御発振器200を発振周波数の上限で発振させる固定電圧Vmaxを与えるか切り替えるスイッチである。動作電流調整部310には、位相比較器220の基準周波数ともなるリファレンスクロックCrefと電圧制御発振器200の発振クロックを分周器210で分周したクロック信号Cdivが供給される。また、動作電流調整部310から制御電圧切り替えスイッチ320へスイッチの切り替え信号が接続されている。さらに、動作電流調整部310から分周器210の差動論理回路へ電流源回路の動作電流制御信号Icontが接続されている。動作電流調整部310の内部は、カウンタ回路と、制御電圧切り替えスイッチ320と動作電流制御信号を出力する制御ロジックが設けられている。
【0082】
次に、周波数シンセサイザ300の動作電流調整動作について、図15の動作電流設定方法の動作フロー図を用いて説明する。分周器210の動作電流の調整は、電源がオンしたときか、電圧制御発振器の最大周波数が変更になったとき等、周波数シンセサイザが動作していないときに行う(ステップS1)。以下に説明するように、動作電流調整動作中は、リファレンスクロックに同期した発振信号を出力することができないからである。
【0083】
動作電流調整動作において、まず、動作電流調整部310を初期化し、動作電流調整部310に含まれる制御ロジックとカウンタをリセットする(ステッブS2)。すると、動作電流調整部310は、制御電圧切り替えスイッチ320をループフィルタループフィルタ出力VLPから定電圧側Vmaxに切り替える(ステップS3)。すると、制御電圧切り替えスイッチ320は、電圧制御発振器200の発振周波数制御信号として、電圧制御発振器200の発振周波数が最大となる定電圧Vmaxを制御電圧Vcntとして印加する(ステップS4)。次に、動作電流調整部310は、分周器210の動作電流を最大値に設定する。すると、電圧制御発振器200は、最大発振周波数で発振し、分周器210は、その発振クロックを最高速で分周することになる(ステップS5)。次に、分周器210の分周したクロック信号CdivをリファレンスクロックCrefを基準にカウンタでカウントし(ステップS6)、そのカウント値を動作電流調整部310に含まれるレジスタ1に記録する(ステップS7)。レジスタ1には、分周器210のクロック信号CdivのリファレンスクロックCrefに対する比率がカウント値として記録される。このときは、分周器210の動作電流は最大に設定しているので、分周器210は誤りなく電圧制御発振器の発振するクロックを分周することができるので、レジスタ1に格納されるカウント値は正しい値である。
【0084】
次に、動作電流調整部310は、分周器210の動作電流を1ステップ減少させる(ステップS8)。次に分周器210の分周したクロック信号CdivをリファレンスクロックCrefを基準にカウンタでカウントする(ステップS9)、このカウント値と、ステップS7でセットレジスタ1に記憶してあるカウンタ値と比較し、分周器210が正常にクロックを分周できているか否かを判定する(ステップS10)。分周器210が正常にクロックを分周できている場合は、ステップS8へ戻り、さらに分周器210の動作電流を減少させる。分周器210の動作電流を減少させるにつれて、分周器210の分周できる周波数の上限は低下するので、何回かこのループを繰り返すうちに、レジスタ1のカウント値と、カウンタのカウント値が不一致になる。そこで、分周器210を最大周波数で分周するために必要な分周器に流す動作電流がわかるので、マージンをとった上、調整が終わった後に、分周器210に流す動作電流を決定し、分周器210の動作電流を固定する(ステップS11)。
【0085】
さらに、動作電流調整部は、制御電圧切り替えスイッチを定電圧Vmaxからループフィルタ230の出力電圧VLPに切り替え動作電流の調整処理を完了させる(ステップS12)。
【0086】
なお、特許文献1には、PLLの動作状態等によって、あらかじめ決められた電流の設定値に従って、分周回路の動作電流を変えることが記載されているが、特許文献1は、電流の設定値を調整するものではない。
【0087】
また、実施例5は、実施例1乃至実施例4の差動論理回路に限られず、動作電流を変えることのできる分周器を備えた周波数シンセサイザに適用できることは言うまでもない。
【0088】
以上、実施例について説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0089】
100、100−1、100−2、501〜504、900、900−1、900−2:差動ラッチ回路(差動論理回路)
110:差動対
120:保持部
130:電流源回路
140:スイッチ回路
150:負荷回路
160、160A:負荷制御回路
161:定電圧制御ループ
170:(電流出力型)差動増幅回路
170A:電圧出力型差動増幅回路([電圧出力型]演算増幅回路、オペアンプ)
190、990:(1/2)分周回路
200:電圧制御発振器(VCO)
210、910、911:分周器
220:位相比較器及びチャージポンプ回路
230:ループフィルタ
300:分周回路動作電流調整部
310:制御電圧切り替えスイッチ
400:差動論理回路
410、410A:差動論理部
500:1/4分周回路
510:1/3分周回路
510A:可変分周回路
511、511A:組み合わせ論理演算機能付差動ラッチ回路(差動論理回路)
520:1/7分周回路
912:固定分周器
913:プリスケーラ
914:プログラムカウンター
915:制御入力端子
921:第1の位相比較器
922:チャージポンプ
923:第2の位相比較器
924:電流制御回路
930:電流源
M1〜M7、M11〜M17、M21〜M24:NチャンネルMOSトランジスタ
M8、M9、M18、M19:PチャンネルMOSトランジスタ
R1、R2、R11〜R14、Ra、Rb:抵抗
Ck:非反転クロック入力端子
Ckb:反転クロック入力端子
D、D−1、D−2:非反転データ入力端子
Db、D−1b、D−2b:反転データ入力端子
D1、D2:非反転データ入力ノード
D1b、D2b:反転データデータ入力ノード
GND:グランド(接地)
Q:非反転データ出力端子
Qb:反転データ出力端子
VDD:電源
Vo:出力電圧入力端子から入力する電圧(差動出力端子の直流出力電圧)
Vc:制御電圧出力端子から出力する電圧(負荷回路の制御電圧)
Cdiv:分周クロック信号
Cref:リファレンスクロック信号
Q1、Q2:非反転出力ノード
Q1b、Q2b:反転出力ノード
Icont:電流制御信号
Nvc:負荷回路の電圧制御ノード
Nvo:直流出力電圧検出ノード
Vr1:第1の基準電圧
Vr2:第2の基準電圧
Vr3:比較基準電圧信号
VLP:位相比較器で比較した位相差に基づく電圧信号
Vmax:電圧制御発振器の発振周波数が最大値となる定電圧信号
Vcont:電圧制御発振器の制御電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の論理信号を入力し、論理演算を行ってその結果を一対の差動信号出力端子から出力する差動論理部と、
前記差動論理部に電流を供給する電流源回路であって前記電流の大きさが制御可能な電流源回路と、
前記差動信号出力端子に接続された負荷回路と、
前記負荷回路に接続され、前記一対の差動信号出力端子の直流出力電圧が一定の電圧になるように前記負荷回路の負荷を制御する負荷制御回路と、
を備えることを特徴とする差動論理回路。
【請求項2】
前記差動論理部が、
複数の論理信号をデータ信号として入力し、前記一対の差動信号出力端子に接続された差動対と、
前記差動信号出力端子の状態を保持する保持部と、
一対の差動論理信号を差動クロック信号として入力し、前記差動クロック信号に基づいて、前記差動対又は前記保持部を選択的に前記電流源回路へ接続するスイッチ回路と、
を備え、
データラッチとして機能することを特徴とする請求項1記載の差動論理回路。
【請求項3】
前記差動クロック信号として入力する一対の差動論理信号を第1対の差動論理信号としたときに、前記差動対には、第2対の差動論理信号がデータ信号として入力することを特徴とする請求項2記載の差動論理回路。
【請求項4】
前記差動対の一方が前記複数の論理信号をそれぞれ入力する複数のトランジスタにより構成されると共に、前記差動対の他方が比較基準電圧信号を入力するトランジスタにより構成され、
前記複数の論理信号による組み合わせ論理演算を行った結果を前記差動信号出力端子から出力する組み合わせ論理演算機能付データラッチとして機能することを特徴とする請求項2記載の差動論理回路。
【請求項5】
前記負荷回路は、電源と前記一対の差動信号出力端子との間に接続された能動負荷回路を含み、
前記負荷制御回路は、前記一対の差動信号出力端子の中間電圧が第一の差動入力端子に入力し、基準電圧信号が第二の差動入力端子に入力する差動増幅回路を備え、前記差動増幅回路は、前記中間電圧と前記基準電圧との電位差に基づいて前記能動負荷回路を制御することを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の差動論理回路。
【請求項6】
前記負荷制御回路は、前記一対の差動信号出力端子間に直列に接続された抵抗値の等しい第1抵抗と第2抵抗を含み、前記第1抵抗と第2抵抗との接続点の電圧が前記中間電圧として前記第一の差動入力端子に入力されていることを特徴とする請求項5記載の差動論理回路。
【請求項7】
前記差動増幅回路は、電流出力型差動増幅回路であり、前記電流出力型差動増幅回路の出力端子が前記能動負荷回路の制御端子に接続されると共に、前記基準電圧を第1の基準電圧としたときに、第2の基準電圧と前記制御端子との間に接続された第3抵抗と、前記制御端子と接地との間に接続された第4抵抗とをさらに備えることを特徴とする請求項5又は6記載の差動論理回路。
【請求項8】
前記差動増幅回路の電圧出力端子が前記能動負荷回路の制御端子に接続されていることを特徴とする請求項5又は6記載の差動論理回路。
【請求項9】
前記差動論理部が、それぞれ異なる差動信号を入力する複数の差動対を組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1記載の差動論理回路。
【請求項10】
請求項2乃至4いずれか1項記載の差動論理回路である差動ラッチ回路が、前段の前記差動信号出力端子が後段の前記論理信号として入力し、後段のいずれかの前記差動信号出力端子が初段の前記論理信号として入力するように複数縦続接続され、前記複数縦続接続された差動ラッチ回路に共通に前記差動クロック信号が与えられ、前記差動クロック信号に同期して分周することを特徴とする分周回路。
【請求項11】
前記負荷制御回路が前記複数の差動ラッチ回路で共通に設けられていることを特徴とする請求項10記載の分周回路。
【請求項12】
それぞれ請求項2又は3記載の差動論理回路である第1の差動ラッチ回路と第2の差動ラッチ回路とを備え、
前記第1の差動ラッチ回路と第2の差動ラッチ回路は、
前記クロック信号の位相が反転して共通に接続され、
前記第1の差動ラッチ回路の前記一対の差動出力端子が前記第2の差動ラッチ回路の一対の差動信号入力端子に接続され、
前記第2の差動ラッチ回路の前記一対の差動出力端子が前記第1の差動ラッチ回路の一対の差動信号入力端子に接続され、
前記第1の差動ラッチ回路と前記第2の差動ラッチ回路で前記負荷制御回路が共通に設けられていることを特徴とする分周回路。
【請求項13】
電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器の出力信号を分周する分周器と、
前記分周器で分周したクロック信号とリファレンスクロック信号との位相を比較する位相比較器と、
を備え、前記位相比較器で比較した位相差に基づいて、前記電圧制御発振器の電圧を制御して前記電圧制御発振器を所望の周波数で発振させる周波数シンセサイザにおいて、
前記分周器が請求項1乃至9いずれか1項記載の差動論理回路を含み、
前記電圧制御発振器の発振周波数を制御する信号として、前記位相比較器で比較した位相差に基づく電圧信号を与えるか、前記電圧制御発振器の発振周波数が最大周波数となる定電圧信号を与えるか切り替える制御電圧切り替えスイッチと、
前記制御電圧切り替えスイッチを定電圧信号側に切り替えて、前記電圧制御発振器を前記最大周波数となる発振周波数で発振させると共に、前記差動論理回路の前記電流源回路に流す前記電流の大きさを変化させながら前記分周器の出力周波数を評価し、その評価結果に基づいて、前記制御電圧切り替えスイッチを前記位相比較器で比較した位相差に基づく電圧信号に切り替えたときに前記電流源回路に流す電流の大きさを決定する動作電流調整部と、
をさらに、備えることを特徴とする周波数シンセサイザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−155452(P2011−155452A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15219(P2010−15219)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】