説明

微結晶層内に形成される膜微細構造を動的に制御する方法

【課題】真性微結晶シリコン層のための方法を提供すること。
【解決手段】一実施形態では、真性微結晶シリコン層を形成する方法は、加工チャンバ内に配置された基板の表面へガス混合物中で供給されるシランガスを動的に増加させるステップと、加工チャンバへ供給されるガス混合物中で印加されるRF電力を動的に減少させて、ガス混合物中でプラズマを形成するステップと、基板上に真性微結晶シリコン層を形成するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は一般に、太陽電池セルおよび太陽電池セルを形成する方法に関する。より詳細には、本発明の実施形態は、太陽電池の適用分野で利用される微結晶シリコン層を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電デバイス(PV)または太陽電池セルは、日光を直流電流(DC)電力に変換するデバイスである。PVまたは太陽電池セルは通常、1つまたは複数のp−n接合を有する。各接合は、半導体材料内に2つの異なる領域を含み、片方をp型領域と呼び、他方をn型領域と呼ぶ。PVセルのp−n接合が日光(光子からのエネルギーからなる)に露出されると、日光は、PV効果によって電気に直接変換される。PV太陽電池セルは、特定の量の電力を生成し、セルを並べて、所望の量のシステム電力を送達するように寸法設定されたモジュールを形成する。PVモジュールは、複数のPV太陽電池セルを接続することによって作製され、次いでつなぎ合わせて、特定のフレームおよびコネクタをもつパネルを形成する。
【0003】
微結晶シリコン膜(μc−Si)は、PVデバイスを形成するために使用されている1つのタイプの膜である。しかし、速い堆積速度、および高い膜品質、ならびに低い製造コストでPVデバイスを提供できる、生産に値するプロセスはまだ開発されていない。たとえば、シリコン膜の結晶化度が不十分であれば、膜の形成および分率が不完全になり、それによってPV太陽電池セルにおける変換効率を低減させることがある。さらに、微結晶シリコン膜(μc−Si)の従来の堆積プロセスでは堆積速度が遅く、それによって製造の処理量を低減させかつ生産コストを増大させることは不都合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第12/208,478号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、微結晶シリコン膜を堆積させる改善された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、太陽電池セルを形成する方法を提供する。一実施形態では、真性微結晶シリコン層を形成する方法は、加工チャンバ内に配置された基板の表面へガス混合物中で供給されるシランガスを動的に増加させるステップと、加工チャンバへ供給されるガス混合物中で印加されるRF電力を動的に減少させるステップであり、ガス混合物が加工チャンバ内でプラズマを形成するステップと、プラズマの存在下で基板上に真性微結晶シリコン層を形成するステップとを含む。
【0007】
別の実施形態では、真性微結晶シリコン層を形成する方法は、加工チャンバ内に配置された基板上に真性シード層を形成するステップと、シード層を形成しながら、400ミリワット/cm未満のRF電力を印加してガス混合物から形成されるプラズマを維持するステップと、その後、プラズマの存在下で基板上に真性微結晶シリコン層を形成するステップであり、真性微結晶シリコン層が、ガス混合物中で供給されるシランガスを動的に増加させることによって形成されるステップと、加工チャンバへ供給されるガス混合物中で印加されるRF電力を動的に減少させて、ガス混合物中でプラズマを形成するステップとを含む。
【0008】
さらに別の実施形態では、真性微結晶シリコン層を形成する方法は、加工チャンバ内に配置された基板の表面上へ第1のガス混合物を供給して基板上に真性シード層を形成するステップであり、第1のガス混合物がシランガスおよび水素ガスを含み、第1のガス混合物を供給しながらシランガスの流量が増加され、水素ガスの流量が安定した状態で維持されるステップと、基板の表面上へ第2のガス混合物を供給して真性シード層上に真性微結晶シリコン層を形成するステップであり、第2のガス混合物を供給しながらシランガスの流量が増加され、真性微結晶シリコン層を形成しながら第2のガス混合物へ印加されるRF電力が減少されるステップとを含む。
【0009】
本発明の上述の特徴が達成され、詳細に理解できるように、上記で簡単に要約した本発明についてのより具体的な説明を、本発明の実施形態を参照すれば得ることができる。本発明の実施形態を添付の図面に示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による太陽電池セル内に真性微結晶シリコン層が形成されたタンデム接合型の薄膜太陽電池セルの概略側面図である。
【図2】本発明の一実施形態による太陽電池セル内に真性微結晶シリコン層が形成された単一接合型の薄膜太陽電池セルの概略側面図である。
【図3】本発明の一実施形態による装置の横断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による堆積中に利用されるプロセスパラメータを動的に制御することによって真性微結晶シリコン層を堆積させる方法を示すプロセスの流れを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による図3の装置が組み込まれたシステムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
理解を容易にするために、可能な場合、複数の図に共通の同一の要素を指すのに同一の参照番号を使用した。一実施形態の要素および特徴は、さらなる記述なしで他の実施形態にも有益に組み込むことができることが企図される。
【0012】
しかし、本発明は他の等しく効果的な実施形態も許容しうるため、添付の図面は本発明の例示的な実施形態のみを示し、したがって本発明の範囲を限定するものと見なすべきではないことに留意されたい。
【0013】
本発明は、速い堆積速度および均一の結晶分率で真性微結晶シリコン層を堆積させる方法について説明する。一実施形態では、堆積プロセス中に利用されるプロセスパラメータを動的に制御して、その結果得られる真性微結晶シリコン層内に形成される膜特性および微細構造を動的に制御することによって、真性微結晶シリコン層を堆積させることができる。一実施形態では、真性微結晶シリコン層は、多重接合型の太陽電池セルまたは単一接合型の太陽電池セル内で使用することができる。
【0014】
図1は、光または太陽放射101の方へ向けた多重接合型の太陽電池セル100の一実施形態の概略図である。太陽電池セル100は、ガラス基板、ポリマー基板、金属基板、または他の適切な基板などの基板102を含み、基板102を覆って薄膜が形成される。太陽電池セル100は、基板102を覆って形成された第1の透明導電酸化物(TCO)層104と、第1のTCO層104を覆って形成された第1のp−i−n接合126とをさらに含む。一構成では、第1のp−i−n接合126を覆って、任意選択の波長選択性の反射体(WSR)層112が形成される。第1のp−i−n接合126を覆って第2のp−i−n接合128を形成することができ、第2のp−i−n接合128を覆って第2のTCO層122を形成することができ、第2のTCO層122を覆ってメタルバック層124を形成することができる。光トラップを強化することによって光吸収を改善するために、基板および/または基板を覆って形成される薄膜の1つもしくは複数には、湿式、プラズマ、イオン、および/または機械プロセスによって、任意選択でテキスチャを付けることができる。たとえば、図1に示す実施形態では、第1のTCO層104にはテキスチャが付けられており、したがって後に第1のTCO層104を覆って堆積される薄膜は通常、この薄膜より下の表面のトポグラフィを再現する。
【0015】
第1のTCO層104と第2のTCO層122はそれぞれ、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウムスズ酸化物、スズ酸カドミウム、これらの組合せ、または他の適切な材料を含むことができる。TCO層材料は、追加のドーパントおよび成分を含むこともできることが理解される。たとえば、酸化亜鉛は、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、および他の適切なドーパントなどのドーパントをさらに含むことができる。酸化亜鉛は、約2.5原子%以下のアルミニウムなど、5原子%以下のドーパントを含むことができる。特定の例では、基板102は、基板102上に第1のTCO層104がすでに堆積された状態で、ガラス製造者によって提供することができる。
【0016】
第1のp−i−n接合126は、p型非晶質シリコン層106と、p型非晶質シリコン層106を覆って形成された真性非晶質シリコン層108と、真性非晶質シリコン層108を覆って形成されたn型微結晶シリコン層110とを含むことができる。特定の実施形態では、p型非晶質シリコン層106は、約60Å〜約300Åの間の厚さに形成することができる。特定の実施形態では、真性非晶質シリコン層108は、約1,500Å〜約3,500Åの間の厚さに形成することができる。特定の実施形態では、n型微結晶半導体層110は、約100Å〜約400Åの間の厚さに形成することができる。
【0017】
第1のp−i−n接合126と第2のp−i−n接合128の間に配置されたWSR層112は通常、特定の所望の膜特性を有するように構成される。一構成では、WSR層112は、太陽電池セル100の光入射側から受け取った光を反射するのに望ましい屈折率、または屈折率の範囲を有する中間反射体として能動的に働く。WSR層112はまた、第1のp−i−n接合126において短波長から中波長の光(たとえば、280nm〜800nm)の吸収を高めて短絡電流を改善する接合層として働き、その結果、量子および変換効率が改善される。WSR層112は、接合128内に形成された層への光の透過を容易にするために、中波長から長波長の光(たとえば、500nm〜1100nm)に対して高い膜透過率をさらに有する。一実施形態では、WSR層112は微結晶シリコン層とすることができ、WSR層112内にはn型またはp型のドーパントが配置される。例示的な実施形態では、WSR層112はn型結晶シリコン合金であり、WSR層112内にはn型ドーパントが配置される。WSR層112内に配置される異なるドーパントは、バンドギャップ、結晶分率、導電性、透明性、膜屈折率、消衰係数などの光および電気特性に影響を与えることもできる。いくつかの例では、WSR層112の様々な領域内へ1つまたは複数のドーパントをドープして、膜のバンドギャップ、仕事関数(複数可)、導電性、透明性などを効率的に制御および調整することができる。一実施形態では、WSR層112は、約1.4〜約3の間の屈折率、少なくとも約2eVのバンドギャップ、および約10−3S/cmより大きい導電性を有するように制御される。
【0018】
第2のp−i−n接合128は、p型微結晶シリコン層114と、p型微結晶シリコン層114を覆って形成された真性微結晶シリコン層118と、真性微結晶シリコン層118を覆って形成されたn型非晶質シリコン層120とを含むことができる。一実施形態では、真性微結晶シリコン層118のバルク層の堆積前に、p型微結晶シリコン層114を覆って真性微結晶シリコンシード層116を形成することができる。一実施形態では、シード層116および真性微結晶シリコン層118は、加工チャンバ内で実行される堆積中に異なるプロセスパラメータを利用して層116、118を個々に形成することによって、1つのプロセスで形成することができる。シード層116およびバルク真性微結晶シリコン層118をどのように堆積させるかに関するさらなる詳細については、図3〜4を参照して以下にさらに説明する。
【0019】
一実施形態では、p型微結晶シリコン層114は、約100Å〜約400Åの間の厚さに形成することができる。特定の実施形態では、真性微結晶シリコンシード層116は、約50Å〜約500Åの間の厚さに形成することができる。特定の実施形態では、バルク真性微結晶シリコン層118は、約10,000Å〜約30,000Åの間の厚さに形成することができる。特定の実施形態では、n型非晶質シリコン層120は、約100Å〜約500Åの間の厚さに形成することができる。
【0020】
メタルバック層124は、それだけに限定されるものではないが、Al、Ag、Ti、Cr、Au、Cu、Pt、これらの合金、またはこれらの組合せからなる群から選択される材料を含むことができる。レーザスクライビングプロセスなどの他のプロセスを実行して、太陽電池セル100を形成することもできる。メタルバック層124を覆って他の膜、材料、基板、および/または包装を提供して、太陽電池セルデバイスを完成させることができる。形成された太陽電池セルを相互接続してモジュールを形成することができ、次いでモジュールを接続してアレイを形成することができる。
【0021】
太陽放射101は、p−i−n接合126、128の真性層108、118によって主に吸収され、電子−正孔対に変換される。真性層108、118の両端に延びるp型層106、114とn型層110、120の間に生じる電界により、n型層110、120の方へ電子が流れ、p型層106、114の方へ正孔が流れて、電流を生じさせる。非晶質シリコンと微結晶シリコンは太陽放射101の異なる波長を吸収するため、第1のp−i−n接合126は真性非晶質シリコン層108を含み、第2のp−i−n接合128は真性微結晶シリコン層118を含む。したがって、形成された太陽電池セル100は、太陽放射スペクトルのより大きい部分を捕獲するため、より効率的である。非晶質シリコンの真性層108、118および微結晶の真性層は、非晶質シリコンのバンドギャップが微結晶シリコンより大きいため、太陽放射101がまず真性非晶質シリコン層108に当たり、WSR層112を透過し、次いで真性微結晶シリコン層118に当たるように積み重ねられる。第1のp−i−n接合126によって吸収されない太陽放射は、引き続きWSR層112を透過し、第2のp−i−n接合128へ進む。
【0022】
電荷収集は通常、p型またはn型のドーパントでドープされたシリコン層などのドープされた半導体層によって提供される。p型ドーパントは通常、ホウ素またはアルミニウムなどの第III族元素である。n型ドーパントは通常、リン、ヒ素、またはアンチモンなどの第V族元素である。大部分の実施形態では、p型ドーパントとしてホウ素が使用され、n型ドーパントとしてリンが使用される。これらのドーパントは、反応混合物中にホウ素含有化合物またはリン含有化合物を含むことによって、上記のp型層106、114およびn型層110、120に追加することができる。適切なホウ素およびリンの化合物は通常、置換および非置換の低級ボランならびにホスフィンオリゴマーを含む。いくつかの適切なホウ素化合物には、トリメチルホウ素(B(CHまたはTMB)、ジボラン(B)、三フッ化ホウ素(BF)、およびトリエチルホウ素(B(CまたはTEB)が含まれる。ホスフィンは、一般的なリン化合物である。ドーパントは通常、水素、ヘリウム、アルゴン、および他の適切なガスなどのキャリアガスとともに提供される。キャリアガスとして水素が使用される場合、反応混合物中の全体的な水素が増大される。したがって水素比は、ドーパントに対するキャリアガスとして使用される水素を含む。
【0023】
ドーパントは通常、不活性ガス中の希釈されたガス混合物として提供される。たとえば、ドーパントは、キャリアガスにおいて約0.5%のモル濃度または体積濃度で提供することができる。ドーパントが、1.0sccm/Lで流れるキャリアガスにおいて0.5%の体積濃度で提供される場合、その結果得られるドーパント流量は、0.005sccm/Lである。ドーパントは、所望のドープの程度に応じて、約0.0002sccm/L〜約0.1sccm/Lの間の流量で反応チャンバへ提供することができる。一般に、ドーパント濃度は、約1018原子/cm〜約1020原子/cmの間で維持される。
【0024】
一実施形態では、p型微結晶シリコン層114は、水素ガスとシランガスのガス混合物を、1000:1以下など、約200:1以上の水素とシランの比、たとえば約250:1〜約800:1の間、さらなる例では約601:1または約401:1で提供することによって堆積させることができる。シランガスは、約0.2sccm/L〜約0.38sccm/Lの間など、約0.1sccm/L〜約0.8sccm/Lの間の流量で提供することができる。水素ガスは、約143sccm/Lなど、約60sccm/L〜約500sccm/Lの間の流量で提供することができる。TMBは、約0.00115sccm/Lなど、約0.0002sccm/L〜約0.0016sccm/Lの間の流量で提供することができる。TMBがキャリアガスにおいて0.5%のモル濃度または体積濃度で提供される場合、ドーパント/キャリアガス混合物は、約0.23sccm/Lなど、約0.04sccm/L〜約0.32sccm/Lの間の流量で提供することができる。RF電力は、約290mW/cm〜約440mW/cmの間など、約50mW/cm〜約700mW/cmの間で印加することができる。チャンバ圧力は、約3トル〜約20トルの間など、約1トル〜約100トルの間、たとえば約7トルまたは約9トルなど、4トル〜約12トルの間で維持することができる。これらの条件で、約143Å/分以上など、約10Å/分以上の速度で、50パーセント〜約70パーセントの間など、約20パーセント〜約80パーセントの間の結晶分率を有するp型微結晶層を堆積させる。
【0025】
一実施形態では、p型微結晶シリコン層114内の炭素、ゲルマニウム、窒素、酸素などの第2のドーパントが、光電子変換効率を改善することができる。第2のドーパントが全体的な太陽電池セル性能をどのように改善できるかに関する詳細は、2008年9月11日出願の「Microcrystalline Silicon Alloys for Thin Film and Wafer Based Solar Applications」という名称の米国特許出願第12/208,478号に詳細に開示されている。同出願を、参照により本明細書に組み込む。
【0026】
一実施形態では、p型非晶質シリコン層106は、水素ガスとシランガスのガス混合物を約20:1以下の比で提供することによって堆積させることができる。シランガスは、約1sccm/L〜約10sccm/Lの間の流量で提供することができる。水素ガスは、約5sccm/L〜60sccm/Lの間の流量で提供することができる。トリメチルホウ素は、約0.005sccm/L〜約0.05sccm/Lの間の流量で提供することができる。トリメチルホウ素がキャリアガスにおいて0.5%のモル濃度または体積濃度で提供される場合、ドーパント/キャリアガス混合物は、約1sccm/L〜約10sccm/Lの間の流量で提供することができる。RF電力は、約15ミリワット/cm〜約200ミリワット/cmの間で印加することができる。チャンバ圧力は、ガス混合物からp型非晶質シリコン層を約100Å/分以上で堆積させるために、約1トル〜約4トルの間など、約0.1トル〜20トルの間で維持することができる。
【0027】
一実施形態では、n型微結晶シリコン層110は、水素ガスとシランガスのガス混合物を、約150:1〜約400:1の間など、約500:1以下などの約100:1以上の比(体積)、たとえば約304:1または約203:1で提供することによって堆積させることができる。シランガスは、約0.32sccm/L〜約0.45sccm/Lの間など、約0.1sccm/L〜約0.8sccm/Lの間の流量、たとえば約0.35sccm/Lで提供することができる。水素ガスは、約68sccm/L〜約143sccm/Lの間など、約30sccm/L〜約250sccm/Lの間の流量、たとえば約71.43sccm/Lで提供することができる。ホスフィンは、約0.0025sccm/L〜約0.015sccm/Lの間など、約0.0005sccm/L〜約0.006sccm/Lの間の流量、たとえば約0.005sccm/Lで提供することができる。言い換えれば、ホスフィンがキャリアガスにおいて0.5%のモル濃度または体積濃度で提供される場合、ドーパント/キャリアガスは、約0.5sccm/L〜約3sccm/Lの間など、約0.1sccm/L〜約5sccm/Lの間の流量、たとえば約0.9sccm/L〜約1.088sccm/Lの間で提供することができる。RF電力は、約370mW/cmなど、約100mW/cm〜約900mW/cmの間で印加することができる。チャンバ圧力は、約150Å/分以上など、約50Å/分以上の速度で、約20パーセント〜約80パーセントの間、たとえば50パーセント〜約70パーセントの間の結晶分率を有するn型微結晶シリコン層を堆積させるために、約3トル〜約20トルの間など、約1トル〜約100トルの間、たとえば4トル〜約12トルの間、たとえば約6トルまたは約9トルで維持することができる。
【0028】
一実施形態では、n型非晶質シリコン層120は、水素ガスとシランガスのガス混合物を約5.5:1または7.8:1など、約20:1以下の比(体積)で提供することによって堆積させることができる。シランガスは、約1sccm/L〜約10sccm/Lの間、約0.1sccm/L〜5sccm/Lの間、または約0.5sccm/L〜約3sccm/Lの間など、約0.1sccm/L〜約10sccm/Lの間の流量、たとえば約1.42sccm/Lまたは5.5sccm/Lで提供することができる。水素ガスは、約4sccm/L〜約40sccm/Lの間または約1sccm/L〜約10sccm/Lの間など、約1sccm/L〜約40sccm/Lの間の流量、たとえば約6.42sccm/Lまたは27sccm/Lで提供することができる。ホスフィンは、約0.0005sccm/L〜約0.0015sccm/Lの間または約0.015sccm/L〜約0.03sccm/Lの間など、約0.0005sccm/L〜約0.075sccm/Lの間の流量、たとえば約0.0095sccm/Lまたは0.023sccm/Lで提供することができる。ホスフィンがキャリアガスにおいて0.5%のモル濃度または体積濃度で提供される場合、ドーパント/キャリアガス混合物は、約0.1sccm/L〜約3sccm/Lの間、約2sccm/L〜約15sccm/Lの間、または約3sccm/L〜約6sccm/Lの間など、約0.1sccm/L〜約15sccm/Lの間の流量、たとえば約1.9sccm/Lまたは約4.71sccm/Lで提供することができる。RF電力は、約60mW/cmまたは約80mW/cmなど、約25mW/cm〜約250mW/cmの間で印加することができる。約0.5トル〜約4トルの間など、約0.1トル〜約20トルの間のチャンバ圧力、たとえば約1.5トルでは、約200Å/分以上など、約100Å/分以上の速度、たとえば約300Å/分または約600Å/分で、n型非晶質シリコン層を堆積させる。
【0029】
いくつかの実施形態では、シリコン層は、ドーパント化合物を速い速度、たとえば上記のレシピの上部部分の速度で供給することによって、高濃度にドープすることができ、または縮退ドープすることができる。縮退ドープは、低抵抗の接触接合を提供することによって電荷収集を改善すると考えられる。縮退ドープはまた、非晶質層などのいくつかの層の導電性を改善すると考えられる。
【0030】
一実施形態では、真性非晶質シリコン層108は、水素ガスとシランガスのガス混合物を約20:1以下の比(体積)で提供することによって堆積させることができる。シランガスは、約0.5sccm/L〜約7sccm/Lの間の流量で提供することができる。水素ガスは、約5sccm/L〜60sccm/Lの間の流量で提供することができる。シャワーヘッドには、15mW/cm〜約250mW/cmの間のRF電力を提供することができる。チャンバの圧力は、約0.5トル〜約5トルの間など、約0.1トル〜20トルの間で維持することができる。真性非晶質シリコン層108の堆積速度は、約100Å/分以上とすることができる。例示的な実施形態では、真性非晶質シリコン層108は、約12.5:1の水素とシランの比で堆積される。
【0031】
真性微結晶シリコンシード層116および真性微結晶シリコン層118の堆積に関するさらなる詳細については、図4〜5を参照して以下にさらに説明する。
【0032】
図2は、真性微結晶シリコンシード層116および真性微結晶シリコン層118を有する単一接合型の太陽電池セル200の一実施形態の概略図である。太陽電池セル200は、基板102と、基板102を覆って形成された第1の透明導電酸化物(TCO)層104と、第1のTCO層104を覆って形成された単一のp−i−n接合206とを含む。単一のp−i−n接合206を覆って第2のTCO層122が形成され、第2のTCO層122を覆ってメタルバック層124が形成される。一実施形態では、単一のp−i−n接合206は、p型シリコン層202と、真性微結晶シリコンシード層116および真性微結晶シリコン層118と、真性微結晶シリコン層118を覆って形成されたn型シリコン層208とを含む。p型シリコン層202およびn型シリコン層208は、p−i−n接合206を形成するために利用される非晶質シリコン、微結晶シリコン、ポリシリコンなどを含めて、任意のタイプのシリコン層とすることができる。真性微結晶シリコンシード層116および真性微結晶シリコン層118をどのように形成できるかに関する詳細な説明は、図3〜4を参照して以下にさらに論じる。
【0033】
図3は、図1および2に示す真性微結晶シリコンシード層116および真性微結晶シリコン層118を堆積できるプラズマ強化化学気相成長(PECVD)チャンバ300の一実施形態の概略横断面図である。1つの適切なプラズマ強化化学気相成長チャンバは、カリフォルニア州サンタクララにあるApplied Materials,Inc.から入手可能である。他の製造者からのものを含めて、他の堆積チャンバを利用して本発明を実施できることが企図される。
【0034】
PECVDチャンバ300は通常、プロセス体積306を画定する壁302、底部304、およびシャワーヘッド310、ならびに基板支持体330を含む。プロセス体積には、PECVDチャンバ300との間で基板を搬送できるように、バルブ308を通ってアクセスされる。基板支持体330は、基板を支持する基板受取り表面332と、基板支持体330を上下させるようにリフトシステム336に結合された心棒334とを含む。任意選択で、基板102の周辺部を覆ってシャドーリング333を置くことができる。基板支持体330を通ってリフトピン338が可動式に配置されており、ロボットによる搬送を容易にするために、基板と基板受取り表面332の間に間隔を空けるように作動させることができる。基板支持体330はまた、基板支持体330を所望の温度で維持するために、加熱および/または冷却素子339を含むことができる。基板支持体330はまた、基板支持体330の周辺部にRF帰還路を提供するために、RF導電ストラップ331を含むことができる。
【0035】
シャワーヘッド310は、懸架部314によって周辺部で裏当て板312に結合される。シャワーヘッド310はまた、弛みを防止しかつ/またはシャワーヘッド310の直線性/湾曲を制御するのを助けるために、1つまたは複数の中心支持体316によって裏当て板に結合することができる。裏当て板312にはガス源320が結合されて、裏当て板312およびシャワーヘッド310を通って基板受取り表面332へガスを提供する。PECVDチャンバ300には、プロセス体積306を所望の圧力で制御するために、真空ポンプ309が結合される。裏当て板312および/またはシャワーヘッド310にはRF電源322が結合され、シャワーヘッド310へRF電力を提供する。RF電力は、シャワーヘッドと基板支持体330の間に電界を生じさせ、したがってシャワーヘッド310と基板支持体330の間でガスからプラズマを生成することができる。約0.3MHz〜約200MHzの間の周波数など、様々なRF周波数を使用することができる。一実施形態では、RF電源は、13.56MHzの周波数で提供される。
【0036】
ガス源と裏当て板の間には、誘導結合された遠隔プラズマ源などの遠隔プラズマ源324を結合することもできる。基板を加工する間に、遠隔プラズマを生成する遠隔プラズマ源324へ清浄ガスを提供することができる。これは、プロセス体積306内のチャンバ構成要素を清浄にするために提供される。清浄ガスは、シャワーヘッドへ提供されるRF電源322によってさらに励起させることができる。適切な清浄ガスには、それだけに限定されるものではないが、NF、F、およびSFが含まれる。
【0037】
図1〜2の微結晶シリコン層116、118などの真性微結晶シリコン層のための堆積方法は、図3のプロセスチャンバまたは他の適切なチャンバ内で以下の堆積パラメータを含むことができる。55,000cm以上など、10,000cm以上の表面積、たとえば40,000cm以上を有する基板がチャンバへ提供される。加工した後、基板を切断してより小さい太陽電池セルを形成できることが理解される。
【0038】
一実施形態では、加熱および/または冷却素子339は、約100℃〜約400℃の間など、約400℃以下、たとえば約200℃など、約150℃〜約300℃の間の堆積中の基板支持体温度を提供するように設定することができる。基板受取り表面332上に配置された基板の上部表面とシャワーヘッド310の間の堆積中の間隔は、400ミル〜約800ミルの間など、400ミル〜約1,200ミルの間とすることができる。
【0039】
図4は、真性微結晶シリコンシード層116および真性微結晶シリコン層118などの真性微結晶シリコン層を堆積させる方法400のプロセスの流れを示す。方法400は、図3に示すPECVDチャンバ300などのプラズマチャンバ内で実行することができる。方法400は、他の製造者からのものを含めて、任意の適切なプラズマチャンバ内で実行できることに留意されたい。
【0040】
方法400は、ステップ402で、図1〜2に示す基板102などの基板を加工チャンバ内へ提供することから始まる。基板102は、図2の実施形態に示すように、第1のTCO層104と、第1のTCO層104上に配置されたp型シリコン層202とを有することができる。p型シリコン層は、非晶質シリコン層、微結晶シリコン層、ポリシリコン層、または任意の他の適切なシリコン含有層とすることができる。別法として、基板102は、図1の実施形態に示すように、第1のTCO層104と、第1のp−i−n接合126と、任意選択でWSR層112と、p型微結晶シリコン層114とを有することができる。基板102上に真性微結晶シリコン層を形成して太陽電池セルを形成するのを容易にするために、基板102上に膜、構造、または層の異なる組合せを事前に形成できることに留意されたい。一実施形態では、基板102は、ガラス基板、プラスチック基板、ポリマー基板、または太陽電池セルをその上に形成するのに適した他の透明基板のいずれか1つとすることができる。
【0041】
ステップ404で、加工チャンバ内へガス混合物を供給して、真性微結晶シリコンシード層116およびバルク真性微結晶シリコン層118を順次堆積させる。堆積中、ガス混合物中でプラズマを着火および形成するために利用されるプロセスパラメータは、シード層116およびバルク真性微結晶シリコン層118を所望の膜特性および膜微細構造で堆積するのを容易にするように動的に制御することができる。一実施形態では、ガス混合物は、シリコンベースのガスおよび水素ベースのガスを含むことができる。適切なシリコンベースのガスには、それだけに限定されるものではないが、シラン(SiH)、ジシラン(Si)、四フッ化ケイ素(SiF)、四塩化ケイ素(SiCl)、ジクロロシラン(SiHCl)、およびこれらの組合せが含まれる。適切な水素ベースのガスには、それだけに限定されるものではないが、水素ガス(H)が含まれる。一実施形態では、本明細書に記載のシリコンベースのガスはシラン(SiH)であり、本明細書に記載の水素ベースのガスは水素(H)である。
【0042】
一実施形態では、ガス混合物中で供給されるシランガスなどのシリコンベースのガスは、堆積プロセス中に第1の所定の設定点から第2の所定の設定点へ漸進的に増加させることができる。本明細書で使用する「増加」という用語は、プロセスパラメータを第1の設定点から第2の設定点へ所定の期間にわたって所望の増加速度で漸進的に増大させることを意味することに留意されたい。本明細書で使用する「増加」という用語は、スロットルバルブの開閉操作によって引き起こされる突然の変化ではない。
【0043】
ガス混合物中のシランガス流の漸進的な増加は、シリコン原子が基板表面上で均一に付着および分布するのを助け、それによってシード層116および真性微結晶シリコン層118を所望の膜特性および低い欠陥密度で形成できると考えられる。シリコン原子が均一に付着し、基板表面上に形成される欠陥密度が低いことで、後の原子が核を形成するための良好な核形成場所を提供し、したがってその上に後に形成される膜の結晶化度を促進する。
【0044】
シード層116を低い欠陥密度で維持するにはシード層116を遅い速度で形成する必要がある実施形態では、低速から高速へのシランガス流の増加を使用することができる。別法として、ガス混合物中で供給されるシランガス流は、必要に応じて安定した状態で保つことができ、シランガス流の増加は、バルク堆積プロセスまで待つことができる。一実施形態では、シード層116を形成するステップ404で供給されるシランガス流は、約60秒〜約1800秒の間など、約30秒〜約3000秒の間で加工するために、約0.01sccm/L〜約0.1sccm/Lの間、たとえば約0.03sccm/L(約3000sccm)で制御される。シード層116を形成するステップ404で供給される水素ガス流は、約100000sccm〜約500000sccmの間、たとえば約200000sccmで制御される。
【0045】
別の実施形態では、シランガスおよび水素ガスは、所定のガス流量比で加工チャンバ内へ供給することができる。水素とシランガスの所定のガス流量比により、微結晶シリコンシード層116を所望の結晶分率および粒組織で形成するのを助ける。一実施形態では、ガス混合物中の水素とシランのガス流量比(たとえば、流れ体積比)は、約200など、約30〜約300の間または約20〜約250の間で制御される。1つの特定の実施形態では、ガス混合物中で供給される水素ガスは、安定した速度で提供することができ、一方シランガス流は、シランガスと水素ガスの所望の比に到達するまで漸進的に増加される。堆積の初期段階でシラン流量が低いことで、ガス混合物中の比較的純粋な水素プラズマ環境および/または高い水素希釈のため、膜結晶および核形成の場所の形成を助けることができると考えられる。したがって、所望の高い水素希釈プラズマ環境を生じさせるために、シランガスの前に水素ガスを加工チャンバ内へ供給することができる。別法として、シラン流を増加させる方法と同様に、水素流を比較的高い流量で開始し、次いで水素とシランのガス流の所望の比に到達するまで、漸進的に減少させることもできる。
【0046】
シード層116が所望の厚さへ到達した後、水素ガスとシランガスの比を変化させて、バルク真性微結晶シリコン層118を堆積させることができる。バルク真性微結晶シリコン層118を形成しながら、ガス混合物中で供給されるシランガスは、所望のガス流量比に到達するまで漸進的に増加させることができる。バルク真性微結晶シリコン層118の厚さの増大とともに結晶分率が増大することがあるため、堆積中にガス流量比を動的に調整することで、形成される結晶分率を所望の範囲内で維持するように、バルク真性微結晶シリコン層118内で形成される結晶分率を効率的に調和させることができる。ガス混合物中で供給されるシラン流量を高くすると、バルク真性微結晶シリコン層118内で形成される結晶分率を低減できると考えられる。したがって、ガス混合物中で供給されるシラン流の流量を漸進的に増加させることによって、膜厚さの増大によりバルク真性微結晶シリコン層118内で形成される結晶分率を補償することができ、したがってバルク真性微結晶シリコン層118内で形成される一定の結晶分率を維持することができる。一実施形態では、シランガスは、堆積プロセス中に漸進的に増加させることができる。たとえば、シランガスは、約500秒〜約2500秒の間の期間にわたって0.03sccm/Lから約0.035sccm/Lへ増加させることができる。別の実施形態では、シランガスは、水素ガスに対する所定のガス流量比で、加工チャンバ内で漸進的に増加させることができる。たとえば、ガス混合物中で供給されるシランガスの流量と水素の流量の比は、約1:70〜約1:80など、約1:50〜約1:200の範囲内で増加される。
【0047】
バルク真性微結晶シリコン層118を堆積させるシラン流の漸進的な増加は動的に制御され、したがって堆積プロセスの異なる段階で供給されるガス流は異なってもよい。段階的なプロセスパラメータ調整を利用する従来の慣行とは異なり、堆積プロセス中に供給されるガス流は、複数の層を異なる膜特性で段階ごとに形成してバルク膜全体を構成するようにユーザによって事前定義された各時間セグメント内でのみ変動される。対照的に、本発明を利用することによって、ガス流を動的かつ一定に変動および調整することができ、その結果得られるバルク真性微結晶シリコン層118は、異なる膜特性で平滑に遷移する。一実施形態では、供給されるガス流は、その結果得られるバルク真性微結晶シリコン層118が形成されるまで、直線的に、または放物線状、逆放物線状、曲線、もしくは任意の他の適切なプロファイルなどの他の増加プロファイルで増加するように動的に制御することができる。一実施形態では、バルク真性微結晶シリコン層118を堆積させるために供給されるガス流は、直線的に供給され、動的に制御される。
【0048】
一実施形態では、必要に応じてHeやArなどの不活性ガスまたはキャリアガスを加工チャンバへ供給することができる。さらに、その結果得られる真性微結晶シリコン層内に1つまたは複数のドーパントが形成されることが望ましい場合、必要に応じてCO、O、NO、NO、CH、CO、H、Ge含有前駆体、Nなどの1つまたは複数のドーパントガスを提供し、シリコン合金微結晶シリコン層を形成する。
【0049】
一実施形態では、シード層116およびバルク真性微結晶シリコン層118の堆積前に、任意選択の水素ガス処理プロセスを基板上で実行することができる。水素処理プロセスを実行すると、下にある層を処理して表面汚染を抑制することができる。さらに、プラズマ処理プロセスでは、処理プロセス中に表面の欠陥を除去または排除できるため、境界面の電気特性を改善することもできる。水素処理プロセスを実行するとき、水素ガスが加工チャンバ内へ低いRF電力で供給される。RF電力は、基板表面から汚染物質を除去するのに良好なプラズマ処理効果を維持しながら下にある層のプラズマ損傷を回避するために低いレベルで制御される。水素ガスまたはアルゴンガスを供給するガス流は、約0.1sccm/L〜約5sccm/Lの間、たとえば約0.5sccm/L〜約2sccm/Lである。処理プロセスを行うために供給されるRF電力は、約40ミリワット/cm〜約80ミリワット/cmの間など、約150ミリワット/cm未満で制御することができる。水素処理プロセスが完了した後、ステップ404で記載のガス混合物中のシランガスを加工チャンバ内へ供給することができ、RF電力を漸進的に増加させて、上記のシード層116およびバルク真性微結晶シリコン層118を堆積させることができる。
【0050】
ステップ404でプロセスチャンバへのガス混合物の供給を実行しながら、ステップ406で、いくつかのプロセスパラメータを動的に調整することができる。ステップ404でガス混合物をプロセスガス内へ供給しながら、ガス混合物を所望の形でプラズマイオン化できるように、ガス混合物中でプラズマを着火するために印加されるRF電力を制御することができる。一実施形態では、加工チャンバへ印加されるRF電力は、シード層116を堆積させるために、400ミリワット/cm未満で制御される。堆積の初期段階で過度に大量のRF電力を提供する結果、高いイオン衝撃が生じることがあり、それによって下にある層を損傷し、基板表面およびチャンバハードウェア構成要素上でアークの発生をもたらし、またガス混合物中で形成されるイオンの不均一または過度に励起された状態に寄与することがあり、その結果、基板表面上の原子の分配が不均一になることがある。そのような発生を防止するために、過度に励起された状態または不安定な状態でイオンが解離されるのを防止するためにシード層116を形成するとき、RF電力は30キロワット未満のレベルで制御される。一実施形態では、シード層116の堆積中に供給されるRF電力は、必要に応じて安定した状態で維持することができ、または動的に制御(すなわち、増加または減少)することができる。
【0051】
シード層116が基板上に形成された後、バルク真性微結晶シリコン層118を形成するために加工チャンバ内へ供給されるRF電力は、所定の期間で第1の設定点から第2の設定点へ制御される。一実施形態では、バルク真性微結晶シリコン層118を形成するために供給されるRF電力は、漸進的に減少するように構成される。堆積中に加工チャンバへ印加されるRF電力を低くすると、その結果得られるバルク真性微結晶シリコン層118内に形成される結晶分率を低減させると考えられる。したがって、膜厚さが増大するときに一定の膜結晶を維持するために、RF電力の漸進的な減少を実行して、膜厚さによって増大される結晶分率を補償する。一実施形態では、RF電力は、約1000秒〜約1800秒の間の期間で50000ワットから約45000ワットへ減少される。電力密度によって電力単位を表す場合、RF電力密度は、約1000秒〜約1800秒の間の期間に約800ミリワット/cm〜約700ミリワット/cmの間で制御することができる。VHF電力を利用して、約13.56MHzまたは約40MHzなど、10MHz〜約200MHzの間の周波数を提供し、ガス混合物中でイオンを解離するのに十分なRF電力を提供することができ、したがって速い堆積速度を得ることができる。
【0052】
ステップ404で供給されるガス混合物の制御と同様に、印加されるRF電力は、バルク真性微結晶シリコン層118を所望の膜結晶分率で形成できる所望の形で、ガス混合物中で形成されるプラズマを維持するように動的に制御することができる。RF電力は、その結果得られるバルク真性微結晶シリコン層118が形成されるまで、直線、放物線状、逆放物線状、曲線、または任意の他の適切なプロファイルなどの任意の増加プロファイルで動的に制御することができる。一実施形態では、バルク真性微結晶シリコン層118を堆積させるために印加されるRF電力は、直線的に減少させ、動的に制御することができる。
【0053】
ステップ406で実行されるプロセス中、いくつかのプロセスパラメータを堆積プロセス中に動的に制御することができる。一実施形態では、堆積プロセス中に維持されるプロセス圧力を、堆積プロセス全体にわたって動的に調整することができる。一実施形態では、層118が成長するとき、プロセス圧力を漸進的に増加させて、その結果得られるバルク真性微結晶シリコン層118内に形成される結晶分率を低減させることができる。プロセス圧力は、ステップ404で実行されるガス混合物に対する制御のように、所定の期間内に第1の設定点から第2の設定点へ増加させることができる。堆積プロセス中にプロセス圧力を低くすると、膜内の結晶構造の形成を助け、それによってその結果得られるバルク真性微結晶シリコン層118内の結晶分率を増大できると考えられる。したがって、真性微結晶シリコン層の堆積プロセス中に制御されるプロセス圧力を漸進的に増加させて、バルク真性微結晶シリコン層118内で形成される結晶分率を低減させることができる。一実施形態では、プロセス圧力は、約1000秒〜約1800秒の間の期間で12トルから約15トルへ増加させることができる。
【0054】
基板とガス分配板アセンブリの間隔は、必要に応じて動的に制御することができる。一実施形態では、基板の間隔を漸進的に増大させて、バルク真性微結晶シリコン層118内に形成される結晶分率を低減させることができる。たとえば、基板の間隔は、約1000秒〜約1800秒の間の期間にわたって600ミルから約750ミルへ増大させることができる。プロセス圧力、RF電力、間隔、ガス流量比などを含めて、上記で論じたプロセスパラメータはすべて、膜厚さの成長とともに膜の結晶分率を所望の範囲で維持するように動的に制御できることに留意されたい。基板温度は、動的に制御することができ、すなわち摂氏約100度〜摂氏約250度の間など、摂氏約50度〜摂氏約300度の間で、たとえば摂氏約200度に増加または減少させることができる。
【0055】
堆積プロセス中に維持されるガス混合物の流量、RF電力、およびプロセス圧力を効率的かつ動的に制御することによって、バルク真性微結晶シリコン層118全体にわたって均一の結晶分率など、所望の膜特性を得ることができる。堆積プロセス中にシラン流を動的に増加させ、かつRF電力を動的に減少させることによって、バルク真性微結晶シリコン層118内で均一の膜結晶分率を得ることができる。一実施形態では、その結果得られる真性微結晶シリコン層は、約45パーセント〜約55パーセントの間、またはそれ以上など、40パーセントより大きい結晶分率を有することができる。膜の結晶分率および膜の結晶均一性が改善されるため、光電変換効率を約50パーセント〜約150パーセント改善することができ、その結果、PV太陽電池セルのデバイス性能を著しく増大させることができる。
【0056】
図5は、図3のPECVDチャンバ300またはシリコン膜を堆積させることが可能な他の適切なチャンバなどの複数のプロセスチャンバ531〜537を有するプロセスシステム500の一実施形態の概略平面図である。プロセスシステム500は、ロードロックチャンバ510およびプロセスチャンバ531〜537に結合された搬送チャンバ520を含む。ロードロックチャンバ510により、システムの外側の周囲環境と搬送チャンバ520およびプロセスチャンバ531〜537内の真空環境の間で基板を搬送することができる。ロードロックチャンバ510は、1つまたは複数の基板を保持する1つまたは複数の排気可能領域を含む。排気可能領域は、システム500内へ基板を挿入するのを容易にするようにポンプで汲み上げられ、システム500から基板を除去するのを容易にするように排気される。搬送チャンバ520内には、ロードロックチャンバ510とプロセスチャンバ531〜537の間で基板を搬送するように適合された少なくとも1つの真空ロボット522が配置される。図5には7つのプロセスチャンバを示すが、システムは任意の適切な数のプロセスチャンバを有することができるため、この構成は、本発明の範囲に関して限定しようとするものではない。
【0057】
本発明の特定の実施形態では、システム500は、多重接合型の太陽電池セルの図1に示すような第1のp−i−n接合126を堆積させるように構成される。一実施形態では、プロセスチャンバ531〜537の1つは、第1のp−i−n接合のp型層(複数可)を堆積させるように構成される一方、残りのプロセスチャンバ531〜537はそれぞれ、真性層(複数可)とn型層(複数可)の両方を堆積させるように構成される。第1のp−i−n接合の真性層(複数可)およびn型層(複数可)は、堆積ステップ間にいかなる不活性化プロセスも実行することなく、同じチャンバ内で堆積させることができる。したがって、一実施形態では、基板がロードロックチャンバ510を通ってシステムに入り、次いでこの基板は真空ロボットによって、p型層(複数可)を堆積させるように構成された専用のプロセスチャンバ内へ搬送される。次に、p型層を形成した後、基板は真空ロボットによって、真性層(複数可)とn型層(複数可)の両方を堆積させるように構成された残りのプロセスチャンバの1つ内へ搬送される。真性層(複数可)およびn型層(複数可)を形成した後、基板は真空ロボット522によって、再びロードロックチャンバ510へ搬送される。特定の実施形態では、p型層(複数可)を形成するためにプロセスチャンバ内で基板を加工する時間は、真性層(複数可)およびn型層(複数可)を単一のチャンバ内で形成する時間より、6倍以上など、約4倍以上速い。したがって、システムの特定の実施形態では、pチャンバとi/nチャンバの比は、1:6以上など、1:4以上である。プロセスチャンバのプラズマ清浄を提供する時間を含めて、システムの処理量は、基板約10枚/時間以上、たとえば基板20枚/時間以上とすることができる。
【0058】
本発明の特定の実施形態では、システム500は、多重接合型の太陽電池セルの図1に示すような第2のp−i−n接合128を堆積させるように構成することができる。一実施形態では、プロセスチャンバ531〜537の1つは、第2のp−i−n接合のp型層(複数可)を堆積させるように構成される一方、残りのプロセスチャンバ531〜537はそれぞれ、真性層(複数可)とn型層(複数可)の両方を堆積させるように構成される。第2のp−i−n接合の真性層(複数可)およびn型層(複数可)は、堆積ステップ間にいかなる不活性化プロセスも実行することなく、同じチャンバ内で堆積させることができる。特定の実施形態では、p型層(複数可)を形成するためにプロセスチャンバ内で基板を加工する時間は、真性層(複数可)およびn型層(複数可)を単一のチャンバ内で形成する時間より約4倍以上速くすることができる。したがって、第2のp−i−n接合を堆積させるシステムの特定の実施形態では、pチャンバとi/nチャンバの比は、1:6以上など、1:4以上とすることができる。プロセスチャンバのプラズマ清浄を提供する時間を含めて、システムの基板処理量は、基板5枚/時間以上など、基板約3枚/時間以上とすることができる。
【0059】
本発明の特定の実施形態では、システム500は、図1に示すようにWSR層112を堆積させるように構成される。WSR層112は、第1および第2のp−i−n接合または第2のp−i−n接合と第2のTCO層の間に配置することができる。一実施形態では、プロセスチャンバ531〜537の1つは、WSR層の1つまたは複数を堆積させるように構成され、プロセスチャンバ531〜537の別の1つは、第2のp−i−n接合のp型層(複数可)を堆積させるように構成される一方、残りのプロセスチャンバ531〜537はそれぞれ、真性層(複数可)とn型層(複数可)の両方を堆積させるように構成される。WSR層を堆積させるように構成されるチャンバの数は、p型層(複数可)を堆積させるように構成されるチャンバの数と同様にすることができる。さらに、WSR層は、真性層(複数可)とn型層(複数可)の両方を堆積させるように構成された同じチャンバ内で堆積させることもできる。
【0060】
特定の実施形態では、真性微結晶シリコン層(複数可)と真性非晶質シリコン層(複数可)の厚さの差のため、真性非晶質シリコン層を含む第1のp−i−n接合を堆積させるように構成されるシステム500の処理量は、真性微結晶シリコン層を含む第2のp−i−n接合を堆積させるために使用されるシステム500の処理量より2倍大きい処理量を有する。したがって、真性非晶質シリコン層を含む第1のp−i−n接合を堆積させるように適合された単一のシステム500は、真性微結晶シリコン層を含む第2のp−i−n接合を堆積させるように適合された2つ以上のシステム500に匹敵することができる。したがって、WSR層の堆積プロセスは、効率的な処理量制御のために、第1のp−i−n接合を堆積させるように適合されたシステム内で実行されるように構成することができる。第1のp−i−n接合が1つのシステム内で形成された後、基板を周囲環境へ露出させ(すなわち、真空を破壊し)、第2のシステムへ搬送することができ、第2のシステムで、第2のp−i−n接合が形成される。第1のp−i−n接合を堆積させる第1のシステムと第2のp−i−n接合の間に、基板の湿式または乾式清浄が必要となることがある。一実施形態では、WSR層の堆積プロセスは、別個のシステム内で実行することができる。
【0061】
したがって、太陽電池セルデバイス内で均一の結晶分率をもつ真性微結晶シリコン層を形成する方法が提供される。この方法は、堆積プロセス中に利用されるプロセスパラメータの動的制御を利用する。この方法は、高い結晶分率、結晶均一性、および光電変換効率を有する真性微結晶シリコン層、ならびにPV太陽電池セルのデバイス性能をもたらすことが有利である。
【0062】
上記は本発明の実施形態を対象とするが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく、本発明の他のさらなる実施形態を考案することができ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
【符号の説明】
【0063】
100 多重接合型の太陽電池セル
101 光または太陽放射
102 基板
104 第1の透明導電酸化物(TCO)層
106 p型非晶質シリコン層
108 真性非晶質シリコン層
110 n型微結晶シリコン層
112 波長選択的な反射体(WSR)層
114 p型微結晶シリコン層
116 真性微結晶シリコンシード層
118 バルク真性微結晶シリコン層
120 n型非晶質シリコン層
122 第2のTCO層
124 メタルバック層
126 第1のp−i−n接合
128 第2のp−i−n接合
200 単一接合型の太陽電池セル
202 p型シリコン層
206 単一のp−i−n接合
208 n型シリコン層
300 プラズマ強化化学気相成長(PECVD)チャンバ
302 壁
304 底部
306 プロセス体積
308 バルブ
309 真空ポンプ
310 シャワーヘッド
312 裏当て板
314 懸架部
316 中心支持体
320 ガス源
322 RF電源
324 遠隔プラズマ源
330 基板支持体
331 RF導電ストラップ
332 基板受取り表面
333 シャドーリング
334 心棒
336 リフトシステム
338 リフトピン
339 加熱および/または冷却素子
400 方法
500 プロセスシステム
510 ロードロックチャンバ
520 搬送チャンバ
522 真空ロボット
531 プロセスチャンバ
532 プロセスチャンバ
533 プロセスチャンバ
534 プロセスチャンバ
535 プロセスチャンバ
536 プロセスチャンバ
537 プロセスチャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真性微結晶シリコン層を形成する方法であって、
加工チャンバ内に配置された基板の表面へガス混合物中で供給されるシランガスを動的に増加させるステップと、
前記加工チャンバへ供給される前記ガス混合物中で印加されるRF電力を動的に減少させるステップであり、前記ガス混合物が前記加工チャンバ内でプラズマを形成するステップと、
前記プラズマの存在下で前記基板上に真性微結晶シリコン層を形成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記ガス混合物中で供給される前記シランガスを直線的に増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス混合物中で印加される前記RF電力を直線的に減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記真性微結晶シリコン層を形成する前にシード層を形成するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板表面上に前記シード層を形成する前に、水素処理プロセスを実行するステップ
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水素処理プロセスを実行するステップが、
前記水素処理プロセスにおいて150ミリワット/cm未満のRF電力を印加するステップ
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ガス混合物中で制御されるプロセス圧力を動的に増加させるステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセス圧力を動的に増加させるステップが、
前記プロセス圧力を約12トルから約15トルへ増加させるステップ
をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガス混合物中で供給される前記シランガスを動的に増加させるステップが、
前記ガス混合物中で供給される前記シランガスと水素ガスの流量の比を約1:70から約1:80へ増加させるステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ガス混合物中で印加される前記RF電力を動的に減少させるステップが、
前記RF電力を800ミリワット/cmから約700ミリワット/cmへ減少させるステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基板の間隔を約600ミルから約700ミルへ動的に増大させるステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記シード層を形成するステップが、
前記ガス混合物中で供給されるシランガスの流量を増加させるステップと、
前記シランガスの流量を増加させながら、前記ガス混合物中で供給される安定した水素ガスの流量を維持するステップと
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記シード層を形成するステップが、
前記シード層を形成しながら、400ミリワット/cm未満のRF電力を印加するステップ
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
約1000秒〜約1800秒の間の期間にわたって前記ガス混合物を前記加工チャンバへ供給するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
真性微結晶シリコン層を形成する方法であって、
加工チャンバ内に配置された基板上に真性シード層を形成するステップと、
前記シード層を形成しながら、ガス混合物中で400ミリワット/cm未満のRF電力を印加するステップと、
その後、プラズマの存在下で前記基板上に真性微結晶シリコン層を形成するステップであり、前記真性微結晶シリコン層が、前記ガス混合物中で供給されるシランガスを動的に増加させることによって形成されるステップと、
前記加工チャンバへ供給される前記ガス混合物中で印加されるRF電力を動的に減少させて、前記ガス混合物中でプラズマを形成するステップと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−238925(P2011−238925A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−103238(P2011−103238)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】