説明

成膜方法及び成膜装置

【課題】例えアスペクト比が高く、深さが深いビアホール等の凹部にあっても、銅等の金属材料を、内部にボイドを発生させることなく、凹部内に高速かつ確実に埋込むことができるようにする。
【解決手段】凹部202を有し該凹部202の内部を含む表面に通電層206を形成した基板Wを用意し、凹部202の内部を除く通電層206の表面に電着法で高分子絶縁膜208を形成し、高分子絶縁膜208を形成した基板Wの表面に電解めっきを行って凹部202内に金属材料210を埋込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板の表面に金属膜を成膜する成膜方法及び成膜装置に関し、特に半導体ウエハ等の基板の表面に設けられた微細なトレンチやビアホール等の凹部の内部に金属材料を埋込んだり、半導体チップの内部に貫通する配線を形成したりするのに使用して好適な成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高集積化・高速化に伴って多層配線化が進んでいる。この多層配線にあっては、下層配線では微細化が進んでいるものの、上層配線では逆に1μmを超える幅で深さが数μmの配線やビアが使われるようになってきている。また、複数の半導体チップを1個のパッケージにまとめる3次元実装においては、従来のワイアボンディングによる半導体チップ間の配線形成から、半導体チップ内部に貫通する配線を形成し、この配線を相互に接続して配線間距離を短縮し、これによって、低電力化、高速化を図る方向に進もうとしている。この場合に、例えば開口部寸法が70μmで深さが100μm程度のビアホール(凹部)を金属材料(配線材料)で埋込む必要が出てくる。このような微細ながらもより深い深さの配線を形成するためには、経済性の点から電解めっき法が最も適していると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の電解めっき装置では、例えば基板の内部に設けた、直径10〜20μm、深さ70〜150μm程度の、アスペスト比が高く、深さの深いビアホールの内部に、内部にボイド等の欠陥が生じることを防止しつつ、電解めっきで金属膜(金属材料)を高速かつ確実に埋込むのは一般にかなり困難であった。これは、基板の表面でのめっきの進行に伴って、めっき液中の金属イオンが著しく消耗され、ビアホール底部への金属イオンの供給が遅れるためである。
【0004】
例えば、図1に示すように、アスペスト比が1以上と高く、深さが深いビアホール(凹部)2を内部に設けた絶縁膜4を覆う通電層(シード層)6の表面に電解めっきを行うと、ビアホール2の開口端部付近(開口部肩口)でめっき析出が優先されて該開口端部が金属材料(めっき膜)8で塞がれ、ビアホール2の内部に埋込まれた金属材料8の内部にボイド8aが生じる、いわゆるピンチオフ現象が生じる。この現象は、特に半導体チップの内部に貫通する配線を形成するような場合に顕著に表れる。
【0005】
なお、電解めっき中に流すめっき電流を抑制し、更に、めっき液中に添加する添加剤を調整することにより、ある程度の改善は可能であるが、この場合、ビアホール内に金属材料を高速に埋込むことができず、例えば100μmの深さを有するビアホールの内部に金属材料を完全に埋込むのに数時間かかってしまう。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、例えアスペクト比が高く、深さが深いビアホール等の凹部にあっても、銅等の金属材料を、内部にボイドを発生させることなく、凹部内に高速かつ確実に埋込むことができるようにした成膜方法及び成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、凹部を有し該凹部の内部を含む表面に通電層を形成した基板を用意し、前記凹部の内部を除く前記通電層の表面に電着法で高分子絶縁膜を形成し、前記高分子絶縁膜を形成した基板の表面に電解めっきを行って前記凹部内に金属材料を埋込むことを特徴とする成膜方法である。
【0008】
基板の表面に設けたビアホールやトレンチ等の微細な凹部のみに金属材料を埋込んで配線を形成する際、マスクとしての高分子絶縁膜で凹部以外の基板の表面を被覆する方法としては、例えばフォトレジストを使う方法がある。この方法の場合には、位置ずれによって凹部がレジストで遮蔽されてしまうことを回避するため、凹部より広い範囲にレジスト開口部を設ける必要があり、このため、凹部の開口端部付近に位置する基板の表面に高分子絶縁膜が設けられずに、ここでのめっき膜の析出を抑制できない。これに対して、本発明によれば、電着法で高分子絶縁膜を成膜することで、凹部肩部まで高分子絶縁膜で被覆することができ、これによって、マスクとしての役割を果たす高分子絶縁膜の表面にめっき膜が析出するのを抑制しつつ、電解めっきによって、凹部内にのみ金属材料を高速かつ確実に埋込むことができる。なお、高分子絶縁膜の電着に際して、例えば充分に攪拌するなどの条件を与えると凹部肩口よりも内部にまで成膜されることもありうるが、本目的においては実質的に凹部肩口で成膜がとどまるような条件を選択するものとする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記通電層を、電解めっき法、無電解めっき法、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、ALD法、及び常圧で有機金属を気化して基板に金属膜を成膜する有機金属法のいずれかで形成したことを特徴とする請求項1記載の成膜方法である。
【0010】
電着により高分子絶縁膜で被覆する際の通電層の形成方法としては、電解めっき法や無電解めっき法のようなウェットプロセスによるもの、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法またはALD法のようなドライプロセスによるものがよく知られているが、この他に加熱した基板上に有機金属蒸気を導いて熱分解させることで金属皮膜を形成する有機金属法も適用することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記高分子絶縁膜の形成を、カチオン系高分子材料の電着により行うことを特徴とする請求項1または2記載の成膜方法である。
電着により、アニオン系高分子材料とカチオン系高分子材料による高分子絶縁膜が形成できる。アニオン系高分子材料により高分子絶縁膜を形成する場合、通電層をアノードとすることになり、条件によっては、通電層の酸化や溶解が生じて、安定な電着ができない恐れがある。これに対して、カチオン系高分子材料により高分子絶縁膜を形成する場合には、このような恐れが無く、また次の工程の電解めっきも通電層をカソードとして行うので、連続性があって好ましい。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記カチオン系高分子材料は、ポリイミド系カチオン高分子であることを特徴とする請求項3に記載の成膜方法である。
カチオン系高分子材料として様々な種類がある。その中で、ポリイミド系カチオン高分子は、一般に、絶縁性が高く、粒径が揃ったものが得やすい。このため、カチオン系高分子材料としてポリイミド系カチオン高分子を使用することで、高分子絶縁膜を制御性よく電着できる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記高分子絶縁膜を形成した基板の表面を洗浄することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の成膜方法である。
一般に、電着液と電解めっき液は、pHや使用している添加剤の種類などが大いに異なる。電着処理後に基板の表面に残った電着液を洗浄して基板の表面から除去することで、めっき液中に電着液が混入してしまうことを防止して、めっき液の組成等が変化することを防止することができる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記高分子絶縁膜を熱処理することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の成膜方法である。
熱処理することで、高分子絶縁膜を連続的な膜となすことができ、これによって、その後に行われる電解めっきで成膜される金属材料にムラが生じないようにすることができる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記電解めっきにより前記凹部内に埋込む金属材料は、銅、銅合金、銀、または銀合金であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の成膜方法ある。
電気抵抗が低く、電解めっきによって成膜できる材料としては、銅と銀がある。従って金属材料としては、銅または銀、またはこれらの合金であることが好ましい。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記凹部の幅または直径は、1μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の成膜方法である。
請求項9に記載の発明は、前記凹部のアスペクト比は、1.0以上であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の成膜方法である。
アスペクト比が1.0以下の浅い凹部であれば、本方法によらずとも、凹部の内部に金属材料を高速で埋込むことができる。
【0017】
請求項10に記載の発明は、凹部の内部を含む基板の表面に形成した通電層の前記凹部の内部を除く表面に高分子絶縁膜を電着させる電着処理ユニットと、電着処理後の基板の表面に電解めっきを施して前記凹部内に金属材料を埋込む電解めっきユニットと、電解めっき後の基板を洗浄し乾燥させる洗浄・乾燥ユニットを有することを特徴とする成膜装置である。
成膜装置に電着処理ユニットと電解めっきユニットを有することにより、一連の処理を同一の装置(成膜装置)で連続して行って、生産性を高く維持することができる。成膜装置に洗浄・乾燥ユニットをも有することで、処理後の基板を乾燥状態で取出すことができ、その後の基板の保管なども容易となる。
【0018】
請求項11に記載の発明は、前記電着処理ユニットは、内部に電着液を保持する電着槽と、前記電着槽内に配置され、表面を下向きにして基板を水平に保持する上下動自在な基板ホルダと、前記基板ホルダに設けられ該基板ホルダで保持した基板の前記通電層に接触して該通電層をカソードとするカソード接点と、前記電着槽内の電着液中に浸漬させて水平に配置されるアノードを有することを特徴とする請求項10記載の成膜装置である。
【0019】
基板をカソードとすると、基板側で水素ガスの発生が起こる。その際、表面を下方に向ける、いわゆるフェースダウンで基板を保持すると、凹部を除く基板の表面で発生した水素ガスは、比較的容易に基板の表面から脱離するが、基板の凹部内で発生した水素ガスは、表面が下方を向いているので、凹部内から容易に脱離しない。このため、凹部内部にガスが溜まり、このガスが高分子絶縁膜の電着を阻害する。これにより、凹部内部を除く基板表面並びに凹部肩口のみに、次工程の電解めっきの障害となる高分子絶縁膜をより確実に形成することができる。高分子絶縁膜の成膜時には、電着液を攪拌しない方が望ましい。
【0020】
請求項12に記載の発明は、前記電解めっきユニットは、めっき液を保持するめっき槽と、前記めっき槽内の内部に配置された基板の表面に向けてめっき液を噴射するめっき液噴出口を有するめっき液噴射ノズルを有することを特徴とする請求項10または11記載の成膜装置である。
【0021】
例えば、幅(直径)が70μmで深さが100nmのビアホール(凹部)内に金属材料を埋込む場合には、ビアホール底部に金属イオンを積極的に供給する必要がある。めっき液をめっき液噴出口を有する噴射ノズルから基板に向けて噴射することで、ビアホール底部まで新鮮なめっき液を供給することができる。めっき液噴出口の形状としては、例えばスリット状のものが好ましい。また一定の位置でめっき液を供給し続けると、ビアホール内部に消耗しためっき液が滞留し、かえってめっき速度が低下する。そのため、めっき液噴射ノズルを移動させて、ビアホール内部のめっき液の置換を促進することにより、めっき速度を高速に維持することができる。めっき液噴射ノズルは必ずしも単一である必要は無く、複数のめっき液噴射ノズルを直列に配列したノズル群アセンブルであってもよいし、ノズル群アセンブルを同時に複数用いてもよい。
【0022】
請求項13に記載の発明は、前記めっき液は、硫酸銅を含む硫酸銅めっき液であることを特徴とする請求項12記載の成膜装置である。
成膜する金属材料によってめっき液を選択するが、電解めっきで比較的厚くめっき膜を成膜することになるので、めっき液は、できるだけ安価なものが好ましい。硫酸銅めっき液であれば広範囲で用いられており、コストも低く好適である。
【0023】
請求項14記載の発明は、前記電着処理後に基板の表面に残った電着液を洗浄除去する電着液洗浄ユニットを更に有することを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の成膜装置である。
電着処理後に基板の表面に残った電着液を電着液洗浄ユニットで洗浄除去することで、一般に、pHや使用している添加剤の種類などが大いに異なる電着液と電解めっき液が互いに混合して、めっき液の組成等が変化してしまうことを防止することができる。
【0024】
請求項15に記載の発明は、前記通電層の表面に電着した高分子絶縁膜を熱処理する熱処理ユニットを更に有することを特徴とする請求項10乃至14のいずれかに記載の成膜装置である。
熱処理ユニットで熱処理することにより、高分子絶縁膜を連続的な膜にすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、凹部の内部を除く通電層の表面に電着法で高分子絶縁膜を成膜することで、凹部肩部までをマスクとしての高分子絶縁膜で被覆することができ、これによって、例えアスペクト比が高く、深さが深いビアホール等の凹部にあっても、銅等の金属材料を、内部にボイドを発生させることなく、凹部内のみに高速かつ確実に埋込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では、金属材料として銅を使用した例を示す。
図2は、本発明の実施の形態の成膜装置の全体配置図を示す。図2に示すように、成膜装置40は、ロード部41、アンロード部42、洗浄・乾燥ユニット43、ロードステージ44、電着液洗浄ユニット45、電着処理ユニット46、電解めっきユニット47、第1搬送ロボット48及び第2搬送ロボット49を有している。
【0027】
電着処理ユニット46は、この例では、カチオン系高分子材料、好ましくは、ポリイミド系カチオン高分子からなる高分子絶縁膜208を通電層206の表面に電着するようにしている(図9(b)参照)。電着により、アニオン系高分子材料とカチオン系高分子材料による高分子絶縁膜が形成できるが、アニオン系高分子材料により高分子絶縁膜を形成する場合、通電層をアノードとすることになり、条件によっては、通電層の酸化や溶解が生じて、安定な電着ができない恐れがある。これに対して、カチオン系高分子材料により高分子絶縁膜を形成する場合には、このような恐れが無く、また次の工程の電解めっきも通電層をカソードとして行うので、連続性があって好ましい。更に、ポリイミド系カチオン高分子は、一般に、絶縁性が高く、粒径が揃ったものが得やすい。このため、カチオン系高分子材料としてポリイミド系カチオン高分子を使用することで、高分子絶縁膜を制御性よく電着できる。
【0028】
このため、この例では、電着液として、直径数100nmのポリイミドのコロイドであって、表面に多数のNが存在してコロイドを溶媒(有機溶剤を含む純水)中に分散させたものを使用している。
【0029】
電着処理ユニット46は、図3に示すように、電着処理ユニット本体11と、この内部に収容された半導体ウエハ等の基板Wを保持するための基板ホルダ12を有している。基板ホルダ12は、基板保持部12−1とシャフト部12−2からなり、シャフト部12−2は、円筒状のガイド部材14の内壁に軸受15,15を介して回転自在に支持されている。ガイド部材14と基板ホルダ12は、電着処理ユニット本体11の頂部に設けられたシリンダ16により上下に所定ストロークで昇降できるようになっている。
【0030】
基板ホルダ12は、ガイド部材14の内部上方に設けられたモータ18により、シャフト部12−2を介して矢印A方向に回転できる。基板ホルダ12の内部には、基板押え部17−1とシャフト部17−2からなる基板押え部材17を収納する空間Cが設けられており、基板押え部材17は、基板ホルダ12のシャフト部12−2内の上部に設けられたシリンダ19により上下に所定ストロークで昇降できる。
【0031】
基板ホルダ12の基板保持部12−1の下方には、空間Cに連通する開口12−1aが設けられ、この開口12−1aの上部には、図4に示すように、基板Wの縁部が載置される段部12−1bが形成されている。この段部12−1bに基板Wの縁部を載置し、基板Wの上面を基板押え部材17の基板押え部17−1で押圧することにより、基板Wの縁部は、基板押え部17−1と段部12−1bの間に挟持される。そして基板Wの表面(下面)は開口12−1aに露出する。なお、図4は図3のB部分の拡大図である。
【0032】
電着処理ユニット本体11の基板保持部12−1の下方、即ち開口12−1aに露出する基板Wの下方には偏平な電着槽20が設けられ、電着槽20の下方に多数の孔21aが形成された多孔板21を介して、偏平な電着液導入室22が設けられている。また、電着槽20の外側には該電着槽20をオーバフローした電着液Lを捕集する捕集樋23が設けられている。
【0033】
捕集樋23で回収された電着液Lは、電着液交換・補充時に電着液タンク24に戻るようになっている。電着液タンク24内の電着液Lは、ポンプ25により電着槽20の両側から水平方向に導入される。電着槽20の両側から導入された電着液Lは、多孔板21の孔21aを通って、垂直噴流となって電着槽20に流れ込む。多孔板21と基板Wの間隔は、5〜15mmとなっており、多孔板21の孔21aを通った電着液Lの噴流は、垂直上昇を維持したまま均一な噴流となり電着槽20内の電着液を攪拌して均一化する。電着液交換・補充時に電着槽20をオーバフローした電着液Lは、捕集樋23で回収され、電着液タンク24に流れ込む。これにより、電着液Lは、電着処理ユニット本体11の電着槽20と電着液タンク24の間を循環する。
電着槽20の電着液面レベルLQは、基板Wの下面レベルLWより若干ΔLだけ高くなっており、基板Wの下面の全面は電着液Lに接触している。
【0034】
基板ホルダ12の基板保持部12−1の段部12−1bには、図4に示すように、基板Wの通電層206(図9(a)参照)と電気的に導通して該通電層206をカソードとなすカソード接点27が設けられている。このカソード接点27は、電線(図示せず)でブラシ26に電気的に接続され、更に該ブラシ26を介して、外部のめっき電源(図示せず)のカソードに接続される。電着処理ユニット本体11の電着槽20の底部には、基板Wと対向して、例えばSUSからなるアノード28が設けられ、このアノード28はめっき電源の陽極に接続される。電着処理ユニット本体11の壁面の所定位置には、例えばロボットアーム等の基板搬出入治具で基板Wを出し入れする搬出入スリット29が設けられている。
【0035】
上記構成の電着処理ユニット46において、電着処理を行うに際しては、先ずシリンダ16を作動させ、基板ホルダ12をガイド部材14ごと所定量(基板保持部12−1に保持された基板Wが搬出入スリット29に対応する位置まで)上昇させるとともに、シリンダ19を作動させて基板押え部材17を所定量(基板押え部17−1が搬出入スリット29の上部に達する位置まで)上昇させる。この状態で、ロボットアーム等の基板搬出入治具で基板Wを基板ホルダ12の空間Cに搬入し、基板Wをその表面が下向きになるようにして、段部12−1bに載置する。この状態で、シリンダ19を作動させて基板押え部17−1の下面が基板Wの上面に当接するまで下降させ、基板押え部17−1と段部12−1bの間に基板Wの縁部を挟持する。
【0036】
この状態で、シリンダ16を作動させ、基板ホルダ12をガイド部材14ごと基板Wの下面が電着槽20の電着液Lに接触するまで(電着液面レベルLQより上記ΔLだけ低い位置まで)下降させる。この時、必要に応じて、モータ18を起動し、基板ホルダ12と基板Wを低速で回転させながら下降させる。電着槽20には電着液Lが充満している。この状態でアノード28とカソード接点27の間にめっき電源から所定の電圧を印加すると、アノード28からカソードとしての基板Wの通電層206へと電流が流れ、図9(b)に示すように、基板Wの通電層206の表面(下面)に高分子絶縁膜208が形成される。
【0037】
なお、下記のように、電解処理中は、基板Wの回転を中止して基板Wを静止させ、更に電着槽20内に電着液を供給しないようにして、電着液を攪拌しない方が好ましい。
電着処理が終了するとシリンダ16を作動させ、基板ホルダ12と基板Wを上昇させ、基板保持部12−1の下面が電着液面レベルLQより上になったら、モータ18を高速で回転させ、遠心力で基板の下面及び基板保持部12−1の下面に付着した電着液を振り切る。電着液を振り切ったら、基板Wを搬出入スリット29の位置まで上昇させ、ここでシリンダ19を作動させて、基板押え部17−1を上昇させると、基板Wは解放され、基板保持部12−1の段部12−1bに載置された状態となる。この状態で、ロボットアーム等の基板搬出入治具を搬出入スリット29から、基板ホルダ12の空間Cに侵入させ、基板Wをピックアップして外部に搬出する。
【0038】
図5は、電解めっきユニット47の概要を示す縦断面図で、図6は、めっき槽内の基板ホルダ、アノード及びめっき液噴射ノズルの配置を示す平面図である。この電解めっきユニット47は、内部にめっき液Qを収容するめっき槽111と、めっき槽111の溢流堰112の上端をオーバフローしためっき液Qを収容するオーバフロー槽113を備えている。めっき槽111の内部には、めっき液Qに浸漬させて、基板ホルダ114に保持された基板Wとアノード115が垂直に所定の間隔をおいて互い対向させて配置され、基板Wとアノード115の間にめっき液Qを噴出するめっき液噴射ノズル116が垂直に配置されている。めっき液噴射ノズル116の先端と基板Wの表面との距離は、例えば1〜30mmである。
【0039】
電解めっきユニット47には、複数個(この例では2個)のめっき液噴射ノズル116が備えられており、その上端部がシャフト117に所定の間隔で固定されている。シャフト117の下面には、ラック118が設けられ、このラック118に噛合するピニオン119をモータ120で正逆転することにより、シャフト117は矢印A方向に往復動し、めっき液噴射ノズル116も同じ方向に往復動する。なお、めっき液噴射ノズル116は単一でもよく、また複数個のめっき液噴射ノズル116を複数組設けるようにしてもよい。
【0040】
なお、図示しないが、基板ホルダ114は、基板Wの周縁部を水密的にシールして基板Wを保持するように構成され、基板ホルダ114には、該基板ホルダ114で保持した基板Wの表面に設けられた通電層206(図9(a)参照)の周縁部に接触して該通電層206をカソードとなすカソード接点が設けられている。
【0041】
図7(a)は、めっき液噴射ノズル116の平面図、図7(b)は、めっき液噴射ノズル116の正面図、図7(c)は、図7(b)のB−B断面図である。めっき液噴射ノズル116は、長尺でその断面が1辺に凸状部116bが形成された略矩形状で、その中央部に長さ方向に沿ってめっき液供給穴116aが形成されている。また、凸状部116bの頂部にめっき液供給穴116aに連通するスリット状のめっき液噴出口116cが複数個直列に配列されて形成されている。めっき液供給穴116aにめっき液を所定の圧力で供給することにより、めっき液噴出口116cからその形状に相当する帯状(平板状)のめっき液が噴出される。
【0042】
各めっき液噴射ノズル116は、めっき液の流量を振分ける流量振分部としての流量マニホールド121から分岐する分岐管(めっき液供給管)122に接続され、流量マニホールド(流量振分部)121は、フレキシブル管(めっき液供給管)123を介して流量・圧力計124に接続されている。この流量・圧力計124は、配管126aを介して、ポンプ125の吐出し口に接続され、このポンプ125の吸込み口は、配管126bを介してオーバフロー槽113のめっき液排出口に接続されている。ポンプ125により、オーバフロー槽113に排出されためっき液Qは、配管126a,126b、流量・圧力計124、フレキシブル管123、流量マニホールド121及び分岐管122を通して各めっき液噴射ノズル116に供給され、めっき液噴射ノズル116のスリット状のめっき液噴出口116cから基板Wに向かって噴射される。めっき液Qは、めっき槽111内を満たした後、溢流堰112の上端をオーバフローしてオーバフロー槽113に流れ込む。
【0043】
基板ホルダ114とアノード115には直流のめっき電源127が接続され、このめっき電源127から基板ホルダ114で保持された基板Wの通電層とアノード115との間に所定の直流電圧を印加することにより、アノード115から基板Wにめっき電流が流れる。これにより、図9(c)に示すように、基板Wの凹部202内において、通電層206の表面に金属材料(めっき膜)210が成膜される。この基板Wのめっき処理に際し、シャフト117に取付けられた各めっき液噴射ノズル116は、ラック118、ピニオン119及びモータ120で構成されるノズル移動機構により、基板Wに対して平行に所定のストロークで往復動しながら、めっき液噴出口116cからめっき液を基板Wの表面に向けて噴射する。これにより、各めっき液噴射ノズル116は、基板Wの表面にめっき液を均一に供給する機能と、めっき槽111内にめっき液Qを供給する機能を奏する。
【0044】
めっき液噴射ノズル116のめっき液噴出口116cから噴出するめっき液q1,q2,q3…の噴出速度は、ポンプ125から流量マニホールド121に供給されるめっき液Qの流量と圧力によって決定される。従って、流量・圧力計124により検出された流量・圧力をポンプ125にフィードバックすることにより、めっき液噴射ノズル116のめっき液噴出口116cから噴出されるめっき液q1,q2,q3…の噴出速度及び流量を制御できる。流量マニホールド121は、めっき液Qの流れコンダクタンスを考慮して、各めっき液噴射ノズル116にめっき液流量を振分ける。
【0045】
フレキシブル管123の長さは、シャフト117、即ちめっき液噴射ノズル116が所定のストロークで往復動するのに支障がなく、めっき液噴射ノズル116の動きにスムーズに追従できる長さに設定されている。なお、上記例では、シャフト117を往復動させるノズル移動機構として、ラック118とピニオン119の組合せを用いたが、ノズル移動機構はこれに限定されるものではなく、ラックとウォームとからなるノズル移動機構、リニアスライダからなる駆動機構等、シャフト117を所定のストロークで往復動できる駆動機構であればよい。
【0046】
めっき液噴射ノズル116は、図7に示すように、スリット状の複数のめっき液噴出口116cを直列に配置したものに限定されるものではなく、図8に示すように、単一の長いスリット状のめっき液噴出口116dを設けた構成でもよい。なお、図8(a)は、単一の長いスリット状のめっき液噴出口116dを有するめっき液噴射ノズル116の平面図、図8(b)は、単一の長いスリット状のめっき液噴出口116dを有するめっき液噴射ノズル116の正面図である。スリット状のめっき液噴出口116c,116dのスリット幅寸法は、例えば0.05〜1.0mmである。前述の例では、めっき液噴射ノズル116の断面形状を略矩形形状としたが、これに限定されるものではなく、直立に配列されたスリット状のめっき液噴出口、または単一のスリット状のめっき液噴出口を有し、このめっき液噴出口から帯状(平板状)のめっき液を噴射できる構成であれば、断面形状は特に限定されない。
【0047】
また、流量・圧力計124により検出されためっき液の流量や圧力から各めっき液噴射ノズル116のめっき液噴出口116c,116dから噴射されるめっき液の流量や各めっき液噴射ノズル116内の圧力を算出し、噴射されるめっき液の流量とめっき液噴射ノズル116内の圧力の少なくとも一方をモニタするモニタ部(図示せず)を設けることにより、めっき液の噴射流量やめっき液噴射ノズル116内の圧力の少なくとも一方を常時監視して、めっき処理を最適の状態に維持調節するようにすることができる。
【0048】
上記のように構成した成膜装置を使用して銅配線を形成する例を、図9を参照して説明する。
先ず、図9(a)に示すように、例えばPVD,CVDまたは湿式塗布法で、上面にSiO等からなる絶縁膜(層間絶縁膜)200を形成し、この絶縁膜200の内部に、例えばRIE、CDE、スパッタエッチングまたは湿式エッチングでトレンチやビアホール等の凹部202を形成し、この凹部202の表面を含む絶縁膜200の上にバリア層204、このバリア層204の上に通電層としてのシード層206をそれぞれ形成した基板Wを用意する。そして、この基板Wをカセット内に収納してロード部41に搬入し、同時に、空のカセットをアンロード部42に搬入する。
【0049】
この凹部202の開口部寸法、つまり直径または幅Sは、1μm以上で100μm以下であり、凹部202のアスペクト比は1以上である。本発明は、このような形状の凹部202内に金属材料を高速かつ確実に埋込むのに特に有効である。
通電層(シード層)206は、電解めっき法や無電解めっき法のようなウェットプロセスや、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法またはALD法のようなドライプロセスによって一般に形成されるが、この他に、加熱した基板上に有機金属蒸気を導いて熱分解させることで金属皮膜を形成する有機金属法で形成してもよい。
【0050】
なお、この例では、配線形成前の基板Wをロード部41に搬入し、配線形成後の基板Wをアンロード部42から搬出するようにした例を示しているが、一つのロード・アンロード部を利用し、あるカセットから基板Wを搬入して配線形成処理を行った後、配線が形成された基板Wを同一のカセットに戻すようにしてもよい。
【0051】
次に、基板Wを、第1搬送ロボット48で、ロード部41のカセットから一枚ずつ取出し、ロードステージ44を経由して、第2搬送ロボット49で電着処理ユニット46に搬送する。この電着処理ユニット46で、図9(b)に示すように、通電層206の凹部202を除く表面に、例えばポリイミド系カチオン高分子からなる高分子絶縁膜208を形成する。この高分子絶縁膜208は、この下記の電解めっきの時にマスクとしての役割を果たすもので、電着法で高分子絶縁膜208を成膜することで、凹部202の肩部まで高分子絶縁膜208で被覆することができる。
【0052】
つまり、下式のように、通電層(カソード)206側で水が電解して水素が発生し、通電層(カソード)206付近のpHはアルカリになる。
2HO+2e→H+2OH
電着液中に分散させたポリイミドのコロイドの表面には、多数のNが存在している。このため、このNとOHが下式のように中和して、ポリイミドが通電層(カソード)206の表面に沈殿して付着する。
−N+OH→−NOH
【0053】
このように、基板Wの通電層206をカソードとすると、基板側で水素ガスの発生が起こる。その際、表面を下方に向ける、いわゆるフェースダウンで基板Wを保持すると、凹部202を除く基板Wの表面で発生した水素ガスは、比較的容易に基板Wの表面から脱離するが、基板Wの凹部202内で発生した水素ガスは、表面が下方を向いているので、凹部202内から容易に脱離しない。このため、凹部202内部に気泡が溜まり、この気泡が高分子絶縁膜208の電着を阻害する。これにより、凹部202内部を除く基板Wの表面並びに凹部202の肩口のみに、次工程の電解めっきの障害となる高分子絶縁膜208をより確実に形成することができる。
【0054】
ここで、基板Wを回転させて電着液を攪拌しながら、通電層(シード層)206の表面に高分子絶縁膜208を成膜した時の凹部202の底部(Bottom)及び中間部(Middle)、並びに凹部以外(Top)における高分子絶縁膜208の膜厚の時間変化と、基板Wを停止させた状態で電着液を攪拌することなく、通電層206の表面に高分子絶縁膜208を成膜した時の凹部202の底部(Bottom)及び中間部(Middle)、並びに凹部以外(Top)における高分子絶縁膜208の膜厚と時間変化を調べた結果を図10に示す。
【0055】
この図10から、例えば100sec以内では、電着液を攪拌しながら電着処理を行うと、時間の経過とともに、特に凹部202の底部に成膜される高分子絶縁膜208の膜厚が厚くなり、このため、電着液を攪拌することなく電着処理を行う方が、凹部202の底部に高分子絶縁膜208が成膜されるのを防止する上で好ましいことが判る。これは、凹部202の容積が減少するに伴って、凹部202の底部におけるOH濃度が増大するためであると考えられる。
【0056】
電着液を攪拌することなく電着処理を行うことで、拡散律速のため、凹部202の内部に比べ凹部202以外の表面及び凹部202の開口端部により膜厚の厚い高分子絶縁膜208を成膜することができる。電着液としてポリイミドの濃度が薄いものを使用することで、凹部202の内部に存在するポリイミド粒子の数を減らし、また電着処理の際して印加する電流密度を上げることで、Hガスの発生量を増やして、凹部202内にガスが溜まりやすくできる。このため、凹部202以外の表面及び凹部202の開口端部に高分子絶縁膜208を確実に成膜するためには、電着液としてポリイミドの濃度が薄いものを使用し、更に電着処理に際して印加する電流密度を上げることが好ましい。使用する電着液の濃度としては、6%以下が望ましい。この電流密度は、例えば0.03〜0.1mA/cm(定電流法)である。
【0057】
電着処理が終了した後、基板Wを電着液から引き上げて回転させ、遠心力で基板Wの下面及び基板保持部12−1の下面に付着した電着液を振り切る。しかる後、電着液を振り切った基板を、第2搬送ロボット49で電着液洗浄ユニット45に搬送する。この電着液洗浄ユニット45では、表面を上向きにして基板Wを保持し、基板の表面(上面)に純水または有機溶剤を含む純水を供給して、基板Wの表面に残った電着液を除去する。次に、例えば90℃の乾燥した空気を基板に向けて吹き付けて、基板を乾燥させる。
【0058】
一般に、電着液と電解めっき液は、pHや使用している添加剤の種類などが大いに異なる。電着処理後に基板の表面に残った電着液を洗浄して基板の表面から除去することで、めっき液中に電着液が混入してしまうことを防止して、めっき液の組成等が変化することを防止することができる。
【0059】
第2搬送ロボット49は、乾燥後の基板を受け取って電解めっきユニット47に搬送する。この電解めっきユニット47では、基板Wを基板ホルダ114で鉛直方向に保持して下降させ、めっき槽111内のめっき液Q中に浸漬させる。そして、基板Wの通電層(シード層)206とアノード115との間に所定の電圧を印加しつつ、めっき液噴射ノズル116のめっき液噴出口116cからめっき液を基板Wの表面に向けて噴出することで、図9(c)に示すように、凹部202内に位置する通電層(シード層)206の表面に、銅からなる金属材料210を成膜して、凹部202内のみへの銅の埋込みを行う。そして、めっき終了後、基板Wの通電層206とアノード115との間への電圧の印加を停止し、基板Wをめっき液中から引き上げ、高速回転させてめっき液の液切りを行う。
【0060】
このめっき時に、通電層206の凹部202を除く表面は、マスクとしての役割を果たす高分子絶縁膜208で被覆されており、このため、高分子絶縁膜208の表面に金属材料(めっき膜)210が成膜されることが抑制され、これによって、凹部202の内部にのみ金属材料210が成膜される。
【0061】
このように、めっき液をめっき液噴射ノズル116から基板Wに向けて噴射することで、凹部202の底部まで新鮮なめっき液を供給することができる。一定の位置でめっき液を供給し続けると、凹部202の内部に消耗しためっき液が滞留し、かえってめっき速度が低下する。そのため、めっき液噴射ノズル116を移動させて、凹部202の内部に存在するめっき液の置換を促進することにより、めっき速度を高速に維持することができる。
【0062】
成膜する金属材料によってめっき液を選択するが、電解めっきで比較的厚くめっき膜を成膜することになるので、めっき液は、できるだけ安価なものが好ましい。硫酸銅めっき液であれば広範囲で用いられておりコストも低い。このため、めっき液として、硫酸銅を含む硫酸銅めっき液を使用することが好ましい。
【0063】
第2搬送ロボット49は、電解めっきユニット47から基板Wを受け取り、ロードステージ44に搬送する。第1搬送ロボット48は、ロードステージ44から基板を受け取って洗浄・乾燥ユニット43に搬送する。そして、この洗浄・乾燥ユニット43で基板を洗浄しスピン乾燥させた後、この乾燥後の基板を第1搬送ロボット48でアンロード部42のカセットに搬入する。
【0064】
この成膜装置は、電着処理ユニット46と電解めっきユニット47を有することにより、一連の処理を同一の装置(成膜装置)で連続して行って、生産性を高く維持することができる。更に、成膜装置に洗浄・乾燥ユニット43をも有することで、処理後の基板を乾燥状態で取出すことができ、その後の基板の保管なども容易となる。
【0065】
図11は、本発明の他の実施の形態の全体構成を示す平面図である。この成膜装置は、全体が長方形をなす床上のスペースの一端側に第1の研磨ユニット80aと第2の研磨ユニット80bが左右に対向して配置され、他端側にそれぞれ半導体ウエハ等の基板Wを収納する基板カセット81a,81bを載置するロード・アンロード部82が配置され、このロード・アンロード部82に隣接して制御部92が設けられている。そして、研磨ユニット80a,80bとロード・アンロード部82を結ぶ線上に2台の搬送ロボット83a,83bが配置されている。
【0066】
更に、搬送ラインに沿った一方側には、電着処理ユニット46、電着液洗浄ユニット45、熱処理ユニット84及び電解めっきユニット47が配置され、他方側には、膜厚検査ユニット85、洗浄・乾燥ユニット43、保護膜形成用の無電解めっきユニット88、及びロールスポンジを備えた後洗浄ユニット89が配置されている。研磨ユニット80a,80bの搬送ライン側には、基板Wを研磨ユニット80a,80bとの間で授受する上下動自在なプッシャ90,90が設けられている。
【0067】
この成膜装置にあっては、前述と同様にして、図9(b)に示すように、電着処理ユニット46で通電層206の凹部202を除く表面に高分子絶縁膜208を成膜し、電着液洗浄ユニット45で基板上に残った電着液を洗浄除去して基板Wを乾燥させる。そして、この基板Wを熱処理ユニット84に搬送して、ここで高分子絶縁膜208の熱処理(アニール処理)を行う。このように、熱処理することで、高分子絶縁膜208を連続的な膜として通電層206との密着性を高め、その後に行われる電解めっきで成膜される金属材料にムラが生じないようにすることができる。
【0068】
この熱処理後の基板Wを電解めっきユニット47に搬送し、ここで前述と同様にして、図9(c)に示すように、基板Wの凹部202内において、通電層206の表面に金属材料(めっき膜)210を成膜し、しかる後、基板Wの表面を洗浄・乾燥ユニット43で洗浄し基板を乾燥させる。
次に、基板Wを膜厚検査ユニット85に搬送し、ここで金属材料210の膜厚を測定し、必要に応じて、反転機で基板Wを反転させる。しかる後、基板Wを搬送ロボット83a、83bにより研磨ユニット80aまたは80bのプッシャ90上に移送する。
【0069】
研磨ユニット80aまたは80bでは、基板Wの研磨面を研磨テーブルに押圧しつつ、砥液を供給して研磨を行う。そして、例えば、基板Wの仕上がりを検査するモニタで終点(エンドポイント)を検知した時に、研磨を終了し、この研磨終了した基板Wを再度プッシャ90上に戻し、一旦純水スプレーで洗浄する。次に、搬送ロボット83bにより、基板Wを後洗浄ユニット89に搬送して、例えばロールスポンジで洗浄する。これにより、図12(a)Cに示すように、絶縁膜200上の余分な金属材料210、高分子絶縁膜208、通電層206及びバリア層204を研磨除去して、絶縁膜200の内部に通電層(シード層)206と金属材料(銅)210からなる配線212を形成する。
【0070】
次に、この基板Wを無電解めっきユニット88に搬送し、ここで、必要に応じて、例えばPd触媒の付与や、露出表面の酸化膜の除去等の前処理を行った後、無電解めっき処理を施す。これによって、図12(b)に示すように、研磨後の露出した配線212の表面に、例えばCoWP合金膜からなる保護膜(めっき膜)214を選択的に形成して配線212を保護する。この保護膜214の膜厚は、0.5〜500nm、好ましくは1〜200nm、更に好ましくは10〜100nm程度である。そして、この保護膜214を形成した基板Wを、洗浄・乾燥ユニット43で洗浄し乾燥させた後、ロード・アンロード部82の基板カセット81aまたは81bに戻す。
上記の例では装置レイアウトの一例を示したが、本発明はこれに限られない。洗浄・乾燥ユニットの数を増やしてスループットを向上させるようにしてもよい。
【0071】
なお、上記の例では、金属材料として、銅を使用した例を示しているが、この銅の他に、銅合金、銀または銀合金を使用するようにしてもよい。また、保護膜214として、CoWP合金膜を使用した例を示しているが、CoWP合金の他に、Co単体やCoWB合金、CoP合金またはCoB等のCo合金を使用してもよく、更に、Ni単体や、NiWP合金、NiWB合金、NiP合金またはNiB合金等のNi合金を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】アスペスト比が高く深さが深いビアホール(凹部)の内部に金属材料を埋込んだ時の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の成膜装置の全体配置図である。
【図3】図2に示す成膜装置に備えられている電着処理ユニットを示す断面図である。
【図4】図3のB部拡大図である。
【図5】図2に示す成膜装置に備えられている電解めっきユニットの概要を示す断面図である。
【図6】図5に示す電解めっきユニットのめっき槽内における基板ホルダ、アノード及びめっき液噴射ノズルを示す平面図である。
【図7】(a)は、めっき液噴射ノズル116の平面図、(b)は、めっき液噴射ノズルの正面図、(c)は、(b)のB−B断面図である。
【図8】(a)は、他のめっき液噴射ノズル116の平面図、(b)は、他のめっき液噴射ノズルの正面図である。
【図9】図2に示す成膜装置を使用して銅配線を形成する例を工程順に示す図である。
【図10】電着液を攪拌しながら通電層の表面に高分子絶縁膜を成膜した時の凹部の底部(Bottom)及び中間部(Middle)、並びに凹部以外(Top)における高分子絶縁膜の膜厚の時間変化と、電着液を攪拌することなく通電層の表面に高分子絶縁膜を成膜した時の凹部の底部(Bottom)及び中間部(Middle)、並びに凹部以外(Top)における高分子絶縁膜の膜厚と時間変化を調べた結果を示すグラフである。
【図11】本発明の他の実施の形態の成膜装置の平面配置図である。
【図12】図11に示す成膜装置で使用して銅配線を形成する例の金属材料を埋込んだ後を工程順に示す図である。
【符号の説明】
【0073】
11 電着処理ユニット本体
12 基板ホルダ
17 基板押え部材
20 電着槽
21 多孔板
22 電着液導入室
23 捕集樋
24 電着液タンク
27 カソード接点
28 アノード
40 成膜装置
41 ロード部
42 アンロード部
43 洗浄・乾燥ユニット
44 ロードステージ
45 電着液洗浄ユニット
46 電着処理ユニット
47 電解めっきユニット
80a,80b 研磨ユニット
82 ロード・アンロード部
84 熱処理ユニット
85 膜厚検査ユニット
88 無電解めっきユニット
89 後洗浄ユニット
92 制御部
111 めっき槽
113 オーバフロー槽
114 基板ホルダ
115 アノード
116 めっき液噴射ノズル
116c,116d めっき液噴出口
118 ラック
119 ピニオン
121 流量マニホールド
122 分岐管
123 フレキシブル管
124 流量・圧力計
127 めっき電源
200 絶縁膜
202 凹部(ビアホール)
204 バリア層
206 通電層(シード層)
208 高分子絶縁膜
210 金属材料
212 配線
214 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有し該凹部の内部を含む表面に通電層を形成した基板を用意し、
前記凹部の内部を除く前記通電層の表面に電着法で高分子絶縁膜を形成し、
前記高分子絶縁膜を形成した基板の表面に電解めっきを行って前記凹部内に金属材料を埋込むことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記通電層を、電解めっき法、無電解めっき法、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、ALD法、及び常圧で有機金属を気化して基板に金属膜を成膜する有機金属法のいずれかで形成したことを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
前記高分子絶縁膜の形成を、カチオン系高分子材料の電着により行うことを特徴とする請求項1または2記載の成膜方法。
【請求項4】
前記カチオン系高分子材料は、ポリイミド系カチオン高分子であることを特徴とする請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記高分子絶縁膜を形成した基板の表面を洗浄することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項6】
前記高分子絶縁膜を熱処理することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項7】
前記電解めっきにより前記凹部内に埋込む金属材料は、銅、銅合金、銀、または銀合金であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項8】
前記凹部の幅または直径は、1μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項9】
前記凹部のアスペクト比は、1.0以上であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項10】
凹部の内部を含む基板の表面に形成した通電層の前記凹部の内部を除く表面に高分子絶縁膜を電着させる電着処理ユニットと、
電着処理後の基板の表面に電解めっきを施して前記凹部内に金属材料を埋込む電解めっきユニットと、
電解めっき後の基板を洗浄し乾燥させる洗浄・乾燥ユニットを有することを特徴とする成膜装置。
【請求項11】
前記電着処理ユニットは、
内部に電着液を保持する電着槽と、
前記電着槽内に配置され、表面を下向きにして基板を水平に保持する上下動自在な基板ホルダと、
前記基板ホルダに設けられ該基板ホルダで保持した基板の前記通電層に接触して該通電層をカソードとするカソード接点と、
前記電着槽内の電着液中に浸漬させて水平に配置されるアノードを有することを特徴とする請求項10記載の成膜装置。
【請求項12】
前記電解めっきユニットは、
めっき液を保持するめっき槽と、
前記めっき槽内の内部に配置された基板の表面に向けてめっき液を噴射するめっき液噴出口を有するめっき液噴射ノズルを有することを特徴とする請求項10または11記載の成膜装置。
【請求項13】
前記めっき液は、硫酸銅を含む硫酸銅めっき液であることを特徴とする請求項12記載の成膜装置。
【請求項14】
前記電着処理後に基板の表面に残った電着液を洗浄除去する電着液洗浄ユニットを更に有することを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項15】
前記通電層の表面に電着した高分子絶縁膜を熱処理する熱処理ユニットを更に有することを特徴とする請求項10乃至14のいずれかに記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−149824(P2007−149824A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340085(P2005−340085)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】