説明

成膜装置及び成膜方法

【課題】基板に形成される凹部をボイドの形成を低減しつつ、高スループットで埋め込むことが可能な成膜装置を提供する。
【解決手段】基板が載置される基板載置部を含み真空容器内に回転可能に設けられる回転テーブルと、回転テーブルにおける基板載置部が形成される面に対して第1の反応ガスを供給する第1の反応ガス供給部と、第1の反応ガス供給部から回転テーブルの周方向に離間して設けられ回転テーブルにおける基板載置部が形成される面に対して、第1の反応ガスと反応する第2の反応ガスを供給する第2の反応ガス供給部と、第1及び第2の反応ガス供給部から回転テーブルの周方向に離間して設けられ、回転テーブルにおける基板載置部が形成される面に対して、第1の反応ガスと第2の反応ガスとの反応性生成物を改質する改質ガス及びエッチングするエッチングガスを活性化して供給する活性化ガス供給部とを含む成膜装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対して複数の反応ガスを交互に供給し、基板表面で反応ガスを互いに反応させ、反応生成物から構成される膜を基板に成膜する成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの回路パターンの更なる微細化に伴い、半導体デバイスを構成する種々の膜についても、更なる薄膜化および均一化が要求されている。このような要求に応える成膜方法として、第1の反応ガスを基板に供給して基板の表面に第1の反応ガスを吸着させ、次に第2の反応ガスを基板に供給して基板の表面に吸着された第1の反応ガスと第2の反応ガスとを反応させることにより、反応生成物から構成される膜を基板に堆積する、いわゆる分子層成膜法(原子層成膜法とも言う)が知られている(例えば特許文献1)。このような成膜方法によれば、反応ガスが(準)自己飽和的に基板表面に吸着し得るため、高い膜厚制御性、優れた均一性、及び優れた埋め込み特性を実現することできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−56470号公報
【特許文献2】特開2003−142484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、回路パターンの微細化に伴って、例えばトレンチ素子分離構造におけるトレンチや、ライン・スペース・パターンにおけるスペースのアスペクト比が大きくなるにつれて、分子層成膜法においても、トレンチやスペースを埋め込むことが困難な場合がある。たとえば、例えば30nm程度の幅を有するスペースを酸化シリコン膜で埋め込もうとすると、狭いスペースの底部に反応ガスが進入しにくいため、スペースを画成するライン側壁の上端部近傍での膜厚が厚くなり、底部側で膜厚が薄くなる傾向がある。そのため、スペースに埋め込まれた酸化シリコン膜にはボイドが生じる場合がある。そのような酸化シリコン膜が、例えば後続のエッチング工程においてエッチングされると、酸化シリコン膜の上面に、ボイドと連通する開口が形成されることがある。そうすると、そのような開口からボイドにエッチングガス(又はエッチング液)が進入して汚染が生じたり、または、後のメタライゼーションの際にボイド中に金属が入り込み、欠陥が生じたりする可能性がある。
【0005】
このような問題は、ALDに限らず、化学的気相堆積(CVD)法においても生じ得る。例えば、半導体基板に形成される接続孔を導電性物質の膜で埋め込んで、導電性の接続孔(いわゆるプラグ)を形成する際に、プラグ中にボイドが形成されてしまう場合がある。これを抑制するため、接続孔を導電性物質で埋め込む際に、接続孔の上部に形成される導電性物質のオーバーハング形状部をエッチバックにより除去する工程を繰り返して行うことにより、ボイドが抑制された導電性接続孔(いわゆるプラグ)を形成する方法が提案されている(特許文献2)。
【0006】
しかし、特許文献2に開示される発明においては、導電性物質の膜の成膜とエッチバックとを異なる装置で行わなければならず、装置間でのウエハの搬送や、各装置内での処理条件の安定化に時間がかかるため、スループットを向上できないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて為され、基板に形成される凹部をボイドの形成を低減しつつ、高スループットで埋め込むことが可能な成膜方法及び成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、凹部を含むパターンが形成された基板を真空容器内に搬入するステップと、第1の反応ガス供給部から前記基板に対して第1の反応ガスを供給し、前記第1の反応ガスを前記基板に吸着させる吸着ステップと、第2の反応ガス供給部から前記基板に対して、前記第1の反応ガスと反応する第2の反応ガスを供給し、前記基板に吸着される前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスを反応させて、前記基板に反応生成物を形成する形成ステップと、前記真空容器内に設けられガスを活性化可能な活性化ガス供給部により改質ガスを活性化して前記基板に供給し、前記反応生成物を改質する改質ステップと、前記反応生成物が形成されない雰囲気下で、前記活性化ガス供給部によりエッチングガスを活性化して前記基板に供給し、前記反応生成物をエッチングするエッチングステップと、を含む成膜方法が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、凹部を含むパターンが形成された基板を真空容器内に搬入するステップと、第1の反応ガス供給部から前記基板に対して第1の反応ガスを供給し、前記第1の反応ガスを前記基板に吸着させる吸着ステップと、第2の反応ガス供給部から前記基板に対して、前記第1の反応ガスと反応する第2の反応ガスを供給し、前記基板に吸着される前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスを反応させて、前記基板に反応生成物を形成する形成ステップと、前記真空容器内に設けられガスを活性化可能な活性化ガス供給部により改質ガスと、前記反応生成物をエッチングするエッチングガスとを活性化して前記基板に供給し、前記反応生成物の改質及びエッチングを行なう改質−エッチングステップと、を含む成膜方法が提供される。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、基板が載置される基板載置部を含み、真空容器内に回転可能に設けられる回転テーブルと、前記基板載置部に載置される前記基板に対して第1の反応ガスを供給し、該第1の反応ガスを前記基板に吸着させる第1の反応ガス供給部と、前記第1の反応ガス供給部から前記回転テーブルの周方向に離間して設けられ、前記基板に対して第2の反応ガスを供給し、前記基板に吸着する前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスとを反応させて反応生成物を前記基板に形成する第2の反応ガス供給部と、前記第1及び前記第2の反応ガス供給部から前記回転テーブルの周方向に離間して設けられ、前記反応生成物を改質する改質ガスと前記反応生成物をエッチングするエッチングガスとを活性化して前記基板に供給する活性化ガス供給部とを含む成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、基板に形成される凹部をボイドの形成を低減しつつ、高スループットで埋め込むことが可能な成膜方法及び成膜装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による成膜装置を示す概略断面図である。
【図2】図1の成膜装置を示す概略斜視図である。
【図3】図1の成膜装置を示す概略平面図である。
【図4】図1の成膜装置における分離領域を説明するための一部断面図である。
【図5】図1の成膜装置を示す他の概略断面図である。
【図6】図1の成膜装置に設けられる活性化ガス供給部の一例を示す概略斜視図である。
【図7】図6の活性化ガス供給部を示す斜視図である。
【図8A】本発明の実施形態による成膜方法を説明する図である。
【図8B】図8Aに引き続いて、本発明の実施形態による成膜方法を説明する図である。
【図8C】図8Bに引き続いて、本発明の実施形態による成膜方法を説明する図である。
【図8D】図8Cに引き続いて、本発明の実施形態による成膜方法を説明する図である。
【図9】本発明の他の実施形態による成膜方法を説明する図である。
【図10】本発明のまた別の実施形態による成膜方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきものである。
【0014】
図1から図3までを参照すると、本発明の実施形態による成膜装置は、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に対して、例えばOリングなどのシール部材13(図1)を介して気密に着脱可能に配置される天板11とを有している。
【0015】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底部14を貫通し、その下端が回転軸22(図1)を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0016】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数(図示の例では5枚)の基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを示す。この凹部24は、ウエハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きい内径と、ウエハWの厚さにほぼ等しい深さとを有している。したがって、ウエハWを凹部24に載置すると、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが同じ高さになる。凹部24の底面には、ウエハWの裏面を支えてウエハWを昇降させるための例えば3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(いずれも図示せず)が形成されている。
【0017】
図2及び図3に示すように、回転テーブル2の上方には、各々例えば石英からなる反応ガスノズル31、反応ガスノズル32、分離ガスノズル41,42、及び活性化ガスインジェクタ220が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて配置されている。図示の例では、後述の搬送口15から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に活性化ガスインジェクタ220、分離ガスノズル41、反応ガスノズル31、分離ガスノズル42、及び反応ガスノズル32がこの順番で配列されており、これらの活性化ガスインジェクタ220及びノズル31、32、41、42は、各ノズル31、32、41、42の基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a、42aを容器本体12の外周壁に固定することにより、真空容器1の外周壁から真空容器1内に導入され、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル12に対して水平に伸びるように取り付けられている。活性化ガスインジェクタ220については後に説明する。
【0018】
反応ガスノズル31は、不図示の配管及び流量調整器などを介して、第1の反応ガスとしてのSi(シリコン)含有ガスの供給源(図示せず)に接続されている。反応ガスノズル32は、不図示の配管及び流量調整器などを介して、第2の反応ガスとしての酸化ガスの供給源(図示せず)に接続されている。分離ガスノズル41、42は、いずれも不図示の配管及び流量調整バルブなどを介して、分離ガスとしての窒素(N)ガスの供給源(図示せず)に接続されている。
【0019】
Si含有ガスとしては、例えば有機アミノシランガスを用いることができ、酸化ガスとしては、例えばO(オゾン)ガス若しくはO(酸素)ガス又はこれらの混合ガスを用いることができる。
【0020】
反応ガスノズル31、32には、回転テーブル2に向かって開口する複数のガス吐出孔33が、反応ガスノズル31、32の長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で配列されている。反応ガスノズル31の下方領域は、Si含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1となる。反応ガスノズル32の下方領域は、第1の処理領域P1においてウエハWに吸着されたSi含有ガスを酸化させる第2の処理領域P2となる。
図2及び図3を参照すると、分離ガスノズル41、42とともに分離領域Dを構成する、天板11の裏面から回転テーブル2に向かって突出する凸状部4が真空容器1に設けられている。凸状部4は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有し、本実施形態においては、内円弧が突出部5(後述)に連結し、外円弧が、真空容器1の容器本体12の内周面に沿うように配置されている。
【0021】
反応ガスノズル31から反応ガスノズル32まで回転テーブル2の同心円に沿った真空容器1の断面を示す図4を参照すると、真空容器1内には、凸状部4によって、凸状部4の下面である平坦な低い天井面44(第1の天井面)と、この天井面44の周方向両側に位置する、天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)とが存在する。天井面44は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有している。また、図示のとおり、凸状部4には周方向中央において、半径方向に伸びるように形成された溝部43が形成され、分離ガスノズル42が溝部43内に収容されている。もう一つの凸状部4にも同様に溝部43が形成され、ここに分離ガスノズル41が収容されている。また、高い天井面45の下方の空間に反応ガスノズル31、32がそれぞれ設けられている。これらのノズル31、32は、天井面45から離間してウエハWの近傍に設けられている。なお、説明の便宜上、図4に示すように、反応ガスノズル31が設けられる、高い天井面45の下方の空間を空間481とし、反応ガスノズル32が設けられる、高い天井面45の下方の空間を空間482とする。
【0022】
天井面44は、回転テーブル2に対し、狭隘な空間である分離空間Hを形成している。分離空間Hは、第1の領域P1からのSi含有ガスと、第2の領域P2からの酸化ガスとを分離することができる。具体的には、分離ガスノズル42からNガスを吐出すると、Nガスは、分離空間Hを通して空間481及び空間482へ向かって流れる。このとき、空間481及び482に比べて容積の小さい分離空間HをNガスが流れるため、分離空間Hの圧力は空間481及び482の圧力に比べて高くすることができる。すなわち、空間481と482の間に圧力障壁が形成される。また、分離空間Hから空間481及び482へ流れ出るNガスが、第1の領域P1からのSi含有ガスと、第2の領域P2からの酸化ガスとに対するカウンターフローとして働く。したがって、Si含有ガスも酸化ガスも分離空間Hへ流入することは殆どできない。よって、真空容器1内においてSi含有ガスと酸化ガスとが混合し、反応することが抑制される。
【0023】
一方、天板11の下面には、図2及び図3に示すように、回転テーブル2を固定するコア部21の外周を囲む突出部5が設けられている。この突出部5は、本実施形態においては、凸状部4における回転中心側の部位と連続しており、その下面が天井面44と同じ高さに形成されている。
【0024】
なお、図2及び図3においては、説明の便宜上、天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて容器本体12が切断されているように、容器本体12及びその内部を示している。
【0025】
先に参照した図1は、図3のI−I'線に沿った断面図であり、天井面45が設けられている領域を示している一方、図5は、天井面44が設けられている領域を示す断面図である。図5に示すように、扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)には、回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲する屈曲部46が形成されている。この屈曲部46は、凸状部4と同様に、分離領域Dの両側から反応ガスが侵入することを抑制して、両反応ガスの混合を抑制する。扇型の凸状部4は天板11に設けられ、天板11が容器本体12から取り外せるようになっていることから、屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えば回転テーブル2の表面に対する天井面44の高さと同様の寸法に設定されている。
【0026】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図4に示すように屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底部14に亘って外方側に窪んでいる。以下、説明の便宜上、矩形の断面形状を有する、この窪んだ部分を排気領域と記す。具体的には、第1の処理領域P1に連通する排気領域を第1の排気領域E1と記し、第2の処理領域P2に連通する領域を第2の排気領域E2と記す。これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、図1から図3に示すように、それぞれ、第1の排気口610及び第2の排気口620が形成されている。第1の排気口610及び第2の排気口620は、図1に示すように各々排気管630を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ640に接続されている。なお図1中、参照符号650は圧力調整手段である。
【0027】
回転テーブル2と真空容器1の底部14との間の空間には、図1及び図4に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWが、プロセスレシピで決められた温度(例えば450℃)に加熱される。回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域E1、E2に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画して回転テーブル2の下方領域へのガスの侵入を抑えるために、リング状のカバー部材71が設けられている(図5)。このカバー部材71は、回転テーブル2の外縁部及び外縁部よりも外周側を下方側から臨むように設けられた内側部材71aと、この内側部材71aと真空容器1の内壁面との間に設けられた外側部材71bと、を備えている。外側部材71bは、分離領域Dにおいて凸状部4の外縁部に形成された屈曲部46の下方にて、屈曲部46と近接して設けられ、内側部材71aは、回転テーブル2の外縁部下方(及び外縁部よりも僅かに外側の部分の下方)において、ヒータユニット7を全周に亘って取り囲んでいる。
【0028】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近におけるコア部21に接近するように上方側に突出して突出部12aをなしている。この突出部12aとコア部21との間は狭い空間になっており、また底部14を貫通する回転軸22の貫通穴の内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間はケース体20に連通している。そしてケース体20にはパージガスであるNガスを狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底部14には、ヒータユニット7の下方において周方向に所定の角度間隔で、ヒータユニット7の配置空間をパージするための複数のパージガス供給管73が設けられている(図5には一つのパージガス供給管73を示す)。また、ヒータユニット7と回転テーブル2との間には、ヒータユニット7が設けられた領域へのガスの侵入を抑えるために、外側部材71bの内周壁(内側部材71aの上面)から突出部12aの上端部との間を周方向に亘って覆う蓋部材7aが設けられている。蓋部材7aは例えば石英で作製することができる。
【0029】
また、真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるNガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出される。空間50は分離ガスにより空間481及び空間482よりも高い圧力に維持され得る。したがって、空間50により、第1の処理領域P1に供給されるSi含有ガスと第2の処理領域P2に供給される酸化ガスとが、中心領域Cを通って混合することが抑制される。すなわち、空間50(又は中心領域C)は分離空間H(又は分離領域D)と同様に機能することができる。
【0030】
さらに、真空容器1の側壁には、図2、図3に示すように、外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。この搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉される。また回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0031】
次に、図3、図6、及び図7を参照しながら、活性化ガスインジェクタ220について説明する。活性化ガスインジェクタ220は、ウエハW上に成膜された膜に対して活性化された改質ガス及びエッチングガスを供給し、その膜を改質するとともにエッチングすることができる。図6及び図7に示すように、活性化ガスインジェクタ220には、改質ガス及びエッチングガスを真空容器1内に供給する改質ガス供給部として機能するガス導入ノズル34が設けられている。ガス導入ノズル34は、ガス導入ノズル34の長さ方向に沿って所定の間隔で形成された複数のガス孔341を有している。ガス導入ノズル34は例えば石英ガラスで作製することができる。また、ガス導入ノズル34よりも回転テーブル2の回転方向下流側には、ガス導入ノズル34から導入される改質ガス及びエッチングガスをプラズマ化するために、互いに平行な1対の棒状のシース管35a、35bからなるプラズマ発生部80が配置されている。シース管35a、35bは、互いに平行となるように設けられており、互いに等しい長さを有している。
ガス導入ノズル34及びプラズマ発生部80は、回転テーブル2のほぼ中心に向かう方向、かつ回転テーブル2の接線方向に直交する方向に、回転テーブル2の上面と平行に延びている。また、ガス導入ノズル34及びプラズマ発生部80は、容器本体12の外周面に取り付けられた導入管80aにより、真空容器1内の気密が維持されるように支持されている。
【0032】
図3に示すように、ガス導入ノズル34には、ガス導入管271の一端が接続され、ガス導入管271の他端には、改質ガス導入管251とエッチングガス導入管261が接続されている。改質ガス導入管251には、開閉バルブ252及び流量調整器253を介して、改質ガスが貯留された改質ガス供給源254が接続されている。改質ガスとしては、例えば酸素(O)ガスを使用することができ、Oガスに代えて又はOガスとともに、例えばアルゴン(Ar)ガスまたはヘリウム(He)ガスなどの希ガスを用いても良い。また、エッチングガス導入管261には、開閉バルブ262及び流量調整器263を介して、エッチングガスが貯留されたエッチングガス供給源264が接続されている。エッチングガスとしては、エッチング対象膜をエッチング可能なガスを用いることができ、本実施形態においては、酸化シリコン膜をエッチングする例えばトリフルオロメタン(CHF)などのハイドロフルオロカーボン、四フッ化メタン(CF)などのフルオロカーボン等のフッ素系ガスを用いることができる。
【0033】
一方、プラズマ発生部80は、図7に示すように、互いに平行に延びるシース管35a、35bと、シース管35a内に挿入されている電極36aと、シース管35b内に挿入されている電極36bとを有している。シース管35a、35bは、例えば石英、アルミナ(酸化アルミニウム)、又はイットリア(酸化イットリウム、Y)等の絶縁体により作製されている。電極36a、36bは、平行電極として機能し、例えばニッケル合金やチタンなどから作製されている。図3に示すように、電極36a、36bには、整合器225を介して高周波電源224が接続されている。例えば13.56MHz、例えば500Wの高周波電力が高周波電源224から電極36a、36bに供給される。なお、シース管35a、35bは、図7に示すように、基端側(真空容器1の内壁側)において保護管37に挿入されている。保護管37は図5などでは省略されている。また、図6以外では、シース管35a、35bを簡略化している。
【0034】
図6及び図7に示すように、容器本体12の内部において、活性化ガスインジェクタ220には、ガス導入ノズル34及びシース管35a、35bを覆うカバー体221が設けられている。カバー体221は例えば石英などの絶縁体により作製されている。また、カバー体221における回転テーブル2のほぼ半径方向に延びる下端縁には気流規制板222が取り付けられている。気流規制板222は、カバー体221と同様に例えば石英ガラスなどの絶縁体により作製されている。また、カバー体221は、気流規制板22の下面と回転テーブル2の上面との間隔t(図7)が、この間隔tを通してカバー体221の内部へガスが流入するのを抑制できる程度に小さくなるように、例えば天板11の下面から吊り下げられている。さらに、気流規制板222の幅u(図7)は、回転テーブル2の外周に向かう方向に沿って広がっている。回転テーブル2の外周側においては、ガスの回転方向に沿った流速が速くなるが、気流規制板22の幅uが外周に向かうほど広くなっているため、カバー体221の内部へのガスの流入を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態による成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられており、この制御部100のメモリ内には、制御部100の制御の下に、後述する成膜方法を成膜装置に実施させるプログラムが格納されている。このプログラムは後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶部101から制御部100内にインストールされる。
【0036】
次に、本発明の実施形態による成膜方法について本実施形態による成膜装置を用いて行う場合を例にとり説明する。以下では、反応ガスノズル32から供給される酸化ガスとしてOガスを用い、活性化ガスインジェクタ220から供給される改質ガスとしてOガスとArガスとの混合ガス(以下、O/Arガスと記す)、エッチングガスとしてCHFガスを用いることとする。また、使用するウエハWには図8A(a)に示すようなライン・スペース・パターンが形成されているものとし、スペースSを酸化シリコンで埋め込む場合を説明する。スペースSは、凹状に湾曲した側壁を有し、上端及び底部に比べて、これらの間における幅が広くなっている。
【0037】
(ウエハの搬入ステップ)
先ず、図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウエハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器1の底部側から不図示の昇降ピンが昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウエハWを載置する。
【0038】
(保護層成膜ステップ)
続いてゲートバルブを閉じ、真空ポンプ640により真空容器1内を引き切りの状態にした後、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるNガスを所定の流量で吐出し、分離カス供給管51及びパージガス供給管72、72からもNガスを所定の流量で吐出する。これに伴い、圧力調整手段650により真空容器1内を予め設定した処理圧力に調整する。次いで、回転テーブル2を時計回りに例えば20rpmの回転速度で回転させながらヒータユニット7によりウエハWを例えば450℃に加熱する。
【0039】
この後、反応ガスノズル31、32から夫々Si含有ガス及びOガスを吐出する。また、ガス導入ノズル34からO/Arガスのみを吐出し、夫々のシース管35a、35b間に13.56MHzの周波数を有する高周波を400Wの電力で供給する。これにより、活性化ガスインジェクタ220のカバー体221の内部空間(プラズマ発生部80近傍)において酸素プラズマが生成される。
【0040】
回転テーブル2の回転により、ウエハWは、第1の処理領域P1、分離領域D、第2の処理領域P2、改質領域150(活性化ガスインジェクタ220の下方領域、図3及び図6参照)、分離領域Dを通過する。第1の処理領域P1において、図8A(b)に示すように、ウエハWの表面並びにスペースS内の側壁及び底部にSi含有ガスが吸着し、Si含有ガス分子層61が形成され、第2の処理領域P2において、図8A(c)に示すように、ウエハW上に吸着したSi含有ガスがOガスにより酸化されて1又は複数分子層の酸化シリコン膜62が堆積される。
【0041】
酸化シリコン膜62中には、例えばSi含有ガス中に含まれる残留基のため、水分(OH基)や有機物などの不純物が含まれている場合がある。しかしながら、ウエハWが改質領域150に到達すると、酸素プラズマにより酸化シリコン膜62が改質される。具体的には、酸化シリコン膜62が酸素プラズマに曝されることにより、例えば酸化シリコン膜中に残る有機不純物が酸化されて気相中に放出されたり、プラズマ中の高エネルギー粒子の衝撃により酸化シリコン膜内の元素が再配列されて酸化シリコン膜の緻密化(高密度化)が図られたりすることになる。このようにウエハW(回転テーブル2)が1回転する間に、1又は複数分子層の酸化シリコン膜62が堆積され改質されて、高品位な酸化シリコン膜63(図8A(d))がウエハWに形成される。その後、ウエハWの回転を所定の回数繰り返すと、酸化シリコン膜63は、所定の膜厚(例えば5nmから100nm)を有するに至る。ここまでのステップで得られる酸化シリコン膜は、ウエハWの表面及びスペースSの内壁が、後に供給されるエッチングガスにより腐食されるのを防ぐ保護層として機能する。
【0042】
(第1のステップ)
次に、活性化ガスインジェクタ220のガス導入ノズル34からO/Arガスに加えてCHFガスを供給し、ウエハWの回転を更に継続することにより、図8A(a)から(d)を参照しながら説明したSi含有ガスの吸着、OガスによるSi含有ガスの酸化、及び酸化シリコン膜の改質を繰り返す。この場合には、堆積された酸化シリコン膜62が改質されるとともに、電極36a、36b間に供給される高周波によりCHFガスが活性化されるため、酸化シリコン膜62、63がエッチングされる。すなわち、第1のステップにおいては、酸化シリコンの堆積とエッチングとが、堆積速度>エッチング速度となるように同時に行われる。また、このとき、CHFガスの供給量、真空容器1内の圧力、高周波電力などの成膜条件は、酸化シリコン膜のエッチング速度が、スペースSの開口付近で大きく、スペースSの底部側で小さくなるように(換言すると、酸化シリコン膜の堆積速度が、スペースSの開口付近で遅く底部側で速くなるように)設定される。このような条件は、予備実験等から予め決定することができる。そのような条件によれば、スペースSの開口が酸化シリコンで塞がれることなく、酸化シリコンの堆積が継続される。
【0043】
(第2のステップ)
所定の回数ウエハWが回転すると、スペースSの側壁及び底部に堆積される酸化シリコン膜64の断面は、概ね、図8B(e)に示すようになる。すなわち、スペースSの底部側での膜厚は、スペースSの開口付近及びウエハWの表面における膜厚よりも厚くなり、スペースSの側壁において、僅かに凹状に湾曲している(凹状の湾曲の程度は、元のスペースSの側壁における凹状の湾曲の程度よりも軽減されている)。
【0044】
次に、回転テーブル2の回転、ウエハWの加熱、反応ガスノズル32からのOガスの供給、活性化ガスインジェクタ220のガス導入ノズル34からのO/Arガス及びCHFガスの供給、及び活性化ガスインジェクタ220の電極36a、36bへの高周波の供給などを第1のステップのときと同じ条件で継続しつつ、反応ガスノズル31からのSi含有ガスの供給のみを停止する。このため、酸化シリコンの堆積が停止されるが、酸化シリコン膜64のエッチングは継続される。酸化シリコン膜64のエッチング速度は、スペースSの開口付近で速く底部側で遅いため、所定の時間が経過した後、酸化シリコン膜64は、図8(f)に示すように、スペースSは、開口が広く底部に向かって幅が狭くなるテーパ状の断面形状を有することとなる。なお、このエッチングの時間は、ウエハWの上面及びスペースSの開口付近でウエハWが露出しない程度に、例えば予備実験等から決定することができる。
【0045】
(第3のステップ)
次に、反応ガスノズル31からのSi含有ガスの供給を再開する。これにより、第1のステップと同様に酸化シリコンの堆積とエッチングとが同時に行われることとなる。すなわち、ウエハWが第1の処理領域P1を通過する際に、図8C(g)に示すように、テーパ状の断面形状を有するスペースSの内面にSi含有ガスが吸着してSi含有ガス分子層61が形成され、処理領域P2を通過する際に、Si含有ガス分子層61がOガスにより酸化されて酸化シリコン膜62が形成され、処理領域150を通過する際に、酸化シリコン膜62が改質されるとともにエッチングされて、改質された酸化シリコン膜63が得られる。これを継続していくと、スペースSの両方の側壁に形成される酸化シリコン膜63が互いに近づくことにより、スペースSが埋め込まれるよりもむしろ、テーパ角度が小さくなるように、換言すると、スペースSの底部から酸化シリコン膜63が厚くなるようにしてスペースSが埋め込まれていく。そして、所定の時間が経過すると、図8Dに示すように、ボイドが形成されることなく、スペースSが酸化シリコン膜66で埋め込まれるに至る。
【0046】
以降、反応ガスノズル31からのSi含有ガスの供給、反応ガスノズル32からのOガスの供給、活性化ガスインジェクタ220のガス導入ノズル34からのO/Arガス及びCHFガスの供給、並びに活性化ガスインジェクタ220の電極36a、36bへの高周波の供給を停止し、真空容器1内をNガスによりパージした後、ウエハ搬入ステップにおける手順と逆の手順によりウエハWが真空容器1から搬出される。以上により、本実施形態による酸化シリコン膜の成膜方法が終了する。
【0047】
以上説明したとおり、本実施形態においては、反応ガスノズル31、反応ガスノズル32、及び活性化ガスインジェクタ220が一つの真空容器1内に設けられた成膜装置において、反応ガスノズル31からSi含有ガスが供給される第1の処理領域P1と、反応ガスノズル32からOガスが供給される第2の処理領域P2と、酸素プラズマ及び活性化されたCHFガスが供給される処理領域150とを、回転テーブル2の回転によりウエハWが通過する。このため、第1の処理領域P1においてウエハWに吸着するSi含有ガスが、第2の処理領域P2においてOガスにより酸化され、ウエハW上に酸化シリコン膜62が形成される。この酸化シリコン膜62は、処理領域150において酸素プラズマにより改質されるとともに、活性化されたCHFガスによりエッチングされる(第1のステップ)。このとき、酸化シリコン膜63の堆積速度は、見かけ上、スペースSの開口付近で遅く底部で速いため、スペースSの開口が塞がり難い。したがって、スペースS内が埋め込まれる前に、スペースSの開口が塞がってしまうと、スペースS内にはボイドが形成されることとなるが、本実施形態によれば、ボイドの形成を軽減することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態においては、第2のステップとして、Si含有ガスの供給を停止してエッチングが行われ、スペースSの断面を、底部から開口に向かう方向に沿って幅が広がるテーパ状にすることができる(図8B(f)参照)。この後、第1のステップと同様の第3のステップを行うと、スペースSは、スペースSの底部に堆積される酸化シリコン膜の膜厚が厚くなるように埋め込まれる。
【0049】
なお、ALDによりスペースを酸化シリコンで埋め込もうとすると、スペースの両方の側壁に成膜される酸化シリコン膜の表面が互いに近づいていき、互いに接触してスペースが埋め込まれる傾向がある。このような場合、特に、両側から酸化シリコン膜の表面が接する直前においては両者間の隙間が極めて狭いため、副生成物が外部へ排気され難くなる。そのため、副生成物が酸化シリコン中に取り込まれてしまう可能性がある。この場合、互いの表面が接触した界面(シーム)においては不純物濃度が高くなったり、シームにおいて酸素原子とシリコン原子との間の結合手が形成されずに多数の欠陥が生成されたりするおそれがある。すなわち、このようなシーム近傍においては、酸化シリコンの膜質が悪化している可能性がある。この場合、例えば後のエッチング工程において、シームに沿ってエッチングが速く進行して溝が形成される可能性がある。
【0050】
しかし、本実施形態による成膜方法によれば、スペースSの両側壁に堆積される酸化シリコン膜の表面が互いに近づきあってシームを形成するのが抑制されるため、シーム面及びその近傍における酸化シリコンの性質の悪化を抑制することができる。
【0051】
また、反応ガスノズル31、反応ガスノズル32、及び活性化ガスインジェクタ220が一つの真空容器1内に設けられた本発明の実施形態による成膜装置において本発明の実施形態による成膜方法を実施することにより、酸化シリコン膜の堆積、改質、及びエッチングを一つの真空容器1内で行うことができる。したがって、堆積とエッチングを異なる装置で行う場合に比べ、ウエハWの搬送時間の必要が無いため、スループットを向上できるという利点がある。また、反応ガスノズル31からSi含有ガスがウエハWの表面に吸着し、吸着されたSi含有ガスが酸化ガスにより酸化されて酸化シリコンの分子層が形成された直後に改質を行うことができるため、活性化された改質ガスは、分子層レベルの膜厚を有する酸化シリコン膜に対して作用することとなり、改質効率が向上される。
【0052】
なお、図8A(a)から図8Dまでを参照しながら、図8A(a)に示すような側壁が凹状に湾曲したスペースSを埋め込む場合について説明したが、本実施形態による成膜方法は、そのようなスペースSにのみ適用されるものではない。例えば、図9に示すように側壁が平坦な矩形の断面形状を有するスペースSについても、ボイドの形成を抑制しつつ埋め込むことができる。すなわち、まず、上述のウエハ搬入ステップから第1のステップまでを行って所定の膜厚を有する(改質されて高品位な)酸化シリコン膜64(図9(a)参照)が堆積される。次に、第2のステップを行うと、図9(b)に示すように、底部から開口に向かう方向に沿って幅が広がるテーパ状のスペースが形成される。そして、第3のステップを行うと、ボイドが形成されることなく、ウエハWのスペースが酸化シリコン膜66により埋め込まれ得る。
【0053】
さらに、図10に示す、底部から開口に向かう方向に沿って幅が狭くなる逆テーパ状のスペースを埋め込むことも可能である。すなわち、まず、上述のウエハ搬入ステップから第1のステップまでを行って所定の膜厚を有する(改質されて高品位な)酸化シリコン膜64(図10(a)参照)が堆積される。図示のとおり、活性化ガスインジェクタ220によってエッチングも行われるため、スペースSの逆テーパ状の断面形状は緩和されている。次に、第2のステップを行った後に、図10(b)に示すように、スペースSの断面形状がほぼ矩形となったとする。このような矩形の断面形状は、図9(a)示すウエハWに形成されるスペーサSの断面形状とほぼ同様である。したがって、図9(a)から図(c)までを参照しながら説明した成膜方法を行うことにより、図10(c)に示すように逆テーパ状の断面を有するスペースSもまた埋め込むことができる。すなわち、この場合には、上述のウエハ搬入ステップから第1のステップを行った後、第2のステップ、第3のステップ(第1のステップと実質的に同一)、第2のステップ、及び第3のステップが行われることとなる。換言すると、本実施形態による成膜方法において、第2のステップの回数は1回に限られることなく、第1のステップ(又は第3のステップ)と交互に複数回行っても良い。
【0054】
ここで各ステップにおける成膜条件を例示すると、以下のとおりである。ただし、以下の成膜条件は本発明を限定するものではない。成膜条件は、使用する成膜装置の形状やサイズ、成膜する膜の材質、使用する反応ガス、改質ガス、及びエッチングガスに応じて適宜決定されるべきものである。
(1)保護層成膜ステップ
・回転テーブル2の回転速度: 1rpm〜500rpm(300mm径のウエハWを用いる場合)
・真空容器1内の圧力: 133Pa(1Torr)
・反応ガスノズル31からのSi含有ガスの流量: 100sccm
・反応ガスノズル32からのOガスの流量: 10000sccm
・活性化ガスインジェクタ220からのO/Arガスの流量: 10000sccm(Oガス流量: 1000sccm、Arガス流量: 9000sccm)
・活性化ガスインジェクタ220へ供給される高周波電力: 500〜900W(周波数13.56MHz)
・回転テーブル2の回転速度: 1から500rpm
(2)第1のステップ及び第3のステップ
・活性化ガスインジェクタ220からのCHFガスの流量: 0.5〜3sccm
・回転テーブル2の回転速度: 1から500rpm
(その他の条件は、保護層成膜ステップと同じ)
(3)第2のステップ
・反応ガスノズル31からのSi含有ガスの流量: 0sccm
(その他の条件は、第1のステップ及び第3のステップと同じ)
以上、実施形態を参照しながら本発明を説明したが、本発明は開示された実施形態に限定されさるものではなく、添付の特許請求の範囲内で種々の変形や変更が可能である。
【0055】
例えば、底部から開口に向かう方向に沿って幅が広がるテーパ状の断面形状を有するスペースを酸化シリコンで埋め込む場合には、第2のステップを行わずに、第1のステップにおける堆積(改質を含んでもよい、以下同じ)と同時のエッチングだけでも埋め込み得る。また、そのようなスペースにおいては、第1のステップ及び第3のステップにおいては堆積のみ行い、第2のステップでのエッチングを行うことにより埋め込むことが可能である。
【0056】
また、プラズマ発生手段80は、2つ以上設けても良い。更に、既述のように平行電極(電極36a、36b)を用いて容量結合型プラズマを発生させたが、コイル型の電極を用いて誘導結合型のプラズマを発生させても良い。
また、上述の実施形態においては、保護層成膜ステップを説明したが、スペースSの内面が、活性化された改質ガスやエッチングガスにより腐食されない場合には、保護層成膜ステップは不要である。例えば、Si基板に形成されたスペースに対して例えば窒化シリコン膜などの保護層が形成されている場合には、保護層成膜ステップを行うことなく、第1のステップから始めても良い。
【0057】
また、第2のステップにおいては、上述のとおり、Si含有ガスの供給を停止して酸化シリコンの堆積を停止する。Si含有ガスの供給量は、上述のとおり、Oガス(酸化ガス)の供給量やNガスの供給に対して大幅に少ないため、Si含有ガスの供給を停止しても真空容器1内の圧力変動は少なく、ガスの流れが乱されることは殆ど無い。したがって、Si含有ガスの供給のみを停止することには、ウエハWの面内及び面間における膜厚や膜質の均一性に悪影響を与えることがないという利点がある。しかし、酸化ガスの供給量が少ない場合には、酸化ガスの供給を停止しても良い。また、Si含有ガスの供給を停止するとともに、Nガスや希ガスなどの不活性ガスを反応ガスノズル31から供給するように、反応ガスノズル31に対するガス供給系を構成しても良い。
【0058】
既述の各例では、ガス供給系(ノズル31〜34、41、42(300))に対して回転テーブル2を回転させたが、この回転テーブル2に対してガス供給系を回転させても良い。
【0059】
また、既述の例では2種類の反応ガスを用いて反応生成物を形成する例について説明したが、2種類以上例えば3種類あるいは4種類の反応ガスを用いて反応生成物を形成する場合に本発明を適用しても良い。
既述の酸化シリコン膜を成膜するためのSi含有ガスとしては、第1の反応ガスとしてBTBAS[ビスターシャルブチルアミノシラン]、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、モノアミノシランなどを用いても良い。また、TMA[トリメチルアルミニウム]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMAH[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)[ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]などを第1の反応ガスとして用いて、酸化アルミニウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化ストロンチウム膜、酸化チタン膜などをそれぞれ成膜しても良い。これらの反応ガスを酸化する酸化ガスである第2の反応ガスとしては、水蒸気などを採用しても良い。また、第2の反応ガスとしてOガスを用いないプロセス例えばTiN(窒化チタン)膜などにおいてTiN膜の改質を行う場合には、ガス導入ノズル34から供給するプラズマ発生用の改質ガスとしては、NH(アンモニア)ガスなどのN(窒素)含有ガスを用いても良い。また、改質ガス及びエッチングガスについては成膜する膜の材料に応じて適宜選択して良い。
【0060】
また、分離ガスとしては、窒素(N)ガスに限られず、アルゴン(Ar)ガスなどの希ガスを用いても良い。
また、本発明はウエハに形成されたトレンチやライン・スペース・パターンだけでなく、例えば、ウエハ上に形成されたメタルラインにより形成されるライン・スペース・パターンなどに対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1・・・真空容器、2・・・回転テーブル、4・・・凸状部、5・・・突出部、7・・・ヒータユニット、10・・・搬送アーム、11・・・天板、12・・・容器本体、15・・・搬送口、21・・・コア部、24・・・凹部(基板載置部)、31,32・・・反応ガスノズル、34・・・ガス導入ノズル、41,42・・・分離ガスノズル、43・・・溝部、44・・・(低い)天井面、45・・・(高い)天井面、51・・・分離ガス供給管、610,620・・・排気口、640・・・真空ポンプ、71・・・パージガス供給管、80・・・プラズマ発生部、220・・・活性化ガスインジェクタ、221・・・カバー体、222・・・気流規制板、224・・・高周波電源、C・・・中心領域、D・・・分離領域、E1,E2・・・排気領域、W・・・ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を含むパターンが形成された基板を真空容器内に搬入するステップと、
第1の反応ガス供給部から前記基板に対して第1の反応ガスを供給し、前記第1の反応ガスを前記基板に吸着させる吸着ステップと、
第2の反応ガス供給部から前記基板に対して、前記第1の反応ガスと反応する第2の反応ガスを供給し、前記基板に吸着される前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスを反応させて、前記基板に反応生成物を形成する形成ステップと、
前記真空容器内に設けられガスを活性化可能な活性化ガス供給部により改質ガスを活性化して前記基板に供給し、前記反応生成物を改質する改質ステップと、
前記反応生成物が形成されない雰囲気下で、前記活性化ガス供給部によりエッチングガスを活性化して前記基板に供給し、前記反応生成物をエッチングするエッチングステップと、
を含む成膜方法。
【請求項2】
前記改質ステップにおいて、前記活性化ガス供給部により前記改質ガス及び前記エッチングガスを活性化して前記基板に供給することにより、前記反応生成物の改質及びエッチングが行われる、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記改質ステップに先立ち、前記吸着ステップ、前記形成ステップ、及び前記改質ステップをこの順に一又は二以上繰り返すステップを更に含む、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記エッチングステップの後に、前記吸着ステップ、前記形成ステップ、及び前記改質ステップをこの順に一又は二以上繰り返すステップを更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記改質ステップにおいて前記改質ガスが高周波により活性化される、請求項1から4のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記エッチングステップにおいて前記エッチングガスが高周波により活性化される、請求項1から4のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項7】
凹部を含むパターンが形成された基板を真空容器内に搬入するステップと、
第1の反応ガス供給部から前記基板に対して第1の反応ガスを供給し、前記第1の反応ガスを前記基板に吸着させる吸着ステップと、
第2の反応ガス供給部から前記基板に対して、前記第1の反応ガスと反応する第2の反応ガスを供給し、前記基板に吸着される前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスを反応させて、前記基板に反応生成物を形成する形成ステップと、
前記真空容器内に設けられガスを活性化可能な活性化ガス供給部により改質ガスと、前記反応生成物をエッチングするエッチングガスとを活性化して前記基板に供給し、前記反応生成物の改質及びエッチングを行なう改質−エッチングステップと
を含む成膜方法。
【請求項8】
前記改質ステップに先立ち、前記吸着ステップ、前記形成ステップ、及び前記改質ステップをこの順に一又は二以上繰り返すステップを更に含む、請求項7に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記エッチングステップの後に、前記吸着ステップ、前記形成ステップ、及び前記改質ステップをこの順に一又は二以上繰り返すステップを更に含む、請求項7又は8に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記改質ステップにおいて前記改質ガスが高周波により活性化される、請求項7から10のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記改質−エッチングステップにおいて前記改質ガス及び前記エッチングガスが高周波により活性化される、請求項7から10のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項12】
基板が載置される基板載置部を含み、真空容器内に回転可能に設けられる回転テーブルと、
前記基板載置部に載置される前記基板に対して第1の反応ガスを供給し、該第1の反応ガスを前記基板に吸着させる第1の反応ガス供給部と、
前記第1の反応ガス供給部から前記回転テーブルの周方向に離間して設けられ、前記基板に対して第2の反応ガスを供給し、前記基板に吸着する前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスとを反応させて反応生成物を前記基板に形成する第2の反応ガス供給部と、
前記第1及び前記第2の反応ガス供給部から前記回転テーブルの周方向に離間して設けられ、前記反応生成物を改質する改質ガスと前記反応生成物をエッチングするエッチングガスとを活性化して前記基板に供給する活性化ガス供給部と
を含む成膜装置。
【請求項13】
前記活性化ガス供給部が、前記改質ガス及び前記エッチングガスを活性化する高周波電力が供給される電極を含む、請求項12に記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−209394(P2012−209394A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73193(P2011−73193)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】