説明

成膜装置及び成膜方法

【課題】十分なガスバリア性を有し耐屈曲性を有するガスバリア性積層フィルムを製造可能な成膜装置を提供する。
【解決手段】基材を収容する真空チャンバーと、真空チャンバー内に、有機金属化合物と該有機金属化合物と反応する反応ガスと、を含む成膜ガスを供給するガス供給装置と、上記真空チャンバー内に配置される一対の電極と、この一対の電極に交流電力を印加し、成膜ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生用電源と、上記ガス供給装置または上記プラズマ発生用電源とのいずれか一方または両方を制御し、有機金属化合物と反応ガスとが反応して、有機金属化合物を形成していた金属元素または半金属元素を含み且つ炭素を含まない化合物を生じる第1の反応条件と、有機金属化合物と反応ガスとが反応して、有機金属化合物を形成していた炭素と金属元素または半金属元素とを含む含炭素化合物を生じる第2の反応条件と、を切り替える制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置および成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスバリア性フィルムは、飲食品、化粧品、洗剤といった物品の包装に適する容器として好適に用いることができる。近年、プラスチックフィルム等の基材フィルムの一方の表面上に、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウムなどの無機化合物の薄膜を形成して形成されるガスバリア性フィルムが提案されている。
【0003】
このように無機化合物の薄膜をプラスチック基材の表面上に成膜する方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD)、減圧化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD)が知られている。
また、このような成膜方法を用いて製造したガスバリア性フィルムとして、例えば、特開平4−89236号公報(特許文献1)には、プラスチック基材の表面上に、蒸着により形成された2層以上のケイ素酸化物膜からなる積層蒸着膜層が設けられたガスバリア性フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−89236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のようなガスバリア性フィルムは、飲食品、化粧品、洗剤等のような包装容器のガスバリア性が比較的低くても満足できる物品の包装用のガスバリア性フィルムとしては使用することができるが、有機EL素子や有機薄膜太陽電池等の電子デバイスの包装用のガスバリア性フィルムとしてはガスバリア性の点で必ずしも十分なものではなかった。
【0006】
また、上記特許文献1に記載のようなガスバリア性フィルムは、これを屈曲させた場合に酸素ガスや水蒸気に対するガスバリア性が低下するという問題点があり、フレキシブル液晶ディスプレイのように耐屈曲性が要求される表示デバイスに使用されるガスバリア性フィルムとしてはフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性の点で必ずしも十分なものではなかった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、十分なガスバリア性を有しており、しかもフィルムを屈曲させた場合においてもガスバリア性の低下を十分に抑制することが可能なガスバリア性積層フィルムを製造可能な成膜装置を提供することを目的とする。また、このような物性のガスバリア性積層フィルムを効率的に製造することができる成膜方法を提供することをあわせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、基材上に薄膜を形成する成膜装置であって、前記基材を内部に収容する真空チャンバーと、前記真空チャンバー内に、前記薄膜の原料である有機金属化合物と、該有機金属化合物と反応する反応ガスと、を含む成膜ガスを供給するガス供給装置と、前記真空チャンバー内に配置された一対の電極と、前記一対の電極に交流電力を印加し、前記成膜ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生用電源と、前記ガス供給装置または前記プラズマ発生用電源のいずれか一方または両方を制御し、前記有機金属化合物と前記反応ガスとが反応して、前記有機金属化合物を形成していた金属元素または半金属元素を含み且つ炭素を含まない化合物を生じる第1の反応条件と、前記有機金属化合物と前記反応ガスとが反応して、前記有機金属化合物を形成していた炭素と、金属元素または半金属元素と、を含む含炭素化合物を生じる第2の反応条件と、を切り替える制御部と、を有する第1の成膜装置を提供する。
【0009】
この明細書及び請求の範囲において、「有機金属化合物」の「金属」は、金属元素及び半金属元素を包含するものとする。
更に、本明細書において用いられる幾つかの用語及び表現の定義を以下に記す。
「真空チャンバー」とは、内部を減圧状態、好ましくは真空に近い減圧状態にするための容器である。通常、チャンバーに取り付けられた真空ポンプを作動させることにより、チャンバー内に減圧環境、好ましくは真空に近い減圧環境が作られる。
「基材」とは、膜を形成する時に該膜の支持体となる物体である。
「成膜ガス」とは、膜の原料となる原料ガスを必須要素として含有するガスであり、必要に応じて、原料ガスと反応して化合物を形成する反応ガスや、形成された膜に含まれることはないがプラズマ発生や膜質向上などに寄与する補助ガスを更に含有することがある。
「原料ガス」とは、膜の主成分となる材料の供給源となるガスである。例えばSiO膜を形成する場合には、HMDSO,TEOS,シラン等のSiを含有するガスが原料ガスである。
「反応ガス」とは、原料ガスと反応して、形成される膜に取り込まれるガスであり、例えばSiO膜を形成する場合には、酸素(O)がこれに該当する。
【0010】
なお、本明細書において薄膜について使用される表現「炭素を含まない」とは、その薄膜についてXPSデプスプロファイル測定を行うことにより作成される、該薄膜の膜厚方向における該薄膜の表面からの距離と、薄膜を構成する原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、炭素含有量が1at%以下であることをいう。ここで、上記炭素分布曲線について、「薄膜を構成する原子の合計量」は、薄膜を構成する原子の合計数を意味し、「炭素原子の量」は、炭素原子の数を意味する。また、単位「at%」は、「原子%」の略号である。
【0011】
本発明においては、前記制御部は、前記第1の反応条件においては、前記有機金属化合物と前記反応ガスとから前記炭素を含まない化合物が生じる反応における当量以上の前記反応ガスが前記成膜ガスに含まれるように、そして、前記第2の反応条件においては、前記炭素を含まない化合物が生じる反応における当量未満の前記反応ガスが前記成膜ガスに含まれるように、前記ガス供給装置を制御するように構成されていることが望ましい。
【0012】
本発明においては、前記制御部は、前記ガス供給装置に対し、前記第1の反応条件と前記第2の反応条件との切り替え時において前記成膜ガスに含まれる前記反応ガスの量を連続的に変化させるように構成されていることが望ましい。
【0013】
本発明においては、前記制御部は、前記第1の反応条件においては、前記炭素を含まない化合物を生じる強度の前記プラズマを発生させる交流電力を印加するように、そして、前記第2の反応条件においては、前記含炭素化合物を生じる強度の前記プラズマを発生させる交流電力を印加するように、前記プラズマ発生用電源を制御するように構成されていることが望ましい。
【0014】
本発明においては、前記制御部は、前記プラズマ発生用電源に対し、前記第1の反応条件と前記第2の反応条件との切り替え時において前記交流電力の電力量を連続的に変化させるように構成されていることが望ましい。
【0015】
また、本発明は、長尺の基材を連続的に搬送しながら前記基材上に連続的に成膜する成膜装置であって、前記基材を内部に収容する真空チャンバーと、前記真空チャンバー内において前記基材を連続的に搬送する搬送手段と、搬送される前記基材の一部と重なる空間に放電プラズマを発生させるプラズマ発生手段と、前記空間における前記基材の搬送方向に沿って、複数箇所に磁界を発生させ空間的にプラズマ強度を異ならせる磁界発生手段と、を有し、前記搬送手段は、前記空間内において前記基材を平坦に保ちながら搬送するように構成されている第2の成膜装置を提供する。
【0016】
また、本発明は、基材上に薄膜を形成する成膜方法であって、前記薄膜の原料である有機金属化合物と、該有機金属化合物と反応する反応ガスと、から、前記有機金属化合物を形成していた金属元素または半金属元素を含み且つ炭素を含まない化合物が生じる反応における、当量以上の前記反応ガスを用いてプラズマCVDを行う第1の工程と、前記炭素を含まない化合物が生じる反応における当量未満の前記反応ガスを用いて有機金属化合物を形成していた炭素と金属元素又は半金属元素とを含む含炭素化合物を生じさせるプラズマCVDを行う第2の工程と、を有する第1の成膜方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、基材上に薄膜を形成する成膜方法であって、前記薄膜の原料である有機金属化合物と、該有機金属化合物と反応する反応ガスと、から、前記有機金属化合物を形成していた金属元素または半金属元素を含み且つ炭素を含まない化合物が生じる強度の放電プラズマを発生させてプラズマCVDを行う第1の工程と、前記有機金属化合物を形成していた炭素と、金属元素または半金属元素と、を含む含炭素化合物を生じる強度の放電プラズマを発生させてプラズマCVDを行う第2の工程と、を有する第2の成膜方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、長尺の基材を連続的に搬送しながら、プラズマCVD法により前記基材上に連続的に成膜する成膜方法であって、前記基材の搬送方向に沿って放電プラズマの強度を空間的に異ならせ、前記放電プラズマの強度が変化する空間と重なるように、平坦に保った前記基材を搬送する工程を有する第3の成膜方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、十分なガスバリア性を有しており、しかもフィルムを屈曲させた場合においてもガスバリア性の低下を十分に抑制することが可能なガスバリア性積層フィルムを製造可能な成膜装置および成膜方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の1つの実施形態の成膜装置で製造される積層フィルムの例を示す模式図である。
【図2】ガスバリア性積層フィルムの炭素分布曲線の例を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る成膜装置を示す模式図である。
【図4】制御部を説明する模式図である。
【図5】本発明の1つの実施形態の成膜装置で製造される積層フィルムの変形例を示す模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る成膜装置を示す模式図である。
【図7】上記第2実施形態の成膜装置における成膜の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、図1〜図5を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る成膜装置について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0022】
以下の説明では、本実施形態の成膜装置1000を用いて基材上にガスバリア性を有する薄膜を形成し、ガスバリア性積層フィルムを製造することとして、まず、目的とするガスバリア性積層フィルムについて説明した上で、ガスバリア性積層フィルムを製造するために用いる本実施形態の成膜装置について説明する。
【0023】
<ガスバリア性積層フィルム>
図1は、本実施形態の成膜装置で製造するガスバリア性積層フィルム1を示す模式図である。本実施形態に係るガスバリア性積層フィルム1は、基材2の表面に、ガスバリア性を有する薄膜3が形成されたものであり、全体としてガスバリア性を有するフィルムとなっている。
【0024】
(基材)
本実施形態の成膜装置で製造されるガスバリア性積層フィルム1は、基材2の一面側に、薄膜3を形成することによって得られる。
【0025】
本実施形態に用いる基材2としては、樹脂または樹脂を含む複合材料からなるフィルムが挙げられる。このようなフィルムは透光性を有していても良く、また、不透明であっても良い。
【0026】
このような基材2に用いる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル系樹脂、アセタール系樹脂、ポリイミド系樹脂、アラミド系樹脂、またはこれらの樹脂のポリマーを構成する反復単位を2種以上組み合わせた共重合体などが挙げられる。また、樹脂を含む複合材料としては、ポリジメチルシロキサン、ポリシルセスキオキサンなどのシリコーン樹脂、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板などが挙げられる。これらの樹脂の中でも、耐熱性及び線膨張率が高いという観点から、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板が好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
基材2は、形成する薄膜との密着性の観点から、その表面を活性化するための表面活性処理を施してもよい。このような表面活性処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理が挙げられる。
【0028】
(薄膜)
本実施形態の成膜装置により製造される薄膜3は、基材2にガスバリア性を付与する層であり、基材2の少なくとも片面に形成される。薄膜3は、組成の異なる複数の層を含んでいる。図では、薄膜3は第1層3aと第2層3bとが交互に積層された3層構造であることとして示している。
【0029】
第1層3aは、SiO(0<x<2,0<y<2、x+y≒2)においてy≒0で表されるSiOに近い組成を有している。これに対して、第2層3bは、SiO(0<x<2,0<y<2、x+y≒2)においてy≠0であり、SiO2―yで表される組成を有している。第2層3bは、均一な組成ではなく、膜厚方向における該層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、下記条件(i)及び(ii)を全て満たしている。
【0030】
まず、(i)第2層3bは、炭素分布曲線が少なくとも1つの極値を有するものである。
【0031】
本明細書において、炭素分布曲線等、薄膜の元素分布曲線の極大値とは、薄膜3の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比の値が増加から減少に変わる点であって且つその点の元素の原子比の値よりも、該点から薄膜3の膜厚方向における薄膜3の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比の値が1at%以上減少する点のことをいう。さらに、本明細書において、上記元素分布曲線の極小値とは、薄膜3の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比の値が減少から増加に変わる点であり、且つその点の元素の原子比の値よりも、該点から薄膜3の膜厚方向における薄膜3の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比の値が1at%以上増加する点のことをいう。
【0032】
また、(ii)第2層3bは、第2層3b内の炭素の原子比の最大値と最小値との差が5%以上(すなわち、(炭素の原子比の最大値)−(炭素の原子比の最小値)≧5%)である。
【0033】
このような第2層3bにおいては、炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が6at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることが特に好ましい。前記絶対値が5at%未満では、得られるガスバリア性積層フィルム1を屈曲させた場合に薄膜3が破損しやすくなり、ガスバリア性積層フィルム1を屈曲させた場合のガスバリア性が不十分となる。
【0034】
ここで、炭素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を炭素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は膜厚方向における薄膜3の膜厚方向における薄膜3の表面からの距離に概ね相関することから、「薄膜3の膜厚方向における薄膜3の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出される薄膜3の表面からの距離を採用することができる。また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、そのエッチング速度を0.05nm/sec(SiO2熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。
【0035】
図2は、第2層3bの炭素分布曲線を模式的に示した図である。層の表面からの距離を示す横軸においては、具体的な距離ではなく、第1層3a、第2層3b、薄膜3の各符号を用いて示している。図に示すような組成の第2層3bでは、極大値を1つ有しており、炭素原子の最大値と最小値との差が5%を超えている。
【0036】
また、第1層3aは、炭素分布曲線において炭素含有量が1at%以下となっており、炭素を含まない層となっている。
【0037】
また、本実施形態においては、全体において均一で且つ優れたガスバリア性を有する薄膜3を形成するという観点から、薄膜3が膜面方向(薄膜3の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。本明細書において、薄膜3が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定により薄膜3の膜面の任意の2箇所の測定箇所について炭素分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであるかもしくは5at%以内の差であることをいう。
【0038】
さらに、本実施形態においては、前記炭素分布曲線は実質的に連続であることが好ましい。本明細書において、炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことを意味し、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出される薄膜3のうちの少なくとも1層の膜厚方向における該層の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比(C、単位:at%)との関係において、下記数式(F1):
|dC/dx|≦ 1 …(F1)
で表される条件を満たすことをいう。
【0039】
また、薄膜3の厚みは、5nm〜3000nmの範囲であることが好ましく、10nm〜2000nmの範囲であることより好ましく、100nm〜1000nmの範囲であることが特に好ましい。薄膜3の厚みが前記下限未満では、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性が劣る傾向にあり、他方、前記上限を超えると、屈曲により薄膜3が破損しやすくなるため、屈曲させた場合にガスバリア性が低下しやすくなる傾向にある。
【0040】
本実施形態の成膜装置1000で製造するガスバリア性積層フィルム1では、炭素原子を含まない第1層3aが高いガスバリア性を発現すると共に、炭素原子を含む第2層3bが第1層3aよりも柔軟に屈曲可能であるため、耐屈曲性を発現する。そのため、ガスバリア性積層フィルム1は、全体として、優れたバリア性及び耐屈曲性を発揮させることが可能となる。
【0041】
<成膜装置>
図3は、本実施形態の成膜装置1000を示す模式図である。本実施形態の成膜装置1000は、チャンバー11と、チャンバー11内に配置されて基材2を載置する戴置台12と、戴置台12の上方に戴置台12と対向して配置された一対の電極13と、電極13に接続されたプラズマ発生用電源14と、電極13において戴置台12と対向しない側に配置された磁界発生部15と、を備えている。
【0042】
また、チャンバー11内に各種の成膜ガスを供給するガス供給管16と、ガス供給管16に配管16aを介して接続されたガス供給装置17と、が設けられている。さらに、チャンバー11には、チャンバー11の天井に設けられた真空ポンプ18と、排気口(図示略)が適宜設けられている。
【0043】
そして、プラズマ発生用電源14およびガス供給装置17には、プラズマ発生用電源14およびガス供給装置17の駆動を制御する制御部100が接続されている。
【0044】
そして、この装置においては、プラズマ発生用電源14により電極13と戴置台12との間の空間に、ガス供給管16から供給される成膜ガスのプラズマを発生させることができ、発生するプラズマを用いてプラズマCVD成膜を行うことができる。以下、各構成について順に説明する。
【0045】
戴置台12は、基材2を載置するものであるが、内部に基材2を加熱するための加熱手段を備えても良い。
【0046】
一対の電極13は、板状の形状を有し、一面側が戴置台12に対向するようにチャンバー11内の高さ方向の所定位置に配置されている。電極13に接続されているプラズマ発生用電源14から一対の電極13に、例えば高周波電力を印加してこれら電極13の間および周辺の空間に電界を生じさせることで、ガス供給管16から供給される成膜ガスのプラズマを発生させる。
【0047】
磁界発生部15は、戴置台12側の極性が交互に反転して配列している複数の磁石15aと、複数(図では3つ)の磁石15aが磁着する接続部材15bとを有している。磁界発生部15により、戴置台12と電極13との間の空間には磁界が形成される。図では、磁界発生部15により形成される磁力線LMを模式的に示している。
【0048】
電極13に印加することにより生じる放電プラズマの強度は、磁界発生部15により形成される磁場の強度に応じて異なるため、プラズマが強い領域である強プラズマ領域AR1と、プラズマが弱い領域である弱プラズマ領域AR2と、が形成される。磁場の強度は、磁界発生部15の磁石15aの数や、磁石15a同士の間隔(図中、符号Lで示す)、磁石15aの高さ(図中、符号Hで示す)を変更することにより、所望の磁界を形成することができる。
【0049】
例えば、図に示す3つの磁石15aのうち、両端の磁石15aを中央のものよりも低くし、電極13から遠ざかるようにした磁界発生部15を用いることができる。
【0050】
なお、発生したプラズマが基材2に達するまでには、プラズマが拡散するためにプラズマ強度は平均化され、基材2上では概ね均一な強度のプラズマを用いて成膜が成される。
【0051】
ガス供給管16は、一対の電極13の下方においてチャンバー11を横断するように延在する管状の形状を有しており、複数箇所に設けられた開口部からプラズマCVDの原料ガスなどの成膜ガスを供給する。
【0052】
ガス供給装置17は、成膜ガス(原料ガス、反応ガス、キャリアガス)を貯留するタンクや、成膜ガスを構成する各々のガスの供給量を制御するバルブなどを有し、チャンバー11内に適切な量の成膜ガスを供給する。
【0053】
原料ガスは有機金属化合物であり、形成するバリア膜の材質に応じて適宜選択して使用することができる。
【0054】
原料ガスとしては、例えばケイ素を含有する有機ケイ素化合物を用いることができる。
このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ジメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性や得られるバリア膜のガスバリア性等の観点から、HMDSO、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機ケイ素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。さらに、上述の有機ケイ素化合物の他にモノシランを含有させた原料ガスを、形成するバリア膜のケイ素源として使用することとしてもよい。
【0055】
成膜ガスとして、原料ガスの他に反応ガスを用いる。このような反応ガスとして、原料ガスと反応して、原料ガスに含まれる金属元素または半金属元素と酸化物、窒化物等の炭素を含まない化合物を生じるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとして、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとして、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
【0056】
原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを成膜ガスの一部として用いてもよい。さらに、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを成膜ガスの一部として用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとして、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
【0057】
真空ポンプ18は、チャンバー11内の圧力(真空度)を制御するために用いる。チャンバー11内の圧力は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、基材2が戴置されている近傍の圧力が0.1Pa〜50Paであることが好ましい。気相反応を抑制する目的により、プラズマCVDを低圧プラズマCVD法とする場合、通常0.1Pa〜10Paである。また、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.1〜10kWであることが好ましい。
【0058】
制御部100は、プラズマ発生用電源14およびガス供給装置17の駆動を制御する制御信号を出力する。
【0059】
図4は、制御部100を説明する模式図である。図に示すように、制御部100は、入力部101と、入力部101と接続されている演算部102と、演算部102と接続されている信号出力部103および記憶部104と、を含んでいる。
【0060】
入力部101は、プラズマ発生用電源14やガス供給装置17の運転条件を、演算部102に入力する入力装置である。プラズマ発生用電源14やガス供給装置17の運転条件は、基板X上に形成する薄膜の厚さ、用いる基板Xの種類、成膜ガスの組成等に応じて変動するため、適宜運転条件を指定する。
【0061】
演算部102は、入力部101から入力される運転条件を用いて、プラズマ発生用電源14およびガス供給装置17の制御信号を作成し、信号出力部103に供給する。
【0062】
信号出力部103は、演算部102で作成された制御信号をプラズマ発生用電源14およびガス供給装置17の制御信号を各々に出力するためのインターフェースである。
【0063】
また、入力部101からは、プラズマ発生用電源14およびガス供給装置17の運転条件そのものを入力することとしても良いが、詳細な運転条件については予めルックアップテーブルなどの形式で記憶部104に記憶させておき、記憶されている運転条件と関連付けされた指定情報を入力することとしても良い。例えば、「条件1」を入力すると、記憶部104に記憶されている条件1に対応した運転条件が引き出され、「条件2」を入力すると、記憶部104に記憶されている条件2に対応した運転条件が引き出される、というように、代用する情報を入力することとしても構わない。これにより、運転条件の入力作業を簡素化することができる。
【0064】
(成膜工程)
次に、このような成膜装置を用いて、図1に示すガスバリア性積層フィルム1を製造する際の反応工程について説明する。ここでは、成膜ガスとして、HMDSOと酸素との混合ガスを用いることとして説明する。
【0065】
第1に、ガス供給装置17を制御してガスバリア性積層フィルム1を製造する場合を示す。この場合、プラズマ発生用電源14には、成膜ガスを完全にプラズマにすることができる程度の電力を一定の電力量で電極13に供給するように制御部100から制御信号が出力される。一方で、ガス供給装置17には、第1層3aと第2層3bとを製造する場合に、HMDSOと酸素との混合比を異ならせるように制御する制御信号が出力される。成膜ガスの混合比の変更は、例えば各々のガスの供給量を制御するバルブの開度を制御することにより行う。
【0066】
まず、第1層3aの成膜工程では、制御部100からガス供給装置17に、化学量論的にHMDSOの完全酸化が生じるような酸素含有率となるように、成膜ガスの混合比を制御する制御信号が出力される。例えば、酸素がHMDSOの12倍となるようにこれらガスの混合比を制御して、これらガスがチャンバー11内に供給される。このような混合比の成膜ガスを用いる場合、プラズマCVDの過程において、下記式1に示すような反応によりSiO2が生じるため、第1層3aを形成することができる。
【0067】
[化1]
(CHSiO+12O→6CO+9HO+2SiO …(1)
【0068】
次いで、第2層3bの成膜工程では、制御部100からガス供給装置17に、化学量論的にHMDSOの完全酸化が生じず酸素が不足するような酸素含有率となるように、成膜ガスの混合比を制御する制御信号が出力される。具体的には、酸素がHMDSOの12倍未満となるようにこれらガスの混合比を制御して、これらガスがチャンバー11内に供給される。
【0069】
さらに、成膜ガスの混合比は、第2層3bの成膜工程において、酸素含有率を連続的に下げた後、連続的に上げ、酸素がHMDSOの12倍となるまで変化させる。酸素がHMDSOの12倍となると、第2層3bの成膜が終了する。
【0070】
このような混合比の成膜ガスを用いる場合、プラズマCVDの過程において、下記式2に示すような反応により含炭素化合物であるSiOxCyが生じるため、第2層3bを形成することができる。式2では、例として酸素がHMDSOの9倍である場合の反応式を示す。
【0071】
[化2]
(CHSiO+9O→4CO+9HO+2SiOC …(2)
【0072】
第2に、プラズマ発生用電源14を制御してガスバリア性積層フィルム1を製造する場合を示す。この場合、ガス供給装置17には、化学量論的にHMDSOの完全酸化が生じるような酸素含有率の一定の混合比で成膜ガスを供給するように制御信号が出力される。
一方で、プラズマ発生用電源14には、第1層3aと第2層3bとを製造する場合に、電力を異ならせてプラズマを生じさせるように制御部100から制御信号が出力される。
【0073】
まず、第1層3aの成膜工程では、制御部100からプラズマ発生用電源14に、HMDSOの完全酸化が生じるような電力を供給するように制御信号が出力される。この場合、プラズマCVDの過程において完全酸化が生じ、上記式1に示すような反応によりSiO2が生じるため、第1層3aを形成することができる。
【0074】
次いで、第2層3bの成膜工程では、制御部100からプラズマ発生用電源14に、HMDSOの完全酸化が生じないような電力(例えば、第1層3aの成膜時の電力の半分)を供給するように制御信号が出力される。さらに、供給される電力は、第2層3bの成膜工程において、連続的に下げた後に連続的に上げ、HMDSOの完全酸化が生じるような電力を供給するまで変化させる。HMDSOの完全酸化が生じるような電力まで、供給電力を増加させると、第2層3bの成膜が終了する。
【0075】
この場合、プラズマCVDの過程において、例えば上記式2に示すような反応によりSiOxCyが生じるため、第2層3bを形成することができる。
【0076】
さらに、ガス供給装置17とプラズマ発生用電源14とを両方制御してガスバリア性積層フィルム1を製造することも可能である。この場合も、上記式1,2に示すような反応によりそれぞれ第1層3a、第2層3bを形成することができる。
【0077】
以上のような成膜装置1000では、制御部100が運転条件を制御して成膜を行うため、十分なガスバリア性を有しており、しかもフィルムを屈曲させた場合においてもガスバリア性の低下を十分に抑制することが可能なガスバリア性積層フィルム1を製造することが可能となる。
【0078】
なお、本実施形態では、薄膜3には第1層3aと第2層3bとが合計で3層積層していることして説明したが、これに限らない。上述の成膜工程を繰り返すことで、例えば図5に示すように、更に第1層3aと第2層3bとが繰り返し積層した(図では合計で5層)薄膜3を有するガスバリア性積層フィルム1を製造することができる。
【0079】
このような薄膜3の場合、複数の第2層3bの組成は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、このような薄膜3を2層以上備える場合には、このような薄膜3は基材2の一方の表面上に形成されていてもよく、基材2の両方の表面上に形成されていてもよい。
【0080】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態に係る成膜装置2000の説明図である。本実施形態の成膜装置2000は、第1実施形態の成膜装置1000と一部共通している構成を有している。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素には同じ符号を付し、これら構成要素の詳細な説明は省略する。
【0081】
図6に示す成膜装置2000は、長尺の基材2を搬送しながら、搬送過程で連続的に成膜することが可能となっている。以下、順に説明する。
【0082】
成膜装置2000は、ロール状に巻き取られた長尺の基材2を送り出す送り出しロール(搬送手段)21と、基材2を搬送する搬送ロール(搬送手段)22、23と、基材2を巻き取る巻取りロール(搬送手段)24と、を有する。基材2は、撓まず平坦な状態で戴置台12の上方を搬送され、戴置台12の上方を搬送される過程において連続的にプラズマCVD成膜される。
【0083】
電極13は、戴置台12の下方に戴置台12に面して設けられ、磁界発生部15は電極13において戴置台12と対向しない側に設けられている。ガス供給管16は、戴置台12の上方においてチャンバー11を横断するように延在して設けられている。電極13とプラズマ発生用電源14は、本発明のプラズマ発生手段を構成する。
【0084】
このような電極13に、例えば一定強度の高周波電力を印加して電極13の間および周辺の空間に電界を生じさせることで、ガス供給管16から供給される成膜ガスのプラズマを発生させる。成膜ガスは、例えば、酸素がHMDSOの9モル倍から12モル倍となるように制御される。
【0085】
この際、磁界発生部15により形成される磁場の強度に応じて異なる強度の放電プラズマが発生し、戴置台12の上方において、プラズマが強い領域である強プラズマ領域AR1と、プラズマが弱い領域である弱プラズマ領域AR2と、が形成される。強プラズマ領域AR1では、上記式1に示すような反応によりSiO2が生じるため、第1層3aが形成される。また、弱プラズマ領域AR2では、上記式2に示すような反応によりSiOxCyが生じるため、第2層3bが形成されることとなる。
【0086】
基材2は、このように形成された強プラズマ領域AR1と弱プラズマ領域AR2との近傍を通過するようにして搬送される。基板2上には、搬送過程において、各プラズマ領域AR1,AR2で生じる反応に従って連続的に成膜が行われる。すなわち、図7に示すように、基材2を搬送する過程において、強プラズマ領域AR1を通過するときには第1層3aが形成され、弱プラズマ領域AR2を通過するときには第2層3bが形成される。そして、強プラズマ領域AR1と弱プラズマ領域AR2とを交互に通過するため、搬送に従い第1層3aと第2層3bとが交互に形成されて積層され、ガスバリア性積層フィルム1が形成される。
【0087】
図では、強プラズマ領域AR1が4箇所示され、弱プラズマ領域AR2が3箇所示されている。そのため、本実施形態の成膜装置2000を用いると、形成されるガスバリア性積層フィルム1は、第1層3aと第2層3bとが交互に合計7層積層された構成のものとなる。
【0088】
以上のような成膜装置2000では、長尺の基材2を搬送しながらプラズマ強度が異なる複数の領域を通過させ、各プラズマ領域AR1,AR2で成膜する。このため、十分なガスバリア性を有し、屈曲させた場合においてもガスバリア性の低下を十分に抑制することが可能な長尺のガスバリア性積層フィルム1を、容易に製造することが可能となる。
【0089】
また、成膜装置2000では、ロールツーロールで薄膜3を成膜するときに、長尺の基材2を平坦に保った状態で薄膜3を連続形成することができる。基材2を湾曲させた状態で薄膜3を形成すると、形成されるガスバリア性積層フィルムは平坦に延ばした場合に薄膜内部に残留応力を有することとなるため、破損しやすくなる。しかし、本実施形態の成膜装置2000で形成されるガスバリア性積層フィルムにはそのようなおそれがない。したがって、より高品質なガスバリア性積層フィルムを容易に大量に製造することが可能となる。
【0090】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、十分なガスバリア性を有し、しかもフィルムを屈曲させた場合においてもガスバリア性の低下を十分に抑制することが可能なガスバリア性積層フィルムを製造可能な成膜装置および成膜方法を提供するから産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0092】
2…基材、3…薄膜、11…真空チャンバー、13…電極、14…プラズマ発生用電源、15…磁界発生部(磁界発生手段)、17…ガス供給装置、21…送り出しロール(搬送手段)、22,23…搬送ロール(搬送手段)、24…巻取りロール(搬送手段)、100…制御部、1000,2000…成膜装置、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に薄膜を形成する成膜装置であって、
前記基材を内部に収容する真空チャンバーと、
前記真空チャンバー内に、前記薄膜の原料である有機金属化合物と、該有機金属化合物と反応する反応ガスと、を含む成膜ガスを供給するガス供給装置と、
前記真空チャンバー内に配置された一対の電極と、
前記一対の電極に交流電力を印加し、前記成膜ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生用電源と、
前記ガス供給装置及び前記プラズマ発生用電源のいずれか一方または両方を制御し、前記有機金属化合物と前記反応ガスとが反応して、前記有機金属化合物を形成していた金属元素または半金属元素を含み且つ炭素を含まない化合物を生じる第1の反応条件と、前記有機金属化合物と前記反応ガスとが反応して、前記有機金属化合物を形成していた炭素と、金属元素または半金属元素と、を含む含炭素化合物を生じる第2の反応条件と、を切り替える制御部と、を有する成膜装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の反応条件においては、前記有機金属化合物と前記反応ガスとから前記炭素を含まない化合物が生じる反応における当量以上の前記反応ガスが前記成膜ガスに含まれるように、前記第2の反応条件においては、前記炭素を含まない化合物が生じる反応における当量未満の前記反応ガスが前記成膜ガスに含まれるように、前記ガス供給装置を制御することができるように構成された請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ガス供給装置に対し、前記第1の反応条件と前記第2の反応条件との切り替え時において前記成膜ガスに含まれる前記反応ガスの量を連続的に変化させることができるように構成された請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の反応条件においては、前記炭素を含まない化合物を生じる強度の前記プラズマを発生させる交流電力を印加するように、前記第2の反応条件においては、前記含炭素化合物を生じる強度の前記プラズマを発生させる交流電力を印加するように、前記プラズマ発生用電源を制御することができるように構成されている請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記プラズマ発生用電源に対し、前記第1の反応条件と前記第2の反応条件との切り替え時において前記交流電力の電力量を連続的に変化させることができるように構成された請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
長尺の基材を連続的に搬送しながら前記基材上に連続的に成膜する成膜装置であって、
前記基材を内部に収容する真空チャンバーと、
前記真空チャンバー内において前記基材を連続的に搬送する搬送装置と、
搬送される前記基材の一部と重なる空間に放電プラズマを発生させるプラズマ発生装置と、
前記空間における前記基材の搬送方向に沿って、複数箇所に磁界を発生させ該空間内でプラズマ強度を異ならせる磁界発生装置と、を有し、
前記搬送装置は、前記空間内において前記基材を平坦に保ちながら搬送するように構成された成膜装置。
【請求項7】
基材上に薄膜を形成する成膜方法であって、
前記薄膜の原料である有機金属化合物と、該有機金属化合物と反応する反応ガスと、から、前記有機金属化合物を形成していた金属元素または半金属元素を含み且つ炭素を含まない化合物が生じる反応における、当量以上の前記反応ガスを用いてプラズマCVDを行う第1の工程と、
前記炭素を含まない化合物が生じる反応における当量未満の前記反応ガスを用いて前記有機金属化合物を形成していた炭素と、金属元素又は半金属元素とを含む含炭素化合物を生じさせるプラズマCVDを行う第2の工程と、を有する成膜方法。
【請求項8】
基材上に薄膜を形成する成膜方法であって、
前記薄膜の原料である有機金属化合物と、該有機金属化合物と反応する反応ガスと、から、前記有機金属化合物を形成していた金属元素または半金属元素を含み且つ炭素を含まない化合物が生じる強度の放電プラズマを発生させてプラズマCVDを行う第1の工程と、
前記有機金属化合物を形成していた炭素と、金属元素または半金属元素と、を含む含炭素化合物を生じる強度の放電プラズマを発生させてプラズマCVDを行う第2の工程と、を有する成膜方法。
【請求項9】
長尺の基材を連続的に搬送しながら、プラズマCVD法により前記基材上に連続的に成膜する成膜方法であって、
前記基材の搬送方向に沿って放電プラズマの強度を空間的に異なるようにプラズマを放電し、前記放電プラズマの強度が変化する空間と重なるように、平坦に保った前記基材を搬送する工程を有する成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−97355(P2012−97355A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222104(P2011−222104)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】