振れ角検出装置、振れ角検出プログラム、記録媒体及び二次元ワイヤ懸垂装置
【課題】ワイヤのX方向及びY方向の振れ角を正確に迅速に求めることができる検出装置を提供する。
【解決手段】ワイヤ懸垂機構のワイヤをX方向のCCDカメラ1、8により撮像され抽出されたワイヤ画像の領域と画面全体の上下の画素領域との交差領域を抽出し、この交差領域の上下2つの重心座標に対してレンズによる歪を補正する。この上下2つの重心座標を補正後、CCDカメラ1、8より得られた値を用いて各々上下2つの重心座標を三次元世界座標系に変換し、2台のカメラから得られた計4つの重心位置及び2台のカメラレンズ中心位置より、三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、このワイヤ方向よりワイヤ傾き角のx方向、y方向成分を角度検出部7、13により算出する。そして各部の処理を制御する制御部14から構成される。
【解決手段】ワイヤ懸垂機構のワイヤをX方向のCCDカメラ1、8により撮像され抽出されたワイヤ画像の領域と画面全体の上下の画素領域との交差領域を抽出し、この交差領域の上下2つの重心座標に対してレンズによる歪を補正する。この上下2つの重心座標を補正後、CCDカメラ1、8より得られた値を用いて各々上下2つの重心座標を三次元世界座標系に変換し、2台のカメラから得られた計4つの重心位置及び2台のカメラレンズ中心位置より、三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、このワイヤ方向よりワイヤ傾き角のx方向、y方向成分を角度検出部7、13により算出する。そして各部の処理を制御する制御部14から構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振れ角検出装置及び二次元ワイヤ懸垂装置に関し、さらに詳しくは、ワイヤ懸垂装置におけるワイヤの振れ角をCCDカメラにより検出する振れ角検出技術と、それを応用した二次元ワイヤ懸垂装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーンをはじめとしたワイヤ懸垂機構は、水平な二次元平面内に設置されたXYテーブルと、このXYテーブルに設置されたワイヤ巻上げ機構と、XYテーブルを駆動する駆動手段と、ワイヤ巻上げ機構により支持されたワイヤにより懸垂された懸垂物とを備えている。例えば、天井走行クレーンやコンテナクレーンのようにワイヤによって懸垂物を支持しつつ移動させるワイヤ懸垂機構を用いた搬送形態は、高低差のある区間や、長い搬送距離を移動するに際して大変有益である。ただし、ワイヤによって吊り下げられた懸垂物は振り子運動を行うため、懸垂物を位置決め点で静止させて十分な位置精度を確保するには熟練オペレータの高いスキルが求められる。また、懸垂物の位置決め精度をより高める必要のある建設現場などでは、人的な補助による振れ止め作業が不可欠となっている。そこで、従来から天井走行クレーンやコンテナクレーンなどの設置式クレーンによる自動振れ止めのための手法に関しては、これまでに数多くの研究成果が発表されている。
例えば非特許文献1には、運動モデルを利用して振動を発生しないフィードフォワード制御指令を求めるものが報告されている。
また、懸垂物の振れ角測定にはいくつかの方法が提案されている。例えば、非特許文献2には、自由に回転できるスリットを有した棒によりワイヤを挟みこみ、ワイヤの振れと共に運動する棒の動きをロータリエンコーダで検出する方法が提案されている。また他の方法として、平行板ばねを二枚組み合わせて片側に歪ゲージを貼り、懸垂物が振動することにより発生するワイヤ振れ角を利用して板ばねを撓ませ、その撓みを歪ゲージで検出する方法などがある。
またレーザ光源とCCDカメラを用いて計測する方法もあるが、この方法は懸垂物に応じた吊具に画像からの角度検出の際に目印となるレーザ光源を設置しているため、懸垂物の変更が容易でない。
【非特許文献1】三好、寺嶋、森田“時変振動機構に対する制振フィードフォワード制御入力の導出とクレーンへの応用”,日本機械学会論文集(C編),Vol.64, No.624(1998), pp75-82
【非特許文献2】N.Yanai, M.Yamamoto and A.Mohri:“Feedback Control for Wire-suspended Mechanism with Exact Linearization”, Proc.2002 IROS, Vol.3, pp2213-2218
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら非特許文献1に記載された方法は、測定不可能な外乱や制御対象が不正確さを含んでいる場合などには対応できない。特に風など大きな外乱が想定される屋外での使用に際しては、フィードバック制御が不可欠となり、フィードバック制御を実現するには懸垂物の振れ角を測定することが不可欠である。
また非特許文献2の方法は、既存のものにワイヤの振れと共に運動する棒を取付ける際、シンプルな構造ゆえに部品数も少なく容易に取付けることができるが、棒のダイナミクスを新たに考慮に入れなくてはならず、フィードバック時の高周波成分を計測するには十分ではないと考えられ、高周波にノイズがのると振動制御が不安定になるなどの問題点も残っている。
本発明は、かかる課題に鑑み、画像処理を用いてワイヤ振れ角測定を行なうことにより、ワイヤ懸垂機構のワイヤに負荷を与えることなく、三次元変換された2つの三次元重心座標を結んだ直線の傾きに基づいて、ワイヤのX方向及びY方向の振れ角度を正確に且つ迅速に求めることができる振れ角検出装置を提供することを目的とする。
また他の目的は、上記振れ角検出装置を既存の二次元ワイヤ懸垂装置に備えることにより、ビジュアルフィードバック制御システムの構築を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、ワイヤ懸垂手段と該ワイヤ懸垂手段により支持されたワイヤにより懸垂された懸垂物とを備えたワイヤ懸垂機構におけるワイヤの振れ角を検出する振れ角検出装置において、前記ワイヤ懸垂機構のワイヤ画像を撮像する画像撮像部と、該画像撮像部により撮像されたワイヤ画像を所定の閾値により二値化する二値化部と、該二値化部の結果に基づいて前記ワイヤ画像の領域を検出するワイヤ領域検出部と、前記画像撮像部により撮像された画面全体の上下に所定の画素領域を設け、前記ワイヤ画像の領域と前記上下の画素領域との交差領域を抽出し、当該交差領域の重心座標を求める重心座標検出部と、該重心座標検出部により検出された上下2つの重心座標に対して前記画像撮像部の光学系による歪を補正する歪補正部と、をX方向及びY方向に夫々備え、前記X方向及びY方向の歪補正部により夫々の前記上下2つの重心座標を補正後、前記各画像撮像部より得られた値を用いて前記夫々の上下2つの重心座標を三次元世界座標系に変換する三次元世界座標系変換部と、前記X方向及びY方向の画像撮像部により得られた前記上下2つの重心座標及び前記X方向及びY方向のカメラレンズの中心位置に基づいて、前記三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、該算出したワイヤ方向より当該ワイヤ傾き角の前記X方向及びY方向成分を夫々算出する角度算出部と、前記各部の処理を制御する制御部と、を備えていることを特徴とする。
本発明は例えば画像撮像部と二値化部以外は、コンピュータのソフトウェアにより制御することが可能である。即ち、画像撮像部はXY方向に光軸が直交するように設置され、光軸の交点に被測定ワイヤを懸垂するようにする。この状態でワイヤの振れ画像を撮像し、その画像を二値化部により二値化してワイヤ領域を検出する。そしてX方向、Y方向のワイヤ画像をコンピュータにより画像処理して各方向のワイヤ振れ角を演算するものである。
【0005】
請求項2は、前記制御部は、前記画像撮像部により取得された前記ワイヤ画像を前記二値化部により二値化し、該二値化部の結果に基づいて前記ワイヤ領域検出部により前記ワイヤ画像の領域と前記上下の画素領域との交差領域を検出して前記重心座標検出部により上下の画像領域の重心座標を求め、当該重心座標に対して光学系による歪補正を行なった後、前記X方向及びY方向の前記画像撮像部より得られた値を用いて前記上下の交差領域の重心座標を前記三次元世界座標系変換部により2つの三次元重心座標に変換し、前記X方向及びY方向の画像撮像部により得られた前記上下2つの重心座標及び前記X方向及びY方向のカメラレンズの中心位置に基づいて、前記三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、該算出したワイヤ方向より当該ワイヤ傾き角の前記X方向及びY方向成分を夫々算出することを特徴とする。
本発明の制御部は、例えばCCDカメラにより構成される画像撮像部により取得されたワイヤ画像を二値化部により二値化し、その結果に基づいてワイヤ領域検出部によりワイヤ画像の領域を取得し、更に画面上の上下に所定の画素領域を設け、ワイヤ画像の領域と所定の画素領域の交差領域を検出して重心座標検出部により上下の画像領域の重心座標を求める。そしてこの重心座標に対して光学系による歪補正を行なった後、X方向及びY方向の画像撮像部より得られた値を用いて上下の交差領域の重心座標を三次元世界座標系変換部により2つの三次元重心座標に変換し、2台のCCDカメラから得られた計4つの重心位置及び2台のCCDカメラレンズ中心位置より、三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、そして三次元世界座標系におけるワイヤ方向より、ワイヤ傾き角のx方向、y方向成分をそれぞれ算出する。
請求項3は、前記画像撮像部は、CCDカメラにより構成されることを特徴とする。
コンピュータにより画像処理を行う場合、各画像が画素に分解されデジタル処理され易い形態が好ましい。その意味では、CCDカメラは撮像したアナログ画像をA/D変換することによりデジタルデータとして処理が可能である。
【0006】
請求項4は、前記画像撮像部は、前記ワイヤ懸垂機構におけるワイヤ取り付け部近傍に配設されることを特徴とする。
画像撮像部をワイヤ取り付け部近傍に配設することにより、どんなサイズの装置環境でも適用しやすくなる。
請求項5は、ワイヤ懸垂機構におけるワイヤの振れ角を検出するために前記制御部を、撮像されたワイヤ画像を所定の閾値により二値化し、該二値の結果に基づいて前記ワイヤ画像の領域を検出するワイヤ領域検出手段、前記撮像された画面全体の上下に所定の画素領域を設け、前記ワイヤ画像の領域と前記上下の画素領域との交差領域を抽出し、当該交差領域の重心座標を求める重心座標検出手段、該重心座標検出手段により検出された上下2つの重心座標に対して前記画像撮像手段の光学系による歪を補正する歪補正手段、前記X方向及びY方向の歪補正手段により夫々の前記上下2つの重心座標を補正後、前記各画像撮像手段より得られた値を用いて前記夫々の上下2つの重心座標を三次元世界座標系に変換する三次元世界座標系変換手段、前記X方向及びY方向の画像撮像部により得られた前記上下2つの重心座標及び前記X方向及びY方向のカメラレンズの中心位置に基づいて、前記三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、該算出したワイヤ方向より当該ワイヤ傾き角の前記X方向及びY方向成分を夫々算出する角度算出手段として機能させることを特徴とする。
制御部は例えばパーソナルコンピュータ(PC)のような情報処理装置により構成される。そしてPCはROM等のメモリに格納されたプログラムに従って制御対象の処理を制御していく。即ち、プログラムは、ワイヤ領域検出手段、重心座標検出手段、歪補正手段、三次元世界座標系変換手段及び角度算出手段として機能させるものである。
請求項6は、請求項5に記載の振れ角検出プログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録したことを特徴とする。
プログラムは一般的にコンピュータが読み取り可能な形式に変換して、可搬型の記憶手段(FDD(登録商標)、CD等)に記憶される。
請求項7は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の振れ角検出装置と、請求項5に記載の振れ角検出プログラムと、水平な二次元平面内に設置されたXYテーブルと、該XYテーブルに設置されたワイヤ巻上げ機構と、前記XYテーブルを駆動する駆動手段と、前記振れ角検出装置により検出された前記ワイヤ巻上げ機構におけるワイヤの振れ角に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
クレーン等の二次元ワイヤ懸垂装置は、ワイヤ巻上げ機構をXYテーブルに設置し、そのXYテーブルをモータ等の駆動手段により駆動する。そしてXYテーブルを駆動するたびにワイヤが振れる。本発明は既存の二次元ワイヤ懸垂装置に振れ角検出装置とそれを制御する振れ角検出プログラムを搭載することにより、検出された振れ角に基づいてワイヤ巻上げ機構を駆動する方向と駆動量を制御手段にフィードバックして、振れ角を抑制するものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、画像撮像部をXY方向に光軸が直交するように設置し、光軸の交点に被測定ワイヤが懸垂する状態でワイヤの振れ画像を撮像し、その画像を二値化部により二値化してワイヤ領域を検出し、X方向、Y方向のワイヤ画像をコンピュータにより画像処理して各方向のワイヤ振れ角を演算するので、ワイヤ懸垂機構のワイヤに負荷を与えることなく、三次元変換された4つの三次元重心座標に基づいて、ワイヤのX方向及びY方向の振れ角度を正確に且つ迅速に求めることができる。
また請求項2では、制御部は、画像撮像部により取得されたワイヤ画像を二値化部により二値化し、その結果に基づいてワイヤ領域検出部によりワイヤ画像の領域を取得し、更に画面上の上下に所定の画素領域を設け、ワイヤ画像の領域と所定の画素領域の交差領域を検出して重心座標検出部により上下の画像領域の重心座標を求める。そしてこの重心座標に対して光学系による歪補正を行なった後、X方向及びY方向の画像撮像部より得られた値を用いて上下の交差領域の重心座標を三次元世界座標系変換部により2つの三次元重心座標に変換し、X方向及びY方向の画像撮像部により得られた上下2つの重心座標及びX方向及びY方向のカメラレンズの中心位置に基づいて、三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、算出したワイヤ方向より当該ワイヤ傾き角のX方向及びY方向成分を夫々算出するので、X方向、Y方向の傾き角度を正確に且つリアルタイムに算出することができる。
また請求項3では、画像撮像部は、CCDカメラにより構成されるので、取得された画像をデジタルデータとして処理が可能となり、コンピュータによる画像処理を行うことができる。
また請求項4では、画像撮像部をワイヤ取り付け部近傍に配設することにより、どんなサイズの装置環境でも適用しやすくなる。
また請求項5では、請求項1と同様の作用効果を奏する。
また請求項6では、振れ角検出プログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録媒体に記録することにより、この記録媒体を持ち運ぶことにより何処でもプログラムを稼動することができる。
また請求項7では、既存の二次元ワイヤ懸垂装置に本発明の振れ角検出装置とそれを制御する振れ角検出プログラムを搭載するので、既存の二次元ワイヤ懸垂装置のワイヤの振れを迅速に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明のワイヤ懸垂機構におけるワイヤの振れ角を検出する振れ角検出装置の機能ブロック図である。この振れ角検出装置100は、図示しないワイヤ懸垂機構のワイヤ画像を撮像するX方向のCCDカメラ(画像撮像部)1と、CCDカメラ1により撮像されたワイヤ画像を所定の閾値により二値化する二値化回路(二値化部)2と、二値化回路2の結果に基づいてワイヤ画像の領域を検出するワイヤ領域検出部3と、CCDカメラ1により撮像された画面全体の上下に所定の画素領域を設け、ワイヤ画像の領域と上下の画素領域との交差領域を抽出し、この交差領域の重心座標を求める重心座標検出部4と、重心座標検出部4により検出された上下2つの重心座標に対してCCDカメラ1のレンズ(光学系)による歪を補正するレンズ歪補正部5と、図示しないワイヤ懸垂機構のワイヤ画像を撮像するY方向のCCDカメラ(画像撮像部)8と、CCDカメラ8により撮像されたワイヤ画像を所定の閾値により二値化する二値化回路(二値化部)9と、二値化回路9の結果に基づいてワイヤ画像の領域を検出するワイヤ領域検出部10と、CCDカメラ8により撮像された画面全体の上下に所定の画素領域を設け、ワイヤ画像の領域と上下の画素領域との交差領域を抽出し、この交差領域の重心座標を求める重心座標検出部11と、重心座標検出部11により検出された上下2つの重心座標に対してCCDカメラ8のレンズ(光学系)による歪を補正するレンズ歪補正部12と、X方向及びY方向のレンズ歪補正部5、12により夫々の上下2つの重心座標を補正後、CCDカメラ1、8より得られた値を用いて夫々の上下2つの重心座標を三次元世界座標系に変換する三次元世界座標系変換部6と、2台のカメラから得られた計4つの重心位置及び2台のカメラレンズ中心位置より、三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、そして三次元世界座標系におけるワイヤ方向より、ワイヤ傾き角のx方向、y方向成分をそれぞれ算出する角度算出部7、13と、各部の処理を制御する制御部14とを備えて構成される。
【0009】
図2は本発明の振れ角検出装置における角度検出センサの要部を示す斜視図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。この角度検出センサ110は、X方向、Y方向に移動する移動テーブル20と、移動テーブル20の固定部21に取り付けられた懸垂ワイヤ22と、移動テーブル20のX軸方向にCCDカメラ1を固定する固定板24と、固定板24に取り付けた基板上に設けた回路基板23と、回路基板23に取り付けたレンズ筒25と、同じく移動テーブル20のY軸方向にCCDカメラ8を固定する固定板27と、固定板27に取り付けた基板上に設けた回路基板29と、回路基板29に取り付けたレンズ筒26とを備えて構成される。尚、固定板24、27は移動テーブル20に垂直に取り付けられ、CCDカメラ1及び8の光軸が直交し、且つその交点が懸垂ワイヤ22の略中心に位置するように調整される。
図3は本発明の振れ角検出装置の動作を説明するフローチャートである。図1を参照して説明する。尚、説明を簡略化するために、X方向の動作について説明し、Y方向の動作については同じ部分は説明を省略する。制御部14は、CCDカメラ1によりX方向のワイヤ画像を取得する(S1)。次に取得されたワイヤ画像を二値化回路2により二値化し(S2)、その結果に基づいてワイヤ領域検出部3により図4のワイヤ画像の領域38を検出する(S3)。次に図4の上下の画素領域32、33との交差領域31、34を検出して重心座標検出部4により上下の画像領域31、34の重心座標30、35を求め(S4)、当該重心座標30、35に対してレンズ歪補正部5によりレンズによる歪補正を行なう(S5)。ここまでY方向の動作も同様である(S11〜S15)。尚、図4ではX方向及びY方向とも同じ符号を使用して説明する。
次にX方向及びY方向のCCDカメラ1及び8より得られた値を用いて上下の交差領域31、34の重心座標30、35を三次元世界座標系変換部6により夫々2つの三次元重心座標に変換し(S6)、2台のカメラから得られた計4つの重心位置及び2台のカメラレンズ中心位置より、三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出する(S7)。そして三次元世界座標系におけるワイヤ方向より、ワイヤ傾き角のx方向、y方向成分をそれぞれ算出する(S8)。
【0010】
図5は本発明の振れ角検出装置におけるワイヤ角度測定原理を説明する模式図である。図6は図2の本発明の角度検出センサの概要を示す図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。この角度検出センサ110は、2つのCCDカメラ1、8を用い、X軸、Y軸のセンサ座標は水平面に平行定義し、Z軸はワイヤ22に沿って下向きに定義した。CCDカメラ1、8は、X、Y方向に設置した。そしてそれぞれのカメラから同時に得られたワイヤ22の画像より振れ角を測定する。
図5を参照して振れ角測定原理について説明する。2つのカメラ座標系のΣ1とΣ2はレンズの中心に固定され、Z軸はレンズの光軸と重なっている。また、Σimi(i=1,2)はCCD画像面である。ワイヤ22の画像はレンズの光軸に対して垂直にCCD画像面に映し出されている。取得した画像点
(i=1,2)
はピクセルで表され、画像の中心である
は光軸とCCD画像面の交差する点である。
またワイヤの角度を求めるための方法として、(1)ハフ変換を利用した方法、(2)画像中のワイヤ上端と下端の二点のみを求め、これらを結んだ線でワイヤを近似する方法の二つを検討した。(1)の方法ではハフ変換自体に計算処理が多くかかる上、画像全体のレンズ収差を予め補正しておく必要がある。それに対し(2)の方法は上下端の二点の計測とその二点のみを補正すればよいため、(1)と比べ処理がはるかに簡単となる。また、事前の計測により(1)と(2)の方法に精度上の違いは見られなかったことから(2)の方法を採用した。
【0011】
図4に示すように、取得画像に対して二値化を行い、ワイヤエリア38を検出する(領域1)。それとは別に画面全体の上下20ピクセルをとる(領域2:符号32、33)。領域1と領域2の交差する領域31、34を抽出し、その重心座標
(i=1,2 j=u,l)を求める。しかし、これらの座標はデジタル座標であるので、式(1)より画像の中心からの距離
を導出する。
…(1)
ku、kvは、カメラ1・2における画素の横(列)と縦(行)の長さ[m]である。
画像にはレンズの歪があるので式(2)を用いて歪を補正する。
…(2)
ただし
は補正後の画像中心からの距離になり、kはキャリブレーションを行った際に求まる内部パラメータである。
【0012】
得られた上下端の2点とカメラ座標の原点との関係より式(3)のようにベクトルiaとibをΣiのカメラ座標系に表すことができる。
…(3)
fiはレンズの焦点距離である。この2つのベクトルの外積と内積が0となる新たなベクトル
を求めることで、平面ベクトルを式(4)を用いて算出する。
…(4)
しかし、
はカメラ座標系Σiの値であるから式(5)を用いてセンサ座標系Σsに変換する。
…(5)
と
はカメラ外部パラメータであり、センサ座標系からカメラ座標系へのロール・ピッチ・ヨーを用いた回転行列と並進ベクトルである。
以上より求めた2つの平面が交わる交線のベクトルを
とすると、求めるワイヤ振れ角は
…(6)
としてxz、yz平面上でのワイヤ振れ角を求めることができる。
【0013】
図7は本発明の振れ角検出装置を備えた二次元ワイヤ懸垂機構のモデル図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。水平な二次元平面内に設置されたXYテーブル44上にワイヤ巻上げ機構を取り付け、その近傍にカメラ1、8が設置されている。移動テーブル20はボールネジ40、41により駆動され、ネジ40、41を駆動するそれぞれのモータ42、43は、コンピュータからのアナログ電圧指令により速度制御される。制御系の設計に際しては、懸垂物の振れは小さいものとし、XY方向それぞれ独立に線形のバネ・ダンパモデルにより近似した。図8は制御システムの運動モデルを示す図である。懸垂物の振れは小さいものとし、XY方向それぞれ独立に線形近似した。移動テーブルの位置をx、ワイヤの振れ角をθx、テーブルの等価質量をMx、懸垂物の質量をm、ワイヤの長さをl、重力加速度をgとする。移動テーブルはアクチュエータからFxの力をもらって運動を行なう。重力と逆向きの方向をz軸とするxz平面上で水平移動・回転運動するものとする。Y方向の運動モデルも同様に考える。
【0014】
次に目標位値に定常偏差なくXYテーブル44を追従させるために1型のサーボシステムを設計する。制御系が積分動作を含むようにし、また制御対象の状態変数
からのフィードバックゲインベクトルを
とし、
を制御入力とする閉ループシステムを構成する。また制御系に積分器を導入することで、等加速度運動や定常的な風などの外乱が存在しても、定常偏差なく目標に追従可能である。これに伴い新たな状態変数
を導入し、状態変数
とし、状態方程式を式(7)に、ブロック線図を図9に示す。
は目標入力、
は外乱である。
…(7)
【0015】
ここで係数行列を以下に示す。
【0016】
次に最適フィードバック制御を行なうために、適当な評価関数を用い、それを最小にするようにフィードバック行列を決定する。
制御対象
…(8)
評価関数
但し、
は対角行列である。以上により評価関数
を最小とする最適制御入力
を求める。式(8)の状態方程式にそれぞれのパラメータを代入し、シミュレーションでの応答波形を見る。各パラメータを図10に示す。
X方向として、
評価関数 r=0.0008
Q=[0.00001 8 0.001 12 220]
極[-1.271±1.696j -3.916±3.469j -2.9376]
f=[625.8 373.1 -516.1 -77.65] K=524.4
Y方向として、
評価関数 r=0.0008
Q=[0.001 0.2 0.01 0.2 80]
極[-1.659±3.481j -3.378±1.743j -14.79]
f=[239.8 90.91 -89.82 3.026] K=316.2
【0017】
図11は振り子を真下にぶら下げた状態からX方向に0.04[m]、Y方向に0.04[m]動かし、固定した状態から手を離したと同時に制御指令を送ったときのXY方向のシミュレーション応答結果を示す図である。図11(a)はX方向の応答を示し、符号50が移動テーブル20の位置、符号51が移動テーブル20の速度、符号52が懸垂物45の位置、符号53が懸垂物45の速度を表す。図11(b)はY方向の応答を示し、符号55が移動テーブル20の位置、符号56が移動テーブル20の速度、符号57が懸垂物45の位置、符号58が懸垂物45の速度を表す。縦軸に応答、横軸に時間(秒)を示す。この図から解るように、制御サンプリングが31[ms]とかなり長いため、シミュレーションで応答を確認しながら適当と思われるゲインを決定した。その結果、XY方向とも約4[s]で0に収束している。移動テーブル20の可動範囲が実験装置の可動範囲内に収まっていることや、テーブルの最大速度がモータの実現可能な速度であり、速応性・安定性の面からも妥当な設計ができている。実験ではこのフィードバックゲインを用いる。
図12は本発明の振動制御実験装置の構成を示す図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。但し、Y方向の機構は省略している。この振動制御実験装置120は、移動テーブル20をX方向に移動するDCサーボモータ42と、CCDカメラ1、8のワイヤ画像を処理するキャプチャボード60と、画像処理された画像データに基づいて振れ角を演算するPC61と、演算結果をD/A変換したり、エンコーダ64の信号をカウントするI/Fボード62と、DCサーボモータ42を駆動する電力を生成するモータドライバ63と、DCサーボモータ42の回転位置を知らせるエンコーダ64とを備えて構成される。
図13は図12の振動制御実験装置の仕様を示す図である。
【0018】
次に図12を参照して振動制御実験装置120の実験の流れを説明する。まず、懸垂物45を所定の目標位置に搬送するために、I/Fボード62からDCサーボモータ42へアナログ指令電圧を印加して移動テーブル20を動かす。それにより、懸垂物45に慣性力が働き懸垂物45が振動する。それによりワイヤ22が振れて、その画像をCCDカメラ1、8を用いて撮像し、キャプチャボード60を介してPC61により角度と角速度を求める。次にエンコーダ64からI/Fボード62に現在の位置情報を送り、そのカウント値を用いて移動テーブル20の位置と速度を求める。次にワイヤ22の角度と角速度、移動テーブル20の位置と速度にそれぞれ図11のシミュレーションより求めたフィードバックゲインを掛け、DCサーボモータ42に印加する電圧値を計算する。その電圧値をI/Fボード62からDCサーボモータ42に指令電圧として印加する。そしてワイヤ22の角度と角速度、移動テーブル20の位置と速度が全てゼロになるまで繰り返す。
図14は振り子を真下にぶら下げた状態からX方向に0.04[m]、Y方向に0.04[m]動かし、固定した状態から手を離したと同時に制御指令を送ったときのXY方向の実験結果を示す図である。図14(a)はX方向の応答を示し、符号70が移動テーブル20の位置、符号71が移動テーブル20の速度、符号72が懸垂物45の位置、符号73が懸垂物45の速度を表す。図14(b)はY方向の応答を示し、符号75が移動テーブル20の位置、符号76が移動テーブル20の速度、符号77が懸垂物45の位置、符号78が懸垂物45の速度を表す。縦軸に応答、横軸に時間(秒)を示す。図14(c)はそのときの懸垂物45の動きを示す図である。符号80はX方向の動き、符号81はY方向の動きを表す。この図から解るように、XY方向とも約5秒で一定範囲内に収束している。ただし収束後、懸垂物45は約3mmの範囲内で振動し続け、これは約プラスマイナス0.28(deg)内の振動である。カメラ分解能から考えると、ほぼシミュレーションどおりである。
【0019】
以上の通り本発明によれば、CCDカメラ1、8をXY方向に光軸が直交するように設置し、光軸の交点に被測定ワイヤ22が懸垂する状態でワイヤ22の振れ画像を撮像し、その画像を二値化回路2、9により二値化してワイヤ領域38を検出し、X方向、Y方向のワイヤ画像をコンピュータにより画像処理して各方向のワイヤ振れ角を演算するので、ワイヤ懸垂機構のワイヤに負荷を与えることなく、三次元変換された4つの三次元重心座標に基づいて、ワイヤのX方向及びY方向の振れ角度を正確に且つ迅速に求めることができる。
また、制御部14は、CCDカメラ1、8により取得されたワイヤ画像を二値化回路2、9により二値化し、その結果に基づいてワイヤ領域検出部3、10によりワイヤ画像の領域を取得し、更に画面上の上下に所定の画素領域32、33を設け、ワイヤ画像の領域38と所定の画素領域32、33の交差領域31、34を検出して重心座標検出部4、11により上下の画像領域31、34の重心座標30、35を求める。そしてこの重心座標30、35に対して光学系による歪補正を行なった後、X方向及びY方向のCCDカメラ1、8より得られた値を用いて上下の交差領域31、34の重心座標を三次元世界座標系変換部6により2つの三次元重心座標に変換し、2台のカメラから得られた計4つの重心位置及び2台のカメラレンズ中心位置より、三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、そして三次元世界座標系におけるワイヤ方向より、ワイヤ傾き角のx方向、y方向成分をそれぞれ算出する角度算出部7、13により算出するので、X方向、Y方向の傾き角度を正確に且つリアルタイムに算出することができる。
また、カメラ1、8は、CCDカメラにより構成されるので、取得された画像をデジタルデータとして処理が可能となり、コンピュータによる画像処理を行うことができる。
また、CCDカメラ1、8をワイヤ取り付け部21近傍に配設することにより、どんなサイズの装置環境でも適用しやすくなる。
また、振れ角検出プログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録媒体に記録することにより、この記録媒体を持ち運ぶことにより何処でもプログラムを稼動することができる。
【0020】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されたものではない。上述した実施形態の振れ角検出装置を構成する各機能をそれぞれプログラム化し、あらかじめCD−ROM等の記録媒体に書き込んでおき、コンピュータに搭載したCD−ROMドライブのような媒体駆動装置にこのCD−ROM等を装着して、これらのプログラムをコンピュータのメモリあるいは記憶装置に格納し、それを実行することによって、本発明の目的が達成されることは言うまでもない。
この場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が上述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体も本発明を構成することになる。
なお、プログラムを格納する記録媒体としては半導体媒体(例えば、ROM、不揮発性メモリカード等)、光媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD等)、磁気媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等のいずれであってもよい。
また、ロードしたプログラムを実行することにより上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、オペレーティングシステムあるいは他のアプリケーションプログラム等と共同して処理することによって上述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
市場に流通させる場合には、可搬型の記録媒体にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等を介して接続されたサーバコンピュータの記憶装置にプログラムを格納しておき、インターネット等を通じて他のコンピュータに転送することもできる。この場合、このサーバコンピュータの記憶装置も本発明の記録媒体に含まれる。
なお、コンピュータでは、可搬型の記録媒体上のプログラム、または転送されてくるプログラムを、コンピュータに接続した記録媒体にインストールし、そのインストールされたプログラムを実行することによって上述した実施形態の機能が実現される。
また、既存の二次元ワイヤ懸垂装置120に本発明の振れ角検出装置100とそれを制御する振れ角検出プログラムを搭載するので、既存の二次元ワイヤ懸垂装置のワイヤの振れを迅速に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のワイヤ懸垂機構におけるワイヤの振れ角を検出する振れ角検出装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明の振れ角検出装置における角度検出センサの要部を示す斜視図である。
【図3】本発明の振れ角検出装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】ワイヤ画像における領域1と領域2を説明する図である。
【図5】本発明の振れ角検出装置におけるワイヤ角度測定原理を説明する模式図である。
【図6】本発明の角度検出センサの概要を示す図である。
【図7】本発明の振れ角検出装置を備えた二次元ワイヤ懸垂機構のモデル図である。
【図8】制御システムの運動モデルを示す図である。
【図9】固有値が安定となるよう最適レギュレータを組んで、系全体の安定化を図ったブロック線図である。
【図10】各パラメータを示す図である。
【図11】振り子を真下にぶら下げた状態からX方向に0.04[m]、Y方向に0.04[m]動かし、固定した状態から手を離したと同時に制御指令を送ったときのXY方向のシミュレーション応答結果を示す図である。
【図12】本発明の振動制御実験装置の構成を示す図である。
【図13】図11の振動制御実験装置の仕様を示す図である。
【図14】振り子を真下にぶら下げた状態からX方向に0.04[m]、Y方向に0.04[m]動かし、固定した状態から手を離したと同時に制御指令を送ったときのXY方向の実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1、8 CCDカメラ、2、9 二値化回路、3、10 ワイヤ領域検出部、4、11 重心座標検出部、5、12 レンズ歪補正部、6 三次元世界座標系変換部、7、13 角度算出部、14 制御部、100 振れ角検出装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、振れ角検出装置及び二次元ワイヤ懸垂装置に関し、さらに詳しくは、ワイヤ懸垂装置におけるワイヤの振れ角をCCDカメラにより検出する振れ角検出技術と、それを応用した二次元ワイヤ懸垂装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーンをはじめとしたワイヤ懸垂機構は、水平な二次元平面内に設置されたXYテーブルと、このXYテーブルに設置されたワイヤ巻上げ機構と、XYテーブルを駆動する駆動手段と、ワイヤ巻上げ機構により支持されたワイヤにより懸垂された懸垂物とを備えている。例えば、天井走行クレーンやコンテナクレーンのようにワイヤによって懸垂物を支持しつつ移動させるワイヤ懸垂機構を用いた搬送形態は、高低差のある区間や、長い搬送距離を移動するに際して大変有益である。ただし、ワイヤによって吊り下げられた懸垂物は振り子運動を行うため、懸垂物を位置決め点で静止させて十分な位置精度を確保するには熟練オペレータの高いスキルが求められる。また、懸垂物の位置決め精度をより高める必要のある建設現場などでは、人的な補助による振れ止め作業が不可欠となっている。そこで、従来から天井走行クレーンやコンテナクレーンなどの設置式クレーンによる自動振れ止めのための手法に関しては、これまでに数多くの研究成果が発表されている。
例えば非特許文献1には、運動モデルを利用して振動を発生しないフィードフォワード制御指令を求めるものが報告されている。
また、懸垂物の振れ角測定にはいくつかの方法が提案されている。例えば、非特許文献2には、自由に回転できるスリットを有した棒によりワイヤを挟みこみ、ワイヤの振れと共に運動する棒の動きをロータリエンコーダで検出する方法が提案されている。また他の方法として、平行板ばねを二枚組み合わせて片側に歪ゲージを貼り、懸垂物が振動することにより発生するワイヤ振れ角を利用して板ばねを撓ませ、その撓みを歪ゲージで検出する方法などがある。
またレーザ光源とCCDカメラを用いて計測する方法もあるが、この方法は懸垂物に応じた吊具に画像からの角度検出の際に目印となるレーザ光源を設置しているため、懸垂物の変更が容易でない。
【非特許文献1】三好、寺嶋、森田“時変振動機構に対する制振フィードフォワード制御入力の導出とクレーンへの応用”,日本機械学会論文集(C編),Vol.64, No.624(1998), pp75-82
【非特許文献2】N.Yanai, M.Yamamoto and A.Mohri:“Feedback Control for Wire-suspended Mechanism with Exact Linearization”, Proc.2002 IROS, Vol.3, pp2213-2218
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら非特許文献1に記載された方法は、測定不可能な外乱や制御対象が不正確さを含んでいる場合などには対応できない。特に風など大きな外乱が想定される屋外での使用に際しては、フィードバック制御が不可欠となり、フィードバック制御を実現するには懸垂物の振れ角を測定することが不可欠である。
また非特許文献2の方法は、既存のものにワイヤの振れと共に運動する棒を取付ける際、シンプルな構造ゆえに部品数も少なく容易に取付けることができるが、棒のダイナミクスを新たに考慮に入れなくてはならず、フィードバック時の高周波成分を計測するには十分ではないと考えられ、高周波にノイズがのると振動制御が不安定になるなどの問題点も残っている。
本発明は、かかる課題に鑑み、画像処理を用いてワイヤ振れ角測定を行なうことにより、ワイヤ懸垂機構のワイヤに負荷を与えることなく、三次元変換された2つの三次元重心座標を結んだ直線の傾きに基づいて、ワイヤのX方向及びY方向の振れ角度を正確に且つ迅速に求めることができる振れ角検出装置を提供することを目的とする。
また他の目的は、上記振れ角検出装置を既存の二次元ワイヤ懸垂装置に備えることにより、ビジュアルフィードバック制御システムの構築を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、ワイヤ懸垂手段と該ワイヤ懸垂手段により支持されたワイヤにより懸垂された懸垂物とを備えたワイヤ懸垂機構におけるワイヤの振れ角を検出する振れ角検出装置において、前記ワイヤ懸垂機構のワイヤ画像を撮像する画像撮像部と、該画像撮像部により撮像されたワイヤ画像を所定の閾値により二値化する二値化部と、該二値化部の結果に基づいて前記ワイヤ画像の領域を検出するワイヤ領域検出部と、前記画像撮像部により撮像された画面全体の上下に所定の画素領域を設け、前記ワイヤ画像の領域と前記上下の画素領域との交差領域を抽出し、当該交差領域の重心座標を求める重心座標検出部と、該重心座標検出部により検出された上下2つの重心座標に対して前記画像撮像部の光学系による歪を補正する歪補正部と、をX方向及びY方向に夫々備え、前記X方向及びY方向の歪補正部により夫々の前記上下2つの重心座標を補正後、前記各画像撮像部より得られた値を用いて前記夫々の上下2つの重心座標を三次元世界座標系に変換する三次元世界座標系変換部と、前記X方向及びY方向の画像撮像部により得られた前記上下2つの重心座標及び前記X方向及びY方向のカメラレンズの中心位置に基づいて、前記三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、該算出したワイヤ方向より当該ワイヤ傾き角の前記X方向及びY方向成分を夫々算出する角度算出部と、前記各部の処理を制御する制御部と、を備えていることを特徴とする。
本発明は例えば画像撮像部と二値化部以外は、コンピュータのソフトウェアにより制御することが可能である。即ち、画像撮像部はXY方向に光軸が直交するように設置され、光軸の交点に被測定ワイヤを懸垂するようにする。この状態でワイヤの振れ画像を撮像し、その画像を二値化部により二値化してワイヤ領域を検出する。そしてX方向、Y方向のワイヤ画像をコンピュータにより画像処理して各方向のワイヤ振れ角を演算するものである。
【0005】
請求項2は、前記制御部は、前記画像撮像部により取得された前記ワイヤ画像を前記二値化部により二値化し、該二値化部の結果に基づいて前記ワイヤ領域検出部により前記ワイヤ画像の領域と前記上下の画素領域との交差領域を検出して前記重心座標検出部により上下の画像領域の重心座標を求め、当該重心座標に対して光学系による歪補正を行なった後、前記X方向及びY方向の前記画像撮像部より得られた値を用いて前記上下の交差領域の重心座標を前記三次元世界座標系変換部により2つの三次元重心座標に変換し、前記X方向及びY方向の画像撮像部により得られた前記上下2つの重心座標及び前記X方向及びY方向のカメラレンズの中心位置に基づいて、前記三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、該算出したワイヤ方向より当該ワイヤ傾き角の前記X方向及びY方向成分を夫々算出することを特徴とする。
本発明の制御部は、例えばCCDカメラにより構成される画像撮像部により取得されたワイヤ画像を二値化部により二値化し、その結果に基づいてワイヤ領域検出部によりワイヤ画像の領域を取得し、更に画面上の上下に所定の画素領域を設け、ワイヤ画像の領域と所定の画素領域の交差領域を検出して重心座標検出部により上下の画像領域の重心座標を求める。そしてこの重心座標に対して光学系による歪補正を行なった後、X方向及びY方向の画像撮像部より得られた値を用いて上下の交差領域の重心座標を三次元世界座標系変換部により2つの三次元重心座標に変換し、2台のCCDカメラから得られた計4つの重心位置及び2台のCCDカメラレンズ中心位置より、三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、そして三次元世界座標系におけるワイヤ方向より、ワイヤ傾き角のx方向、y方向成分をそれぞれ算出する。
請求項3は、前記画像撮像部は、CCDカメラにより構成されることを特徴とする。
コンピュータにより画像処理を行う場合、各画像が画素に分解されデジタル処理され易い形態が好ましい。その意味では、CCDカメラは撮像したアナログ画像をA/D変換することによりデジタルデータとして処理が可能である。
【0006】
請求項4は、前記画像撮像部は、前記ワイヤ懸垂機構におけるワイヤ取り付け部近傍に配設されることを特徴とする。
画像撮像部をワイヤ取り付け部近傍に配設することにより、どんなサイズの装置環境でも適用しやすくなる。
請求項5は、ワイヤ懸垂機構におけるワイヤの振れ角を検出するために前記制御部を、撮像されたワイヤ画像を所定の閾値により二値化し、該二値の結果に基づいて前記ワイヤ画像の領域を検出するワイヤ領域検出手段、前記撮像された画面全体の上下に所定の画素領域を設け、前記ワイヤ画像の領域と前記上下の画素領域との交差領域を抽出し、当該交差領域の重心座標を求める重心座標検出手段、該重心座標検出手段により検出された上下2つの重心座標に対して前記画像撮像手段の光学系による歪を補正する歪補正手段、前記X方向及びY方向の歪補正手段により夫々の前記上下2つの重心座標を補正後、前記各画像撮像手段より得られた値を用いて前記夫々の上下2つの重心座標を三次元世界座標系に変換する三次元世界座標系変換手段、前記X方向及びY方向の画像撮像部により得られた前記上下2つの重心座標及び前記X方向及びY方向のカメラレンズの中心位置に基づいて、前記三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、該算出したワイヤ方向より当該ワイヤ傾き角の前記X方向及びY方向成分を夫々算出する角度算出手段として機能させることを特徴とする。
制御部は例えばパーソナルコンピュータ(PC)のような情報処理装置により構成される。そしてPCはROM等のメモリに格納されたプログラムに従って制御対象の処理を制御していく。即ち、プログラムは、ワイヤ領域検出手段、重心座標検出手段、歪補正手段、三次元世界座標系変換手段及び角度算出手段として機能させるものである。
請求項6は、請求項5に記載の振れ角検出プログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録したことを特徴とする。
プログラムは一般的にコンピュータが読み取り可能な形式に変換して、可搬型の記憶手段(FDD(登録商標)、CD等)に記憶される。
請求項7は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の振れ角検出装置と、請求項5に記載の振れ角検出プログラムと、水平な二次元平面内に設置されたXYテーブルと、該XYテーブルに設置されたワイヤ巻上げ機構と、前記XYテーブルを駆動する駆動手段と、前記振れ角検出装置により検出された前記ワイヤ巻上げ機構におけるワイヤの振れ角に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
クレーン等の二次元ワイヤ懸垂装置は、ワイヤ巻上げ機構をXYテーブルに設置し、そのXYテーブルをモータ等の駆動手段により駆動する。そしてXYテーブルを駆動するたびにワイヤが振れる。本発明は既存の二次元ワイヤ懸垂装置に振れ角検出装置とそれを制御する振れ角検出プログラムを搭載することにより、検出された振れ角に基づいてワイヤ巻上げ機構を駆動する方向と駆動量を制御手段にフィードバックして、振れ角を抑制するものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、画像撮像部をXY方向に光軸が直交するように設置し、光軸の交点に被測定ワイヤが懸垂する状態でワイヤの振れ画像を撮像し、その画像を二値化部により二値化してワイヤ領域を検出し、X方向、Y方向のワイヤ画像をコンピュータにより画像処理して各方向のワイヤ振れ角を演算するので、ワイヤ懸垂機構のワイヤに負荷を与えることなく、三次元変換された4つの三次元重心座標に基づいて、ワイヤのX方向及びY方向の振れ角度を正確に且つ迅速に求めることができる。
また請求項2では、制御部は、画像撮像部により取得されたワイヤ画像を二値化部により二値化し、その結果に基づいてワイヤ領域検出部によりワイヤ画像の領域を取得し、更に画面上の上下に所定の画素領域を設け、ワイヤ画像の領域と所定の画素領域の交差領域を検出して重心座標検出部により上下の画像領域の重心座標を求める。そしてこの重心座標に対して光学系による歪補正を行なった後、X方向及びY方向の画像撮像部より得られた値を用いて上下の交差領域の重心座標を三次元世界座標系変換部により2つの三次元重心座標に変換し、X方向及びY方向の画像撮像部により得られた上下2つの重心座標及びX方向及びY方向のカメラレンズの中心位置に基づいて、三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、算出したワイヤ方向より当該ワイヤ傾き角のX方向及びY方向成分を夫々算出するので、X方向、Y方向の傾き角度を正確に且つリアルタイムに算出することができる。
また請求項3では、画像撮像部は、CCDカメラにより構成されるので、取得された画像をデジタルデータとして処理が可能となり、コンピュータによる画像処理を行うことができる。
また請求項4では、画像撮像部をワイヤ取り付け部近傍に配設することにより、どんなサイズの装置環境でも適用しやすくなる。
また請求項5では、請求項1と同様の作用効果を奏する。
また請求項6では、振れ角検出プログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録媒体に記録することにより、この記録媒体を持ち運ぶことにより何処でもプログラムを稼動することができる。
また請求項7では、既存の二次元ワイヤ懸垂装置に本発明の振れ角検出装置とそれを制御する振れ角検出プログラムを搭載するので、既存の二次元ワイヤ懸垂装置のワイヤの振れを迅速に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明のワイヤ懸垂機構におけるワイヤの振れ角を検出する振れ角検出装置の機能ブロック図である。この振れ角検出装置100は、図示しないワイヤ懸垂機構のワイヤ画像を撮像するX方向のCCDカメラ(画像撮像部)1と、CCDカメラ1により撮像されたワイヤ画像を所定の閾値により二値化する二値化回路(二値化部)2と、二値化回路2の結果に基づいてワイヤ画像の領域を検出するワイヤ領域検出部3と、CCDカメラ1により撮像された画面全体の上下に所定の画素領域を設け、ワイヤ画像の領域と上下の画素領域との交差領域を抽出し、この交差領域の重心座標を求める重心座標検出部4と、重心座標検出部4により検出された上下2つの重心座標に対してCCDカメラ1のレンズ(光学系)による歪を補正するレンズ歪補正部5と、図示しないワイヤ懸垂機構のワイヤ画像を撮像するY方向のCCDカメラ(画像撮像部)8と、CCDカメラ8により撮像されたワイヤ画像を所定の閾値により二値化する二値化回路(二値化部)9と、二値化回路9の結果に基づいてワイヤ画像の領域を検出するワイヤ領域検出部10と、CCDカメラ8により撮像された画面全体の上下に所定の画素領域を設け、ワイヤ画像の領域と上下の画素領域との交差領域を抽出し、この交差領域の重心座標を求める重心座標検出部11と、重心座標検出部11により検出された上下2つの重心座標に対してCCDカメラ8のレンズ(光学系)による歪を補正するレンズ歪補正部12と、X方向及びY方向のレンズ歪補正部5、12により夫々の上下2つの重心座標を補正後、CCDカメラ1、8より得られた値を用いて夫々の上下2つの重心座標を三次元世界座標系に変換する三次元世界座標系変換部6と、2台のカメラから得られた計4つの重心位置及び2台のカメラレンズ中心位置より、三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、そして三次元世界座標系におけるワイヤ方向より、ワイヤ傾き角のx方向、y方向成分をそれぞれ算出する角度算出部7、13と、各部の処理を制御する制御部14とを備えて構成される。
【0009】
図2は本発明の振れ角検出装置における角度検出センサの要部を示す斜視図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。この角度検出センサ110は、X方向、Y方向に移動する移動テーブル20と、移動テーブル20の固定部21に取り付けられた懸垂ワイヤ22と、移動テーブル20のX軸方向にCCDカメラ1を固定する固定板24と、固定板24に取り付けた基板上に設けた回路基板23と、回路基板23に取り付けたレンズ筒25と、同じく移動テーブル20のY軸方向にCCDカメラ8を固定する固定板27と、固定板27に取り付けた基板上に設けた回路基板29と、回路基板29に取り付けたレンズ筒26とを備えて構成される。尚、固定板24、27は移動テーブル20に垂直に取り付けられ、CCDカメラ1及び8の光軸が直交し、且つその交点が懸垂ワイヤ22の略中心に位置するように調整される。
図3は本発明の振れ角検出装置の動作を説明するフローチャートである。図1を参照して説明する。尚、説明を簡略化するために、X方向の動作について説明し、Y方向の動作については同じ部分は説明を省略する。制御部14は、CCDカメラ1によりX方向のワイヤ画像を取得する(S1)。次に取得されたワイヤ画像を二値化回路2により二値化し(S2)、その結果に基づいてワイヤ領域検出部3により図4のワイヤ画像の領域38を検出する(S3)。次に図4の上下の画素領域32、33との交差領域31、34を検出して重心座標検出部4により上下の画像領域31、34の重心座標30、35を求め(S4)、当該重心座標30、35に対してレンズ歪補正部5によりレンズによる歪補正を行なう(S5)。ここまでY方向の動作も同様である(S11〜S15)。尚、図4ではX方向及びY方向とも同じ符号を使用して説明する。
次にX方向及びY方向のCCDカメラ1及び8より得られた値を用いて上下の交差領域31、34の重心座標30、35を三次元世界座標系変換部6により夫々2つの三次元重心座標に変換し(S6)、2台のカメラから得られた計4つの重心位置及び2台のカメラレンズ中心位置より、三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出する(S7)。そして三次元世界座標系におけるワイヤ方向より、ワイヤ傾き角のx方向、y方向成分をそれぞれ算出する(S8)。
【0010】
図5は本発明の振れ角検出装置におけるワイヤ角度測定原理を説明する模式図である。図6は図2の本発明の角度検出センサの概要を示す図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。この角度検出センサ110は、2つのCCDカメラ1、8を用い、X軸、Y軸のセンサ座標は水平面に平行定義し、Z軸はワイヤ22に沿って下向きに定義した。CCDカメラ1、8は、X、Y方向に設置した。そしてそれぞれのカメラから同時に得られたワイヤ22の画像より振れ角を測定する。
図5を参照して振れ角測定原理について説明する。2つのカメラ座標系のΣ1とΣ2はレンズの中心に固定され、Z軸はレンズの光軸と重なっている。また、Σimi(i=1,2)はCCD画像面である。ワイヤ22の画像はレンズの光軸に対して垂直にCCD画像面に映し出されている。取得した画像点
(i=1,2)
はピクセルで表され、画像の中心である
は光軸とCCD画像面の交差する点である。
またワイヤの角度を求めるための方法として、(1)ハフ変換を利用した方法、(2)画像中のワイヤ上端と下端の二点のみを求め、これらを結んだ線でワイヤを近似する方法の二つを検討した。(1)の方法ではハフ変換自体に計算処理が多くかかる上、画像全体のレンズ収差を予め補正しておく必要がある。それに対し(2)の方法は上下端の二点の計測とその二点のみを補正すればよいため、(1)と比べ処理がはるかに簡単となる。また、事前の計測により(1)と(2)の方法に精度上の違いは見られなかったことから(2)の方法を採用した。
【0011】
図4に示すように、取得画像に対して二値化を行い、ワイヤエリア38を検出する(領域1)。それとは別に画面全体の上下20ピクセルをとる(領域2:符号32、33)。領域1と領域2の交差する領域31、34を抽出し、その重心座標
(i=1,2 j=u,l)を求める。しかし、これらの座標はデジタル座標であるので、式(1)より画像の中心からの距離
を導出する。
…(1)
ku、kvは、カメラ1・2における画素の横(列)と縦(行)の長さ[m]である。
画像にはレンズの歪があるので式(2)を用いて歪を補正する。
…(2)
ただし
は補正後の画像中心からの距離になり、kはキャリブレーションを行った際に求まる内部パラメータである。
【0012】
得られた上下端の2点とカメラ座標の原点との関係より式(3)のようにベクトルiaとibをΣiのカメラ座標系に表すことができる。
…(3)
fiはレンズの焦点距離である。この2つのベクトルの外積と内積が0となる新たなベクトル
を求めることで、平面ベクトルを式(4)を用いて算出する。
…(4)
しかし、
はカメラ座標系Σiの値であるから式(5)を用いてセンサ座標系Σsに変換する。
…(5)
と
はカメラ外部パラメータであり、センサ座標系からカメラ座標系へのロール・ピッチ・ヨーを用いた回転行列と並進ベクトルである。
以上より求めた2つの平面が交わる交線のベクトルを
とすると、求めるワイヤ振れ角は
…(6)
としてxz、yz平面上でのワイヤ振れ角を求めることができる。
【0013】
図7は本発明の振れ角検出装置を備えた二次元ワイヤ懸垂機構のモデル図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。水平な二次元平面内に設置されたXYテーブル44上にワイヤ巻上げ機構を取り付け、その近傍にカメラ1、8が設置されている。移動テーブル20はボールネジ40、41により駆動され、ネジ40、41を駆動するそれぞれのモータ42、43は、コンピュータからのアナログ電圧指令により速度制御される。制御系の設計に際しては、懸垂物の振れは小さいものとし、XY方向それぞれ独立に線形のバネ・ダンパモデルにより近似した。図8は制御システムの運動モデルを示す図である。懸垂物の振れは小さいものとし、XY方向それぞれ独立に線形近似した。移動テーブルの位置をx、ワイヤの振れ角をθx、テーブルの等価質量をMx、懸垂物の質量をm、ワイヤの長さをl、重力加速度をgとする。移動テーブルはアクチュエータからFxの力をもらって運動を行なう。重力と逆向きの方向をz軸とするxz平面上で水平移動・回転運動するものとする。Y方向の運動モデルも同様に考える。
【0014】
次に目標位値に定常偏差なくXYテーブル44を追従させるために1型のサーボシステムを設計する。制御系が積分動作を含むようにし、また制御対象の状態変数
からのフィードバックゲインベクトルを
とし、
を制御入力とする閉ループシステムを構成する。また制御系に積分器を導入することで、等加速度運動や定常的な風などの外乱が存在しても、定常偏差なく目標に追従可能である。これに伴い新たな状態変数
を導入し、状態変数
とし、状態方程式を式(7)に、ブロック線図を図9に示す。
は目標入力、
は外乱である。
…(7)
【0015】
ここで係数行列を以下に示す。
【0016】
次に最適フィードバック制御を行なうために、適当な評価関数を用い、それを最小にするようにフィードバック行列を決定する。
制御対象
…(8)
評価関数
但し、
は対角行列である。以上により評価関数
を最小とする最適制御入力
を求める。式(8)の状態方程式にそれぞれのパラメータを代入し、シミュレーションでの応答波形を見る。各パラメータを図10に示す。
X方向として、
評価関数 r=0.0008
Q=[0.00001 8 0.001 12 220]
極[-1.271±1.696j -3.916±3.469j -2.9376]
f=[625.8 373.1 -516.1 -77.65] K=524.4
Y方向として、
評価関数 r=0.0008
Q=[0.001 0.2 0.01 0.2 80]
極[-1.659±3.481j -3.378±1.743j -14.79]
f=[239.8 90.91 -89.82 3.026] K=316.2
【0017】
図11は振り子を真下にぶら下げた状態からX方向に0.04[m]、Y方向に0.04[m]動かし、固定した状態から手を離したと同時に制御指令を送ったときのXY方向のシミュレーション応答結果を示す図である。図11(a)はX方向の応答を示し、符号50が移動テーブル20の位置、符号51が移動テーブル20の速度、符号52が懸垂物45の位置、符号53が懸垂物45の速度を表す。図11(b)はY方向の応答を示し、符号55が移動テーブル20の位置、符号56が移動テーブル20の速度、符号57が懸垂物45の位置、符号58が懸垂物45の速度を表す。縦軸に応答、横軸に時間(秒)を示す。この図から解るように、制御サンプリングが31[ms]とかなり長いため、シミュレーションで応答を確認しながら適当と思われるゲインを決定した。その結果、XY方向とも約4[s]で0に収束している。移動テーブル20の可動範囲が実験装置の可動範囲内に収まっていることや、テーブルの最大速度がモータの実現可能な速度であり、速応性・安定性の面からも妥当な設計ができている。実験ではこのフィードバックゲインを用いる。
図12は本発明の振動制御実験装置の構成を示す図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。但し、Y方向の機構は省略している。この振動制御実験装置120は、移動テーブル20をX方向に移動するDCサーボモータ42と、CCDカメラ1、8のワイヤ画像を処理するキャプチャボード60と、画像処理された画像データに基づいて振れ角を演算するPC61と、演算結果をD/A変換したり、エンコーダ64の信号をカウントするI/Fボード62と、DCサーボモータ42を駆動する電力を生成するモータドライバ63と、DCサーボモータ42の回転位置を知らせるエンコーダ64とを備えて構成される。
図13は図12の振動制御実験装置の仕様を示す図である。
【0018】
次に図12を参照して振動制御実験装置120の実験の流れを説明する。まず、懸垂物45を所定の目標位置に搬送するために、I/Fボード62からDCサーボモータ42へアナログ指令電圧を印加して移動テーブル20を動かす。それにより、懸垂物45に慣性力が働き懸垂物45が振動する。それによりワイヤ22が振れて、その画像をCCDカメラ1、8を用いて撮像し、キャプチャボード60を介してPC61により角度と角速度を求める。次にエンコーダ64からI/Fボード62に現在の位置情報を送り、そのカウント値を用いて移動テーブル20の位置と速度を求める。次にワイヤ22の角度と角速度、移動テーブル20の位置と速度にそれぞれ図11のシミュレーションより求めたフィードバックゲインを掛け、DCサーボモータ42に印加する電圧値を計算する。その電圧値をI/Fボード62からDCサーボモータ42に指令電圧として印加する。そしてワイヤ22の角度と角速度、移動テーブル20の位置と速度が全てゼロになるまで繰り返す。
図14は振り子を真下にぶら下げた状態からX方向に0.04[m]、Y方向に0.04[m]動かし、固定した状態から手を離したと同時に制御指令を送ったときのXY方向の実験結果を示す図である。図14(a)はX方向の応答を示し、符号70が移動テーブル20の位置、符号71が移動テーブル20の速度、符号72が懸垂物45の位置、符号73が懸垂物45の速度を表す。図14(b)はY方向の応答を示し、符号75が移動テーブル20の位置、符号76が移動テーブル20の速度、符号77が懸垂物45の位置、符号78が懸垂物45の速度を表す。縦軸に応答、横軸に時間(秒)を示す。図14(c)はそのときの懸垂物45の動きを示す図である。符号80はX方向の動き、符号81はY方向の動きを表す。この図から解るように、XY方向とも約5秒で一定範囲内に収束している。ただし収束後、懸垂物45は約3mmの範囲内で振動し続け、これは約プラスマイナス0.28(deg)内の振動である。カメラ分解能から考えると、ほぼシミュレーションどおりである。
【0019】
以上の通り本発明によれば、CCDカメラ1、8をXY方向に光軸が直交するように設置し、光軸の交点に被測定ワイヤ22が懸垂する状態でワイヤ22の振れ画像を撮像し、その画像を二値化回路2、9により二値化してワイヤ領域38を検出し、X方向、Y方向のワイヤ画像をコンピュータにより画像処理して各方向のワイヤ振れ角を演算するので、ワイヤ懸垂機構のワイヤに負荷を与えることなく、三次元変換された4つの三次元重心座標に基づいて、ワイヤのX方向及びY方向の振れ角度を正確に且つ迅速に求めることができる。
また、制御部14は、CCDカメラ1、8により取得されたワイヤ画像を二値化回路2、9により二値化し、その結果に基づいてワイヤ領域検出部3、10によりワイヤ画像の領域を取得し、更に画面上の上下に所定の画素領域32、33を設け、ワイヤ画像の領域38と所定の画素領域32、33の交差領域31、34を検出して重心座標検出部4、11により上下の画像領域31、34の重心座標30、35を求める。そしてこの重心座標30、35に対して光学系による歪補正を行なった後、X方向及びY方向のCCDカメラ1、8より得られた値を用いて上下の交差領域31、34の重心座標を三次元世界座標系変換部6により2つの三次元重心座標に変換し、2台のカメラから得られた計4つの重心位置及び2台のカメラレンズ中心位置より、三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、そして三次元世界座標系におけるワイヤ方向より、ワイヤ傾き角のx方向、y方向成分をそれぞれ算出する角度算出部7、13により算出するので、X方向、Y方向の傾き角度を正確に且つリアルタイムに算出することができる。
また、カメラ1、8は、CCDカメラにより構成されるので、取得された画像をデジタルデータとして処理が可能となり、コンピュータによる画像処理を行うことができる。
また、CCDカメラ1、8をワイヤ取り付け部21近傍に配設することにより、どんなサイズの装置環境でも適用しやすくなる。
また、振れ角検出プログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録媒体に記録することにより、この記録媒体を持ち運ぶことにより何処でもプログラムを稼動することができる。
【0020】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されたものではない。上述した実施形態の振れ角検出装置を構成する各機能をそれぞれプログラム化し、あらかじめCD−ROM等の記録媒体に書き込んでおき、コンピュータに搭載したCD−ROMドライブのような媒体駆動装置にこのCD−ROM等を装着して、これらのプログラムをコンピュータのメモリあるいは記憶装置に格納し、それを実行することによって、本発明の目的が達成されることは言うまでもない。
この場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が上述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体も本発明を構成することになる。
なお、プログラムを格納する記録媒体としては半導体媒体(例えば、ROM、不揮発性メモリカード等)、光媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD等)、磁気媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等のいずれであってもよい。
また、ロードしたプログラムを実行することにより上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、オペレーティングシステムあるいは他のアプリケーションプログラム等と共同して処理することによって上述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
市場に流通させる場合には、可搬型の記録媒体にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等を介して接続されたサーバコンピュータの記憶装置にプログラムを格納しておき、インターネット等を通じて他のコンピュータに転送することもできる。この場合、このサーバコンピュータの記憶装置も本発明の記録媒体に含まれる。
なお、コンピュータでは、可搬型の記録媒体上のプログラム、または転送されてくるプログラムを、コンピュータに接続した記録媒体にインストールし、そのインストールされたプログラムを実行することによって上述した実施形態の機能が実現される。
また、既存の二次元ワイヤ懸垂装置120に本発明の振れ角検出装置100とそれを制御する振れ角検出プログラムを搭載するので、既存の二次元ワイヤ懸垂装置のワイヤの振れを迅速に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のワイヤ懸垂機構におけるワイヤの振れ角を検出する振れ角検出装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明の振れ角検出装置における角度検出センサの要部を示す斜視図である。
【図3】本発明の振れ角検出装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】ワイヤ画像における領域1と領域2を説明する図である。
【図5】本発明の振れ角検出装置におけるワイヤ角度測定原理を説明する模式図である。
【図6】本発明の角度検出センサの概要を示す図である。
【図7】本発明の振れ角検出装置を備えた二次元ワイヤ懸垂機構のモデル図である。
【図8】制御システムの運動モデルを示す図である。
【図9】固有値が安定となるよう最適レギュレータを組んで、系全体の安定化を図ったブロック線図である。
【図10】各パラメータを示す図である。
【図11】振り子を真下にぶら下げた状態からX方向に0.04[m]、Y方向に0.04[m]動かし、固定した状態から手を離したと同時に制御指令を送ったときのXY方向のシミュレーション応答結果を示す図である。
【図12】本発明の振動制御実験装置の構成を示す図である。
【図13】図11の振動制御実験装置の仕様を示す図である。
【図14】振り子を真下にぶら下げた状態からX方向に0.04[m]、Y方向に0.04[m]動かし、固定した状態から手を離したと同時に制御指令を送ったときのXY方向の実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1、8 CCDカメラ、2、9 二値化回路、3、10 ワイヤ領域検出部、4、11 重心座標検出部、5、12 レンズ歪補正部、6 三次元世界座標系変換部、7、13 角度算出部、14 制御部、100 振れ角検出装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ懸垂手段と該ワイヤ懸垂手段により支持されたワイヤにより懸垂された懸垂物とを備えたワイヤ懸垂機構におけるワイヤの振れ角を検出する振れ角検出装置において、前記ワイヤ懸垂機構のワイヤ画像を撮像する画像撮像部と、該画像撮像部により撮像されたワイヤ画像を所定の閾値により二値化する二値化部と、該二値化部の結果に基づいて前記ワイヤ画像の領域を検出するワイヤ領域検出部と、前記画像撮像部により撮像された画面全体の上下に所定の画素領域を設け、前記ワイヤ画像の領域と前記上下の画素領域との交差領域を抽出し、当該交差領域の重心座標を求める重心座標検出部と、該重心座標検出部により検出された上下2つの重心座標に対して前記画像撮像部の光学系による歪を補正する歪補正部と、をX方向及びY方向に夫々備え、
前記X方向及びY方向の歪補正部により夫々の前記上下2つの重心座標を補正後、前記各画像撮像部より得られた値を用いて前記夫々の上下2つの重心座標を三次元世界座標系に変換する三次元世界座標系変換部と、前記X方向及びY方向の画像撮像部により得られた前記上下2つの重心座標及び前記X方向及びY方向のカメラレンズの中心位置に基づいて、前記三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、該算出したワイヤ方向より当該ワイヤ傾き角の前記X方向及びY方向成分を夫々算出する角度算出部と、前記各部の処理を制御する制御部と、を備えていることを特徴とする振れ角検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記画像撮像部により取得された前記ワイヤ画像を前記二値化部により二値化し、該二値化部の結果に基づいて前記ワイヤ領域検出部により前記ワイヤ画像の領域と前記上下の画素領域との交差領域を検出して前記重心座標検出部により上下の画像領域の重心座標を求め、当該重心座標に対して光学系による歪補正を行なった後、前記X方向及びY方向の前記画像撮像部より得られた値を用いて前記上下の交差領域の重心座標を前記三次元世界座標系変換部により2つの三次元重心座標に変換し、前記X方向及びY方向の画像撮像部により得られた前記上下2つの重心座標及び前記X方向及びY方向のカメラレンズの中心位置に基づいて、前記三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、該算出したワイヤ方向より当該ワイヤ傾き角の前記X方向及びY方向成分を夫々算出することを特徴とする請求項1に記載の振れ角検出装置。
【請求項3】
前記画像撮像部は、CCDカメラにより構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の振れ角検出装置。
【請求項4】
前記画像撮像部は、前記ワイヤ懸垂機構におけるワイヤ取り付け部近傍に配設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の振れ角検出装置。
【請求項5】
ワイヤ懸垂機構におけるワイヤの振れ角を検出するために前記制御部を、
撮像されたワイヤ画像を所定の閾値により二値化し該二値の結果に基づいて前記ワイヤ画像の領域を検出するワイヤ領域検出手段、前記撮像された画面全体の上下に所定の画素領域を設け且つ前記ワイヤ画像の領域と前記上下の画素領域との交差領域を抽出すると共に当該交差領域の重心座標を求める重心座標検出手段、該重心座標検出手段により検出された上下2つの重心座標に対して前記画像撮像手段の光学系による歪を補正する歪補正手段、前記X方向及びY方向の歪補正手段により夫々の前記上下2つの重心座標を補正した後前記各画像撮像手段より得られた値を用いて前記夫々の上下2つの重心座標を三次元世界座標系に変換する三次元世界座標系変換手段、前記X方向及びY方向の画像撮像部により得られた前記上下2つの重心座標及び前記X方向及びY方向のカメラレンズの中心位置に基づいて、前記三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、該算出したワイヤ方向より当該ワイヤ傾き角の前記X方向及びY方向成分を夫々算出する角度算出手段として機能させることを特徴とする振れ角検出プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の振れ角検出プログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録したことを特徴とする記録媒体。
【請求項7】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の振れ角検出装置と、請求項5に記載の振れ角検出プログラムと、水平な二次元平面内に設置されたXYテーブルと、該XYテーブルに設置されたワイヤ巻上げ機構と、前記XYテーブルを駆動する駆動手段と、前記振れ角検出装置により検出された前記ワイヤ巻上げ機構におけるワイヤの振れ角に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする二次元ワイヤ懸垂装置。
【請求項1】
ワイヤ懸垂手段と該ワイヤ懸垂手段により支持されたワイヤにより懸垂された懸垂物とを備えたワイヤ懸垂機構におけるワイヤの振れ角を検出する振れ角検出装置において、前記ワイヤ懸垂機構のワイヤ画像を撮像する画像撮像部と、該画像撮像部により撮像されたワイヤ画像を所定の閾値により二値化する二値化部と、該二値化部の結果に基づいて前記ワイヤ画像の領域を検出するワイヤ領域検出部と、前記画像撮像部により撮像された画面全体の上下に所定の画素領域を設け、前記ワイヤ画像の領域と前記上下の画素領域との交差領域を抽出し、当該交差領域の重心座標を求める重心座標検出部と、該重心座標検出部により検出された上下2つの重心座標に対して前記画像撮像部の光学系による歪を補正する歪補正部と、をX方向及びY方向に夫々備え、
前記X方向及びY方向の歪補正部により夫々の前記上下2つの重心座標を補正後、前記各画像撮像部より得られた値を用いて前記夫々の上下2つの重心座標を三次元世界座標系に変換する三次元世界座標系変換部と、前記X方向及びY方向の画像撮像部により得られた前記上下2つの重心座標及び前記X方向及びY方向のカメラレンズの中心位置に基づいて、前記三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、該算出したワイヤ方向より当該ワイヤ傾き角の前記X方向及びY方向成分を夫々算出する角度算出部と、前記各部の処理を制御する制御部と、を備えていることを特徴とする振れ角検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記画像撮像部により取得された前記ワイヤ画像を前記二値化部により二値化し、該二値化部の結果に基づいて前記ワイヤ領域検出部により前記ワイヤ画像の領域と前記上下の画素領域との交差領域を検出して前記重心座標検出部により上下の画像領域の重心座標を求め、当該重心座標に対して光学系による歪補正を行なった後、前記X方向及びY方向の前記画像撮像部より得られた値を用いて前記上下の交差領域の重心座標を前記三次元世界座標系変換部により2つの三次元重心座標に変換し、前記X方向及びY方向の画像撮像部により得られた前記上下2つの重心座標及び前記X方向及びY方向のカメラレンズの中心位置に基づいて、前記三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、該算出したワイヤ方向より当該ワイヤ傾き角の前記X方向及びY方向成分を夫々算出することを特徴とする請求項1に記載の振れ角検出装置。
【請求項3】
前記画像撮像部は、CCDカメラにより構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の振れ角検出装置。
【請求項4】
前記画像撮像部は、前記ワイヤ懸垂機構におけるワイヤ取り付け部近傍に配設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の振れ角検出装置。
【請求項5】
ワイヤ懸垂機構におけるワイヤの振れ角を検出するために前記制御部を、
撮像されたワイヤ画像を所定の閾値により二値化し該二値の結果に基づいて前記ワイヤ画像の領域を検出するワイヤ領域検出手段、前記撮像された画面全体の上下に所定の画素領域を設け且つ前記ワイヤ画像の領域と前記上下の画素領域との交差領域を抽出すると共に当該交差領域の重心座標を求める重心座標検出手段、該重心座標検出手段により検出された上下2つの重心座標に対して前記画像撮像手段の光学系による歪を補正する歪補正手段、前記X方向及びY方向の歪補正手段により夫々の前記上下2つの重心座標を補正した後前記各画像撮像手段より得られた値を用いて前記夫々の上下2つの重心座標を三次元世界座標系に変換する三次元世界座標系変換手段、前記X方向及びY方向の画像撮像部により得られた前記上下2つの重心座標及び前記X方向及びY方向のカメラレンズの中心位置に基づいて、前記三次元世界座標系におけるワイヤの方向を算出し、該算出したワイヤ方向より当該ワイヤ傾き角の前記X方向及びY方向成分を夫々算出する角度算出手段として機能させることを特徴とする振れ角検出プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の振れ角検出プログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録したことを特徴とする記録媒体。
【請求項7】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の振れ角検出装置と、請求項5に記載の振れ角検出プログラムと、水平な二次元平面内に設置されたXYテーブルと、該XYテーブルに設置されたワイヤ巻上げ機構と、前記XYテーブルを駆動する駆動手段と、前記振れ角検出装置により検出された前記ワイヤ巻上げ機構におけるワイヤの振れ角に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする二次元ワイヤ懸垂装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−337253(P2006−337253A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164136(P2005−164136)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年3月14日 ロボティクスシンポジア運営委員会、第10回ロボティクスシンポジア実行委員会発行の「第10回 ロボティクスシンポジア予稿集」に発表
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年3月14日 ロボティクスシンポジア運営委員会、第10回ロボティクスシンポジア実行委員会発行の「第10回 ロボティクスシンポジア予稿集」に発表
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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