説明

振動式トランスデューサ

【課題】高精度にかつ安価に製造することができる振動式トランスデューサを実現する。
【解決手段】真空室33内に設けられ基板31に対して引張の応力が付与され基板面に平行方向より垂直方向の断面厚さが長い断面形状を有し基板に平行に且つ互いに平行に設けられた第1,第2のシリコン単結晶の振動梁32a、32bと、基板面に平行に設けられ第1,第2の振動梁の一端に接続される板状の第1の電極板34aと、基板面に平行に設けられ第1,第2の振動梁の間に設けられた第2の電極板34bと、第1,第2の振動梁の両側に第1,第2の振動梁を挟んで且つ第1,第2の振動梁と第1,第2の電極板と共に基板面に平行な一平面状をなす板状の第3,第4の電極板34c、34dと、振動梁と第2、第3,第4の電極板との対向する側壁部面に設けられ相互の付着を防止する凸凹部37とを具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動式トランスデューサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図29〜図38は従来より一般に使用されている従来例の要部構成説明図である。
図29は要部組立構成説明図、図30〜図38は製作工程説明図である。
製作工程に従って説明する。
【0003】
図30において、N型シリコン単結晶基板1に、シリコン酸化膜10aを形成しパターニングする。
酸化膜を除去した部分をアンダ―カットして、凹部を形成しボロンの濃度1018cm-3のP形シリコンにより、選択エピタキシャル成長を行ってP単結晶シリコン11を成長させる。
【0004】
次に、ボロンの濃度3×1019cm-3以上のP形シリコンにより、P単結晶シリコン11の表面に、凹部を塞ぎ更に上方にP++単結晶シリコン12を成長させる。
後に、P単結晶シリコン層が振動梁下のギャップ、P++単結晶シリコン層が振動梁となる。
【0005】
図31において、P++単結晶シリコン12上を含む基板表面にシリコン酸化膜10bを形成しパターニングする。
酸化膜を除去した凹部Dで示す部分が、シェルの基板への接地部となる。
【0006】
図32において、凹部Dを含む基板表面にシリコン窒化膜13を形成し、パターニングする。P++単結晶シリコン12a(振動梁)上のシリコン酸化膜10bおよびシリコン窒化膜13が、振動梁上のギャップとなる。これらの膜厚,振動梁の面積により静電容量が決まる。従ってこれらの値を所望の静電容量が得られるように調整しておくことで、振動梁の駆動、検出のための静電容量を最適化することができる。
【0007】
図33において、P++ポリシリコン14を全面に形成し、パターニングにより犠牲層エッチングのためのエッチング液導入穴Eを形成する。
このP++ポリシリコンが、後にシェル及び電極取り出しのための配線となる。
配線は、P++/P単結晶シリコンを利用することや、選択エピタキシャル成長前にシリコン基板への不純物拡散をすることで形成することも可能である。
配線とシリコン基板との間の寄生容量が最も小さくなるよう選択するのが良い。
【0008】
図34において、エッチング液の導入穴Eから弗酸を流入させシリコン窒化膜14、シリコン酸化膜12bを除去する。
シェルの基板への接地部は、シリコン窒化膜14のエッチング速度が遅いため、横方向では、シリコン窒化膜がエッチングストップ層となる。
【0009】
図35において、P単結晶シリコン層11を、アルカリ溶液(ヒドラジン、KOH、TMAH等)により除去する。
この時、P++単結晶シリコン12a、P++ポリシリコン14は、高濃度に不純物導入されているため、エッチングされない。
【0010】
また、アルカリ溶液によるエッチング中に、N型シリコン基板に1〜2Vの電圧を印加しておくことにより、エッチングされないよう保護することができる。
振動梁の長さ方向は、シリコン単結晶の<111>方向のエッチング速度が遅いことを利用して、エッチングストップとする。
【0011】
図36において、スパッタ、蒸着、CVD、エピタキシャル成長等により、封止部材15(例えば、スパッタにより形成したSiO2,ガラス等)を形成してエッチング液の導入穴をふさぐとともに、微細な真空室5を形成する。
この工程の前に、熱酸化等により振動梁表面及び真空室内部にシリコン酸化膜を形成する等の方法で、シェルと振動梁の電気的絶縁をより安定にすることも可能である。
この場合には、封止部材として、導電性の材料を使用することができる。
【0012】
図37において、P++ポリシリコン14をパターニングし、振動梁及びシェルからの電気的配線を形成するとともにボンディングパッド用の電極を形成する。
図38において、シリコン基板を裏面から薄肉化し、ダイアフラムを形成する。
図39(a)は振動梁12a及びシェル14に接続してP++ポリシリコン14をパターニングし、電気的配線20を形成するとともにボンディング用のAl電極21を形成した状態を示す平面図である。
【0013】
図39(b)は本発明の振動式トランスデューサの回路図を示すものである。
図においてVbはバイアス電圧(定電圧)、Viは駆動電圧(交流)、R1,R2は配線抵抗、R3は基板抵抗である。
C1は振動梁/シェル間の容量、C2は寄生容量、C3,C4は配線/基板間の容量である。図において、R3,C2,C3,C4が小さい程ノイズ電流が小さくなる。
また、これらの値は、配線の形成方法、パターン等により決まる。従って、これらの値を可能な限り小さくなるように決定する。
【0014】
図において、振動梁/シェル間の容量C1が一定の場合、Viの周波数をωとすると、出力電流の振幅は(C1+C2)・Vi・ωに比例する。
一方、C1が周波数ωで共振する場合、共振によるC1の変化分をΔC1とすると、近似的にΔC1・Vb・ωに比例した振幅の電流が加算される。この電流の増加分により、共振周波数を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−037309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このような装置においては、以下の問題点がある。
図29従来例では、振動梁が基板に対して垂直に振動し、振動梁,励振電極,振動検出電極が積層構造となっているため、製造プロセスにおいて多くの加工工程が必要となっていた。これは、静電気力を用いる構造では、振動梁以外に真空室内に振動子を励振したり振動を検出するための電極を作製し、それぞれの電極間を絶縁しなければならないため、必然的に構造が複雑になる。
【0017】
積層構造では、振動梁と対向電極は上下方向に向かい合っているため、それぞれに別の加工工程が必要になる。このため、マイクロマシン技術を用いて積層構造の振動式トランスデューサを作成すると、マスク枚数が増え、それに対応して加工工程も増えて、リードタイムが延び、コストアップになる。また、加工工程が増えると、加工精度のバラツキの蓄積によって特性が悪化し、歩留まりが落ちる要因となる。
【0018】
更に、静電気力を用いる場合、振動梁と駆動電極、検出電極の間隔は通常サブミクロンから1μm程度にしなければならないが、振動式トランスデューサとして、歪に対する周波数変化率(ゲージファクタ)を大きくしようとすると、振動梁の長さlを長く、厚さtを薄くしなければならないため、振動梁が電極に付着して動作しなくなる問題があった。
この問題は、製作時の水分による付着の他、作製後の動作時にも発生する。
【0019】
振動梁の共振周波数と歪には、次のような関係式が成り立っている。
【0020】
【数1】

【0021】
上記の式より、周波数2乗と歪との間には直線関係があるため、バイアス電圧Vb =0Vの時の周波数2乗の歪に対する変化率(2乗ゲージファクタGf2)を求めると下記のように書ける。
【0022】
【数2】

【0023】
この式をグラフに表したものが図40である。ここでは振動梁の長さlと厚さhの比率l/tが200の場合と140の場合について例示している。振動梁の張力が0με付近では、周波数2乗の変化率と歪の関係式はβ(l2/t2)となり、図39中y切片がこの値を示している。張力が0με付近では黒丸の曲線(比率l/t=200)は白丸の曲線(比率l/t=140)の約2倍ほど大きな値となっている。
【0024】
このことは、低い張力の領域では振動梁の長さlが長く、厚さtが薄いものが、2乗ゲージファクタGf2が大きいことを示している。
一方、振動梁の張力が比較的大きく350με以上となると周波数2乗の変化率と歪の関係式は1/εsに漸近していき、弦振動の極限に近づく。このため2乗ゲージファクタ Gf2は振動梁の形状にはほとんど関係なく張力εの大きさで決定され、張力が大きくなるに従って小さくなる。
【0025】
この結果から、歪感度の大きな高感度振動式トランスデューサを作る場合は、振動梁長を長く、振動梁厚さを薄く、振動梁の張力は比較的小さくすることが望ましい。
更に、振動梁を振動する駆動力に静電気力を選択する場合は、駆動電極と振動梁間の距離を1μm程度に狭めないと静電気力は有効に作用しない。
【0026】
一方で、このような、長さが長く、厚さが薄く、張力が低く、対向電極間距離が狭い振動梁は、付着しやすいという宿命にある。
この説明には下記の式が役に立つ。
【0027】
【数3】

【0028】
この式は両端支持梁の付着の判定に用いられる式で、Npはpeel numberと呼ばれており、Np=1のとき、振動梁は付着する。
この式から容易に分かるように、張力が低い場合は、第一項のみを考えればよいのだが、長さlが長いと、Npは小さくなる。厚さtと電極間距離hが小さくなるとやはり、Npは小さくなる。
【0029】
このように、静電駆動型振動式トランスデューサの高感度化は、付着の問題をどのように解決するかということに懸っているといっても過言ではない。
本発明の、静電駆動型振動式トランスデューサの高感度化は、付着の問題を解決するためのものである。
【0030】
本発明の目的は、上記の課題を解決するもので、下記のような振動式トランスデューサを提供することにある。
(1)シリコン単結晶梁の振動式トランスデューサを高精度にかつ安価に製造することができる振動式トランスデューサを提供する。
(2)振動梁の付着対策を簡便に効果的に行うことができる振動式トランスデューサを提供する。
【0031】
(3)縦方向の厚さを横方向に比べ厚くし、ねじれ振動モードを抑えることによって、広い周波数帯域でモードクロスが無く、広いダイナミックレンジの圧力測定が可能である振動式トランスデューサを提供する。
(4)音叉型構造を取ることによって、振動子の振動安定性を高め、振動式の欠点であるダイアフラム等の振動梁以外の共振に起因する振動子Q値の低下がおきにくい振動式トランスデューサを提供する。
(5)垂直方向に長く、水平方向に短いため、シェルの幅が狭く、圧力隔壁となるシェルが薄くても真空室の耐圧が高いため、振動梁の歪感度が向上しダイアフラムが小さくできる。また圧力耐圧も上げられる振動式トランスデューサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0032】
このような課題を達成するために、本発明では、請求項1の振動式トランスデューサにおいては、
シリコン単結晶の基板に設けられた振動梁と、該振動梁の周辺に隙間が維持されるように該振動梁を囲み前記基板と共に真空室を構成するシリコン材よりなるシェルと、前記振動梁を励振する励振手段と、前記振動梁の振動を検出する振動検出手段と、を具備し、前記振動梁の共振周波数を測定することにより前記振動梁に印加された歪を測定する振動式トランスデューサにおいて、前記真空室内に設けられ前記基板に対して引張の応力が付与され前記基板面に平行方向より垂直方向の断面厚さが長い断面形状を有し、前記基板に平行に且つ互いに平行に設けられた第1,第2のシリコン単結晶の振動梁と、前記基板面に平行に設けられ前記第1,第2の振動梁の一端に接続される板状の第1の電極板と、前記基板面に平行に設けられ前記第1,第2の振動梁の間に設けられた第2の電極板と、前記第1,第2の振動梁の両側に前記第1,第2の振動梁を挟んで且つ前記第1,第2の振動梁と前記第1,第2の電極板と共に前記基板面に平行な一平面状をなす板状の第3,第4の電極板と、前記振動梁と第2,第3,第4の電極板との対向する側壁部面に設けられ相互の付着を防止する凸凹部と、を具備したことを特徴とする。
【0033】
本発明の請求項2の振動式トランスデューサにおいては、請求項1記載の振動式トランスデューサにおいて、
前記凸凹部は、前記基板面に対して水平方向に連続して、あるいは垂直方向に連続して、あるいは水平方向と垂直方向とに連続して形成されて格子状に、構成されたことを特徴とする。
【0034】
本発明の請求項3の振動式トランスデューサにおいては、請求項1又は請求項2記載の振動式トランスデューサにおいて、
前記第1の電極板が前記振動梁のバイアス電圧電極板、前記第2の電極板が前記振動梁の振動検出電極板として使用され、前記第3,第4の電極板が前記振動梁を励振する励振電極として使用されたこと、を特徴とする。
【0035】
本発明の請求項4の振動式トランスデューサにおいては、請求項1又は請求項2記載の振動式トランスデューサにおいて、
前記第1の電極板が前記振動梁のバイアス電圧電極板、前記第2の電極板が前記振動梁を励振する励振電極板、として使用され、前記第3,第4の電極板が前記振動梁の振動を検出する振動検出電極板として使用されたこと、を特徴とする。
【0036】
本発明の請求項5の振動式トランスデューサにおいては、請求項1又は請求項2記載の振動式トランスデューサにおいて、
前記第1,第2の電極板のいずれか一方が励振電極とバイアス電圧電極、他方が振動検出電極として使用されたことを特徴とする。
【0037】
本発明の請求項6の振動式トランスデューサにおいては、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の振動式トランスデューサにおいて、
前記第1,第2,第3,第4の電極板を除いて前記基板面に平行に一平面状に設けられ各電極間のクロストークを防止するためのガード電極板を具備したことを特徴とする。
【0038】
本発明の請求項7の振動式トランスデューサにおいては、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の振動式トランスデューサにおいて、
前記振動梁は、両端固定梁であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明の請求項1によれば、次のような効果がある。
図29従来例では、振動梁,励振電極,振動検出電極が積層構造であったため、製造プロセスにおいて多くの加工工程が必要であったが、振動梁,励振電極,振動検出電極が同一平面状に配置出来るので、振動梁,励振電極,振動検出電極を1工程(マスク1枚)で作ることができる振動式トランスデューサが得られる。
【0040】
図29従来例の積層形では、振動梁の付着対策のために振動梁や振動梁と対向する面を粗し、付着防止するための加工を施す事が難しいが、振動梁,励振電極,振動検出電極が同一平面状に配置出来る水平振動型では、振動梁と対向する電極面とを加工する時に同一加工工程で対向する表面を粗らすことができる。このため振動梁の付着を容易、かつ確実に防止することができる振動式トランスデューサが得られる。
例えば、側面を加工する際に、用いるエッチングによって発生するスキャロップを利用したり、振動梁と電極を形成するマスクパターンに凸凹をつけることによって作製する。
【0041】
振動梁を縦長に配置することによって、シェルの幅も図29従来例に比べ狭くすることができるため、シェル厚さを一定にした場合には耐圧が向上出来る振動式トランスデューサが得られる。
同じ耐圧を実現するためには、圧力隔壁となるシェルの膜厚は薄くてよい。図29従来例の積層振動型の場合、駆動電極はシェル側に作り込まねばならず、高い圧力が印加された場合、シェルが変形して電極と振動梁間距離が変化し、周波数変化特性が非線形になる恐れがある。
【0042】
振動梁の縦横の形状は、水平振動と垂直振動の共振周波数にも影響する。圧力測定に使用する振動梁の振動モードの共振周波数が他の振動モードの共振周波数と干渉を起こすと、共振周波数同士がロックインして周波数計測にヒステリシスが発生し、誤差を生じる。これを避けるためには、振動梁の測定に使用する水平振動モードが最も低い周波数(1次モード)になっていて、垂直振動が高次の振動モードとなっていなければならない。
このような状態を実現するためには、振動梁の縦横の形状は、縦が横幅に対して少なくとも3倍以上長くならなくてはならない。このように振動梁を縦長に配置することは、測定精度の向上のためにも重要である。
【0043】
更に、振動梁形状を2次元的に自由に加工できるため、複雑な形状の振動梁や振動安定性を高める効果のある形状の振動梁を容易に作ることができる。
【0044】
ここでは、2つの音叉の振動梁部分を向き合わせで結合させた双音叉構造の振動子について説明する。
双音叉構造では、2本の振動梁は基板に対して水平に同時に向き合った方向または、離れる方向に振動するため、振動梁の振動によって生じる力はキャンセルされ、振動梁に固定された基板に伝達される力は、単独に1本の振動梁が振動している場合に比べ少なくなる。
【0045】
このため、振動梁の固定端から基板側に振動エネルギーが漏れにくくなり、振動梁の振動の鋭さを示すQ値は上がる。
また、振動梁をダイアフラム上に作製し圧力計を構成する場合、ダイアフラムの共振周波数が振動梁の共振周波数と一致する場合がある。このような場合には、振動梁の振動エネルギーの漏れが小さい場合には、ダイアフラムとの共振現象による干渉は小さくなり、振動梁の共振周波数のロックインや振幅の変化を抑えることができる。
【0046】
本発明の請求項2によれば、次のような効果がある。
凸凹部は、基板面に対して水平方向に連続して、あるいは垂直方向に連続して、あるいは水平方向と垂直方向とに連続して形成されて格子状に構成されたので、接触時の接触面積を減らすことができ、振動梁が狭いギャップで対向する電極に付着してしまうことを防止する効果がある。振動梁の振動方向に対する厚さに対して100倍以上に長さをもち、歪感度の高い振動梁を形成することができる。
【0047】
本発明の請求項3によれば、次のような効果がある。
第1の電極板が振動梁のバイアス電圧電極板、第2の電極板が振動梁の振動検出電極板として使用され、第3,第4の電極板が振動梁を励振する励振電極として使用されたので、4端子素子では、振動梁およびそれに接続されている電極がガード電極として作用し、励起電極と検出電極を離すことができるため、励起信号が検出回路側に回り込むクロストークが抑えられ、SN比が良くなる振動式トランスデューサが得られる。
【0048】
本発明の請求項4によれば、次のような効果がある。
第1の電極板が振動梁のバイアス電圧電極板、第2の電極板が振動梁を励振する励振電極板として使用され、第3,第4の電極板が振動梁の振動を検出する振動検出電極板として使用されたので、4端子素子では、振動梁およびそれに接続されている電極がガード電極として作用し、励起電極と検出電極を離すことができるため、励起信号が検出回路側に回り込むクロストークが抑えられ、SN比が良くなる振動式トランスデューサが得られる
【0049】
本発明の請求項5によれば、次のような効果がある。
前記第1,第2の電極板のいずれか一方が励振電極とバイアス電圧電極、他方が振動検出電極として使用されたので2端子形で励起・検出を行う場合、2端子素子では、リード端子がすくなく、ハーメチックのピン本数が少なくでき、パッケージの小型化が可能にできる振動式トランスデューサが得られる。
【0050】
本発明の請求項6によれば、次のような効果がある。
第1、第2,第3,第4の電極板を除いて、基板面に平行に一平面状に、これら電極の周囲を囲む様に設けられ、各電間のクロストークを防止するためのガード電極板が設けられたので、ガード電極板を接地することで、さらにクロストークを減らすことができる振動式トランスデューサが得られる。
【0051】
本発明の請求項7によれば、次のような効果がある。
双音叉形振動子の単独の振動梁は、両端固定梁であるので、振動モードがもっとも少ない両端固定梁で自励発振できる。また、梁の断面を縦方向の厚さを横方向に比べ厚くすることで、ねじれ振動モードを抑えることができるため、測定範囲内でモードクロスが無く広い周波数帯域で使用することができるため、広いダイナミックレンジの圧力測定が可能な振動式トランスデューサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例の要部組立構成説明図である。
【図2】図1の製作工程説明図である。
【図3】図1の製作工程説明図である。
【図4】図1の製作工程説明図である。
【図5】図1の製作工程説明図である。
【図6】図1の製作工程説明図である。
【図7】図1の製作工程説明図である。
【図8】図1の製作工程説明図である。
【図9】図1の製作工程説明図である。
【図10】図1の製作工程説明図である。
【図11】図1の製作工程説明図である。
【図12】図1の製作工程説明図である。
【図13】図1の製作工程説明図である。
【図14】図1の製作工程説明図である。
【図15】図1の製作工程説明図である。
【図16】図1の具体的回路図である。
【図17】図1の他の具体的回路図である。
【図18】図1の他の具体的回路図である。
【図19】図1の他の具体的回路図である。
【図20】図1の他の具体的回路図である。
【図21】図1の他の具体的回路図である。
【図22】図1の凸凹部37の形成説明図である。
【図23】図1の凸凹部37の形成完成図である。
【図24】図22の断面図である。
【図25】図1の凸凹部37の実施例である。
【図26】図1の凸凹部37の実施例である。
【図27】図1の凸凹部37の実施例である。
【図28】図1の凸凹部37の実施例である。
【図29】従来より一般に使用されている従来例の要部構成説明図である。
【図30】図29の製作工程説明図である。
【図31】図29の製作工程説明図である。
【図32】図29の製作工程説明図である。
【図33】図29の製作工程説明図である。
【図34】図29の製作工程説明図である。
【図35】図29の製作工程説明図である。
【図36】図29の製作工程説明図である。
【図37】図29の製作工程説明図である。
【図38】図29の製作工程説明図である。
【図39】図29の回路説明図である。
【図40】数式2を用いた計算例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図1〜図15は、本発明の一実施例の要部構成説明図である。
図1は要部組立構成説明図で、(a)は要部平面図、(b)は断面図、図2〜図15は製作工程説明図である。
図において、図29と同一記号の構成は同一機能を表す。
以下、図29との相違部分のみ説明する。
【0054】
図1において、第1,第2の振動梁32a、32bは、真空室33内に設けられ、基板31に対して引張の応力が付与され、基板31の面311に平行方向より垂直方向の断面厚さが長い断面形状を有するシリコン単結晶よりなる。
第1の電極板34aは、基板31の面311に平行に設けられ、第1,第2の振動梁32a、32bの一端に接続され、板状をなす。
【0055】
第2の電極板34bは、基板面311に平行に設けられ、第1,第2の振動梁32a、32bの間に設けられている。
第3,第4の電極板34c、34dは、第1,第2の振動梁32a、32bの両側に、第1,第2の振動梁32a、32bを挟んで且つ、第1,第2の振動梁32a、32bと第1,第2の電極板34c、34dと共に、基板面311に平行な一平面状をなし板状をなす。
【0056】
ガード電極36は、容量結合を減少できるように、第1,第2の振動梁32a、32bと第1の電極板34aと第2の電極板34bと第3の電極板34cと第4の電極板34dの周囲を隙間を置いて囲んで、基板面311に平行に設けられ、第1,第2の振動梁32a、32bと第1の電極板34aと第2の電極板34bと第3の電極板34cと第4の電極板34dと共に、基板面311に平行な一平面状をなし、板状をなす。
凸凹部37は、第1,第2の振動梁32a、32bと第2の電極板34bと第3の電極板34cと第4の電極板34dとの対向する側壁部面に設けられ相互の付着を防止する。
【0057】
この場合は、凸凹部37は、基板31の面311に対して水平方向に連続して、あるいは垂直方向に連続して、あるいは水平方向と垂直方向とに連続して形成されて格子状に構成されている。
なお、凸凹部37に付いては、後に、詳細に説明する。
38は、真空室33の一部を形成するシェルである。
【0058】
次に、図1実施例の作製工程を説明する。
図2に示す如く、SOI基板101を準備する。例えば、SOI基板101は、BOX層の酸化膜厚さは2μm、活性層のシリコン層の厚さは1μmのものを用いる。
【0059】
図3に示す如く、エピタキシャル装置中で、SOI基板101の活性層上に高濃度にボロンBが含まれたシリコン層102をエピタキシャル成長させる。
高濃度にボロンBが含まれたシリコン層102は、電気抵抗が小さく導体として、振動梁や電極やリード部分となる。
【0060】
また、高濃度にボロンBが含まれたシリコン層102は、基板部分101に比べ引っ張り応力を残留しているため、振動梁部分に張力を発生させる。
振動梁は張力領域で応力が印加された場合、前記[数1]式に示した通り応力に対して周波数の2乗が比例するように変化し、きわめて直線性の良い特性が得られる。
一方で、圧縮応力領域での動作は、非常に非線形な特性となるため、振動式トランスデューサの動作は、引っ張り応力領域で行われるべきである。
【0061】
高濃度にボロンBが含まれたシリコン層の成長条件は次の通り。
成長温度1030℃、H2ガス中で、シリコン原料ガスとしてジクロロシラン(SiH2Cl2)、不純物であるボロンの原料ガスとしてジボラン(B2H6)を用い、一定時間エピタキシャル成長を行うことによって高濃度にボロンBが含まれたシリコン層102を9μm成長し、活性層との合計が10μmとなるようにする。
【0062】
図4に示す如く、高濃度にボロンBが含まれたシリコン層102の表面にレジストを塗布し、ステッパ装置を用いてパターニングを行う。
ステッパ装置は、0.3μm程度の分解能を持ちサブミクロンのライン&スペースの露光が可能である。
このステッパ装置で振動梁103の輪郭と電極104のパターンを形成する。
【0063】
図3で形成したシリコン層102および活性層の厚さ10μmは、DRYエッチング装置を用いてトレンチ状にエッチングされる。
この際、BOSCHプロセスというシリコンSiのエッチング工程とCFポリマーのデポジション工程を繰り返し行うことによって、エッチングされるトレンチの側壁面に襞状の凸凹部105が形成される。
【0064】
エッチング時間とデポジション時間を調整することによって、0.1μm程度またはそれ以上の凸凹でピッチが0.1μmから1μm程度の水平方向の縞ができる。
エッチングはSOIウェハー101のBOX層に突き当たり、振動梁103と電極104が構造的に分離されるまで行う。
【0065】
図5に示す如く、CFポリマーを除去し、レジストを剥離した後、図4で形成した溝構造部分を絶縁膜106で埋め込む。
埋め込みには、テトラエトキシシラン(TEOS)を用いたLP−CVD酸化膜やプラズマCVDなどで成膜した絶縁膜106によってトレンチの開口部分を封鎖する。
【0066】
LP−CVD酸化膜は温度700℃、圧力50Paの真空中で、TEOSタンクをバブリングして含んだ窒素N2ガスおよび、酸素ガスを導入してTEOSが熱分解することによってシリコン基板上に酸化ケイ素皮膜106を形成する。
【0067】
プラズマCVD膜は、真空中でTEOSと酸素ガスを導入しプラズマを発生させ、400℃に加熱されたステージ上に置かれたシリコン基板上に、酸化ケイ素皮膜106を形成する。
プラズマCVD装置はステップカバレッジがよくないため、埋め込み酸化膜106がトレンチの最深部に成膜しにくく中に空間(ボイド)107が形成される。
【0068】
図6に示す如く、トレンチの上部を封鎖した酸化膜106上に数μmの厚さのポリシリコン108膜を形成する。
このポリシリコン108は、振動梁103を真空中に保ち、圧力を伝達するシリコンオイルから隔離するための真空室33の一部を形成する。
【0069】
図7に示す如く、図6で形成したポリシリコン108の一部をDRYエッチングよって開口109する
図8に示す如く、100nm程度の酸化ケイ素皮膜111をLP−CVDにて形成し、開口部109付近のみをパターニングによって残し、その他の部分をバッファードフッ酸にて除去する。
後に、この酸化膜111は、振動梁103の周辺の犠牲層エッチング層を除去する際に、エッチング液またはエッチングガスの導入口となる。
【0070】
図9に示す如く、さらにポリシリコン112を成膜して、開口部分109をポリシリコン層112で埋め戻す。
図10に示す如く、振動梁103の上部に相当する部分で、図8で酸化膜111を残した部分の一部に穴またはスリット113をあけ、酸化膜111をストッパとする。
【0071】
図11に示す如く、HFガスエッチングまたは、希HF液を用いて犠牲層エッチング層114を除去する。
図12に示す如く、スキャロップは、900℃以上のH2中あるいは真空中に曝されると消失してしまうので、900℃以下の低温にて真空封止を行う。
ここではLP−CVDポリシリコン膜115によって真空封止を行う。
製膜条件は、例えば、温度590℃で圧力85Paの真空中でSiH4ガスを用いて行う。
【0072】
製膜されたポリシリコン膜115が引っ張り歪となるか、あるいは残留圧縮歪がほとんどなくなる条件で行う。
シリコン原料ガスには、SiH4または、SiH4と水素の混合物を用いる。
【0073】
図13に示す如く、真空室を形成しているポリシリコン膜の一部を、反応性イオンエッチング(RIE)によって下地の酸化膜106をストッパとして電極104を掘り出すために穴116を空ける。
【0074】
図14に示す如く、酸化膜106に穴を空け、電極にコンタクトするためのコンタクトホール117とする。
【0075】
図15に示す如く、アルミAlを蒸着またはスパッタによって製膜し、パターニングし、電極パッド118を形成する。電極パッド118は、金線を用いてボンディングされ外部のドライバ回路に接続される。
【0076】
以上の構成において、基本的には、第1,第2の振動梁32a、32bの駆動方式は、第1,第2の振動梁32a、32bと一方の対向電極間にバイアス電圧Vbと駆動電圧Viを加え、静電吸引力Fを発生させて第1,第2の振動梁32a、32bを駆動する。
【0077】
検出方式は、第1,第2の振動梁32a、32bと他方の対向電極間で構成されるコンデンサに直流バイアスを加えることで電荷Q=CVを各電極に貯めておき、第1,第2の振動梁32a、32bが振動して容量Cが変化すると、電荷Qが変化して、それに対応した交流電圧が流れる。この際、第1,第2の振動梁32a、32bは機械的に結合し連成振動となり、同一の共振周波数で振動する。
これを差動アンプ等で増幅して電圧変化にしてカウンターで読み込むことによって、第1,第2の振動梁32a、32bの振動周波数を測定することが出来る。
【0078】
この結果、
従来例では、振動梁,励振電極,振動検出電極が積層構造であったため、製造プロセスにおいて多くの加工工程が必要であったが、振動梁,励振電極,振動検出電極が同一平面状に配置出来るので、振動梁,励振電極,振動検出電極を1工程(マスク1枚)で作ることができる振動式トランスデューサが得られる。
【0079】
従来例の積層形では、振動梁の付着対策のために振動梁や振動梁と対向する面を粗し、付着防止するための加工を施す事が難しいが、振動梁,励振電極,振動検出電極が同一平面状に配置出来る水平振動型では、振動梁と対向する電極面とを加工する時に同一加工工程で対向する表面を粗らすことができる。このため振動梁の付着を容易、かつ確実に防止することができる振動式トランスデューサが得られる。
例えば、側面を加工する際に用いるエッチングによって発生するスキャロップを利用したり、振動梁と電極を形成するマスクパターンに凸凹をつけることによって作製する。
【0080】
振動梁を縦長に配置することによって、シェルの幅も従来例に比べ狭くすることができるため、シェル厚さを一定にした場合には耐圧が向上出来る振動式トランスデューサが得られる。
同じ耐圧を実現するためには、圧力隔壁となるシェルの膜厚は薄くてよい。従来例の積層振動型の場合、駆動電極はシェル側に作り込まねばならず、高い圧力が印加された場合、シェルが変形して電極と振動梁間距離が変化し、周波数変化特性が非線形になる恐れがある。
【0081】
振動梁の縦横の形状は、水平振動と垂直振動の共振周波数にも影響する。圧力測定に使用する振動梁の振動モードの共振周波数が他の振動モードの共振周波数と干渉を起こすと、共振周波数同士がロックインして周波数計測にヒステリシスが発生し、誤差を生じる。 これを避けるためには、振動梁の測定に使用する水平振動モードが最も低い周波数(1次モード)になっていて、垂直振動が高次の振動モードとなっていなければならない。
このような状態を実現するためには、振動梁の縦横の形状は、縦が横幅に対して少なくとも3倍以上長くならなくてはならない。このように振動梁を縦長に配置することは、測定精度の向上のためにも重要である。
【0082】
更に、振動梁形状を2次元的に自由に加工できるため、複雑な形状の振動梁や振動安定性を高める効果のある形状の振動梁を容易に作ることができる。
【0083】
ここでは、2つの音叉の振動梁部分を向き合わせで結合させた双音叉構造の振動子について説明する。
双音叉構造では、2本の振動梁32a,32bは基板31に対して水平に同時に向き合った方向または、離れる方向に振動するため、振動梁32a,32bの振動によって生じる力はキャンセルされ、振動梁32a,32bに固定された基板31に伝達される力は、単独に1本の振動梁が振動している場合に比べ少なくなる。
【0084】
このため、振動梁32a,32bの固定端から基板側に振動エネルギーが漏れにくくなり、振動梁32a,32bの振動の鋭さを示すQ値は上がる。
また、振動梁32a,32bをダイアフラム上に作製し圧力計を構成する場合、ダイアフラムの共振周波数が振動梁32a,32bの共振周波数と一致する場合がある。このような場合には、振動梁32a,32bの振動エネルギーの漏れが小さい場合には、ダイアフラムとの共振現象による干渉は小さくなり、振動梁32a,32bの共振周波数のロックインや振幅の変化を抑えることができる。
【0085】
凸凹部37は、基板31の面に対して水平方向に連続して、あるいは垂直方向に連続して、あるいは水平方向と垂直方向とに連続して形成されて格子状に構成されたので、接触時の接触面積を減らすことができ、振動梁が狭いギャップで対向する電極に付着してしまうことを防止する効果がある。振動梁の振動方向に対する厚さに対して100倍以上に長さをもち、歪感度の高い振動梁を形成することができる。
【0086】
図16は本発明の振動式トランスデューサの具体的回路図を示すものである。
図において、Vbはバイアス電圧(定電圧)、Viは駆動電圧(交流)、R1は抵抗、OP1は演算増幅器である。
第1の電極板34aには、バイアス電圧Vbが加えられ、第3の電極板34c,第4の電極板34dには駆動電圧Viが印加され、第2の電極板34bより第1の振動梁32a,第2の振動梁32bの振動周波数の信号が取り出される。
即ち、この場合は、第3の電極板34c,第4の電極板34dは励振電極、第2の電極板34bは検出電極として使用される。
【0087】
この結果、4端子素子では、振動梁およびそれに接続されている電極がガード電極として作用し、励起電極と検出電極を離すことができるため、励起信号が検出回路側に回り込むクロストークが抑えられ、SN比が良くなる振動式トランスデューサが得られる。
【0088】
図17は本発明の振動式トランスデューサの具体的回路図を示すものである。
図において、Vbはバイアス電圧(定電圧)、Viは駆動電圧(交流)、R1は抵抗、OP1は演算増幅器である。
第1の電極板34aには、バイアス電圧Vbが加えられ、第2の電極板34bには駆動電圧Viが印加され、
第3の電極板34c,第4の電極板34dより、第1の振動梁32a,第2の振動梁32bの振動周波数の信号が取り出される。
即ち、この場合は、第2の電極板34bは励振電極、第3の電極板34c,第4の電極板34dは検出電極として使用される。
【0089】
この結果、4端子素子では、振動梁およびそれに接続されている電極がガード電極として作用し、励起電極と検出電極を離すことができるため、励起信号が検出回路側に回り込むクロストークが抑えられ、SN比が良くなる振動式トランスデューサが得られる。
【0090】
図18は本発明の振動式トランスデューサの他の具体的回路図を示すものである。
図において、Vbはバイアス電圧(定電圧)、Viは駆動電圧(交流)、R1は抵抗、OP1は演算増幅器である。
第1の電極板34aには、バイアス電圧Vbが加えられ、第3の電極板34c,第4の電極板34dには駆動電圧Viが印加され、第2の電極板34bより、第1の振動梁32a,第2の振動梁32bの振動周波数の信号が取り出される。
即ち、この場合は、第3の電極板34c,第4の電極板34dは励振電極、第2の電極板34bは検出電極として使用される。
ガード電極板36は、第1の電極板34aと第2の電極板34bと第3の電極板34cと第4の電極板34dとの周囲を囲んで設けられている。
【0091】
この結果、
第1、第2,第3,第4の電極板34a,34b,34c,34dを除いて、基板31の面に平行に一平面状に、これら電極の周囲を囲む様に設けられ、各電間のクロストークを防止するためのガード電極板36が設けられたので、ガード電極板36を接地することで、さらにクロストークを減らすことができる振動式トランスデューサが得られる。
【0092】
図19は本発明の振動式トランスデューサの他の具体的回路図を示すものである。
本実施例においては、図18実施例の励振電極と検出電極とを入れ替えて接続した実施例である。
即ち、第2の電極板34bを励振電極とし、第3の電極板34c,第4の電極板34dを検出電極としたものである。
【0093】
図20は本発明の振動式トランスデューサの他の具体的回路図を示すものである。
本実施例において、Vbはバイアス電圧(定電圧)、Viは駆動電圧(交流)、R1は抵抗、OP1は演算増幅器である。
第1の電極板34aには、駆動電圧(交流)Viとバイアス電圧Vbが加えられ、第2の電極板34bより第1の振動梁32a,第2の振動梁32bの振動周波数の信号が取り出される。
即ち、この場合は、第1の電極板34aは励振電極、第2の電極板34bは検出電極として使用される。
【0094】
この結果、2端子素子では、リード端子がすくなく、ハーメチックのピン本数が少なくでき、パッケージの小型化が可能になる振動式トランスデューサが得られる。
【0095】
図21は本発明の振動式トランスデューサの他の具体的回路図を示すものである。
本実施例においては、図20実施例の励振電極と検出電極とを入れ替えて接続した実施例である。
即ち、第2の電極板34bを励振電極とし、第1の電極板34aを検出電極としたものである。
【0096】
次に、凸凹部37の形成について詳述する。
凸凹部37は、図4に示す如く、第1の振動梁32a,第2の振動梁32bと電極34a,34b,34c,34dの側面を加工する際に、用いるエッチングによって発生するスキャロップを利用する場合、あるいはエッチング時に微小な突起をつけたマスクパターンを使用して形成する場合がある。
【0097】
スキャップを作製するためには、例えば、Boschプロセスを利用する。
ボッシュプロセス (Bosch process) は、エッチングと側壁保護を繰り返しながら行うエッチング手法で、アスペクト比の高いエッチングが可能である。
【0098】
図22に示す如く、プロセスは以下の2つの処理を繰り返す。
41はシリコン基板、42はマスクパターンである。
エッチングステップ
図22(b)、図22(d)に示す如く、主に六フッ化硫黄 (SF6) を用いて等方エッチングを行う。
エッチング穴底面に保護膜が付いている場合があるので、底面の保護膜を除去する働きもある。
【0099】
(2)保護ステップ
図22(c)、図22(e)に示す如く、フロン系のガス(C4F8など)を用いて側壁にCF系皮膜をデポし、側壁を保護することで横方向のエッチングを抑制する。
【0100】
エッチングステップと保護ステップを繰り返すことで、スキャロップという細かいヒダ状の凸凹が形成される。
エッチングステップと保護ステップの時間を調整することでこの凸凹の度合いが制御できる。
図23はエッチングの途中経過を示した図、図24は図23の完成図である。
【0101】
図25から図27は、スキャロップと平面状のマスクパターンで微小な突起をつけたものを組み合わせることによって形成された凸凹部37の実施例を示す。
図25(b)は、図25(a)に示す如きマスクパターン51を使用して、シリコン基板52にスキャロップを形成した例を示す。
【0102】
図26(b)は、図26(a)に示す如きマスクパターン53を使用して、シリコン基板54に通常の異方性エッチングした例を示す。
図26(c)は、図26(a)に示す如きマスクパターン53を使用して、シリコン基板55にBoschプロセスにてエッチングし、スキャロップを形成した例を示す。
【0103】
図27(b)は、図27(a)に示す如きマスクパターン56を使用して、シリコン基板57に通常の異方性エッチングした例を示す。
図27(c)は、図27(a)に示す如きマスクパターン56を使用して、シリコン基板58にBoschプロセスにてエッチングし、スキャロップを形成した例を示す。
【0104】
次に、本発明の振動梁32とシェル38との関係について説明する。
図28(a)は、本発明の振動梁32a,32bとシェル38との関係略図を示し、図28(b)に、図29従来例の振動梁3とシェル4との関係略図を示す。
【0105】
振動梁32a,32bを、基板31の面に平行方向より垂直方向の断面厚さが長い断面形状を有する、即ち、縦長に配置することによって、シェル38の幅L1も、図29従来例の幅L2に比べ例えば4分の1ほどに狭くすることができるため、シェル厚さを一定にした場合、耐圧が4倍ほどに向上出来る。
同じ耐圧を実現するためには、シェル38の膜厚は4分の1ほどに薄くてよい。
Pは圧力を示す。
【0106】
図29従来例の垂直振動型の場合、駆動電極はシェル4側に作り込まねばならず、高い圧力が印加された場合、シェル4が変形して電極と振動梁間距離が変化すると振動梁に働く静電吸引力に影響し、周波数変化特性が非線形になる。
【0107】
磁石が無くなることによって、圧力センサ以外の用途としてストレインゲージとしても使用できるようになる。
また、同一の作製工程でマスクパターンを変えるだけでさまざまな振動梁形状が作れるため、高感度な加速度計や振動ジャイロなど作製プロセスとしても応用できる。
【0108】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
したがって本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形をも含むものである。
【符号の説明】
【0109】
1 シリコン基板
2 測定ダイアフラム
3 振動梁
4 シェル
5 真空室
31 基板
311 基板31の面
32a 第1の振動梁
32b 第2の振動梁
33 真空室
34a 第1の電極板
34b 第2の電極板
34c 第3の電極板
34d 第4の電極板
36 ガード電極
37 凸凹部
38 シェル
101 SOI基板
102 シリコン層
103a 振動梁
103b 振動梁
104a 電極
104b 電極
104c 電極
105 凸凹部
106 絶縁膜
107 空間(ボイド)
108 ポリシリコン膜
109 開口部
111 酸化ケイ素皮膜
112 ポリシリコン層
113 穴またはスリット
114 犠牲層エッチング層
115 ポリシリコン膜
116 穴
117 コンタクトホール
118 電極パッド
Vb バイアス電圧
Vb1 バイアス電圧
Vb2 バイアス電圧
Vi 駆動電圧
R1 抵抗
OP1 演算増幅器
41 シリコン基板
42 マスクパターン
51 マスクパターン
52 シリコン基板
53 マスクパターン
54 シリコン基板
55 シリコン基板
56 マスクパターン
57 シリコン基板
58 シリコン基板
P 圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン単結晶の基板に設けられた振動梁と、該振動梁の周辺に隙間が維持されるように該振動梁を囲み前記基板と共に真空室を構成するシリコン材よりなるシェルと、前記振動梁を励振する励振手段と、前記振動梁の振動を検出する振動検出手段と、を具備し、前記振動梁の共振周波数を測定することにより前記振動梁に印加された歪を測定する振動式トランスデューサにおいて、
前記真空室内に設けられ前記基板に対して引張の応力が付与され前記基板面に平行方向より垂直方向の断面厚さが長い断面形状を有し、前記基板に平行に且つ互いに平行に設けられた第1,第2のシリコン単結晶の振動梁と、
前記基板面に平行に設けられ前記第1,第2の振動梁の一端に接続される板状の第1の電極板と、
前記基板面に平行に設けられ前記第1,第2の振動梁の間に設けられた第2の電極板と、
前記第1,第2の振動梁の両側に前記第1,第2の振動梁を挟んで且つ前記第1,第2の振動梁と前記第1,第2の電極板と共に前記基板面に平行な一平面状をなす板状の第3,第4の電極板と、
前記振動梁と第2,第3,第4の電極板との対向する側壁部面に設けられ相互の付着を防止する凸凹部と、
を具備したことを特徴とする振動式トランスデューサ。
【請求項2】
前記凸凹部は、前記基板面に対して水平方向に連続して、あるいは垂直方向に連続して、あるいは水平方向と垂直方向とに連続して形成されて格子状に、構成されたこと
を特徴とする請求項1記載の振動式トランスデューサ。
【請求項3】
前記第1の電極板が前記振動梁のバイアス電圧電極板、前記第2の電極板が前記振動梁の振動検出電極板として使用され、
前記第3,第4の電極板が前記振動梁を励振する励振電極として使用されたこと、
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の振動式トランスデューサ。
【請求項4】
前記第1の電極板が前記振動梁のバイアス電圧電極板、前記第2の電極板が前記振動梁を励振する励振電極板、として使用され、
前記第3,第4の電極板が前記振動梁の振動を検出する振動検出電極板として使用されたこと、
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の振動式トランスデューサ。
【請求項5】
前記第1,第2の電極板のいずれか一方が励振電極とバイアス電圧電極、他方が振動検出電極として使用されたこと
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の振動式トランスデューサ。
【請求項6】
前記第1,第2,第3,第4の電極板を除いて前記基板面に平行に一平面状に設けられ各電極間のクロストークを防止するためのガード電極板
を具備したことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の振動式トランスデューサ。
【請求項7】
前記振動梁は、両端固定梁であること
を特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の振動式トランスデューサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2012−198036(P2012−198036A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60683(P2011−60683)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】