説明

排ガス浄化装置

【課題】燃費悪化を抑制しつつ触媒暖機の早期完了を図った排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】自身の温度が放出温度未満では排ガス中のHCを吸着し、自身の温度が放出温度以上になると吸着したHCを放出する吸着材と、自身の温度が活性化温度以上になると吸着材から放出されたHCを酸化する触媒と、吸着材の上流側に配置され、排ガスと熱交換して排ガスから熱回収する熱回収器と、を備える。そして、吸着材温度が放出温度未満であり、かつ、触媒温度が活性化温度未満である暖機要求状態の時に、熱回収器による熱回収量を減少させる熱回収減少制御を実施し(S13)、かつ、内燃機関の出力を増大させる出力増大制御を実施し(S18)、かつ、発電量増大制御(駆動負荷増大制御)を実施する(S18)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガス中の特定成分を吸着材で吸着させる排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排ガス中の特定成分(例えばHC)を吸着する吸着材は、吸着材温度が放出温度T1未満ではHCを吸着し、放出温度T1以上になると吸着していたHCを放出する。そして、吸着材から放出されたHCを酸化する酸化触媒は、触媒温度が活性化温度T2以上になると活性化して酸化可能な状態となる。そして、活性化温度T2は放出温度T1よりも高温(T2>T1)であるのが一般的である。要するに、酸化触媒の温度が活性化温度T2に達するまでの間、吸着材でHCを吸着させておく。
【0003】
ところで、内燃機関の冷間始動時において、触媒温度を早期に活性化温度T2にまで上昇させるべく点火時期を遅角させる制御(点火遅角制御)が特許文献1,2等にて開示されている。但し、内燃機関の始動時から直ぐに点火遅角制御を実施すると、吸着されたHCが飽和量に達していない状態で吸着材温度が放出温度T1以上となり、吸着材による吸着能力が十分に発揮されなくなる。そこで、この種の排ガス浄化装置では、吸着材温度が放出温度T1に達した時点から点火遅角制御を開始させている。これにより、吸着材での吸着量を十分に増やしつつ触媒暖機の早期完了を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−116370号公報
【特許文献2】特開2001−164930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1記載の制御では、点火時期を遅角させることで触媒暖機を図るものであるため、点火を遅角させることによる燃費悪化を招く。なお、この問題は、排ガス中のHCを吸着して酸化させる場合に限らず、例えばNOxを吸着して還元させる場合にも同様に生じ得る。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、燃費悪化を抑制しつつ触媒暖機の早期完了を図った排ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明では、自身の温度が放出温度未満では内燃機関の排ガス中の特定成分を吸着し、自身の温度が前記放出温度以上になると吸着した前記特定成分を放出する吸着材と、自身の温度が前記放出温度より高い活性化温度以上になると、前記吸着材から放出された前記特定成分を酸化又は還元する触媒と、前記吸着材の上流側に配置され、排ガスと熱交換して排ガスから熱回収する熱回収器と、前記吸着材の温度が前記放出温度以上であり、かつ、前記触媒の温度が前記活性化温度未満である暖機要求状態であるか否かを判定する判定手段と、前記暖機要求状態であると判定されている時に、暖機要求状態でないと判定されている時に比べて前記熱回収器による熱回収量を減少させる熱回収減少制御を実施する熱回収減少制御手段と、前記暖機要求状態であると判定されている時に、暖機要求状態でないと判定されている時に比べて前記内燃機関の出力を増大させる出力増大制御を実施する出力増大制御手段と、前記暖機要求状態であると判定されている時に、暖機要求状態でないと判定されている時に比べて、前記内燃機関の出力により駆動する機器の駆動負荷を増大させる駆動負荷増大制御を実施する駆動負荷増大制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
これによれば、排ガスから熱回収する熱回収器を吸着材の上流側に配置し、暖機要求状態である時には熱回収量を減少させる(熱回収減少制御)ので、内燃機関の始動直後における排ガス温度上昇を促進できる。さらに、暖機要求状態である時には内燃機関の出力を増大させる(出力増大制御)ので、内燃機関の始動直後における排ガス温度上昇をより一層促進できる。したがって、点火時期を遅角させることなく(或いは点火遅角量を抑制して)排ガス温度上昇を促進できるので、点火時期遅角による燃費悪化を抑制しつつ触媒暖機の早期完了を図ることができる。
【0010】
ここで、出力増大制御を実施すると、運転者の出力要求に反して内燃機関の出力が増大し、例えば車両の走行出力が増大して運転者に違和感を与えてしまうことが懸念される。この懸念に対し上記発明によれば、出力増大制御を実施している時には内燃機関の出力により駆動する機器の駆動負荷を増大さる(駆動負荷増大制御)ので、運転者の走行出力要求に対する実際の走行出力が、出力増大制御を実施することに伴い増大することを解消できる。よって、上述した「運転者に違和感を与えてしまう」といった懸念を解消できる。
【0011】
請求項2記載の発明では、前記暖機要求状態であると判定されている時に前記出力増大制御を実施することなく前記熱回収減少制御を実施することで、前記触媒へ供給する熱エネルギを所定値以上確保できるか否かを判定する出力増大要否判定手段を備え、前記出力増大要否判定手段により前記熱エネルギを所定値以上確保できないと判定されたことを条件として、前記出力増大制御を実施することを特徴とする。
【0012】
これによれば、出力増大制御を実施しなくとも熱回収減少制御の実施だけで触媒暖機に要求される熱エネルギを排ガスから供給できる場合には、出力増大制御は実施させずに熱回収増大制御を実施させることとなるので、出力増大制御の実施により燃費が悪化する機会を減らすことができる。
【0013】
請求項3記載の発明では、前記機器は、前記内燃機関の出力により駆動して発電する発電機であり、バッテリの充電状態が、前記出力増大制御による出力増大分により前記発電機で発電された電力を充電可能な状態であるか否かを判定する発電力増大可否判定手段を備え、前記出力増大分により発電された電力を充電可能な状態であると判定されたことを条件として、前記出力増大制御を実施することを特徴とする。
【0014】
例えば、バッテリの充電状態(SOC)が満充電(SOC=100%)或いは100%に近い状態である場合には、内燃機関の出力増大分を発電機で発電しても、その発電電力をバッテリへ充電させることができない(充電できたとしても過充電状態となりバッテリ寿命が短くなる)。これに対し上記発明によれば、バッテリのSOCが高く出力増大分で発電した電力を充電できない状態である場合には、出力増大制御の実施は許可されないので、「出力増大制御により車両の走行出力が増大して運転者に違和感を与えてしまう」といった懸念を確実に解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態において、エンジン制御システム全体の概略構成を示す図。
【図2】図1の浄化装置単体を示す図。
【図3】第1実施形態において、熱回収減少制御、エンジン出力増大制御及び発電量増大制御の処理手順を示すフローチャート。
【図4】図3の処理を実施したことによる一態様を示すタイムチャート。
【図5】本発明の第2実施形態において、熱回収減少制御、エンジン出力増大制御及び発電量増大制御を実施したことによる一態様を示すタイムチャート。
【図6】本発明の第3実施形態において、エンジン制御システム全体の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0017】
(第1実施形態)
本実施形態にかかる排ガス浄化装置は、点火式のガソリンエンジン(内燃機関)に適用されたものであり、先ず、図1を用いてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。
【0018】
内燃機関であるエンジン11の吸気管12には、スロットル開度を調整するスロットルバルブ13が設けられ、各気筒に空気を導入する吸気マニホールド14の各気筒の分岐管部には、それぞれ燃料を噴射する燃料噴射弁15が取り付けられている。
【0019】
一方、エンジン11の排気管16のうち排気マニホールド17の下流側部分には、排ガス中の有害成分を低減させる浄化装置30が設置されている。図2(a)は浄化装置30を排ガス流れ方向から見た図であり、図2(b)は(a)の拡大図である。図2に示すように、浄化装置30は、HC,CO,NOxを浄化する三元触媒又はHC,COを浄化する酸化触媒(以下、単に「触媒33」と記載)と、HCを吸着する吸着材32とを有して構成されている。
【0020】
より詳細に説明すると、浄化装置30は、コージェライト等のセラミックでハニカム状に形成された担体31の内壁面に、ゼオライト等の吸着材32をコーティングし、この吸着材32の表面に三元触媒又は酸化触媒等の触媒33をコーティング等により担持させたものである。触媒33は無数の微細孔を有する多孔状に形成され、排ガス中のHCが触媒33の微細孔を通過して吸着材32に吸着されるようになっている。
【0021】
浄化装置30の触媒33の担持量は、浄化装置30の上流部よりも下流部の方が多くなるように形成され、浄化装置30の下流部でのHC浄化反応量を多くするようにしている。また、吸着材32を形成しているゼオライトは、その原料であるシリカ/アルミナの比が大きいほど耐熱性が良くなるが、HC吸着率が低下してしまうという特性をもっているため、浄化装置30の吸着材32(ゼオライト)は、高熱に晒される上流部のシリカ/アルミナの比を大きくして耐熱性を確保し、上流部よりも温度が低くなる下流部のシリカ/アルミナの比を小さくしてHC吸着率を高めるようにしている。
【0022】
吸着材32は、自身の温度が放出温度T1未満となっている低温時には、排ガス中のHCを吸着する。一方、自身の温度が放出温度T1以上になると、吸着しているHCが離脱して放出される。また、触媒33は、自身の温度が活性化温度T2(例えば約250℃)以上になると活性化して、HC,CO,NOxを酸化、還元する機能が発揮されるようになる。そして、活性化温度T2は放出温度T1よりも高い温度である。
【0023】
そして、排ガス温度が低温となっているエンジン11の冷間始動時には、触媒温度Tcが活性化温度T2未満となっているため触媒33は未活性状態であり、エンジン11から排出されるHCを浄化することができない。そこで、触媒33が未活性でHCを浄化できない期間には、浄化装置30に流入する排ガス中のHCは、触媒33の微細孔を通過して吸着材32に一旦吸着される。その後、浄化装置30の温度が上昇して、吸着材温度Taが放出温度T1まで上昇するとともに触媒温度Tcが活性化温度T2まで上昇すると、吸着材32から離脱したHCが触媒33で酸化されて浄化されることとなる。
【0024】
なお、触媒33は吸着材32の上層側に担持されているので、触媒33は排ガスに直接晒されることとなる。そのため、触媒温度Tcは吸着材温度Taよりも常に高温となる。よって、吸着材温度Taが放出温度T1に達してHCが放出される時期から、触媒温度Tcが活性化温度T2に達して浄化可能になる時期までの時間を短くすることができる。よって、吸着材32から放出されるHCが触媒33で浄化されることなく浄化装置30から排出されてしまうことを抑制できる。
【0025】
エンジン制御回路(以下「ECU18」と記載)は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された燃料噴射制御プログラム(図示せず)を実行することで、エンジン運転状態(例えばエンジン回転速度及びエンジン負荷)に応じて燃料噴射弁15の燃料噴射量を制御する。具体的には、エンジン回転速度及びエンジン負荷と最適噴射量との関係を予め試験して取得しておき、その試験に基づき作成されたエンジン回転速度及びエンジン負荷と最適噴射量との関係を示す噴射量マップを参照して、エンジン回転速度及びエンジン負荷に基づき最適噴射量(目標噴射量)を算出する。
【0026】
また、ECU18は、前記ROMに記憶された点火制御プログラム(図示せず)を実行することで、点火プラグ19の点火時期を制御する。具体的には、エンジン回転速度及びエンジン負荷と最適噴射量との関係を予め試験して取得しておき、その試験に基づき作成されたエンジン回転速度及びエンジン負荷と最適点火時期との関係を示す点火時期マップを参照して、エンジン回転速度及びエンジン負荷に基づき最適点火時期(目標点火時期)を算出する。
【0027】
そして、エンジン11の冷間始動時には、燃料噴射量を増量させる増量補正や、点火時期を遅角させる遅角補正等の触媒暖機制御(点火遅角制御)を実施することで、排ガス温度の上昇を促進させて触媒33の早期活性化を図ることができる。
【0028】
図1に示すエンジン11は、冷却水(熱媒体)により冷却される水冷式であり、エンジン11と熱交換した冷却水はラジエータ20により外気と熱交換して冷却される。エンジン11及びラジエータ20間にて冷却水を循環させる循環配管21には、ラジエータ20をバイパスして冷却水を循環させるバイパス配管22が接続されている。そして、冷却水温度が所定以下である冷間始動時には、ラジエータ20をバイパスしてバイパス配管22を冷却水が循環するようサーモスタット23(切替バルブ)が作動する。これによりエンジン11の暖機促進が図られる。一方、冷却水温度が所定以上であれば、冷却水がラジエータ20を循環するようサーモスタット23が作動する。
【0029】
なお、エンジン出力を駆動源として作動するウォータポンプ24により冷却水は循環する。したがって、エンジン回転速度が速いほどウォータポンプ24の回転速度が速くなり、循環流量も増大し、ラジエータ20により冷却水が外気と熱交換する量(冷却される量)も増大する。また、冷却水は、車室内を空調する空調装置の熱源としても利用されており、車室内へ向けて送風される送風空気は、冷却水と熱交換することで加熱されて温風となり、車室内へ吹き出される。
【0030】
排気管16のうち排気マニホールド17の下流側部分、かつ浄化装置30の上流側部分には、排ガスと熱交換する熱媒体を循環させることにより排ガスから熱回収する熱回収器40が設置されている。本実施形態では、熱回収器40に循環させる熱媒体として、ウォータポンプ24により循環する冷却水が用いられている。
【0031】
エンジン11及び熱回収器40間にて冷却水を循環させる熱回収用配管25には、冷却水の流量を調整する流量調整バルブ41(流量調整手段)が設けられている。この流量調整バルブ41は電磁式のバルブであり、ECU18により電磁バルブの開度が制御される。そして、そのバルブ開度を制御することで、冷却水が熱回収器40を循環する循環流量が調整(制御)される。
【0032】
したがって、流量調整バルブ41のバルブ開度を全閉にして熱回収器40への循環流量をゼロにすれば、ウォータポンプ24から吐出される冷却水の全量が循環配管21を循環する。一方、流量調整バルブ41を開ければ、ウォータポンプ24から吐出される冷却水の一部が熱回収器40へ循環し、冷却水は排ガスと熱交換して熱回収する。このように排ガスから熱回収することで、エンジン11の冷間始動時において、エンジン11の暖機促進が図られるとともに、車室内へ送風される空調風の早期加熱を図ることができる。
【0033】
排気管16のうち熱回収器40の上流側部分には、排ガス温度を検出する排ガス温度センサ42が備えられている。排ガス温度センサ42により検出された温度は、熱回収器40へ流入してくる排ガスであって、熱交換される前の排ガスの温度(以下、「排ガス入口温度Tex」と記載)である。ECU18は、検出された排ガス入口温度Texに基づき、流量調整バルブ41の作動を制御して熱回収器40への循環流量を調整することで、排熱回収量を調整する。
【0034】
図1に示す車両は所謂ハイブリッド式の車両であり、エンジン11の出力に加えて、バッテリ26から電力供給されて駆動するモータジェネレータ27(発電機)の出力を走行駆動源とする。また、エンジン出力によりモータジェネレータ27を駆動させることにより発電した電力をバッテリ26へ充電させることも可能である。図1の例では、エンジン11により回転駆動するクランクシャフトはモータジェネレータ27によりアシストされて駆動する。そして、エンジン11及びモータジェネレータ27の出力がトランスミッション28へ伝達されて駆動輪29を駆動させる。
【0035】
ECU18は、バッテリ26の充電状態(SOC)が所定範囲内となるよう充放電制御する。特に、充電率を示すSOCが下限値よりも低下している場合にはエンジン出力によりモータジェネレータ27で発電させてバッテリ26を充電させる。よって、この場合にはモータジェネレータ27による上記アシストは不可である。また、SOCが100%になっている場合、或いは上限値よりも高くなっている場合には、バッテリ26を充電させるとバッテリ26の劣化を招く。よって、この場合にはバッテリ26への充電を禁止、或いはモータジェネレータ27での発電を禁止させるように制御する。
【0036】
ところで、エンジン11の冷間始動時において、上述した点火時期の遅角補正等の触媒暖機制御(点火遅角制御)を実施すると燃費悪化を招く。そこで本実施形態では、このような燃費悪化を抑制すべく、吸着材温度Taが放出温度T1に達してから、触媒温度Tcが活性化温度T2に達するまでは、以下に説明する「熱回収減少制御」「エンジン出力増大制御」及び「発電量増大制御(駆動負荷増大制御)」を実施する。なお、吸着材温度Ta及び触媒温度Tcは、排ガス温度センサ42の検出値(排ガス入口温度Tex)、及び熱回収量等に基づき推定する。
【0037】
「熱回収減少制御」では、触媒温度Tcの温度上昇を促進して触媒温度Tcが活性化温度T2に達することを早めさせるよう、熱回収器40への冷却水の循環を停止させ(或いは循環流量を低下させ)て、熱回収量を最小にする。これにより、排ガス入口温度Texの上昇を図る。「エンジン出力増大制御」では、上述した噴射量マップに基づき算出した目標噴射量(通常時目標噴射量)を増量するよう補正することで、エンジン出力を増大させる。これにより、排ガス入口温度Texの上昇が促進され、触媒温度Tcが活性化温度T2に達することを早まらせて触媒暖機の早期完了を図る。
【0038】
なお、触媒温度Tcが活性化温度T2に達すると、その時点でエンジン出力増大制御及び発電量増大制御を終了し、それ以降は通常時目標噴射量で燃料を噴射するよう制御する。
【0039】
図3は、ECU18が有するマイクロコンピュータによる熱回収減少制御、エンジン出力増大制御及び発電量増大制御の処理手順を示すフローチャートである。当該処理は、イグニッションスイッチがオン操作されたことをトリガとして起動した後、所定周期(例えば先述のCPUが行う演算周期又は所定のクランク角度毎)で繰り返し実行される。
【0040】
先ず、図3に示すステップS10において、排ガス温度センサ42により検出された排ガス入口温度Texを取得する。また、取得した排ガス入口温度Tex及び熱回収器40による熱回収量に基づき触媒温度Tcを推定する。熱回収量は、流量調整バルブ41の開度及びエンジン冷却水温度に基づき算出すればよい。そして、算出した熱回収量に基づき熱回収器40での熱交換による温度低下分を算出し、その温度低下分を排ガス入口温度Texから減算することで触媒温度Tcを算出する。なお、図3の処理では、吸着材温度Taは触媒温度Tcと同じであるとみなす。
【0041】
続くステップS11(判定手段)では、ステップS10で算出した触媒温度Tcが活性化温度T2未満であるか否かを判定する。Tc<T2であると判定された場合には(S11:YES)、続くステップS12(判定手段)において、吸着材温度Taが放出温度T1より高いか否かを判定する。ここでは、吸着材温度Taが触媒温度Tcと同じ温度であるとみなす。Tc>T1であると判定された場合には(S12:YES)、触媒温度Tcの上昇が要求される暖機要求状態であるとみなし、続くステップS13(熱回収減少制御手段)において、流量調整バルブ41を全閉に制御して熱回収減少制御を実施する。
【0042】
要するに、触媒温度Tc<活性化温度T2かつ吸着材温度Ta>放出温度T1であれば、吸着材32からHCが放出されつつも、その放出されたHCを触媒33で浄化できない状態であるとみなして、早期に触媒暖機を完了させるべく熱回収減少制御を実施する。これにより、排ガス入口温度Texの上昇ひいては触媒温度Tc及び吸着材温度Taの上昇を促進できるので、触媒温度Tcが活性化温度T2に達するまでの時間を短くできる。
【0043】
一方、吸着材温度Ta≦放出温度T1であると判定された場合には(S12:NO)、吸着材32でHCを吸着させている状態であるとみなして図3の処理を一旦終了する。但し、吸着材温度Ta≦放出温度T1の場合であっても、吸着材32で吸着されるHCが飽和量に達している場合には、ステップS13に進み熱回収減少制御を実施するようにしてもよい。
【0044】
また、触媒温度Tc≧活性化温度T2であると判定された場合には(S11:NO)、ステップS20に進み、エンジン出力増大制御を実施することなく通常運転時の目標エンジン出力となるようエンジン制御する。例えば、通常時目標噴射量となるよう燃料噴射を制御する。また、点火遅角制御による触媒暖機も実施しない。
【0045】
続くステップS14(出力増大要否判定手段)では、熱回収減少制御のみで触媒暖機に要する熱エネルギを触媒33へ十分に供給できるか否かを判定する。具体的には、熱回収減少制御により温度上昇した排ガスにより触媒33へ供給される熱エネルギ、及び現時点での触媒温度Tcに基づき、触媒温度Tcが活性化温度T2にまで達するのに要する時間を算出し、その時間が予め設定された目標時間以内であれば、熱回収減少制御のみで触媒暖機に要する熱エネルギを供給可能と判定する。
【0046】
ステップS14で肯定判定されれば、出力増大制御及び点火遅角による触媒暖機等を実施することなく、図3の処理を終了する。一方、ステップS14で否定判定されれば、続くステップS15において、出力増大制御によりエンジン出力が増加するその出力増加分を算出する。そして、次のステップS16にて、ステップS15で算出した出力増加分に相当する、モータジェネレータ27による発電量を算出する。
【0047】
続くステップS17(発電力増大可否判定手段)では、ステップS16で算出した発電量がバッテリ26の充電可能量よりも大きいか否か、つまり、前記発電量を全てバッテリ26へ充電させてもSOCの上限値を超えることにならないか否かを判定する。発電量≦充電可能量と判定されれば(S17:NO)、続くステップS18(出力増大制御手段,駆動負荷増大制御手段(発電量増大制御手段))において、エンジン出力増大制御を実施するとともに発電量増大制御を実施する。一方、発電量>充電可能量と判定されれば(S17:YES)、ステップS19に進み、エンジン出力増大制御及び発電量増大制御を実施することなく、点火遅角制御を実施することで排ガス温度を上昇させて触媒暖機を行う。
【0048】
エンジン出力増大制御を実施しない時には、先述した噴射量マップに基づき算出した目標噴射量(通常時目標噴射量)となるよう噴射制御する。この通常時目標噴射量に対して、予め設定された所定量だけ増量させる制御が、上記エンジン出力増大制御である。また、モータジェネレータ27による発電量を、前記増量分に相当する出力増加分だけ増大させてバッテリ26へ充電させる制御が、上記発電量増大制御である。
【0049】
図4は、図3の処理を実施したことによる一態様を示すタイムチャートである。図4の(a)は車両の走行動力、(b)はエンジン出力、(c)はバッテリ26の充放電量、(d)はエンジン直下排気熱量、(e)は熱回収器40による排気熱回収量、(f)は触媒温度Tc、(g)中の実線は触媒33へ流入するHCの流量、(g)中の一点鎖線は触媒33から流出するHCの流量を示す。
【0050】
エンジンを始動したt1時点から吸着材温度Taが放出温度T1に達するまでは、以下に説明する「熱回収増大制御」及び「エンジン出力減少制御」を実施してもよい。「熱回収増大制御」では、吸着材温度Taの温度上昇を抑制して吸着材温度Taが放出温度T1に達することを遅らせるよう、熱回収器40を循環する冷却水の流量(循環流量)を最大にして、最大能力で熱回収させる。これにより、浄化装置30へ流入する排ガス温度の低下を図る。「エンジン出力減少制御」では、上述した噴射量マップに基づき算出した目標噴射量(通常時目標噴射量)を減量するよう補正することで、エンジン出力を減少させる。これにより、浄化装置30へ流入する排ガス温度の低下を図る。
【0051】
このように、t2時点までの期間に熱回収増大制御を実施すれば、(e)に示す如く排熱回収量は増大する。また、t2時点までの期間にモータ出力増大制御を実施すれば、エンジン出力減少制御を実施しても走行動力の低下が回避され、走行動力を、ドライバが要求する走行動力に維持させることができる。これらの制御は、エンジン直下排気温度(排ガス入口温度Tex)が放出温度T1に達したt2時点、或いは、推定した触媒温度Tc(つまり吸着材温度Ta)が放出温度T1に達した時点で両制御を終了させる。
【0052】
その後、触媒温度Tc(つまり吸着材温度Ta)が放出温度T1に達したt2時点で熱回収増大制御及びエンジン出力減少制御を終了させるとともに、熱回収減少制御、エンジン出力増大制御及び発電量増大制御を実施する。なお、触媒温度Tcが活性化温度T2に達した時点で熱回収減少制御、エンジン出力増大制御及び発電量増大制御を終了させる。
【0053】
t2時点以降に熱回収減少制御を実施することにより、(e)に示す如く排熱回収量は減少する。また、t2時点以降にエンジン出力増大制御を実施することにより((b)参照)、エンジン直下排気熱量は増大する((d)参照)。これらの制御の実施により、触媒温度Tcはt2時点から急上昇する((f)参照)。したがって、点火時期を遅角させることなく(或いは点火遅角量を抑制して)排ガス温度上昇を促進できるので、点火時期遅角による燃費悪化を抑制しつつ触媒暖機の早期完了を図ることができる。
【0054】
さらに、t2時点以降に発電量増大制御を実施することにより、(c)に示す如くバッテリ充電量は増大する。よって、運転者の走行出力要求に対する実際の走行出力が、出力増大制御を実施することに伴い増大することを解消でき、運転者に違和感を与えてしまうことを回避できる。
【0055】
以上に詳述した本実施形態によれば、以下の効果が発揮される。
【0056】
(1)浄化装置30の上流側に熱回収器40を配置し、熱回収器40への冷却水循環流量を調整して熱回収量を調整することで、浄化装置30へ流入する排ガスの温度(排ガス出口温度Tout)を調整することを可能にしている。
【0057】
(2)吸着材温度Taが放出温度T1に達した以降は循環流量をゼロにする(熱回収減少制御)とともにエンジン出力を増大させる(出力増大制御)ので、浄化装置30へ流入する排ガス温度の上昇を促進できる。そのため、触媒温度Tcが活性化温度T2に達するまでの時間を短くできる。よって、点火時期を遅角させることなく(或いは点火遅角量を抑制して)排ガス温度上昇を促進できるので、点火時期遅角による燃費悪化を抑制しつつ触媒暖機の早期完了を図ることができる。
【0058】
(3)出力増大制御を実施している時には、その出力増大分を発電させて充電させる(発電量増大制御)ので、運転者の走行出力要求に対する実際の走行出力が、出力増大制御を実施することに伴い増大することを解消でき、運転者に違和感を与えてしまうことを回避できる。
【0059】
(4)出力増大制御を実施しなくとも熱回収減少制御の実施だけで触媒暖機に要求される熱エネルギを排ガスから供給できるか否かを判定し(S14)、供給可能である場合には(S14:YES)、出力増大制御は実施させずに熱回収増大制御を実施させる。そのため、出力増大制御の実施機会を減らすことができ、ひいては燃費向上を図ることができる。
【0060】
(5)出力増大制御による出力増大分に相当する発電量が、バッテリ26の充電可能量よりも大きいか否かを判定し(S17)、発電量>充電可能量である場合には(S17:YES)、エンジン出力増大制御及び発電量増大制御を実施することなく、点火遅角制御を実施することで排ガス温度を上昇させて触媒暖機を行う。よって、出力増大制御により車両の走行出力が増大して運転者に違和感を与えてしまう、といった不具合を確実に回避できる。
【0061】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、吸着材温度Taが放出温度T1にまで上昇した時点で、熱回収減少制御、エンジン出力増大制御及び発電量増大制御の実施開始タイミングを同じにしているが、本実施形態では、熱回収減少制御の実施開始を、エンジン出力増大制御及び発電量増大制御よりも先に実施開始させている。
【0062】
ここで、厳密には、吸着材32は放出温度T1よりも低い温度(放出開始温度)で放出を開始するが、放出温度T1未満であれば吸着機能も発揮されている。つまり、吸着材温度Taが放出開始温度(例えば100℃)以上かつ放出温度T1(例えば150℃)未満である温度範囲にある場合には、吸着と放出が同時に為され、放出温度T1にまで上昇した時点で吸着機能が発揮されなくなる。
【0063】
そして、上記温度範囲(100℃≦Ta<150℃)では、吸着材温度Taが高くなるほど吸着率が徐々に低下していく。この点を鑑み、図5(h)に示す例では、熱回収減少制御を開始させるタイミングを吸着材32が放出開始温度に達したt2a時点とし、エンジン出力増大制御及び発電量増大制御を開始させるタイミングを、吸着材32が放出温度T1に達したt2時点としている。なお、この場合には、特許請求の範囲に記載の放出温度は放出開始温度に相当する。
【0064】
これによれば、熱回収減少制御をt2時点よりも早く開始させるので、触媒暖機の早期完了を促進できる。なお、本実施形態に反して熱回収減少制御をt2a時点よりも早く開始させてしまうと、放出開始温度に達する時期を早めてしまい、吸着材32でのHC吸着量を十分に確保できなくなる。一方、熱回収減少制御をt2a時点よりも遅く開始させてしまうと、触媒暖機の完了が遅くなってしまう。要するに本実施形態では、熱回収減少制御をt2a時点で開始することで、HC吸着量の増大及び触媒暖機の早期完了のバランスを最適にできる。
【0065】
また、本実施形態によれば、エンジン出力増大制御をt2a時点よりも遅く開始させるので、エンジン出力増大制御による排気エミッションの悪化を低減できる。なお、本実施形態に反してエンジン出力増大制御をt2時点よりも早く開始させてしまうと、放出開始温度に達する時期を早めてしまい、吸着材32でのHC吸着量を十分に確保できなくなる。一方、エンジン出力増大制御をt2時点よりも遅く開始させてしまうと、触媒暖機の完了が遅くなってしまう。要するに本実施形態では、エンジン出力増大制御をt2時点で開始することで、排気エミッションの低減及び触媒暖機の早期完了のバランスを最適にできる。
【0066】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、駆動負荷増大制御として発電量増大制御を実施している。つまり、エンジン出力増大制御による出力増大分を、モータジェネレータ27(内燃機関の出力により駆動する機器)により発電して電力に変換し、その発電電力をバッテリ26に充電させている。これに対し本実施形態では、駆動負荷増大制御として、以下に説明する蓄冷量増大制御を実施している。
【0067】
図6は、本実施形態にかかるエンジン制御システム全体の概略構成を説明する図であり、図6に示す車両には、エンジン出力を駆動源とするコンプレッサ50(内燃機関の出力により駆動する機器)を備えた空調装置が搭載されている。上記コンプレッサ50は、冷凍サイクルに冷媒を循環させるべく冷媒を吸入・吐出するものである。
【0068】
上記コンプレッサ50は、これが備える電磁駆動式のコントロールバルブ(CV50a)の通電操作によって冷媒の吐出容量を連続的に可変設定可能な可変容量型圧縮機であり、エンジン11のクランク軸の回転動力がコンプレッサ50に伝達される状況下、CV50aへの通電操作により上記吐出容量が調節される。なお、以下の説明では、上記吐出容量が0より大きくなる状態をコンプレッサ50が駆動されるものとし、上記吐出容量が0となる状態をコンプレッサ50が停止されるものとする。
【0069】
コンプレッサ50により圧縮された冷媒は、コンデンサ51にて外気と熱交換して冷却され、その後レシーバ52にて気液分離される。レシーバ52内の液冷媒は膨張弁53で急激に膨張した後、エバポレータ54(蒸発器)にて蒸発する。そして、DCモータ等によって回転駆動される送風ファン55から送風された空気は、エバポレータ54内の冷媒と熱交換することで冷却された後、冷風として車室内へ送風される。
【0070】
また、エバポレータ54は、その内部に封入される蓄冷剤54a(例えばパラフィン)を有しており、エバポレータ54内で蒸発した冷媒により蓄冷剤54aを冷却することで、蓄冷(蓄熱)可能に構成されている。詳しくは、コンプレッサ50が駆動されることでエバポレータ54に供給された冷媒と蓄冷剤54aとの熱交換によって、冷媒の熱がエバポレータ54に蓄えられる。その後、コンプレッサ50が停止される状況下、送風ファン55から送風された空気と蓄冷剤54aとが熱交換することにより、上記送風された空気が冷却され、冷却された空気が車室内へと送られることで車室内を冷房することが可能となる。
【0071】
本実施形態では、このように蓄冷可能な空調装置を採用し、エンジン出力増大制御を実施する時には、CV50aにより吐出容量を増大させ(例えば吐出容量を最大にし)つつ、送風ファン55の作動を停止させる(蓄冷量増大制御)。これにより、エンジン出力増大制御による出力増大分でコンプレッサ50を駆動させて蓄冷剤54aにて蓄冷させることができ、車室内に冷風を送風させることが要求される時には、送風ファン55を作動させて蓄冷剤54aにより送風空気を冷却する。
【0072】
なお、エバポレータ54の温度が設定温度以下になると、エバポレータ54の外表面に付着している水分が凍結(フロスト)し、熱交換効率が著しく低下してしまう。そこで、このようなフロストを防止すべく、エバポレータ54の温度(或いは、エバポレータ54の下流側の空気温度)が所定温度以下になると、CV50aにより吐出容量を低下させる。このようなフロスト防止制御を実施することで、エンジン出力増大制御を実施している最中であってもコンプレッサ50を駆動できない場合がある。このように蓄冷ができない場合には、図3のステップS17での肯定判定と同様にしてエンジン出力増大制御を禁止し、図3のステップS19と同様にして点火遅角による触媒暖機を実施させることが望ましい。
【0073】
以上により、発電量増大制御に替えて蓄冷量増大制御を実施する本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が発揮される。
【0074】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、以下のように変更して実施してもよい。また、各実施形態の特徴的構成をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0075】
・図3のステップS19を実施するにあたり、充電可能量分だけ出力増大制御及び発電量増大制御を実施しつつ、点火遅角制御を実施するようにしてもよい。これによれば、出力増大制御及び発電量増大制御を全く実施しない図3の場合に比べて、点火遅角量を抑制して燃費悪化を抑制できる。
【0076】
・上記各実施形態では、熱回収器40において、ラジエータ20を流通するエンジン冷却水と排ガスとを熱交換させているが、エンジン冷却水を、他の熱媒体と熱交換させ、前記他の熱媒体と排ガスとを熱交換させるようにしてもよい。この場合の熱回収増大制御では、エンジン冷却水の循環流量を増大させてもよいし、他の熱媒体を循環させる電動ポンプによる循環流量を増大させるようにしてもよいし、両循環流量を増大させてもよい。
【0077】
・図1に示す実施形態では、流量調整バルブ41の開度を制御することで熱回収増大制御を実施しているが、例えば、排ガスが熱回収器40をバイパスして流通するバイパス通路を排気管16に形成し、排ガスの流通経路をバイパス通路及び熱回収器40のいずれかに切り替える切替バルブを設けるようにしてもよい。この場合、切替バルブの作動を制御して、バイパス通路へ排ガスを流通させる状態から熱回収器40へ排ガスを流通させる状態に切り替えることで、熱回収増大制御を実施すればよい。
【0078】
・上記各実施形態では、熱回収量調整手段として流量調整バルブ41を設けているが、ウォータポンプ24が電動モータにより駆動されるエンジンにおいては、ウォータポンプ24の回転速度を可変制御することで循環流量を調整できるようになるため、この場合には流量調整バルブ41を廃止して、ウォータポンプ24の作動を制御することで熱回収器40への循環流量を調整するようにしてもよい。
【0079】
・図1に示す実施形態では、排気管16のうち熱回収器40の上流側部分に排ガス温度センサ42を設けて、排ガス入口温度Texから触媒温度Tc及び吸着材温度Taを推定して制御しているが、このような温度センサを浄化装置30に設けて、触媒33の温度を直接検出するようにしてもよい。或いは、排ガス温度センサ42を熱回収器40の下流側に配置して、当該排ガス温度センサ42による検出値、冷却水の循環流量及びエンジン11の運転状態に基づき触媒温度Tc及び吸着材温度Taを推定するようにしてもよい。
【0080】
・上記各実施形態では、吸着材32と触媒33とを一体に構成した浄化装置30を採用しているが、本発明の実施にあたり、吸着材32と触媒33とを別体に構成してもよい。この場合、吸着材を触媒の上流側に配置させることで、吸着材の雰囲気温度を触媒の雰囲気温度よりも高くさせておくことが望ましい。これによれば、吸着材温度が放出温度T1に達した時点から触媒が活性化温度T2に達するまでの時間(吸着も酸化もできていない時間)を短くできる。
【0081】
・上記第2実施形態では、モータ機能と発電機能とを有するモータジェネレータ27を電動モータとして採用しているが、発電機能を有していない電動モータを採用してもよい。
【0082】
・上記各実施形態では、浄化対象となる排ガス中の特定成分がHCであり、このHCを吸着/酸化させる吸着材/触媒に本発明を適用させているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、例えばリーンバーンのガソリンエンジンやディーゼルエンジンの場合において、排ガス中のNOxを特定成分として吸着させる吸着材、及びそのNOxを還元させる触媒に本発明を適用させてもよい。
【符号の説明】
【0083】
27…モータジェネレータ(内燃機関の出力により駆動する機器)、32…吸着材、33…触媒、40…熱回収器、50…コンプレッサ(内燃機関の出力により駆動する機器)、S11,S12…判定手段、S13…熱回収減少制御手段、S14…出力増大要否判定手段、S17…発電力増大可否判定手段、S18…出力増大制御手段,駆動負荷増大制御手段(発電量増大制御手段)、T1…放出温度、T2…活性化温度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の温度が放出温度未満では内燃機関の排ガス中の特定成分を吸着し、自身の温度が前記放出温度以上になると吸着した前記特定成分を放出する吸着材と、
自身の温度が前記放出温度より高い活性化温度以上になると、前記吸着材から放出された前記特定成分を酸化又は還元する触媒と、
前記吸着材の上流側に配置され、排ガスと熱交換して排ガスから熱回収する熱回収器と、
前記吸着材の温度が前記放出温度以上であり、かつ、前記触媒の温度が前記活性化温度未満である暖機要求状態であるか否かを判定する判定手段と、
前記暖機要求状態であると判定されている時に、暖機要求状態でないと判定されている時に比べて前記熱回収器による熱回収量を減少させる熱回収減少制御を実施する熱回収減少制御手段と、
前記暖機要求状態であると判定されている時に、暖機要求状態でないと判定されている時に比べて前記内燃機関の出力を増大させる出力増大制御を実施する出力増大制御手段と、
前記暖機要求状態であると判定されている時に、暖機要求状態でないと判定されている時に比べて、前記内燃機関の出力により駆動する機器の駆動負荷を増大させる駆動負荷増大制御を実施する駆動負荷増大制御手段と、
を備えることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記暖機要求状態であると判定されている時に前記出力増大制御を実施することなく前記熱回収減少制御を実施することで、前記触媒へ供給する熱エネルギを所定値以上確保できるか否かを判定する出力増大要否判定手段を備え、
前記出力増大要否判定手段により前記熱エネルギを所定値以上確保できないと判定されたことを条件として、前記出力増大制御を実施することを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記機器は、前記内燃機関の出力により駆動して発電する発電機であり、
バッテリの充電状態が、前記出力増大制御による出力増大分により前記発電機で発電された電力を充電可能な状態であるか否かを判定する発電力増大可否判定手段を備え、
前記出力増大分により発電された電力を充電可能な状態であると判定されたことを条件として、前記出力増大制御を実施することを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−196289(P2011−196289A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65345(P2010−65345)
【出願日】平成22年3月22日(2010.3.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】